アルバムレビュー(洋楽)2017年

2017年7月25日 (火)

ラストアルバム

Title:Chuck
Musician:Chuck Berry

巨星、墜つ。今年3月、ロック界に大きな衝撃の走ったチャック・ベリーの逝去。まさにそう表現するのがピッタリでしょう。ロックンロールの創始者のひとりとしてまさにロックの歴史を語るには欠かせない人物であり、多くのロックミュージシャンへ影響を与えた彼。享年90歳という年は大往生といっていい年なのですが、ひとつの時代の終わりを感じる出来事でした。

そして彼の逝去後にリリースされたのが、なんと約40年ぶりとなる彼のオリジナルアルバム。もともと彼の逝去のニュースが入ってくる前から2017年にアルバムリリース予定であることがアナウンスされていました。もっとも彼に関しては特に「がんで余命〇年」といった感じではなかったようですので、死を覚悟しての1枚、といった感じではありません。ただ年齢からいっておそらくこれが最後だろうな、ということを感じつつのアルバムだったのではないでしょうか。

ただそんな本作ですが、これが最後だ、というような雰囲気はほとんど感じられません。もともとさすがに全米ツアーなどは行っていなかったものの、逝去のちょっと前まで地元で積極的なライブ活動を行っていたということは聴いていましたし、最後の最後まで現役ミュージシャンだった彼。「これが最後だろうな」ということは思いつつも、一方であわよくば、このアルバムの次にももう1枚・・・と思っていたのかもしれません。

Chuck Berryといえば主に50年代のロックンロール黎明期。シンプルなギターリフとメロディアスなメロディーライン、また当時のティーンエイジャーの心境をそのまま歌ったような歌詞でロックンロールというジャンルを確立し数多くのヒット曲をリリースしました。そして彼の最後となったオリジナルアルバム、そんな彼のロックンロールは全く変わっていません。90歳になってもそのスタイルを貫きとおしています。

しかし今回のアルバムを聴いても50年代のロックンロールそのままといっても全く古さを感じませんでした。その理由としてまず感じるのは、このアルバムでも感じられる若々しさ。今回のアルバムでも決して今時の音を入れているわけではありませんが、その楽曲には現役感があり勢いすら感じさせます。さすがに90歳近い歳ということもあり声の艶は感じられませんし、ギターの迫力という点では昔にはかなわないかもしれません。それでも下手な若手にはまだまだ負けないという気迫を感じます。

また非常にギターリフ主導のロックンロールというシンプルなスタイルだからこそ時代を超えても全く古くならない魅力があるのでしょう。まさにシンプルイズベスト。彼の全盛期から60年以上の月日を経て、いまなお感じられるロックンロールの魅力がこのアルバムにはつまっています。

2015年にはB.B.KINGがこの世を去り、そしてChuck Berryがこの世を去り、長生きだったポピュラーミュージック界のレジェンドたちがここ最近、次々とこの世を去って行っており、ひとつの時代の終わりを感じます。そんな中リリースされたChuck Berryのラストアルバム。まずはチェックしておきたいマストなアルバムと言えるでしょうし、またそういう事情抜きにしても十分お勧めできる傑作アルバムでした。最後の最後までロックンローラーであり続けたChuck Berry。あらためて彼の冥福をお祈りします。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Love&Hate/Michael Kiwanuka

前作「Home Again」が話題となったイギリスのソウルシンガーの2枚目。日本での注目度は残念ながら1枚目ほどではありませんでしたが、イギリスでは前作を上回るチャート1位を記録しています。それだけに内容も素晴らしく、前作とほとんど遜色ない傑作に。ブルージーな雰囲気のレトロなソウル路線は前作と同様。彼のボーカルによるスモーキーな雰囲気が実に心地よい作品になっています。基本的に前作の路線を踏襲しているのですが、前作同様、実に魅力的な傑作でした。

評価:★★★★★

Michael Kiwanuka 過去の作品
Home Again

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2017年7月14日 (金)

まさかの17年ぶりの新作

Title:in・ter a・li・a
Musician:At The Drive-In

2000年にリリースしたアルバム「Relationship Of Command」が日本でも大きな話題となったロックバンド、At The Drive-In。その後の大きな飛躍が期待された矢先にバンドは解散を発表。メンバーのうちボーカルのセドリック・ビクスラーとギターのオマー・ロドリゲスはThe Mars Voltaを、ギターのジム・ワードとベースのポール・ヒノジョス、ドラムスのトニー・ハジャーはSPARTAをそれぞれ結成し、活動を続けていました。

しかし、2011年にバンドはなんと再結成。その後、残念ながらジム・ワードは脱退してしまったもののついに待望となるニューアルバムがリリース。実に17年ぶりとなるファンにとっては待ちに待ったアルバムが完成しました。

その久々となるニューアルバムなのですが、率直に言って非常にカッコいいアルバムだな、と感じます。久々の新作の冒頭を飾る「NO WOLF LIKE THE PRESENT」からズシリと重いサウンドながらも疾走感あるギターが心地よいダイナミックなナンバー。まずロックを聴く快感さ、ダイナミズムを体現できるような楽曲になっています。

基本的にジムが脱退してしまったことからイメージ的にはThe Mars Voltaにつながるバンドという感じが強いのですが、楽曲的にはThe Mars Voltaよりも疾走感あってパンキッシュな楽曲が多く、The Mars Volta以上にロックリスナーへの訴求できそうなアルバムになっているように感じました。

