アルバムレビュー(洋楽)2017年

2017年4月18日 (火)

失恋を乗り越えて(?)

Title:Dirty Projectors
Musician:Dirty Projectors

バンド名を冠したタイトルが否応なしに内容への期待が高まるDirty Projectorsの約5年ぶりとなるニューアルバム。前作「SWING LO MAGELLAN」は2012年を代表する傑作アルバムとして高い評価を得ましたが、バンドの中心メンバーであるDavid Longstrethがアルバム後のツアー直後に失恋を経験。そのショックから立ち直れず音楽活動を中断していましたが、その後徐々に様々なミュージシャンへのゲスト参加により活動を再開。ついに久々となるニューアルバムがリリースされました。

その間、バンドメンバーが脱退し、事実上、DavidのソロプロジェクトとなったDirty Projectors。そのため今回のアルバムに関してはバンド色はほとんどなく、エレクトロサウンドを前面に押し出されたアルバムとなっています。もともと前作からポストロック色の色合いが濃かった彼らですが、今回のアルバムに関しても1曲の中に様々な音、アイディアが詰め込まれた作品になっています。特に今回、その軸を担ったのが元BATTLESのTyondai Braxton。ノイジーなエレクトロビートがダイナミックに展開する中、ピアノとストリングスが絶妙に重なる「Death Spiral」などでは特に印象的な仕事ぶりを聴かせてくれます。

今回の作品では事実上のソロとなった影響か豪華なゲスト勢が大きな特徴となっています。「Cool Your Heart」では女性ボーカリストDawn Richardがゲストボーカルとして参加。伸びやかでちょっとトライバルな雰囲気を残しつつ伸びやかでメロウな歌声を聴かせてくれますし、この曲に関してはなんと作詞ではあのSolangeが参加していたります。

また今回のアルバムで一番印象的だったのがパーカッションのリズム。ブラジル出身のパーカッショニストMauro Refoscoがゲストとして参加していますが、「Keep Your Name」「Up In Hudson」では非常に印象的なパーカッションを聴かせてくれます。エレクトロサウンドで無機質なサウンドが多い中、楽曲に暖かみを加えています。

今回のアルバムに関しては、前作に比べてR&Bの色合いが強くなった点も特徴的。David Longstrethのボーカルに憂いを感じられるのも特徴的。特にDavid Longstrethのボーカルにはまだ失恋を引きずっているのか・・・という情けなさを感じると同時に同じ男性としてはその気持ちに同情できるものを感じてしまいます。

ただし、実験的なエレクトロサウンドを奏でつつも基本的にメロディーラインは非常にメロディアスで胸をうつものがあります。特に「Work Together」は様々なサウンドがコラージュ的に組み合わさったような作品でありつつ、メロディーにはとてもポップ。他の曲に関してもしっかりとしたメロディアスなメロディーラインが流れています。

このサウンドは複雑ながらもメロディーはポップというバランスは前作「SWING LO MAGELLAN」から同様。R&B風という方向性も前作からも感じることが出来、そういう意味では根本的な部分においては前作からしっかりと貫かれているものがある作品だったと思います。前作に続きまたもや今年を代表する傑作の1枚となりそうな作品。前作同様、その美しいメロディーラインに惹きつけられたアルバムでした。

評価:★★★★★

Dirty Projectors 過去の作品
SWING LO MAGELLAN


ほかに聴いたアルバム

2016 Grammy Nominees

毎年リリースされるアメリカ・グラミー賞のノミネート作品を収録したオムニバスアルバム。今のアメリカの、ひいては世界のミュージックシーンの動向を知るには最適なアルバム。2016年のノミネート作ではThe Weeknd、Alabama Shakes、Kendrick Lamar、D'Angelo&The Vanguardなどブラックミュージックで実に魅力的な作品が多くリリースされており、その層の厚さ、新たなシーンの予感も感じさせます。一方、個人的に非常に惹かれたのがCourtney Barnettの「Pedestrian At Best」。完全に初耳だったのですが、PIXIESやDINOSAUR JR.の、それも80年代あたりの荒々しさとポップスさを同居させたようなオルタナ系ギターロックが実に魅力的な女性ロックシンガーの楽曲。遅ればせながらはまりました。これはアルバムも聴いてみなくては・・・。全体的にも名曲が多く、シーン全体に勢いを感じさせる2016年のノミネートでした。

評価:★★★★★

Grammy Nominees 過去の作品
2011 GRAMMY NOMINEES
2012 GRAMMY NOMINEES
2013 GRAMMY NOMINEES
2014 GRAMMY NOMINEES
2015 GRAMMY NOMINEES

