アルバムレビュー(洋楽)2017年

2017年11月19日 (日)

政権の腐敗!

Title:MASSEDUCTION
Musician:St.Vincent

お尻(笑)なジャケットがまず強いインパクトのある本作は、ニューヨーク・ブルックリンを拠点として活動を続ける女性シンガーソングライター、St.Vincentのニューアルバム。セルフタイトルとなった前作は各種メディアで絶賛され、年間ベストでも軒並み上位にランクインし大きな話題となりました。それに続く本作は前作の評判を反映してか、全米ビルボードチャートでベスト10入りを記録。イギリスのナショナルチャートでも6位を記録するなどヒットを記録しています。

まず今回のアルバムで日本人にとっては一番インパクトがあったのは表題曲の「MASSEDUCTION」の冒頭。いきなり「政権の腐敗!」という日本語の叫び声の繰り返しがそのまま入っており、日本人にとってはちょっとドキッとさせられます。ちなみに日本語版にはラストにこのフレーズを中心に再構成した「政権腐敗 (Power Corrupts)」という日本語曲(!)も収録されています。

さて、日本人にとってはそんなインパクトある曲が収録されつつ、今回のアルバム、ギターサウンドが印象に残った前作に比べるとエレクトロなサウンドが前に押し出されたポップソングが並ぶ作品となっています。伸びやかなボーカルで聴かせるメロが印象的な1曲目「Hang On Me」も静かな打ち込みのリズムが主導した作品ですし、「Pills」もシンセのサウンドが軽快でリズミカルなポップソングに仕上がっています。

特に「Sugarboy」は軽快なテクノポップチューンになっており、ちょっとエキゾチックな雰囲気は東洋的な雰囲気も感じさせるナンバー。後半にも「Young Forever」のようなテクノポップ的な色合いが強い曲が並んでおり、エレクトロテイストの強い作風になっています。

もっとも途中、「Fear The Future」のようなインダストリアルな曲も入っていたりしますし、楽曲の途中でノイジーなギターが挿入される曲も少なくなく、今回の作品でもしっかりとダイナミックなギターサウンドが主張している曲も少なくありません。全体的には「宅録」的なイメージがあるのは前作と同様。前作も打ち込みのサウンドを取り入れていましたし、そういう意味ではエレクトロな部分を前に押し出したか、ギターサウンドにインパクトをもたせたかの違いはあるのですが、基本的な方向性は前作と変わらない、ということが言えるかもしれません。

また「New York」「Smoking Section」のようにシンプルなサウンドでメロディーラインをしっかり聴かせる曲もあり、メロディーメイカーとしての彼女の実力も感じることが出来ます。前述のエレクトロなポップソングもインダストリアルな曲もメロディーに関してはインパクトあるポップなメロディーラインが流れており、このメロディーの良さもなにげに彼女の大きな魅力だったりします。

個人的にはむしろ話題になった前作よりもこちらの方が好きかも、と思うほど、魅力的な傑作アルバムでした。アバンギャルドな面もありつつ、基本的には彼女のポップスシンガーとしての魅力を全面的に感じられる傑作です。

評価:★★★★★

St.Vincent 過去の作品
St.Vincent

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2017年11月18日 (土)

ちょっと「地味」なコラボかもしれませんが。

Title:Lotta Sea Lice
Musician:Courtney Barnett&Kurt Vile

非常に興味深いコラボ作がリリースされました。Courtney Barnettはグラミー賞最優秀新人賞にノミネートされたオーストラリアの女性ロッカー。一方、Kurt Vileは元The War On Drugsでギタリストとして活動し、現在はソロで活動するミュージシャン。フェスなどで何度か出会ううちに徐々に仲良くなり、今回のコラボにつながったそうです。

Courtney Barnettの曲はPIXIESやSonic Youthあたりを彷彿とさせるような80年代インディーロック直系の音。一方Kurt Vileは最新作「B'lieve I'm Goin Down…」を聴いたのですが、アコースティックでフォーキーな楽曲がメイン。その方向性は若干異なるようにも感じます。ただ、どちらもローファイ気味な楽曲という方向性は共通。コートニー自体、雑誌のインタビューで「音楽的な波長があった」といっていますが、楽曲の根底に流れているものは似ていたということなのでしょう。

実際に今回のアルバムで2人のコラボを聴くと、その相性は非常に良いものに感じます。楽曲はアコースティックなサウンドでローファイ気味なポップス。ブルージーな「Continental Breakfast」、カントリー風な「Blue Cheese」、そしてラストを飾る「Untogether」はフォークとバリエーションを持たせつつ、いずれもアコースティックな作風でルーツ志向を感じる作品に。楽曲のタイプ的には最新アルバムではKurt Vileのイメージにより近いように感じます。

またローファイ気味ということで力の抜けたよい意味でのけだるさを感じるのも魅力的。1曲目「Over Everything」はけだるい中でも爽やかさを感じる作品で、遅くまで寝ていた日曜日の朝といった感じのイメージでしょうか。続く「Let It Go」もゆっくりと鳴らされるギターでけだるさを感じる作品になっています。こういう力の抜けた楽曲を自然体で演れるというあたり、2人の相性の良さを感じます。

