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2018年1月22日 (月)

独特なリズムが印象的

Title:Black Origami
Musician:Jlin

2017年ベストアルバムとして各種メディアで評価されている作品のうち、リアルタイムで聴きそびれたアルバムを今、あらためて聴いているのですが、本作もそんな1作。ミュージックマガジンのハウス/テクノ/ブレイクビーツ部門で1位を獲得したほか、ピッチフォークで10位、米SPIN誌で6位の評価を受けています。

Jlinはアメリカインディアナ州出身の女性プロデューサー。前作「Dark Energy」も大きな話題を呼びました。彼女の奏でる音楽はジューク/フットワークと呼ばれる、アメリカ・シカゴ発祥の最近、話題となっているムーブメントらしく、ベースの重低音とBPM160の三連譜などを基調としたポリリズムのリズム(Juke)と、足技を中心にした高速ダンス(Footwork)を融合させたダンスミュージックだそうです。

本作でもそんなジューク/フットワークの特徴である重低音を重視したサウンドとポリリズムのサウンドが印象的。特にポリリズムのサウンドはアフリカ音楽的なトライバルな雰囲気を醸し出しており、例えば「Nyakinyua Rise」はどこか呪術的な叫び声なども聞こえたりして、独特の雰囲気を出していますし、「Nandi」は細かいリズムで奏でる重低音のパーカッションが耳に残るトライバルな作風の楽曲に仕上がっています。

本作についてもうひとつ特徴的なのが、全体的に非常に音数を絞って空間を聴かせるような音づくりをしているという点。アルバム通じて、サウンドは非常にシンプル。音を重ねるというよりも、個々のリズムやサウンドが個性を持って主張しているような、そんな印象を受ける楽曲が並んでいました。

そしてもうひとつの大きな特徴として楽曲毎に様々なリズムやサウンドを使っており、バリエーションがある音作りをしているという点でした。これはジューク/フットワークのWikipediaの記述にも「同一のトラックメイカーの楽曲でも、曲ごとのリズムが一定ではなく多彩多層な構造を持った曲構成で、かなりバラエティに富む。」と書かれており、このジャンルの特徴なのでしょう。

例えば「Holy Child」では女性のボーカルをサンプリングして神秘的な雰囲気に仕上げており、BPMも遅め。「Hatshepsut」は行進曲のようなリズムとサウンドになっていますし、「1%」はスペーシーなサウンドで近未来的と楽曲によってリズム、サウンドともにバリエーションのある曲調が魅力的でした。

わかりやすいメロディーラインというのはなく、リズムにも複雑さを感じるのですが、やはり基本はダンスミュージックだからでしょうか、決して難解さはなく、リズミカルなサウンドが楽しめる音楽であったことは間違いありません。個人的にも年間ベストクラスの傑作だったと思います。その独特なサウンドが妙に癖になるアルバムでした。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Culture/Migos

こちらも上記「Black Origami」と同様、2017年ベストアルバムをあらためて聴いてみた1枚。MUSIC MAGAZINE誌のラップ/ヒップホップ部門で2位を獲得した他、Rolling Stone誌で9位、ピッチフォークで19位、アメリカSPIN誌で11位を記録しています。

彼らの音楽は最近話題となっているHIP HOPの一ジャンル、トラップというジャンルにカテゴライズされるもの。Wikipediaによると重低音を強調したビートに、トラップ特有のスネアドラムの連続音や、派手な電子音を加える中毒性の高いスタイルが一般的だそうです。

その特徴の通り、重低音を強調したシンプルなリズムにスネアドラムのリズムが印象的なサウンド。全体的に哀愁感あってどこかメロディアスな雰囲気が魅力的な楽曲になっています。全体的にしんみりとした雰囲気が漂っているのですが、サウンドを含めてどこか中毒性を感じるサウンドになっており、思わず聴き入ってしまうアルバムでした。

評価:★★★★★

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