The Painters EP/Animal Collective

配信限定で急きょリリースされた4曲入りのEP盤。昨年リリースされた「Painting With」と同時期に録音された3曲とMartha & the Vandellasの「Jimmy Mack」のカバーの全4曲を収録したアルバム。前半2曲「Kinda Bonkers」「Peacemaker」はタブラやシタールっぽいサウンドを取り入れたエキゾチックなサウンドが非常にユニーク。一方後半の「Goalkeeper」「Jimmy Mack」はコミカルなサウンドが魅力的でした。

どこかコミカルなサウンドという意味では「Painting With」に通じる今回のアルバム。その「Painting With」はコミカルな楽しさはあったものの聴いていて疲れてしまったアルバムでしたが今回の作品はわずか4曲ということもあって疲れる前に終わってしまうアルバム。それだけに「Painting With」の良い部分のみを抽出したEPになっていました。わずか4曲ですが、彼らのアイディアのつまった個性的な楽曲が並んだ傑作です。

評価:★★★★★

Animal Collective 過去の作品
Merriweather Post Pavilion
CENTIPEDE HZ
Painting With

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2017年4月17日 (月)

ジャケット写真からは想像できない内容に

Title:Drunk
Musician:Thundercat

今回紹介するアルバムはThundercatことアメリカのベーシスト、Stephen Brunerのアルバム。今、最も話題のベーシストのひとりで、Flying LotusやKendrick Lamarといった今を輝くミュージシャンたちのアルバムにも参加。大きな評判となっています。

このアルバム、まず惹かれるのはこのジャケット。カッコいいかどうかと言われると微妙なのですが、60年代や70年代のレアグルーヴのアルバムを彷彿とさせるような「黒さ」を感じさせるジャケット。正直、今回本作を聴いたきっかけがこのジャケット。話題のベーシストのアルバムということで真っ黒いグルーヴ感あふれる作品を期待して聴いてみました。

しかし、これが全く予想外の方向性のアルバム。オープニングのナンバーに続いて聴こえてくるのは透き通るハイトーンボイスに80年代風のサウンドを感じるメロウなエレピが魅力的な「Captain Stupido」。続く「Uh Uh」もハイテンポでファンキーなベースがさく裂していますが、そこにのっかかるボーカルはハイトーンボイスでフィリーな雰囲気すら感じらせるもの。続く「Bus In These Streets」もおもちゃ箱のような楽しげなエレクトロサウンドがワクワクさせてくれるポップチューンになっています。

全体的には80年代あたりのAORやフィリーソウルあたりの影響を強く感じるメロディアスでポップな楽曲が魅力的なアルバム。「Show You The Way」に至ってはMichael McDonaldが参加。懐かしさを感じる思いっきり80年代のAORサウンドに仕上がっていますし、「Blackkk」も透き通るハイトーンボイスが魅力的。日本人にとっては「Tokyo」なんて曲があるのもうれしいところ。こちらもいかにも80年代あたりのFM局で流れていそうな雰囲気のAORナンバーに仕上がっています。またタイトルチューン「Drunk」のようなジャジーな要素を入れた楽曲も大きな魅力となっています。

そんな80年代なサウンドが魅力的なアルバムですが単純にノスタルジックなアルバムでもありません。もともと魅力的なプレイを聴かせるベーシストなだけにところどころにちゃんとベースの音でグルーヴ感を奏でていますし、なによりもリズムを前に押し出した楽曲の構成やエレクトロサウンドはちゃんと今風にアップデートされています。音を詰め込むよりも空間を聴かせるようなほどよいサウンドのバランスなども見事です。

また全24曲入りという内容ですが1曲あたり2、3分という長さの楽曲が次々と繰り出されるアルバムの構成もいい感じ。変に間延びしたアレンジもなく、次から次へとテンポよく楽曲が展開していくためまったく飽きがありません。ともすれば長くなりがちなブラックミュージックのアルバムの中で54分という長さも長すぎず短すぎずほどよい長さとなっています。

正直、最初ジャケット写真から予想していた内容からはかなりかけ離れたアルバムの内容でしたが、でも予想以上の傑作アルバムになっていました。とにかくメロディーやサウンドが聴いていて心地よさを感じさせる楽曲の連続。間違いなく今年のベスト盤候補の傑作アルバム。ジャケットに逆にひいてしまったような方も、是非ともチェックしてほしいアルバムです。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

