« 2018年1月 | トップページ | 2018年3月 »

2018年2月

2018年2月28日 (水)

先週に続き今週もジャニーズ系

今週のHot 100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

先週も今週に引き続きジャニーズ系が1位獲得。嵐「Find The Answer」が1位獲得です。TBS系ドラマ「99.9-刑事専門弁護士- SEASONⅡ」主題歌。CD販売・ダウンロード・ストリーミング数(以下「実売数」)及びPCによるCD読取数で1位を獲得。Twitterつぶやき数でも5位、ラジオオンエア数では39位とふるいませんでしたが、総合1位を獲得しています。オリコンでも初動39万5千枚で初登場1位。前作「Doors~勇気の軌跡~」の57万1千枚(1位)よりダウンです。

2位は米津玄師「Lemon」が先週に引き続きキープ。実売数2位、ラジオオンエア数5位、Twitterつぶやき数6位と安定した人気を確保しています。

3位はハロプロ系女性アイドルグループつばきファクトリー「低音火傷」が初登場で獲得。王道のアイドル歌謡曲。実売数3位のほかはラジオオンエア数25位、PCによるCD読取数71位、Twitterつぶやき数39位という結果になっています。オリコンでは初動売上6万8千枚で2位を獲得。前作「就活センセーション」の3万4千枚(5位)よりアップ。

続いて4位以下の初登場曲です。まず5位にEXILE THE SECOND「アカシア」が初登場でランクイン。ちょっと怪しげなラテン調の楽曲。実売数は4位ながらもPCによるCD読取数14位、Twitterつぶやき数23位が足を引っ張り、5位に。オリコンでは初動売上6万枚で3位初登場。前作「Route 66」の3万6千枚(3位)よりアップ。

6位には女性シンガーAimer「Ref:rain」が初登場。切なく叙情感たっぷりに歌い上げるボーカルが印象的。実売数6位、PCによるCD読取数は5位を記録。一方、ラジオオンエア数61位、Twitterつぶやき数22位とこちらの順位は伸びませんでした。ちなみにCDでは両A面扱いとなっている「眩いばかり」はなんと作詞作曲をCoccoが担当しています。オリコンでは初動1万8千枚で6位初登場。前作「ONE」の2万8千枚(2位)からはダウンしています。

今週の初登場組は以上。今週はベスト10返り咲き組が1曲。10位に星野源「ドラえもん」が先週の50位からランクアップし4週ぶりにベスト10に返り咲きました。今週はついにCDもリリースされ、来週は実売数でも上位にランクインし、さらにランクアップが見込まれます。またロングヒット組ではTWICE「Candy Pop」が8位ランクインで今週8週目のベスト10入り。順位的にはここ3週で1位→4位→8位とダウン傾向ですがYou Tube再生回数は1位をキープしており、まだロングヒットが期待できそうです。

今週のHot100は以上。明日はアルバムチャート。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018年2月27日 (火)

ミャンマーの幻の楽器

Title:MUSIC OF BURMA Virtuoso of Burmese Guitar~Man Ya Pyi U Tin and His Bama Guitar~
Musician:Man Ya Pyi U Tin

昨年の各種メディアでのベストアルバムの後追い企画。これがラストとなります。ミュージックマガジン誌のワールドミュージック部門で8位を獲得したアルバム。Man Ya Pyi U Tin(マン・ヤ・ピー・ウー・ティン)というミャンマーの楽器、バマー・ギターのギタリストによるソロアルバムでそうです。

バマー・ギターのバマーとはミャンマーの現地での正式な国名を口語的に呼称したもの。ちなみに同じく文語的に呼称すると「ミャンマー」になるそうです。バマー・ギターはハワイアンギターの影響を受けてミャンマーで成立したスライドギター。1940年代から50年代にかけて、無声映画の楽団伴奏などで盛んに演奏されていたものの、トーキー映画の時代となり廃れてしまい、今では幻の楽器と呼ばれるようになってしまったそうです。

ウー・ティンはそのバマー・ギターを演奏する数少ないギタリストの一人。1930年生まれというから御年88歳という彼。これがソロアルバムとしては2作目となるそうです。本作は、ウー・ティンのギターの演奏を中心に、女性ボーカルとしてGermany Pyan Hla Min、さらにパッタラーというミャンマーの伝統楽器(竹琴だそうです)としてLulin Nye Thwe Maung Than Ayeが参加しており、3人での演奏となっています。

アルバムを聴いてまず感じるのは不思議で、場合によってはちょっと「気持ち悪く」すら感じる独特の音階でしょう。ミャンマー音楽は7音階を基礎としているものの、3度と7度のピッチがやや低いという音階となっており、その結果、西洋音楽とは微妙に異なる音色が奏でられます。そのため聴いていて微妙に気持ち悪く感じることもあるかもしれませんが、慣れてくると音がきれいにまとまっている西洋音楽とは異なる微妙なピッチが妙に癖になり、むしろある種の心地よさすら感じてきます。

収録されている10曲は、この手の民族楽器にありがちな伝統音楽ではなく、基本的に大衆歌謡曲がメイン。そういう意味では比較的メロディアスで聴きやすい楽曲が多く、耳慣れないミャンマー音楽にバマー・ギターの音色を楽しむのは最適だったと思います。楽曲の構成はバマー・ギターにパッタラー、そしてボーカルのみ。バマー・ギターもパッタラーも、基本的にリズムを奏でるというよりもメロディーのフレーズを聴いており、曲によってはギターとパッタラーとボーカルの3つのメロディーが同時に流れるような構成になっており、これもちょっと不思議な感覚に。ただ、重なるあうメロディーはちょっとアジアンなエスニックさも加わりつつ、しっかりと独特のハーモニーを奏でており、こちらも慣れてくると非常に心地よく聴こえてきました。

ちなみにパッタラーの音色はマリンバの音色に似ており、爽やかで柔らかい音色。比較的硬質な印象のあるバマー・ギターとは対照的で、この2つの楽器の相性もピッタリ。楽曲に清涼感を与えるのに非常にマッチしていました。

個人的に今回のアルバムの中で印象に残ったのは「KYUN DOT MYAT TAR」という曲。パッタラーとギターがお互い重ならないようなメロディーラインを奏でているのですが、ギターのメロディーが妙にこぶしが効いているような不思議な感覚のあるメロディーを奏でており、耳に残ります。またラストを飾る「BA WA THAN THA YA」も哀愁感あるメロディーラインが印象に残る曲。ギターもさることながら優しく歌い上げるボーカルも印象的な曲になっています。

御年87歳となるウー・ティンのギターは全く衰えることはなく、年を重ねたことによる味わいすら感じられます。楽曲は非常にシンプルなのですが、シンプルなゆえにギターの演奏が強く印象に残るアルバムになっていました。まだまだアジアにも私たちの知らない音色がたくさんありそう。いろいろな意味で非常に興味深くもあるアルバムでした。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

MANIA/FALL OUT BOY

FALL OUT BOYの新作はエレクトロサウンドを取り入れたダイナミックなロックサウンドが印象的。エレクトロサウンドの導入は以前から行われていましたが、本作はその方向性がより顕著に。結果として、ちょっとK-POPのアイドルやEXILEあたりが歌ってそうな感じの楽曲にポップの方向性の強いエレクトロロックになってしまっているのがちょっと気になるのですが・・・。若干大味な感じもするものの、ダイナミックなサウンドは素直に聴いていて気持ちよいものがありました。

評価:★★★★

Fall Out Boy 過去の作品
infinity on high
American Beauty/American Psycho

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2018年2月26日 (月)

戦前のインチキジャズ

Title:へたジャズ! 昭和戦前インチキバンド1929-1940

以前からここでも何度か紹介している戦前のSP盤をユニークな企画の下に復刻しているぐらもくらぶ。今回の企画は「へたジャズ!」と題し、戦前、マイナーレーベルから出たSP盤の曲を集めた企画。夜店の屋台で売られていたようなレコードだそうで、メジャーレーベルから出てヒットした曲をほかの歌手やバンドにより演奏したような曲だったり、B級のバンドがグダグダな演奏を聴かせるような曲だったりと、ちょっと際物的な選曲となっています。ちなみに2017年はジャズ誕生100周年の年。このアルバムは昨年の12月31日にリリースされたのですが、ジャズ誕生100周年にちなんだりちなまなかったり・・・。

ちなみにこの企画、もともとのきっかけはこのアルバムのラストに収録されている大津賀八郎/スタンダードジャズバンドによる「青空」だったそうですが、これがなかなかすごい。ボーカルはただ歌い上げるだけでグタグタ。演奏も賑やかなだけで音がバラバラですさまじい不協和音になっています。いかにも夜店の屋台で売られていそうなインチキ臭あふれる演奏がとてもユニークに感じられます。

このCDを聴いて思い出したのが子供の頃買ってもらったアニメソングのカセットテープ。歌っている人がオリジナル版とは全く違う無名な歌手が歌っているテープが、昔はホームセンターやら高速道路のサービスエリアやらでよく売られていました。ネット上では「パチソン」なんて呼ばれて一部では愛好家もいるようですが、B級感あふれるなんともいえないインチキ臭さが一回りして逆におもしろく、今回、これをきっかけで「パチソン」を聴いてみたのですが、懐かしさもあって思わずYou Tubeで聴ける「パチソン」に聴き入ってしまいました。

このアルバムで感じたのもまさに「パチソン」と同じような感覚。はっきりいって演奏にしても歌にしてもひどいです。例えばチェリーランド・ダンス・オーケストラなるバンドによる「ダイナ」の演奏はナヨナヨですし、KEIO B.R.B. LIGHT MUSICANSによる「THE CAMPBELLS ARE SWINGING」なども音が微妙にずれています。ただ、ダメダメな演奏や歌にしても、そのダメダメ感、B級感が妙に味があり、なにか懐かしさみたいなものを感じてしまうから不思議。グダグダな内容ながらもついつい聴き入ってしまうような妙な魅力がありました。

逆に「ウクレレ・ベビー」を歌うテッド・マキだったり、「ラ・クカラチャ」のヘレン広瀬だったり、意外と魅力的なボーカルを聴かせてくれる曲が入っていたり、「テルミー」のヒリッピンジャズバンドのような軽快なブギウギ風の演奏をしっかりと聴かせてくれる楽しいナンバーが入っていたりと、きちんと聴かせる曲も意外と少なくありません。そういう意味ではマイナーレーベルを含めた、当時の日本の音楽シーンの意外な懐の深さも感じます。

企画の内容からして、さすがに万人向けといった感じで無条件でお勧めできるようなアルバムではありません。ただ、聴くのにかなりの高いハードルがあるマニア向け・・・という感じではなく、戦前ジャズに興味があれば、十分楽しめるレベルの内容だったと思います。むしろ上にも書いた通り、ある種の独特な味がある楽曲が多く、私個人は十分に楽しむことが出来ました。様々な視点からユニークな切り口でSP盤の復刻を続けるぐらもくらぶらしい企画。次の企画も楽しみです。

評価:★★★★


ほかに聴いたアルバム

DEATH/快速東京

パンクバンド快速東京の特徴はとにかく1曲あたりの曲の短さ。平均1分強程度の長さで、本作も全33曲入りながらもアルバムの長さはわずか42分となっています。ただし、あっという間の曲の長さの勢いだけのパンクバンドといった感じではなく、短いながらもユニークな歌詞をしっかりと聴かせたり、バンドサウンドもルーツからの影響をしっかりと感じられる演奏もあったりと、なにげに基礎的な土台はしっかりしたバンドだと気が付かされます。後半18曲目からはインストバージョンとなるのですが、これもバンドとしての自信のあらわれでしょう。彼らを聴くのは「ウィーアーザワールド」以来2作目。その頃に比べると注目度はちょっと落ちちゃった感もあるのですが・・・個人的にはもうちょっと注目されてもいいバンドとは思うのですが・・・。

評価:★★★★★

快速東京 過去の作品
ウィーアーザワールド

にゅ~うぇいぶ/キュウソネコカミ

シンセを使った勢いあるパンクロックサウンドと社会現象を皮肉ったようなユニークな歌詞が話題のパンクロックバンドによるフルアルバムとしてはメジャー2作目となる作品。最近は同じく人気上昇中のヤバイTシャツ屋さんと比較されることも多いような印象も。確かに両者とも勢いあるサウンドとどこか醒めた、今時の若者っぽいユーモラスのある歌詞が特徴的と共通点もあります。本作も基本的には前作と同様、シンセのサウンドを効果的に用いたハイテンポなパンクロックがメイン。昨年リリースされたベスト盤でも感じたのですが、ある意味「フェスで盛り上がる」ことに特化したような機能的な楽曲といった印象も。良くも悪くもいつもの彼らの作品同様、非常に楽しめるロックを聴かせてくれました。

評価:★★★★

キュウソネコカミ 過去の作品
チェンジ ザ ワールド
ハッピーポンコツランド
人生はまだまだ続く
キュウソネコカミ -THE LIVE-DMCC REAL ONEMAN TOUR 2016/2017 ボロボロ バキバキ クルットゥー

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018年2月25日 (日)

名盤「COPY」からもう16年・・・

Syrup16g COPY発売16周年記念ツアー 十六夜<IZAYOI>

会場 名古屋CLUB QUATTRO 日時 2018年2月15日(木) 19:00~

Syrup16g_live

今年2度目となるライブはSyrup16g。彼らのライブは実に2002年に足を運んで以来、16年ぶり(!)。そしてなにげにワンマンライブに足を運ぶのは今回はじめてとなりました。

今回のライブはタイトル通り、2001年にリリースされ、彼らの名前を一気に知らしめたアルバム「COPY」から16年が経過したということの記念ツアー。名古屋は昨年10月にダイヤモンドホールでワンマンを行い、今回はツアー2度目の名古屋ワンマン。会場は前回よりも小さいクワトロでのライブとなりました。

ライブはほぼ19時ピッタリにスタート。チケットは完売ということもあり、会場は満員。私がドリンクカウンターでビールを取っている間に1曲目はスタート。まずは「クロール」からスタート。さらに最新アルバム「delaidback」から「STAR SLAVE」へと流れる展開に。今後は簡単にボーカルの五十嵐隆が「名古屋~~帰ってきたぞ!」と叫んで会場を盛り上げます。

そのまま「ヒーローショー」「upside down」と同じく「delaidback」のナンバーが続きます。ここでまずはMCが。なぜかMCはドラマーの中畑大樹が担当。その間、五十嵐隆とキタダマキは黙々とチューニングをしつつ、最後はメンバー同士のからみもあり、MCに関しては意外と「普通」だな、という印象を持ちました。

その後も「これで終わり」「赤いカラス」と「delaidback」からのナンバー。この日は「COPY」の発売16周年記念ツアーということでてっきり「COPY」からの楽曲がメインになるかと思いきや、本編は「delaidback」からの楽曲がメイン。まあ、最新アルバムですもんね。このアルバムも名盤で、特に「赤いカラス」は個人的に気に入っていたのでこの日、ライブで聴けたのはとてもうれしく感じました。

続いての「前頭葉」はアップテンポの激しめのナンバー。力強いバンドサウンドを聴かせつつ、五十嵐隆もシャウトで声を張り上げます。その後も短いMCなどを挟みつつ「夢みたい」や「開けられずじまいの心の窓から」などやはり「delaidback」中心の構成に。本編ラストは「変拍子」で締めくくり。本編は1時間10分程度と、思った以上に短く終わってしまいました。

