アルバムレビュー(洋楽)2017年

2017年12月29日 (金)

今回もArcaサウンド

Title:utopia
Musician:bjork

ビューくの約3年ぶりとなるニューアルバム。前作に引き続きArcaをプロデューサーとして迎えた今回の作品。今回のアルバムの感想をいろいろとみてみると、少々ユニークな傾向に気が付かされました。感想では前作「Vulnicura」との対比によるものを良く見かけましたが、「前作と方向的には似ている」という感想と「前作と全く逆」という感想を同時に見かけるのです。

前作「Vulnicura」はある意味、とてもわかりやすいアルバムになっていました。彼女のパートナーであったマシュー・バーニーとの別れというわかりやすいテーマを素材としており、サウンドについてもそのイメージを踏襲したもの。比較的重いストリングスの音色を軸としたエレクトロのサウンドは、歌詞のテーマを反映した暗いものに仕上がっていました。

その点、今回は対照的な部分が多く、今回は歌詞も「愛の喜び」を歌ったようなものがよく見受けられます。「arisen my senses」でも

"but he sees me for what who i am"
(だけど彼は私のありのままを見てくれる)

(「arisen my senses」より 作詞 bjork)

なんていうちょっとおのろけ的な歌詞が登場してきたりしていますし、サウンドにしてもハープや笛の音色を取り入れた明るい音色がメイン。特に「the gate」やタイトルチューンである「utopia」は美しい木々の中をきれいな小川が流れているような、爽快感ある森の中をイメージするようなサウンドに仕上げており、非常に澄み切った明るさを感じさせるものとなっています。

ただ、それでは今回のアルバムが前作と真逆のアルバムだったのか、と言われると、それもまた少々違うように感じました。

まずサウンド的に言えば、今回のアルバムも前作同様のArcaサウンド。音数が少な目でシンプルだった前作に比べるとサウンド的には分厚さを感じる曲が多いものの、基本的にはあくまでもビョークのボーカルのサポートに徹するようなサウンドとなっており、ストリングスにエレクトロサウンドが重なるという基本的な構成も一緒。例えば「claimstaker」のようなダークなサウンドの曲も収録されています。

そのため個人的にも最初聴いた感触としては前作と対照的というよりも、前作と似ているという印象を受けました。前作同様、Arcaがプロデュースを手掛けているため、やはり根本的な部分は前作と同じ。そういう意味でも大きな建付けでは前作と同じ方向性のアルバムと言えるかと思います。

また歌詞にしても今回のアルバムでも単純にポジティブな面だけ歌っているわけではありません。「私を訴えればいい」と歌う「sue me」のように、「愛」の複雑性を感じさせる歌詞もあります。そりゃそうだよね。失礼ながらビョークももう52才。恋に恋するような年齢じゃないですよね。

そういう意味では今回のアルバム、前作「Vulnicura」と対比するアルバムというよりは、前作からのある種の延長線上にあるようなアルバムといった方が正確ではないでしょうか。もちろん、前作同様、今回のアルバムもArcaサウンドとビョークのボーカルの相性の良さを感じさせる傑作。彼女の良さを存分に引き出した作品になっていました。

評価:★★★★★

Bjrok 過去の作品
biophilia
2012-02-12 NY Hall of Science,Queens,NY
Bastards
Vulnicura
Vulnicura Strings
Biophilia Live

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2017年12月24日 (日)

oasisのイメージから離れて

Title:Who Built the Moon?
Musician:Noel Gallagher's High Flying Birds

これがソロとなってから3作目となる元oasisのお兄ちゃんことノエル・ギャラガーのソロプロジェクト、Noel Gallagher's High Flying Birds。まず今回のアルバムリリースにあたり大きな話題となったのが先行シングル「HOLY MOUNTAIN」でした。バンドサウンドにブリブリのホーンセッションに軽快な笛の音色が加わる分厚い音の祝祭色豊かなポップチューン。バンドサウンドメインだったoasis時代にはまず見受けられなかった楽曲に、oasis時代からのファンは驚かされました。

他にも今回のアルバムは様々なサウンドを導入し、oasis時代には聴かせることのなかったタイプの楽曲が並んでいたのが大きな特徴でした。例えば「IT'S A BEAUTIFUL WORLD」は打ち込みのリズムにエフェクトのかかったボーカルのサイケ風な楽曲。「BE CAREFUL WHAT YOU WISH FOR」はドリーミーな雰囲気が楽曲全体に流れるダークなナンバーになっていますし、「IF LOVE IS THE LAW」は鈴の音も加わった分厚いサウンドにノエル流ウォール・オブ・サウンドとすら形容できそうなポップチューンになっています。

今回のアルバム、ノエルのこのような方向性に関してまず感じてしまうのはoasis時代のイメージからの決別ということでしょう。今回、プロデューサーとしてデビッド・ホルムスという、テクノ、エレクトロ系のDJを起用している点からもそれはうかがえます。ただもっとも、oasis時代のスタイルを否定しているという感じではありません。例えばタイトルチューンになっている「THE MAN WHO BUILT THE MOON」はサウンドこそ非常に分厚くサイケ色強いナンバーとなっていますがメロディーラインは完全にoasis(というかメロディーラインはどこか名曲「Wonderwall」を彷彿とすらさせます)。