HYMS/Bloc Party

メンバー2人が入れ替わりあらたなメンバーとなった新生Bloc Partyの4年ぶりとなる新作。エレクトロサウンド主体なのですが、ロック寄りの曲だったり渋く聴かせる曲があったりバレエティー富んだというと響きがいいのですが、全体的にどうもチグハグさを感じる1枚。楽曲的にインパクトが強いキラーチューンがなかったのも大きなマイナス要素。前作も正直ちょっと微妙な出来でしたが、今回のアルバムもちょっと微妙な出来・・・。

評価:★★★

BLOC PARTY 過去の作品
Intimacy
FOUR

Live In Sweden 1987/Johnny Winter with Dr.John

2014年に惜しまれつつこの世を去ったJohnny Winter。本作はタイトル通り1987年に行われたスウェーデンでのライブの模様をおさめたライブ盤。いまだ若々しい彼の迫力あるギターサウンドが思う存分楽しめるアルバム。「with Dr.John」という名義通り、Dr.Johnがピアノで参加しているものの彼はバックに徹しており、Dr.John目当てだとちょっと期待はずれかも。ただ所々Dr.Johnの個性が光るピアノプレイが入って来たりするのがおもしろいところなのですが。

評価:★★★★

Johnny Winter 過去の作品
Step Back

Dr.John 過去の作品
Locked Down
Ska-Dat-De-Dat:Spirit of Satch

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2017年4月16日 (日)

本作でもまた故郷を離れて

Title:ELWAN
Musician:TINARIWEN

「砂漠のブルース」と呼ばれ、ワールドミュージックリスナーに留まらない範疇で注目を集めているマリ出身のバンドTINARIWEN。途中、ライブ盤のリリースもありましたがオリジナルアルバムとしては3年ぶりとなるニューアルバムです。前作「EMMAAR」では政治的な理由から故国マリを離れアメリカでのレコーディングとなりましたが(やはり「残念ながら」という言い方になるのでしょうか)前作に続いてアメリカでレコーディングされたアルバムとなりました。

ただアメリカ録音によるためか多くのゲスト陣が参加しているのが本作の特徴。以前、当サイトでもアルバムを紹介したことがあるKurt Vileがギターで参加しているほか、QUEENS OF THE STONE AGEのMark Kaneganのボーカルで参加。その他、Matt SweeneyやAlan Johannesといったゲストミュージシャンが名前を連ねています。

Kurt Vileが参加した「TIWAYYEN」では彼らしいオルタナ色の強いノイジーなギターが目立ちます。それに引っ張られてか、2曲目「SASTANAQQAM」も同じくオルタナ色の強いギターが耳を惹く楽曲になっています。ただ、このゲスト勢がアルバムに対して強い影響を与えているかというとそういった感じではなく、逆にKurt Vileがギターで、さらにMark Laneganがボーカルで参加した「NANNUFLAY」はTINARIWENらしい荘厳な雰囲気とスケール感を覚えるコール&レスポンスのナンバー。確かにMark Laneganのボーカルも目立ちますが、TINARIWENの楽曲の中に参加させてもらっているという印象を強く受けます。

そのためアルバム全体としてはいつものTINARIWENといった印象を受ける本作。もっともそれはマンネリという意味ではなく、相変わらず彼ららしいブルージーなギターサウンドと独特なリズムとコール&レスポンスが織りなすグルーヴ感が実に魅力的な楽曲が並んでいます。特に「IMIDIWAN N-AKALL-IN」などは彼らの魅力ともいえるギターサウンドがうねるように楽曲全体を展開していき、それにパーカッションの音が重なり、彼ららしいグルーヴ感が実に魅力的なナンバー。軽快なパーカッションとアコギでラテン風味たっぷりの「ASSAWT」も哀愁感あふれるメロディーが耳に残ります。

そんな中、前作に引き続きマリを離れてのレコーディングとなった本作。その影響か前作に引き続き強いメッセージ性を持った歌詞が目立ちます。特に「ITTUS」は静かなギターとボーカルだけでメッセージを力強く聴かせるナンバー。歌詞の内容は「我が国の団結と高い生活水準」を求めるメッセージのようで、ストレートながら切実な思いが胸をうちます。

また「テネレの成れの果て」という邦題がついた「TENERE TAQQAL」も故郷の惨状を嘆いた歌詞が続かれており強いメッセージ性を感じます。ちなみに「テネレ」とはタマシェク語で「何もない地」もしくは「砂漠」を意味するそうで、この複数形が彼らのバンド名であるTINARIWENだそうです。