もちろん盛大なアンコールが起こります。比較的早いタイミングでメンバーが戻ってくると、ついに「COPY」からのナンバー「無効の日」に!原曲と異なり五十嵐のボーカルにはフェイクが入っていました(高音部がちょっとうまく出てなかったような印象も・・・)。さらに同じく「COPY」から「(I can't)Change the world」。この曲の後、五十嵐隆は「イエーイ!のってるか~い!」という非常にベタなシャウトで会場を盛り上げていました(^^;;

さらに同じく「COPY」から「Drawn the light」。原曲よりもさらに激しいサウンドとなり、バンドとしてのSyrup16gの実力をいかんなく発揮しています。さらに次の曲はイントロがはじまった途端に歓声が。個人的にもこの日、最も聴きたかった「生活」へ!この日、会場は一番盛り上がりました。

アンコールラストは「真空」で締めくくり。こちらもノイジーなバンドサウンドとシャウトで激しいナンバーで会場を盛り上げつつ、アンコールは幕を下ろします。

しかしこの後、さらにセカンドアンコールが。今回はまず五十嵐隆だけ登場。ギター1本で「きこえるかい」の弾き語りからスタート。やがてほかのメンバーが登場し、徐々に演奏に加わり、最後は3人のバンドサウンドで締めくくり。2時間弱のライブが幕を下ろしました。

上にも書いた通り、この日は「COPY」の発売16周年記念ツアーということでしたが、楽曲的にはむしろ最新アルバム「delaidback」を中心とした構成。「COPY」からの曲はアンコール後の4曲のみでした。個人的には「COPY」の曲を中心にやってくれるのかと期待していったのでちょっと残念。もっとも、個人的に一番聴きたかった「生活」が聴けただけで十分満足ですし、また「delaidback」も名盤なので、ここからの曲がいろいろと聴けたのはうれしかったですが。

彼らの演奏は迫力もあり、また3ピースとして3人の息もピッタリ。緊迫感みたいなものは薄い反面、ベテランバンドらしい安定感があり、激しい曲から聴かせる曲までしっかりとしたバックで五十嵐隆の歌を支えていました。またライブは気難しく、MCも少な目で黙々と展開していくのかな、と予想していて、確かにMCは決して長くはないものの、五十嵐隆を含め意外とフランクリーなMCが聴け、かつベタな盛り上げがあったりして、楽曲の雰囲気と反して明るさも感じられたのはちょっと意外でした。

かなり久しぶりの彼らのライブでかつワンマンライブ。思った以上に短めだったですが、中身は非常に濃いライブで満足して帰路につきました。次はもっと短いスパンで、また彼らのライブを見てみたいなぁ。初ワンマンでしたが、バンドとしての彼らの実力も実感できた素晴らしいステージでした。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018年2月24日 (土)

ECDの「地層」

Title:21世紀のECD
Musician:ECD

先月の終わり、音楽シーンにショッキングなニュースが飛び込んできました。ECD逝去。以前から進行性のがんであることを告白し、療養生活を送ってきた彼でしたが、今年1月24日、わずか57歳という若さでこの世を去りました。

ECDといえば日本のラップ黎明期からシーンで活躍を続けてきたラッパー。特に1996年に日比谷野外音楽堂で行われた伝説的なラップイベント、さんぴんCAMPの主催者としても知られています。もちろんミュージシャンとしてもコンスタントに活動を続け、特にここ最近では反原発や反レイシストなどの社会派的な活動も目立っていました。

本作はそんな彼の2000年以降にリリースされた作品をまとめたベスト盤。本人監修による選曲になっており、リリースは昨年の7月なので決して「追悼盤」ではありません。彼の活動を総括的に振り返るオールタイムベストでもありませんし、彼にとっても活動のひとつの区切りとしてリリースした、という以上でも以下でもなかったベスト盤だったかもしれません。

また2枚組となった本作は1枚目は2000年代、2枚目は2010年代にリリースされた曲という構成になっています。今回のベスト盤リリースにあたり、ECD本人が印象的なメッセージを残しています。それは「『今聴いても古さを感じさせない』それは最高の褒め言葉だ。 しかし僕は前作を古いものにするために新作を作り続けてきた。」というメッセージ。そのため今回のベスト盤はECDにとっての「地層」と位置づけ、1つ1つの曲は「化石」とすら述べています。

今回のベスト盤でも2000年代の作品を聴いていると、サウンド的には非常に時代性を感じる楽曲が目立ちます。一方で2010年代の作品を聴いていると「憧れのニューエラ」で「今のトレンドは似合わない」と歌い、確かにいかにも流行を追っただけのようなサウンドはないものの、低音部のビートを強調したサウンドの構成など、しっかりと今の時代の音もアップデートしており、時代にあった新しい曲づくりも志向していたこともわかります。

また2000年代の作品はブレイクビーツからエレクトロ、ロックやらトライバルな作風やらバリエーションが多く、音楽的により積極性を感じられました。一方で2010年代の作品は、音楽的な方向性は似たタイプの曲が増え、いい意味での安定性を感じます。またポップな作品も目立つようになり、ベテランとして、またラップが日本のミュージックシーンに定着したからこそ生じた余裕みたいなものも感じられました。

一方リリックですが、社会派な活動の目立つここ最近の彼ですが、本作に収録されている曲に関してはさほど社会派な歌詞は多くありません。ただそんな中で非常に印象に残るのが「東京を戦場に」。「もっと戦争を身近なものに」と綴って、逆に反戦を訴えるというロジックがとてもユニークな内容。この曲自体はイラク戦争に対して歌われたそうですが、今でも通じるメッセージとなっています。

またラストに収録されている「ECDECADE」はECDの心境を綴ったリリック。といっても2010年にリリースされたアルバム「Ten Years After」に収録されているナンバーなのですが、これから先を見つめるようなメッセージが込められた楽曲をあえてこのベスト盤のラストに収録するあたり、彼にしてみればこれが決して最後のベスト盤ではなく、これからも活動を続けたい・・・という意思だったのかもしれません。

あらためてベスト盤を聴くと、偉大な才能のあまりにも早い終焉をあらためて残念に思いました。過去の作品を「化石」と呼ぶ彼だからこそ、まだまだ新たな傑作を産み続けられたと思うだけに・・・。改めてご冥福をお祈り申し上げます。

評価:★★★★★

ECD 過去の作品
Three wise monkeys


ほかに聴いたアルバム

陽だまり/ズクナシmeets三宅伸治

ボーカル衣美の産休のため活動休止だったズクナシが活動を再開。その再開直後にリリースされたのがブルースギタリスト三宅伸治プロデュースによる9曲入りのミニアルバム。ゲストになんと山崎まさよしも参加しているという豪華な内容になっています。

楽曲的には1曲目の「めぐる」からいきなりレゲエ調のリズムになっていたり、「ミラーボール・ベイベー」はディスコチューンとなっていたり、活動休止明け一発目からいきなり挑戦的というか、バラエティー富んだ作品になっています。ある意味ご挨拶がわりにズクナシの広い音楽性を発揮したアルバムといった印象。すでにライブを中心に積極的な活動を行っており、今度の彼女たちの活躍からも目が離せなさそうです。

評価:★★★★

ズクナシ 過去の作品
ただいま
粗品
サンキュー

super boy! super girl!!/the peggies

最近、数多くのガールズバンドが活躍し人気を集めていますが、彼女たちもそんな現在注目を集めているガールズバンドの一組。そして本作はメジャーデビュー作となる6曲入りのミニアルバム。メロディーはポップでそれなりにインパクトも。基本路線は典型的なオルタナ系ギターロックバンドといった印象。ただ良くも悪くも典型的なJ-POP路線といった感じで、おもしろいなと感じる要素は少なかったかも。最後に収録された「I 御中~文房具屋さんにあった試し書きだけで歌をつくってみました。~」はおもしろいと思いましたが。良くも悪くもこれからのグループといった印象を受けました。

評価:★★★★

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018年2月23日 (金)

ブルースのレジェンド 最盛期のライブ盤

Title:At Onkel Po's Carnegie Hall-Hamburg 1976
Musician:JOHNNY 'GUITAR' WATSON

まだまだ続いています。2017年ベストアルバムのうち、まだ聴いていなかったアルバムを聴くシリーズ。今回は「BLUES&SOUL MAGAZINE」誌のリイシュー/発掘音源部門で1位を獲得したアルバムです。

本作はタイトル通り、1976年、ドイツ・ハンブルグの「Onkel Po's Carnegie Hall」で行われたライブ音源を収録した発掘音源。このクラブでのライブ音源はいろいろなミュージシャンのバージョンがリリースされているようですが、本作はその一環となるようです。

JOHNNY 'GUITAR' WATSONは1935年アメリカに生まれたブルースミュージシャン。テキサスブルースの流れを組みつつ、楽器的にはシンセを取り入れたり、あるいは音楽的にはファンクの要素を取り入れたりと、旧来のブルースのスタイルにこだわらないスタイルを貫いた点が大きな特徴となっています。

本作でも「I Don't Want To Be A Lone Ranger」ではエフェクトをきかせまくったギターをかき鳴らした後、ファンキーなホーンセッションを入れてくるなど陽気な演奏を聴かせたり、ブルースのスタンダードナンバー「Stromy Monday」でもエレピを取り入れて、よりジャジーにムーディーにその演奏を聴かせてくれます。

基本的にその後の「Superman Lover」「Ain't That A Bitch」などホーンセッションやエレピの音を入れつつ、ファンキーなサウンドを聴かせるスタイルの曲が多く、一般的なブルースというイメージよりも、ファンクのイメージが強いサウンドを聴かせてくれます。

特に1976年というとJOHNNY 'GUITAR' WATSONの作品の中で名盤の誉れ高い「Ain't That A Bitch'」がリリースされた年。彼も御年41歳という脂ののった頃となっており、それだけにライブに関しても迫力満点。ホーンセッションを従えてファンキーなサウンドで会場を盛り上げたかと思えば、「Cuttin In'」ではブルージーなギターと感情たっぷりに歌い上げるソウルフルなボーカルを聴かせてくれます。

ライブのクライマックスであり個人的にも非常にカッコよさを感じたのが「I Need It」。15分にも及ぶ長尺で聴かせるのですが、中盤のジャムセッションが非常にカッコよく、バックで同じキープで演奏するギターやドラムの音も実にグルーヴィー。バンドとしての底力を感じます。

ちなみにJOHNNY 'GUITAR'' WATSONといえば1996年、来日中の横浜でのライブの最中に突然倒れ、そのまま帰らぬ人となったという、日本人にとっても思いを感じるミュージシャン。実は私、彼の音源を聴くのはこれがはじめてなのですが、そのファンキーで時には楽しく、時には聴かせる演奏に一気に魅せられました。

脂ののった時期の彼のライブの魅力がはっきりと伝わってくるライブ盤。この時期のライブ、見たかったな、と感じてしまった作品でした。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Mind Gone/Lacee

本作は「BLUES&SOUL RECORDS」誌年間ベストアルバム4位となった女性ソウルシンガーの新作。黒人地区の小さなライブハウス中心に活動しているインディー系のミュージシャンだそうです。以前、ここでも何作か紹介していますが、基本的な路線はそれらの作品と変わらず。昔ながらのソウルミュージックで楽曲的には目新しさはないものの、非常に表現力と包容力のある彼女のボーカルに惹かれるアルバムになっていました。

評価:★★★★

Lacee 過去の作品
Soulful
Beautiful

4EVER/PRINCE

2016年、57歳という若さで急逝したアメリカを代表するシンガーソングライターPRINCEの、逝去後にリリースされた2枚組のベストアルバム。いかにも逝去後に企画されたようなベスト盤ですが、彼の代表曲が網羅され、あらためて彼の魅力を再認識できるベスト盤。時代によって音の雰囲気はかなり変化するものの、根本に流れるファンキーなリズム感と高いポピュラリティーは時代を通じて不変で、彼の才能を強く感じられるベスト盤でした。

評価:★★★★★

PRINCE 過去の作品
PLANET EARTH

ART OFFICIAL AGE
PLECTRUMELECTRUM

HITnRUN Phase One
HITnRUN Phase Two

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018年2月22日 (木)

アルバムチャートもジャニーズ系

今週のアルバムチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/ja/

今週はジャニーズ系が1位獲得。

今週1位はジャニーズ系アイドルグループSexy Zone「XYZ=repainting」が初登場で獲得です。オリジナルアルバムとしては約2年ぶりとなる新作。初動売上は13万4千枚。直近はベストアルバム「Sexy Zone 5th Anniversary Best」でこちらの初動15万1千枚(1位)よりはダウン。一方、オリジナルとして前作の「Welcome to Sexy Zone」の11万1千枚(1位)よりはアップしています。

2位初登場はmiracle2 from ミラクルちゅーんず!「MIRACLE☆BEST- Complete miracle2 Songs-」。テレビ東京系で放送されている少女向け特撮ドラマ「アイドル×戦士 ミラクルちゅーんず!」で使われた曲を収録したアルバムだそうです。初動売上2万4千枚でいきなりのべすと3いり。

3位にはガールズバンドSCANDAL「HONEY」が初登場。初動売上は2万2千枚。直近作はベスト盤の「SCANDAL」でそちらの初動3万1千枚(2位)よりダウン。また直近のオリジナルアルバム「YELLOW」の2万9千枚(2位)よりもダウンしています。

続いて4位以下の初登場盤です。まず5位に凛として時雨「#5」がランクイン。タイトル通り5作目・・・と言いたいところですが、フルアルバムとしては6作目。ただし、タイトル通りに5位ランクインです。初動売上は1万1千枚。前作「es or s」(5位)から横バイ。

7位には「グレイテスト・ショーマン(サウンドトラック)」がベスト50圏外から一気にランクアップし、ベスト10入りを果たしました。本作は19世紀のアメリカに実在した興行師P・T・バーナムの半生を描いたミュージカル映画のサントラ盤。ミュージカル映画といえば昨年「ラ・ラ・ランド」が話題となりサントラ盤もヒットを記録しましたが、それに続くヒットになりそうです。サントラ盤は1月17日にリリースされていましたが、2月16日より日本でも映画公開になり、それにあわせてサントラ盤が一気に売上を伸ばしました。

8位にはTUBEのボーカリスト前田亘輝によるソロアルバム「My Legends I」がランクイン。ソロとしては2007年リリースのベストアルバム「Single Collection +」から約10年半ぶりとなる作品。オリジナルとしては1997年の「HARD PRESSED」以来、実に20年3ヶ月ぶり(!)となるアルバムとなります。初動売上は8千枚。「Single Collection+」の3万3千枚(8位)より大幅ダウン。「HARD PRESSED」の6万1千枚(8位)からも大幅にダウン・・・といずれも同じ順位なのですが、CDの売上に関しては本当に隔世の感があります・・・。

9位初登場はガールズバンドBAND-MAID「WORLD DOMINATION」。初動売上7千枚。前作「Just Bring It」の4千枚(16位)よりアップし、2015年リリースの「New Beginning」以来3作ぶり2作目のベスト10ヒットとなります。

最後は10位に女性アイドルグループpredia「ファビュラス」がランクイン。初動売上は7千枚。前作「白夜のヴィオラにいだかれて」の5千枚(16位)よりアップ。シングルでは何度かベスト10入りを果たしているものの、アルバムではこれが初となるベスト10ヒットとなりました。

