アルバムレビュー(洋楽)2017年

2017年9月11日 (月)

80年代ギタポからの影響が顕著

Title:The Echo Of Pleasure
Musician:The Pains Of Being Pure At Heart

アメリカのインディーギターポップバンドの約3年3ヶ月ぶりとなるニューアルバム。毎回、とても心地よいポップソングの傑作を聴かせてくれる彼らですが、今回のアルバムもドリーミーでポップなサウンドがとても心地よい傑作アルバムとなっていました。

彼らの楽曲はいわゆるシューゲイザー系の影響を強く受けた楽曲。楽曲を埋め尽くすようなホワイトノイズのサウンドが流れ、そこにポップでキュートなメロディーラインを聴かせてくるという構成。彼らの場合は、特にTEENAGE FANCLUBあたりからの影響を強く感じる暖かみのあるメロディーラインも大きな魅力となっています。

今回のアルバムに関しても1曲目「My Only」からそんな楽曲の魅力が前面に押し出されています。楽曲を埋め尽くすホワイトノイズにミディアムテンポのメロディーライン。ところどころに女性ボーカルの歌声を重ね、キュートな雰囲気を作り出している点も印象的。いわばマイブラ直系の楽曲なのですが、否応なしにアルバムへの期待が高められます。

中盤の「Falling Apart So Slow」も同様にインパクトあるポップなメロディーラインが魅力的。分厚くノイジーなサウンドを心地よく聴かせる反面、ボーカルの歌い方といいどこかラフさを感じさせる雰囲気に80年代のインディーギターロックからの影響を強く感じます。

また今回のアルバムにはエレクトロサウンドを取り入れた楽曲も目立ちました。「When I Dance With You」もまさにそんなエレクトロなダンスポップに仕上げていましたし、女性ボーカルによりアップテンポで爽快なポップチューンを聴かせる「So True」も打ち込みによる4つ打ちのサウンドを聴かせてくれます。ただそんな楽曲でもしっかりとノイジーなギターは鳴っておりアルバム全体としての印象に大きな相違はありませんでした。

後半は「The Cure For Death」のようなドリーミーなポップソングを聴かせつつ、「Stay」はアコギの音を入れつつ哀愁感あるメロを聴かせるフォーキーな楽曲に。最後を締める「Violet&Claire」もサウンドは比較的シンプルで切ない雰囲気のメロディーを聴かせる楽曲に。終盤は彼らのメロディーメイカーとしての側面を前に押し出したようなポップソングが並んでいました。

そんな感じでアルバム全体にそれなりのバリエーションを持たせつつ、ただアルバム全体の印象としてはいつも通り、ノイジーなギターサウンドが心地よいシューゲイザー直系のギターポップという印象を残す作品。ある意味、リスナーの期待にしっかりと応えた傑作アルバムに仕上がっていました。なにより個人的には前作同様、壺にはまりまくりのアルバム。何度も聴きなおしたくなる中毒性あるポップアルバムでした。

評価:★★★★★

The Pains of Being Pure at Heart 過去の作品
Belong
Days Of Abandon


ほかに聴いたアルバム

Sacred Hearts Club/Foster The People

デビュー作「Torches」、2作目「Supermodel」も話題となったアメリカのインディーポップバンドの3枚目。全編、軽快なエレクトロポップ。前作ではサイケポップ的な要素を強く押し出し、本作でも最後を締めくくる「III」のようにサイケ色の強い曲もあったのですが、全体的にはポップなメロディーを前に押し出したちょっと哀愁味帯びたポップなメロを聴かせるような曲がメイン。リズミカルなエレクトロポップが楽しめる作品です。

評価:★★★★

Foster the People 過去の作品
Torches
Supermodel

Flower Boy/Tyler,The Creator

約2年3ヶ月ぶりとなるTyler,The Creatorのニューアルバム。ダークな雰囲気のサウンドに力強いタイトなリズムとラップが特徴的。ただ本作に関してはメロウなトラックも多く、メロディアスな曲も目立ち、全体的にメロディーを聴かせるようなアルバムに。いい意味でHIP HOPリスナーに留まらない層に聴きやすいアルバムになっていました。

評価:★★★★★

TYLER,THE CREATOR 過去の作品
Goblin
Wolf
CHERRY BOMB

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2017年9月 5日 (火)

80年代風ポップが耳を惹く

Title:Everything Now
Musician:Arcade Fire

前作「Reflektor」も大きな話題を呼んだカナダのロックバンドの約3年9ヶ月ぶりのニューアルバム。毎回、ポップなメロディーラインとメッセージ性の強い歌詞が大きな評判を呼び、特に欧米では圧倒的な人気を得ています。2010年にリリースした前々作「The Suburbs」はアメリカ、イギリスのアルバムチャートで1位を獲得。その後、前作、さらには本作も当たり前のようにアメリカ、イギリス共にアルバムチャートで1位を獲得して圧倒的な人気を見せつけています。

今回のアルバムで特徴的なのはアルバム全編80年代的なエレクトロサウンドで彩られたポップなナンバーになっている点でした。音楽雑誌では今回のアルバムの楽曲に関してABBAの楽曲を持ち出してきているアルバム評も少なくありません。さすがにABBAほど突き抜けた感じはないものの、タイトルチューン「Everything Now」は、まさにABBAの名前を彷彿とさせるようなポップチューン。続く「Sings of Life」も(なぜか最初に日本の救急車の音がサンプリングされている)そのまま80年代なディスコチューンとなっています。