その後も「GOVERNED BY CONTAGIONS」「PENDULUM IN A PEASANT DRESS」など疾走感あるヘヴィーな楽曲が続き、いい意味で耳なじみやすく聴きやすさを感じる楽曲が並びます。構成としてはThe Mars Voltaほどの複雑さはないのですが、それでもプログレからの影響も感じる凝った構成も随所で見ることができ、The Mars Voltaと同様、何度か聴くうちに出てくる味わいも持ったアルバムとなっています。

解散前の傑作アルバムだった「Relationship Of Command」に比べると若干見劣りしてしまう部分は否めませんし、ダイナミックさ、エモさに関しては前作の方が身体にズシリと響いてくるような魅力はあったのですが、これはこれで傑作アルバム。少なくとも17年待ったファンにとっては十分楽しめるアルバムだったと思います。今後はコンスタントに活動を続けていくのでしょうか。これからの彼らの活動も楽しみです。

評価:★★★★★

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2017年7月11日 (火)

ドリーミーでポップな楽曲が心地よい

Title:Volcano
Musician:TEMPLES

前作「SUN STRUCTURES」がノエル・ギャラガーやジョニー・マーに大絶賛されたということで話題となったイギリスの4人組ロックバンド。その彼らの約3年ぶりとなるニューアルバムがリリースされました。

話題となった前作「SUN STRUCTURES」はリバーブがかかったノイジーなギターにキュートなメロディーが印象的な作品に仕上がっていました。今回の作品に関しても基本的にその延長線上といった感じでしょうか。リバーブがかかりまくったノイジーなギターに非常にキュートでポップなメロディーラインが耳を惹くアルバムになっています。

「(I Want To Be Your)Mirror」は哀愁感あるメロディーラインが日本人の琴線にも触れそうなインパクトがありますし、「Celebration」はミディアムテンポながらもスケール感のある、タイトル通りの祝祭色が豊なナンバー。ラストを飾る「Strange Or Be Forgotten」も明るさを感じるインパクトあるポップチューンに仕上がっています。

また前作で大きな魅力だったドリーミーな雰囲気も健在。シンセとギターの音で非常に分厚い音を楽しめる「Born Into the Sunset」などがその典型例でしょうか。ドリーミーなサウンドの中で鳴り響くギターリフはどこかマイブラっぽさを感じられたりして、シューゲイザー好きにはかなりはまりそうな楽曲になっています。

基本的には前作の路線を引き継いだ本作ですが、ただ前作に比べるとシンセのサウンドが増えてエレクトロ色が強くなったような印象を受けます。例えば「Open Air」などはシンセの音が前に出てエレクトロポップという色合いが強い楽曲になっていますし、他の曲に関してもシンセの音が目立つ印象を受けました。

とはいえ全体的には前作の印象を大きく変えるものではなく、前作を気に入った方にとっては間違いなく楽しめる傑作アルバムだったと思います。前作の踏襲という点で目新しさが減った反面、前作で気になったメロよりもサウンドを押し出したような楽曲が減り、後半まで基本的にポップなメロ主導の楽曲が並んでいました。前作はバンドとしての足腰の弱さを感じました。本作で決定的に強くなったという印象を受けたわけではありませんが、バンドの弱点をあまり表に出さない曲づくりは上手くなったように感じます。

話題になり全英チャート7位といきなりベスト10入りした前作に比べて本作は最高位23位にとどまったようで、売上面での失速ぶりは気になるところなのですが・・・ただ内容的には前作に負けず劣らずの傑作だったと思います。今年のフジロックへの出演も決定したみたいですし、日本での盛り上がりに期待したいところです。

評価:★★★★★

TEMPLES 過去の作品
SUN STRUCTURES

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2017年7月 9日 (日)

ポップなアルバムかと思いきや・・・

Title:Different Days
Musician:The Charlatans

The Charlatansといえば1990年のデビューから既に27年というキャリアを誇るベテランバンド。かのブリットポップのミュージシャンの一組としても紹介されています。ただブリットポップのミュージシャンたちのほとんどが解散したり、事実上、活動休止状態になっている中、彼らは途中、オリジナルメンバーの急逝といった悲劇を乗り越えつつ、コンスタントな活動を続けています。

そんなベテランバンドの彼らですが、その活動状況としてはむしろここに来て、再び脂がのってきているのでは、とすら感じてしまいます。前作「Modern Nature」は中毒性高いグルーヴ感が味わえる傑作アルバムとなっていましたし、その後約2年のインターバルを経てリリースされた本作も、前作同様の傑作アルバムに仕上がっていました。

アルバム全体としては決して派手なアルバムといった感じではありません。アルバム冒頭を飾る「Hey Sunrise」はアコースティックなサウンドでしんみりとメロを聴かせるようなナンバーですし、タイトルナンバーとなった「Different Days」も哀愁感あるメロディーラインを聴かせるようなナンバーとなっています。

その後も「There Will Be Chances」のようなテンポのよいリズムが入りつつ爽やかなポップを聴かせるナンバーが入って来たり、「The Same House」のようにピアノとシンセで軽快なポップスを聴かせてきたりと、メロディーラインを聴かせる曲が並び、全体的にはポップなアルバムという印象を受けます。

しかし強く印象に残るのはこのポップなメロディーラインではありません。むしろアルバムを聴いている最中から妙なひっかかりを覚えるかもしれません。それは前作同様に感じる絶妙なグルーヴ感。前作に比べてよりポップなメロの中にグルーヴ感を溶け込ませており、知らず知らずのうちにその独特のグルーヴ感にはまっていくようなアルバムになっています。

