アルバムレビュー(洋楽)2017年

2017年5月26日 (金)

2017年を象徴する1枚

Title:DAMN.
Musician:Kendrick Lamar

今、最もアメリカで高い人気と話題を誇るラッパー、Kendrick Lamar。アルバムをリリースするたびにアメリカのみならず世界中で大きな話題となり、かついずれもアルバムも高い評価を受けているのですが先月、突然ニューアルバムのリリースを発表。そこからわずか1週間でリリースされたアルバムが本作です。チャート的にもビルボードチャートでは初動売上60万3千枚という今年1番という驚異的な売上を記録。3週目にしてミリオンセールスを達成するなど相変わらず怒涛の勢いを続けています。

彼は毎回、アルバムの中でアメリカの現代社会が抱える問題点や矛盾を鋭く描写し、それが賛否両論含めて大きな話題となっています。そのため彼の楽曲の何が話題になるかと言えばやはりそのリリック。ただ残念ながら突然リリースされたということもあってか、対訳付きの国内盤リリースは今年の7月を予定とかなり先になっています。ここらへん、確かに彼の書くリリックはアメリカ社会、それも黒人社会を反映しているため日本人にとっては複雑でわかりにくい部分も多いのでしょうが、これだけ話題になっているアルバムなだけにリリースから3ヶ月もインターバルが出来てしまうのは非常に残念に感じます。

以前のDrakeのアルバムでも参考にしたのですが、今回も「RO69」のサイトで音楽評論家の高見展氏により1曲毎に彼が何を綴っているのか解説したページがあったので今回もそれを参考にしつつアルバムを聴きすすめました。英語が出来ない私にとっては非常に参考になります。

【完全解読】ケンドリック・ラマー『DAMN.』は、これを読みながら聴け(前編)
【完全解読】ケンドリック・ラマー『DAMN.』は、これを読みながら聴け(後編)

このサイトを参考にすると本作でもこのアルバムで綴られているのはアメリカ社会が抱える問題点。それも単純な白人vs黒人みたいな手法ではなく、アメリカ社会の問題点を自分たちの内面で抱えている問題ではないかと問いかけています。この単純に「社会の責任」としないような手法は前作でも見られましたが、ここらへんの考察が賛否を産むとともに大きな評価を得る要因ではないでしょうか。

このリリックが直接的には理解できないのは非常に残念なのですが、本作が日本人にとっても十分楽しめるアルバムである点は間違いありません。例えば前作に収録されていた「Aright」に対する批判報道に対する反論として話題となった「DNA.」はまさにその強いメッセージ性を反映するかのような力強いラップが耳を惹きます。

今回の作品は、ソウルやファンク、ジャズ寄りの嗜好が強かった「To Pimp A Butterfly」や「untitled unmastered.」に比べてアーバン・ヒップホップ寄りに戻った作品となっていますが、それでもやはりジャジーでメロウなトラックやファンキーなサウンドが大きな魅力に。前作にも参加し、先日も傑作アルバムをリリースしたばかりのThundercatが参加した「FEEL.」はグルーヴィーなベースラインが非常に心地よいサウンドを醸し出していますし、RIHANNAが参加した「LOYALTY.」もスローファンクなナンバーがとても気持ちの良いグルーヴ感を作り出しています。

また「XXX.」ではあのU2が参加して話題も。ただテンポよいエレクトロトラックのどこにU2が?と思いつつ、最後にオチのように顔を出してくるという構成がユニーク。ほかも全体的に音を絞ったシンプルなトラックでメロウでグルーヴィーに聴かせるサウンドが非常に魅力的。聴いていてうっとり来るようなトラックだけでも十分聴ける傑作となっていました。

7月にリリースされる国内盤も対訳がついてくるだけに非常に気になるのですが・・・とりあえず今の段階でも十二分に今年を代表するアルバムと言える作品だと思います。トランプが大統領に就任した2017年という年を象徴するようなアルバムです。

評価:★★★★★

Kendrick Lamar 過去の作品
Good Kid M.a.a.D City
To Pimp A Butterfly
untitled unmastered.


