HIP HOP、ロックの垣根なく
Title:NO ONE EVER REALLY DIES
Musician:N.E.R.D
まさか新譜が出るとは思わずビックリしてしまいました。ファレル・ウイリアムズを中心に結成されたユニット、N.E.R.D。HIP HOPとロックを融合させたような楽曲で幅広い支持を集め、2000年代に4枚のアルバムをリリースしたものの、その後はメンバーそれぞれのソロ活動に意向。ご存じの通り、ファレル・ウイリアムズは「HAPPY」が世界的に大ヒットし、ソロで大成功をおさめました。
それだけに活動休止状態になっているN.E.R.Dをいまさら引っ張り出すことはないのかな・・・と勝手に思っていたのですが・・・なんとここに来て7年ぶりとなるニューアルバムがリリース。タイトルである「NO ONE EVER REALLY DIES」とは和訳すると「誰も本当の意味では死なない」という意味。略すると「N.E.R.D」となり、要するに事実上のセルフタイトルとなるアルバムだそうです。
N.E.R.Dというと、ファレル・ウイリアムズの「HAPPY」もそうでしたが、非常にポップで楽しい楽曲が特徴的。HIP HOPとロックを融合させたような、と最初に書いたのですが、要するにジャンルにとらわれない自由度の高いポップソングを聴かせてくれるのですが、その方向性は7年ぶりの新作でも全く変わっていませんでした。
1曲目「Lemon」は先行シングルとして話題になった曲。軽快なリズムがダンサナブルな楽曲で、リアーナが参加していることでも話題になっていますが、とにかくリズミカルなサウンドが楽しいナンバー。続く「Deep Down Body Thurst」は、最初はメロウなフィリーソウルからスタートするのですが、途中からラップや分厚いサウンドも加わり軽快なポップチューンへと展開。その後もフィリーな部分と軽快でポップな部分が交互に続くのですが、この展開がなかなかユニークな楽曲になっています。
この曲に限らず、1曲の中でいろいろと楽曲が展開していき、とても楽しくかつ先の読めない楽曲がひとつの大きな魅力にもなっています。例えば「Voila」も軽快でリズミカルなHIP HOPナンバーとなっているのですが、後半はいきなりトライバルなリズムが登場。ゆっくりなペースで太鼓のリズムが入るサウンドは日本人からするとちょっと盆踊り風?なコミカルな楽曲になっています。
展開のおもしろさという意味で言えば、このアルバムのひとつの核になっている「Don't Don't Do It!」もまさにそんな楽曲。最初はメロウなソウルナンバーからスタート。その後は軽快なラップが登場し盛り上がります。基本的にトラックにメロウなエレピが流れるソウルテイストの強いナンバーなのですが、途中でいきなりロックなギターリフがあらわれたりするのもユニーク。さらに後半には、今、もっとも注目を集めているラッパー、ケンドリック・ラマーが参加し、機関銃のようなラップを展開していきます。
この曲がさらに注目を集めているのがそのタイトルの由来。2016年にノースカロライナ州で起きた警察官による黒人男性射殺事件で、被害者の妻の叫び声がもとになっているそうで、ポップな作風ながらも歌詞は警察批判の社会性の強い内容になっています。
その後もポップながらもどこかユニークなサウンドと展開が耳を惹かれるナンバーが続きます。正直、後半に関してちょっとダレたかな、という部分もなきしもあらずなのですが、最後はエド・シーランも参加した「Lifting You」は横ノリのサウンドがユニークな楽曲。ただメロディアスなメロディーをしっかりと聴かせており、彼ららしい独特でユーモラスなサウンドの曲で締めくくっています。
久々のアルバムながらもその魅力は全く衰えることなく、今回もHIP HOP、ソウル、ロックリスナーを含めいい意味で広い層に訴求できるようなポップで楽しいアルバムを聴かせてくれました。文句なしの傑作アルバム。まさに様々な音楽ファンが垣根なく楽しめるアルバムでした。
評価:★★★★★
N.E.R.D 過去の作品
SEEING SOUNDS
NOTHING
ほかに聴いたアルバム
THE VISITOR/NEIL YOUNG+PROMISE OF THE REAL
御年70歳を超えた今でも積極的な活動が続くNEIL YOUNG。本作は「The Monsanto Years」に続きWillie Nelsonの息子たちのバンドPROMISE OF THE REALとタッグを組んだ新作。ブルース、ラテン、フォークからミュージカル風の楽曲までいままで以上にバラエティー豊富な楽曲が魅力的。NEIL YOUNGの衰えることない創作意欲をうかがえるアルバムになっています。
評価:★★★★★
Niel Young 過去の作品
Fork In The Road
Psychedelic Pill(Neil Young&Crazy Horse)
Storytone
The Monsanto Years(Neil Young+Promise Of The Real)
Peace Trail
REPUTATION/Taylor Swift
海外では絶大な支持を誇るテイラー・スイフトの3年ぶりとなるニューアルバム。基本的にカントリー歌手である彼女はアコースティックな作風がメインだったのですが、今回の作品では打ち込みを多く取り入れ、エレクトロテイストの強い作品に。彼女の新たな挑戦は買いたいところなのですが、ただ正直、メロディーラインのインパクトも薄く、平凡な作品になってしまった印象が。ちょっと残念に感じたアルバムでした。
評価:★★★
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