今週の初登場盤は以上。さて、一方で今週はロングヒットも。昨年11月からずっとヒットを続けている安室奈美恵「Finally」。さすがにベスト3には顔を出さなくなったものの、今週も1万4千枚を売り上げ、4位にランクイン。累計売上枚数も212万枚に達しており、昨年のSMAPのベスト盤以来の大ヒットとなっています。まだまだロングヒットは続きそうです。

今週のアルバムチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018年2月21日 (水)

今週はジャニーズ系

今週のHot 100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

まず今週の1位はジャニーズ系。Hey!Say!JUMP「マエヲムケ」がランクイン。メンバーの山田涼介主演の日テレ系ドラマ「もみ消して冬」主題歌。CD販売・ダウンロード・ストリーミング数(以下「実売数」)は2位に留まり、ラジオオンエア数34位、Twitterつぶやき数9位だったもののPCによるCD売上数1位を獲得し、1位を獲得しました。ちなみにオリコンでも初動24万4千枚で1位を獲得。前作「White Love」の28万7千枚(1位)からダウンしています。

2位は米津玄師「Lemon」が初登場で獲得。TBS金曜ドラマ「アンナチュラル」主題歌。3月14日リリース予定のシングルの先行配信です。実売数で1位を獲得したほか、ラジオオンエア数で8位、Twitterつぶやき数で5位を獲得。これって、Hey!Say!JUMPの「マエヲムケ」に比べるといずれも高い順位なんですよね。配信オンリーなので当然、PCによるCD読取数は圏外なわけで、結果、こちらが2位なんですが、それじゃあ「PCによるCD読取数」のチャートで絶対ランクインできない配信リリースが必然的に不利になっちゃうよなぁ。以前から薄々感じてたんですが、こういう点、ビルボードチャートももうちょっと工夫してほしいのですが・・・。

3位はST☆RISH「ウルトラブラスト」が初登場でランクイン。女性向け恋愛アドベンチャーゲーム「うたの☆プリンスさまっ♪」に登場するアイドルグループで、本作は
「劇場版 うたの☆プリンスさまっ♪ マジLOVEキングダム」に使用される楽曲だそうです。実売数3位、PCによるCD読取数2位、Twitterつぶやき数では1位を獲得。オリコンでは初動売上11万4千枚で2位初登場。前作「マジLOVEレジェンドスター」の1万9千枚(7位)から大幅アップしています。

続いて4位以下の初登場曲です。まず5位に東海地方を中心に活動する男性ローカルアイドルグループMAG!C☆PRINCE「Best My Friend」が初登場でランクイン。実売数4位のほか、Twitterつぶやき数78位という結果に。ちなみにオリコンでは初動売上9万2千枚で3位初登場。前作「YUME no MELODY」の6万2千枚(2位)からアップしています。

6位にはロックバンドONE OK ROCK「Change」が初登場でランクイン。配信限定のシングル。実売数5位のほか、ラジオオンエア数99位、Twitterつぶやき数41位を記録。洋楽テイストの強いロックチューンとしてラジオオンエア数の順位が少々低めのような・・・。

7位初登場はテレビアニメ「マクロスΔ」から登場した音楽ユニットワルキューレ「ワルキューレは裏切らない」がランクイン。実売数7位、PCによるCD読取数4位、Twitterつぶやき数17位を記録。オリコンでは初動売上1万8千枚で7位初登場。前作「絶対零度θノヴァティック」の2万5千枚(6位)よりダウン。

最後10位には絢香&三浦大知「ハートアップ」がランクイン。実売数は14位ながらもラジオオンエア数5位、PCによるCD読取数では10位を獲得し、見事ベスト10入りです。ちなみに作詞作曲は絢香が担当していますが、プロデューサーは小林武史。なのでギターの使い方がなんとなくミスチルっぽい雰囲気がします。オリコンでは初動売上5千枚で23位にとどまっており、配信での売上が先行した模様。ちなみに絢香の前作「コトノハ」の3千枚(25位)からは若干のアップ。三浦大知の前作「U」の1万2千枚(8位)からは大幅にダウン。あまり三浦大知側にはメリットがなかったようです。

ちなみに先週9位に返り咲いたDAOKO×米津玄師「打上花火」は残念ながら一気に25位までダウン。You Tube再生回数も12位までダウンしており、さすがにロングヒットは終わりをつげた模様です。

今週のHot100は以上。明日はアルバムチャート!

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018年2月20日 (火)

ミュージシャンとしての勢いを感じる

Title:BOOTLEG
Musician:米津玄師

米津玄師はおそらく、今、最も勢いがあるミュージシャンの一組といっていいでしょう。daokoと組んだ「打上花火」はロングヒットを記録し(本作でもセルフカバーが収録されています)、また本作に収録されている「灰色と青」では人気俳優菅田将暉とタッグを組むなど大きな話題となっています。

そんな中でリリースされた本作は前作「Bremen」に引き続き初登場でチャート1位を記録。その人気のほどを見せつける結果となりました。そんな彼の最新作ですが、まず中身的には前作「Bremen」同様、良い意味でかなり整理されたアルバムになっているように感じます。要するにデビュー当初の彼の良くも悪くも特徴だった詰め込まれたサウンドや早口ゆえに少々わかりにくかった歌詞が整理され、聴いていて素直に耳に入ってくる歌に仕上げていました。良い意味で「マス」に向き合ったアルバムともいえる作品で、それゆえに大きなヒットを飛ばしているのも納得です。

楽曲的には基本的にギターロック志向の強いポップスといった感じなのですが、雑食性志向が強いのが相変わらず特徴的。「飛燕」のようにエスニックな雰囲気の哀愁感ただよう楽曲になっていますし、「ピースサイン」はまさに王道ともいえるようなオルタナ系のギターロック。初音ミクを使い、彼のボカロP時代の名称「ハチ」名義でリリースしたことでも話題となった「砂の惑星」はピアノと強いビートでちょっとアバンギャルドテイストのサウンドが耳に残りますし、「Moonlight」はちょっと歌謡曲的なテイストに、最近のSuchmosあたりの雰囲気を感じるジャジーなテイストも加えています。

そのほかにもエレクトロサウンドを取り入れた「ナンバーナイン」やちょっと幻想的でファンタジックな歌詞と分厚いサウンドが、初音ミクに歌わせてもピッタリと来るんじゃないか?とも感じてしまう「爱丽丝」など、とにかく雑多な音楽性も大きな特徴。この雑食性が若干彼の音楽的な方向性をぼやかしてしまっている部分も否定できないものの、一方では良い意味でのこだわりのなさが彼の音楽性を大きく広げており、アルバムも次にどんな展開が来るのか、ワクワクしながら聴き進めることが出来るなど、米津玄師にとっての大きな魅力になっている点も間違いありません。

歌詞の世界観についてもある意味バリエーションがあり、今回は「orion」「春雷」のような、ある種の情熱性を感じるようなラブソングも目立ったような印象も受けます。また今回のアルバムでも印象に残ったのは、社会の中で疎外されたような人たちの声を綴ったような歌詞。「アイムアルーザー」と歌う「LOSER」などは完全に典型的ですし、自らを怪獣と設定して歌う「かいじゅうのマーチ」など、その悲しい歌詞に涙腺が緩みます。

またアニメの主題歌にもなっている「ピースサイン」はいい意味でわかりやすく、盛り上がりのある歌詞が強く印象に残りますし、ある意味ベタな盛り上がりを見せるメロディーとともなってアニメソングとしても非常に映えるだろうなぁ、という印象を受けます。このサビなどの盛り上がるポイントにしっかりとフックの効いた歌詞を載せてくるテクニックは、作品を追うごとにどんどん進化しているように感じます。

まさに人気の上昇と比例するように楽曲的な勢いも増しており、さらにミュージシャンとしてのまだまだ成長を続けていることを強く感じる傑作アルバムになっていました。彼が今、もっとも注目を集めているということも納得が出来るアルバム。まだまだその勢いは止まらなさそうです。

評価:★★★★★

米津玄師 過去の作品
diorama
YANKEE
Bremen


ほかに聴いたアルバム

juice/Little Glee Monster

昨年末は紅白歌合戦にも出演し知名度をあげた「歌の上手さ」を売りにしたガールズグループの3枚目のアルバム。本作も基本的には前作と同様、安定した歌唱力で歌われる伸びやかな歌声が心地よいアルバム。ただやはり前作同様、表現力という点では厳しい部分も多く、そういう意味では今後のボーカリストとしての経験が待たれるところ。良い意味ではまだまだ今後の成長が期待できるグループ、ということも言えるかと。

評価:★★★★

Little Glee Monster 過去の作品
Joyful Monster

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018年2月19日 (月)

新レーベルからの新たな一歩

Title:ハレルヤ
Musician:川村結花

川村結花といえば、おそらく一般的にはあのSMAPの名曲「夜空ノムコウ」の作曲を手掛けた人、ということで知っている方も多いのではないでしょうか。ほかにもFUNKY MONKEY BABYSの「あとひとつ」を手掛けたりしており、主に職業作家としての活躍がメインとなっています。

ただ彼女自身もシンガーソングライターとしても活動しており、数多くのアルバムもリリース。そんな彼女がリリースした新作はDr.kyOnと佐橋佳幸によるユニットDarjeelingが設立したレーベル、GEAEG RECORDSの第1弾アルバム。そのDarjeelingがプロデュースも手掛けており、彼女にとってもレコード会社移籍後初となる新たな一歩のアルバムとなっています。

全8曲入りとなった今回のアルバムで、まず個人的に心に響いてきたのが1曲目の「カワムラ鉄工所」。彼女の祖父が実際に経営していた鉄工所だそうで、祖父との思い出を歌ったナンバー。個人的なことになりますが、私も同じく自営をしていた祖母を昨年、亡くしており、そういう意味では自分にとっても非常に胸うつものがあった楽曲で、アルバムの中でも特に印象に残りました。

この「カワムラ鉄工所」もそうですが、楽曲は基本的に彼女のピアノを中心に据えたアコースティックなシンプルな演奏がメインで、彼女の歌をしっかりと聴かせるような構成になっています。

楽曲的にはジャジーな雰囲気の「夜の調べ」「猫の耳たぶ」、ムーディーなジャズの「ロウソクの灯が消えるまで」にビックバンド風の「その先は?」、ソウル風の「かたづけちゃんとしよう」など、ブラックミュージックベースの楽曲がメイン。ただ一方ではフォーキーな「乾杯のうた」や郷愁感あふれる和のテイストを感じる「愛だけしかない景色」なども並び、わずか8曲、ピアノが入ったアコースティックな編成という制約がありながらもバラエティーに富んだポップスを聴かせてくれます。

また歌詞で取り上げているテーマも、タイトル通り、汚れた部屋についてなげいている「かたづけちゃんとしよう」や、猫の耳について歌った「猫の耳たぶ」など身の回りについて歌った歌詞がメイン。一方では「その先は?」のような前向き応援歌的なメッセージソングもあったりして、いい意味で職業作家として活躍している彼女らしい安定感ある歌詞のテーマ性も魅力的でした。

メロディーラインについては自らが歌う曲でかつアルバム曲ということもあるのでしょうか、あまり派手でキャッチーなサビを持ったような曲はありません。ただ、シンプルなメロディーラインながらもしっかりと心に残るようなフレーズは要所要所に聴くことが出来、こちらも彼女の実力が光ります。

全体的には決して派手さはないものの、彼女の実力がしっかりと発揮された良質なポップアルバムだったと思います。職業作家としては十分ヒットを飛ばしている彼女ですが、次はやはりシンガーソングライターとしてももっと売れてほしいなぁ。それだけの実力は持っているシンガーということがはっきりと感じることが出来るアルバムです。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

PAUSE~STRAIGHTENER Tribute Album~

結成20周年、メジャーデビュー15周年を迎えるストレイテナー。本作はそんな彼らの代表曲を彼らの同世代のバンドや彼らに影響を受けたバンドがカバーしたトリビュートアルバム。参加メンバーはなかなか豪華でMONOEYESやback number、ACIDMANに9mm Parabellum Bullet、アジカンにthe pillowsと、今の日本のオルタナ系ギターロックバンドの代表格がズラリ。さらにどのバンドもバンドとしての個性を発揮している点が素晴らしいところ。最後はストレイテナー自ら「SAD AND BEAUTIFUL WORLD」を披露していますが、ピアノから静かに入りつつ途中からバンドサウンドへとダイナミックに展開する構成に耳を惹かれるロックチューンになっており、彼らの魅力がきちんと伝わるナンバーになっています。ストレイテナーファンはもちろん、参加ミュージシャンのファンならチェックして損はない1枚です。

評価:★★★★★

Heart of Gold/SING LIKE TALKING

途中ベスト盤のリリースはあったものの、なんと4年7ヶ月ぶりという久々となったSING LIKE TALKINGのニューアルバム。今回はその間にリリースされたシングル曲などを中心とした構成になっており、ストリングスやピアノ、ホーンセッションなどを入れつつ、SLTらしい爽やかなメロディーラインを美しい佐藤竹善の歌声にのせて聴かせるいつものスタイルなのですが、いつも以上に聴きやすい、またSLTらしい曲が並んだ展開になっています。目新しさはないのですが、SLTが好きなら安心して聴けるアルバム。久々のオリジナルとしてはファンとしては納得感ある出来だったのではないでしょうか。

評価:★★★★

SING LIKE TALKING 過去の作品
Empowerment
Befriend
Anthology

| | コメント (7) | トラックバック (0)

2018年2月18日 (日)

バンドとしてグッと進化

Title:・・・
Musician:SAKANAMON

今年はインディーズデビュー10周年を迎えるSAKANAMON。昨年5月より活動の舞台を再びインディーズに移した彼らですが、本作はインディー移籍後初となるフルアルバム。奇妙なタイトルは「テンテンテン」と読むそうです。

そんな彼らの最新作ですが、まず感じたのはバンドとしての基礎体力がグッと高まったという点でした。まずアルバムはいきなり「ロックバンド」という彼らの方向性を定めるような曲からスタート。この曲は比較的シンプルなオルタナ系ギターロックなのですが、続く「STOPPER STEPPER」は軽快でシティポップ色も強いダンスチューン。さらに続く「乙女のKANJOU」はエッジの効いたバンドサウンドがカッコいいロックチューン。どこかNUMBER GIRLすら彷彿とさせる勢いあるサウンドが耳を惹きます。

その後も「凡庸リアライズ」のようなオルタナ系ギターロック路線から「DAVID」のようなシティポップ、さらにラストの「DAPPI」のようなシンセを入れたダンスチューンなど楽曲のバリエーションはいままでに比べて増えた印象。バンドサウンドにしてもいままで以上に迫力ある聴かせるナンバーが増えた印象がありますし、メロディーにもインパクトが増してきました。いままでのアルバムでも様々なバリエーションの曲に挑戦してきましたが、どこかチグハグだった感が否めなかったのは事実。ただ今回のアルバムではそんなチグハグ感がなくなり、しっかりと彼らの血となり肉となってきたように感じます。

ただ一方、今回のアルバムでちょっと物足りなさを感じたのが歌詞。彼らのいままでの作品の大きな売りが歌詞でした。今回のアルバムでも確かに印象的な歌詞を聴かせてくれる曲も少なくありません。タイトル通り、ケーキ屋の女の子に密かな思いをよせる「ケーキ売りの女の子」の

「僕等はね 売れ残りのケーキさ
訳有りの品」

(「ケーキ売りの女の子」より 作詞 藤森元生)