楽曲は当初は2人がデゥオのようなスタイルの曲が並びますが、中盤以降はそれぞれがメインを取って歌う形に。今回のアルバムの中では「Outta The Woodwork」はコートニーの作品をカートが、逆に「Peepin' Tom」はカートの作品をコートニーが、それぞれカバーするスタイル。原曲からは大きく逸脱していないものの、それぞれがそれぞれの持ち味を出したカバーになっており、それが楽曲にしっかりとマッチしているあたり、両者の音楽性の近さを感じます。

アルバム全体としては静かにギターをつま弾くような演奏スタイルがメインなだけに派手さはありません。アルバム全体としては正直、地味という印象を強く受けるかもしれません。そんなアルバムなだけに、逆に2人のメロディーメイカーとしての才能が発揮されたアルバムになっており、派手さはないもののしっかりと心に残るメロディーが非常に魅力的なアルバムになっていました。このコラボ、なかなかいいですね。これからもコンスタントに実施していくのかどうなのか・・・是非、またこのコンビでアルバムを聴いてみたいです!

評価:★★★★★

Courtney Barnett 過去の作品
Sometimes I Sit & Think & Sometimes I Just Sit

Kurt Vile 過去の作品
B'lieve I'm Goin Down…


ほかに聴いたアルバム

The Best/Ariana Grande

アメリカのシンガーソングライターで日本でも高い人気を誇るアリアナ・グランデの、日本限定リリースのベスト盤。エレクトロ、ソウル、レゲエ、ロック、HIP HOPなど幅広いジャンルの音楽を取り入れた楽しいポップソングが並んでいます。ある意味、非常に聴きやすくいい意味で万人受けしそうなポップソングの連続。世界的な人気も納得なベスト盤でした。

評価:★★★★★

Ariana Grande 過去の作品
My Everything

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2017年11月15日 (水)

アジテーショナルな主張がインパクト

Title:Prophets Of The Rage
Musician:Prophets Of The Rage

昨年のアメリカ大統領選挙直前に結成し話題となったスーパーバンド、Prophets Of Rage。Rage Against The Machineのザック・デ・ラ・ロッチャ以外のメンバーにPublic EnemyのDJロード、チャックDの2人、さらにCypress HillからB-リアルを迎えてのバンド。大統領選後にリリースされたEP盤「THE PARTY'S OVER」も大きな話題となりました。

今回リリースされたのはそれから約1年後にリリースされた待望のデビューアルバム。聴いていてとにかく印象に残るのはトム・モレロのギターリフ。非常に力強い特徴的なギターリフは一発で彼の演奏だとわかります。この特徴的なギターリフが主導している楽曲だなけに基本的にはザック抜きのRage Against The Machineという印象を受けてしまいます。

このトム・モレロ主体のバンドサウンドにのるのが3人のMCによるラップ。いつも以上にアジテーショナルなラップが印象的で、このラップがへヴィーなバンドサウンドやトム・モレロのギターにもピッタリとマッチ。これが2作目のアイテムながらもメンバー全員の相性の良さを感じます。

そしてやはり印象的なのがその歌詞。ジャケット写真自体が、共産主義の象徴である赤い星に突き上げるこぶしというその主張をはっきりと表に出したものになっています。昔ながらの左翼的な主張もRage Against The Machineのスタイルを踏襲したものとなっています。

そんな歌詞はとにかくみんなが叫びすいようにわかりやすく主張を伝えるような歌詞が目立ちます。例えば「Unfuck The World」では

「No Hatred
Fuck Racists
Blank Faces
Time's Changin
One Nation
Unification
The Vibration
Unfuck the World!」

(訳 憎しみをなくせ
クソ差別主義者どもめ
うつろな顔
時代はかわる
一つの国家
統一
感情
世界を取り戻せ!)

と直観的で非常にわかりやすい歌詞になっており、ライブなんかで大勢で一緒にこぶしをつきあげて歌ったら、気持ちいいだろうなぁ(そして直ぐに影響されそうだなぁ)と感じる歌詞になっています。

ただ、これは前作「THE PARTY'S OVER」でも感じたのですが、良くも悪くも旧来通りの左翼思想が貫かれているのが気になります。例えば「Strength In Numbers」は数の力のために団結せよと歌うナンバー。これを力強いラップとバンドサウンドで歌われると思わず同調しそうになるのですが、正直言って時代遅れな感じは否めません。

結果として前作と同じような感想なってしまうのですが、こういうスタイルが支持されなくなってきている今だからこその新しい道を目指してほしいとも思ってしまうのですが・・・良くも悪くも昔ながらのスタイルが貫かれたアルバムになっています。楽曲的にも文句なしにかっこいいし、その演奏にはグイグイ引き込まれるのですが、やはり目新しさはありませんでした。楽曲的には文句なしにカッコいいんですけどね。とりあえずRage好きにはまずチェックしたいアルバムです。

評価:★★★★

Prophets Of Rage 過去の作品
THE PARTY'S OVER


ほかに聴いたアルバム

COLORS/BECK

前作「Morning Phase」から約3年半ぶりとなるニューアルバム。基本的に難しいことで楽しめるような軽快なポップチューンが並んでいます。基本的に打ち込みのサウンドをメインとしたリズミカルなポップソングがメイン。いい意味で聴きやすく、難しいこと抜きで楽しめるような楽曲が並んでいました。ただ全体的にバリエーションはちょっと少な目で、薄味といった印象を受けたアルバム。文句なしに楽しめるポップアルバムではあると思うのですが。

評価:★★★★

BECK 過去の作品
The Information
Mordern Guilt
Morning Phase

BEAUTIFUL TRAUMA/P!NK

アメリカの女性シンガーソングライターP!NKの5年ぶりとなるニューアルバム。ある意味王道的なメロディアスなポップチューンがメイン。R&B的な要素をベースとしつつ、ラップを入れてきたりロックな要素を強くしたり、ラテンの要素を入れてきたりと幅広いジャンルを取り入れつつ、しっかりP!NKらしいポップチューンにまとめています。

評価:★★★★

P!NK 過去の作品
FUNHOUSE

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2017年10月31日 (火)

待望のソロアルバム!