そういう意味では「決別」というよりも、oasisのイメージに固執されずに新たな一歩を進み始めたという言い方の方が適切かもしれません。またボーナストラックとして収録されている「DEAD IN THE WATER」「GOD HELP US ALL」はアコースティックなサウンドをバックにノエルらしい美メロを聴かせる、ある意味旧来のファンがノエルに求めているようなスタイルを体現化したような作品になっています。こういうタイプの曲を作れなくなった、作らなくなったというよりは今回のアルバムのスタイルに合わなかったという判断でしょうか。次回作はまた、oasis時代からのノエルのイメージに沿った楽曲もお目にかかれるかもしれません。

さて元oasisといえば、先日、弟のリアム・ギャラガーも初のソロ名義のアルバムをリリースしたことでも話題となりました。ここのサイトでも紹介しましたが、こちらはそのままoasis時代のイメージを引きずるようなナンバー。同時期にリリースされた2枚のアルバムですが、内容は対照的。個人的にはどちらがよかったかと言われると、やはりノエルのアルバムの方がよかったかな、と思います。

ただ、全英アルバムチャートの初週売上では、どちらも1位を獲得したもののノエルのアルバムが7万8千枚を売り上げたのに対して、リアムのアルバムは10万3千枚の初動売上を記録。リアムのアルバムは初のソロアルバムということでご祝儀的な部分があったと思うのですが・・・やはり多くのリスナーはoasisらしいスタイルをギャラガー兄弟に求めているのかなぁ、とちょっと寂しくも感じれました。

売上的にはちょっと残念な部分はあったのですが、アルバムの内容的にはノエルのソングライティング能力が存分に発揮された傑作アルバムだったという点は間違いありません。新しいスタイルも彼のソングライティングの才という下地があったからこそ築き上げることが出来たもの。まだまだこれからも傑作をリリースしてくれそうです。

評価:★★★★★

NOEL GALLAGHER'S HIGH FLYING BIRDS 過去の作品
NOEL GALLAGHER'S HIGH FLYING BIRDS
CHASING YESTERDAY

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2017年12月22日 (金)

銀熊賞受賞作のサントラ盤

Title:AROUND FELICITE(邦題 わたしは、幸福(フェリシテ)サウンドトラック+REMIX)
Musician:Kasai Allstars

今回紹介するのはKasai Allstarsの新作。Kasai Allstarsについては以前も紹介しましたが、コンゴのカサイ州出身の5つのグループのメンバーからなるバンド。そんな彼らの新作は、映画わたしは、幸福(フェリシテ)」のサウンドトラック。2017年の第67回ベルリン国際映画祭審査員グランプリ(銀熊賞)受賞作で、フランス語で「幸福」という意味を持つフェリシテという名前の女性の物語。コンゴの首都キンシャサのバーで歌いながら、ひとり息子を育てているシングルマザーのストーリーだそうです。

サントラ盤、といってもよくありがちな映画で使われているBGM的な楽曲が何曲も収録されている、といった感じの構成ではありません。物語の主人公が歌手ということもあり、映画でも音楽が効果的に用いられているようで、今回のアルバムも普通にKasai Allstarsの楽曲が収録されており、サントラというよりもKasai Allstarsのオリジナルアルバムとして楽しむことが出来ます。

ちなみにKasai Allstarsでは映画の中でもバンド役として出演。主人公のフェリシテはKasai Allstarsの演奏をバックに歌う役柄だそうで、そのためアルバムの中でも女性ボーカル曲が数多く収録されています。ただ、その女性ボーカルも楽曲の中では決して違和感にはなっておらず、Kasai Allstarsの中で自然に溶け込んでいます。

そしてその楽曲は親指ピアノの美しい音色と、電子リケンベのすさまじくノイジーなサウンドの対比をきかせつつ、打楽器をバックに疾走感とうねるようなリズムの元に独特なグルーヴ感を醸し出しています。例えば「Kapinga Yamba」がその典型例。強靭なグルーヴが聴くものを軽くトリップさせるような魅力を楽曲から感じさせます。

ほかにもギターのブルージーな音色が耳を惹く「Lobelela」やお祭り的な楽しさを感じさせる「Bilonda」、親指ピアノのミニマルなサウンドがトリップ感を誘う「Quick As White」など、基本的なサウンド構成は同じながらも、楽曲毎にバリエーションも感じられ、最後まで一気に楽しめる構成になっています。

一方、今回のアルバム、Kasai Allstarsの楽曲だけではなく、中央アフリカ唯一の交響楽団であるキンバンギスト交響楽団の演奏によるエストニアの現代音楽家、アルヴォ・ペルトの楽曲がKasai Allstarsの曲の合間に挿入されています。劇中、主人公の内面を描いたシーンで使用されるそうですが、Kasai Allstarsのトライバルな演奏の合間に突如収録される管弦楽には正直言って少々違和感も。ただ、同じコンゴの音楽家による演奏という意味で、アフリカの音楽シーンの幅の広さを感じさせる構成にはなっていました。

そしてDisc2はリミックスとしてKasai Allstarsの曲を世界の新進気鋭のDJたちによってリミックスした曲が収録されています。基本的に彼らのトライバルな楽曲にエレクトロサウンドによるリミックスをほどこしたような内容に。個人的にはリミックスによって彼らの楽曲がいわば洗剤によってきれいに洗い流されてしまったような感があり、原曲の、よりトライバルな荒々しい部分が出ている楽曲の方が好みなのですが、ただ基本的には原曲の持っているトランシーなグルーヴ感をそのまま生かしたようなリミックスが多く、これはこれでKasai Allstarsの楽曲の持つ、別の側面からの魅力を感じることが出来るアレンジになっていました。