ほかに聴いたアルバム

Sometimes I Sit & Think & Sometimes I Just Sit/Courtney Barnett

本作は先日聴いたグラミー賞ノミネート作品を集めたオムニバスアルバム「2016 Grammy Nominees」ではじめて知ったオーストラリアの女性シンガーによるアルバム。グラミー賞最優秀新人賞にノミネートされた彼女ですが、80年代から90年代のオルタナ系インディーギターロックを彷彿とさせる粗いギターサウンドが特徴的。イメージで言えばPIXIESやSONIC YOUTHを一人で演っているような感じ。そんな粗いギターロックに対してメロディーラインは至ってポップ。個人的には完全に壺にはまりました。本作は2015年リリース作なのでちょっと前のアルバムということなのですが・・・そろそろ次のアルバムがリリースされないかな。これからが非常に楽しくなってくるミュージシャンです。

評価:★★★★★

automaton/Jamiroquai

多分アラフォー世代にとってはその名前だけで懐かしさを覚えるイギリスのロックバンドJamiroquaiの7年ぶりとなる最新作。オリコンチャートではきちんとベスト10入りを記録し根強い人気を感じさせます。楽曲的にはJamiroquai風のダンスポップを今時なエレクトロサウンドにきちんとアップデートしてきた作品に。目新しさみたいなものは感じませんが、一方できちんと現役感は伝わってくる作品になっており、まだまだ第一線で活躍を続けるバンドなんだということがヒシヒシと伝わってくるアルバムになっています。

評価:★★★★

Jamiroquai 過去の作品
Rock Dust Light Star

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2017年5月22日 (月)

ハイペースでの3枚目

Title:Arca
Musician:Arca

Kanye West、FKA Twigs、さらにはBjorkのアルバムへプロデューサーとして参加するなど、数々の大物ミュージシャンとのコラボで話題となったベネズエラ出身のトラックメイカーArcaの約1年5ヶ月ぶりとなるアルバム。オリジナルアルバムのインターバルが1年5ヶ月というのは比較的短めのスパンなのですが、その前のアルバム「Xen」から前作「Mutant」の間もわずか1年弱というインターバルでのリリース。さらにはその間に無料ダウンロードで「Sheep」をリリースしており、そのハイペースなリリースぶりが目立ちます。

今回のアルバムは1曲目「Piel」ではいきなり人の声からスタートします。ハイトーンボイスで静かに歌い上げつつ、そのバックに静かだけども無機質なエレクトロサウンドが鳴る展開。さらに2曲目「Anoche」も静かなエレクトロサウンドの響きの中で静かに歌い上げるハイトーンボイスの悲しげな歌声が響きます。1、2曲も幻想的な曲調の中、徐々にスケール感が増していくのですが、3曲目「Saunter」はダイナミックなエレクトロサウンドの中、静かな歌声が響く荘厳さを感じるナンバー。教会音楽にも通じるような荘厳な響きをエレクトロサウンドで再現した聴かせるナンバーが続きます。

この音数を絞ることにより空間を聴かせ、結果重厚感を醸し出しているサウンドにハイトーンボイスの歌声がのるというスタイル。その後も「Reverie」「Coraje」と続き、このアルバムの中で示されたひとつの方向性となっています。彼の奏でる無機質で散発的なエレクトロサウンドの響きは決して聴きやすいものではなく、実験的と感じられるものなのですが、今回は重厚な歌が重なることによりアルバム全体として非常に聴きやすい楽曲が並んでいました。

特に後半、「Desafio」などはメロディーラインにもインパクトがありポップとすら感じられる楽曲になっていますし、続く「Fugaces」も重厚なエレクトロサウンドの中で歌われる歌は、どこか物悲しく、しんみり心に響くようなポップソングに仕上がっています。楽曲はいずれもどこか底知れない不気味さを同時に感じさせる部分はありつつも、ポップという印象を受けるアルバムでした。