これらの歌詞は残念ながら私たちにダイレクトに伝わってはきませんが、それでもその力強いボーカルと演奏からは彼らの伝えようとする想いは伝わってくるよう。彼らの強いメッセージが込められた1枚でした。

評価:★★★★★

TINARIWEN 過去の作品
IMIDIWAN:COMPANIONS
TASSILI
EMMAAR
Live in Paris(不屈の魂~ライヴ・イン・パリ)


ほかに聴いたアルバム

night thoughts/Suede

90年代初頭に絶大な人気を得て、かのブリットポップムーブメントの先駆け的な存在となったイギリスのロックバンドSuede。2003年に解散したものの2010年に再結成。本作は再結成後2作目となるアルバムとなります。

基本的にはミディアムテンポのギターロックがメイン。幻想的で耽美的な雰囲気を堪能できるアルバムで、良くも悪くもSuedeらしさは今も健在となっています。イギリスのアルバムチャートでは最高位6位を記録。アメリカビルボードではなんと自身初となるベスト10ヒットを記録するなど、なにげに再結成後もその人気の健在ぶりを見せている彼ら。確かにその魅力は十分感じられるアルバムで、1度目の解散前の彼らが好きなら十分に楽しめる作品だと思います。

評価:★★★★

Let Me Get By/Tedeschi Trucks Band

ルーツ志向のブルースロックが魅力的な彼らの3年ぶりとなる新作。楽曲はいつも通りブルースやソウルなどを取り入れつつダイナミックなロックサウンドに仕上げている彼ららしい楽曲に。目新しさはないもののバンドのグルーヴ感を十分すぎるほど楽しめる作品で、良い意味で安心して聴けるアルバムになっています。

評価:★★★★

TEDESCHI TRUCKS BAND 過去の作品
Revelator
MADE UP MIND

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2017年3月21日 (火)

アンビエントがテーマの2枚組

Title:Principe del Norte
Musician:Prins Thomas

今年に入ってから2016年に話題となったアルバムの中で聴き逃したアルバムをいまさらながらいろいろと聴いているわけですが、おそらくそんなアルバムもこれが最後。ノルウェーのDJ/プロデューサー、Prins Thomasがリリースした2枚組のニューアルバム。ミュージックマガジン誌の「ハウス/テクノ/ブレイクビーツ」部門で2016年度の1位を獲得したアルバムです。

Prins Thomasというプロデューサーの名前は今回初耳。いろいろと調べていく中で「コズミック・ディスコ・プロデューサー」という肩書に出会ったのですが、この「コズミック・ディスコ」というジャンル、調べてみてもどんな感じのジャンルなのかいまひとつわからない・・・。彼の楽曲は非常にスペーシーな曲が多いので、こんな雰囲気のディスコミュージックを「コズミック・ディスコ」というのでしょうか??

今回のアルバムのコンセプトはアンビエントということで全体的に淡々としたサウンドが延々と続いていきます。楽曲のタイトルもアルファベットをAから順番に並べただけという非常にシンプルなもの。楽曲の色などをほとんど感じさせない、ある意味サウンドが並んでいるだけ、とでもいうようなアルバムになっています。

ただ2枚組となる本作ですが、あきらかに1枚目と2枚目とではその方向性が異なります。1枚目はスペーシーなサウンドに淡々としたミニマルテイストのメロディーが続いていく感じ。アンビエントらしく抑えめのサウンドを延々と聴かせる構成になっておりメロディーラインが意外とポップで耳なじみやすいのが印象的でした。また楽曲は1曲あたり6分から長い曲で14分弱。その中でミニマル的に淡々とサウンドが続いていくわけですが、所々でサイケデリックなサウンドが加わったり、ドリーミーな雰囲気となったりと徐々に変わっていくサウンドがまたユニークにも感じました。

一方2枚目に関してはテンポのよいリズムが前面に出てきている構成に。こちらも抑えめなサウンドで高揚感はないとはいえ、例えば四つ打ちのリズムでトランシーなリズムを楽しめる「G」などはフロアで流れれば十分踊れるだけのダンサナブルな楽曲に。「E」などもファンキーなリズムを楽しめ、軽快でリズミカルなサウンドが楽しめる楽曲になっています。

アンビエントというテーマらしく淡々としているという印象はあるのですが、1曲の中で楽曲が徐々に変化して様々な構成を楽しむことが出来、そして意外とポップなメロディーが根底に流れていることもあり、2枚組95分程度というボリュームのアルバムながらも全く飽きることなく楽しむことが出来る内容でした。年間1位という感じなのかどうかはちょっとよくわからないのですが・・・テクノ/ハウス界隈が好きなら文句なしに要チェックのアルバムです。