映画を見ていなくてもKasai Allstarsのニューアルバムとして十分すぎるほど楽しめる傑作アルバムでした。ただ一方、映画の方も彼らの音楽がふんだんに利用されているようで、音楽映画的な側面も強そう。機会があれば映画も見てみたいな。そんなことも感じさせる、ある意味映画のサントラ盤としては理想的な内容のアルバムでした。

評価:★★★★★

Kasai Allstars 過去の作品
Beware the Fetish(コンゴトロニクス 5 〜ビーウェア・ザ・フェティッシュ)

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2017年12月18日 (月)

変わっていく彼ら、変わらない彼ら

Title:Greatest Hits:God's Favorite Band
Musician:GREEN DAY

1990年にデビューし、30年近いキャリアを誇るベテランのパンクバンドGREEN DAY。日本でも94年にリリースしたメジャーデビューアルバム「Dookie」が大ヒットを記録し、一気に知名度を広げました。今回リリースされたのは、彼らのベスト盤。GREEN DAYのベスト盤といえば2001年にベスト盤「International Superhits!」をリリースしていますが、ご存じのように彼らはその後、2004年に「反戦」をテーマとした社会派のアルバム「American Idiot」をリリース。「パンクオペラ」と呼ばれるようなアルバム1枚がコンセプトを持った構成となっているアルバムをリリース。彼らに対する評価を一変させました。

そういうこともあり、いわば2001年の頃の彼らの立ち位置と現在の彼らの立ち位置は全く異なったものとなっています。ベスト盤としては約16年ぶりとなる本作。ある意味、その頃のGREEN DAYと今のGREEN DAYを比べると、隔世の感があります。

ただ、今回のベスト盤であらためて彼らの初期の頃の作品を聴いたのですが、やはり初期の頃の作品も非常に魅力的。ご存じ大ヒットを記録し、初期の彼らの代表曲としてよく知られる「Basket Case」や、軽快なメロディーラインが耳を惹く「Minority」など、とてもキャッチーなメロディーラインで簡単に口づさめるようなわかりやすさを持っています。彼らがブレイクした後、日本でも数多くのポップスパンクのバンドが人気を博しましたが、間違いなくGREEN DAYの初期の作品群からの影響が大きいでしょう。彼らは日本の音楽シーンにも大きな足跡を残しました。

もっとも「American Idiot」以降の作品では単なるポップなパンク路線だけではなく楽曲のバリエーションも加わり、音楽的な成長も強く感じます。ギターのアルペジオでしんみりと聞かせる「Wake Me Up When September Ends」や哀愁感あるメロディーラインの「21 Guns」などは初期の彼らでは聴けないようなタイプの作品でしょう。ただその一方、「Bang Bang」など、初期の作品群と並べても全く違和感ないポップなパンク路線の曲も多く収録されており、コアとなっている部分は実は初期も最近も大きな変化がないことにあらためて気がつかされます。

そんな変わらない彼らについて象徴的だったのがこのアルバムの最後に収録されている新曲「Back In The USA」。これこそ初期のGREEN DAYをほうふつとされるようなメロディアスなポップスパンクのナンバーで、GREEN DAYの原点はやはりここなんだということを改めて宣言しているように感じる曲でした。

初期作品から最新作まで時系列順に並べた今回のベストアルバム。そんな中でGREEN DAYというバンドの変化している部分と変わらない部分を同時に知ることができる、そんなアルバムになっていました。もっとも30年近いキャリアを誇る彼らですが、ここ最近の楽曲を含めて、いまだに楽曲にある種の新鮮味を帯びているのも驚くべき事実。まだまだこれからも数多くの名曲を世に送り出してくれそうです。

評価:★★★★★

GREEN DAY 過去の作品
STOP DROP AND FALL!!!(FOXBORO HOTTUBS)
21st Century Breakdown
AWESOME AS F**K(邦題:最強ライヴ!)
UNO!
DOS!

TRE!
爆発ライブ~渋谷編
DEMOLICIOUS
Revolution Radio


ほかに聴いたアルバム

A BRAND NEW ME: ARETHA FRANKLIN WITH THE ROYAL PHILHARMONIC ORCHESTRA/Aretha Franklin

アレサ・フランクリンのニューアルバムは新録ではなく、過去の彼女の音源にロイヤル・フィルハーモニック・オーケストラを重ねた企画盤。基本的にこの手のオーバーダビングでの企画盤は出来が悪く評判が悪いのですが、このアルバムはさすがアレサのボーカルが力を持っているためか、オーケストラアレンジでも違和感なく聴くことが出来ます。

もっともオーケストラアレンジといってもストリングスの音色は比較的控えめ。あくまでも原曲の雰囲気を壊さない程度でストリングスが入ってくるような「無難な」内容。だからこそ聴いていても違和感のない出来に仕上がってはいる一方、オーケストラアレンジにするおもしろさはあまり感じませんでした。まあ、無理にオーケストラアレンジを入れて変なスケール感だけ出して原曲の良さをぶち壊しになるよりはよっぽどましだとは思うのですが・・・。

評価:★★★★

Aretha Franklin 過去の作品
Aretha Franklin Sings the Great Diva Classics

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2017年12月15日 (金)

