« 王道路線 | トップページ | バブル期の「オイニー」を今に »

2018年1月 8日 (月)

結成20周年のベストアルバム

Title:BEST OF BACK HORN II
Musician:THE BACK HORN

結成20周年を記念してリリースされたTHE BACK HORNのベストアルバム。2008年に結成10周年ということでベスト盤をリリースしており、今回収録している楽曲はその2008年にリリースされたベストアルバム以降の曲を発売順に並べているDisc1と、2008年のベストアルバム以前の曲からファン投票で選ばれた楽曲を並べたDisc2の2枚組になっており、あわせてオールタイムベスト的な内容となっています。

基本的に彼らの作風はデビュー当初から固まっていて、分厚いサウンドでダイナミックに仕上げたバンドサウンドに叙情感たっぷりの哀愁あふれるメロディーライン、歌詞も社会の中である種の孤独をかかえた人たちへの希望を歌ったような歌詞が印象的。とにかく力強さを感じさせる楽曲は強いインパクトを感じさせます。

ただ一方では似たようなタイプの曲が多く、分厚いサウンドはともすれば平板な印象すら受けてしまいます。正直、THE BACK HORNについて個人的には同時期にデビューしたACIDMANやらART-SCHOOLやらと印象的に重なる部分が多く・・・いまひとつ垢抜けきれないという印象も受けていました。

しかしこのベスト盤で2008年以降の楽曲を並べて聴くと、特にここ最近の彼らがスタイルを少しずつ変えてきていることにあらためて気が付かされました。例えば「コワレモノ」ではラップを入れていますし、また「ビリーバーズ」をはじめ2014年、2015年頃の作品はへヴィーなギターリフを入れて、ハードコアの様相を呈した楽曲も並んでいます。

また一方で「魂のアリバイ」のようにサビ先でインパクトある、いい意味でポピュラリティーの要素の強い楽曲があったり、最後に収録されている新曲「グローリア」は軽快である種の祝祭色を感じたりと、いままでの彼らにはちょっと見受けられなかったタイプの曲も並びます。

現時点での最新アルバム「運命開花」は個人的にも傑作なアルバムだと思っているのですが、ここ10年の彼らの曲を聴くと、音楽的な挑戦も含めてその幅が広がり、楽曲的には勢いを増しているように感じました。結成20年というとベテランバンドの仲間入りも果たして、良くも悪くも安定感が増す時期だと思うのですが、彼らに関してはバンドとして成長を続けており、そのポテンシャルに驚かされます。

一方Disc2には2008年以前の彼らの曲が収録されています。ファン投票の結果選ばれた曲であるため、知る人ぞ知る的な曲が含まれている一方、「ガンダム」のエンディングテーマに起用され、現時点で彼ら唯一のシングルベスト10ヒット曲である「罠」もちゃんと収録されており、それなりにバランスも取れた選曲になっています。

ただ楽曲的にはDisc1の曲よりも、メロディーの哀愁感がより強く、歌謡曲的な雰囲気も強い楽曲になっています。この時期の曲は今よりも一層、そういう方向性が強かったのかもしれませんが、加えてファンとしてもより哀愁感の強い楽曲を求める部分が多いのかもしれません。

そんな訳で、THE BACK HORNの魅力をあらてめて強く感じることが出来たベスト盤。なにげにともすれば最近の曲の方が出来が良く感じるだけに、これからの活動も楽しみになってきてしまいます。次のアルバムも楽しみです。

評価:★★★★★

THE BACK HORN 過去の作品
BEST
パルス
アサイラム
リヴスコール
暁のファンファーレ
運命開花


ほかに聴いたアルバム

走る/Polaris

オオヤユウスケとFishmansとしても活躍する柏原譲によるユニットPolarisの2年9ヶ月ぶりとなるアルバム。彼ららしい幻想感ある独特なサウンドは相変わらずで、浮遊感あるサウンドは魅力的。今回は6曲入りのミニアルバムで、特に目新しいものはないのですが、安心してPolarisサウンドを楽しめる作品になっていました。ラストはFishmansの「SEASON」のカバーを収録。こちらもいい意味で卒なくこなし、きちんと楽曲の魅力を伝えるカバーになっています。

評価:★★★★★

Polaris 過去の作品
MUSIC

私は幸せ/柴田淳

途中、ベスト盤のリリースを挟んだものの、純粋なオリジナルアルバムとしては約2年8ヶ月とちょっとスパンの空いた柴田淳のニューアルバム。「私は幸せ」というアルバムタイトルとは裏腹に、悲しい失恋や恋の終わりを歌った歌が並び、それをアコギやピアノといったアコースティックなサウンドにのせて哀愁感たっぷりに歌い上げるという、柴田淳の王道路線とも言える作品になっています。連作の「拝啓、王子様」シリーズも衝撃的なラストを迎えています。目新しさはありませんが、柴田淳のファンなら安心して聴けるアルバムになっていました。

評価:★★★★

柴田淳 過去の作品
親愛なる君へ
ゴーストライター
僕たちの未来
COVER 70's
あなたと見た夢 君のいない朝
Billborda Live 2013
The Early Days Selection
バビルサの牙
All Time Request BEST~しばづくし~

|

« 王道路線 | トップページ | バブル期の「オイニー」を今に »

アルバムレビュー(邦楽)2018年」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 結成20周年のベストアルバム:

« 王道路線 | トップページ | バブル期の「オイニー」を今に »