Title:AS YOU WERE
Musician:LIAM GALLAGHER

「待望の」のいう表現がピッタリ来るのではないでしょうか。ご存じ元oasisのボーカリスト、リアム・ギャラガー。oasis解散後はBEADY EYEというバンドを結成しアルバム2枚をリリースしましたが解散。その後どうなるかと思ったのですが、ついにソロ名義でのアルバムをリリースし、名実ともにソロデビューとなりました。

まっすぐにこちらを見つめた顔写真のみの武骨なジャケット写真もいかにもソロアルバムといった感じですし、また彼らしい感じ。そしてその肝心な内容ですが・・・これはまずoasisファンにとっては非常にうれしくなってくるような内容だったのではないでしょうか。かつてのoasisを彷彿とさせるような正統派のギターロックの楽曲が並んでいます。

アルバムの1曲目を飾り先行シングルでもある「Wall Of Glass」などはまさにoasis直系のグルーヴィーなギターロックナンバー。途中に入るギターのフレーズなどoasisを彷彿とさせます。

その後も軽快なロックンロールナンバー「Greedy Soul」やリズミカルなドラムでダンサナブルな「You Better Run」、ミディアムテンポのグルーヴィーなロックチューン「Come Back To Me」など比較的シンプルな、ある意味リアムらしいロックナンバーが続きます。oasisの延長線上のような作品ではあるのですが、雑誌のインタビューで「自分にはこういう音楽しか出来ない」ということを言っていたので、リアムらしいといえばリアムらしさを感じます。

アメリカのシンガーソングライターAndrew WyattやMichael Tigheとの共作曲もあるのですが、基本的にはリアムギャラガー本人が手掛ける曲がメイン。oasis時代のリアム曲はノエルの曲と比べると良くも悪くも素人っぽさというか詰めの甘さのようなものを感じたのですが、今回のアルバム曲に関してはおそらくoasisのアルバムの中でノエルの曲と並べても違和感がない出来になっているのではないでしょうか。アルバムの最後を飾る「I've All I Need」などoasisのシングル曲としても十分通用しそうなメロディアスでスケール感あるロックナンバーに仕上がっています。ただ、アルバムの中で特にメロディーの良さが光った「Paper Crown」「Chinatown」がいずれもリアム作曲のナンバーではなかった点、やはりまだまだという部分も感じてしまったのですが・・・。

また歌詞もソロアルバムらしく内省的な歌詞が目立ちます。特に「Greedy Soul」では「一対一で戦ってやる」「俺には金儲けの才がある」とソロ活動での決意を感じさせるような歌詞が見受けられます。ただ一方、「俺のもとへ戻ってこないか」と歌う「Come Back To Me」なんてひょっとしたらお兄ちゃんに対する呼びかけか?なんて思ってしまったりして。ちなみにこのアルバムに関しての某雑誌のインタビューで、近日中にリリース予定の兄、ノエル・ギャラガーのアルバムついて聴かれて「別にどうでもいい」と言いつつも延々とノエルについて語っていて、どこまでお兄ちゃんが好きなんだよ、と思ってしまいました(笑)。

ちなみに同作がリリースされた直後にお兄ちゃんのバンドの先行シングル「Holy Mountain」がリリースされ、その出来の良さに、さすがにソングライターとしての格の違いも感じてしまったのですが・・・ただこのアルバムもoasis好きなら満足できるリアムらしさが出たロックアルバムになっていたと思います。これからのソロ活動も楽しみ・・・と言いたいところだけども早くもっと素直になって、oasisを再開してほしいなぁ、やはり。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Heaven Upside Down/Marilyn Manson

9月30日のニューヨーク公演で舞台セットの下敷きになったというニュースが飛び込んできたマリリン・マンソン。その後しばらく彼の状況についてコメントがなかっただけに心配したのですが、特に生死にかかわるような事故ではなかったようでほっと一安心です。

さて本作はそんな事故の直後にリリースされたアルバム。ノイジーなギターにダイナミックなバンドサウンドという典型的なインダストリアルロック。いかにもマリリンマンソンらしい楽曲の連続で目新しさはないのですが、安定感のある楽曲の連続。ファンなら安心して楽しめるアルバムだと思います。

評価:★★★★

Marilyn Manson 過去の作品
THE HIGH END OF LOW

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2017年10月29日 (日)

マーク・ボランへの愛があふれる

1970年代前半、イギリスにおいてグラムロックのムーブメントを巻き起こしたバンド、T.Rex。今年はそのボーカルでありリーダーであったマーク・ボラン生誕70年かつ没後40年を迎えた年だそうです。それを記念し、今年、T.Rexに関する企画アルバムがリリースされました。