今年も恒例の

Title:2018-Classic Blues Artwork from the 1920s Calendar

Bluescalendar2018

また今年も恒例のブルースカレンダーの季節がやってきました。毎年、アメリカのブルース・イメージ社という会社がリリースしているカレンダー。ちょうどLP盤の大きなのカレンダーで、広げるとLP盤2枚分の大きさ。下半分はカレンダーになっていて、著名なブルースシンガーの生誕日や逝去日が記載されており、一方上半分は戦前ブルースの広告が掲載。この戦前ブルースの広告画像がなかなか味があり、毎年、楽しませてくれます。

このブルースカレンダー、目玉となるのはカレンダー以上に毎年ついてくる付録のCDの方。全24曲の内容のうち、半分の12曲はカレンダーについてくる広告の内容の楽曲。そして残り12曲はいわばボーナストラック。いずれも戦前ブルースの貴重な音源が収録されています。

そして毎回、この付録CDには最近発見されたばかりのレア音源が収録されて話題となります。今回は現存盤が最近発見されたJab Jones and The Memphis Jug Bandによる「My Love Is Cold」「Poor Jab Blues」の2曲。The Memphis Jug Bandはご存じジャグ・バンド。ジャグバンドとはジャグ=瓶や洗濯板、ミュージックソーなど身近な日常品を楽器に仕立てて演奏するバンドのこと。本来は楽器ではない日常品から生まれる音なのですが、非常に軽快で楽しい音を聴かせてくれます。このCDに収録している2曲もワクワクするような楽しい音が耳を惹く一方、メロディーラインはどこか物悲しさを感じさせ、そのギャップがおもしろい曲に仕上がっています。

このThe Memphis Jug Bandは戦前ジャグバンドの代表格的バンド。今回のCDには、この2曲の他にCharley Nickerson and The Memphis Jug Band名義による「Going Back To Memphis」も収録。そのため特にボーナストラックではジャグバンドによる演奏が目立つ構成になっていました。

他にもワンコードで進みながらもそのギターの音色が印象に残るCharley Patton「Mississippi Boweavil Blues」、力強いボーカルが耳を惹く戦前ブルースの代表的なシンガー、Blind Lemon Jeffersonによる「Weary Dogs Blues」、男女の掛け合いがユニークなKansas Joe and Memphis Minnie「Goin' Back To Texas」など聴かせる楽曲の連続。有名どころから知る人ぞ知る的なシンガーまでそろっており、今回もまたブルースファン、特に戦前ブルースが好きならたまらない選曲となっています。

ただ、これは戦前ブルースの宿命でもあるのですが、やはり音はノイズがひどい曲も多く、またやはり戦前ブルースはちょっとマニアックなジャンルであるため万人にお勧めという訳にはいかないのもいつも通り。ただ、シンプルでブルースのコアな部分だけ抽出したような楽曲はやはりとても魅力的。カレンダーにつかわれている広告素材はなかなかおしゃれですし、興味ある方は是非。

評価:★★★★

2013-Classic Blues Artwork from the 1920s Calendar
2014-Classic Blues Artwork from the 1920s Calendar
2015-Classic Blues Artwork from the 1920s Calendar
2016-Classic Blues Artwork from the 1920s Calendar
2017-Classic Blues Artwork from the 1920s Calendar


ほかに聴いたアルバム

Dedicated to Bobby Jameson/Ariel Pink

アメリカLAのインディーシンガーAriel Pinkの新作は60年代に活躍していたミュージシャン、ボビー・ジェームソンに捧げるアルバム。ローリングストーンズやフランク・ザッパともコラボをしていたそうですが、絶頂期にドラッグにおぼれて転落。35年に及ぶ隠遁生活を経て、自らの悲劇的な人生の物語を語った2007年の自叙伝に心揺さぶられた彼が、このトリビュートアルバムを作り上げたそうです。

アルバムの前半はかなりローファイな内容。はっきりいって力が抜けすぎていてちょっとグダグダ感もあり、あまりおもしろくありませんでした。後半もローファイな内容になっていましたが、彼持ち味のポピュラーセンスが生かされた内容に。楽曲もAORからバブルガムポップ、80年代風から60年代風などバラエティー富んだ作品が並んでいて楽しめる構成になっていました。

評価:★★★★

Ariel Pink 過去の作品
Mature Themes(Ariel Pink's Haunted Graffiti)
Pom Pom

Look What The Blues Has Done For Me/Arthur Adams

60年代から70年代にかけてクルセイダーズやジェイムス・ブラウン、ジャクソン5などなど数多くのミュージシャンのセッション・ギタリストとして活躍してきたアーサー・アダムスによるオリジナルアルバム。2枚組となっていて、1枚目は新曲、2枚目は70年代から80年代の彼のアルバムからセレクトしたベストアルバム。新曲の方は、よくありがちなギターブルースといった感じで面白みはないのですが、良かったのが2枚目。ソウルからファンク、バラードにポップスとセッションギタリストらしいフットワークの軽いバリエーションに富んだ内容が魅力的。基本的にこちらも目新しいものはないのですが、軽快でファンキーな楽曲の数々が魅力的なアルバムになっていました。

評価:★★★★

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2017年12月 3日 (日)

ありのままを?

