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2018年2月17日 (土)

人気上昇中の「ヤバイ」彼ら

Title:Galaxy of the Tank-top
Musician:ヤバイTシャツ屋さん

ご存知、現在人気上昇中で最も注目を集めているロックバンド、ヤバイTシャツ屋さん。適度にハードコアだったりメロコアだったりのヘヴィーなバンドサウンドと、ポップなメロディーライン、そしてどこか人を食ったようなユニークな歌詞が大きな注目を集めています。

本作も前作「We love Tank-top」から初動売上を倍増させてオリコン初登場4位に飛び込んでくるなど大ヒットを記録。「Tシャツ屋さん」と名乗りながらアルバムタイトルがなぜかタンクトップというところも彼ららしい人を食ったような部分といえるでしょうか。

楽曲のスタイルも基本的に前作と同様。メロコアを軸にしつつデス声を入れてハードコアなテイストを加えたようなバンドサウンド。今回のアルバムでも1曲目「Tank-top in your heart」でいきなりデス声が登場しハードコア路線からスタートしています。ほかに「眠いオブザイヤー受賞」ではラップを取り入れたり、ちょっとシティポップ路線のギターを聴かせたり、ラストの「肩 have a good day」はピアノとストリングスを入れた、J-POPによくありがちなベタなバラードになったり。楽曲的なバリエーションはありますが、彼らの場合、そのバリエーションも一種の「ネタ」にしているような印象もあります。

前作に比べると、よりメロディアスパンク、あるいはメロコアの路線の曲が目立ったような印象を受ける今回のアルバム。ただ、肝心のメロコア路線にしても「メロコアバンドのアルバムの3曲目ぐらいによく収録されている感じの曲」なんて曲で、いかにもメロコア調の曲にメロコアバンドの「あるある」を織り交ぜたような歌詞をうたっており、ある意味、徹底して茶化した感じの曲が多く感じます。

ユニークな歌詞といえば「ヤバみ」みたいに最初、英語詞で洋楽テイストの強い楽曲からスタートしたかと思えば「いっぱい英語で歌ってみたけどあんまり意味ないよ」なんて風に締めくくってみたり、パソコンのUSBについて単なるうたっただけの「Universal Serial Bus」なんて曲があったり、この歌詞のユニークさを耳で追っているだけでも楽しめるアルバムになっています。

また良くも悪くも今どきの若者かつある種の大学サークルノリ的な部分があるのも彼ららしいところで、そんなサークルノリ的な代表格が「ハッピーウェディング前ソング」。「キッスキッスキッスキッス」と盛り上げたり「ノリで入籍してみたらええやん」とかなり無責任なことを言ってみたりするのもいかにも学生ノリ。ただ、このある種の若々しさも勢いとなって彼らの大きな魅力になっているようにも感じます。

ここらへんの人を食ったような歌詞、メタ視点的な歌詞は好き嫌いがありそうで、個人的にも本来、あまり好みの方向性ではないのですが、彼らの場合はそこをユーモラスとノリでカバーしており、嫌みにならないほどほどのバランスでキープしているように感じました。前作ではもっと内輪ノリ、学生ノリ的な曲が多かったのですが、いかにも内輪的な曲がぐっと減ったのも彼らなりの成長でしょうか。まだまだ若手バンドの彼ら、これからいろいろな方向性も見せてくれるかもしれません。

前作でも感じたのですが、この手のメロコア、パンク系バンドの中では間違いなく頭ひとつふたつ抜けている彼ら。まだまだ人気は伸びてきそうな予感も。個人的には前作より本作のほうがより楽しめる傑作アルバムだったと思います。これからの活躍も楽しみです。

評価:★★★★★

ヤバイTシャツ屋さん 過去の作品
We love Tank-top


ほかに聴いたアルバム

Human Bloom Tour 2017/RADWIPS

RADWIMPS初となるライブアルバム。昨年4月30日に行われた「さいたまスーパーアリーナ」の模様を中心に収録したライブアルバム。MCも収録されており(ただ、若干「う~ん」という発言もあるけど)、ライブ会場の雰囲気がそのまま伝わる内容に。ライブ演奏に関しては可もなく不可もなくといった感じか。「前前前世」を含む「君の名は。」で使われた曲も収録されていますし、ベスト盤感覚でも楽しめるアルバムです。

評価:★★★★

RADWIMPS 過去の作品
アルトコロニーの定理
絶対絶命
×と○と罰と
ME SO SHE LOOSE(味噌汁's)
君の名は。
人間開花

Popcorn Ballads(完全版)/サニーデイ・サービス

昨年6月、突如、ストリーミングサイトでのみリリースされたアルバム「Popcorn Ballads」。この画期的なリリース方法も話題になりましたが、今回はそのストリーミングによる作品にさらなる手を加え、さらに新曲を加えてCD/LPで「完全版」としてリリースしてきました。基本的に様々なタイプの曲が並んでいたストリーミング版に比べると、曲順が整理されアルバムとして流れを感じさせる構成に。また今回新曲も加わったのですが、これもアルバムの中でピッタリマッチする、メロディアスなポップチューンをしっかりと聴かせてくれます。ストリーミングでまずリリースし、さらにそれをブラッシュアップし再度リリースというスタイルはおもしろいですね。今後、同じような手法を使うミュージシャンが増える・・・かな?

評価:★★★★★

サニーデイ・サービス 過去の作品
本日は晴天なり
サニーディ・サービス BEST 1995-2000
Sunny
DANCE TO YOU
桜 super love

Popcorn Ballads

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コメント

嫌味にならない絶妙なバランス加減はヤバTだからこそできるのだと聴いていて思いました。

投稿: ひかりびっと | 2019年4月13日 (土) 21時58分

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