ほっこり暖かいメロと風景描写が魅力
Title:20/20
Musician:スカート
インディーズからリリースした前作「CALL」も大きな話題となった澤部渡のソロプロジェクト、スカート。今回、ポニーキャニオンから無事メジャーデビューが決定。本作がメジャーデビュー後、初となるフルアルバムとなります。
彼自身、以前からサポートミュージシャンとしても活躍しており、特にスピッツのサポートとしてMステに出演した時に話題となったというのは前作「CALL」でもここに書いたとおり。また楽曲の作風としても比較的スピッツに近いものがあるという点も書きました。
今回のアルバムに関しても、スピッツの楽曲に通じるような暖かさを感じるギターポップがひとつの大きな魅力となっています。特に1曲目を飾る「離れて暮らす二人のために」などはアコギではじまる暖かい雰囲気の作風がまさにスピッツっぽい感じ。特に途中のベースラインの入り方などスピッツっぽさを感じます。一方、歌詞については叙情的ながらも比較的わかりやすい風景描写が特徴的で、ここらへんはスピッツとは異なる雰囲気も感じます。
前作でもスピッツ風のギターポップという一言ではとどまらないようなバリエーションある音楽性が大きな魅力でしたが、本作ではその傾向がより強くなっています。「視界良好」ではファンキーなギターを聴かせてくれますし、「手の鳴る方へ急げ」ではヘヴィーなギターリフが入り、ピアノも含めてダイナミックなロックサウンドを聴かせてくれます。
テレビ東京系ドラマ「山田孝之のカンヌ映画祭」主題歌に起用されて話題となった「ランプトン」はちょっと切ないメロディーが印象的なシティポップになっていますし、ラスト「静かな夜がいい」もブルージーなギターが印象に残るシティポップ(ちょっと曽我部恵一っぽい?)ナンバーになっています。
歌詞も都会的・・・というよりも都市郊外の風景について具体的な描写が印象的。特に「わたしのまち」が象徴的ですが、街の風景についての描写が多く、そういう意味でもまさに「シティポップ」と言い方がピッタリかもしれません。またその一方で、その風景にはどこか暖かさも感じられ、生音重視のサウンドと相まって、とてもほっこりとしあ雰囲気の作風に仕上がっています。
ちなみに歌詞で印象的だったのは「私の好きな青」。
「僕らが旅に出ない理由なんて
本当はただのひとつだってないんだ」
(「私の好きな青」より 作詞 澤部渡)
というフレーズ。なんとなく小沢健二の大名曲「ぼくらが旅に出る理由」の「ぼくらが住むこの世界では 旅に出る理由があり」というフレーズに呼応しているように感じたのですが、気のせいでしょうか?
基本的にはそんなこともあり、前作「CALL」と同じようなタイプのアルバムに仕上がっていました。ただその反面、目新しさがなく物足りなさも感じた前作に比べると、今回は楽曲のインパクトも増し、アルバムの出来がグッと良くなったように思います。例えば「さよなら!さよなら!」などは十分なヒットポテンシャルのあるようなサビが展開されたりして、メロディーラインの良さもグッとレベルアップしたように感じます。
個人的には非常に心に染みいってくるメロディーの良さもあり、文句なしにはまってしまった大傑作。スカートというミュージシャンの魅力が最大限に発揮された作品でした。
評価:★★★★★
スカート 過去の作品
CALL
ほかに聴いたアルバム
Long Long Time Ago/Nulbarich
最近、話題上昇中のNulbarichの新作は4曲入りのEP盤。ソウルやアシッドジャズなどの要素を取り入れたポップスはSuchmosなどと並んで、今の流行を感じさせます。基本的な路線は前作「Who We Are」と同様。次はフルアルバムを聴きたいかも。
評価:★★★★
Nulbarich 過去の作品
Who We Are
OYSTER-EP-/NICO Touches the Walls
NICOの最新作は5曲入りのEP盤。最近、楽曲に勢いを感じられる彼らですが、最新アルバムは5曲入りとはいえ、いままでにないバラエティー豊富な作風に。1曲目「mujina」は彼ららしいギターロックからスタートするのですが、ピアノを軽快に聴かせる「Funny Side Up!」やシティポップ風の「bud end」など、いままでの彼らとは少々違った傾向のバラエティー富んだ作風に仕上がっています。その分、少々散漫な印象を受け、インパクトも薄めなのですが・・・その分、次のアルバムがこのEPをどのように生かしてくるのか、楽しみになってきました。
評価:★★★★
NICO Touches the Walls 過去の作品
Who are you?
オーロラ
PASSENGER
HUMANIA
Shout to the Walls!
ニコ タッチズ ザ ウォールズ ノ ベスト
Howdy!! We are ACO Touches the Walls
勇気も愛もないなんて
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