バンド初期から変わらぬスタイル
Title:delaidback
Musician:Syrup16g
2014年に再結成した後、積極的な活動が続くSyrup16g。本作はそんな彼らのちょうど1年ぶりとなるニューアルバムです。ただ今回のアルバム、純然たるニューアルバムではありません。本作は過去の未発表音源を集めた作品。過去のライブで披露されてそのままだった曲やボーカルの五十嵐隆がSyrup16g解散中に結成し、結局音源をリリースすることなく解散してしまったバンド「犬が吠える」時代に発表された曲も収録されています。
例えば1曲目「光のような」は分厚くノイジーなバンドサウンドをバックに五十嵐隆が歌い上げる、いかにもSyrup16gらしい曲なのですが、本作は「犬が吠える」で披露された曲。同じく「赤いカラス」も「犬が吠える」で発表されたナンバー。非常に切ないメロディーラインが印象的な楽曲で、諦念的な歌詞もSyrup16gらしく心の響きます。そんな中、「夢、夢、夢~!」というシャウトが、なんとか希望をつかみとろうとする姿を感じ、これもまた彼ららしいといった感じでしょうか。
また一方「夢みたい」や「開けられずじまいの心の窓から」は1997年頃から披露されているナンバーだそうで、1997年というとSyrup16gがインディーズデビューする前という最初期の頃。確かにメロディーラインなどに垢抜けなさは感じるのですが、歌詞含めて既にSyrup16gらしさは確立されています。
ほかにもガレージロック的なノイジーなギターサウンドが耳に残る「冴えないコード」や軽快なリズムやちょっと明るめなメロディーラインながら「一生こんなのは不安です」というくら~いフレーズが印象に残る「ヒーローショー」、同じくアップテンポで明るめのメロながらも4月=春というイメージとは裏腹な鬱な歌詞が印象に残る「4月のシャイボーイ」などSyrup16gの魅力がふあれるナンバーが並びます。
さて今回未発表曲集なのですが、そんな作品にも関わらずアルバム全体に統一感がある点も非常に興味深く感じます。例えばアルバムの構成についても1曲目は「光のような」からスタート。一方ラストは「光なき窓」で締めくくり。1曲目と最後が呼応するような構成になっています。
ちなみに「光のような」は
「光のような 儚いような
命がいま はじまるよ」
(「光のような」より 作詞 五十嵐隆)
と希望を感じるような歌詞で締めくくられているのに対して、「光なき窓」は
「もう満ち足りた日々は遠くて
真っ直ぐに鏡も見れなくて
光なき窓」
(「光なき窓」より 作詞 五十嵐隆)
非常に暗い締めくくりとなっておりこれも対照的。あえて暗い幕切れを最後に持ってくるのも彼ららしいのですが、「光なき窓」でも「そばにいてくれ そばにいてくれ」とその向こうになにかをつかみとろうとするもがきのようなものを感じ、心に響く歌詞になっています。
今回のアルバム、未発表曲集、さらに曲によってはインディーズデビュー前の曲があるにも関わらず統一感があるというのはそれだけ初期から彼らがバンドとしてのスタイルを確立していたということにほかなりません。確かに彼らの曲はデビュー当初から今に至るまでサウンド的にも歌詞的にも大きな変化はありまえんし、彼らのスタイルは最初期に完成されていたということをあらためて実感させられるアルバムと言えるのかもしれません。
「犬が吠える」時代の楽曲を含めて全体的に非常にSyrup16gらしさを感じることが出来たアルバム。デビュー以前から彼らが実に才能あふれるバンドであった事実が再確認できた1枚でした。
評価:★★★★★
Syrup16g 過去の作品
Syrup16g
Hurt
Kranke
darc
ほかに聴いたアルバム
ACID TEKNO DISKO BEATz/石野卓球
ソロとして約1年半ぶりとなる新作。ソロとしては比較的短いインターバルとなるアルバムなのですが、前作の時に「100作くらいつくってその中でピックアップした」と語っていましたので、曲のストックはたまっているのでしょう。前作「LUNATIQUE」と比べるとあまりにもそのままなタイトルなのですが、楽曲的にもかなり肩の力が抜けていて、リリース前提というよりも、好き勝手につくったら出来ちゃいました、といった雰囲気の彼らしいリズミカルなテクノが並んでいます。楽曲はいずれもポップなテイストが強く、どこかユーモラスさも感じられるのも石野卓球らしいところ。ある意味、肩の力を抜きつつもこのレベルの作品がつくれちゃうあたり、さすが・・・といった感じでしょうか。
評価:★★★★★
石野卓球 過去の作品
CRUISE
WIRE TRAX 1999-2012
LUNATIQUE
EUQITANUL
斉藤和義 弾き語りツアー2017 雨に歌えば Live at 中野サンプラザ 2017.06.21/斉藤和義
今回のせっちゃんのライブ盤は昨年行った「斉藤和義 弾き語りツアー 2017“雨に歌えば"」から6月21日の中野サンプラザ公演の模様を収録したアルバム。「弾き語り」らしいシンプルなサウンドで斉藤和義の楽曲が本来持つメロディーと歌詞の良さが味わえるライブ盤。初回版の特典CDでは7月3日のツアーファイナル、金沢・本多の森ホールの模様が収録されているのですが、こちらの方が本体より断然良い!あきらかに楽曲がライブの中で進化しており、例えば「やさしくなりたい」など印象的なイントロが中野サンプラザ公演ではいまひとつチグハグで会場も盛り上がらないのですが、金沢公演ではしっかりと決まっており、会場も大盛り上がり。むしろこちらの公演をフルでCD化すべきだったのでは?とすら思ってしまいました。
評価:★★★★
斉藤和義 過去の作品
I (LOVE) ME
歌うたい15 SINGLES BEST 1993~2007
Collection "B" 1993~2007
月が昇れば
斉藤“弾き語り”和義 ライブツアー2009≫2010 十二月 in 大阪城ホール ~月が昇れば 弾き語る~
ARE YOU READY?
45 STONES
ONE NIGHT ACOUSTIC RECORDING SESSION at NHK CR-509 Studio
斉藤
和義
Kazuyoshi Saito 20th Anniversary Live 1993-2013 “20<21" ~これからもヨロチクビ~ at 神戸ワールド記念ホール2013.8.25
KAZUYOSHI SAITO LIVE TOUR 2014"RUMBLE HORSES"Live at ZEPP TOKYO 2014.12.12
風の果てまで
KAZUYOSHI SAITO LIVE TOUR 2015-2016“風の果てまで” Live at 日本武道館 2016.5.22
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