Title:T.Rex Tribute ~Sitting Next To You~

さて、T.Rexによりひとつの流行となったグラムロックは日本においても大きな影響を与えました。最初期には忌野清志郎がグラムロックの影響を受け、自身にもメイクをほどこしていたりしましたし、その後はご存じ、THE YELLOW MONKEYもグラムロックの影響を強く受けたバンド。また、日本においてひとつのジャンルとして確立したヴィジュアル系もグラムロックからの流れを受けています(イエモンもブレイク時は「ヴィジュアル系」にカテゴライズされていたこともありましたし)。

そんなグラムロックに大きな影響を受けた日本のバンドのひとつがマルコシアス・バンプ。アラフォー以上の世代には懐かしいロックバンドのオーディション番組「いかすバンド天国」通称「イカ天」で「グランドイカ天キング」に輝くなど一世を風靡しました。そのボーカル、アキマツネオは日本でも屈指のマーク・ボランフリークとしても知られているそうですが、その彼が総合プロデュースとして製作されたトリビュートアルバムがリリースされました。

本作にはアキマツネオ本人に、もちろんTHE YELLOW MONKEYから吉井和哉や廣瀬"HEESEY"洋一も参加。ほかにもOKAMOTO'SのオカモトショウやThe Collectorsの加藤ひさしにヒダカトオル、ちょっと意外なところではTHE BAWDIESのROYやアイドルグループチャオ ベッラ チンクエッティの橋本愛奈も参加しています。

基本的にT.Rexの音楽はシンプルなロックンロールが多いだけに楽曲もシンプルな曲がメイン。ボーカルとしてもシンプルでポップな歌い方をするボーカリストが曲にピッタリとマッチしていて、典型的なのが「Celebrate Summer」をカバーしたオカモトショウで、時としてあまりに軽すぎることも感じてしまう彼のボーカルも、T.Rexの楽曲に関してはむしろピッタリとマッチしています。

ちょっと意外(?)だったのがチャオ ベッラ チンクエッティの橋本愛奈で、良い意味でアイドルっぽさを感じさせない大人っぽいセクシーさも感じるボーカルで、アキマツネオとのデゥオで「Life's A Gas」にムーディーさを加えて上手くカバーしています。

逆にちょっと残念だったのがTHE BAWDIESのROYによる「Get It On」のカバー。いつもの彼らしいしゃがれ声によるソウルフルなボーカルだったのですが、残念ながら「Get It On」の軽快さを壊してしまうボーカルに。彼はおそらくこういう歌い方しか出来ないのでしょうが、T.Rexの楽曲にはちょっと合っていなかったように思います。

そしてさすがマーク・ボランフリークとして年季の違い(?)を見せつけたのがプロデューサーでもあるアキマツネオ。ほどよくねちっこいボーカルがT.Rexの楽曲にもピッタリとマッチしています。特に絶品だったのがラストを飾る吉井和哉とのデゥオ「Sitting Next To You」。どちらもマーク・ボランに対する愛情を強く感じるボーカルスタイルで、音楽的ルーツに共通項のある2人だけにボーカルとして息もピッタリ。T.Rexへの愛情あふれるカバーに仕上がっていました。

全体的には非常によく出来たカバーが多く、参加者それぞれのマーク・ボラン、そしてT.Rexに対する愛情があふれるトリビュートアルバムになっていたと思います。T.Rexが好きな人もそうでない人も、参加ミュージシャンが好きな人ももちろん、楽しめるアルバムになっていたと思います。特にT.Rexの曲はシンプルでポップで聴きやすいので、洋楽をあまり聴かないリスナー層にも楽しめるアルバムだと思います。

評価:★★★★★

そして本作と同時にリリースされたのがアキマツネオ監修によるT.Rexのベストアルバムです。

Title:BEST OF T.REXXXXXXX
Musician:T.Rex

まずちょっと残念なのは権利の関係か収録されているのがT.Rexに改名してから3枚目のアルバム「The Slider」以降の曲からピックアップされたベスト盤という点。そのため初期の代表曲「Get It On」などは収録されていません。

ただそれでも彼らの活動がもっとも脂になっていたと思われる70年代初頭の楽曲はきちんと収録されていますし、また彼らの楽曲の中には代表曲である「20th Century Boy」「Children of the Revolutin」などシングルリリースのみでアルバム未収録の曲も多く、それらの曲もキチンと抑えられている点、T.Rexの活動を知るためにはこの手のベスト盤が要チェックといった感じでしょう。

T.Rexといえばグラムロックと呼ばれるようなちょっとケバケバしたという印象すらある中性的な外観とは裏腹に楽曲は後のパンクロックへも影響を与えたという、ロックンロールやガレージロックの影響を受けたシンプルな楽曲がメイン。メロディーラインにも非常にわかりやすいものがあり、どの楽曲も非常に聴きやすさを感じます。

ただ、そういう印象をもとに聴き進めると、意外とギターが複雑なフレーズを奏でていたり、サイケやブルースなどの影響を顔をのぞかせたり、シンプルそうに感じても、実は「単純」なわけではないサウンドに気が付かされます。そんなサウンドを取り入れつつ、楽曲の雰囲気としてはむしろシンプルなポップスさを感じさせるあたりにマーク・ボランの才能を強く感じました。