Title:Thrill It All
Musician:Sam Smith

前作でありデビューアルバムである「In the Lonely Hour」が大ヒットを記録。一躍イギリスの国民的シンガーとなったSam Smith。売上的な側面のみならず、グラミー賞でも6部門にノミネートし、最多4部門を受賞という高い評価を受けた彼。そしてリリースされた待望のニューアルバム。もちろんイギリスのアルバムチャートで1位を獲得した他、前作では2位に留まったアメリカビルビードチャートでも見事1位を獲得するなど、予想通りの大ヒットを記録しています。

そんな期待を一身に集めたニューアルバムなのですが、これがその期待にしっかりと応えた傑作アルバムとなっています。楽曲的にはあまり派手ではありません。バリエーションもあまり多いとは言えません。全体的にバラードナンバーがメインとなった聴かせるアルバムになっているため、むしろ地味でかつ単調という印象すら抱きかねないアルバムとなっています。しかし、全10曲39分という長さながらもリスナーをだれさせることなく一気に聴かせ切る美メロと彼のボーカルが非常に魅力的な作品になっています。

アルバムはピアノとストリングスをバックに伸びやかな歌声を聴かせるバラードナンバー「Too Good At Goodbyes」からスタートします。派手さはなくむしろ「暗い」という印象すらある曲をあえて1曲目にもってくるあたりに彼の楽曲に対する自信を感じることが出来ます。前半ではレトロなソウル風のバラード「One Last Song」が耳に残る他、ピアノのみをバックに歌いあげる「Burning」は特に彼のボーカリストとしての歌唱力と表現力を感じることが出来ます。

後半はこのアルバムでは珍しい、非バラードナンバーである「Baby,You Make Me Crazy」も魅力的。ホーンセッションが入るソウルナンバーなのですが、ちょっと切なさを感じるメロディーラインも聴かせます。また、女性シンガーイエバとのデゥオ「No Peace」も大きなインパクトに。イエバのボーカルもとても力強いものであり、どちらもハイトーンボイス同士のデゥオとなるのですが、それぞれが個性を発揮した魅力的なデゥオとなっています。

今回、Special Editionで聴いたのですがボーナストラックも非常に魅力的。哀愁感たっぷりのメロディーラインが魅力的な「Nothing Left For You」、さらになぜかボーナストラックに入っているタイトルチューン「The Thrill Of It All」はこれまたピアノの演奏をバックに彼の歌声の魅力をこれでもかというほど聴かせるナンバーになっています。

収録曲のほとんどがバラードナンバーという内容ながらも彼の魅力が存分に発揮された傑作アルバム。ボーナストラックを含めると全49分という長さながらも最後まで全く飽きることがありませんでした。高い評価を受けた前作を受けての新作ながらも、その期待を裏切ることなく、どころか期待以上の傑作アルバムをリリースしてきた結果となりました。

今回のジャケット写真は彼の正面を向いた顔の写真をのせただけのシンプルな内容。非常に力強い視線も印象的なのですが、それだけに彼のありのままの姿をアルバムに反映させたということが、このジャケット写真にも反映されているような感じがします。余談ですが、彼のボーカルを聴いていると、ちょっと平井堅に近いものも感じました。特にピアノバラードの出だしの節回しあたりがちょっと似ているような・・・。でもルックスはむしろ山田孝之に似ているような・・・。

評価:★★★★★

Sam Smith 過去の作品
IN THE LONELY HOUR


ほかに聴いたアルバム

Almost True-EP/THE STRYPES

Almosttrue

配信限定でリリースされた4曲入りのEP盤。ルーツ志向の強かったガレージバンドだった彼らですが、直近のアルバム「SPITTING IMAGE」はルーツ志向が薄くなって単なるギターロックバンドになってしまっていました。今回のEPもパッと聴いた感じでは前作同様、平凡なギターロック・・・と思ったのですが、楽曲をよくよく聴くとスタイルとしてはシンプルなギターリフ主導のロックンロール路線は貫かれています。サウンドのバランスとして歌を前に持ってきすぎていてバンドサウンドが後ろに下がってしまっており、結果として「平凡な音」になってしまっている印象が・・・。サウンドのバランスを変えるとかなり違った印象を受けたのかもしれませんが・・・。最後に収録されているのはTHE WHOのおなじみ「Summertime Blues」のカバーをライブ収録した楽曲なのですが、こちらは初期の彼らを思い起こさせるような迫力あるガレージロック。そう、これこそがTHE STRYPESの魅力だよ!と思ってしまうナンバー。オリジナル曲もこういう曲をやってほしいのですが・・・。

評価:★★★

THE STRYPES 過去の作品
BLUE COLLAR JANE
SNAPSHOT
HARD TO SAY NO EP
LITTLE VICTORIES
LIVE IN TOKYO 2015
SPITTING IMAGE

On a Distant Shore(邦題 ラスト・レコーディング~彼方の岸辺で)/Leon Russell

昨年11月に亡くなったレオン・ラッセルによる遺作。しんみりとしたムーディーなポップチューンがメイン。これが最期になることを意識したのか、スタンダードポップス志向の渾身込めたポップチューンが並んでおり、美しくもインパクトあるメロディーラインの連続にシンガーソングライターとしての才能をあらためて実感できる名曲が並んでいます。ゆっくりと聴き入りつつ、失われた偉大な才能の片りんに触れることが出来る1枚でした。

評価:★★★★★

Leon Russell 過去の作品
The Union(Elton John&Leon Russell)

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2017年11月28日 (火)