なんて歌詞はいかにもSAKANAMONらしいといった感じでしょうか。

ただこういう社会の中で孤独に生きる人たちを歌ったような曲が残念ながら非常に少なくなりました。同じく歌詞が心に残る「テヲフル」にしてもストレートなラブソングですし、女性の感情をチンチロリンの目に例えば「乙女のKANJOU」も歌詞がユニークだけれども、別に孤独な男性は登場しません。さらには「SYULOVER」に至っては一人の男性を2人の女性が取り合うという「修羅場」な歌詞。2人の女性ボーカルを入れてユニークな内容だけども、いままでのSAKANAMONのイメージからはかけ離れたようなタイプの曲となっています。

歌詞に関しては正直言って残念だったなぁ、というのが感想となってしまいます。フルアルバムとしての前作「HOT ATE」も同じようにサウンドやメロが良くなったのに歌詞が後退してしまった、といった印象を受けたのですが、今回の作品は、さらにサウンドやメロがグッと成長し進化したのに対して、歌詞は同じくさらに後退してしまったと感じたアルバムでした。

ただトータルとしてみるとメロディーやサウンドの成長が歌詞を十分上回り、バンドとしてのこれからに期待が持てる作品になっていたと思います。期待値込みの評価にはなるのですが、バンドとしての基礎体力が増した傑作アルバムということで。

評価:★★★★★

SAKANAMON 過去の作品
ARIKANASHIKA
あくたもくた
HOT ATE
OTSUMAMIX


ほかに聴いたアルバム

明日色ワールドエンド/まふまふ

「ニコニコ動画」での活動で人気を集めた男性シンガーソングライターのメジャーデビュー作。オリコンチャートでいきなり初登場2位を獲得し、その人気のほどを見せつけました。楽曲はハイトーンボイスによるハイテンポなナンバーがメイン。バンドサウンドにシンセも用いて音を詰め込んだタイプの楽曲。メロも歌詞もサウンドも情報過多といった感じなのは、いかにも今時のシンガーらしい印象。J-POP的なフックの効いたメロディーやダイナミックな楽曲構成などインパクトはこれでもかといったほど十分な感じ。ポップな内容がそれなりに楽しめるものの、正直、聴いているうちに疲れてきてしまいました・・・。

評価:★★★

Soft Landing/矢野顕子

矢野顕子の新作は約7年ぶりとなる全編ピアノ弾き語りによるアルバム。ピアノのみのアルバムといってもタイトル通りの野球への愛情をうたったコミカルで明るい「野球が好きだ」に郷愁感ある「汽車に乗って」、ジャジーな「Wives and Lovers」に歌謡曲テイストの「六本木で会いましょう」などバラエティー豊富に聴かせるスタイルはさすが。シンガーソングライターとしてもボーカリストとしても底力を感じるアルバムになっています。ただ、1曲目を飾るPUFFYのカバー(作詞作曲はフジファブリックの志村正彦)「Bye Bye」は、ピアノ一本で感情込めて歌っているのですが、これはPUFFYのような平坦な歌い方のほうがよかったな。このカバーはちょっと残念でした。

評価:★★★★★

矢野顕子 過去の作品
akiko
音楽堂
荒野の呼び声-東京録音-
Get Together~LIVE IN TOKYO~(矢野顕子×上原ひろみ)
矢野顕子、忌野清志郎を歌う
飛ばしていくよ
JAPANESE GIRL - Piano Solo Live 2008 -
さとがえるコンサート(矢野顕子+ TIN PAN)
Welcome to Jupiter
矢野顕子+TIN PAN PARTⅡ さとがえるコンサート
(矢野顕子+ TIN PAN)
矢野山脈

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018年2月17日 (土)

人気上昇中の「ヤバイ」彼ら

Title:Galaxy of the Tank-top
Musician:ヤバイTシャツ屋さん

ご存知、現在人気上昇中で最も注目を集めているロックバンド、ヤバイTシャツ屋さん。適度にハードコアだったりメロコアだったりのヘヴィーなバンドサウンドと、ポップなメロディーライン、そしてどこか人を食ったようなユニークな歌詞が大きな注目を集めています。

本作も前作「We love Tank-top」から初動売上を倍増させてオリコン初登場4位に飛び込んでくるなど大ヒットを記録。「Tシャツ屋さん」と名乗りながらアルバムタイトルがなぜかタンクトップというところも彼ららしい人を食ったような部分といえるでしょうか。

楽曲のスタイルも基本的に前作と同様。メロコアを軸にしつつデス声を入れてハードコアなテイストを加えたようなバンドサウンド。今回のアルバムでも1曲目「Tank-top in your heart」でいきなりデス声が登場しハードコア路線からスタートしています。ほかに「眠いオブザイヤー受賞」ではラップを取り入れたり、ちょっとシティポップ路線のギターを聴かせたり、ラストの「肩 have a good day」はピアノとストリングスを入れた、J-POPによくありがちなベタなバラードになったり。楽曲的なバリエーションはありますが、彼らの場合、そのバリエーションも一種の「ネタ」にしているような印象もあります。

前作に比べると、よりメロディアスパンク、あるいはメロコアの路線の曲が目立ったような印象を受ける今回のアルバム。ただ、肝心のメロコア路線にしても「メロコアバンドのアルバムの3曲目ぐらいによく収録されている感じの曲」なんて曲で、いかにもメロコア調の曲にメロコアバンドの「あるある」を織り交ぜたような歌詞をうたっており、ある意味、徹底して茶化した感じの曲が多く感じます。

ユニークな歌詞といえば「ヤバみ」みたいに最初、英語詞で洋楽テイストの強い楽曲からスタートしたかと思えば「いっぱい英語で歌ってみたけどあんまり意味ないよ」なんて風に締めくくってみたり、パソコンのUSBについて単なるうたっただけの「Universal Serial Bus」なんて曲があったり、この歌詞のユニークさを耳で追っているだけでも楽しめるアルバムになっています。

また良くも悪くも今どきの若者かつある種の大学サークルノリ的な部分があるのも彼ららしいところで、そんなサークルノリ的な代表格が「ハッピーウェディング前ソング」。「キッスキッスキッスキッス」と盛り上げたり「ノリで入籍してみたらええやん」とかなり無責任なことを言ってみたりするのもいかにも学生ノリ。ただ、このある種の若々しさも勢いとなって彼らの大きな魅力になっているようにも感じます。

ここらへんの人を食ったような歌詞、メタ視点的な歌詞は好き嫌いがありそうで、個人的にも本来、あまり好みの方向性ではないのですが、彼らの場合はそこをユーモラスとノリでカバーしており、嫌みにならないほどほどのバランスでキープしているように感じました。前作ではもっと内輪ノリ、学生ノリ的な曲が多かったのですが、いかにも内輪的な曲がぐっと減ったのも彼らなりの成長でしょうか。まだまだ若手バンドの彼ら、これからいろいろな方向性も見せてくれるかもしれません。

前作でも感じたのですが、この手のメロコア、パンク系バンドの中では間違いなく頭ひとつふたつ抜けている彼ら。まだまだ人気は伸びてきそうな予感も。個人的には前作より本作のほうがより楽しめる傑作アルバムだったと思います。これからの活躍も楽しみです。

評価:★★★★★

ヤバイTシャツ屋さん 過去の作品
We love Tank-top


ほかに聴いたアルバム

Human Bloom Tour 2017/RADWIPS

RADWIMPS初となるライブアルバム。昨年4月30日に行われた「さいたまスーパーアリーナ」の模様を中心に収録したライブアルバム。MCも収録されており(ただ、若干「う~ん」という発言もあるけど)、ライブ会場の雰囲気がそのまま伝わる内容に。ライブ演奏に関しては可もなく不可もなくといった感じか。「前前前世」を含む「君の名は。」で使われた曲も収録されていますし、ベスト盤感覚でも楽しめるアルバムです。

評価:★★★★

RADWIMPS 過去の作品
アルトコロニーの定理
絶対絶命
×と○と罰と
ME SO SHE LOOSE(味噌汁's)
君の名は。
人間開花

Popcorn Ballads(完全版)/サニーデイ・サービス

昨年6月、突如、ストリーミングサイトでのみリリースされたアルバム「Popcorn Ballads」。この画期的なリリース方法も話題になりましたが、今回はそのストリーミングによる作品にさらなる手を加え、さらに新曲を加えてCD/LPで「完全版」としてリリースしてきました。基本的に様々なタイプの曲が並んでいたストリーミング版に比べると、曲順が整理されアルバムとして流れを感じさせる構成に。また今回新曲も加わったのですが、これもアルバムの中でピッタリマッチする、メロディアスなポップチューンをしっかりと聴かせてくれます。ストリーミングでまずリリースし、さらにそれをブラッシュアップし再度リリースというスタイルはおもしろいですね。今後、同じような手法を使うミュージシャンが増える・・・かな?

評価:★★★★★

サニーデイ・サービス 過去の作品
本日は晴天なり
サニーディ・サービス BEST 1995-2000
Sunny
DANCE TO YOU
桜 super love

Popcorn Ballads

| | コメント (1) | トラックバック (0)

2018年2月16日 (金)

バンド初期から変わらぬスタイル

Title:delaidback
Musician:Syrup16g

2014年に再結成した後、積極的な活動が続くSyrup16g。本作はそんな彼らのちょうど1年ぶりとなるニューアルバムです。ただ今回のアルバム、純然たるニューアルバムではありません。本作は過去の未発表音源を集めた作品。過去のライブで披露されてそのままだった曲やボーカルの五十嵐隆がSyrup16g解散中に結成し、結局音源をリリースすることなく解散してしまったバンド「犬が吠える」時代に発表された曲も収録されています。

例えば1曲目「光のような」は分厚くノイジーなバンドサウンドをバックに五十嵐隆が歌い上げる、いかにもSyrup16gらしい曲なのですが、本作は「犬が吠える」で披露された曲。同じく「赤いカラス」も「犬が吠える」で発表されたナンバー。非常に切ないメロディーラインが印象的な楽曲で、諦念的な歌詞もSyrup16gらしく心の響きます。そんな中、「夢、夢、夢~!」というシャウトが、なんとか希望をつかみとろうとする姿を感じ、これもまた彼ららしいといった感じでしょうか。

また一方「夢みたい」「開けられずじまいの心の窓から」は1997年頃から披露されているナンバーだそうで、1997年というとSyrup16gがインディーズデビューする前という最初期の頃。確かにメロディーラインなどに垢抜けなさは感じるのですが、歌詞含めて既にSyrup16gらしさは確立されています。

ほかにもガレージロック的なノイジーなギターサウンドが耳に残る「冴えないコード」や軽快なリズムやちょっと明るめなメロディーラインながら「一生こんなのは不安です」というくら~いフレーズが印象に残る「ヒーローショー」、同じくアップテンポで明るめのメロながらも4月=春というイメージとは裏腹な鬱な歌詞が印象に残る「4月のシャイボーイ」などSyrup16gの魅力がふあれるナンバーが並びます。

さて今回未発表曲集なのですが、そんな作品にも関わらずアルバム全体に統一感がある点も非常に興味深く感じます。例えばアルバムの構成についても1曲目は「光のような」からスタート。一方ラストは「光なき窓」で締めくくり。1曲目と最後が呼応するような構成になっています。

ちなみに「光のような」は

「光のような 儚いような
命がいま はじまるよ」

(「光のような」より 作詞 五十嵐隆)

と希望を感じるような歌詞で締めくくられているのに対して、「光なき窓」は

「もう満ち足りた日々は遠くて
真っ直ぐに鏡も見れなくて
光なき窓」

(「光なき窓」より 作詞 五十嵐隆)

非常に暗い締めくくりとなっておりこれも対照的。あえて暗い幕切れを最後に持ってくるのも彼ららしいのですが、「光なき窓」でも「そばにいてくれ そばにいてくれ」とその向こうになにかをつかみとろうとするもがきのようなものを感じ、心に響く歌詞になっています。

今回のアルバム、未発表曲集、さらに曲によってはインディーズデビュー前の曲があるにも関わらず統一感があるというのはそれだけ初期から彼らがバンドとしてのスタイルを確立していたということにほかなりません。確かに彼らの曲はデビュー当初から今に至るまでサウンド的にも歌詞的にも大きな変化はありまえんし、彼らのスタイルは最初期に完成されていたということをあらためて実感させられるアルバムと言えるのかもしれません。

「犬が吠える」時代の楽曲を含めて全体的に非常にSyrup16gらしさを感じることが出来たアルバム。デビュー以前から彼らが実に才能あふれるバンドであった事実が再確認できた1枚でした。

評価:★★★★★

Syrup16g 過去の作品
Syrup16g
Hurt
Kranke
darc


ほかに聴いたアルバム

ACID TEKNO DISKO BEATz/石野卓球

ソロとして約1年半ぶりとなる新作。ソロとしては比較的短いインターバルとなるアルバムなのですが、前作の時に「100作くらいつくってその中でピックアップした」と語っていましたので、曲のストックはたまっているのでしょう。前作「LUNATIQUE」と比べるとあまりにもそのままなタイトルなのですが、楽曲的にもかなり肩の力が抜けていて、リリース前提というよりも、好き勝手につくったら出来ちゃいました、といった雰囲気の彼らしいリズミカルなテクノが並んでいます。楽曲はいずれもポップなテイストが強く、どこかユーモラスさも感じられるのも石野卓球らしいところ。ある意味、肩の力を抜きつつもこのレベルの作品がつくれちゃうあたり、さすが・・・といった感じでしょうか。

評価:★★★★★

石野卓球 過去の作品
CRUISE
WIRE TRAX 1999-2012
LUNATIQUE
EUQITANUL

斉藤和義 弾き語りツアー2017 雨に歌えば Live at 中野サンプラザ 2017.06.21/斉藤和義

今回のせっちゃんのライブ盤は昨年行った「斉藤和義 弾き語りツアー 2017“雨に歌えば"」から6月21日の中野サンプラザ公演の模様を収録したアルバム。「弾き語り」らしいシンプルなサウンドで斉藤和義の楽曲が本来持つメロディーと歌詞の良さが味わえるライブ盤。初回版の特典CDでは7月3日のツアーファイナル、金沢・本多の森ホールの模様が収録されているのですが、こちらの方が本体より断然良い!あきらかに楽曲がライブの中で進化しており、例えば「やさしくなりたい」など印象的なイントロが中野サンプラザ公演ではいまひとつチグハグで会場も盛り上がらないのですが、金沢公演ではしっかりと決まっており、会場も大盛り上がり。むしろこちらの公演をフルでCD化すべきだったのでは?とすら思ってしまいました。

評価:★★★★

斉藤和義 過去の作品
I (LOVE) ME
歌うたい15 SINGLES BEST 1993~2007
Collection "B" 1993~2007
月が昇れば
斉藤“弾き語り”和義 ライブツアー2009≫2010 十二月 in 大阪城ホール ~月が昇れば 弾き語る~
ARE YOU READY?
45 STONES
ONE NIGHT ACOUSTIC RECORDING SESSION at NHK CR-509 Studio
斉藤
和義

Kazuyoshi Saito 20th Anniversary Live 1993-2013 “20<21" ~これからもヨロチクビ~ at 神戸ワールド記念ホール2013.8.25
KAZUYOSHI SAITO LIVE TOUR 2014"RUMBLE HORSES"Live at ZEPP TOKYO 2014.12.12
風の果てまで
KAZUYOSHI SAITO LIVE TOUR 2015-2016“風の果てまで” Live at 日本武道館 2016.5.22

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018年2月15日 (木)

