« 新年2週目から新譜ラッシュ | トップページ | とても暖かい »

2018年1月19日 (金)

歌謡曲のパロディー

Title:HOMEMADE
Musician:半田健人

「仮面ライダー555」の主演としてブレイクし、活躍する俳優の半田健人。ここ最近では昭和歌謡曲への深い造詣を有し、歌謡曲の評論家的な活動、さらには自ら楽曲制作を行いアルバムをリリースするなど、音楽へその活動の主軸を移しつつあります。

本作はそんな彼の2枚目となるオリジナルアルバム。今回、はじめて彼のアルバムを聴いたのですが、きっかけは「MUSIC MAGAZINE」誌の2017年ベストアルバムJポップ/歌謡曲部門で1位を獲得したため。毎年、年末に発表される各種メディアの年間ベストアルバムのうち、未聴だったアルバムを聴いてみるのですが、その一環としてはじめて彼のアルバムを聴いてみました。

彼の趣味からある程度は予想していたのですが本作、完全に昭和歌謡曲を現在に再現したような作品。それも「昭和歌謡曲」といっても様々なバリエーションを聴かせてくれており、グループサウンズ風のギターインストナンバー「赤羽一番街の殺人」からスタート。続く「裁かれる者たちへ」は昔のサスペンスドラマの主題歌のような歌謡曲。さらに「江ノ島電車」は歌謡フォークな爽やかな楽曲と続きます。

さらにはムード歌謡曲の「西航路」や昔のアイドル歌謡曲風の「箱根に一泊」、シャンソン歌謡の「お茶の水シャンソン」など、歌謡曲を様々なタイプに分類分けし、バリエーション豊富に歌っています。どの曲もどこかで聴いたことあるよなタイプの曲ばかりで、歌詞もいかにもな歌謡曲風。またボーカルについても楽曲のタイプに応じて曲ごとに声色をつかいわけており、ここらへんさすが俳優といった印象を受けます。アルバム全体としての統一感は「歌謡曲」という点をのぞいて薄いのですが、このアルバムを聴くことによって歌謡曲の多様性を垣間見ることが出来、そういう意味で歌謡曲評論家のような批評的分析的な解釈で歌謡曲のパロディーを聴かせてくれるようなアルバムになっています。

そういう意味で非常によく出来たアルバムであることは間違いありません。で、以下は本作の内容とは全く関係ない話で非常に恐縮なのですが・・・・

このアルバムが2017年のベストアルバムってはありえないだろう・・・って話。

前述の通り、アルバムの出来として優れているのは間違いありません。ただ、内容的には完全に歌謡曲を模倣したパロディー的なアルバム。正直言って、半田健人としての新しい解釈、2017年ならではの今風の味付けというのはほとんどありません。

そういう意味ではこのアルバムが2017年を代表するアルバムというのは非常に疑問を感じてしまいます。本作から2017年という時代性を感じることはできませんし、過去の模倣的な作品を選ぶということ時代に非常に後ろ向きなものを感じてしまいます。クレイジーケンバンドのように昭和歌謡をベースに彼らなりの音楽性を加味しているのならともかく、本作はある種確信的にパロディーに徹しています。それはそれでもちろんスタンスとしてありなのでしょうが、その年を代表するアルバムか、と言われるとちょっと首をかしげてしまいます。

もちろん、個人が自分の好みで決めるベストアルバムで本作をベストアルバムにするのは全く問題ないと思います。ただ、批評的な判断を加えるべき音楽雑誌のベストアルバムでこういう過去のパロディー的な作品を、ベスト10の中の1枚に選ぶというのはともかく、その年の「顔」である1位に選ぶというのは非常に疑問。そもそもミュージックマガジンのこの手のベストアルバムの選考って、ポピュラーミュージックの中での位置づけなど全く考慮せずに、完全に自分の好みだけでベストアルバムを選んでいる評者もしたりして、以前から疑問に感じる部分が少なくなかったのですが、本作の1位についてはその疑問を強く感じてしまいました。

以上、半田健人のアルバムの内容自体には全く関係ないお話。ただ、どうしても強く疑問に感じてしまったので書かせていただきました。個人的には良く出来た優れたアルバムだとは思うのですが、完全にパロディーという意味で下記のような評価に。ただ、歌謡曲のパロディーアルバムとしては非常に楽しめるアルバムでした。

評価:★★★★


ほかに聴いたアルバム

LUV/LUNA SEA

純然たるオリジナルアルバムとしては再結成後2枚目、前作「A WILL」からちょうど4年ぶりとなるニューアルバム。その前作「A WILL」はポップな要素が強く、かなり物足りなさが残ってしまうアルバムでしたが、本作も残念ながらその路線を引き継いだような作風に。LUNA SEAのロックな側面よりもポップな側面を強調したような作風で物足りなさが残りました。中盤「Ride the Beat,Ride the Dream」というデジタルサウンドを取り入れた作品なども登場したのですが、これも一昔前のビッグビートみたいで、個人的には嫌いではありませんが、ちょっと時代遅れを感じてしまいます。再結成後、正直以前ほどのアルバム売上は見込めないんだから、ポップ寄りよりももっと尖った作品を聴きたいのですが・・・。

評価:★★★

LUNA SEA 過去の作品
COMPLETE BEST
LUNA SEA
A WILL
25th Anniversary Ultimate Best-THE ONE-
NEVER SOLD OUT 2

|

« 新年2週目から新譜ラッシュ | トップページ | とても暖かい »

アルバムレビュー(邦楽)2018年」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 歌謡曲のパロディー:

« 新年2週目から新譜ラッシュ | トップページ | とても暖かい »