幅広い「ロック」を聴かせる

Title:Scream Above The Sounds
Musician:Stereophonics

日本での人気と知名度は残念ながらそれほどではないものの、本国イギリスでは国民的な人気を誇るギターロックバンドStereophonics。2ndアルバム「Performance and Cocktails」から6thアルバム「Pull the Pin」までアルバムチャート1位を連続して記録。前作「Keep The Village Alive」も1位を記録するなど相変わらず圧倒的な人気を誇っています。本作も1位こそのがしたものの最高位2位を記録。その人気のほどをうかがわせます。

アルバムも2、3年おきに必ずオリジナルアルバムをリリースしてくるなどコンスタントな活動を続けていますが、今回も約2年ぶりとなるニューアルバム。彼らの魅力と言えば、前作の感想でも書いたのですが、ある意味ベタなわかりやすさ。今回のアルバムも例えば1曲目「Caught By The Wind」はある種の泥臭さを感じるもののスタジアムロック的なスケール感のある楽曲からスタート。いかにも大きな会場でのライブ映えをしそうな王道の楽曲からスタートしたかと思えば、続く「Taken A Tumble」は疾走感あるノイジーなギターサウンドからスタート。メロディーもポップで楽曲的にはむしろオルタナ的な楽曲に仕上げており、こちらもこちらでライブで盛り上がりそうな楽曲。彼らの音楽性の広さを感じさせます。

さらに「What's All The Fuss About?」は哀愁感ある泣きメロがさく裂するムーディーなナンバー。後ろに流れるトランペットの響きがある意味思いっきりベタなのですが、そのベタさ加減も含めて非常に心に響いてくる聴かせるナンバーになっており、このような曲もまた彼らの大きな魅力と言えるのでしょう。

そんな楽曲が並んでいる今回の作品もいい意味でStereophoicsらしさを感じるアルバム。いい意味で圧倒的な安定感があり安心して聴いていられます。ただ一方で楽曲的にはここ最近のアルバムの中ではバリエーションの広さを感じさせるアルバムに。上にも書いた通り、最初の3曲も3様の内容になっていましたが、例えば「Chances Are」は四つ打ち的なリズムにギターリフがのる疾走感あるナンバー。ダンスチューン的なノリの良さとロックのダイナミズムを同時に感じられる曲になっていますし、かと思えば続く「Before Anyone Knew Our Name」はピアノのみでしんみり聴かせるバラードナンバーになっています。

ガレージロックなギターサウンドを軽快に奏でる「Cryin' In Your Bear」はロックンロールなナンバーに仕上がっていますし、本編ラストを飾る「Elevators」はアコースティックなサウンドを軸に本格的なブルースロックに仕上げてきています。

毎回彼らのアルバムはロックを聴いたな、という満足感を覚える作品が多いのですが、今回のアルバムに関してもブルースロックから王道のスタジアムロック、ガレージロック、オルタナ系のギターロックまで、ある意味非常に幅広いロックを披露しつつ、どの曲に関してもしっかりとロックの魅力を伝えた作品になっていました。

2009年にリリースされた「KEEP CALM AND CARRY ON」がここ最近の彼らの作品の中では一番の傑作アルバムだったのですが、今回のアルバムはそれ以来、一番の出来だったように思います。毎作のこととはなるのですが、ロックリスナーには安心してお勧めできるアルバム。そんな中でも本作は特に出来のよい傑作アルバムでした。

評価:★★★★★

STEREOPHONICS 過去の作品
Decade In The Sun-Best Of Stereophonics
KEEP CALM AND CARRY ON
Graffiti On The Train
Keep The Village Alive

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2017年11月27日 (月)

甘茶ソウル全開

Title:Mr.Brown Eyed Soul
Musician:Sunny&The Sunliners

今回紹介するのはサニー・オズナというメキシコ系アメリカ人歌手が率いるバンド、Sunny&The Sunlinersが1966年から72年にかけて、キーロックというレーベルに吹き込んだ音源を収録した編集盤。「BLUES&SOUL RECORDS」誌に大きく取り上げられ興味を持ち、今回聴いてみました。

サニー・オズナは1943年にテキサス州はサンアントニアに生まれたチカーノ歌手。チカーノとはテキサス出身のメキシコ系アメリカ人のこと。もともと50年代にチカーノがよく聴いていたのが黒人向けのラジオ局だったようで、そんなチカーノが歌い出したソウルミュージックはチカーノ・ソウルという名前で呼ばれるようになったとか。本作はまさにそんなチカーノ・ソウルの曲を思う存分収録したアルバムになっています。

最初、「チカーノ・ソウル」という言葉を聴いた時に、メキシコ系のソウルということでブラックミュージックながらもラテンの影響を色濃く受けたような、そんな音楽が流れてくるのでは、そう思いながらアルバムを聴き始めました。

しかし実際に聴いてみるとラテン的な要素は皆無。むしろある意味、ソウルミュージック以上にソウルらしい楽曲が並んでいます。よく、とにかくメロウでスウィーティーなソウルミュージックのことを「甘茶ソウル」という言い方をするのですが、彼らの音楽はまさにそれ。例えば「Cross My Heart」の鼻に抜けるようなボーカルとコーラスライン、さらにはそんなボーカルを支える甘いギターやホーンの音色、「Smile Now Cry Later」「Forever」で聴くようなとろけるようなボーカルとメロディーライン。ここらへんを聴けば、おそらく「甘茶」という表現がよくわかるのではないでしょうか。聴いていて、そんなあま~い雰囲気が大好きなソウルリスナーの壺をつきまくるようなボーカルにサウンドが並んだアルバムになっています。