20周年のアイドルが1位獲得

今週のアルバムチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/ja/

まず今週の1位は20周年を迎えるアイドルグループのアルバムが1位獲得です。

今週1位はモーニング娘。20th「二十歳のモーニング娘。」が獲得しました。今年、デビュー20周年を迎えるモーニング娘。の現在のメンバーと過去のメンバーがコラボレーションしてリリースしたミニアルバムとなります。初動売上は4万7千枚。モーニング娘。のアルバムとしては直近作の「⑮Thank you, too」の初動2万9千枚からアップしています。

アイドルグループが20周年というのは一昔前では考えられないことでしたが、モーニング娘。がメンバーの新加入&脱退というシステムを採用したことにより、ここ最近、アイドルグループの「寿命」が格段に長くなりました。ただ結果として、いつまでも昔の名前で活躍するグループが増え、シーン全体の新陳代謝が落ちたようにも感じます。個人的にはこの方法、あまり望ましいやり方とは思っていません。ただ、今後もおなじようなやり方をするグループは増えるんだろうなぁ。

2位は韓国の男性アイドルグループSEVENTEENの韓国でリリースされたアルバムの輸入盤「DIRECTOR'S CUT」が獲得。昨年11月にリリースしたアルバム「TEEN, AGE」に4曲を追加したアルバムだそうです。初動売上は2万1千枚。その前作「TEEN,AGE」の1万8千枚(5位)からアップしています。

3位はハードコアのサウンドに民族音楽の要素を取り入れた独特のサウンドで高い評価を得ているロックバンドBRAHMANの5年ぶりとなるニューアルバム「梵唄 -bonbai-」が獲得。初動売上は1万7千枚。直近はベスト盤「尽未来際」で、こちらの初動1万5千枚(2位)よりはアップ。ただし、オリジナルアルバムとしての前作「超克」の初動2万2千枚(4位)からはダウンしてしまいました。

続いて4位以下の初登場盤です。まず4位に「うたの☆プリンスさまっ♪Shining Masterpiece Show『トロワ-剣と絆の物語-』」がランクイン。女性向け恋愛アドベンチャーゲーム「うたの☆プリンスさまっ♪」から派生したドラマCD。初動売上1万6千枚。直近作は同じくドラマCD四ノ宮那月(谷山紀章) 、寿嶺二(森久保祥太郎)、聖川真斗(鈴村健一)、黒崎蘭丸 (鈴木達央) 「うたの☆プリンスさまっ♪Shining Masterpiece Show「『Lost Alice』」で、こちらの1万9千枚(5位)からはダウン。

5位も韓国のアイドルグループWINNER「OUR TWENTY FOR」がランクイン。初動売上は1万2千枚。直近作は「EXIT:E」の1千枚(63位)で、こちらからは大きくアップ。

7位には「THE IDOLM@STER MILLION LIVE! M@STER SPARKLE 06」がランクイン。こちらはゲーム「アイドルマスターミリオンライブ」に登場するキャラクターによるソロ曲を集めたアルバム。初動売上9千枚は同シリーズの前作大神環(稲川英里),宮尾美也(桐谷蝶々),百瀬莉緒(山口立花子),エミリー・スチュアート(郁原ゆう),真壁瑞希(阿部里果)「THE IDOLM@STER MILLION LIVE! M@STER SPARKLE 05」の1万枚(6位)から微減。

そして初登場組ラスト9位にはPANDORA「Blueprint」がランクインです。ご存じ、先日のシングルチャートでも紹介した小室哲哉と浅倉大介によるユニットのデビューミニアルバム。初動売上6千枚でベスト10入りです。ただ、直近にシングル「Be The One」が初動3万6千枚だったのでそれに比べると苦戦した印象が・・・。ミニアルバムとはいえたったシングル曲込みでたった4曲入りというのが微妙だったのか・・・。ご存じの通り、小室哲哉は芸能界からの引退を公表していますが、これがラストアルバム、なんてことは願いません。次は是非、フルアルバムを!

今週のアルバムチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018年2月14日 (水)

平昌五輪の中継テーマ曲が目立つチャート

今週のHot 100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

以前からロングヒットを続けていたあの曲がついに1位獲得です。

今週1位は韓国の女性アイドルグループのTWICE「Candy Pop」がベスト10入り初登場から5週目、CDリリースにあわせてついに1位獲得です。CD販売・ダウンロード・ストリーミング数(以下「実売数」)、PCによるCD読取数及びYou Tube再生回数で1位を獲得したほか、ラジオオンエア数でも4位、Twitterつぶやき数でも3位を記録。一部の固定ファンのみにヒットが波及しないことが多いK-POPの中で、ラジオオンエア数を含めたすべてのランキングで上位にランクインしてくるのは珍しいケース。TWICEに関してはK-POP勢の中で、久々に本当の意味で「ヒット」している感じがします。ちなみにオリコンでも26万5千枚で1位を獲得。前作「One More Time」の20万枚(1位)を上回るヒットとなっています。

さらに今週は、以前、ロングヒットを続けていた「TT」もベスト10返り咲き。実売数16位、Twitterつぶやき数14位ながらもYou Tube再生回数で6位を記録し、先週の16位からランクアップ。1月15日付チャート以来5週ぶりのベスト10返り咲きとなりました。

2位にはSEKAI NO OWARI「サザンカ」が先週の17位からランクアップしてベスト10入り。こちらは今開催中の平昌冬季オリンピック&パラリンピックのNHK中継テーマソング。セカオワとしては落ち着いたサウンドのバラードとなっています。2月28日のCDリリースに先立ち、先行配信でのランクイン。実売数2位、ラジオオンエア数3位、Twitterつぶやき数17位、You Tube再生回数18位を記録。しかし、CDリリースの2月28日はパラリンピックこそまだですが、オリンピックは閉幕後。完全に販売方針としてCDではなく配信に力を入れていることがわかります。

3位は俳優菅田将暉「さよならエレジー」が62位から一気にランクアップして初のベスト10入り。日テレ系ドラマ「とどめの接吻(キス)」主題歌でCDリリースは2月21日の予定。実売数12位、ラジオオンエア数は90位に留まった一方、Twitterつぶやき数は8位、You Tube再生回数は5位を記録。2月7日にミュージックビデオが公開になり、その影響が強い模様です。

続いては4位以下の初登場曲。まず4位にGReeeeN「ハロー カゲロウ」が初登場でランクイン。実売数6位、ラジオオンエア数19位、PCによるCD読取数3位、Twitterつぶやき数93位を記録。こちらはフジテレビの平昌オリンピック中継テーマソングです。ちなみにオリコンでは初動売上3千枚で14位に留まりベスト10入りならず。前作「テトテとテントテン with whiteeeen」(25位)から横バイ。ただデジタルシングルチャートでは10位にランクインしています。

初登場はもう1曲。10位にCamila Cabello「HAVANA feat.YOUNG THUG」がランクイン。日本でも人気を集めているアメリカの女性シンガー。キューバ産まれでマイアミで育った彼女らしいラテン風のエキゾチックな雰囲気がちょっと妖艶な楽曲。実売数20位、ラジオオンエア数11位、You Tube再生回数16位を記録。先日、来日し、日テレ系の「スッキリ!」やミュージックステーションに出演し、一気に注目を集め、見事ベスト10入りを果たしました。

さて今週は前述の通り、TWICE「TT」がベスト10返り咲きを果たしていますが、もう1曲、DAOKO×米津玄師「打上花火」が先週の18位から9位にランクアップ。こちらも1月15日付チャート以来、5週ぶりにベスト10返り咲きとなりました。実売数も15位から11位にアップ。さらにYou Tube再生回数は8位とベスト10をキープしており、まだまだロングヒットは続きそうです。

今週のHot100は以上。明日はアルバムチャート!

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018年2月13日 (火)

毒舌(元)OLたちのラストアルバム

Title:Charisma.BEST
Musician:Charisma.com

女性2人組HIP HOPデュオ、Charisma.com。結成当時、現役OLだったいつか(MC)とゴンチ(DJ)が組んだユニットで、OLが感じる本音や不満をつづった毒舌的なリリックが話題となりました。その後、昨年にはOLを引退し音楽活動に専念していたのですが、その後、ゴンチが家業への専念を理由に脱退を発表。ユニットとしても無期限の活動休止となってしまいました。

本作はそんな彼女たちが最後にリリースした、Charisma.comの活動を総括するベスト盤。インディーズ時代のアルバム「アイ アイ シンドローム」の1曲目を飾った「HATE」からスタート。「グララ」「りぼん」という2曲の新曲を加えて、彼女たちの代表曲が並ぶアルバムとなっていました。

活動を総括するベスト盤なのですが、よくあるリリース順に並べるようなスタイルではなく、アルバム全体の流れを考えつつ曲順を決めている構成になっています。彼女たちの楽曲は基本的にエレクトロサウンドをベースにリズミカルなトラックが特徴的ですが、前半は「イイナヅケブルー」「メンヘラブス」をはじめ、彼女たちらしいエレクトロのリズミカルな楽曲がメイン。まずはもっともCharisma.comらしいともいえる曲が並びます。

中盤もリズミカルなエレクトロトラックという流れは変わらないのですが「999」のようなマイナーコード主体のナンバーも。また、新曲「グララ」のようなミディアムテンポで聴かせる楽曲もあり、ちょっとクールダウンした展開となっています。

そして後半は「Train HELL」「こんがらガール」のようなノイジーでビートの強い、よりトランシー感を増した楽曲が並び、再びテンションが上がる展開に。最後を締めくくる新曲「りぼん」もそんな流れの中にピッタリのトランシーなナンバー。全19曲76分というフルボリュームの内容ながら、そのテンポよいエレクトロチューンの連続に一気に聴けてしまうベストアルバムになっていました。

また彼女たちの特徴は、OLの本音や不満をユーモラスを込めてつづったリリック。彼女たちの代表曲でいえば、例えば「サブリミナル・ダイエット」では、いつも「ダイエットのために」という女性に対して、まるでサブリミナル効果みたいと思いっきり皮肉った歌詞がユニークな楽曲に。「もや燃やして」はいろいろとうまくいかない現実に対してのOLのストレートな心境をつづった歌詞がユニーク。「お局ロック」はタイトル通り、いわゆる「お局様」といわれるようなOLに対する強烈な皮肉をつづっています。

エレクトロなサウンドはラップリスナー層以外にも訴求できそうな聴きやすさがありますし、またOLの本音をつづった歌詞も普遍性があってヒットポテンシャルは十分。実際、一時期は結構注目を集めたり、ミュージックステーションにも出演したりもしました。

十分なヒットポテンシャルはあるし、売れそうなユニットだったのですが、チャート的には2016年にリリースしたアルバム「愛泥C」で記録した24位が最高位。残念ながらブレイクには至りませんでした。

今回のベスト盤を聴く限りでは非常に魅力的な楽曲が並んでおり、ブレイクできなかったのは不思議にすら感じるのですが・・・。ただ一方では、確かにOLの本音や不満をつづっていながらも、ラップが早口のため肝心な内容が聴き取りにくかったり、あるいはインパクトあるフレーズをうまくサビにもってこれなかったりと、ちょっと惜しいな、と感じるような部分も随所には感じられます。そういう点がひょっとしたらいまひとつブレイクしきれなかった要因なのかもしれません。

もっとも、このベスト盤で最後というのは非常に残念。ただ今回、あくまでもCharisma.comは解散ではなく無期限の活動休止。そういう意味では今後の活動再開に含みをもたせた形での幕引きとなりました。ゴンチが引き継ぐ家業が何なのかはわかりませんが、ひょっとしたら家業がひと段落ついたら活動再開ということがあるのかもしれません。そんな日が来ることを、このベスト盤を聴きながら心待ちにしたいと思います。

評価:★★★★★

Charisma.com 過去の作品
DIStopping
OLest
愛泥C
not not me


ほかに聴いたアルバム

Typical/neco眠る

大阪出身6人組インストバンドの3年ぶりとなる新作。本作は新メンバーおじまさいり加入後、初となるアルバムに。スチャダラパー+ロボ宙が参加した「ひねくれたいの」やnever young beachの安部勇磨が参加した「SAYONARA SUMMER」など歌モノも目立ちます。ちょっとサイケ気味のシンセやギターの音色に郷愁感あるメロディーラインが魅力的。どこかコミカルなサウンドが入っているにもひとつの魅力に。シティポップな雰囲気の強い楽曲も加わる、前作に比べると良くも悪くも垢抜けたような印象も。

評価:★★★★

neco眠る 過去の作品
EVEN KICK SOYSAUCE
Boy

ラッキー&ヘブン/ザ・クロマニヨンズ

ちょうど1年ぶりとなるクロマニヨンズの新作。「パンク」と一言でとどまらない、フォーキーな曲や歌謡曲調の曲、盆踊りのリズムを聴かせる曲やらブルースロックやら、とにかくバラエティー豊富なのが特徴的。ベテランの彼ららしい音楽的な包容力の大きさを感じさせてくれるアルバムでした。

評価:★★★★★

ザ・クロマニヨンズ 過去の作品
CAVE PARTY
ファイヤーエイジ
MONDO ROCCIA
Oi! Um bobo
ACE ROCKER
YETI vs CROMAGNON
ザ・クロマニヨンズ ツアー2013 イエティ対クロマニヨン
13 PEBBLES~Single Collection~
20 FLAKES~Coupling Collection~
GUMBO INFERNO
JUNGLE9
BIMBOROLL

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018年2月12日 (月)

今の世界に対する強いメッセージ

Title:If All I Was Was Black
Musician:Mavis Staples

Mavis Staplesのニューアルバムは2013年にリリースしたアルバム「One True Vine」に続き、WilcoのJeff Tweedyのプロデュースによる新作。その「One True Vine」のアルバム評でも書いたのですが、彼女はもともとゴスペル、ソウルグループのThe Staple Singersとして活躍し、60年代から70年代にかけて数多くのヒット曲を世に送り出してきたシンガー。現在、御年78歳という大ベテランという彼女ですが、いまだに精力的な活動を続けています。

これも「One True Vine」の感想で書いたのですが、彼女のボーカルはゴスペルフィーリングなボーカルながらも、日本でいうゴスペルのイメージに沿ったような歌い上げるボーカルではなく、非常に抑えた歌声で、力強く歌うスタイルが印象的。その魅力的な歌声は78歳となった今でも全く衰えていません。

基本的にはサザンソウルやゴスペルという、60年代70年代の雰囲気を色濃く残すサウンドが特徴的。例えば本作でも、Jeff Tweedyが作曲を手掛ける「Little Bit」はグルーヴィーなギターサウンドが黒いリズムを生み出しているソウルナンバー。「Peaceful Dream」ではアコースティックギターと手拍子をバックにゴスペル風のボーカルとコーラスラインで歌い上げています。

ただ一方ではロックやファンクの要素を感じる楽曲が多かったのも大きな魅力。「Who Told You That」でもヘヴィーなギターリフでファンキーな楽曲に仕上げていますし、「No Time For Crying」もテンポよいリズムのファンクチューンとなっています。

ほかにも「Ain't No Doubt About It」はフォーキーな雰囲気に仕上げていますし、ソウル、ゴスペルを基盤としてルーツ志向の古き良きアメリカンミュージックを奏でているという印象。なによりもそれらの楽曲に共通する優しくも力強いボーカルがまず心に染みるアルバム。ラストの「All Over Again」はギター一本で歌う、まさに彼女のボーカルにスポットを当てたような楽曲で締めくくられています。