その後の作品についてもちょっと懐かしい80年代風な空気を醸し出しつつ、バラエティー富んだポップな楽曲が印象的なアルバムになっています。パンキッシュなガレージロック風に仕上げつつ、メロは至ってポップな「Infinite Content」や、軽快なエレクトロチューンでキュートという感想すら抱いてしまう「Put Your Money On Me」など、ちょっと80年代的な「軽薄さ」を感じつつも、いい意味でキャッチーな、聴きやすいポップチューンが並んでいます。

ただこれだけポップなメロが並んでいつつも、歌詞については非常にヘヴィーな内容になっているのがユニークかつ彼ららしいところ。例えばタイトルチューンの「Everything Now」にしても

「We turn the speakers up till they break
'Cause every time you smile it's a fake!」

(拡声器が壊れるまで音量を引き上げるんだ
なぜなら君の笑顔はすべて偽りだから)

「And every room in my house is filled with shit I couldn't live without」
(そして僕の家の全てには耐えられないようなクソで埋め尽くされている)

といった歌詞が並んでいます。

ここらへん、おそらくキュートなメロディーラインとへヴィーな歌詞のギャップが耳を惹く部分なのでしょうが、残念ながら英語のネイティブではない私たちにとってここらへんのギャップについてはいまひとつわからない部分。そこらへんは残念に感じます。

メロディーやサウンドがちょっと軽薄な部分があって何度か聴くと飽きるかも、といった印象もなきにしもあらずなのですが、それに先立ってとにかくポップで楽しいメロディーラインを心から楽しむことが出来る傑作だったと思います。50分弱の内容を最初から最後まで非常に楽しく味わうことが出来ました。難しいこと抜きにして広い層が楽しめそうなアルバムです。

評価:★★★★★

ARCADE FIRE 過去の作品
THE SUBURBS
REFLEKTOR


ほかに聴いたアルバム

ROBERT CRAY&HI RHYTH/ROBERT CRAY&HI RHYTH

アメリカのブルースギタリスト、ロバート・クレイの最新作は新プロジェクトROBERT CRAY&HI RHYTH名義によるアルバム。ファンク路線の「You Must Believe in Yourself」「I Don'T Care」「You Had My Heart」「I'm with You,Pt.1」のような正統派ブルースや「The Way We Are」のようなソウルバラードとバリエーションを持たせつつ、基本的には王道路線のクラシカルなブラックミュージックの楽曲を聴かせてくれます。決して目新しさはないものの、ソウル、ブルース好きならまずは安心して楽しめる佳作。また彼の音楽的な懐の深さも感じさせるアルバムでした。

評価:★★★★

Robert Cray 過去の作品
NOTHIN BUT LOVE
In My Soul

4 Nights of 40 Years Live(The Robert Cray Band)

Kaleidoscope EP/Coldplay

突如リリースされた5曲入りのColdplayのミニアルバム。「Something Just Like This」では東京ドームでのライブ音源が収録されているなど、日本人にとってはちょっとうれしい内容も。彼ららしいストリングスやピアノなどを用いた美しいメロディーラインを聴かせてくれる楽曲になっており、Coldplayらしさを感じさせる楽曲が並んでいますが、全体的にインパクトは薄めで核となりそうな楽曲はなく、アルバムを聴き終わった後の印象も薄味。Coldplayの魅力はしっかり感じられたのですが、ちょっと物足りなさも覚えた作品でした。

評価:★★★★

COLDPLAY過去の作品
Viva La Vida or Death And All His Friends(美しき生命)
Prospekt's March
LeftRightLeftRightLeft
MYLO XYLOTO
Ghost Stories
A HEAD FULL OF DREAMS

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2017年8月25日 (金)

27分の短さにNINの魅力が凝縮

Title:Add Violence
Musician:NINE INCH NAILS

昨年12月、久々の新作として5曲入りのEP「Not The Actual Events」をリリースしたNINE INCH NAILS。その第2弾EPがリリースされました。本作も全5曲入り27分というコンパクトな内容。前作は配信+アナログリリースオンリーという形態だったのですが、今回は配信オンリーというリリース形態のようです。ただし9月には前のEPとあわせてCDでのリリースも予定されているようです。

前作「Not The Actual Events」はわずか5曲という内容の中に軽いポップな作風から歪みまくったへヴィーな楽曲までNINE INCH NAILSの魅力を凝縮したようなアルバムになっていましたが、今回のアルバムに関しても軽い作風からへヴィーな楽曲までわずか5曲という内容ながらもバラエティーに富んだ展開となっていました。

1曲目「Less Than」は今回のアルバムではもっともポップで聴きやすい作品に。テンポよいエレクトロな作風は、ちょっとベタな言い方だと「デジロック」という言い方がピッタリと来るような疾走感ある聴きやすいナンバーになっています。

ただ今回のアルバムに関しては2曲目以降、よりダークさを強調したような作品が並んでいました。2曲目「The Lovers」も3曲目「This Isn't the Place」もサウンド的にはへヴィネスさは薄めなのですが、幻想的で、非常にダークな雰囲気が漂うエレクトロサウンドが展開される構成になっています。

