バブル期の「オイニー」を今に
Title:TOKYO
Musician:ベッド・イン
ここ最近、バブル期が一躍脚光を浴びています。バブル期をイメージしたキャラクターがうけた平野ノラや、そこから派生した大阪府立登美丘高校ダンス部の「バブリーダンス」、さらにはそこで使われた荻野目洋子の「ダンシング・ヒーロー」がヒットを記録するなど、「バブル」に関する話題が主にエンタメ界を中心として多く見受けられます。
今回紹介するベッド・インもまさにそんな流れにのって出てきたグループ。自称「地下セクシー・アイドルユニット」である彼女たちは「日本に再びバブルの嵐を起こすべく、80年代末~90年代初頭へのリスペクト精神により完全セルフプロデュースで活動中。」(公式サイトより)だそうで、上のジャケット写真にしても、ディスコのお立ち台やらスキーやら、まさにバブル期の象徴ともいえるアイテムが並んでいます。楽曲もまさに80年代後半から90年代初頭のバブル期そのものの(厳密にはバブル崩壊後の90年代中盤あたりまでの影響が大きいのですが)。おそらくアラフォー世代以上にとっては非常にノスタルジックあふれて懐かしいナンバーが並んでいます。
特に今回のアルバムで収録されている「シティガールは忙しい」は80年代のトレンディードラマを彷彿とさせる歌詞の世界がユニーク・・・以上にちょっと気恥ずかしい感じも。いかにもバブル期らしいアイテムがちりばめられていて、おそらく20代以下にとっては内容の理解に注釈が必要になりそう。個人的には「焼き増し」なんて言葉が出てきて、そういえばこの言葉は完全に死後になったなぁ・・・なんてあらためて感慨にひたったりして(笑)。楽曲的にも90年代のガールズポップ、森高千里や広瀬香美あたりを彷彿とさせるもの(厳密には広瀬香美のブレイクはバブル崩壊後なのですが)であり、バブル期の空気を綿密に残している楽曲作りには感心します。
さらに続く「CO・CO・ROグラデーション」は完全に80年代後半から90年代にかけて一世を風靡したWinkのパロディー。シングル曲なのですが、シングルのジャケットも完全にWinkです↓
この「CO・CO・ROグラデーション」もそうなのですが、アルバム収録曲について全体的にはいかにもバブル期的なユーロビートや80年代風のハードロック的な楽曲が並んでいます。さすがに歌詞の面はバブル期風景を描写したパロディー的な楽曲はさほど多くなく、基本的にはバブル期の香りを残したようなラブソングがメインなのですが、J-POP黎明期の雰囲気を色濃く感じるポップスの連続に懐かしさを感じてしまいます。
もともとメンバーの2人、生粋のアイドル・・・ではなくお互いバンドで活躍していたそうで(それもポップス系ではなくむしろサブカルアングラ系っぽいバンド)それだけに演奏面を含めて楽曲的にはしっかりしたものが並んでいます。自称「アイドル」ですが、本人たちも「猫も杓子もロリロリ重視の現代のアイドルシーンに殴り込みにイクかと一念勃起」といっているように、昨今のアイドル楽曲とは一線を画するものがあります。
ただし、ユーロビートや80年代ハードロックを基調としたポップスはインパクトはあるものの音楽的には若干平凡さは否めず、単発で聴く分には非常に楽しめる反面、アルバム単位で聴くと最後の方は若干だれてしまうというのが正直な印象。アルバム自体、全11曲50分弱という比較的コンパクトな長さなので飽きる前に楽しめるといえば楽しめるのですが、何度も聴くのはちょっと厳しい面もあるかな、という印象も受けました。
また個人的には(彼女たちに限らないのですが)昨今のバブル礼賛にはちょっと疑問を感じる部分もあります。自分はバブル期には小学生から中学生だったのですが、そんな年齢でもバブルに踊っている人たちに対しては非常に軽薄だなぁ、という印象を強く受けましたし、バブル崩壊後に露呈された金融機関をはじめとする日本企業のあまりにもずさんな企業運営を見る限りにおいては、「バブルよもう一度」など口が裂けてもいえないと思います。
特にバブル経済崩壊後、「失われた10年」といわれる景気後退側面に突入するのですが、個人的には不況があれだけ長引いた原因のひとつが、景気が回復した結果やってくるのがバブル経済回帰ならば不況の方がまし、という心理状況が働いたようにも思います。
そんな訳で個人的には昨今のバブル礼賛には疑問を抱きつつも、「ネタ的」にはおもしろく(まあ、ここ最近のバブルの取り上げ方も単純な礼賛というよりは「ネタ的」に消費されている部分も大きいのですが)、またやはりアラフォー世代としての懐かしさもあって、楽しめた1枚でした。なによりもバブル期のパロディーとしては非常によく出来たアルバムだと思います。ネタ的に時代が限られてしまうだけに今後、どこまでネタが続けられるのか気になる部分はあるのですが・・・これからアラフォー、アラフィフ世代のハートをどのようにつかむのか、楽しみになってきます。
評価:★★★★
ほかに聴いたアルバム
Beyond The Reach/HAWAIIAN6
HAWAIIAN6といえば、哀愁感あふれるメロディーラインが印象的なメロコアバンド。ただ似たようなタイプの曲が多く、良くも悪くも安定感を感じさせるバンドでした。ただ、今回のアルバムに関しては「justice」のようなデス声も入ったハードコア風なナンバーや「Ride On The Shooting Star」のような明るくポップなナンバーも登場。楽曲にバリエーションが出てきています。メロディーにもインパクトのある楽曲が多く、個人的にはここ数作では一番の出来かと。新たな一歩を感じさせる作品でした。
評価:★★★★★
HAWAIIAN6 過去の作品
BONDS
The Grails
Where The Light Remains
Dancers In The Dark
てんきあめ/CRUNCH
名古屋を中心に活動をする3人組ガールズバンド。海外のメディアにも取り上げられるなど一部で注目を集めるポストロックバンドで、これが初のフルアルバム。ちょっと気になって聴いてみました。
楽曲は音数を絞ったシンプルなサウンドが特徴的。空間を聴かせるようなドリーミーなサウンド構成になっており、美しいコーラスラインも魅力的な楽曲となっています。本人たちははっぴいえんどからの影響も公言しているようで、それだけメロディアスな曲もあるものの、メロディーのインパクトはちょっと薄かったかな。全体的なインパクトも薄いし、まだまだといった部分も大きいのですが、地元のバンドという身びいきと(笑)これからの期待を含めて下の評価で。
評価:★★★★★
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コメント
ゆういちさん、こんばんは。
ベッド・インを聴いてくれましたか。個人的にゆういちさんにぜひとも聴いて欲しかったユニットなのですごく嬉しいです!
実は昔からKIX・SやMANISHのようなユニットが好きなので、彼女達はインディーズ時代から応援してました。彼女達のような存在がブレークすれば、音楽シーン及びアイドルシーンがもっと面白くなると思うので、ぜひとも頑張ってほしいです
投稿: 通りすがりの読者 | 2018年1月10日 (水) 00時07分
>通りすがりの読者さん
ベッド・イン、アラフォー世代としては(バブル期というよりもバブル崩壊直後がドンピシャなのですが)非常に懐かしく感じます。これからの活動も注目ですね!
投稿: ゆういち | 2018年1月21日 (日) 22時28分