戦前のインチキジャズ
Title:へたジャズ! 昭和戦前インチキバンド1929-1940
以前からここでも何度か紹介している戦前のSP盤をユニークな企画の下に復刻しているぐらもくらぶ。今回の企画は「へたジャズ!」と題し、戦前、マイナーレーベルから出たSP盤の曲を集めた企画。夜店の屋台で売られていたようなレコードだそうで、メジャーレーベルから出てヒットした曲をほかの歌手やバンドにより演奏したような曲だったり、B級のバンドがグダグダな演奏を聴かせるような曲だったりと、ちょっと際物的な選曲となっています。ちなみに2017年はジャズ誕生100周年の年。このアルバムは昨年の12月31日にリリースされたのですが、ジャズ誕生100周年にちなんだりちなまなかったり・・・。
ちなみにこの企画、もともとのきっかけはこのアルバムのラストに収録されている大津賀八郎/スタンダードジャズバンドによる「青空」だったそうですが、これがなかなかすごい。ボーカルはただ歌い上げるだけでグタグタ。演奏も賑やかなだけで音がバラバラですさまじい不協和音になっています。いかにも夜店の屋台で売られていそうなインチキ臭あふれる演奏がとてもユニークに感じられます。
このCDを聴いて思い出したのが子供の頃買ってもらったアニメソングのカセットテープ。歌っている人がオリジナル版とは全く違う無名な歌手が歌っているテープが、昔はホームセンターやら高速道路のサービスエリアやらでよく売られていました。ネット上では「パチソン」なんて呼ばれて一部では愛好家もいるようですが、B級感あふれるなんともいえないインチキ臭さが一回りして逆におもしろく、今回、これをきっかけで「パチソン」を聴いてみたのですが、懐かしさもあって思わずYou Tubeで聴ける「パチソン」に聴き入ってしまいました。
このアルバムで感じたのもまさに「パチソン」と同じような感覚。はっきりいって演奏にしても歌にしてもひどいです。例えばチェリーランド・ダンス・オーケストラなるバンドによる「ダイナ」の演奏はナヨナヨですし、KEIO B.R.B. LIGHT MUSICANSによる「THE CAMPBELLS ARE SWINGING」なども音が微妙にずれています。ただ、ダメダメな演奏や歌にしても、そのダメダメ感、B級感が妙に味があり、なにか懐かしさみたいなものを感じてしまうから不思議。グダグダな内容ながらもついつい聴き入ってしまうような妙な魅力がありました。
逆に「ウクレレ・ベビー」を歌うテッド・マキだったり、「ラ・クカラチャ」のヘレン広瀬だったり、意外と魅力的なボーカルを聴かせてくれる曲が入っていたり、「テルミー」のヒリッピンジャズバンドのような軽快なブギウギ風の演奏をしっかりと聴かせてくれる楽しいナンバーが入っていたりと、きちんと聴かせる曲も意外と少なくありません。そういう意味ではマイナーレーベルを含めた、当時の日本の音楽シーンの意外な懐の深さも感じます。
企画の内容からして、さすがに万人向けといった感じで無条件でお勧めできるようなアルバムではありません。ただ、聴くのにかなりの高いハードルがあるマニア向け・・・という感じではなく、戦前ジャズに興味があれば、十分楽しめるレベルの内容だったと思います。むしろ上にも書いた通り、ある種の独特な味がある楽曲が多く、私個人は十分に楽しむことが出来ました。様々な視点からユニークな切り口でSP盤の復刻を続けるぐらもくらぶらしい企画。次の企画も楽しみです。
評価:★★★★
ほかに聴いたアルバム
DEATH/快速東京
パンクバンド快速東京の特徴はとにかく1曲あたりの曲の短さ。平均1分強程度の長さで、本作も全33曲入りながらもアルバムの長さはわずか42分となっています。ただし、あっという間の曲の長さの勢いだけのパンクバンドといった感じではなく、短いながらもユニークな歌詞をしっかりと聴かせたり、バンドサウンドもルーツからの影響をしっかりと感じられる演奏もあったりと、なにげに基礎的な土台はしっかりしたバンドだと気が付かされます。後半18曲目からはインストバージョンとなるのですが、これもバンドとしての自信のあらわれでしょう。彼らを聴くのは「ウィーアーザワールド」以来2作目。その頃に比べると注目度はちょっと落ちちゃった感もあるのですが・・・個人的にはもうちょっと注目されてもいいバンドとは思うのですが・・・。
評価:★★★★★
快速東京 過去の作品
ウィーアーザワールド
にゅ~うぇいぶ/キュウソネコカミ
シンセを使った勢いあるパンクロックサウンドと社会現象を皮肉ったようなユニークな歌詞が話題のパンクロックバンドによるフルアルバムとしてはメジャー2作目となる作品。最近は同じく人気上昇中のヤバイTシャツ屋さんと比較されることも多いような印象も。確かに両者とも勢いあるサウンドとどこか醒めた、今時の若者っぽいユーモラスのある歌詞が特徴的と共通点もあります。本作も基本的には前作と同様、シンセのサウンドを効果的に用いたハイテンポなパンクロックがメイン。昨年リリースされたベスト盤でも感じたのですが、ある意味「フェスで盛り上がる」ことに特化したような機能的な楽曲といった印象も。良くも悪くもいつもの彼らの作品同様、非常に楽しめるロックを聴かせてくれました。
評価:★★★★
キュウソネコカミ 過去の作品
チェンジ ザ ワールド
ハッピーポンコツランド
人生はまだまだ続く
キュウソネコカミ -THE LIVE-DMCC REAL ONEMAN TOUR 2016/2017 ボロボロ バキバキ クルットゥー
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