さて本作、そんな楽曲自体の魅力もさることながら、メッセージ性が非常に強いアルバムという点も大きな特徴となっています。タイトルチューンの「If All I Was Was Black」も「愛」を高らかに歌い上げ、現在のアメリカに対するメッセージとなっていますし、「Who Told You That」では"Oh, they lie. And they show no shame."(彼らはうそをつく。そして彼らはそれを恥じない)という皮肉的な歌詞も登場。また「Try Harder」"There's evil in the world and there's evil in me"(世界中に「悪」はある。そして私の中にも)という歌詞も、排外主義がはびこりつつある今の時代に対する強烈なメッセージとなっています。

そしてそんなメッセージを残しつつ、最後に締めくくる「All Over Again」では、"The world gets cold.Sometimes I have regrets"と今の世の中に対する後悔をにじませながら、それでも最後は"I'd do it all over again"と前向きな力強いメッセージを残し、アルバムは幕を下ろします。

まさに排外主義がはびこり、世の中が分断しつつある今だからこそ彼女が伝えたいメッセージがつまったアルバム。そしてそのメッセージは力強い彼女の歌声によって強く心に響いてきます。上にも書いた通り、現在78歳の彼女。しかし、そんな年を全く感じさせないような現役感あふれるアルバムになっていました。

評価:★★★★★

Mavis Staples 過去の作品
One True Vine


ほかに聴いたアルバム

Cajun Accordion Kings(And The Queen)

まだまだ続いています。2017年各種メディアでのベストアルバムのうち聴きのがした作品を聴くシリーズ。今回は「BLUES&SOUL RECORDS」誌ベストアルバム第3位のアルバム。ケイジャン(=ルイジアナ州に定住したフランス系移民、ケイジャンによって始められたダンス音楽)のうちアコーディオンによる作品が並んだオムニバスアルバム。基本的にはアコーディオンのみの演奏で、うち1/3は歌モノというスタイル。どこか哀愁感ただようメロディーながらも軽快で楽しいダンスミュージックが並ぶ作品。アコーディオンのみの演奏のため、良くも悪くも地元のミュージシャンによる演奏をそのままパッケージしたような生々しさ、荒々しさも感じるアルバムでした。

評価:★★★★

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018年2月11日 (日)

the band apart関連2作

今回はthe band apartがらみ2作品の紹介です。

Title:2
Musician:the band apart(naked)

まずはthe band apart(naked)名義によるタイトル通り2作目となるアルバム。the band apartのいままでの楽曲をアコースティックサウンドで大胆にアレンジした楽曲になっています。ただ、純粋にアコースティックのみのアルバムといった感じではなく曲によってはエレキギターを入れたアレンジの作品もあり、そういう意味でリアレンジアルバムとも言えるかもしれません。

「仇になっても2」あたりが典型例でしたが、全体的には爽快なシティポップ風のテイストの強いアルバム。基本的にはthe band apartのイメージを崩すようなものではなく、彼らのイメージに沿ったような楽曲が並んでいます。そのため、目新しさみたいなものは薄く、ちょっとインパクト的には物足りなく感じる部分もありました。ただ、ファンにとっては良くも悪くも安心して聴けるアルバムだと思います。

評価:★★★★

the band apart 過去の作品
Adze of penguin
shit
the Surface ep
SCENT OF AUGUST
街の14景
謎のオープンワールド
1(the band apart(naked))
Memories to Go
前へ(□□□ feat.the band apart)

Title:will
Musician:荒井岳史

そのthe band apartのボーカリストによるソロアルバム。意外性の薄かったthe band apart(naked)のアルバムに比べると、個人的にはこちらのアルバムの方が楽しめた作品となっていました。

これが3枚目となるソロアルバム。いままでのアルバムもシンプルなメロディーラインを聴かせる、メロディーメイカーとしての彼の本領が発揮された傑作アルバムが続いていましたが、最新作となる本作もその流れを踏襲する、ほどよくインパクトのあるポップなメロディーラインが光るアルバムになっていました。

ある意味、the band apartというイメージに拘束されがちなバンアパの作品と比べると、グッと自由度が高くバリエーションが多いのが彼のソロ作の特徴。本作も「リメンバー・ミー」はホーンセッションを入れつつ、シティポップとJ-POPの中間を行くような爽やかなポップチューン。「夢から醒めない」もファンキーなリズムがthe band apartっぽさを感じつつも、基本的にはあくまでもメロディーを聴かせるポップチューンに。ラストの「夜は不思議」はエレクトロサウンドを入れつつ、タイトル通りの夢の世界のような雰囲気の楽曲に仕上がっています。

ただ今回のアルバム、そんな中でも特に特徴として目立ったのが歌謡曲っぽい部分。典型的なのが「おいてけぼり」。こぶしを聴かせたボーカルに哀愁感たっぷりのメロディーラインがまんま歌謡曲。さらに女性目線の失恋ソングというスタイルも完全に歌謡曲。「酒」のようないかにも歌謡曲っぽいアイテムまで登場します。

歌謡曲っぽいというと「Wonder Magic」もそんなイメージ。ホーンセッションを入れて明るくスタートする展開は、まさに「歌謡ショー」というイメージそのまま。「ミステリアス・ガール」もダンサナブルなエレクトロポップながら、80年代あたりの歌謡曲を彷彿とさせるナンバーとなっています。

そういう意味では完全にthe band apart路線とは異なる、彼のやりたいことをやったソロアルバムらしいソロアルバムだった本作。いままでもどこか歌謡曲テイストの郷愁感あふれるメロディーを感じる部分はあったのですが、今回の作品ではその方向性がより強くあらわれた作品になっていました。そんな歌謡曲テイストの強い曲も魅力だったのですが、そんな曲を含めて今回もメロディーが特に魅力的だった傑作アルバム。まだまだこれからもソロとしても名曲がうまれてきそうです。

評価:★★★★★

荒井岳史 過去の作品
beside
プリテンダー


ほかに聴いたアルバム

Cocco 20周年記念Special Live at 日本武道館 2days~一の巻x二の巻~/Cocco

タイトル通り、昨年7月に日本武道館で行われた20周年記念ライブ2daysの模様を全4枚組のアルバムに全曲収録したライブアルバム。楽曲によって時には力強く、時には包み込むようなやさしさで聴かせるCoccoのボーカルがとにかく魅力的なライブアルバム。原曲に比べてさらにCoccoのボーカリストとしての魅力がつまっているアルバムになっています。個人的には1枚目の冒頭、「カウントダウン」から「水鏡」への展開はゾクゾク来るものがありました。ただ個人的にはライブの模様をそのまま収録したライブアルバムならMCも収録してほしかったな。

評価:★★★★★

Cocco 過去の作品
エメラルド
ザ・ベスト盤
パ・ド・プレ
プランC
アダンバレエ
20周年リクエストベスト+レアトラックス

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018年2月10日 (土)

豪華なゲスト陣も大きな魅力

Title:Times Have Changed
Musician:Ronnie Baker Brooks

今回も2017年各種メディアのベストアルバムのうち、聴き逃したアルバムを後追いで聴くシリーズ。今回はBLUES&SOUL RECORDS誌2017年新録部門で1位を獲得したアルバムです。Ronnie Baker Brooksはアメリカシカゴで活躍するギタリスト。同じくシカゴで活躍していたブルースギタリストで、昨年4月に惜しまれつつこの世を去ったロニー・ブルックスの息子だそうです。

ロニー・ブルックスの息子・・・といっても彼も御年51歳となり、80年代半ばから活動を続けるベテランギタリスト。本作はなんと約10年ぶりとなる新作で、これが4枚目となるオリジナルアルバムだそうです。

さてそんな彼のニューアルバムですが、いい意味でストレートにブルースギターの楽しさを聴かせるような、聴いていて楽しくなってくるようなアルバムでした。まず1曲目「Show Me」からしてホーンセッションを取り入れてワクワクするダンサナブルなソウルナンバー。イメージとしてOTIS REDDINGの「I Can't Turn You Loose」を彷彿とさせるよなナンバーでした。

「Twine Time」では父親のロニー・ブルックスと共演しているのですが、こちらも軽快で力の抜けたギターソロを聴かせるインストナンバー。周囲のざわめきも一緒に収録されているのですが、仲間内でワイワイやっているような印象を受ける気軽で楽しいギターインストになっていました。

ほかにも「Come On Up」「Long Story Short」などファンキーなリズムを楽しめるナンバーがあったり、かと思えば「Wham Bam Thank You Sam」のような哀愁感たっぷりのギターサウンドを聴かせてくれたりと聴きどころがたくさん。またブルースやソウルのみならず、ファンクやジャズ、ロックなどの要素を幅広く取り入れた自由度の高い音楽性もこのアルバムの楽しさのひとつ。タイトルチューンでは「Time Have Changed」ではなんとメンフィスのラッパー、アル・カポネが参加。HIP HOPの要素すら楽曲に取り入れています。

また長らくシカゴの音楽シーンで活躍してきた彼らしい豪華なゲスト陣も魅力的。前述の通り、父親であるロニー・ブルックスとの共演も楽しめるほか、「Show Me」ではSteve Cropperと共演。さらに「Old Love」では2013年に亡くなったブルース界のレジェンド、ボビー・ブランドがその歌声を聴かせてくれたりしています。

様々なジャンルを取り込んだ、いい意味で今の時代を感じさせるブルースアルバム。そしてそんな今のブルースを難しいこと抜きにワクワクしながら楽しめる、そんな素敵なアルバムでした。新録部門年間1位も納得の傑作。ブルース好きはもちろん、ソウルやファンク、あるいはブルースロックが好きならお勧めしたい1枚です。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Hidden Figures: The Album(邦題 「ドリーム」オリジナル・サウンドトラック)

昨年9月に日本でも公開されたNASAの宇宙開発を支えた知られざる女性の活躍を描いた「ドリーム」。本作は同映画のサントラ盤。Pharrell Williamsが全曲書下ろし&プロデュースを手掛けており、本人ももちろん参加しているほか、Alicia Keys、Mary J.Bligeといった超豪華なゲストも参加しています。

Pharrell Williamsといえばご存じ「Happy」の大ヒットが有名ですが、本作もそんな「Happy」の流れを組むような、ソウルやジャズ、ゴスペル、ファンクなどの要素を主軸としつつ、ピアノやホーン、ギターなどを入れて楽しく聴かせる「ポップ」な作品が並んでいます。サントラ盤といっても基本的には歌モノの曲が並ぶオムニバス盤のような内容。むしろPharrell Williamsの新譜とすら捉えられるような内容で、映画を見ていなくても、これはひとつのアルバム作品として十二分に楽しめる傑作アルバムに仕上がっていました。

評価:★★★★★

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018年2月 9日 (金)

レトロと「今」が同居

Title:Ctrl
Musician:SZA

今回も各種メディアでベストアルバムとして評判の高かったアルバムのうち、リアルタイムで聴けなかったものを後追いで聴いた1枚。現在28歳のアメリカ出身の女性シンガーのデビューアルバム。ケンドリック・ラマーを擁するTDEというレーベル所属のミュージシャンとしても注目を集めています。本作はピッチフォークで年間2位に選ばれたほか、ローリングストーン誌で年間20位、イギリスQ Magazine誌でも27位に選ばれるなど高い評価を受けています。

さて、そんな話題となっているデビュー作なのですが、まずアルバムを聴いて印象に残るのが彼女のボーカルでした。ちょっとしゃがれてスモーキーな雰囲気を醸し出している彼女のボーカルは、ちょっとけだるさを感じつつも、力強い歌声を聴かせてくれるのが印象的。この力が抜けたようなけだるげなボーカルが与える楽曲のほどよい熱量に、心地よさを感じました。これがデビューアルバムということですが、デビュー作から既に完成されたものを感じます。

そんな彼女が歌う、ほどよく力の抜けたメロディーラインにもとても心地よさを感じます。「Drew Barrymore」「Go Gina」など、特にメロディーを聴かせるような楽曲には昔ながらのオーガニックなソウルミュージックの流れを引き継ぐような、レトロな空気感も感じさせます。そんなレトロさを感じるメロディーラインに彼女の歌声がピッタリとマッチ。曲を際立たせています。

かと思えば一方では、ケンドリック・ラマーをフューチャーした「Doves In The Wind」あたりが典型的なのですが、今時のHIP HOP的なトラックもそのサウンドから感じられます。「Anything」のような強いエレクトロビートを前に押し出した作品があったり、「Pretty Little Birds」のようなスペーシーなエレクトロトラックが印象的だったり、単純に「レトロでオーガニックな」とは言えないサウンドの広がりも彼女の大きな魅力に感じます。全体的には比較的シンプルなサウンドでリズムトラックを特に強調した曲の構成が多いのもいかにも今風に感じます。

ただこれらの楽曲に関しても、そこに流れる力強いSZAのボーカルによって、アルバム全体にしっかりとした統一感があるのも大きな特徴。トラックにも聴かせどころの多いアルバムでしたが、一方ではなによりも彼女のボーカルに大きな魅力を感じたアルバムでした。

いい意味で昔ながらのソウルと、今のサウンドがしっかりと融合したアルバム。ラスト「20 Something」はオーガニックなテイストの強いギターサウンドをバックにしんみりと歌い上げるバラードナンバーで締めくくっており、今回のアルバムをまとめ上げるにはピッタリの曲となっています。確かに本作が高い評価を受けているのは強く納得できる傑作アルバム。これがデビュー作とは、ある意味、末恐ろしい感じも。これからが非常に楽しみになってくるシンガーのデビュー作でした。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Wiejski Dzez/Kapela Maliszow

こちらも年間ベストの聴きなおしシリーズ。こちらはミュージックマガジン誌ワールドミュージック部門7位のアルバム。同誌の紹介によると「親子3人でポーランド・カルパティア山脈一帯の伝統音楽を奏でるグループ」だそうです。基本的に哀愁感たっぷりのハイテンポなバイオリンにシンバルのリズムがのっているスタイル。メロディーをしっかりと聴かせるようなナンバーも目立つ一方、どこかフリーキーな雰囲気が非常にユニーク。ある意味、聴きなれないタイプの音楽に興奮して聴くことができたアルバムでした。

評価:★★★★★

Fado/Andre Vaz

こちらも同じく年間ベストの聴きなおし。こちらもミュージックマガジン誌ワールドミュージック部門9位を獲得したアルバム。ポルトガルの男性ファド歌手。ファドというのはポルトガルの民族音楽だそうで、基本的に(おそらく)2本のアコギのみでしんみり歌い上がる楽曲。とにかくこれでもかというほど哀愁感あふれる泣きメロの連続。「ファド」とは「運命・宿命」という意味もあるそうですが、まさに「宿命」というタイトルがピッタリと来るような楽曲が並んでいます。その哀愁感強いメロディーに思わず聴き入ってしまいました。

評価:★★★★★

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018年2月 8日 (木)

韓流男性アイドルが目立つ

今週のアルバムチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/ja/

今週は韓流の男性アイドルが目立つチャートとなっています。

まず1位から韓流男性アイドルグループEXO「COUNTDOWN」がランクイン。本作がアルバムとしては日本デビュー作となります。初動売上8万9千枚でいきなり1位にランクイン。ちなみに韓流男性アイドルとしては、JBJ「True Colors:2nd Mini Album」が圏外から5位にランクアップし、初のベスト10入りを記録しているほか、JonghyunことSHINeeのジョンヒョンの韓国でのソロアルバム「Poet|Artist」が先週の12位からランクアップし、10位にランクインしています。