評価:★★★★★

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2017年3月19日 (日)

メロディーもはっきりと流れるものの

Title:Oczy Mlody
Title:The Flaming Lips

ここ最近、ビートルズのカバーアルバム「With a Little Help From My Fwends」をリリースしたり、ピンクフロイドのカバーアルバムをリリースしたりと積極的な活動が目立ったためちょっと意外な感じもするのですがオリジナルアルバムとしては4年ぶりとなるThe Flaming Lipsのニューアルバム。「Oczy Mldoy」(=オクシィ・ムロディ)というタイトルは非常に奇妙な印象を与え、インパクトあるタイトルとなっているのですがこれはポーランド語で「eyes of the young」という意味だそうです。なんか語感から受ける印象とかなり異なる感じがしますね。

事前にこのアルバムのレビューなどを見ると、メロディーが際立ったアルバム、といった評価が多かったため、個人的には最初、かなりポップな作風を想像していました。そういうイメージを持ったうえでこのアルバムを聴くと、最初はかなり戸惑うかもしれません。イントロ的な役割を果たすタイトル曲「Oczy Mlody」は確かに美しいメロディーラインは流れているものの、かなりサイケなノイズが前に出たような作品。続く「How??」もとてもスペーシーなサウンドが前に出ている作品になっています。

確かにそのメロディーラインが比較的はっきりあらわれており、ポップなメロが確実に流れているアルバムだとは思います。特に終盤、「The Castle」から「Almost Home(Blisko Domu)」「We a Famly」と続く3曲は憂いを帯びたようなメロディーラインが印象に残る作品。そのメロディーセンスがはっきりとあらわれた作風になっています。

ただそれらの曲を含めてアルバム全体としてかなりへヴィーなノイズが流れたサイケデリックで、かつスペーシーな作品に仕上がっています。重厚感あるサウンドが特徴的な「Sunrise(Eyes of the Young)」やダークなエレクトロサウンドが楽曲の根底で流れつづける「One Night While Hunting for Faeries and Witches and Wizards to Kill」、哀愁感を帯びたダークでドリーミーなサウンドが流れる「Listening to the Frogs with Demon Eyes」など、楽曲毎にパターンを変えながらもノイジーなサウンドが流れ続ける作品が続きます。

アルバムとして「歌」としての美しさは楽しめるものの、やはり全体のバランスとしてはサイケ、ノイズの部分が強く出たアルバムのように思います。もちろんThe Flaming Lipsらしいキュートなポップが楽しめるアルバムではあるのですが・・・個人的にはそのサイケデリックな音の洪水に最後の方はちょっと疲れてしまったというのが正直な感想。良作だとは思うのですが、好き嫌いはわかれそうな作品といった感じでしょうか。

評価:★★★★

THE FLAMING LIPS 過去の作品
EMBRYONIC
The Dark Side Of The Moon
THE FLAMING LIPS AND HEADY FWENDS(ザ・フレーミング・リップスと愉快な仲間たち)
THE TERROR
With a Little Help From My Fwends

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2017年3月11日 (土)

約40年ぶり(!)にスタックスからリリース

Title:This Is Where I Live
Musician:William Bell

もう3月になりましたが・・・今回紹介するアルバムも2016年に評判の高かったアルバムでリアルタイムに聴き逃したアルバムをいまさらながら聴いてみた1枚。本作は「Blues&Soul Records」の2016年ベストアルバムの1枚に選ばれたWilliam Bellの新作です。

William Bellは主に70年代から80年代にかけてスタックス・レコードで人気を博したシンガーソングライター。1976年には「Tryin' To Love Two」がアメリカのR&Bチャートで1位を獲得するなど高い人気を誇りました。本作はそんな彼がスタックス・レコードから42年ぶり(!)にリリースしたということで話題となった1枚。もっともスタックス・レコード自体、1975年に倒産しており2006年に復活した、という経緯をたどっているのですが・・・。また彼自体、スタックスから離れて以降もコンスタントにアルバムはリリースしています。もっとも本作は約10年ぶりとなるオリジナルアルバムとなるようですが。

そんな話題の新作は、まさに70年代のソウルミュージックをそのまま解凍したような1枚。しんみりホーンとギターサウンドをバックに哀愁感たっぷりに歌い上げる「The Three Of Me」からスタートし、おなじく哀愁感たっぷりに歌う「The House Always Wins」もホーンやギターの音色が優しく響きます。