もっともポップで意外と聴きやすいという印象はいままでのアルバムでも感じられました。今回のアルバムに関しては、「歌」の部分を押し出すことによりそのポピュラリティーがより強まったように感じます。また1曲あたり3、4分という、1曲をだれずに聴くにはちょうどよい長さなのは本作も同様。今回はさらに全13曲43分という短さにおさめており、前作のように最後の方はだれてしまった・・・ということもありませんでした。Arcaらしい強い癖はそのままにいい意味で聴きやすく仕上がっているアルバムだったと思います。その勢いはまだまだ続きそうです。

評価:★★★★★

Arca 過去の作品
Xen
Sheep(Hood By Air FW15)
Mutant


ほかに聴いたアルバム

ArtScience/Robert Glasper Experiment

新世代のジャズミュージシャンとして高い注目を集めているピアニスト、Robert Glasperの最新作。ジャズピアニストといっても、ジャズをベースにAOR、サイケロック、フリージャズ、HIP HOP、R&Bなどの多彩なジャンルを自由自在に取り入れ、なおかつポップにまとめあげている作品になっています。自由度が増した反面、良い意味でよりポップに聴きやすくなった印象も。

評価:★★★★★

Robert Glasper 過去の作品
Black Radio
Black Radio 2(Robert Glasper Experiment)

Paradise/ANOHNI

昨年リリースされた「Hopelessness」が大きな話題となった、Antony&the Johnsonsとして活動していたAntony Hegartyの新名義、ANOHNI。「Hopelessness」に続く新作は6曲入りのEP盤。ダイナミックで破壊的なサウンドを聴かせるエレクトロサウンドを主軸に据えつつ、そこに美しい彼女のボーカルがのるというスタイルは「Hopelessness」と同様。非常にスケール感も覚えるアルバムで、力強さを感じさせるアルバムでした。

評価:★★★★★

ANTONY AND THE JOHNSONS(ANOHNI) 過去の作品
The Crying Light
SWANLIGHT
CUT THE WORLD

Hopelessness

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2017年5月12日 (金)

兄弟バンド、復活

Title:Damage&Joy
Musician:The Jesus And Mary Chain

イギリスのロックバンドで「兄弟」といえば、おそらく今は誰もがまずoasisのノエル・ギャラガー、リアム・ギャラガーのギャラガー兄弟を思い浮かぶでしょう。ただ、そのギャラガー兄弟より先にイギリスのロック界を席巻した兄弟がもう一組いました。それがThe Jesus And Mary Chainのジム・リード、ウィリアム・リード兄弟。所属レーベルもoasisと同じクリエイション。最後は兄弟喧嘩をしてバンド解散、という流れもoasisと一緒です。

彼らが1984年にリリースしたデビューシングル「Upside Down」は強烈なフィードバックノイズが流れる暴力的なサウンドが耳をつんざくナンバー。このシングルが他のバンドにも大きな影響を与え、その後のシューゲイザーの走りとも言われています。凶暴的なフィードバックノイズを流しながらもメロディーはキュートともいえるポップスさを出している点も後のシューゲイザー系と同様。その影響力は海を渡り、シューゲイザー系ではありませんがかのPixiesも彼らの楽曲「Head On」をカバーしています。イギリス、アメリカのオルタナ系のロックバンドに多大な影響を与えたバンドです。

そんな彼らが兄弟喧嘩の末に解散したのが1998年。しかしその後兄弟の仲は回復したようで、2007年には再結成を果たしました。ただその後もライブ活動などは続けるものの新作リリースはなく約10年。今年ようやく待望となる約19年ぶりとなるニューアルバムがリリースされました。

今回のアルバムタイトル「DAMEGE&JOY」。意味は「他人の不幸を喜ぶ」という意味だそうで、ネットスラングでいえば「メシウマ」(笑)。こういう皮肉的なタイトルをつけるのも彼ららしい感じです。

