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2018年1月16日 (火)

豪華コラボで勢いを増した新作

Title:THANK YOU BLUE
Musician:DAOKO

「恋」「前前前世」など、ここ最近では珍しくヒット曲が続発した2016年から一転、昨年2017年はほとんどヒット曲らしいヒット曲のない1年となってしまいました。そんな中で数少ないヒット曲らしいヒット曲といえばDAOKOの「打上花火」。米津玄師とのコラボによるこの曲はビルボードチャートで昨年8月21日付チャートで3位にランクインし、翌々週に1位を獲得すると年末までベスト10をキープし続けるロングヒット曲となりました。

またDAOKOといって昨年話題になったのは岡村靖幸とコラボした「ステップアップLOVE」。個人的な2017年度の楽曲ベスト10を作るとするとおそらくベスト3には食い込んでくるような名曲。以前、ヒットチャートのコーナーでも紹介したのですがPVがアラフォー世代の岡村ちゃんファンにとってはうれしくなってくる内容になっています。

これも以前のチャート評で書いたことなのですが、出だしに岡村靖幸がDAOKOにバスケでロングシュートを決められてビックルする顔が映し出されるのは、岡村靖幸の代表曲「あの娘ぼくがロングシュート決めたらどんな顔するだろう」のオマージュ。またPVの中でも彼のキレッキレのダンスがめちゃくちゃカッコいいPVになっています。また昨年、ミュージックステーションにDAOKOと岡村靖幸が一緒に出演し、岡村ちゃんがダンスを披露。岡村靖幸を知らない世代の人にも一部話題になったのもうれしいニュースでした。

さてこの2曲がいずれもアニメタイアップというタイアップの良さに助けられつつ、見事ヒットチャートでベスト10入りを果たした彼女。もともとは「女子高生ラッパー」として話題になった彼女ですが、既に20歳の「大人の女性」となったDAOKOのニューアルバムはボーカリストとして自由度の高さを感じさせるアルバムになっていました。

もともと彼女はラッパーとして出てきたものの今回のアルバムでは「ラップ」はあまり披露していません。大ヒットした「打上花火」は米津玄師のメロディーが光るポップチューンになっていますし、「ステップアップLOVE」は岡村ちゃん主導のファンクチューンになっています。

彼女のボーカルもウィスパー気味の澄んだ歌声が非常に魅力的なのですが、透明感が強く独特の癖みたいなものはあまりありません。そのため、どんなタイプの曲でも容易にマッチすることが出来るという点が彼女にとっての大きな強みになっています。

今回のアルバムはそんな彼女の特性を反映して、多くの豪華ミュージシャンとのコラボがひとつの特徴となっています。話題となった「打上花火」の米津玄師、「ステップアップLOVE」の岡村靖幸の他に「同じ夜」では今話題のバンドD.A.N、「ワンルーム・シーサイド・ステップ」ではTempalay、「ダイスキ」ではTeddyLoid、「Juicy」は玉屋2060%、さらには「GRY」ではTHA BLUE HERBのO.N.O.と豪華ミュージシャンとのコラボがズラリと並びました。

結果、アルバム全体としてはエレクトロなポップチューンが中心となりつつ、彼女のウィスパーボイスのかわいらしさを生かしたアイドルポップ風の「Juicy」や「BANG!」のような曲があったかと思えば、ムーディーでジャジーな雰囲気満点の「同じ夜」のような作品、エッジの利いたリズムトラックがカッコいい「GRY」のような曲が同居した、バラエティーに富んだ、まさに前述の通り自由度の高いアルバムに仕上がっています。

このミュージシャンとして、ボーカリストとして自由度の高さが彼女の大きな魅力でしょうし、また同時に多くのミュージシャンとのコラボを成功させることが出来た最大の理由でしょう。ただ一方、この点が彼女にとって同時に大きな弱点とも感じられました。要するにミュージシャンとしての核の部分が若干弱い。豪華なミュージシャンとコラボとしているうちは傑作をリリースできるものの、そこから離れた場合は不安が残る、そう感じてしまいました。