特にこのグルーヴ感はアルバム後半から強烈な印象をリスナーに与えます。「Not Forgotten」は軽いシンセのリズムの向こうでベースラインによってしっかりと奏でられるどす黒いリズムが耳に、というよりも身体に残りますし、上にも書いた「There Will Be Chances」もポップなメロディーを奏でつつ、テンポよいベースとドラムスに絶妙なリズム感を覚えます。さらに「Let's Go Together」もシンセのサウンドにへヴィーなベースラインやドラムスのリズムが絡み、メロディーラインはポップながらもどこかサイケちっくなサウンドの世界が構築されており、心地よいサウンドとリズム感が楽しめる作品に仕上がっています。

ポップなメロディーラインの後ろに流れているこの独特なグルーヴ感が実にたまらない、前作同様中毒性高い傑作アルバムに仕上がった本作。デビュー30年近いバンドがまさかの2作連続、キャリア最高傑作ともいえるようなアルバムをリリースしてきました。その傑作アルバムに呼応するかのようにアルバムの売上も、前作が全英7位、本作ではさらに前作を上回り全英4位を記録。売上の側面でもその勢いを取り戻しつつあります。前作に引き続き、年間ベスト候補の大傑作アルバム。ロックが好きなら是非ともチェックしてほしい1枚です。

評価:★★★★★

The Charlatans 過去の作品
You Cross My Path
Modern Nature


ほかに聴いたアルバム

One More Light/Linkin Park

Linkin Parkの最新作はロック色が薄くなりポップの色合いが強くなったのが大きな特徴。ミディアムテンポのナンバーがほとんどとなり、スケール感あるサウンドでメロディアスに聴かせる曲が並んでいます。これはこれで彼らなりの挑戦なんでしょうが・・・正直、あまり成功しているとは思いません。これといったインパクトも薄く、個性もあまり感じません。決して長いアルバムではないのですが、聴いていて最後の方はだれてきてしまいました。ちょっと残念に感じるアルバムでした。

評価:★★★

LINKIN PARK 過去の作品
A THOUSAND SUNS
LIVING THINGS
The Hunting Party

HITnRUN Phase Two/PRINCE

昨年4月、わずか57歳という若さでの急逝に多くの音楽ファンがショックを受けたプリンス。なによりショッキングだったのは彼がバリバリ現役のミュージシャンであり、アルバムもコンスタントにリリース。それもどのアルバムも一定以上の水準を保っていた傑作をリリースしていたという事実。本作はその彼の生前最後にリリースしたオリジナルアルバム。タイトル通り、2015年にリリースした「HITnRUN Phase One」の続編的なアルバムで、実際に女性ボーカルやエレクトロサウンドを取り入れた軽快なファンクという形態は前作と同様。「HITnRUN Phase One」と同様、ある種の若々しさすら感じられる軽快なポップソングが楽しめる作品で、これが最期というのは信じられません・・・。本当にあまりにも早すぎる最期が惜しまれる傑作です。

評価:★★★★★

PRINCE 過去の作品
PLANET EARTH

ART OFFICIAL AGE
PLECTRUMELECTRUM

HITnRUN Phase One

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2017年6月25日 (日)

映画も印象的でしたが・・・

Title:CANTA!TIMOR SONGS 映画「カンタ!ティモール」サウンドトラック

Timor_2

先日見た映画「カンタ!ティモール」については、ここでも紹介しました(その時のレポおよび感想はこちら)。この映画自体は当初の公開日は2012年だったのですが、遅ればせながらようやくサントラ盤がリリースされたそうです。映画会場でサントラ盤がリリースされていたので思わず買ってしまいました。

映画の中でも子供たちの歌が実に効果的に流れていましたが本作でもまず目立つのはその子供たちの歌でした。映画のテーマ曲ともいえる「ヘイ マルシーラ」をはじめ、特に序盤「ロウ ロウ ロウ」「スル ボエ」などは子供たちの無邪気で元気のよい明るい歌声に東ティモールの希望を歌からも感じることが出来ます。

本作に収録されているのは映画でも使用された東ティモールの人々の歌。ほとんどがフィールドレコーディングでの作品になっているのですが、そのため現地の人たちの生の声をそのままとらえています。

ただ印象としては音楽的なジャンルは比較的バラバラ。その中でも「テベ」という東ティモールの伝統的な踊りは村の人たちみんなで歌われるような楽曲でこぶしを聴かせて伸びやかに歌い上げるスタイルは日本の民謡にも通じるものがあります。一方で「スラット イダ」はハワイアン風ですし、「フヌ ナイン」は荘厳な教会音楽風。「ヘイ マルシーラ」も哀愁感あるメロは日本人の琴線にも触れそうな楽曲ですが、他にも「ジェスス」のように歌謡曲にも通じそうなメロにインパクトがあり日本人にも受けそうな曲もチラホラあります。

ここらへんの東ティモールの音楽のルーツについては映画の中でも突っ込まれていませんでしたし、私自身ももちろんよくわかりません。ただ、東南アジアやオセアニアの島々に囲まれた地域に位置するこの国には、いろいろな音楽の文化が入り込んできているのかもしれません。ある意味、わかりやすい「東ティモールらしい音楽」といった感じの曲はありませんが、逆に音楽的な幅の広さが東ティモールの音楽の魅力のようにも感じました。

映画でつかわれた音楽をそのまま収録しているので映画の感動がよみがえってくるようなサントラ盤。またうれしいのはエンディングにつかわれたソウルフラワーユニオンの「星降る島」もしっかり収録されています。さらに同封のブックレットにはきちんと訳詩も収録。ワールドミュージックのCDだとこの訳詩というのは省略されがちのところ、きちんと訳を収録している点もきちんと言葉を伝えたいという強いこだわりを感じます。

