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2018年1月21日 (日)

ロックとアフロが同居

Title:Mali Foli Coura
Musician:BKO

2015年、アルバム「BAMAKO TODAY」が大きな話題となったBKO Quintet。それから約2年10ヶ月、彼らの2ndアルバムがリリースされました。彼らはアフリカのパーカッション、ジェンベの奏者イブラヒマ・サールとフランス・リヨン出身の白人パーカッショニスト、エメリック・クロールを中心に結成された5人組バンド。若干謎なのが今回のバンド名で、どうも正式なミュージシャン名義は「BKO」と短縮されたようですが、バンド名を変えたのか、別名義のバンドなのか不明。媒体によってはこのアルバムも「BKO Quintet」として紹介していますし、またメンバー構成も全く同じ模様。おそらくは、単純に改名しただけと思うのですが・・・。

前作「BAMAKO TODAY」の感想で彼らの魅力は「アフリカらしいアグレッシブなサウンドを構成しつつも、一方ではどこかあか抜けた感じのするメロディーやサウンドを聴くことが出来る点」と書きました。そして基本的な方向性は前作と同様。本作でもアフリカらしいトライバルな要素と欧米の音楽のような垢抜けた要素が同居しているロックな作風が非常に魅力的な作品となっていました

特に彼らの音楽で耳を惹くのが、ンゴニという西アフリカでもっともポピュラーが弦楽器にエフェクトを通じて思いっきり歪ませているサウンド。この歪んだサウンドがまるでギターのように奏でられている一方で、ギターの音とはちょっと異なった、もうちょっと泥くさいような独特の音色を出しており、大きな魅力となっています。

ただ、このディストーションをかけたンゴニの音色がバンドのサウンドに垢抜けた要素を加えているひとつの要素となっており、例えば「Strange Koreduga」では、こぶしを効かせて歌い上げるボーカルやパーカッションの音色がトライバルな雰囲気を醸し出している一方、ファンキーなリフを展開するンゴニのサウンドが非常にファンキーでロックな要素を強く出しており、楽曲を垢抜けた雰囲気としています。

この曲に続く「Dirty Donso」もこぶしを効かせたボーカルを聴かせつつ、重低音を利かせるリズミカルなビートが奏でるグルーヴ感や分厚いサウンドは非常に高揚感があり、ロック的な要素を感じます。逆に「Mali Liberela」はポリリズムのサウンドをミニマルに展開していくアフロファンク的な要素が強く、フェラ・クティからの影響も感じさせるナンバーで、非常に「アフリカ」的な要素を強く感じるナンバー。このように、欧米的な雰囲気を感じるロックの要素とアフリカ的な雰囲気を感じるアフロファンクな要素を同居させた音楽性が今回のアルバムでも大きな魅力となっていました。

後半では「BKO nana」ではどこか日本のチンドン的な要素を感じるナンバーが登場したり、ラストの「Mom amour」ではフランスのシンガーソングライターマチュー・ボガートが登場し、フレンチポップ風のナンバーになったりと、ユニークな音楽性を垣間見せる部分も。前作でもこういった要素を感じる部分はあり、そういう意味でも基本的には前作からの流れを踏襲するようなアルバムとなっていました。

ワールドミュージックのカテゴリーに入れられるミュージシャンですが、ロック的な要素も非常に強く、アフリカ音楽の愛好家だけではなく、ロックリスナーも十分に楽しめそうなアルバムになっていました。前作に引き続きの傑作アルバム。ロックファンも要チェックです。

評価:★★★★★

BKO 過去の作品
BAMAKO TODAY(BKO Quintet)


ほかに聴いたアルバム

Pure Comedy/Father John Misty

リアルタイムで聴き損ねた2017年ベストアルバム上位アルバムをいまさらながら聴いてみるシリーズ。本作は「MUSIC MAGAZINE」誌「ロック[アメリカ/カナダ]」編で1位を獲得した他、ピッチフォークで11位、イギリスQ-Magazineで7位など上位にランクインしているアルバム。元Fleet Foxesのドラマー、ジョシュア・マイケル・ティルマンのソロプロジェクトの、Father John Mistyの同名義3枚目となるアルバムです。

今回、彼の作品をはじめて聴いたのですが、アコースティックギターとストリングスでフィーキーに聴かせる作風。決して派手さはなく、むしろ全体的には地味という印象を受けてしまうのですが、聴いているとしっかりと心に残る美しいメロディーラインが印象に残ります。こういうアルバムを1位に選ぶのはいかにもミューマガらしい感じなのですが、非常に優れた傑作アルバムであることは間違いないと思います。非常に心に染みいってくる名盤でした。

評価:★★★★★

A Deeper Understanding/The War On Drugs

アメリカ・フィラデルフィア出身のインディーロックバンド、The War On Drugs。前作「Lost in the Dream」は各種メディアに大絶賛を受けましたが、本作も2017年ベストアルバムのピッチフォークで7位、イギリスUncut誌では2位、アメリカSpin誌で5位と大絶賛を受けています。

個人的には前作「Lost in the Dream」が非常に気に入っただけに本作も楽しみにしていたのですが・・・シューゲイザー色も強くサイケの色合いが濃かった前作に比べると、全編的にエレクトロサウンドを取り入れた本作。全体的には明るくポップな印象も強いのですが、サウンド的に少々チープさを感じてしまいました。このインディー的なノリも魅力なのかもしれませんが、個人的には前作ほどはまれませんでした・・・。悪いアルバムではないと思うのですが・・・ちょっと残念に感じた1枚です。

評価:★★★★

The War On Drugs 過去の作品
Lost in the Dream

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