楽曲的にはそんなリスナーの琴線に触れるような物悲しさを感じさせるメロディーラインの曲を包容力ある力強い彼のボーカルで聴かせるナンバーが並んでいます。後半も「Walking On A Tightrope」「More Rooms」などそのメロディーや彼の歌に胸がキュッとなるような曲が続きます。タイトルチューン「This Is Where I Live」のようなアップテンポな曲もありますが、こちらもホーンセッションをバックに力強く聴かせる彼のボーカルが印象的。特に「All Your Stories」などはアコギ一本で優しく歌い上げるナンバー。その切ないメロディーラインと共に強い印象を残す楽曲になっています。

一方では「Poison In The Well」やアルバート・キングのカバー「Born Under A Bad Sign」のようなロック色の強いブルースロックナンバーも目立ち、全体的にはロックリスナーにとっても聴きやすいようなアルバムになっていたようにも感じました。

とにかくその哀愁感たっぷりのメロディーラインと、そんな楽曲を優しく歌い上げる彼のボーカルが心に響いてくるアルバム。ちなみに本作、今年のグラミー賞でベスト・アメリカーナ・アルバムを受賞しており、その評判の高さをうかがわせます。ソウルミュージック好きにはおそらくたまらない1枚だと思います。

評価:★★★★★

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2017年3月10日 (金)

待望の新作!

Title:I See You
Musician:The xx

前作「Coexist」が大ヒットを記録。また各種メディアにおいても非常に高い評価を得て、一躍注目のミュージシャンとなったイギリスの3人組バンドThe xx。その後はメンバーのジェイミー・スミスがJamie XX名義でソロアルバム「In Colour」をリリース。こちらも大きな評判を呼びました。

しかしThe xxとしてのアルバムはその後久しくリリースされず約4年半。ようやくのリリースとなる待望のニューアルバムがリリースされました。久々のアルバムとなったのですが全英チャートでは前作に引き続き1位を獲得。さらにアメリカビルボードチャートでは前作の最高位5位を上回る2位を記録するなどその期待値の高さをうかがわせます。

そんな彼らのニューアルバム、まず印象的だったのは男女のツインボーカル、ロミー・マドリー・クロフトとオリヴァー・シムによるデゥオでしょう。優しい雰囲気のポップなメロディーラインが印象的なのですが、メンバー全員幼馴染という間柄だそうで、それだけに息の合ったデゥエットを聴かせてくれます。2人とも包容力あるボーカルが魅力的なのですが、お互いのことをよく知っている2人のデゥエットだけにお互いを気遣うようなやさしさをそのボーカルから感じることが出来ます。

この2人のデゥオが印象的なポップなメロディーラインというのは前作「Coexist」から共通点。一方、前作から大きく変わった部分があります。それはサウンド。前作は音をそぎ落としたシンプルで空間を生かしたようなサウンドが特徴的でした。今回のアルバム、1曲目「Dangerous」はリズムを強調したダンスチューンとなっており、Jamie XXでの活動からの影響を感じさせます。こちらは比較的音の作りはシンプルとなっているのですが、続く2曲目「Say Something Loving」は重いベースの音やパーカッション、さらにはギターやピアノの音まで加わる分厚いサウンドが特徴的。その後もスペーシーでスケール感を感じる「A Violent Noise」や反響する音を生かしたダイナミックなサウンドが神秘的な「Brave For You」など、音数は前作より圧倒的に増え、分厚いサウンドが特徴的な楽曲が並びました。

個人的には音を絞ったシンプルな曲が好み、ということもあり前作の方がよかったかな、というのが正直な感想。ただ単純に前作のコピーを作るのではなくバンドとして新たなサウンドを模索しているということは強く感じることが出来ました。またサウンドにしてもただ単に音を詰め込んで分厚くしたりスケール感を出したりしている、という感じではなく本作に関してもまたその音には緊迫した空気を感じられました。

特にアルバムの中で印象に残ったのが終盤。荘厳さを感じる出だしからリズミカルなポップソングへと展開していく「On Hold」から、アップテンポでポップでキュートメロディーが印象的な「I Dare You」へとインパクトある楽曲が並んだかと思うと、ラストはピアノの音をバックに2人のボーカルをしっかり聴かせる「Test Me」で終了。彼らの魅力を存分に感じ、このアルバムは幕を下ろします。