ただ残念ながら後期の楽曲に関してはそういうサウンドのユニークさがちょっと薄れてしまい、単なるシンプルでポップなロックになっていた点が気になったのですが・・・。ただそういう部分を差し引いても名曲揃いのベスト盤。上にも書いた通り、彼らの楽曲はシンプルでポップ、ともすればわかりやすいサビを持っていたりもするのでJ-POPオンリーのリスナーにも聴きやすかったりします。オールタイムベストじゃないのはちょっと残念なのですが、これを機に是非。ブックレットには本作を監修したアキマツネオによる解説文も載っているので、入門盤としても最適なアルバムだと思います。

評価:★★★★★

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2017年10月28日 (土)

アフリカ初のポピュラーミュージック

Title:PALMWINE MUSIC OF GHANA

今回紹介するのは、一部で注目を集めているアフリカ音楽のコンピレーション。アフリカ最初のポピュラーミュージックといわれるパームワインを音楽評論家の深沢美樹氏監修・選曲により収録したコンピレーションアルバムです。ただ本作はその中でも1930年から60年あたりにかけてのSP音源を収録したアルバム。深沢美樹氏秘蔵のSP音源からの収録となるそうなのですが、全50曲中49曲が今回初CD化という驚きの内容。まさに秘蔵中の秘蔵の音源を世に出したアルバムになっています。

パームワイン・ミュージックは西アフリカの港町で生まれた音楽。欧米から帰ってきた解放奴隷たちが持ち込んだ欧米の音楽とアフリカの土着の音楽が融合して生み出された音楽で、「パームワイン」とは「ヤシ酒」のこと。ヤシの実から作った安酒を出すような酒場で演奏されたことからそのような名前が付けられたそうで、まさにアフリカ初のポピュラーミュージックという呼び名にふさわしい誕生の仕方といえるでしょう。

楽曲的には欧米由来のメロウなギターサウンドに、アフリカ由来のポリリズム的なリズムやコールアンドレスポンス、シャウとなどが融合したスタイル。基本的にはさわやかなギターサウンドとメロウなボーカルが前に出てきており、サーフミュージック、あるいはブラジル音楽あたりにつながるような雰囲気を感じさせる楽曲になっています。

今回のコンピレーションはまさにそんなパームワイン・ミュージックの最初期、1930年代の録音から徐々に時代を下る感じで楽曲が並んでいます。そのためパームワイン・ミュージックの成り立ちがよくわかるような構成になっています。個人的に特に魅力的だったのがパームワイン・ミュージックの萌芽ともいえる最初期の作品群。1937年の録音作品、Samの「Kweku Ewoosi」や同じく1937年の録音作品Kwaminの「Wongyam Odede」などはのちの音楽につながるようなメロウなギターサウンドが鳴っているものの、ボーカルは非常に荒々しく、アフリカの土着の音楽から地続きの音楽性を感じます。「Wongyam Odede」などはポリリズム的なリズムもなっており、西洋音楽とアフリカ土着の音楽の融合ということですが、アフリカ音楽的な要素を強く感じる楽曲になっています。

これが時代を下るにつれ、徐々にトライバル的な要素が薄れ、西洋音楽的な要素が強くなってくるのがひとつの特徴。音楽的にどんどんと洗練されていることがこのコンピレーションを聴くと感じることが出来ます。ただ、だからといってアフリカ的、トライバルな要素がなくなったかというとそうではなく、たとえば1952年の録音、Kwaa Mensah And His Bandの「Nana Akunfi Ameyaw」ではポリリズムなパーカッションを聴くことが出来たり、1958年の録音Kwabena Nyamaa&His Band「Mere Dwen Meho」などでもボーカルに強くトライバルの要素を感じたりと、洗練されたギターサウンドの後ろでトライバルなリズム、サウンドが鳴っており、この西洋的な部分とアフリカ的な部分のバランスが非常に魅力に感じられました。

今回のアルバムは、たとえばS.E.ロジーのような現代のパームワイン・ミュージックのミュージシャンにはまった人がそのルーツを知ろうとする時にちょうどよいアルバム、というスタンスなのですが、これがはじめてのパームワイン・ミュージックという方でも十分楽しめる構成になっていたと思います。特にアルバムに同封されているブックレットではパームワイン・ミュージックの歴史や各曲の紹介が細かく記載されており初心者にもピッタリの内容になっていました。アフリカ音楽の奥深さや魅力をより感じることが出来るコンピレーションアルバム。アフリカ音楽が好きなら間違いなく買いの作品です。

評価:★★★★★

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2017年10月24日 (火)

荒々しさと美しさが同居

Title:Visions of a Life
Musician:Wolf Alice

デビューアルバム「My Love Is Cool」が個人的に大ヒットしたイギリスの4人組バンドWolf Aliceの2枚目となるアルバム。私に限らずこのアルバムが壺にはまった方も多いようで、前作はイギリスのナショナルチャートで2位を記録。本作も前作から引き続き2位にランクインとヒットを記録しており、名実共にイギリスを代表するバンドへと成長を遂げようとしています。

今回のアルバムもまず1曲目「Heavenward」の出だしからして震えます。遠くのほうから徐々にホワイトノイズが近寄ってきたかと思えば、ガツンとギターサウンドのカットインでスタート。ノイジーなギターが鳴り響く中、ボーカルEllie Rowsellの澄んだ歌声が聴こえてくる・・・。マイブラからの影響を強く感じるこの楽曲はおそらく前作が気に入った方なら一発で気に入る楽曲になっているのではないでしょうか。