本作に関しても全体としてはちょっとバラバラな感じがマイナス要因として気にかかる部分もありました。ただ本作に関しては、ヒットした2曲を含むDAOKOのミュージシャンとしての勢い、豪華ミュージシャンとのコラボの出来の良さ、そしてなによりも彼女がボーカリストとしての自らの強みに関して自信を持ち、そしてそれをしっかりと生かしている作品になっており、弱点を十分に上回る魅力を感じさせてくれる傑作となっていました。次回作以降の展開は良くも悪くも気にかかりますが、本作に関しては文句なしの傑作アルバム。彼女が大きく成長した2017年という年を締めくくるにふさわしいアルバムだったと思います。

評価:★★★★★

DAOKO 過去の作品
DAOKO


ほかに聴いたアルバム

SOAK/ねごと

エレクトロ路線にシフトしたガールズロックバンドねごとの新作。ここ最近増えてきたガールズロックの中で「エレクトロ」路線ということでひとつ個性を確保しつつある印象が。今回のアルバムではギターロックサウンドを加えて「undone」のようなシューゲイザー色の強い作品があったりして、かなり凝った音使いをしてきています。ただメロディーに関してはインパクトは薄く、サウンドも非常に凝っているのですが、目新しさというインパクトはあまり感じられません。悪いアルバムではないのですが少々中途半端さも感じてしまうアルバムでした。

評価:★★★★

ねごと 過去の作品
Hello!"Z"
ex Negoto

"Z"OOM
VISION
アシンメトリe.p
ETERNALBEAT

歌祭文-ALL TIME BEST-/一青窈

「もらい泣き」「ハナミズキ」のヒットでおなじみの女性シンガーによるデビュー15周年のオールタイムベスト。2枚組のアルバムで、Disc1には彼女の代表曲をリリース順に収録。Disc2は新曲や新録音源、タイアップ曲など「今の彼女」をあらわすような楽曲が収録されています。

一青窈のイメージといえばヒット曲「もらい泣き」「ハナミズキ」のように、ちょっとアジアンテイストを感じられる哀愁感あるバラードナンバーというイメージがあるのですが、このベスト盤に収録されている曲を聴くと、基本的にそのイメージに沿ったナンバーがメイン。ただ一方でRhymesterのMummy-Dをフューチャーしたエレクトロチューン「dots and lines」やらSOIL&“PIMP”SESSIONSをフューチャーしたラテンチューン「他人の関係」など、彼女のパブリックイメージから脱却しようと試みる楽曲も多く、彼女の苦労が痛いほど伝わってきます。

それら挑戦的なナンバーも出来も悪くないのですが、このベスト盤の中では新曲を含めて結局は彼女のイメージに沿った楽曲に戻ってきてしまっているのが辛いところ。彼女のイメージとは異なるヒット曲がうまれれば状況は一気に変わりそうなのですが・・・。結果としてアルバム全体としては「似たような曲が多い」という印象を持ってしまいます。今度の彼女の活躍は「もらい泣き」「ハナミズキ」のイメージからいかに脱却するかが大きなポイントになってきそうです。

評価:★★★★

一青窈 過去の作品
key
花蓮街
歌窈曲
一青十色
私重奏

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アルバムレビュー(邦楽)2018年」カテゴリの記事

コメント

ゆういちさん、こんばんは。

DAOKOのアルバムは僕の昨年の個人的アルバムランキング一位の作品だったので、ゆういちさんがどう評価するのか楽しみでした。ゆういちさんも高評価だったのでよかったです。あと、このアルバムには収録されてませんが、昨年リリースされたBeckとのコラボナンバーもぜひ聴いてみて下さい!

ただ・・・打上花火がヒットしたにも関わらず、このアルバムはオリコンでベスト10入りすらしなかったんですよね・・・そこが残念かつ不安要素です(彼女自身にはファンがついてないんじゃないかという意味で)。そのこちら側の不安を吹き飛ばすくらいの活躍を今年は期待したいです。

投稿: 通りすがりの読者 | 2018年1月17日 (水) 00時27分

>通りすがりの読者さん
DAOKOのアルバム、今の彼女の勢いも反映されていてとてもよかったです。BECKとのコラボ作も聴いてみたいです。
ただ、確かに「打上花火」のヒットからするとアルバムに波及していないんですよね。固定ファンがあまりついていないみたいで・・・ただ、これだけのアルバムをリリースしてくるのなら、これから徐々に彼女のファンも増えてくると思います。これからも楽しみです!

投稿: ゆういち | 2018年1月21日 (日) 22時31分

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