上にも書いた通り、正直なところ前作の方が好みでしたが、The xxの久々のアルバムとして次の一歩を感じさせる作品でした。前作のイメージもそのままでしたから、久々の新作としてファンにとっては期待どおりの作品と言えるかもしれません。2017年1月早々にリリースされたアルバムですが、これもまた2017年を代表する作品としていろいろと話題になりそうです。

評価:★★★★★

The xx 過去の作品
Coexist

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2017年2月25日 (土)

70年代ソウルをそのまま解凍

Title:Special Night
Musician:LEE FIELDS&THE EXPRESSIONS

30年以上のキャリアを持ち、今のファンクバンドからもリスペクトを集め、そのスタイルから「リトル・ジェイムス・ブラウン」という異名を持つアメリカのファンクミュージシャン、LEE FIELDS。今回紹介するのはそんな彼のニューアルバムです。

ジャケット写真からしていかにも昔ながらもレコードジャケットを彷彿とさせるのですが、楽曲自体もまさに70年代をそのままパッケージしたような古き良きファンクがつまったようなアルバム。まず1曲目、いきなりタイトルナンバーの「Special Night」からスタートするのですが、ムードたっぷりのホーンの音色に彼の力強い歌声が重なるバラードナンバー。そのスタイルからまるっきり古き良き時代のソウルそのものです。

基本的にその後もそのボーカルで歌い上げるスタイルのバラードナンバーがメイン。「Lover Man」みたいにちょっとセクシーさを感じさせるボーカル曲もあったり、「Let Him In」のようなギターサウンドを絡ませつつ、ソウルフルに歌い上げるナンバーもあったり、昔ならのソウルナンバーの中で微妙にそのボーカルスタイルを変えてくるのも魅力的ですし、彼の実力を感じさせます。

そんなミディアムチューンの中に挟まれているアップテンポでファンキーな楽曲も魅力的で大きなインパクトに。「Make The World」はぶっといホーンやバンドサウンドで非常に黒さを感じるファンクナンバー。「How I Like It」もへヴィーなギターリフが印象的なリズミカルなファンクチューンに。アップテンポなナンバーについても、これでもかというほど黒く、分厚いサウンドがとても魅力的に仕上がっています。

言ってみれば冷凍パッケージされた70年代ソウルをそのまま解凍されたようなアルバム。それだけに黒さを感じさせるそのサウンドは素直に気持ちよかったのですが、その反面、あまりにも70年代そのまま過ぎないか?というのを感じたのも事実。もちろん、70年代ソウルをそのまま再現しているという点で、その時代のソウルが大好きなら間違いなくはまる1枚だと思います。ぶっといサウンドがとにかく気持ちよいアルバムでした。

評価:★★★★

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2017年2月24日 (金)

21分の短さにNINの魅力が凝縮

Title:Not The Actual Events
Musician:NINE INCH NAILS

突如リリースされたNINE INCH NAILSの新作は5曲入り21分のEP。今回もまたなかなかユニークなのがそのリリース形態で、ダウンロードもしくはLP盤のみでのリリース。ちょうど先日、OKAMOTO'Sが同じような形態でEPをリリースしました。NINE INCH NAILSがそんなOKAMOTO'Sを知っていて・・・という訳ではないと思いますが、基本、ダウンロードでのリリース、フィジカル版はCDではなくレコードというスタイル、今後増えていくかもしれません。

さてそんな彼らの新作ですが、前作「Hesitation Marks」から約3年4ヶ月ぶりのリリースとなります。前作「Hesitation Marks」はインダストリアルでへヴィネスという彼らのイメージからするとかなり軽いエレクトロサウンドという印象の作品でした。今回の作品も比較的軽く、聴きやすいという印象を受けたのですが、前作よりはへヴィネスさがグッと上がった作品になっています。

1曲目「Branches/Bones」はノイジーで強いビートのリズムからスタートするアップテンポなナンバー。途中、ワンテンポおいてボリュームがあがり、いきなりシャウトが始まる激しい展開がカッコいいナンバー。2分弱の短いナンバーなのですが、非常に耳を惹きつけられます。

続く「Dear World,」は軽いエレクトロサウンドがミニマルテイストで続く作品。1曲目2曲目は勢いのある作品が並び、ポップで聴きやすいという印象を受けます。それがグッと変わるのが3曲目。「She's Gone Away」は非常にダークでへヴィーなサウンドがゆっくりと襲いかかるようなナンバー。6曲に及ぶアルバム最長のナンバーで、このアルバムがへヴィネスであるという印象を形作るひとつの核となっています。