ただ今回、シューゲイザー色を強く押し出したドリームポップ的な曲は前作ほどは多くありません。続く「Yuk Foo」は80年代のインディーギターロック風の荒々しいパンキッシュなナンバー。さらに「Beautiful Unconventional」はロックンロール風の軽快なリズムが楽しいポップチューンになっています。

とはいってもアルバム全体として前作で感じたWolf Aliceの魅力はしっかりと残されていました。Ellie Rowsellによる美しいボーカルはもちろん本作でも健在。メロディーラインもポップで魅力的なフレーズを聴かせてくれます。特にそんな魅力が全面的に出ているのが「After The Zero Hour」。アコースティックギターをメインに彼女の美しいボーカルとメロディーを聴かせるシンプルなポップチューン。アルバムの中でも異色なナンバーなのですが、シンプルだからこそむしろWolf Aliceの魅力がより伝わるような楽曲になっています。

またガレージ風のノイジーなギターでパンキッシュに聴かせるナンバーも大きな魅力。「Space&Time」などはまさに全面的に歪んだギターが鳴り響くパンクチューン。ただ意外とメロディーラインに関してはポップにまとまっているのもまた彼女たちらしいといった感じでしょう。「St.Purple&Green」もまた、最初、美しいコーラスラインからスタートしつつ、途中からいきなりへヴィーなギターサウンドを軸とした分厚いバンドサウンドがガツンと入ってくるのも魅力的。そんな分厚いサウンドを展開しながらもクリアで美しいボーカルとメロディーのフレーズは続いており、へヴィーさと美しさが同居するWolf Aliceらしい楽曲になっています。

そういう意味ではタイトルチューンでもある最後を締めくくる「Visions Of A Life」も同様。ダイナミックでへヴィーなバンドサウンドを奏でつつ、一方で非常に美しいメロディーとボーカルを聴かせる、その対比がおもしろいナンバー。まさにWolf Aliceらしい楽曲での締めくくりとなっています。

前作に比べると(80年代インディーロックっぽい楽曲やシューゲイザー系からの影響は感じるものの)80年代っぽさは薄れた感じがします。またドリームポップよりもガレージロック寄りにシフトしたのも本作の特徴でしょうか。ただそれでもまた前作同様、Wolf Aliceの魅力をしっかりと感じることができた傑作になっていました。前作に引き続き、またもや本年度のベスト盤候補!今回も個人的におもいっきり壺にはまってしまいました。

評価:★★★★★

Wolf Alice 過去の作品
My Love Is Cool


ほかに聴いたアルバム

Wonderful Wonderful/The Killers

アメリカ・ラスベガス出身の4人組ロックバンド。ただアメリカよりもイギリスで人気が先行したようで、イギリスではデビュー作以降本作まで5作連続の1位を獲得。ただこのアルバムではついにアメリカでも1位を獲得しています。

楽曲はミディアムテンポのナンバーがメイン。以前聴いた「Day&Age」もそうだったのですが、スタジアムバンドの風格すら漂うスケール感のある作品を聴かせてくれます。メロディアスな作風は日本人にもマッチしそうな感じもするのですが。

評価:★★★★

The Killers 過去の作品
Day&Age

V/THE HORRORS

イギリスのインディーギターロックバンドによるタイトル通り5枚目となるアルバム。彼らはエレクトロサウンド色の強い「SKYING」、フィードバックノイズを多く取り入れた「Primary Colours」、そして両者を折衷した「LUMINOUS」とアルバム毎に少しずつそのスタイルを変えてきました。本作はノイジーなサウンドが目立ちつつも、基本的にはエレクトロサウンドが主軸となっています。ただ全体的にはサイケの要素を強く感じますし、またインダストリアル的な要素が強い「Machine」やアコースティックな要素が強い「Gathering」など幅広い音楽性への挑戦も感じられるアルバム。ただ全体的にはドリーミーなポップチューンが心地よいアルバムに仕上がっていたと思います。

評価:★★★★★

THE HORRORS 過去の作品
Primary Colours
SKYING
LUMINOUS

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2017年10月23日 (月)

アルビニっぽい音だなぁ、と思ったら

Title:24-7 Rock Star Shit
Musician:THE CRIBS

イギリスのスリーピースロックバンドによる新作。2008年に元The Smithsのジョニー・マーが加わり大きな話題となり、さらにその後リリースされた「Ignore the Ignorant」は高い評価を受けました。ジョニー・マーは残念ながら(予想通り)、その1枚のみの参加だったようですが、その後もコンスタントに活動を続けている彼ら。特にフジロックには過去3度も参加しており、なじみの深いミュージシャンの一組のようです。

彼らについて私が聴いたのは話題になったアルバム「Ignore the Ignorant」のみ。その後のアルバムについては正直スルーしていたのですが、前作から約2年5ヶ月ぶりとなるニューアルバムを久しぶりに聴いてみました。

以前のアルバムもいかにもイギリスのインディー系ロックバンド然とした作品だったのですが、今回のアルバムもいきなりノイジーに歪みまくった音、さらに荒々しくシャウト気味のボーカルが聴いてみてまず「あ、スティーヴ・アルビニっぽい」と好感触を持ちました。で、アルバムを聴いた後、このアルバム評を書く前にはじめて知ったのですが、全面スティーヴ・アルビニプロデュースなんですね・・・。ある意味、一発でアルビニとわかるような音作りをしていました。