そんな甘いボーカルを聴かせるかと思えば、一方では「The One Who's Hurting Is You」ではJBばりのファンキーなボーカルを聴かせたりしますし、また「Get Down」も印象的なギターリフとホーンセッションでムード感たっぷりのファンキーなサウンドを聴かせてくれるなど、甘い側面のみならず男っぽいファンキーな側面ものぞかせたりするのもおもしろいところ。

かと思えば「Give It Away」はもっとフィリーな雰囲気で、むしろポップス的な要素を感じたり、「I Have No One」はジャジーなスタンダードポップな雰囲気を感じるムーディーなナンバーだったりと、全体的にあま~いメロとサウンドを展開させつつもソウルに留まらない音楽的要素を感じるのもユニークに感じました。

これは個人的な勝手な想像なのですが、チカーノ・ソウルは歌っているシンガーがチカーノというブラック・コミュニティーの外に居るため、むしろソウルミュージシャン以上にソウルっぽい曲が歌われているのではないでしょうか。ともすればあるコミュニティーの内側にいるよりも外にいる人の方が、そのコミュニティーの特徴をより良く捉えていたりするケースは少なくありません。またコミュニティーの外に居るからこそ、逆にソウルに留まらずに様々なジャンルの音楽を取り入れることが出来るという面もあるかもしれません。

そういう意味ではこのアルバムはチカーノ・ソウルの作品だからこそ、ソウル以上にソウルっぽく、かつソウルっぽくない側面も見ることが出来た作品になっていたのかもしれません。ともかく、終始あま~いボーカル、サウンドにとろけそうになる傑作アルバムでした。個人的には今年であったアルバムの中では屈指の傑作。チカーノ・ソウルの魅力にすっかりはまってしまった1枚でした。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Red Pill Blues/Maroon5

約3年ぶりとなる新作。前作「V」同様にエレクトロサウンドで軽快なポップチューンが主体となるアルバム。インパクトあるメロディーラインで楽しめるポップチューンなのはさすがなのですが、全体的にいろいろなジャンルがごちゃまぜだった以前の作品と比べるとすっきりとした「普通の」ポップソングが増えてきてしまい、ちょっと薄味な印象が。いまひとつバンドの「顔」が薄れているような印象も。

評価:★★★

Maroon5 過去の作品
OVEREXPOSED
V

Luciferian Towers/Godspeed You! Black Emperor

カナダのポストロックバンドによる新作。毎作、ダイナミックなバンドサウンドが耳を惹く彼ら。今回もゆっくりとしたギターノイズを響かせるのですが、バイオリンの美しい奏でやホーンセッションの静かなサウンドが流れてきて、ダイナミックさは薄め。逆に美しいそのメロディーラインが耳を惹く内容になっており、彼らのメロディーメイカーとしての意外な才に気が付かされるアルバムになっていました。もちろん聴けば聴くほどはまりこみ、聴き入ってしまう複雑な構成は健在。何度も聴いてみたいアルバムになっています。

評価:★★★★★

Godspeed You! Black Emperor 過去の作品
'Allelujah! Don't Bend! Ascend!
Asunder, Sweet and Other Distress

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2017年11月23日 (木)

ビーチからやって来る白昼夢

Title:Pacific Daydream
Musician:Weezer

デビュー直後は寡作気味だった彼らもここ最近はすっかり勢いをつけたのかコンスタントなリリースが続いているWeezer。特にバンドのボーカルでありメインライターであるリヴァース・クオモはここ最近、J-POPユニット、スコット&リヴァースの活動も並行して行っており、その勢いを感じさせてくれます。

特にここ最近のWeezerのアルバムは原点回帰を感じさせる彼ららしいパワーポップの作品が続いており、勢いを感じる良い意味での安定感あるアルバムが続いています。スコット&リヴァースでの作品についても良作を続けており、バンドとして脂がのっていることを感じさせてくれました。

そんな中リリースされた今回のアルバムは、ここ最近のアルバムと比べるとちょっと意外に感じるアルバムだったのではないでしょうか。今回のアルバム、制作を続けている最中に「彼らの作っている曲が、世界の果てのビーチからやって来る白昼夢のような感じがすることに気づいた」そうで、その流れにまかせたままリリースされたのが今回のアルバムだとか。まさにアルバムタイトルもそんなイメージから生じているのでしょう。

実際に今回のアルバムはそんなイメージから想像されるような楽曲が並んでいます。1曲目の「Mexican Fender」こそパワポのイメージもある分厚いバンドサウンドのポップチューンなのですが、続く「Beach Boys」はまさにこのアルバムのイメージを象徴するような、爽快さを感じるポップチューンの中にサイケな要素の加わったナンバー。Weezerの一般的なイメージとはちょっと異なる印象を受ける楽曲ではないでしょうか。

中盤の核になっているような「Weekend Woman」もリヴァースらしいキュートなポップセンスが光るナンバーなのですが、サマーポップ的な雰囲気の色濃い、軽快なポップナンバー。後半の「Sweet Mary」もちょっとフィルスペクターばりのポップチューンに仕上がっています。ちなみにこのナンバー、非常にわかりやすいサビを持ったポップになっており、どこかJ-POP的。ひょっとしたらスコット&リヴァースでの活動がWeezerへ逆輸入されたのでしょうか。

