今回もArcaサウンド
Title:utopia
Musician:bjork
ビューくの約3年ぶりとなるニューアルバム。前作に引き続きArcaをプロデューサーとして迎えた今回の作品。今回のアルバムの感想をいろいろとみてみると、少々ユニークな傾向に気が付かされました。感想では前作「Vulnicura」との対比によるものを良く見かけましたが、「前作と方向的には似ている」という感想と「前作と全く逆」という感想を同時に見かけるのです。
前作「Vulnicura」はある意味、とてもわかりやすいアルバムになっていました。彼女のパートナーであったマシュー・バーニーとの別れというわかりやすいテーマを素材としており、サウンドについてもそのイメージを踏襲したもの。比較的重いストリングスの音色を軸としたエレクトロのサウンドは、歌詞のテーマを反映した暗いものに仕上がっていました。
その点、今回は対照的な部分が多く、今回は歌詞も「愛の喜び」を歌ったようなものがよく見受けられます。「arisen my senses」でも
"but he sees me for what who i am"
(だけど彼は私のありのままを見てくれる)
(「arisen my senses」より 作詞 bjork)
なんていうちょっとおのろけ的な歌詞が登場してきたりしていますし、サウンドにしてもハープや笛の音色を取り入れた明るい音色がメイン。特に「the gate」やタイトルチューンである「utopia」は美しい木々の中をきれいな小川が流れているような、爽快感ある森の中をイメージするようなサウンドに仕上げており、非常に澄み切った明るさを感じさせるものとなっています。
ただ、それでは今回のアルバムが前作と真逆のアルバムだったのか、と言われると、それもまた少々違うように感じました。
まずサウンド的に言えば、今回のアルバムも前作同様のArcaサウンド。音数が少な目でシンプルだった前作に比べるとサウンド的には分厚さを感じる曲が多いものの、基本的にはあくまでもビョークのボーカルのサポートに徹するようなサウンドとなっており、ストリングスにエレクトロサウンドが重なるという基本的な構成も一緒。例えば「claimstaker」のようなダークなサウンドの曲も収録されています。
そのため個人的にも最初聴いた感触としては前作と対照的というよりも、前作と似ているという印象を受けました。前作同様、Arcaがプロデュースを手掛けているため、やはり根本的な部分は前作と同じ。そういう意味でも大きな建付けでは前作と同じ方向性のアルバムと言えるかと思います。
また歌詞にしても今回のアルバムでも単純にポジティブな面だけ歌っているわけではありません。「私を訴えればいい」と歌う「sue me」のように、「愛」の複雑性を感じさせる歌詞もあります。そりゃそうだよね。失礼ながらビョークももう52才。恋に恋するような年齢じゃないですよね。
そういう意味では今回のアルバム、前作「Vulnicura」と対比するアルバムというよりは、前作からのある種の延長線上にあるようなアルバムといった方が正確ではないでしょうか。もちろん、前作同様、今回のアルバムもArcaサウンドとビョークのボーカルの相性の良さを感じさせる傑作。彼女の良さを存分に引き出した作品になっていました。
評価:★★★★★
Bjrok 過去の作品
biophilia
2012-02-12 NY Hall of Science,Queens,NY
Bastards
Vulnicura
Vulnicura Strings
Biophilia Live
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