そんな訳で、まさにPIXIESあたりが好きなら壺をつきまくりそうなアルバム。先行シングルにもなった「Year of Hate」もノイジーなギターとシャウト気味なボーカルで非常に荒々しいナンバーに。そしておそらくアルビニサウンドが好きならたまらないと思うのが、同じく先行シングルとなった「In Your Palace」「Dendrophobia」あたりではないでしょうか。荒々しいギターサウンドが展開されるも、メロディーラインは至ってポップというアンバランスさが楽しい楽曲。80年代のインディーギターロックが今の再現されたような内容になっています。

後半はアコースティックな色合いの強い「Sticks Not Twigs」や静かに聴かせる「Dead at the Wheel」みたいな曲もありつつ、基本路線は「Rainbow Ridge」「Partisan」というノイジーギターを中心としたダイナミックなバンドサウンド+ポップなメロディーラインという構成で変わりません。最後の「Broken Arrow」も軽快でポップなメロを主軸としたアルバム。曲名を冒頭に持ってくるサビが顔を見せるある意味、非常にわかりやすいナンバー。カラッとした雰囲気はどこかアメリカテイストなのですが、アルバムの最後を締めくくるにふさわしいロックチューンに仕上がっています。

全体的には決して目新しい感じもありませんし、楽曲のバリエーションも限られています。ただ全10曲36分という「短さ」がちょうどよいアルバムになっていました。とにかく難しいこと抜きにインディーギターロックの楽しさを味わえるアルバムだったと思います。PIXIESやDinasour Jr.あたりの80年代インディーギターロックが好きなら必ず気に入る1枚です。

評価:★★★★★

THE CRIBS 過去の作品
Ignore the Ignorant


ほかに聴いたアルバム

Concrete and Glod/FOO FIGHTERS

いきなりアコギ弾き語りで静かにスタートするFOO FIGHTERSの新作は本人たち曰く「モーターヘッドが『サージェント・ペパーズ』を鳴らしたような作品」だそうで、彼ららしいパンキッシュな作品は少ないのですが、全体的にポップなメロディーがキラリと光っていますし、楽曲によってメタルちっくだったりハードコアだったり、かと思えばポップな作品になっていたり・・・「Happy Ever After(Zero Hour)」なんて完全にビートルズを彷彿とさせるフレーズが飛び出したりと、非常に凝った作品に仕上がっていました。いつものフーファイを期待すると若干期待はずれになってしまうかもしれませんが・・・バンドとして一段階上に来たように感じさせるような傑作アルバムでした。

評価:★★★★★

FOO FIGHTERS 過去の作品
ECHOES,SILENCE,PATIENCE&GRACE
GREATEST HITS
WASTING LIGHT
Saint Cecilia EP
SONIC HIGHWAYS

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2017年10月16日 (月)

人気のアメリカインディーバンド

Title:Sleep Well Beast
Musician:The National

今回紹介するのはアメリカのインディーバンド、The Nationalのニューアルバム。The Nationalは2001年に結成し、アメリカはブルックリンを拠点に活動している5人組バンド。2005年にリリースされた「Alligator」が絶賛を受け一躍注目を集め、前作「Trouble Will Find Me」も各所で絶賛を集め大きな話題となりました。売上的にも前作はインディーズでありながらもアメリカビルボードチャートで3位を記録するなど絶大の支持を受けているバンドです。

個人的には彼らの名前は以前から知ってはいたのですが、アルバムをちゃんと聴くのは今回がはじめて。ほとんど前情報がない状態で聴いたのですが、このアルバムで彼らの魅力にはまってしまいました。

彼らの楽曲についていえば比較的シンプルでポップなメロディーラインを聴かせるといった感じでしょうか。サウンド的にもピアノやシンセを取り入れつつも、比較的シンプルにまとめています。今回の楽曲で前半はピアノの音を取り入れて美しくしんみりと聴かせるような楽曲が目立ちます。1曲目を飾る「Nobody Else Will Be There」も美しいピアノのリフをメインとした曲作りとなっていますし、「The System Only Dreams in Total Darkness」などもピアノの音を軽快にならしたポップスにしあがています。

ただピアノの音をメインでしんみりと聴かせる前半から一転するのは中盤に待ち構える「Turtleneck」。ガレージロック風のギターが鳴り響く、ちょっとレトロな雰囲気もするダイナミックなロックチューン。ちょっと雰囲気が変わったな、と思えば続く「Empire Line」「I'll Still Destroy You」はエレクトロ系のミュージシャンを思わせるような打ち込みによるユニークなリズムが耳を惹きます。メロディーの方は序盤と変わらず至ってシンプルでポップなのですが、ここらへん、ユニークなサウンドに耳を惹かれるような楽曲が並びます。

これが再び終盤に来ると「Carin at the Liquor Store」はピアノがメインに美しいメロディーラインを聴かせるバラードナンバー、「Dark Side of the Gym」も同じくピアノの音にシンセの音が加わりながらも美しく聴かせるナンバーとメロディーラインを聴かせるようなポップチューンが並びます。最後を飾るタイトルチューン「Sleep Well Beast」はまたエレクトロのリズムが印象的なナンバーなのですが、こちらもしっかりとメロディーラインを聴かせてアルバムは幕を下ろします。

サウンドのバリエーションも魅力的なのですが、それ以上にやはり大きな魅力だったのがどこか哀愁感も帯びたフレーズも魅力なメロディーライン。サウンドにしろメロにしろ派手さはないのですが、しっかり心に残るメロディーを聴かせてくれました。比較的シンプルなメロに、若干実験性も加えたサウンドがバランス良く配合されたアルバム。毎回、アルバムが大きな話題となる彼らですが、本作もまた傑作アルバムでした。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