基本的にはCDショップやAmazonなどでの取り扱いはないようが、通販で購入可能なようです。BGM的な内容ではないため映画を見ていなくても楽しめるような内容なのですが、映画「カンタ!ティモール」を見た方にとってはこれも同時に手にとっておきたい作品です。映画ともども素晴らしい作品でした。

評価:★★★★★

Title:Sincustic Vol.1
Musician:Sincustic

Sincustic

で、こちらは同じく映画会場で売られていたCD。先日見た映画の後にミニライブを楽しませてくれたエゴ・レモスがかつて率いていたバンドSincusticのアルバムで、2002年にリリースされたそうです。既に本作は廃盤になっているそうですが、この日は特別にCD-R化されて発売。こちらもサントラ盤と同時に思わず買ってしまいました。

彼が歌う楽曲はアコースティックなサウンドで南国風の優しい風が吹いているような作品。まさに「Hadomi Timor」はそんな南国風な曲調が非常に心地よいナンバーになっていますし、続く「Dame Iha Timor」はハワイアン風なサウンドが心地よく響く中、しんみりと聴かせてくれるナンバーとなっています。

ただ彼の作品はそんな南国風の空気を感じる曲と並んで、日本人の琴線にも触れそうな哀愁感あるメロをフォーキーな雰囲気で聴かせる楽曲も並んでいる点でした。「Fila Mai Doben」などはまさに日本のフォークソングにも通じる雰囲気のある楽曲。「To'os Nain」もフォーキーなメロディーラインが魅力的な楽曲になっています。

ライブでも東ティモールの音楽性を取り入れつつ、比較的ポップで西洋的な色合いを持った雑多な音楽性が印象に残りました。このアルバムではよりハワイアン、南国的な作風の曲が多いものの、その中でもやはり西洋的に垢抜けたメロも感じられる雑多な音楽性も顔を出しています。ライブを見て気になり購入したのですが、こちらもライブの楽しさがよみがえってくるアルバム。ただこちらは来日公演のライブ会場ではないと入手困難かも・・・機会があれば、是非。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Africa Express Presents… The Orchestra of Syrian Musicians & Guests/The Orchestra of Syrian Musicians

The Orchestra of Syrian Musiciansは2011年から続くシリア紛争から逃れるため祖国を逃れているシリアミュージシャン。2016年にblurのデーモン・アルバーンの支援によるライブツアーが行われることになりメンバーは5年ぶりに集結しライブツアーが行われました。本作はそのライブ公演の模様を収録したライブアルバム。デーモン・アルバーンや、ポール・ウェラーがゲストとして参加した曲も収録されています。

全体的に笛や太鼓を取り入れたエキゾチックな雰囲気たっぷりのナンバー。こぶしを利かせたボーカルが特徴的ですが、「Feel You」のような女性ボーカルによる軽快なポップナンバーや「Al Ajaleh」のようなミニマルなリズムでトリップ感のあるナンバーになっているような曲もユニーク。一方、デーモンやポール・ウェラーが参加した曲は完全に彼らの曲になっていました。

評価:★★★★

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2017年6月23日 (金)

豪華ゲストが話題

Title:Humanz
Musician:GORILLAZ

なんと6年ぶり!GORILLAZの待望のニューアルバムがリリースされました。GORILLAZは2D、ヌードル、マードック・ニカルス、ラッセル・ボブスからなる4人組のバンドで・・・といってももちろんご承知の通り、彼らは全員、漫画のキャラクター。ご存じ、blurのデーモン・アルバーンと漫画家のジェイミー・ヒューレットによって作成されたバーチャルバンド。最初はblurの余技的な一時的プロジェクトと思われていたのですが、デビュー作が全世界で700万枚という大ヒットを記録。いまや、下手したらアメリカではblurより人気があるんじゃないか、と思われるほどの「バンド」になりました。

一時期、デーモン・アルバーンとジェイミー・ヒューレットの仲が決裂。GORILLAZの行方も心配されていました。が、その後2人の仲は修復。無事、久々となるニューアルバムがリリースされました。で、その久々となる最新作ですが、まずゲストがすごいことになっています。

一番の驚きはあのノエル・ギャラガーが参加していることでしょう。blurとoasisといえばかつては犬猿の仲として有名だった間柄。特にノエルとデーモンといえば、ノエルがデーモンに対して「エイズにかかって死ねばいい」というとんでもない暴言を吐き話題となりました。その後、両者の和解は日本でも大きな話題となったためご承知置きかと思いますがGORILLAZの最新作では「We Got The Power」でなんと共演が実現。大きな話題となっています。

さらにblurのギタリストであるグラハム・コクソンもギターとして参加。グラハムとの仲が悪化し、blurの活動が縮小していく中、GORILLAZの活動が盛んになっていった、という印象もあるため、グラハムがGORILLAZに参加するということは、これまた隔日の感があります。

他にも様々なミュージシャンたちがゲストとして参加しているのですが、現在、新進気鋭のミュージシャンとして大きな話題となっている人たちの参加が目立ちます。たとえば「Ascension」で参加しているヴィンス・ステイプルズはLAで活動中の将来が期待される若手ラッパー。テンポよいHIP HOPチューンとなっています。「Saturnz Barz」も話題のレゲエミュージシャン、ポップカーンが参加。横ノリのレゲエチューンを哀愁感まじえて聴かせるナンバーになっています。また「Hallelujah Money」で伸びやかなジャズ風のボーカルを聴かせるのは天才シンガーとして話題となったイギリスのベンジャミン・クレメンティン。まさに今話題のミュージシャンたちがズラリと参加しています。

