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2018年2月19日 (月)

新レーベルからの新たな一歩

Title:ハレルヤ
Musician:川村結花

川村結花といえば、おそらく一般的にはあのSMAPの名曲「夜空ノムコウ」の作曲を手掛けた人、ということで知っている方も多いのではないでしょうか。ほかにもFUNKY MONKEY BABYSの「あとひとつ」を手掛けたりしており、主に職業作家としての活躍がメインとなっています。

ただ彼女自身もシンガーソングライターとしても活動しており、数多くのアルバムもリリース。そんな彼女がリリースした新作はDr.kyOnと佐橋佳幸によるユニットDarjeelingが設立したレーベル、GEAEG RECORDSの第1弾アルバム。そのDarjeelingがプロデュースも手掛けており、彼女にとってもレコード会社移籍後初となる新たな一歩のアルバムとなっています。

全8曲入りとなった今回のアルバムで、まず個人的に心に響いてきたのが1曲目の「カワムラ鉄工所」。彼女の祖父が実際に経営していた鉄工所だそうで、祖父との思い出を歌ったナンバー。個人的なことになりますが、私も同じく自営をしていた祖母を昨年、亡くしており、そういう意味では自分にとっても非常に胸うつものがあった楽曲で、アルバムの中でも特に印象に残りました。

この「カワムラ鉄工所」もそうですが、楽曲は基本的に彼女のピアノを中心に据えたアコースティックなシンプルな演奏がメインで、彼女の歌をしっかりと聴かせるような構成になっています。

楽曲的にはジャジーな雰囲気の「夜の調べ」「猫の耳たぶ」、ムーディーなジャズの「ロウソクの灯が消えるまで」にビックバンド風の「その先は?」、ソウル風の「かたづけちゃんとしよう」など、ブラックミュージックベースの楽曲がメイン。ただ一方ではフォーキーな「乾杯のうた」や郷愁感あふれる和のテイストを感じる「愛だけしかない景色」なども並び、わずか8曲、ピアノが入ったアコースティックな編成という制約がありながらもバラエティーに富んだポップスを聴かせてくれます。

また歌詞で取り上げているテーマも、タイトル通り、汚れた部屋についてなげいている「かたづけちゃんとしよう」や、猫の耳について歌った「猫の耳たぶ」など身の回りについて歌った歌詞がメイン。一方では「その先は?」のような前向き応援歌的なメッセージソングもあったりして、いい意味で職業作家として活躍している彼女らしい安定感ある歌詞のテーマ性も魅力的でした。

メロディーラインについては自らが歌う曲でかつアルバム曲ということもあるのでしょうか、あまり派手でキャッチーなサビを持ったような曲はありません。ただ、シンプルなメロディーラインながらもしっかりと心に残るようなフレーズは要所要所に聴くことが出来、こちらも彼女の実力が光ります。

全体的には決して派手さはないものの、彼女の実力がしっかりと発揮された良質なポップアルバムだったと思います。職業作家としては十分ヒットを飛ばしている彼女ですが、次はやはりシンガーソングライターとしてももっと売れてほしいなぁ。それだけの実力は持っているシンガーということがはっきりと感じることが出来るアルバムです。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

PAUSE~STRAIGHTENER Tribute Album~

結成20周年、メジャーデビュー15周年を迎えるストレイテナー。本作はそんな彼らの代表曲を彼らの同世代のバンドや彼らに影響を受けたバンドがカバーしたトリビュートアルバム。参加メンバーはなかなか豪華でMONOEYESやback number、ACIDMANに9mm Parabellum Bullet、アジカンにthe pillowsと、今の日本のオルタナ系ギターロックバンドの代表格がズラリ。さらにどのバンドもバンドとしての個性を発揮している点が素晴らしいところ。最後はストレイテナー自ら「SAD AND BEAUTIFUL WORLD」を披露していますが、ピアノから静かに入りつつ途中からバンドサウンドへとダイナミックに展開する構成に耳を惹かれるロックチューンになっており、彼らの魅力がきちんと伝わるナンバーになっています。ストレイテナーファンはもちろん、参加ミュージシャンのファンならチェックして損はない1枚です。

評価:★★★★★

Heart of Gold/SING LIKE TALKING

途中ベスト盤のリリースはあったものの、なんと4年7ヶ月ぶりという久々となったSING LIKE TALKINGのニューアルバム。今回はその間にリリースされたシングル曲などを中心とした構成になっており、ストリングスやピアノ、ホーンセッションなどを入れつつ、SLTらしい爽やかなメロディーラインを美しい佐藤竹善の歌声にのせて聴かせるいつものスタイルなのですが、いつも以上に聴きやすい、またSLTらしい曲が並んだ展開になっています。目新しさはないのですが、SLTが好きなら安心して聴けるアルバム。久々のオリジナルとしてはファンとしては納得感ある出来だったのではないでしょうか。

評価:★★★★

SING LIKE TALKING 過去の作品
Empowerment
Befriend
Anthology

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アルバムレビュー(邦楽)2018年」カテゴリの記事

コメント

ストレイテナーのSAD〜は新曲ではなくてアルバム「TITLE」の楽曲のセルフカバーですね。
ファンから人気のある曲みたいです。

投稿: ASP | 2018年2月21日 (水) 19時02分

お久しぶりです
テナーのトリビュートのラスト「SAD~」はセルフカバーというよりは2013年の武道館で初披露されたアレンジの音源化です
ひなっちのシンセベースが目立ったり、前半がホリエの鍵盤弾き語りに近いものになったりと大幅に変化してます
このアレンジが行われたのはその武道館ライブのセトリがリクエスト方式でこの曲が1位だったからです
このアレンジは素晴らしいので、ようやく音源化されたのがうれしいです

投稿: softman | 2018年3月 2日 (金) 20時34分

>ASPさん
情報ありがとうございます。すいません、新曲ではなかったんですね・・・。

>softmanさん
情報ありがとうございます。なるほど、ライブで披露されたバージョンの音源化ということですか。ダイナミックで素晴らしいアレンジだったと思います。この曲がリクエストで1位というのも納得です。

投稿: ゆういち | 2018年3月 5日 (月) 23時06分

テナーのトリビュートはちょっと無難過ぎたかなと。

投稿: ひかりびっと | 2018年3月 9日 (金) 14時41分

>ひかりびっとさん
ご感想ありがとうございました。

投稿: ゆういち | 2018年3月17日 (土) 00時03分

川村結花さんの「ハレルヤ」はブラック・ミュージックを彷彿としたサウンドをアコースティック主体でやっているせいか、旋律や歌詞が心に染み入るような感覚を味わいました。派手さはないですが、しみじみとした感動を覚える秀作ですね。

投稿: ひかりびっと | 2018年6月 3日 (日) 20時21分

>ひかりびっとさん
ご感想ありがとうございました。

投稿: ゆういち | 2018年6月 3日 (日) 23時12分

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