続く4曲目「Not Anymore」もダークさが終始漂うナンバーに。メタリックなエレクトロノイズがバックに流れる中、不気味に楽曲は展開。途中、突如へヴィーなノイズが耳をつんざくインダストリアルなナンバーに。ラスト「The Background World」もヘヴィーなノイズが覆いつくされるダークなナンバーになっています。

今回の作品はインダストリアル色も強いダークな作風になっているためポップスさはあまり強くなく、決して聴きやすいという類のアルバムではありません。一方で、前作と同様、NINE INCH NAILSの魅力をきちんと5曲に凝縮されたようなアルバムになっていました。いい意味でNINE INCH NAILSとはどんなバンドか知るには最適なEPとも言えますし、前作同様、ファンにとっても期待に沿ったアルバムにもなっていました。

もちろんNINE INCH NAILSというバンドにとって新展開といった感じではありませんし、バンドの特性から考えるとファンの期待に沿ったアルバムというのは必ずしもプラスの評価ではない部分もあるかもしれません。ただ間違いなく彼らの魅力を感じさせられる良作。ちなみにこのEPシリーズ、第3弾まであるそうです。ペース的には今年末か来年はじめあたりのリリースでしょうか。今から楽しみです。

評価:★★★★★

NINE INCH NAILS 過去の作品
GhostI-IV
THE SLIP
Hesitation Marks
Not The Actual Events


ほかに聴いたアルバム

Nothing Is Quick In The Desert/PUBLIC ENEMY

PUBLIC ENEMYの2年ぶりとなる新作は当初、突然無料ダウンロードという形でリリースし大きな話題を呼びました。そんな新作は全13曲入りながらも40分という比較的短い内容。テンポよい展開に聴きやすさを感じます。またサウンド的にもPUBLIC ENEMYらしいヘヴィーでロッキンなトラックがメイン。こちらも今風なサウンドからはかけ離れているちょっと懐かしさすら感じる部分もあるのですが、力強いサウンドゆえに彼らの主張がダイレクトに伝わってくるよう。彼らのラップのスタイルからするとこういうサウンドの方がマッチしているんでしょうね。ある種ロックリスナーにとっても聴きやすい、非常にパワフルさを感じるアルバムでした。

評価:★★★★★

Something To Tell You/HAIM

前作「DAYS ARE GONE」も大きな話題となったアメリカ・カリフォルニア出身の美人3人姉妹によるガールズバンド。前作同様、ロックというよりもR&Bからの影響が強いポップソングが特徴的なのですが、楽曲によってはへヴィーなギターサウンドを鳴らしていたり、サイケなサウンドが鳴っていたりとロックバンドとしての主張も確かに感じます。ただ前作同様、良く出来たポップソングなのですが、ロック路線もR&B路線も少々中途半端なイメージが残ってしまうのが気にかかりました。

評価:★★★★

HAIM 過去の作品
DAYS ARE GONE

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2017年8月18日 (金)

「日本」が所々に登場

Title:Crack-Up
Musician:Fleet Foxes

前作「Helplessness Blues」が高い評価を得て注目を集めたアメリカ・シアトル出身のフォークロックバンドFleet Foxesの新作。今回のアルバム、作品の要所要所に「日本」が登場してくることが大きな特徴的。まずジャケットの写真、日本の写真家濱谷浩が撮影した東尋坊の写真。さらにアルバムの中には「Third of May/Odaigahara」という曲が登場。ここで言う「Odaigahara」とは奈良と三重の県境に位置する大台ケ原山から取られたそうです。

「日本百名山」のひとつとはいえ、日本国内の観光地として誰もが知っている有名どころ・・・といった感じでもない大台ケ原の名前が楽曲のタイトルとして取られているのが意外な印象を受けます。ただこの9分近くに及ぶこの楽曲、今年3月にアルバムリリースに先立ち公表された楽曲なのですが、アルバムの中のひとつのクライマックスとなっています。

前半はアコースティックなサウンドでフォーキーで美しいメロディーラインを歌い上げるポップな楽曲からスタート。それが後半ではアコギやピアノの音が複雑に入り組み、アコースティックなサウンドで美しい音像を作り上げるドリーミーでサイケな世界が繰り広げられています。この独特な音世界が実に見事。思わずその音の世界に聴きほれてしまいます。

この「美メロ」と「幻想的なサイケフォーク」という音楽性がこのアルバムを通じて強く感じる特徴。そういう意味でもこの楽曲は本作を代表する曲と言えるでしょう。特に美メロという観点では中盤。「-Naidads,Cassadies」「Kept Woman」は美しいハーモニーとアコースティックなピアノやアコギで構成される世界が非常に輝かしくて耳を惹かれます。

その後もその美しいメロディーラインやコーラスを主軸としつつ、分厚いコーラスやアコースティックなサウンドに微妙にエフェクトをかけることによってドリーミーな雰囲気を醸し出しています。「Mearcstapa」「Fool's Errand」などは特にそんな幻想的な雰囲気をより感じる楽曲になっていました。

そしてラストは表題曲「Crack-Up」で締めくくられるのですが、こちらも美メロと重厚なハーモニーが魅力的な楽曲。最後はホーンの音が鳴り響く中、美しいボーカルの歌声で締めくくるという幻想的で神秘的ですら感じるフィナーレ。最後の最後までどこか神聖さすら感じさせるアルバムの雰囲気を保ったままの締めくくりとなりました。

