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2018年1月29日 (月)

80歳を超えてまだまだ現役

Title:Bebalee
Musician:Fayrouz

今回紹介するのはアラブ世界で絶大な支持を得ているレバノン出身の女性ミュージシャン、Fayrouz(Fairuzと綴る場合も)(ファイルーズ)のニューアルバム。1950年代から活躍している大ベテランの彼女で、現在なんと御年82歳。ただ、いまだに現役を続けており、なんと80歳を超えてリリースされたニューアルバムが本作。その意欲的な活動に驚かされます。

ちなみに今回のアルバムのリリースを知ったのはミュージックマガジン誌の年間ベストで紹介されていたから。ただ彼女については以前リリースされた初期の作品集を聴いて、その歌声に魅了されたこともあり今回のアルバムもさっそく聴いてみました。

そんな彼女のニューアルバムはカバーアルバム。選曲に関してはベタ・・・というか私たち日本人にとってもなじみのある曲が多く、1曲目「Rah Nerjaa Netla'a」は日本人にもおなじみ「蛍の光」ですし、続く「Yemken」はジョンレノンの「Imagine」。さらには「Ana Weyyak」は「ベサメムーチョ」ですし、「Hkayat Kteer」は「マイ・ウェイ」、「Ma Tezaal Mennee」は「Don't Cry for Me Argentina」と耳馴染みのある曲の連続。それらの曲をアラビア語訳で歌っているのがまたおもしろく、私たちがよく知っているナンバーがちょっと違った雰囲気に聴こえてきます。

しかしなんといってもこのアルバムで魅力はファイルーズの歌声。彼女のボーカルは抑揚があるわけではなく、わかりやすい感情表現がある訳ではありません。ある意味、淡々とした雰囲気で聴かせるのですが、この歌声には包容力を感じ、ある種の色気も感じられます。さらに淡々とした歌い方にも関わらず、その歌声からは圧倒的な表現力も感じます。先日紹介したHiba Tawajiも彼女と同じレバノン出身の女性シンガーで、ファイルーズフォロワーと位置づけられるシンガーで、彼女のボーカルも十分すぎるほど魅力的でその実力を感じるのですが、それでもなおファイルーズの歌声には格の違いすら感じてしまいました。

だからこそこのアルバムを聴いた時は、まずその歌声に聴きほれてしまったというのは事実。それほど圧巻の魅力をその歌声からは感じることが出来ました。ただ・・・それと同時にその歌声はちょっと厳しいな、と感じてしまったのも事実。正直言ってしまうと、このアルバムからは寄る年波というのを嫌というほど感じてしまいます。

やはりまず音域はほとんどありませんし、声量も不足気味。さらに微妙に衰えているその歌声は、やはり「おばあちゃん」ということを感じてしまいます。80歳を過ぎながらもこれだけ歌えているというだけで十分といえば十分なのですが、それでもやはり80歳を超えた人の歌声という点は否定できません。

ミュージックマガジン誌でも本作を年間ベストとして選ぶのはかなりもめたように書かれていたのですが、確かにこれを年間ベストとするのには賛否が出てくるのは嫌というほどわかります。

ただ一方では上にも書いた通り、おもわず惹きつけられてしまうだけの魅力はまだまだその歌声からは残っており、ファイラーズとしての魅力もしっかりと感じることが出来ました。だからこそ80歳超えた今でもアルバムとして作品を残すことが出来たのでしょう。以前聴いた初期作品集から比べても衰えは隠し切れませんし、おそらく彼女の全盛期の作品と比べると、かなり厳しい側面は否めないのでしょう。ただそれでも彼女の魅力はしっかりと残されている魅力的なカバーアルバムでした。

評価:★★★★

Fayrouz 過去の作品
THE EARLY PERIOD OF FAIRUZ


ほかに聴いたアルバム

Seeni Valeurs/Youssou N'dour

おそらくアフリカのミュージックシーンで最も知名度の高い大御所中の大御所、Youssou N'dour。2016年にアルバム「AFRICA REKK」をリリースしたばかりですが、早くもニューアルバムがリリースされました。ただし全7曲入りでリミックスも収録と、事実上のミニアルバム。楽曲はポリリズムのパーカッションを強調したリズミカルな曲が多く、目新しさはないものの、とにかくハイテンポで軽快なリズムを楽しめる作品になっていました。

評価:★★★★

Youssou N'dour 過去の作品
AFRICA REKK

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