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2018年2月18日 (日)

バンドとしてグッと進化

Title:・・・
Musician:SAKANAMON

今年はインディーズデビュー10周年を迎えるSAKANAMON。昨年5月より活動の舞台を再びインディーズに移した彼らですが、本作はインディー移籍後初となるフルアルバム。奇妙なタイトルは「テンテンテン」と読むそうです。

そんな彼らの最新作ですが、まず感じたのはバンドとしての基礎体力がグッと高まったという点でした。まずアルバムはいきなり「ロックバンド」という彼らの方向性を定めるような曲からスタート。この曲は比較的シンプルなオルタナ系ギターロックなのですが、続く「STOPPER STEPPER」は軽快でシティポップ色も強いダンスチューン。さらに続く「乙女のKANJOU」はエッジの効いたバンドサウンドがカッコいいロックチューン。どこかNUMBER GIRLすら彷彿とさせる勢いあるサウンドが耳を惹きます。

その後も「凡庸リアライズ」のようなオルタナ系ギターロック路線から「DAVID」のようなシティポップ、さらにラストの「DAPPI」のようなシンセを入れたダンスチューンなど楽曲のバリエーションはいままでに比べて増えた印象。バンドサウンドにしてもいままで以上に迫力ある聴かせるナンバーが増えた印象がありますし、メロディーにもインパクトが増してきました。いままでのアルバムでも様々なバリエーションの曲に挑戦してきましたが、どこかチグハグだった感が否めなかったのは事実。ただ今回のアルバムではそんなチグハグ感がなくなり、しっかりと彼らの血となり肉となってきたように感じます。

ただ一方、今回のアルバムでちょっと物足りなさを感じたのが歌詞。彼らのいままでの作品の大きな売りが歌詞でした。今回のアルバムでも確かに印象的な歌詞を聴かせてくれる曲も少なくありません。タイトル通り、ケーキ屋の女の子に密かな思いをよせる「ケーキ売りの女の子」の

「僕等はね 売れ残りのケーキさ
訳有りの品」

(「ケーキ売りの女の子」より 作詞 藤森元生)

なんて歌詞はいかにもSAKANAMONらしいといった感じでしょうか。

ただこういう社会の中で孤独に生きる人たちを歌ったような曲が残念ながら非常に少なくなりました。同じく歌詞が心に残る「テヲフル」にしてもストレートなラブソングですし、女性の感情をチンチロリンの目に例えば「乙女のKANJOU」も歌詞がユニークだけれども、別に孤独な男性は登場しません。さらには「SYULOVER」に至っては一人の男性を2人の女性が取り合うという「修羅場」な歌詞。2人の女性ボーカルを入れてユニークな内容だけども、いままでのSAKANAMONのイメージからはかけ離れたようなタイプの曲となっています。

歌詞に関しては正直言って残念だったなぁ、というのが感想となってしまいます。フルアルバムとしての前作「HOT ATE」も同じようにサウンドやメロが良くなったのに歌詞が後退してしまった、といった印象を受けたのですが、今回の作品は、さらにサウンドやメロがグッと成長し進化したのに対して、歌詞は同じくさらに後退してしまったと感じたアルバムでした。

ただトータルとしてみるとメロディーやサウンドの成長が歌詞を十分上回り、バンドとしてのこれからに期待が持てる作品になっていたと思います。期待値込みの評価にはなるのですが、バンドとしての基礎体力が増した傑作アルバムということで。

評価:★★★★★

SAKANAMON 過去の作品
ARIKANASHIKA
あくたもくた
HOT ATE
OTSUMAMIX


ほかに聴いたアルバム

明日色ワールドエンド/まふまふ

「ニコニコ動画」での活動で人気を集めた男性シンガーソングライターのメジャーデビュー作。オリコンチャートでいきなり初登場2位を獲得し、その人気のほどを見せつけました。楽曲はハイトーンボイスによるハイテンポなナンバーがメイン。バンドサウンドにシンセも用いて音を詰め込んだタイプの楽曲。メロも歌詞もサウンドも情報過多といった感じなのは、いかにも今時のシンガーらしい印象。J-POP的なフックの効いたメロディーやダイナミックな楽曲構成などインパクトはこれでもかといったほど十分な感じ。ポップな内容がそれなりに楽しめるものの、正直、聴いているうちに疲れてきてしまいました・・・。

評価:★★★

Soft Landing/矢野顕子

矢野顕子の新作は約7年ぶりとなる全編ピアノ弾き語りによるアルバム。ピアノのみのアルバムといってもタイトル通りの野球への愛情をうたったコミカルで明るい「野球が好きだ」に郷愁感ある「汽車に乗って」、ジャジーな「Wives and Lovers」に歌謡曲テイストの「六本木で会いましょう」などバラエティー豊富に聴かせるスタイルはさすが。シンガーソングライターとしてもボーカリストとしても底力を感じるアルバムになっています。ただ、1曲目を飾るPUFFYのカバー(作詞作曲はフジファブリックの志村正彦)「Bye Bye」は、ピアノ一本で感情込めて歌っているのですが、これはPUFFYのような平坦な歌い方のほうがよかったな。このカバーはちょっと残念でした。

評価:★★★★★

矢野顕子 過去の作品
akiko
音楽堂
荒野の呼び声-東京録音-
Get Together~LIVE IN TOKYO~(矢野顕子×上原ひろみ)
矢野顕子、忌野清志郎を歌う
飛ばしていくよ
JAPANESE GIRL - Piano Solo Live 2008 -
さとがえるコンサート(矢野顕子+ TIN PAN)
Welcome to Jupiter
矢野顕子+TIN PAN PARTⅡ さとがえるコンサート
(矢野顕子+ TIN PAN)
矢野山脈

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