ハイライフの大御所的ミュージシャン
Title:Ketan
Musician:Blay Ambolley
今回紹介するアルバムも、ここ最近続いている、各種メディアの2017年ベストアルバムのうち、リアルタイムで聴けなかったアルバムを後追いで聴いてみた1枚。本作はミュージックマガジン誌のワールドミュージック部門で3位にランクインしたアルバム。Blay Ambolleyはジェデドゥ=ブレイ・アンボリーの名前でも知られるガーナ出身のハイライフ(西アフリカで生まれた現地の音楽と西洋音楽を融合させた音楽のジャンル)のミュージシャン。ジェイムズ・ブラウンから強い影響を受けたミュージシャンだそうで、1975年にリリースしたアルバム「SIMIGWA」はハイライフの名盤のひとつとして知られています。
そんなハイライフの大ベテランミュージシャンの彼。御年70歳になろうかというミュージシャンなのですが、アルバムの内容に関していえば現役感バリバリ。1曲目「Afrika Yie」ではいきなり「アフリカ」というフレーズを繰り返しています。そういえば上のジャケット写真もアフリカをかたどっていますし、「アフリカ音楽である」ことを強調した作品と言えるかもしれません。
ポリリズムのパーカッションを主体としたリズムや泥臭さを感じるメロディーラインやボーカルには非常にアフリカらしさを感じます。その一方でユニークなのは、そんなサウンドをベースにしつつ、全体的には西洋音楽的な要素も色濃く感じられる点でした。
もっとも目立つのがジャズからの影響。アルバム全体に流れるムーディーでビターなホーンセッションやギターは非常にジャズ的な要素を感じます。彼のボーカル自体もムーディーな雰囲気が強く、哀愁感あふれるメロディーラインを含めて、ちょっとくすんだ空気が流れているのが大きな魅力。日本人にとってもどこか懐かしさを感じます。
また「Ketan」でのパーカッションや「Teacher」でのスチール・パンなどからはラテンの要素も感じられますし、「Simigwa-Do」はギターサウンドやシャウト気味のボーカルを含めてロック色の強い作品に。「It's Alright」ももともと彼の原点でもあるファンクの要素が強く出ている作品になっていますし、冒頭のギターソロをはじめ、ロック的な要素も強く入ったアルバムとなっています。
ハイライフという音楽自体、西アフリカの音楽と西洋音楽を融合させたポピュラーミュージックなだけに、西洋音楽含めていろいろな音楽を混在させているというのもハイライフのスタイルのひとつと言えるのでしょう。今回のアルバムの中では特にムーディーでジャジーな要素を強く感じ、これがまた日本人の琴線にも触れるような哀愁感をアルバム全体に漂わせていました。
ある意味、アフリカ的な泥臭さと西洋的な垢抜けた部分がほどよいバランスで見事に融合したアルバムだったと思います。大ベテランの彼ですが、まだまだ若いものには負けないとばかりの勢いすら感じる傑作。年間3位という結果も納得です。
評価:★★★★★
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