今回のアルバム、冒頭に「日本」が要所要所に登場と書きましたが楽曲的には日本的な部分はほとんどありません。「Third of May/Odaigahara」も後半に若干エスニックな雰囲気のサウンドが入る程度で明確に日本的な部分はありません。ただ「日本」をテーマとすると、琴や三味線のようないかにもな様式化された日本像にウンザリさせられることも少なくないので(時として邦楽バンドでもありがち・・・)、これはこれでよかったように思います。

とにかく終始、その美メロと幻想的な音世界に惹かれるアルバム。幻想的といっても基本的にはアコースティックな音がメインとなっているため必要以上に仰々しさを感じる部分もなく、そういう点でも大きなプラス要素でした。

既に上半期洋楽ベスト3にも登場させているように今年を代表する名盤でした。最初から最後までその音世界に酔いしれるアルバムでした。

評価:★★★★★

FLEET FOXES 過去の作品
Fleet Foxes+Sun Giant EP
HELPLESSNESS BLUES


ほかに聴いたアルバム

TLC/TLC

90年代、一世を風靡し、日本でも絶大な人気のあった3人組ガールズグループTLC。2002年にメンバーのレフト・アイが交通事故により急逝し、その後は残ったメンバー2人で活動を進めていましたが、アルバムのリリースはありませんでした。そんな中、約15年ぶりにリリースされた本作がこれ。メンバーはこれがラストアルバムと公言しており、事実上、TLCとしての活動に幕が下ろされることになりました。

そんなフェアウェル的なアルバムということもあり楽曲的には90年代そのままのスタイル。ファンにとってはなじみ深い雰囲気の楽曲なのですが、ここ20年の特にブラックミュージックシーンでの音楽的な変化はすさまじいため、今聴くとかなり古臭く感じてしまいます。もっともそういう感想があることをわかった上で、あえて90年代そのままの音でのアルバムをリリースしたのでしょう。そういう意味では完全にかつてのファン向けのアルバム。このアルバムがはじめてのTLC、という方にはお勧めできませんが、90年代にファンだった方はまずは聴いて損のない作品です。

評価:★★★★

Kidal/TAMIKREST

前作「Chatma」が話題となったアフリカ・マリで結成されたバンドTAMIKRESTの新作。Tinariwenと同様に「砂漠のブルース」と呼ばれる彼らの楽曲。今回もそんなブルージーなギターが魅力的。哀愁感あるブルージーなギターを軸にミディアムテンポで独特のグルーヴ感を醸し出しており、また、コールアンドレスポンスを取り入れた楽曲もアフリカのバンドならではといった感じ。シンプルなサウンドでロックからの影響も強く、良い意味で垢抜けたところもありロックリスナーにも聴きやすくなじみやすい音を奏でているのも魅力的でした。

評価:★★★★★

TAMIKREST 過去の作品
Chatma

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2017年8月 8日 (火)

90年代を代表する名盤

Title:OK COMPUTER OKNOTOK 1997 2017
Musician:RADIOHEAD

RADIOHEADを代表するアルバムであり、なおかつその後のRADIOHEADの方向性に決定的な影響を与えたアルバム「OK COMPUTER」。RADIOHEADにとってももちろんのことですが、90年代を代表する名盤として非常に高い評価を受ける本作。アルバムリリースから20年たつ今年、本作をリマスターした20周年記念盤がリリースされました。

「OK COMPUTER」については1997年の発売直後に聴いた訳ではありませんが、聴いたのはおそらく98年か99年の頃。次作「Kid A」がリリースされる前に、その当時のRADIOHEADの最新作としてはじめて聴きました。その当時、すでに「名盤」としての地位を確立していた本作なのですが、最初聴いた感じとしては時折、心をかきむしられるようなメロディアスなフレーズは入るものの、基本的に無機質で難解なアルバムという印象を受けました。

今回、20周年記念盤ということで久しぶりに聴いてみたのですが、予想外にポップで聴きやすいアルバムという印象をまず受けてしまいました。確かにその後彼らがリリースした「Kid A」や「Amnesiac」に比べると間違いなくポップで聴きやすい本作。はじめて聴いた時もそのメロディーが気に入った「PARANOID ANDROID」「KARMA POLICE」なんかはもちろんのことなのですが、それ以外の曲に関しても確かにアルバム全体として無機質という印象は受けるのですが、思った以上ポップで聴きやすいアルバムという印象を受けました。その後RADIOHEADがつくりあげた音楽と比べると、この時期の楽曲は今から考えると十分「ポップ」だったということなのでしょうね。

さて今回のアルバムで注目されるのはDisc2。その当時リリースされたシングルのカップリング曲が収録されているのですが、さらに「I Promise」「Man Of War」「Lift」という未発表曲3曲が収録されていることが大きな話題に。特に「Lift」に関してはいままでもライブで何度も披露されていた最も有名な未発表曲だったそうで、ファンにとっては待ちに待った音源化となりました。

「I Promise」も「Man Of War」もストリングスを取り入れて美しく聴かせつつ、非常に切ない雰囲気の叙情的なメロディーラインが強く印象に残る楽曲。また「Lift」に関しては比較的シンプルなギターロック。ただこの楽曲も美しくインパクトあるメロディーラインが実に魅力的なギターロックに仕上がっていました。