そんな19年、待ちに待った(・・・といっても19年前のアルバムはリアルタイムで聴いていないのですが(^^;;)新作は、最初はギターアンプのつまみをまわしてスイッチをオンにするような音からスタート。否応なしに期待が高まる粋な出だしに。その後は待ちに待ったといった感じでノイジーなギターサウンドが登場。さらには彼ららしいポップなメロディーが流れ、これぞジザメリといった感じの「AMPUTATION」からスタートします。

アルバムはほどよく心地よいフィードバックノイズに「キュート」ともとれるメロディアスでポップな楽曲が並んでいます。「ALL THINGS PASS」も疾走感あるポップなメロが非常に心地よいナンバーですし、続く「ALWAYS SAD」「SONG FOR A SECRET」はゲストに女性ボーカリストのベルナデット・デニングが参加。楽曲の爽快さ、キュートさがさらに強調されています。

その後もへヴィーなギターサウンドでガレージ色を増した「FACING UP TO THE FACTS」やシンセを入れてちょっとサイケ風になった「SIMIAN SPLIT」といった曲もありますが基本的にはポップなメロディーにノイジーなギターというジザメリというバンドを象徴するような楽曲が並びます。

「THE TWO OF US」「PRESIDICI(ET CHAPAQUIDITCH)」「BLACK AND BLUES」などバンドサウンド以上にポップなメロディーラインが耳を惹くような曲も並んでおりリード兄弟のメロディーメイカーとしての才を感じますし、ちょっとけだるさもあるメロディーがノイジーなギターサウンドにもピッタリ。決して目新しいことをやっている訳でもないのですが、最初から最後まで全くだれることなく楽しめることが出来るアルバムでした。

19年ぶりの復帰作としてはファンにとってもうれしさを感じる、いい意味で安心して聴ける傑作アルバムだったと思います。さあリード兄弟が仲直りしてアルバムを出した今、次はギャラガー兄弟の仲直りか??(笑)

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

÷/Ed Sheeran

日本でも大きな話題となったイギリスのシンガーソングライターによる最新作。おそらく今、世界的に最も勢いのあるシンガーのひとりだと思います。ラップを入れたりトライバルなサウンドを入れたり、かと思えばトラッド風なギターがあったりAORなナンバーがあったりと多種多様なサウンドを取り入れ、かつそんな楽曲を貫くポップでメロディアスなメロディーラインが魅力的。いい意味で器用さを感じるミュージシャンで、良質なポップソングはいかにも売れそうだなぁ・・・といった感じ。話題性の高さも納得の最新作です。

評価:★★★★

Ed Sheeran 過去の作品
+

Elektrac/Shobaleader One

SQUAREPUSHER率いる謎の覆面バンドによるデビューアルバム。エレクトロサウンドをベースにしつつ、SQUAREPUSHERらしい複雑なリズムを奏でるドラムをはじめとしたバンドサウンドも聴かせます。ファンクやAOR、ジャズなどの要素も加えつつ、技巧的なプレイもふくめてフュージョン色が強いのも特徴的。いかにもSQUAREPUSHERがはじめそうなバンドというイメージを強く感じました。そういう意味ではSQUAREPUSHERのファンなら素直に楽しめるかも。

評価:★★★★

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2017年5月 7日 (日)

「アルバム」ではなく「プレイリスト」

Title:More Life
Musician:Drake

3月18日に突然リリースされたDrakeの新作。最近ではさほど珍しくなくなったのですが、事前の告知などほとんどなく、ダウンロードでの突然のリリース。最近、多いですね。あまりに突然のリリースだったため本当にあのDrakeの新作なのか訝しく感じてしまったくらいです(^^;;

今回の彼の新作、ユニークだったのがこの作品を彼が「アルバム」ではなく「プレイリスト」と呼んでいる点でした。「プレイリスト」とは昨今の音楽のスクリーミングサービスなどで見られる、ある一定のテーマに沿って様々な楽曲を選曲しならべたリストのこと。本作は内容的にはもちろん事実上、「アルバム」なのですがあえて「プレイリスト」という呼称を使っています。