一方ではGORILLAZへのゲスト参加ではおなじみのDE LA SOULは本作も参加。さらに「Let Me Out」ではゴスペルシンガーの重鎮、メイヴィス・ステイプルズが参加。若手のみならずベテラン勢にもしっかりと気を配っており、幅広い音楽性が楽しめる内容となっています。今回の作品はアメリカをテーマとした作品ということでアメリカの音楽を幅広く取り入れて、アメリカという世界を浮かび上がらせようとしているのでしょうか。

また今回のアルバム、もうひとつの特徴としてはエレクトロサウンドを取り入れた曲が多かったという点。特にいままでのGORILLAZになかった四つ打ちの作品もあり、「Strobelite」のような軽快なディスコ風のナンバーも収録されています。これも今の音楽シーンを反映させたようなサウンドになっているように感じます。

今回のアルバムではそんなエレクトロサウンドを取り入れ、豪華なゲストでいままで以上にバリエーション富んだ作風になっているだけにバンド色は薄くなっています。今回のアルバムではデーモンは「トランプ後のアメリカ」を描いているそうです。それだけにかなりメッセージ性の強い曲も収録されていますが、ただそれ以上にGORILLAZでいろいろな音楽をとにかく好き勝手にやってみたい、デーモンのミュージシャンとしての好奇心をまず強く感じます。それだけに最新の音楽に触れることが出来るバリエーションある楽曲は、少々統一感ない部分もあるものの純粋に楽しく聴くことが出来ました。GORILLAZだからこそ出来た、GORILLAZらしい1枚です。

で、今回本作、国内盤を購入して聴いたのですが、これに関して大きな不満が。国内盤は全世界でのリリースから1か月遅れのリリースとなったのですが、それにもかかわらず対訳がついていません。特に本作はメッセージ性の強い作品なだけに対訳が必須のはず。対訳はつけないでほしいという要望があったのでしょうか。こんな雑な仕事をしていると、国内のレコード会社はどんどんそっぽをむかれかねないと思うのですが。本作に興味を持ったら輸入盤で十分。国内盤は不要です。

評価:★★★★★

GORILLAZ 過去の作品
D-Sides
Plastic Beach
THE FALL
The Singles Collection 2001-2011


ほかに聴いたアルバム

A Kind Revolution/Paul Weller

イギリスギターロック界の大ボス、ポール・ウェラーの2年ぶりとなる新作。前作はロック色が強くなったアルバムでしたが本作はソウル、ブルース、AORとブラックミュージックの色合いが強いアルバムに。ただ一方、いつもの彼らしい骨太のロックも聴かせてくれ、ベテランとしての安定感を感じます。もちろん、安定感だけではなく現役感も十分感じられるアルバム。まだまだ彼の活躍は続きそうです。

評価:★★★★

Paul Weller 過去の作品
22 DREAMS
Wake Up The Nation
Sonik Kicks

The Best of...So Far/THE KOOKS

2008年にアルバム「Konk」が全英チャート1位を獲得し大きな話題となったロックバンドによる初のベスト盤。基本的に非常にシンプルなギターロックというイメージで、リズミカルな楽曲が多く、良くも悪くもいかにもイギリスのギターロックバンドといった印象を受けます。目新しい感じはしませんが、素直なギターサウンドを楽しめるバンドです。

評価:★★★★

THE KOOKS 過去の作品
Konk
Junk of the Heart

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2017年6月12日 (月)

ギターロック路線回帰

Title:FOR CRYING OUT LOUD
Musician:KASABIAN

イギリスを代表するギターロックバンドKASABIANの3年ぶりとなるニューアルバム。デビューアルバムでいきなりのセルフタイトルだった「KASABIAN」が全英4位を獲得。その後、2ndアルバム「Empire」以降、前作全英1位を獲得。本作も当然のように1位を獲得しており圧倒的な人気を見せつけています。ちなみにアメリカでは最高位がデビューアルバムでの94位だったようで、典型的なイギリス国内人気主導型のバンドといった感じです。

基本的にKASABIANといえば比較的シンプルなサウンドで「歌」を聴かせるバンドといったイメージが強く、ど派手なインパクトはないものの妙に耳に残るメロディーラインが大きな魅力のバンドというイメージがありました。ただ前作「48:13」ではエレクトロサウンドを多く取り入れており、結果としてちょっとチグハグな印象を受けてしまうアルバムになっていました。

そんな前作に関して本作は原点復帰、ギターロック路線回帰となった作品でした。アルバムの1曲目を飾る「Ⅲ Ray」はいきなりリズミカルでダンサナブルなサウンドからスタートするもののサビではダイナミックなギターサウンドが入ってきて非常に心地よさを感じるナンバー。続く「You're In Love With a Psycho」も軽快なリズムのギターロックナンバーですが、ポップなメロディーラインが耳を惹く心地よいナンバーになっています。

続く「Twentyfourseven」はガレージ風のノイジーなギターがたまらないロックなナンバー。さらに中盤、「Wasted」「Comeback Kid」「The Party Never Ends」は哀愁感のあるメロディーが心地よいメロディアスなナンバーに。この憂いを帯びてどこか影を感じる楽曲がいかにもイギリスらしさを感じると同時に日本人の心にも響きそうなナンバーになっています。

後半の「Are You Looking for Action?」は打ち込みのダンスチューンとなっていますが中途半端に挑戦的なエレクトロナンバーが並んだ前作と比べてポップでほどよいインパクトを与えてくれるナンバーとして後半のインパクトとなっています。その後もアコギでしんみり聴かせる「All Through the Night」や横ノリの「Sixteen Blocks」などバリエーションあるナンバーを展開しつつも、最後はメロディアスでパンキッシュなギターロック「Bless This Acid House」とこのアルバムの主軸であるギターロック路線に戻り、ラストの「Put Your Life On It」はミディアムテンポのメロディアスなナンバーなのですが、ライブではサビで大合唱が起こりそうな楽曲で締めくくり。このアルバムの構成も実に見事な作品になっていました。