このDisc2におさめている曲はこの未発表曲3曲を含め、基本的に哀愁感ただようメロディーラインは「OK COMPUTER」に近い雰囲気を持っています。そういう意味で上手くアルバムの中に織り込むことは可能だったようにも思います。ただ一方、Disc2の曲に関しては「OK COMPUTER」の作品に比べるとより叙情的で、かつ有機的な雰囲気を感じました。そういう意味ではこれらの曲が入ると、今、「OK COMPUTER」が持っている無機質的な雰囲気が大きく変わってしまうかもしれません。Disc2に収録された曲たちがアルバム未収録となった大きな理由はそこらへんにあったのかもしれません。

今聴いても間違いなく多くの人の心に強いインパクトを与えてくれる名盤「OK COMPUTER」。未チェックの方はこれを機に是非。もちろんリアルタイムで聴いていた方も、後追いで聴いた方も、再度チェックしてほしいボリュームたっぷりの20周年記念盤でした。

評価:★★★★★

RADIOHEAD 過去の作品
In Rainbows
The Best Of
ROCKS:Live In Germ
THE KING OF LIMBS
TKOL RMX 1234567
Radiohead Live at Tramps June 1,1995
A MOON SHAPED POOL

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2017年8月 6日 (日)

これで「御三家」すべて復活

Title:Weather Diaries
Musician:RIDE

ここ数年、往年のシューゲイザーバンドの再結成、さらには久々のアルバムリリースが相次いでいます。まず2013年にはかのMy Bloody Valentineが実に22年ぶりとなるアルバムをリリース。さらに今年に入ってThe Jesus And Mary Chain、そしてSlowdiveが相次いでアルバムをリリースしました。

そんな中、マイブラ、Slowdiveと並んでシューゲイザー御三家と呼ばれることも多いシューゲイザー系を代表するミュージシャン、RIDEも前作「Tarantula」から21年ぶりとなるニューアルバムをリリースしました。もともと2014年に再結成。その後、ライブツアーなどを実施していたのですが、このたびようやくニューアルバムのリリースとなりました。ちなみにイギリスのナショナルチャートでは最高位11位を記録。惜しくもベスト10入りこそ逃しましたが、多くのファンが待ちわびていたということがよくわかる結果となりました。

さて、そんな往年のシューゲイザーバンド再結成ですが、アルバムの内容としては基本的に2つのパターンにわかれているような感じがします。ひとつは比較的アグレッシブに新しい音楽性に取り組もうとしている作品。マイブラやSlowdiveの最新作はそちらのベクトルを感じました。もう一方は往年のサウンドをそのまま引き継いだ作品をリリースしてきたケース。ジザメリの最新作はこちらのベクトルでしたし、RIDEの最新作ももっとも彼らが売れていた時期のサウンドをそのまま引き継いだような楽曲が並んでいました。

まず再結成後のアルバムの1曲目を飾る「Lannoy Point」からしてホワイトノイズなけだるさを感じさせるギターサウンドと疾走感あってポップなメロディーラインがいかにもシューゲイザー的な楽曲。続く「Charm Assault」もドリーミーな雰囲気のギターのエフェクトといいハイトーンなスネアのリズムといい、彼らが活躍した90年代初頭のインディーバンドを彷彿とさせるバンドサウンドを聴かせてくれます。

その後も「Home Is A Feeling」みたいにノイジーなギターで埋め尽くされた哀愁感あるメロディーを聴かせる曲があったり、「Lateral Alice」みたいなへヴィーでノイジーなギターリフ中心に展開されるガレージ色の強い作品があったり(ただこのギターサウンドも微妙に90年代初頭っぽい音なのですが)、ある意味期待通りの展開になっています。

特に後半の「Cali」なんかはキュートともいえるポップなメロディーラインとその背後で時々鳴り響く破壊的なギターノイズというアンバランスさがいかにもシューゲイザーちっくな楽曲になっており、聴いていてうれしくなってきます。

いい意味でリスナーの期待に沿ったアルバム。目新しさはないかもしれませんが、ただ昔ながらのシューゲイザーサウンドながらも20年以上たった今でもあまり古臭さを感じさせないのも驚かされます。今後もコンスタントに活動を続けていくのでしょうか。RIDEも一度、ライブを見てみたいなぁ。

評価:★★★★★

RIDE 過去の作品
OX4 -the best of RIDE


ほかに聴いたアルバム

Ladies & Gentlemen/The Rolling Stones

1972年の名盤「メイン・ストリートのならず者」リリース後の北米ツアーを収録した、映画として完成したものの、一般に公開されることなく40年近くお蔵入りになったストーンズのライブ映画「Ladies and Gentlemen」。2010年に無事公開され、DVD化もされましたが、そのライブ音源を収録したライブCDがリリースされました。

もっともDVDの方は既に持っていて映画も見ていますので音源自体は以前聴いたことある音源。ただ改めて聴くと、やはりまだアラサーの頃のメンバーの演奏なだけに非常に若々しく、かつアグレッシブ。一方でこの時点ですでにバンドとしては結成10年以上たったベテランの域に達しています。そういう意味では若々しさとベテランバンドとしての円熟味のバランスがちょうど良く取れたライブアルバム。DVDを持っていればわざわざチェックするまでもないかもしれませんが、これはこれで間違いなく傑作なライブアルバムに仕上がっていました。