2位初登場はゴールデンボンバー「キラーチューンしかねえよ」。相変わらずいろいろと話題を振りまいているゴールデンボンバーの約2年7ヶ月ぶりとなる新作。このアルバムに関してもMステで全13曲をダイジェストで披露というムチャな企画を実施し話題となりました。初動売上は2万5千枚。前作「ノーミュージック・ノーウェポン」の4万8千枚(1位)から大幅ダウンというちょっと厳しい結果に。

3位にはYUKI「すてきな15才」がランクイン。タイトル通り、ソロデビュー15周年を迎えた彼女。今回のアルバムはシングルコレクションで、10周年の時にリリースされたベスト盤「POWERS OF TEN」以降にリリースされたシングルを集めたシングルコレクションになります。初動売上は1万6千枚。直近のオリジナルアルバム「まばたき」の3万枚(1位)からダウン。ベスト盤としての前作「POWERS OF TEN」の7万2千枚(2位)からもダウンしています。

続いて4位以下の初登場盤です。まず7位に加藤達也「TVアニメ『ラブライブ!サンシャイン!!』2期オリジナルサウンドトラック「Journey to the Sunshine」がランクイン。タイトル通り、アニメキャラによるアイドルプロジェクト「ラブライブ!サンシャイン!!」のテレビアニメのサントラ盤。初動売上9千枚。同シリーズサントラ盤の前作「TVアニメ『ラブライブ!サンシャイン!!』オリジナルサウンドトラック Sailing to the Sunshine」の1万1千枚(6位)からダウン。

最後8位にはThe Birdthday「LIVE AT XXXX」がランクイン。昨年行われたライブツアー「The Birthday TOUR 2017"NOMAD"」のうち、ラストのZepp5公演からのベストテイクを収録したライブアルバム。ちょっと意外なことに彼らにとっては初となるライブアルバムとなります。初動売上7千枚は直近のオリジナルアルバム「NOMAD」の1万枚(6位)よりダウンしているものの、ライブアルバムとしては健闘した結果。ここらへんはさすがThe Birthdayと言えるかもしれません。

今週のアルバムチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018年2月 7日 (水)

新譜ラッシュ

今週のHot 100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週はHot100としては珍しく新譜がズラリと並ぶチャートとなりました。

まず1位を獲得したのはAKB48の姉妹グループ。瀬戸内7県を拠点として活動するSTU48のデビューシングル「暗闇」が初登場で獲得。CD販売・ダウンロード・ストリーミング数(以下「実売数」)で1位、PCによるCD読取数で6位、Twitterつぶやき数10位を記録。一方、ラジオオンエア数は19位にとどまりました。オリコンでも1位を獲得。こちらは初動売上13万8千枚をきろくしています。

2位は韓国の男性アイドルグループMONSTA X「SPOTLIGHT」がランクイン。K-POPらしいエレクトロサウンドを入れたダイナミックなHIP HOP風ナンバー。実売数2位、Twitterつぶやき数8位ながらもPCによるCD読取数は53位、その他は圏外と固定ファン層に留まったことを示すチャートになっています。オリコンでは初動7万枚で同じく2位初登場。前作「Beautiful」の4万7千枚(2位)よりアップしています。

3位初登場はSUPER★DRAGON「Monster!」。こちらはスターダストプロモーションの男性アイドルグループ。2位のアイドルとかぶるようなタイトルですが、楽曲的にもエレクトロトラックでダイナミックなHIP HOP風ナンバーと方向性は似ています。実売数3位ながらもラジオオンエア数63位、PCによるCD読取数92位、Twitterつぶやき数34位と固定ファン層に留まっているようなチャートなのも共通。なおオリコンは初動売上4万3千枚でこちらも3位初登場。前作「ワチャ-ガチャ!」の2万3千枚(5位)からアップしています。

続いて3位以下の初登場曲です。4位初登場は人気女性声優上坂すみれ「POP TEAM EPIC」がランクイン。実売数4位、PCによるCD読取数7位、Twitterつぶやき数12位を記録。奇抜な展開で話題のアニメ「ポプテピピック」オープニングテーマ。オリコンでは初動売上9千枚で12位に留まったものの、デジタルシングルチャートで2位を獲得しており、配信がメインのヒットとなった模様。ちなみに初動売上は前作「彼女の幻想」の5千枚(11位)よりアップしています。

5位初登場はEXILEの事務所に所属している女性アイドルグループの合同ユニットE-girls「あいしてると言ってよかった」がランクイン。ピアノ主導の少々ベタなバラードナンバー。実売数及びPCによるCD読取数5位を記録した一方で、ラジオオンエア数34位、Twitterつぶやき数25位に留まっています。オリコンでは初動3万1千枚で5位初登場。前作「北風と太陽」の3万5千枚(5位)から若干のダウン。

そしてそのEXILE「PARTY ALL NIGHT~STAR OF WISH~」が6位に初登場。今後6ヶ月連続第1金曜日にリリースされる配信限定シングルの第1弾。タイトル通りの軽快なパーティーソング。実売数6位、Twitterつぶやき数9位を記録。ただラジオオンエア数は76位、You Tube再生回数は85位に留まっています。

8位初登場は坂本真綾「CLEAR」。NHKアニメ「カードキャプターさくら クリアカード編」主題歌。作曲はいきものがかりの水野良樹が手掛けているため、彼女にしてはちょっとベタなJ-POPナンバーになっています。実売数7位、PCによるCD読取数8位を記録した一方、ラジオオンエア数は45位、Twitterつぶやき数は48位に留まりました。オリコンでは初動9千枚で13位止まり。ただデジタルシングルチャートで4位にランクインしており、配信主導のヒットとなっています。前作「Million Clouds」の8千枚(24位)から若干のアップとなりました。

最後10位にはAfterglow「Hey-day狂騒曲」が初登場。ゲーム「バンドリ! ガールズバンドパーティ!」に登場するガールズバンドです。実売数10位、PCによるCD読取数4位、Twitterつぶやき数20位。オリコンでは初動売上1万3千枚で7位初登場。前作「That Is How I Roll!」の1万枚(18位)よりアップしています。

今週のHot100は以上。明日はアルバムチャート。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018年2月 6日 (火)

トランプ批判も大きな話題に

Title:REVIVAL
Musician:EMINEM

EMINEMに関して昨年、大きな話題となった出来事がありました。それは昨年10月に行われた「BET Hip-Hop Awards 2017」での出来事。彼がその場で映像で披露したフリースタイルラップが大きな話題となりました。「The Storm」と名付けられた同作は、ストレートにアメリカのトランプ大統領を非難する内容。かなり強烈にトランプ大統領を罵倒するラップを繰り広げており、それがある種の驚きをもって迎え入れられました。

というのはEMINEMはご存じの通り、白人貧困層から出てきたラッパー。彼を支持するのもやはり白人貧困層が多いと言われています。そしてトランプを大統領とした支持層も同じく白人貧困層と言われ、EMINEMのファンと重なる部分が大きいと言われていました。彼の強烈なトランプ大統領への批判は、ファンを失うようなリスクも大きく、それだけに大きなニュースとなりました。

そしてそんなニュースが大きな話題となる中リリースされたのが、約4年ぶりとなるEMINEMのニューアルバム。前作は「The Marshall Mathers LP 2」というタイトルで、彼の出世作とも言える「The Marshall Mathers LP」を受けてのアルバムとなりましたが、続く新作には「復活」というタイトルを名付けており、彼の新たな一歩への決意も感じることが出来ます(・・・といってもここ最近のアルバムは「Recovery」やら「Relapse」やら「新たな一歩」を彷彿とさせるようなタイトルばかりが続いているような気がするのですが・・・)。

さて、そんな新たな一歩とも言えるアルバムですが、まず聴いた感想として感じたのは、良い意味で非常にわかりやすいアルバムだったな、という点でした。思えばEMINEMといえば以前から、HIP HOPの技法であるサンプリングをHIP HOPリスナーでなくてもすぐわかるような、わかりやすい手法で取り入れてきたり、「マーシャル・マザーズ」というキャラクターを作り上げてHIP HOPの持つ演劇的な部分を強調してきたり、HIP HOPというジャンルのおもしろさを、非常にわかりやすく取り上げてきて、結果としてHIP HOPリスナーではないような層を含めての世界的な大ヒットアルバムを次々とリリースしてきました。

今回のアルバムに関しても、いきなり1曲目「WALK ON WATER」ではBEYONCEをフューチャー。いきなり彼女の歌声からスタートする展開になっており、まずはその歌声に耳を惹きつけられます。その「WALK ON WATER」にしても、「自分はただの人間だ」と綴り、カリスマ的に持ち上げられている自分を自己検証しつつ、自らの感情を吐露する内省的なラップ。この「自分語り」もHIP HOPらしさといえばHIP HOPらしいと言えるでしょうか。ただその感傷的な内容に心惹かれるものがあります。

また「UNTOUCHABLE」「REMIND ME」ではダイナミックなギターリフが登場。ロッキンなサウンドはロックリスナーの耳を惹きつけるのに十分な楽曲に仕上がっていますし、また、「LIKE HOME」ではアリシア・キーズが、「RIVER」ではエド・シーランが、「NEED ME」ではP!NKが、というようにオールスターキャストとも言えるような豪華なメンバーがゲストとして参加。それぞれ、メロディアスにその歌声を聴かせてくれます。ここらへんの「歌」パートが比較的多いのも、いい意味で聴きやすい要素だったと思います。

わかりやすいサンプリングという意味でも「IN YOUR HEAD」でクランベリーズの「Zombie」がサンプリング。これに関しては「あれ?どこかで聴いたことあるような・・・」と思った方も多いのではないでしょうか。クランベリーズといえば先日、ボーカルのドロレス・オリオーダンが46歳という若さで急逝。それだけにこのサンプリングで聴ける彼女の歌声が非常に印象に残ります。

サウンド的には昨今の流れの中では決して目新しいものではありません。むしろ「The Marshall Mathers LP」がヒットした2000年あたりから大きな変化はなく、そういう意味では今風にアップデートされていない、という言い方も出来るかもしれません。ただ、それだけに安心して聴ける内容でもありましたし、迫力を感じるトラックは彼のラップにもしっかりマッチしているように感じました。

そんな訳で彼の最高傑作といった感じでもありませんし、今のラップシーンを変えるような傑作といった感じでもありませんが、まずはファンとして安心して聴けるEMINEMの良さがしっかりとあらわれた良作だったと思います。

ただ・・・今回のアルバム、国内盤に関して非常に強い不満がひとつあるのですが・・・それは国内盤に和訳がついていないこと。EMINEMの曲は歌詞も大きな魅力。しかし今回のアルバムは和訳がついていなかったので歌詞の内容がほとんどわかりませんでした。

確かにここ最近、ネットへの流出を阻止するためにおそらく事前に楽曲の内容がわからなくて、和訳が間に合わないという事情もあるのでしょうし、EMINEMのようなラップの歌詞はスラングが多すぎて、簡単に訳が出来ないという事情もあるのでしょう。ただ、ただでさえCDが売れなく今、和訳のような付加価値をつけないと誰もCDなんて買わなくなるよ。国内盤のリリースが1ヶ月くらい遅れてもよかったので、せめて和訳をつけてほしかった。こういうことって、あきらかにレコード会社にとっては自分で自分の首を絞めているようなもんだよなぁ。こんなことをやっているようじゃあ、CDなんて売れないよ(苦笑)。

評価:★★★★★

EMINEM 過去の作品
RELAPSE
RECOVERY

THE MARSHALL MATHERS LP 2


ほかに聴いたアルバム

CHRONOLOGY/Chronixx

リアルタイムで聴きそびれた各種メディアの年間ベストアルバムを遅ればせながら聴くシリーズ。今回はミュージックマガジン誌のレゲエ部門で1位を獲得したジャマイカ出身のレゲエミュージシャンの新作。「レゲエ界の若きカリスマ」「ボブ・マーリーの再来」とも呼ばれる注目のミュージシャンで、昨年のフジロックへも出演しています。

彼のレゲエは横ノリのリズムがとても心地よく、哀愁感あるメロディーラインも心に残ります。ただ今回のアルバム、特に後半はソウルテイストの強い曲や、むしろAORに近いような曲もあり、レゲエっぽくない曲も目立ちます。そういうこともあり私自身、決してレゲエは好んでよく聴くようなジャンルではないのですが、そんな私でも非常に楽しめたアルバムでした。

評価:★★★★★

Afreekanism/Adedeji

こちらも上と同様、年間ベストを後追いで聴いたアルバムで、こちらは同じくミュージックマガジン誌のワールド・ミュージック部門で4位を獲得したアルバム。ナイジェリアのギタリストによるアルバムで、アフリカらしいトライバルなサウンドの中にアーバンソウルやファンク、ラテンなどの要素を取り入れているのがユニーク。特に後半になるほどジャズの要素が強くなり、まさに「アフロジャズ」ともいうべき本作。若干、ジャズの要素が強くなりすぎて、個性が薄くてちょっと平凡かも・・・と思うような曲もありましたが、ジャズを中心に様々な要素を取り込んだ楽曲が非常にユニークな作品でした。

評価:★★★★★

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018年2月 5日 (月)

アフロ・ビート的な要素も

Title:Drikouraman
Musician:Dede Saint-Prix

今回も、2017年に評価の高かったアルバムを後追いで聴いてみたアルバム。本作はミュージックマガジン誌のラテン部門で1位を獲得したアルバム。もちろん、完全に初耳のミュージシャンで名前は「デデ・サンプリ」と読むらしいです。カリブ海に浮かぶフランスの海外県、マルティニーク出身のミュージシャンだそうで、マルティニークの伝統芸能、シュヴァル・ブワのミュージシャン。御年60歳を超える彼は70年代から活動を続けている大ベテランミュージシャンだそうです。

楽曲は基本的にラテンのイメージらしい、軽快なパーカッションで、カリブ海の陽気な太陽の光を感じることの出来るような爽快な楽曲がメイン。特にタイトルチューンとなっている「Drikouraman」はパーカッションの軽快なリズムにホイッスルやアコーディオンも加わる典型的なラテンチューンに仕上がっています。

また一方では「Pa gade pat mile」のような哀愁感たっぷりのアコーディオンをムーディーに聴かせてしっとりと歌い上げるようなナンバーも顔を覗かせます。決して端整な歌声といった感じではないのですが、年季の入ったそのボーカルはどこか味のある歌声を聴かせてくれます。

ただ個人的にこのアルバムが気に入った大きな要素がパーカッションにトライバルな要素を強く感じた点でした。基本的にコールアンドレスポンスを主軸とした展開に疾走感あるパーカッションはトライバルな雰囲気を強く感じるのですが、例えば「Onoma」のようにパーカッションのリズムに女性のコーラスが重なる部分など、非常にアフリカ音楽にも通じるような部分が強いですし、続く「Bonswar」もなにより軽快でトライバルなパーカッションが心地よい作品になっています。特に「Aprann yo peche」などは性急なビートとシャウト気味なボーカルのハイテンションな楽曲になっており、ラテンというよりもむしろアフロビート的なノリを感じる楽曲になっていました。

一方ではリズミカルなサウンドを聴かせるような曲ばかりではなく「Gol-la pri an sa」のようなポップに聴かせる曲にはメロディーラインにもしっかりと聴かせるものを感じます。さらに終盤「Granbele」「Lanmou-nou」はムーディーなピアノやサックスも入り、ジャジーな雰囲気を醸し出しつつ、アルバムは幕を下ろします。