オルタナ系ギターロックが好きなら是非ともチェックしてほしい傑作。難しいこと抜きにポップなメロディーとギターロックのダイナミックさを楽しめる良質なポップスアルバムになっていました。個人的にはKASABIANの中でも最高傑作のような印象も。さすがイギリスを代表する国民的バンド、その実力は伊達じゃありませんでした。

評価:★★★★★

KASABIAN 過去の作品
West Ryder Pauper Lunatic Asylum
VELOCIRAPTOR!
48:13


ほかに聴いたアルバム

Strength of a Woman/Mary J.Blige

「クイーン・オブ・ヒップホップ・ソウル」という呼び名で知られるソウルシンガーの約2年半ぶりの新作。いかにも女王様然としたジャケット写真もインパクト十分なのですが、最新作では彼女らしいソウルフルで力強いボーカルを聴かせてくれる一方、トラックに関しては今風のエレクトロサウンドになっており、王道ソウルの彼女のボーカルとのバランスが実におもしろい作品になっていました。前作は安定感ある作品だった一方、いまひとつ目新しさがなかったように感じたのですが、本作ではきちんと2017年という時代を反映された傑作に仕上がっていました。

評価:★★★★★

Mary J.Blige 過去の作品
STRONGER WITH EACH TEAR
My Life II...the Journey Continues (Act 1)

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2017年6月11日 (日)

シューゲイザー四天王による22年ぶりの新譜

Title:Slowdive
Musician:Slowdive

90年代前半、イギリスで一世を風靡したシューゲイザーサウンド。いまなおシューゲイザー系のフォロワー的なバンドが数多くあらわれたり、今年はThe Jesus And Mary Chainが久々となるアルバムをリリースし話題になったりと、今なお音楽シーンには多大なる影響を与えています。その中でシューゲイザーの四天王といわれるのがSlowdive(四天王という言い方からして、明らかに日本だけで用いられている言い方でしょうが・・・)。1995年に3rdアルバム「Pygmalion」をリリースした後に解散したのですが、2014年に再結成。そして今年、22年ぶりとなるニューアルバムをリリースしました。

この手の再結成というと、良くも悪くも回顧的に走るケースがほとんど。実際、The Jesus And Mary Chainのニューアルバムもいいアルバムではあったもののどこか回顧趣味的な部分も否めませんでした。このアルバムも正直言えば、昔ながらという部分も少なからずありました。ただ、そんな回顧的な部分がほとんど気にならなくなるほどの傑作アルバムに仕上がっていたと思います。

とにかく全編通して美しいのが薄く幕がかかったように音楽をつづみこむギターのホワイトノイズの音色。非常に空間を生かしたようなサウンドで、その薄い幕の向こうに見えるのは雄大な宇宙空間。音像の広がりを感じる世界観が繰り広げられていました。

ここに加わるレイチェル・ゴスウェルとニール・ハルステッドのツインボーカルが美しいこと美しいこと。特に「Don't Know Why」「Everyone Knows」ではレイチェルのウイスパー気味のボーカルが幻想的にギターのホワイトノイズと絡み合い、ドリーミーな世界を作り出しており、思わずうっとり聴き入ってしまいそう。

また「Slomo」「Star Roving」など、ギターノイズの美しい音の世界の向こう側に流れているのはポピュラリティーのしっかりあるいい意味でわかりやすさのあるメロディーライン。まあもともとシューゲイザー系といえば凶暴的なギターノイズの向こうにポップでキュートなメロディーラインが鳴っているというのがひとつの特徴なのでしょうが、その傾向をしっかりとこのアルバムでも感じることができます。

そんな美しいギターノイズにコーティングされつつも一方では「Sugar for the Pill」では80年代のAOR調の楽曲に仕上げていたり、「Go Get It」ではよりノイズを強調したダイナーな作品になっていたり、ラストを飾る「Falling Ashes」では最初、ミニマルなピアノの音色からスタートし、ツインボーカルの「歌」を聴かせるようになっていたりバリエーションは豊富。もともとSlowdiveもアルバム毎に作風を変えてくるバンドでしたが、このアルバムはそんな彼らの幅広い音楽性も感じることができました。

最初から最後まで聴いていてほれぼれとするような幻想的で非常に美しいアルバムでした。22年ぶりの新譜ながらもそのインターバルをまったく感じさせない傑作。個人的には今年のベスト盤候補の1枚。これからはコンスタントに活動を続けてくれるのでしょうか。次の作品も楽しみです。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Be Myself/Sheryl Crow

日本ではあまり人気の出ることの少ないカントリー&ウエスタンのポップソングを奏でながらも、日本でも人気の女性シンガーSheryl Crowの新作。ただ楽曲自体は古き良きアメリカ音楽を奏でつつ、ロック寄りの曲も多く、なによりもポップでメロディアスに仕上げているあたり、日本人にとっても親しみやすく仕上がっています。ただ今回のアルバム、目新しいことはなくよくも悪くも無難な出来に。いい言い方をすると安定感あるポップアルバムに仕上がっていました。

評価:★★★★

Sheryl Crow 過去の作品
HITS&RARITIED
Detours

AFRICA REKK/Youssou N'Dour

おそらくアフリカの音楽シーンの中で最も知名度の高いミュージシャンのひとり、セネガル出身のユッスー・ンドゥール。ちなみに日本でも90年代半ばにホンダ・ステップワゴンのCMソングとして「オブ・ラ・ディ、オブ・ラ・ダ」のカバーを歌っていたので30代後半以降の世代なら間違いなく彼の歌声を一度は聴いたことあるものと思われます。