評価:★★★★★

The Rolling Stones 過去の作品
Shine a Light: Original Soundtrack
Some Girls LIVE IN TEXAS '78
CHECKERBOAD LOUNGE LIVE CHICAGO 1981(邦題 ライヴ・アット・ザ・チェッカーボード・ラウンジ・シカゴ1981)
(MUDDY WATERS&THE ROLLING STONES
GRRR!
HYDE PARK LIVE
Sweet Summer Sun-Hyde Park Live
Sticky Fingers Live
Blue&Lonesome

SPITTING IMAGE/THE STRYPES

デビューアルバム「Snapshot」が日本でも大きな話題となったアイルランドのギターロックバンドTHE STRYPES。60年代以前のロックンロールやブルースの影響をダイレクトに受けたガレージロックが大きな魅力で、個人的にも来日公演に足を運ぶほど、一時期はかなりはまっていたバンドだったのですが、この最新作となる3枚目のアルバム・・・正直言って、つまらなかった・・・。

基本的にはシンプルなギターロック路線なのは以前とは変わりません。ただ以前のアルバムで強く感じたルーツ志向はかなり薄くなってしまい、楽曲によってはむしろ80年代のオルタナ系ギターロック調ものも。ポップなメロディーラインはそれなりにインパクトはあるものの、THE STRYPESとしての個性は薄くなってしまい、正直、凡百なインディーギターロックになってしまったというイメージが。3枚のアルバムでどんどん出来が右肩下がりになってしまっているところが非常に気になってしまいます。このまま終わってしまってほしくないバンドなのですが・・・。

評価:★★★

THE STRYPES 過去の作品
BLUE COLLAR JANE
SNAPSHOT
HARD TO SAY NO EP
LITTLE VICTORIES
LIVE IN TOKYO 2015

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2017年7月31日 (月)

様々な作風に挑戦した2作目

Title:Melodrama
Musician:Lorde

デビューシングル「Royals」が大ヒットを記録。続くアルバム「Pure Heroine」も大きな話題となったニュージーランド出身の女性シンガーソングライターLordeの2ndアルバム。日本の悪いところで、デビューアルバムで評判になっていも2枚目のアルバムはよっぽどよくなければなかなか話題にのぼりません。ただ本作はアメリカではアルバムチャートで前作を上回る最高位1位を記録し、前作に引き続き大ヒットを記録しています。

そんな彼女の注目すべき2枚目のアルバムですが、基本的には前作のスタイルを踏襲したようなアルバムになっていました。前作同様、あくまでもメロディーラインと歌を主軸としたポップソングがメイン。前作で「ポップになったビョーク」という書き方をしましたが、誤解をおそれずにいえば本作に関してもそんなイメージを強く抱きました。

ただ前作よりは音的なバリエーションは増えたのも大きな特徴でした。前作はミニマルで音数を絞ったエレクトロトラックがメインだったのですが、本作はグッと音数が増えています。特にアルバムのちょうど真ん中に位置する「Hard Feelings/Loveless」は最初はファンタジックな雰囲気からスタートするものの、中盤では歪んだギターサウンドが登場し、その雰囲気は一転。サイケな雰囲気に展開していきます。かと思えばラストではアイドルポップを彷彿とさせるようなかわいらしいポップソングで締めくくり。ある種「プログレ」的に複雑な構成の楽曲が展開されます。

他にもEDMテイストの強い「Supercut」のような楽曲もあるのですが、なんといっても彼女の魅力をフルに発揮しているのは「Liability」「Writer In The Dark」(なんかビョークの「Dancer In The Dark」を彷彿させるタイトルですね・・・)でしょう。ピアノをメインに軽くストリングスが入るだけのシンプルなサウンドをバックに彼女がその表現力豊富な歌声を聴かせてくれるナンバー。その美しくも切ないメロディーラインと共に、Lordeのボーカリスト、あるいはソングライターとしての魅力が存分に発揮された楽曲になっています。

そんな様々な楽曲に挑戦しつつもアルバム全体としてはメロディー主体のシンプルなポップというイメージが先行する作品になっていました。そういう意味で前作と聴いた後の感触としては大きくは変わりません。

ただ正直なところ前作で感じたような衝撃は薄かったような感じはします。最初は「よくあるポップスアルバムだな」という印象すら受けました。・・・ただ、よくよく考えると彼女みたいなスタイルの女性シンガー、今、いそうでいないんですよね。ビョークはもっとエキセントリックですし、もちろんAdeleやテイラー・スウィフトとも違います。ケイティ・ペリーやラナデルレイほどのポップといった感じでもありません。そういう意味では彼女、よくいそうなタイプに思いつつ、今のシーンでは唯一無二の存在なのかもしれません。まただからこそ彼女の楽曲が大ヒットを記録したのでしょう。

前作同様、シンガーソングライターとしての彼女の魅力が存分につまった傑作アルバムなのは間違いありません。前作ほどの話題性や派手さはないのですが・・・いい意味で広くお勧めできるポップスアルバムの傑作です。