そんな訳で「ラテンミュージック」にカテゴライズされるアルバムですが、雰囲気としてはアフロ的な雰囲気も強く感じられ、アフリカ音楽が好きな人にも非常に魅力を感じることが出来るアルバムだったと思います。またポップなメロを楽しく聴かせる楽曲やジャジーでムーディーな楽曲も収録されており、その音楽性の広さも大きな魅力。キャリア40年以上のベテランらしい音楽的な広く深い素養を感じる作品になっていました。

ラテンだから、ということでアルバムを積極的に聴くケースはあまり多くないのですが、それでもラテンミュージックのアルバムとして年間1位というのは納得の、非常に楽しめた傑作アルバムでした。

評価:★★★★★

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018年2月 4日 (日)

2017年ベストアルバム(邦楽編) その2

昨日に続き2017年邦楽の私的アルバムベスト10。今日は5位から1位です。

5位 東京カランコロン01/東京カランコロン

聴いた当時の感想はこちら

個人的には東京カランコロンがメジャーでほとんど売れなかったというのが不思議で仕方ありません。確かにこの手の正統派ポップスは一定の固定ファン層のいるロック系やアイドル、アニメ系と比べると、今の時代、なかなか売れないのかもしれませんが・・・。ただインディーズに戻っての本作は彼らの新たな一歩を踏み出そうという決意を感じる勢いのあるポップソングの連続。いままで以上にポピュラリティーを感じさせるインパクトある楽曲が並んでおり、まだまだこれからの活躍が期待できそうな傑作に仕上がっていました。

4位 エコーズ・オブ・ジャパン/民謡クルセイダーズ

聴いた当時の感想はこちら

「民謡しなけりゃ意味ないね!」をキーワードに、日本の民謡とラテンやカリブなどの中南米の音楽やアフリカ音楽などのリズムを大胆に組み合わせて、全く新しいサウンドを作り出しているミュージシャン。この日本と中南米、アフリカという異色の組み合わせが驚くほどマッチして、いい意味でどこの国の人も気持ちよいと感じるリズムは変わらないんだな、ということを感じさせてくれます。日本の民謡の新たな魅力に気が付かされる傑作アルバムでした。

3位 Popcorn Ballads/サニーデイ・サービス

Popcornballads

聴いた当時の感想はこちら

ストリーミングオンリーで突如リリースされたサニーデイ・サービスのニューアルバム。様々なジャンルの楽曲がごった煮的に収録されており、アルバムというよりはプレイリストといった印象を受けるのも、ストリーミングでのリリースならでは。なお、同作をリアレンジし、新曲も加えた上に曲順を並べ直した「完全版」が年末のCDでリリース。ストリーミングの時はほとんど無視だった音楽誌がCDがリリースされたことでようやく取り上げ始めたあたり、今の音楽誌の限界を強く感じてしまいました(ミューマガの年間ベストで取り上げられたのは、そんな中でも唯一、音楽誌の矜持を感じたのですが・・・)。

2位 SUPERMAN/水曜日のカンパネラ

聴いた当時の感想はこちら

あくまでも私が勝手に決めている「私的ベスト」なんで何ら意味ない話かもしれませんが・・・3年連続の年間1位ならず!ただ、今回も文句なしの傑作アルバムをリリースしてきた水曜日のカンパネラ。このレベルの作品を毎年コンスタントにリリースするあたり、大きな驚き。特に今回は、音楽的に進化した「ジパング」「UMA」を経て、かつての彼女たちの路線に戻ったような部分も感じられたアルバムで、今の水カンの集大成ともいえる内容だったと思います。まだまだ彼女たちの勢いは止まらなさそうです。

そして・・・

1位 PINK/CHAI

聴いた当時の感想はこちら

正直言って、年間1位は彼女たちにするか水カンにするかかなり迷ったのですが・・・やはりユニークなPVを含めて、今年最もはまった彼女たちのアルバムが、2017年の年間1位!「コンプレックスはアートなり」を合言葉に、アイドルブームが長く席巻する日本の音楽シーンの中、ある意味「アンチ」ともいえる女性像を提示した歌詞もユニークながら、アバンギャルドなガールズパンクとポップなメロディーを兼ね備えた楽曲も耳を惹きます。最近、増えてきたガールズバンド勢の中で、あきらかに一線を画する彼女たち。これからももっともっと日本の音楽シーンをかき乱してほしいです!

さて、あらためてベスト10を振り返ると・・・

1位 PINK/CHAI
2位 SUPERMAN/水曜日のカンパネラ
3位 Popcorn Ballads/サニーデイ・サービス
4位 エコーズ・オブ・ジャパン/民謡クルセイダーズ
5位 東京カランコロン01/東京カランコロン
6位 re:Action/スキマスイッチ
7位 平凡/ドレスコーズ
8位 豊穣なる闇のバラッド/中川敬
9位 TROPICAL LOVE/電気グルーヴ
10位 Mellow Waves/CORNELIUS

ほかのベスト盤候補作は・・・

THE KIDS/Suchmos
半世紀No.5/UNICORN
光源/Base Ball Bear
EMO/TOWA TEI
達磨林檎/ゲスの極み乙女。
人生/ウルフルズ
PLAY/藤原さくら
ノスタルジア/Okada Takuro
ダンサナブル/Rhymester
熱唱サマー/赤い公園
20/20/スカート
地方都市のメメント・モリ/amazarashi

全体的には良作も多かったものの、10枚選ぶのも迷うような豊作・・・といった感じでもなかったかな。ただ、そんな中、見事1位を獲得したCHAIは、歌詞の面でもサウンドの面でもこれからが実に楽しみになってくるバンドだと思います。

ちなみに過去のベストアルバムは・・・

2007年 年間1 
2008年 年間1  上半期
2009年 年間1  上半期
2010年 年間1  上半期
2011年 年間1  上半期
2012年 年間1  上半期
2013年 年間1  上半期
2014年 年間1  上半期
2015年 年間1  上半期
2016年 年間1  上半期
2017年 上半期

| | コメント (3) | トラックバック (0)

2018年2月 3日 (土)

2017年ベストアルバム(邦楽編) その1

昨日に続いて今日と明日は邦楽の2017年私的ベストアルバムの紹介です。

10位 Mellow Waves/CORNELIUS

聴いた当時の感想はこちら

ここ最近はMETAFIVEなどでの積極的な活動も目立っていたのでちょっと意外な感じもしたのですが11年ぶりとなるニューアルバム。正直、実験性、目新しさという側面ではここ数作と比べると一歩劣る部分は否めないものの、シンプルで空間を聴かせるCORNELIUSのここ最近の方向性がポップにまとまっている傑作アルバムに仕上がっていました。

9位 TROPICAL LOVE/電気グルーヴ

聴いた当時の感想はこちら

石野卓球はソロでもアルバムをリリースするなど、その創作意欲はいまなおピークといった電気グルーヴのニューアルバム。全体的な熱量は低めながらも電気グルーヴらしいポピュラリティーとユーモラスが散りばめられている、彼ららしい傑作アルバムでした。

8位 豊穣なる闇のバラッド/中川敬

聴いた当時の感想はこちら

正直、聴く前はちょっと政治的になりすぎる作品になっているのでは・・・という心配になったのですが、聴き終わると、「政治的」という意味以上に、弱者に寄り添う中川敬の姿勢に心を打たれたアルバムになっていました。なによりもアコギ1本で聴かせる力強くも優しい彼の歌声と、メロディーラインに心惹かれる1枚でした。

7位 平凡/ドレスコーズ

聴いた当時の感想はこちら

「平凡」をコンセプトとしつつ、歌謡曲的なポップチューンやファンキーな楽曲などが並ぶ傑作アルバム。なによりも「平凡」というコンセプトがはっきりしているだけに歌詞にしろメロディーにしろ強いインパクトを感じ、志磨遼平の才能を感じることが出来る作品に仕上がっていました。

6位 re:Action/スキマスイッチ

聴いた当時の感想はこちら

スキマスイッチの代表曲をそれぞれ別々のプロデューサーによって手掛け、再録音したという企画盤。アルバムの統一性を無視して、各プロデューサーの個性が出まくっている楽曲が非常にユニーク。またその結果、スキマスイッチの楽曲が持つ魅力も再認識させられました。「企画盤」としては今年最高の傑作だと思います。

5位以降はまた明日に!

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2018年2月 2日 (金)

2017年ベストアルバム(洋楽編)

今年もまたやってきました。恒例の年間ベストアルバム。まずは洋楽編です。

5位 Slowdive/Slowdive

聴いた当時の感想はこちら

シューゲイザー四天王のうちの1組と呼ばれるイギリスのロックバンドによる22年ぶりの新作。ここ最近、彼らに限らずジザメリやマイブラ、RIDEなど往年のシューゲイザーバンドの復活作のリリースが相次いでいますが、その中でも文句なしに秀でた傑作アルバムだったのが本作。いまなお現役感あふれる作品でした。

4位 Pleasure/Feist

聴いた当時の感想はこちら

前作「Metals」も高い評価を受けたカナダ出身のシンガーソングライターによる6年ぶりの新作。フォーキーでシンプルなサウンドとダイナミックなギターサウンドを同居させたサウンドも魅力的ながらも、なによりも彼女のボーカルと美しいメロディーラインに酔いしれる傑作アルバムでした。

3位 WHO BUILT THE MOON?/NOEL GALLAGHER'S HIGH FLYING BIRDS

聴いた当時の感想はこちら

ご存じ元oasisの「お兄ちゃん」によるソロプロジェクトによる3作目の作品。今年リリースされた弟、リアム・ギャラガーのアルバムがoasisの路線を引き継ぐような作品だったのとは対極的に分厚いホーンセッションや打ち込みを取り入れたりと、あきらかにoasisの路線からの決別を感じさせるアルバムになっていました。もちろん、ノエル・ギャラガーのメロディーメイカーとしての才能もいかんなく感じさせる作品。ノエルの新たな一歩を感じさせてくれる傑作でした。

2位 Visions Of A Life/Wolf Alice

聴いた当時の感想はこちら

前作のデビューアルバム「My Love Is Cool」も素晴らしい傑作アルバムでしたが、続く2ndアルバムも傑作アルバム!ここ最近の新人バンドは1枚目は素晴らしくても2枚目は・・・というミュージシャンも少なくなく、これだけの傑作を続けてリリースされるというのは驚きです。80年代的な色合いが強かった前作と比べると今回のアルバムはガレージロックの色合いが強くなった作品に。もちろん前作で感じたドリーミーな美しさも健在で、美しさと荒々しさが同居した、彼女たちの新たな一歩を感じる傑作となっていました。

そして・・・

1位 Drunk/Thundercat

聴いた当時の感想はこちら

そのダサジャケ(・・・というよりもある種の味のあるジャケット)からは全く想像がつかないような80年代AORやフィリーソウル風な楽曲が魅力的な作品。ただ一方で今アメリカで最も評判なベーシストの彼らしいグルーヴィーなリズムはしっかりと流れており、そういう意味ではジャケットからレアグルーヴ的なサウンドを想像した方にとってもなにげに気に入るような要素もしっかりとつまっているアルバムだったかも?2017年の今のサウンドがつまった、まさに2017年を象徴するともいえる傑作アルバムでした。

さて、ほかのベストアルバム候補としては・・・

Different Days/The Charlatans
Crack-Up/Fleet Foxes
I See You/The xx
Dirty Projectors/Dirty Projectors
Arca/Arca
DAMN./Kendrick Lamer
FOR CRYING OUT LOUD/KASABIAN
Chuck/Chuck Berry
Thrill It All/Sam Smith
The Echo Of Pleasure/The Pains Of Being Pure At Heart
NO ONE EVER REALLY DIES/N.E.R.D
Black Origami/Jlin
Ctrl/SZA
If All I Was Was Black/Mavis Staples

と例年になる多くなっているのはそれだけ傑作が多くて豊作だったから・・・というよりは個人的にSpotifyを導入し、リアルタイムで聴いた洋楽のアルバムが激増したから、という理由の方が大きいような。来年からは洋楽も邦楽と同様、ベスト10にしようか考え中です・・・。

あらためてベスト5を振り返ると

1位 Drunk/Thundercat
2位 Visions Of A Life/Wolf Alice
3位 WHO BUILT THE MOON?/NOEL GALLAGHER'S HIGH FLYING BIRDS
4位 Pleasure/Feist
5位 Slowdive/Slowdive

そんな訳で、今年もさらに多くの傑作に出会えますように!

2007年 年間
2008年 年間 上半期
2009年 年間 上半期
2010年 年間 上半期
2011年 年間 上半期
2012年 年間 上半期
2013年 年間 上半期
2014年 年間 上半期
2015年 年間 上半期
2016年 年間 上半期
2017年 上半期

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2018年2月 1日 (木)

AKBのアルバムが1位獲得。

今週のアルバムチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/ja/

まずはタイトル通り、AKB48のニューアルバムが1位獲得です。

まず今週の1位はAKB48「僕たちは、あの日の夜明けを知っている」が獲得。いかにも秋元康っぽいアルバムタイトルが鼻につきます。初動売上は57万6千枚。前作「サムネイル」の60万9千枚(1位)からダウン。

2位はロックバンドUNISON SQUARE GARDEN「MODE MOOD MODE」が初登場。収録曲や曲順は公式サイトでは公表せず、店頭でCDを手に取ってはじめてわかるという販売方法も話題となりました。初動売上は3万9千枚。前作「Dr.Izzy」の3万7千枚(3位)から若干のアップとなりました。

3位初登場はJUNHO(From 2PM)「Winter Sleep」。韓国のアイドルグループ2PMのメンバー、JUNHOによるソロアルバムです。木曜日のリリースながらも見事ベスト3入り。ただし、初動売上は2万8千枚は前作「2017 S/S」の3万4千枚(2位)からダウンしています。

続いて4位以下の初登場盤です。まず6位に新世紀えぴっくすたぁネ申「エピッククエスト」がランクイン。「アイドル系ヲタクグループ」を自称する男性アイドルグループだそうです。本作は初の全国流通盤。初動売上1万2千枚でこの位置にランクインしています。

7位にはもうひとり、韓流男性アイドル。イ・ジョンヒョン(from CNBLUE)「METROPOLIS」がランクイン。こちらも韓国のバンドCNBLUEからのソロアルバム。初動売上9千枚は前作「SPARKLING NIGHT」の1万2千枚(7位)からダウン。

9位初登場は「Fate/Prototype 蒼銀のフラグメンツ Drama CD & Original Soundtrack 2 -勇者たち-」。アニメ「Fate/Prototype」のスピンオフ小説「Fate/Prototype 蒼銀のフラグメンツ」のドラマCDとサントラを収録したアルバム。初動売上6千枚は同シリーズの前作「Fate/Prototype 蒼銀のフラグメンツ Drama CD & Original Soundtrack 1 -東京聖杯戦争-」の9千枚(10位)よりダウン。

最後10位にはすぎやまこういち「交響組曲『ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて』すぎやまこういち 東京都交響楽団」。昨年7月にリリースされた「ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて」の楽曲をオーケストラアレンジで収録したアルバム。初動売上6千枚。同シリーズの前作「交響組曲『ドラゴンクエストX』目覚めし五つの種族」の2千枚(53位)から大幅にアップしています。

今週のアルバムチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2018年1月 | トップページ | 2018年3月 »