そんな彼は2011年頃より政治活動に専念するため音楽活動を休止してきましたが、このたび久々となるニューアルバムをリリースし話題となりました。楽曲はトライバルなパーカッションや西アフリカの音楽によく聴かれるようなカリブ、ラテン系の音楽の影響の強いサウンドが魅力的。ただ一方でメロディーラインは哀愁感漂うポップなものとなっておりいい意味で聴きやすいアルバムになっています。なんでも全世界でのリリースを当初から視野に入れたアルバムで、あえて聴きやすい内容に仕上げているとか。意図的なセルアウトという言い方もできるかもしれませんが、ただしっかりセネガルの音楽の魅力を伝えた内容になっており、アフリカ音楽になじみない方でもいい意味で聴きやすいアルバムになっていました。

評価:★★★★★

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2017年6月 4日 (日)

一度見たら忘れられないジャケット

Title:L'etoile Thoracique(邦題 あばら骨の星)
Musician:Klo Pelgag

今回紹介するアルバムはとにかくこのジャケット写真に強烈なインパクトがあります。一度見たら忘れられないのではないでしょうか。さらに邦題が「あばら骨の星」ってなんじゃそりゃ?って感じもします。とにかく奇抜なアルバムという印象を受けるのではないでしょうか。

本作はカナダ東部ケベック州出身の女性シンガーソングライター。今回、このアルバムを聴いたのは、8月に富山で行われるワールドミュージックの音楽フェスティバル、「SUKIYAKI MEETS THE WORLD」への出演が決まったから。同イベントは何度か足を運んだのですが、家庭的な事情からここ数年、足を運べていません。ただ毎年ワールドミュージックの分野で素晴らしいミュージシャンを招集するイベントなだけに、今回参加が決まった彼女のアルバムを聴いてみました。で、調べてみたら最新作が本作。このインパクトありすぎなジャケット写真を知っていたので、「ああ、あのアルバムか」と思い聴いてみました。

ただこのインパクトあるジャケット写真に反して楽曲の方は非常に美しい彼女のクリアボイスからスタートします。ピアノをバックにコーラスを入れつつスタートする楽曲は幻想的ですらある美しさを感じさせるポップソング。ちょっと切なさを感じつつ、フランス語での歌詞で歌われる歌は日本語、あるいは英語の歌に慣れている私たちにとっては不思議な感覚を持ちつつも、その美しい歌声に酔いしれるポップなナンバーになっています。

その後も彼女の美しい歌声で歌われるメロディアスなポップチューンを聴かせる曲が並んでいます。ハイトーンボイスを上手くつかいこなし聴かせる彼女の歌は、どこか哀愁感あって切なさを感じさせます。「Le sexe des etoiles」はムーディーなストリングスとアコギをバックに胸をかきむしられるような切ないメロディーの歌を聴かせてくれますし、「Les animaux」もアコギのアルペジオをバックに郷愁感あるフォーキーなメロディーが特徴的なナンバー。そのほかもピアノやアコースティックギターで美しい調べを奏でながらもシンプルで美しいメロディーラインの歌を聴かせてくれる楽曲が並んでいます。

ただファンタジックな雰囲気を醸しつつどこか奇妙な雰囲気を見せるジャケット写真同様、楽曲にもどこか奇妙な歪みみたいなものがあるのが大きな特徴となっています。例えば1曲目「Samedi soir a la violence」は最初は陽気になっていたストリングスやホーンセッションが終盤には不気味な雰囲気を醸し出してきますし、メロディーが美しい「Au musee Grevin」も終始、不協和音のようなピアノの音色が響いており、不思議な雰囲気を作り出しています。さらにラストの「Apparition de la Sainte-Etoile thoracique」に至ってはワンコードの和音がひたすら続くという構成になっており、彼女の奏でる音楽の世界の不思議な部分が強調されるような楽曲になっています。

アルバムに終始感じられるファンタジックながらもどこか歪みを感じる世界観が魅力的。この妙な歪みのような部分が聴いていて癖になり、単純なポップシンガーという側面からは一線を画しているように感じます。基本的にはポップス、ロックに連なるようなミュージシャンなのでワールドミュージック的な要素は薄いのですが、フランス語で歌われる歌詞も私たちにとっては普段聴くポップスとはまた異なる雰囲気を与えてくれます。聴いていて最初は美しい彼女の歌声にはまり、そして徐々にその独特の音世界にはまってしまうような傑作。これ、ライブではどんな雰囲気のステージを見せてくれるんでしょうか?見てみたいなぁ~。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

ニマイメ/Scott&Rivers

親日家として知られるWEEZERのリバース・クオモとALLiSTERのスコット・マーフィーのユニットがリリースする「J-POPのアルバム」第2弾。本作ではMONGOL800のキヨサク、RIP SLYMEのPESさらにはmiwaがゲストとして参加し、よりJ-POPなアルバム作りを目指した作品となっています。

前作「スコットとリバース」では彼らの書く美メロがさく裂した、J-POPと洋楽が見事融合した名作に仕上がりましたが、今回の作品についてはちょっと中途半端。確かに今回も彼ららしいポップでキュートなメロディーの曲が連続しているのですが、あまりにJ-POP的なものを意識しすぎたのか、美メロを惜しげもなく聴かせてくれた前作と比べると、どこかせせこましくなってしまった部分を感じます。前作に続きWEEZERやALLiSTERのファンにとっても楽しめるアルバムだとは思うのですが・・・大傑作だった前作と比べると若干物足りなさを感じてしまったアルバムでした。