本作を「プレイリスト」とあえて呼ぶのは様々なミュージシャンがゲストとして参加しており、Drakeが彼らを紹介するというスタンスだからということのよう。Drakeの新作なのは間違いありませんが、Drakeとしては半歩下がった立ち位置からこの「プレイリスト」に臨んだ感じなのでしょうか。

そのこともあって今回の作品は全体的にはちょっとバラバラ。様々な作風の曲が並んでいるような印象を受けました。ラテン調の「Madiba Riddim」にハウスを取りいれた「Get It Together」、メロウなR&Bの歌モノ的な要素も強い「Teenage Fever」などなど、全22曲1時間20分にも及ぶ内容に統一感はさほどなく、ある意味コンセプチュアルな「アルバム」ではなくあくまでも「プレイリスト」であることを感じます。

さて今回のアルバムを聴くにあたって参考にしたWebページがありました。それがRockin'OnのポータルサイトRO69に掲載された下記のコラムです。

【完全解読】ドレイク『More Life』は、これを読みながら聴け(前編)
【完全解読】ドレイク『More Life』は、これを読みながら聴け(後編)

主にブラックミュージックの解説などを中心に活動している音楽ライターの高見展氏によるコラム。1曲ごとにその内容を解説しています。この手のダウンロード先行の洋楽、特に情報量の多いHIP HOPは、国内盤の解説もありませんし、この手の解説は非常にありがたく感じます。

このコラムの記載で興味深かったのは今回の作品でDrakeは多くイギリス的な言葉の言い回しを用いるという指摘でした。今回の作品の中で彼はイギリス的な言い回しを多く使うことにより、あえて「アンチ・アメリカ」的なスタンスを明確にしているそうです。これは普通に聴いているだけではなかなか日本人には気が付かない点ですね。日本に例えれば、あえて地方の方言でラップをやって、アンチ東京を意図した作品を作るような感覚なのでしょうか。なかなか興味深く感じます。

作品全般としてはバラバラですが、1曲1曲については様々なバリエーションある作風を取り入れつつ、インパクトも強く、よく作り込まれた名曲揃い。バラバラで次にどんな曲が来るのかわからないからこそ、逆に1時間20分の内容もダレることなく楽しむことが出来ました。この「プレイリスト」、また文句なしのビルボードチャート1位を獲得した模様。Drakeの活躍はまだまだ続きそうです。

評価:★★★★★

DRAKE 過去の作品
Thank Me Later
TAKE CARE
Nothing Was The Same
If You're Reading This It's Too Late
VIEWS


ほかに聴いたアルバム

Wonderful Crazy Night/Elton John

約3年ぶりとなるElton Johnのニューアルバム。ピアノを入れたポップソングは大好きなのですが、個人的にはエルトンよりもBilly Joel派。ただこの曲もピアノを中心としたとても楽しい軽快なポップソングの連続で、個人的に壺にはまりまくり。明るいポップスかと思いきや、微妙に影のあるメロディーラインも魅力的。既に70歳を超えた御大ですが、その才能は全く枯渇していない模様。

評価:★★★★★

Elton John 過去の作品
The Union(Elton John&Leon Russell)

Got Soul/Robert Randolph&The Family Band

スティール・ギターの名手、ロバート・ランドルフ率いるファンク・バンドによる新作。途中、ソウル色の強い曲やハワイアンな楽曲、カントリー風の曲まであったりするのですが基本的にはファンキーなサウンドが実に心地よい13曲が並んでいます。決して目新しさはないのですがルーツ志向の楽曲にほどよくバリエーションを加えて心地よく楽しめるアルバムです。

評価:★★★★

Robert Randolph&The Family Band 過去の作品
WE WALK THIS ROAD

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2017年4月18日 (火)

失恋を乗り越えて(?)