All The Light Above It Too/Jack Johnson

夏のビーチがいかにも似合いそうなオーガニック系ミュージシャンの代表格Jack Johnsonのニューアルバム。楽曲的にはいつものJack Johnsonらしいアコースティックギターで聴かせるメロディアスなポップ。ある意味目新しさは皆無なのですが、そのメロディーラインの美しさはやはり抗えない魅力がありました。

評価:★★★★

Jack Johnson 過去の作品
SLEEP THROUGH THE STATIC
To The Sea

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2017年10月14日 (土)

知る人ぞ知るブルース曲を集めたコンピ盤

Title:Do The Blues 45s!-The Ultimate Blues 45s Collection

今回紹介するのはブルースのコンピレーションアルバム。聴いてみるきっかけとなったのはブルースとソウルミュージックの専門誌「BLUES&SOUL RECORDS」の紹介記事。ディスクユニオンの秋元伸哉氏監修・選曲によるアルバムで、1950年代から60年代のブルース20曲を選曲。ただこのコンピの特徴はマイナーレーベルからリリースされた音源がメイン。いわば「知る人ぞ知る」的な楽曲を集めたコンピレーションになっています。

楽曲的には、前述の「BLUES&SOUL RECORDS」の紹介文にも書いていたのですが、全体的にダウンホーム(=南部的)な感覚の強いギターが特徴的。特に1曲目George Smithの「Trap Meat」は、楽曲の名義こそハーピストのGeorge Smithなのですが、むしろ目立つのはバックのマーシャル・フックスとジミー・ノーランの火を吹くようなアグレッシブなギターサウンド。4曲目Fention And The Castle Rockers「The Freeze」でも、こちらは楽曲のミュージシャン名義となっているフェントン・ロビンソンのギターが非常に力強く印象に残る内容になっています。

楽曲的にはEddie Hope&Manish Boysの「A Fool No More」やJames Walton And His Blues Kings「Leaving Blues」のように8小節の繰り返しでボーカルとそれに呼応するギターを聴かせるような、いわば王道的なカントリーブルースのナンバーが多い反面、Smokey Johnson「It Ain't My Fault Pt.1」はムーディーな雰囲気がカッコいいジャジーなナンバーとなっていますし、Monte Easter And His Band「Weekend Blues」も泣きのギターでしんみり聴かせる哀愁感あふれるジャジーなナンバーになっています。

Wiley Terry「Follow The Leader Pt.1」のJBばりにファンキーなボーカルも非常にカッコいいですし、Levi Seabury And His Band「Boogie Beat」も軽快なブギウギのビートが楽しくなってくるようなナンバー。全体的にダウンホームな色合いを主軸にしつつ、バリエーション富んだ作風にブルースというジャンルの包容力の大きさを感じさせるコンピレーションとなっています。

全体的にはインストのナンバーも多く、ダウンホームなギターの音に反して軽さを感じさせるようなナンバーもあったりしたのですが、どの曲もそれぞれの魅力を感じさせる選曲がされており、マイナーレーベルの楽曲でこんな知られざる名曲が残されていたのか、と驚きすら感じてしまうコンピレーション。CDの帯には甲本ヒロトの推薦文が書かれており、ジャケットデザインは本秀康となかなか豪華なメンバーが協力しているアルバムなのですが、それだけ力の入っているコンピということなのでしょう。その力の入った結果として文句なしの名コンピになっていたと思います。ブルースリスナー要チェックの1枚です。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

american dream/LCD Soundsystem

DJ、音楽プロデューサーとしても活躍しているJames Murphyのソロプロジェクト、LCD Soundsystem。2011年に突然活動を休止するも2015年に活動を再開。約7年ぶりとなるニューアルバムがリリースされました。

基本的にはエレクトロ主体としたポップアルバム。活動休止前のアルバムがロック色の強い作品だっただけに、その方向性のベクトルを少々変えてきた形となります。聴いていて心地よいし素直に楽しめる感じのアルバムですが、インパクトや目新しさは少々薄めに感じてしまいました。

評価:★★★★

LCD Soundsystem 過去の作品
This Is Happening

Every Country's Sun/MOGWAI

ベスト盤やサントラ盤などのリリースがあったためあまりそんな感覚はなかったのですが、純粋なオリジナルアルバムとしては3年ぶりとなるMOGWAIの新作。前作「Rave Tapes」はエレクトロサウンドを入れつつも基本的にはいつものMOGWAIらしさもしっかり感じられる作品になっていました。

久々となる今回の作品はノイジーなギターサウンドをベースにダイナミックで重いバンドサウンドで構成される良くも悪くもいつものMOGWAIらしさが全開となった作品。「Party in the Dark」「1000 Foot Face」のようなポップな歌モノもあり、全体的には聴きやすさも感じさせてくれる内容になっています。ファンにとっては安心して楽しめる内容。それがバンドにとって必ずしもプラスなのかは不明ですが。

評価:★★★★

MOGWAI 過去の作品
The Hawk Is Howling
HARDCORE WILL NEVER DIE,BUT YOU WILL
Live at All Tomorrow's Parties,9th April 2000
Earth Division EP
Rave Tapes
Les Revenants
CENTRAL BELTERS
ATOMIC

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