評価:★★★★★

Lorde 過去の作品
PURE HEROINE


ほかに聴いたアルバム

Planetarium/Sufjan Stevens, Bryce Dessner, Nico Muhly, James McAlister

シンガーソングライターSufjan Stevensと、現代音楽家Nico Muhly、The Nationalとしても活躍しているBryce Dessner、そしてThe Album Leafの作品にも参加しているドラマーJames McAlisterの4人によるプロジェクト。占星学や天文学をモチーフとした17曲から構成されるアルバムで、スペーシーなエレクトロサウンドを主導とした幻想的な雰囲気の楽曲が並んでいます。壮大なテーマ性を持った作品が多いものの、基本的にメロディアスな作品が多く、聴きやすさも感じされる作品。タイトル通り、星空満点のプラネタリウムの中で聴くと気持ちよさそうなアルバムです。

評価:★★★★

Sufjan Stevens 過去の作品
The Age of Adz
Carrie&Lowell

Is This The Life We Really Want?/Roger Waters

ピンク・フロイドの中心メンバーだったRoger Watersによるソロアルバム。「この生活は我々が本当に欲したものか?」というタイトル通り、トランプ政権やら世界の紛争や差別問題など混沌した社会の中ではっきりと反戦、反差別を訴える作品。ただ楽曲自体はピンク・フロイドのイメージとは異なりギターロックなサウンドをメインにピアノやアコギを入れつつ、シンプルにまとめあげたメロディアスな内容となっています。また彼の渋めなボーカルも大きな魅力に。大ベテランの彼だからこそつくれた重厚感のある作品に仕上がっていました。

評価:★★★★

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2017年7月25日 (火)

ラストアルバム

Title:Chuck
Musician:Chuck Berry

巨星、墜つ。今年3月、ロック界に大きな衝撃の走ったチャック・ベリーの逝去。まさにそう表現するのがピッタリでしょう。ロックンロールの創始者のひとりとしてまさにロックの歴史を語るには欠かせない人物であり、多くのロックミュージシャンへ影響を与えた彼。享年90歳という年は大往生といっていい年なのですが、ひとつの時代の終わりを感じる出来事でした。

そして彼の逝去後にリリースされたのが、なんと約40年ぶりとなる彼のオリジナルアルバム。もともと彼の逝去のニュースが入ってくる前から2017年にアルバムリリース予定であることがアナウンスされていました。もっとも彼に関しては特に「がんで余命〇年」といった感じではなかったようですので、死を覚悟しての1枚、といった感じではありません。ただ年齢からいっておそらくこれが最後だろうな、ということを感じつつのアルバムだったのではないでしょうか。

ただそんな本作ですが、これが最後だ、というような雰囲気はほとんど感じられません。もともとさすがに全米ツアーなどは行っていなかったものの、逝去のちょっと前まで地元で積極的なライブ活動を行っていたということは聴いていましたし、最後の最後まで現役ミュージシャンだった彼。「これが最後だろうな」ということは思いつつも、一方であわよくば、このアルバムの次にももう1枚・・・と思っていたのかもしれません。

Chuck Berryといえば主に50年代のロックンロール黎明期。シンプルなギターリフとメロディアスなメロディーライン、また当時のティーンエイジャーの心境をそのまま歌ったような歌詞でロックンロールというジャンルを確立し数多くのヒット曲をリリースしました。そして彼の最後となったオリジナルアルバム、そんな彼のロックンロールは全く変わっていません。90歳になってもそのスタイルを貫きとおしています。

しかし今回のアルバムを聴いても50年代のロックンロールそのままといっても全く古さを感じませんでした。その理由としてまず感じるのは、このアルバムでも感じられる若々しさ。今回のアルバムでも決して今時の音を入れているわけではありませんが、その楽曲には現役感があり勢いすら感じさせます。さすがに90歳近い歳ということもあり声の艶は感じられませんし、ギターの迫力という点では昔にはかなわないかもしれません。それでも下手な若手にはまだまだ負けないという気迫を感じます。

また非常にギターリフ主導のロックンロールというシンプルなスタイルだからこそ時代を超えても全く古くならない魅力があるのでしょう。まさにシンプルイズベスト。彼の全盛期から60年以上の月日を経て、いまなお感じられるロックンロールの魅力がこのアルバムにはつまっています。

2015年にはB.B.KINGがこの世を去り、そしてChuck Berryがこの世を去り、長生きだったポピュラーミュージック界のレジェンドたちがここ最近、次々とこの世を去って行っており、ひとつの時代の終わりを感じます。そんな中リリースされたChuck Berryのラストアルバム。まずはチェックしておきたいマストなアルバムと言えるでしょうし、またそういう事情抜きにしても十分お勧めできる傑作アルバムでした。最後の最後までロックンローラーであり続けたChuck Berry。あらためて彼の冥福をお祈りします。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Love&Hate/Michael Kiwanuka

前作「Home Again」が話題となったイギリスのソウルシンガーの2枚目。日本での注目度は残念ながら1枚目ほどではありませんでしたが、イギリスでは前作を上回るチャート1位を記録しています。それだけに内容も素晴らしく、前作とほとんど遜色ない傑作に。ブルージーな雰囲気のレトロなソウル路線は前作と同様。彼のボーカルによるスモーキーな雰囲気が実に心地よい作品になっています。基本的に前作の路線を踏襲しているのですが、前作同様、実に魅力的な傑作でした。