評価:★★★★

Scott&Rivers 過去の作品
スコットとリバース

Risk to Exist/Maximo Park

デビュー当初はあのテクノの名門レーベルWARP初のギターロックバンドとして話題となった彼ら。いつの間にかレーベルを移籍し、6枚目となる本作。日本ではさほど大きく取り上げられなくなったもののイギリスでは前作もベスト10入りを記録するなど、なにげに根強い人気を保っています。

そんな彼らの3年2ヶ月ぶりとなる新作。シンセを入れた軽快なギターロックが特徴的。サウンドもメロディーも非常にシンプルでかつリズミカル。いい意味で聴きやすいアルバムになっています。確かに目新しさはない部分、日本で大きく取り上げにくいのかもしれませんが、逆にこれは売れそうといった印象も。UKギターロック好きには素直に楽しめそうなアルバムです。

評価:★★★★

Maximo Park 過去の作品
Our Earthly Pleasures
Quicken The Heart

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2017年6月 3日 (土)

シンプルなサウンドで美しく聴かせる

Title:Pleasure
Musician:Feist

2007年にリリースした「The Reminder」ではグラミー賞4部門にノミネート。続いてリリースされた「Metals」も高い評価を受け大きな話題となったカナダ出身の女性シンガーソングライターFeist。その彼女が前作から6年ぶりにリリースしたニューアルバムが実に素晴らしい傑作に仕上がっていました。

アルバムはどの曲も基本的に音数を絞ったようなシンプルなサウンドに力強い彼女のボーカルがのるようなスタイル。1曲目でありタイトルチューンである「Pleasure」も最初、静かなギターが鳴る中、彼女の歌声で楽曲がスタートします。ただ間奏で鳴り響くエッジの利いたノイジーなギターサウンドが大きなインパクトに。さらにバックに流れるストリングスの音色も楽曲に美しい印象を与えています。

続く「I Wish I Didn't Miss You」も基本的にアコースティックギターのみのナンバーですし、3曲目「Get Not High,Get Not Low」もアコギでブルージーに聴かせるシンプルながらも静かな楽曲が印象的なナンバーになっています。

前作「Metals」もフォーキーなサウンドに彼女の美しい歌声を聴かせるようなスタイルが特徴的だったのですが本作でもそれは同様。特に中盤「A Man Is Not His Song」では彼女のハイトーンで美しいボーカルを前に押し出したような楽曲になっており、その傾向が強調されています。また楽曲の録音状況も少々音質が悪く、荒々しさを残したような録音になっているのですが、その録音状況の荒々しさによってボーカルのリアリティーが増しているようにも感じました。

一方、「Pleasure」の間奏で聴かせるギターサウンドもそうなのですが、所々にへヴィーでダイナミックなギターサウンドが入ることによって大きなインパクトとなっています。例えば「Lost Dreams」も彼女の美しい歌声を聴かせるようなナンバーなのですが、そこにノイジーなギターサウンドを入れてきており、このギターノイズが彼女の美しい歌声を浮き出させるような構図に。「Century」などは力強いドラミングにへヴィーなギターサウンドといったバンドサウンドを前面に押し出したロックなナンバー。でもこの曲でもなお彼女のボーカルはへヴィーなサウンドの中で主張をしています。

今回のアルバムでは内省的な歌詞がテーマとなっているようですが、そんな曲を歌う彼女のどこか悲しげなボーカルとメロディーラインも大きなインパクトに。ただどの曲も基本的にわかりやすくポップなメロディーラインが流れており、シンプルにメロディーと歌詞で勝負している曲であるがゆえに非常に聴きやすいアルバムになっていました。

前作「Metals」も非常に素晴らしい傑作アルバムでしたが本作はそれに勝るとも劣らない傑作アルバムだったと思います。個人的には年間ベスト候補ともいえるほどはまりました。力強くも美しい彼女のボーカルに強く惹かれる1枚です。

評価:★★★★★

Feist 過去の作品
Metals


ほかに聴いたアルバム

Tribute to Ndiouga Dieng(邦題:ンジュガ・ジェンに捧ぐ)/Orchestra Baobab

アフリカ・セネガルの代表的なミュージシャンでアフリカ音楽の中でもレジェンド的なミュージシャンであるオーケストラ・バオバブ。1987年に一度解散したものの2001年に復活。本作は2007年にリリースしたアルバム以来、10年ぶりとなる新作となりました。本作は昨年亡くなったメンバーのンジュガ・ジェンに対して捧げられたアルバム。ラテン色の強い作風に哀愁感あふれるメロは以前からの彼らの大きな特徴。今回はやはり亡くなったメンバーに対して捧げられたアルバムということでより哀愁感が強くなっているように感じます。ただ一方で爽快さを感じるナンバーも目立ち、単に悲しむばかりではなくしっかり前を向いているようにも感じられるアルバムでした。

評価:★★★★★

Orchestra Baobab 過去の作品
LA BELLE EPOQUE VOLUME2(ラ・ベル・エポック 第2集)

Memories...Do Not Open/The Chainsmokers

シングル「Closer」が大ヒットを記録して一躍注目を集めたアメリカのEDMのDJによるデゥオ。EDMといってもリズミカルなダンスチューンはあまりなく、基本的にはゆっくりポップに聴かせるエレクトロポップがメイン。ポップなメロディーは万人受けしそうで、確かに売れそうなユニットだな、という印象を受けます。ただこれといった特色も少ないためにこの人気がどこまで持続できるのか、ちょっと気になるところ。

評価:★★★★

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