楽曲は全体的にビーチで流れているような爽快感を覚えつつも、一方で哀愁感を帯びた楽曲が多く、そういう意味ではまさに彼らがアルバム制作の過程で感じた「ビーチからやって来る白昼夢」というイメージがピッタリと来るアルバムになっていたと思います。

ただWeezerのアルバムとしてどうだったか、と言われると結構賛否両論がわかれそうな問題作ではないかと思います。ここ最近のアルバムで感じたような原点回帰の色はありませんし、Weezerらしいパワーポップのアルバムでもありません。個人的な感想としては正直言って、ちょっと期待していたアルバムとはずれちゃったな、という印象を受けました。

もっとも、かといって彼らが迷走していた訳ではありませんし、今回のアルバムに関しては「こういうコンセプトの下につくったアルバム」であって、いつものWeezerと異なるのもあえて意図したもの。また出来が悪いかといわれるときちんとリヴァースのポップスセンスも要所要所に光を放っており、決してここ最近の勢いが失われたといった感じでもありません。

そういう意味では「これはこれで良いアルバムだった」というちょっと煮え切らないながらも納得のいく作品だったと思います。もっとも逆に今度もこの方向性と言われると、次はやはり彼ららしいパワーポップの作品を聴きたいなぁ、とは思うのですが。これはこれでWeezerの魅力をしっかりと感じたものの、これ1枚で十分かな、と思わせる良作でした。

評価:★★★★

WEEZER 過去の作品
WEEZER(Red Album)
RADITUDE
HURLEY
DEATH TO FALSE METAL
Everything Will Be Alright in the End
WEEZER(White Album)


ほかに聴いたアルバム

Death Peak/CLARK

いまやWARPレーベルを代表するエレクトロミュージシャンになりつつあるCLARKの約3年ぶりとなる新作。比較的ポップでリズミカルな聴きやすいアルバムとなっていた前作と比べると作品の攻撃性がグッとました感じでメタリックで複雑なビートで構成されたサウンドが楽しめます。ただ以前の彼の作品から共通していた、どこかポップなメロディーが流れているという点は本作も共通。複雑そうで実は意外と聴きやすいサウンドが非常に魅力的なアルバムになっていました。

評価:★★★★★

CLARK 過去の作品
Totems Flare
Iradelphic
CLARK

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2017年11月19日 (日)

政権の腐敗!

Title:MASSEDUCTION
Musician:St.Vincent

お尻(笑)なジャケットがまず強いインパクトのある本作は、ニューヨーク・ブルックリンを拠点として活動を続ける女性シンガーソングライター、St.Vincentのニューアルバム。セルフタイトルとなった前作は各種メディアで絶賛され、年間ベストでも軒並み上位にランクインし大きな話題となりました。それに続く本作は前作の評判を反映してか、全米ビルボードチャートでベスト10入りを記録。イギリスのナショナルチャートでも6位を記録するなどヒットを記録しています。

まず今回のアルバムで日本人にとっては一番インパクトがあったのは表題曲の「MASSEDUCTION」の冒頭。いきなり「政権の腐敗!」という日本語の叫び声の繰り返しがそのまま入っており、日本人にとってはちょっとドキッとさせられます。ちなみに日本語版にはラストにこのフレーズを中心に再構成した「政権腐敗 (Power Corrupts)」という日本語曲(!)も収録されています。

さて、日本人にとってはそんなインパクトある曲が収録されつつ、今回のアルバム、ギターサウンドが印象に残った前作に比べるとエレクトロなサウンドが前に押し出されたポップソングが並ぶ作品となっています。伸びやかなボーカルで聴かせるメロが印象的な1曲目「Hang On Me」も静かな打ち込みのリズムが主導した作品ですし、「Pills」もシンセのサウンドが軽快でリズミカルなポップソングに仕上がっています。

特に「Sugarboy」は軽快なテクノポップチューンになっており、ちょっとエキゾチックな雰囲気は東洋的な雰囲気も感じさせるナンバー。後半にも「Young Forever」のようなテクノポップ的な色合いが強い曲が並んでおり、エレクトロテイストの強い作風になっています。

もっとも途中、「Fear The Future」のようなインダストリアルな曲も入っていたりしますし、楽曲の途中でノイジーなギターが挿入される曲も少なくなく、今回の作品でもしっかりとダイナミックなギターサウンドが主張している曲も少なくありません。全体的には「宅録」的なイメージがあるのは前作と同様。前作も打ち込みのサウンドを取り入れていましたし、そういう意味ではエレクトロな部分を前に押し出したか、ギターサウンドにインパクトをもたせたかの違いはあるのですが、基本的な方向性は前作と変わらない、ということが言えるかもしれません。

また「New York」「Smoking Section」のようにシンプルなサウンドでメロディーラインをしっかり聴かせる曲もあり、メロディーメイカーとしての彼女の実力も感じることが出来ます。前述のエレクトロなポップソングもインダストリアルな曲もメロディーに関してはインパクトあるポップなメロディーラインが流れており、このメロディーの良さもなにげに彼女の大きな魅力だったりします。

個人的にはむしろ話題になった前作よりもこちらの方が好きかも、と思うほど、魅力的な傑作アルバムでした。アバンギャルドな面もありつつ、基本的には彼女のポップスシンガーとしての魅力を全面的に感じられる傑作です。

評価:★★★★★

St.Vincent 過去の作品
St.Vincent

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