評価:★★★★★

Michael Kiwanuka 過去の作品
Home Again

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2017年7月14日 (金)

まさかの17年ぶりの新作

Title:in・ter a・li・a
Musician:At The Drive-In

2000年にリリースしたアルバム「Relationship Of Command」が日本でも大きな話題となったロックバンド、At The Drive-In。その後の大きな飛躍が期待された矢先にバンドは解散を発表。メンバーのうちボーカルのセドリック・ビクスラーとギターのオマー・ロドリゲスはThe Mars Voltaを、ギターのジム・ワードとベースのポール・ヒノジョス、ドラムスのトニー・ハジャーはSPARTAをそれぞれ結成し、活動を続けていました。

しかし、2011年にバンドはなんと再結成。その後、残念ながらジム・ワードは脱退してしまったもののついに待望となるニューアルバムがリリース。実に17年ぶりとなるファンにとっては待ちに待ったアルバムが完成しました。

その久々となるニューアルバムなのですが、率直に言って非常にカッコいいアルバムだな、と感じます。久々の新作の冒頭を飾る「NO WOLF LIKE THE PRESENT」からズシリと重いサウンドながらも疾走感あるギターが心地よいダイナミックなナンバー。まずロックを聴く快感さ、ダイナミズムを体現できるような楽曲になっています。

基本的にジムが脱退してしまったことからイメージ的にはThe Mars Voltaにつながるバンドという感じが強いのですが、楽曲的にはThe Mars Voltaよりも疾走感あってパンキッシュな楽曲が多く、The Mars Volta以上にロックリスナーへの訴求できそうなアルバムになっているように感じました。

その後も「GOVERNED BY CONTAGIONS」「PENDULUM IN A PEASANT DRESS」など疾走感あるヘヴィーな楽曲が続き、いい意味で耳なじみやすく聴きやすさを感じる楽曲が並びます。構成としてはThe Mars Voltaほどの複雑さはないのですが、それでもプログレからの影響も感じる凝った構成も随所で見ることができ、The Mars Voltaと同様、何度か聴くうちに出てくる味わいも持ったアルバムとなっています。

解散前の傑作アルバムだった「Relationship Of Command」に比べると若干見劣りしてしまう部分は否めませんし、ダイナミックさ、エモさに関しては前作の方が身体にズシリと響いてくるような魅力はあったのですが、これはこれで傑作アルバム。少なくとも17年待ったファンにとっては十分楽しめるアルバムだったと思います。今後はコンスタントに活動を続けていくのでしょうか。これからの彼らの活動も楽しみです。

評価:★★★★★

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2017年7月11日 (火)

ドリーミーでポップな楽曲が心地よい

Title:Volcano
Musician:TEMPLES

前作「SUN STRUCTURES」がノエル・ギャラガーやジョニー・マーに大絶賛されたということで話題となったイギリスの4人組ロックバンド。その彼らの約3年ぶりとなるニューアルバムがリリースされました。

話題となった前作「SUN STRUCTURES」はリバーブがかかったノイジーなギターにキュートなメロディーが印象的な作品に仕上がっていました。今回の作品に関しても基本的にその延長線上といった感じでしょうか。リバーブがかかりまくったノイジーなギターに非常にキュートでポップなメロディーラインが耳を惹くアルバムになっています。

「(I Want To Be Your)Mirror」は哀愁感あるメロディーラインが日本人の琴線にも触れそうなインパクトがありますし、「Celebration」はミディアムテンポながらもスケール感のある、タイトル通りの祝祭色が豊なナンバー。ラストを飾る「Strange Or Be Forgotten」も明るさを感じるインパクトあるポップチューンに仕上がっています。

また前作で大きな魅力だったドリーミーな雰囲気も健在。シンセとギターの音で非常に分厚い音を楽しめる「Born Into the Sunset」などがその典型例でしょうか。ドリーミーなサウンドの中で鳴り響くギターリフはどこかマイブラっぽさを感じられたりして、シューゲイザー好きにはかなりはまりそうな楽曲になっています。

基本的には前作の路線を引き継いだ本作ですが、ただ前作に比べるとシンセのサウンドが増えてエレクトロ色が強くなったような印象を受けます。例えば「Open Air」などはシンセの音が前に出てエレクトロポップという色合いが強い楽曲になっていますし、他の曲に関してもシンセの音が目立つ印象を受けました。

とはいえ全体的には前作の印象を大きく変えるものではなく、前作を気に入った方にとっては間違いなく楽しめる傑作アルバムだったと思います。前作の踏襲という点で目新しさが減った反面、前作で気になったメロよりもサウンドを押し出したような楽曲が減り、後半まで基本的にポップなメロ主導の楽曲が並んでいました。前作はバンドとしての足腰の弱さを感じました。本作で決定的に強くなったという印象を受けたわけではありませんが、バンドの弱点をあまり表に出さない曲づくりは上手くなったように感じます。

話題になり全英チャート7位といきなりベスト10入りした前作に比べて本作は最高位23位にとどまったようで、売上面での失速ぶりは気になるところなのですが・・・ただ内容的には前作に負けず劣らずの傑作だったと思います。今年のフジロックへの出演も決定したみたいですし、日本での盛り上がりに期待したいところです。

評価:★★★★★

TEMPLES 過去の作品
SUN STRUCTURES

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