「The Idea of You」は出だしのギターがとにかくカッコいいナンバー。重々しい雰囲気で楽曲は展開していくのですが、サビでは一気にシャウトでカタルシスを爆発させるような楽曲。ワンコードで引くまくるノイジーなギターサウンドもインパクト大の楽曲になっています。そして最後「Burning Bright(Field on Fire)」は音の洪水が耳に襲う、へヴィーでサイケなナンバー。歪みまくりのサウンドで不気味な印象を残したまま、アルバムは終了します。

そんな訳で5曲5様のサウンドで構成されるアルバムなのですが、比較的エレクトロ色が強く軽い作風の楽曲から歪みまくりのサウンドでへヴィネスさが炸裂した楽曲まで短い時間でNINE INCH NAILSの様々な魅力が凝縮されたようなアルバムになっていたと思います。今回のアルバムでNINとしての新しい展開、みたいなものはあまり感じませんでしたが、きちんとNINを堪能できる良作に仕上がっていました。次のフルアルバムも楽しみです。

評価:★★★★★

NINE INCH NAILS 過去の作品
GhostI-IV
THE SLIP
Hesitation Marks

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2017年2月21日 (火)

こちらも若々しく

昨日ははじめて足を運んだJeff Beckのライブレポをアップしましたが、ライブへ足を運ぶにあたって遅ればせながら彼の最新アルバムを聴いてみました。

Title:Loud Hailer
Musician:Jeff Beck

Jeff Beckといえばエリック・クラプトン、ジミー・ペイジと並び、ヤードバーズの三大ギタリストと呼ばれ日本でも高い評価と絶大な人気を得ています。ただ、ロック史において輝かしい活躍を続けてきたお三方も既に70代。ジミー・ペイジはここ最近、レッド・ツェッペリンのアルバムリマスターの際によくその名前が登場してきますが自身のソロ作はここ最近リリースさいていませんし、クラプトンは積極的なアルバムリリースを続けていますが、落ち着いたブルージーな作品が続いています。

そんな中、目立つのは相変わらずアグレッシブなJeff Beckの活動。先日のライブでもバリバリ現役感、往年の活躍を彷彿とさせるようなロックなギタープレイを披露し、70歳過ぎという年齢を全く感じさせなかったのは先日のライブレポの通り。そして久々となる本作でも非常にアグレッシブなギタープレイを聴かせてくれています。

今回のアルバムはシンガーとしてロージー・ボーンズという女性ボーカリストを起用。またカーメン・ヴァンデンバーグという女性ギタリストも起用しており、2人の女性の起用が話題となりました。このうちロージーのボーカルはロックボーカリストらしいちょっとドスのきいたようなボーカルがダイナミックなバンドサウンドにもピッタリマッチ。女性ボーカリストらしい耳触りのよさもあいまって、アルバムにいい意味での聴きやすさを与えています。

特に「Live In The Dark」はダイナミックなギターサウンドにロージーのパワフルなボーカルがピッタリとマッチしたゾクゾクっとするほどカッコイイ、ハードロックなナンバー。「Right Now」もミディアムテンポのへヴィーなギターリフを主導として、これぞロック!といった感じの楽曲になっています。

一方では「Scared For The Children」では哀愁感たっぷりの泣きのギターが印象的な楽曲。優しさを感じさせるロージーのボーカルはここでもマッチしています。そして最後はミディアムテンポでスケール感のある「Shrine」でこれまた伸びやかなギタープレイをしっかりと聴かせて終了しました。

正直言ってしまうと、いい意味でも悪い意味でも昔ながらもギターロックといった感じ。目新しいものはほとんどありません。リスナーがJeff Beckに期待するものをしっかりと体現化したアルバムだったと思います。聴いていてJeff Beckを聴いたなぁ!という高い満足感を得られるアルバムでした。

評価:★★★★

Live+/Jeff Beck

で、こちらはライブの事前予習の意味を込めて聴いてみた最新のライブアルバム。2014年のUSライブツアーの模様を収録したアルバムだそうです。先日のライブツアーにも参加していたジミー・ホールもボーカルとして参加しています。

そのため基本的には先日のライブツアーと同様、彼のギタープレイがさく裂するロッキンなアルバム。ある意味、その後にリリースされたオリジナルアルバム「Loud Hailer」につながるようなハードなロック色の高いライブになっており、その迫力は音源を通じても伝わってきます。先日のライブでも感じたJeff Beckのステージの魅力がしっかり伝わるライブ盤でした。

評価:★★★★

Jeff Beck 過去の作品
EMOTION&COMMOTION

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