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2018年2月 9日 (金)

レトロと「今」が同居

Title:Ctrl
Musician:SZA

今回も各種メディアでベストアルバムとして評判の高かったアルバムのうち、リアルタイムで聴けなかったものを後追いで聴いた1枚。現在28歳のアメリカ出身の女性シンガーのデビューアルバム。ケンドリック・ラマーを擁するTDEというレーベル所属のミュージシャンとしても注目を集めています。本作はピッチフォークで年間2位に選ばれたほか、ローリングストーン誌で年間20位、イギリスQ Magazine誌でも27位に選ばれるなど高い評価を受けています。

さて、そんな話題となっているデビュー作なのですが、まずアルバムを聴いて印象に残るのが彼女のボーカルでした。ちょっとしゃがれてスモーキーな雰囲気を醸し出している彼女のボーカルは、ちょっとけだるさを感じつつも、力強い歌声を聴かせてくれるのが印象的。この力が抜けたようなけだるげなボーカルが与える楽曲のほどよい熱量に、心地よさを感じました。これがデビューアルバムということですが、デビュー作から既に完成されたものを感じます。

そんな彼女が歌う、ほどよく力の抜けたメロディーラインにもとても心地よさを感じます。「Drew Barrymore」「Go Gina」など、特にメロディーを聴かせるような楽曲には昔ながらのオーガニックなソウルミュージックの流れを引き継ぐような、レトロな空気感も感じさせます。そんなレトロさを感じるメロディーラインに彼女の歌声がピッタリとマッチ。曲を際立たせています。

かと思えば一方では、ケンドリック・ラマーをフューチャーした「Doves In The Wind」あたりが典型的なのですが、今時のHIP HOP的なトラックもそのサウンドから感じられます。「Anything」のような強いエレクトロビートを前に押し出した作品があったり、「Pretty Little Birds」のようなスペーシーなエレクトロトラックが印象的だったり、単純に「レトロでオーガニックな」とは言えないサウンドの広がりも彼女の大きな魅力に感じます。全体的には比較的シンプルなサウンドでリズムトラックを特に強調した曲の構成が多いのもいかにも今風に感じます。

ただこれらの楽曲に関しても、そこに流れる力強いSZAのボーカルによって、アルバム全体にしっかりとした統一感があるのも大きな特徴。トラックにも聴かせどころの多いアルバムでしたが、一方ではなによりも彼女のボーカルに大きな魅力を感じたアルバムでした。

いい意味で昔ながらのソウルと、今のサウンドがしっかりと融合したアルバム。ラスト「20 Something」はオーガニックなテイストの強いギターサウンドをバックにしんみりと歌い上げるバラードナンバーで締めくくっており、今回のアルバムをまとめ上げるにはピッタリの曲となっています。確かに本作が高い評価を受けているのは強く納得できる傑作アルバム。これがデビュー作とは、ある意味、末恐ろしい感じも。これからが非常に楽しみになってくるシンガーのデビュー作でした。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Wiejski Dzez/Kapela Maliszow

こちらも年間ベストの聴きなおしシリーズ。こちらはミュージックマガジン誌ワールドミュージック部門7位のアルバム。同誌の紹介によると「親子3人でポーランド・カルパティア山脈一帯の伝統音楽を奏でるグループ」だそうです。基本的に哀愁感たっぷりのハイテンポなバイオリンにシンバルのリズムがのっているスタイル。メロディーをしっかりと聴かせるようなナンバーも目立つ一方、どこかフリーキーな雰囲気が非常にユニーク。ある意味、聴きなれないタイプの音楽に興奮して聴くことができたアルバムでした。

評価:★★★★★

Fado/Andre Vaz

こちらも同じく年間ベストの聴きなおし。こちらもミュージックマガジン誌ワールドミュージック部門9位を獲得したアルバム。ポルトガルの男性ファド歌手。ファドというのはポルトガルの民族音楽だそうで、基本的に(おそらく)2本のアコギのみでしんみり歌い上がる楽曲。とにかくこれでもかというほど哀愁感あふれる泣きメロの連続。「ファド」とは「運命・宿命」という意味もあるそうですが、まさに「宿命」というタイトルがピッタリと来るような楽曲が並んでいます。その哀愁感強いメロディーに思わず聴き入ってしまいました。

評価:★★★★★

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