地方都市からのメッセージ
Title:地方都市のメメント・モリ
Musician:amazarashi
ここに来て、まだまだ人気上昇中のロックバンドamazarashi。本作にも収録されている「命にふさわしい」がゲーム「ニーア オートマタ」とのコラボ曲になったり、「空に歌えば」がアニメ「僕のヒーローアカデミア」のオープニングになったりとタイアップも増加。楽曲的には決して「広くお茶の間で支持」といった感じではないはずなのですが、その知名度を着実に伸ばしています。
本作はそんな知名度上昇に伴ってでしょうか、良い意味で非常にわかりやすいアルバムに仕上がっていたと思います。まあもともとがamazarashiの楽曲はなんだかんだ言っても楽曲にわかりやすさがあったのですが、本作はそんな「わかりやすさ」がより明確になったように感じます。
例えば歌詞。「地方都市のメメント・モリ」というタイトル。「メメント・モリ」はラテン語で「自分がいつか必ず死ぬことを忘れるな」という意味の警句だそうですが、そのタイトル通り、今回は「地方都市」をテーマとした楽曲が多く収録されています。
まずは冒頭の「ワードプロセッサー」。THA BLUE HERBからの影響が顕著なラップスタイルのボーカルが印象的なのですが、ここで歌われるのは荒涼とした地方都市の風景描写とその中での焦燥感。「水槽」に至っては地方都市のリアリティーをありのままに描写しており、地方と都心の格差が社会現象となっている中では、ある種の「社会派」とすらとらえられる作品になっています。
さらには「悲しみ一つも残さないで」はそのものズバリ「青森駅」が歌詞に登場。青森出身で、今も在住しているバンドのシンガーでメインライターの秋田ひろむだからこそ書ける歌詞でしょう。そしてラストを飾る「ぼくら対せかい」も地方で必死に生きる人たちの姿を描写しています。
もちろん「たられば」「命にふさわしい」のように内省的な歌詞の曲などもありますが、全体的にはアルバム全体を貫くわかりやすいテーマ設定がなされています。興味深いのがこの地方と都心というテーマ設定。歌謡曲の世界ではお決まりのテーマなのですが、ニューミュージックやさらにそれに続くJ-POPの世界ではほとんど見かけなかったテーマ。それをamazarashiではあえてテーマとして取り上げている点が興味深く感じます。ただ一方で、自分の生まれ故郷をテーマとするのはHIP HOPではよくありがちな話。秋田ひろむ自身、HIP HOPからの影響も強く受けているようで、今回の地方都市というテーマ性はひょっとしたらそこからの流れなのかもしれません。
またわかりやすいというメロディーラインも顕著に見受けられます。先行シングルにもなっている「空に歌えば」は非常にポップでインパクトあるメロディーラインの曲に仕上がっていますし、「悲しみ一つも残さないで」もシンプルながらもわかりやすくポップなメロディーラインが印象的。このキャッチーともいえるポップなメロは賛否もあるみたいですが、個人的にはいい意味で垢抜けたといった印象を受けました。
本作の「わかりやすさ」というのは、それだけ彼らの歌詞の内容がより広い層に伝えることができたというのも意味しており、そういう意味でも彼らのさらなる成長を感じさせるアルバムだったと思います。これからも楽しみになってくる傑作アルバムでした。
評価:★★★★★
amazarashi 過去の作品
千年幸福論
ラブソング
ねえママ あなたの言うとおり
あんたへ
夕日信仰ヒガシズム
あまざらし 千分の一夜物語 スターライト
世界収束二一一六
虚無病
メッセージボトル
ほかに聴いたアルバム
ASYNC-REMODELS/坂本龍一
今年3月にリリースした「非同期」をテーマとしたアルバム「async」。本作はそのリミックスアルバムとなります。基本的にはメタリックなエレクトロサウンドがメイン。「非同期」というテーマから離れて、リミックスはメロディーが流れており「async」で感じた非同期性から来る違和感は薄かったように感じます。ただシンプルながらも作りこまれたサウンドは非常に惹きこまれるものがあり、「async」とは異なるサウンドの実験性も感じるアルバムになっていました。
評価:★★★★★
坂本龍一 過去の作品
out of noise
UTAU(大貫妙子&坂本龍一)
flumina(fennesz+sakamoto)
playing the piano usa 2010/korea 2011-ustream viewers selection-
THREE
Playing The Orchestra 2013
Year Book 2005-2014
The Best of 'Playing the Orchestra 2014'
Year Book 1971-1979
async
Year Book 1980-1984
Λ/ACIDMAN
ACIDMAN3年ぶりとなるアルバム。「Λ」はギリシャ文字で11番目を意味するそうで、その名の通り、11枚目のアルバムとなります。今回もACIDMANらしいダイナミックなサウンドに切ないメロディーを聴かせる作品が並んでいます。一方でアシッドジャズやサイケなどの要素も加えて全体的にはバラエティーもある内容に。結成20周年を迎えた彼らですが、いい意味で安定感と、そして新たな挑戦心も感じさせるアルバムでした。
評価:★★★★
ACIDMAN 過去の作品
LIFE
A beautiful greed
ALMA
Second line&Acoustic collection
ACIDMAN THE BEST 2002-2012
新世界
有と無
Second line&Acoustic collection II
ACIDMAN 20th Anniversary Fans'Best Selection Album "Your Song"
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