Title:Dirty Projectors
Musician:Dirty Projectors

バンド名を冠したタイトルが否応なしに内容への期待が高まるDirty Projectorsの約5年ぶりとなるニューアルバム。前作「SWING LO MAGELLAN」は2012年を代表する傑作アルバムとして高い評価を得ましたが、バンドの中心メンバーであるDavid Longstrethがアルバム後のツアー直後に失恋を経験。そのショックから立ち直れず音楽活動を中断していましたが、その後徐々に様々なミュージシャンへのゲスト参加により活動を再開。ついに久々となるニューアルバムがリリースされました。

その間、バンドメンバーが脱退し、事実上、DavidのソロプロジェクトとなったDirty Projectors。そのため今回のアルバムに関してはバンド色はほとんどなく、エレクトロサウンドを前面に押し出されたアルバムとなっています。もともと前作からポストロック色の色合いが濃かった彼らですが、今回のアルバムに関しても1曲の中に様々な音、アイディアが詰め込まれた作品になっています。特に今回、その軸を担ったのが元BATTLESのTyondai Braxton。ノイジーなエレクトロビートがダイナミックに展開する中、ピアノとストリングスが絶妙に重なる「Death Spiral」などでは特に印象的な仕事ぶりを聴かせてくれます。

今回の作品では事実上のソロとなった影響か豪華なゲスト勢が大きな特徴となっています。「Cool Your Heart」では女性ボーカリストDawn Richardがゲストボーカルとして参加。伸びやかでちょっとトライバルな雰囲気を残しつつ伸びやかでメロウな歌声を聴かせてくれますし、この曲に関してはなんと作詞ではあのSolangeが参加していたります。

また今回のアルバムで一番印象的だったのがパーカッションのリズム。ブラジル出身のパーカッショニストMauro Refoscoがゲストとして参加していますが、「Keep Your Name」「Up In Hudson」では非常に印象的なパーカッションを聴かせてくれます。エレクトロサウンドで無機質なサウンドが多い中、楽曲に暖かみを加えています。

今回のアルバムに関しては、前作に比べてR&Bの色合いが強くなった点も特徴的。David Longstrethのボーカルに憂いを感じられるのも特徴的。特にDavid Longstrethのボーカルにはまだ失恋を引きずっているのか・・・という情けなさを感じると同時に同じ男性としてはその気持ちに同情できるものを感じてしまいます。

ただし、実験的なエレクトロサウンドを奏でつつも基本的にメロディーラインは非常にメロディアスで胸をうつものがあります。特に「Work Together」は様々なサウンドがコラージュ的に組み合わさったような作品でありつつ、メロディーにはとてもポップ。他の曲に関してもしっかりとしたメロディアスなメロディーラインが流れています。

このサウンドは複雑ながらもメロディーはポップというバランスは前作「SWING LO MAGELLAN」から同様。R&B風という方向性も前作からも感じることが出来、そういう意味では根本的な部分においては前作からしっかりと貫かれているものがある作品だったと思います。前作に続きまたもや今年を代表する傑作の1枚となりそうな作品。前作同様、その美しいメロディーラインに惹きつけられたアルバムでした。

評価:★★★★★

Dirty Projectors 過去の作品
SWING LO MAGELLAN


ほかに聴いたアルバム

2016 Grammy Nominees

毎年リリースされるアメリカ・グラミー賞のノミネート作品を収録したオムニバスアルバム。今のアメリカの、ひいては世界のミュージックシーンの動向を知るには最適なアルバム。2016年のノミネート作ではThe Weeknd、Alabama Shakes、Kendrick Lamar、D'Angelo&The Vanguardなどブラックミュージックで実に魅力的な作品が多くリリースされており、その層の厚さ、新たなシーンの予感も感じさせます。一方、個人的に非常に惹かれたのがCourtney Barnettの「Pedestrian At Best」。完全に初耳だったのですが、PIXIESやDINOSAUR JR.の、それも80年代あたりの荒々しさとポップスさを同居させたようなオルタナ系ギターロックが実に魅力的な女性ロックシンガーの楽曲。遅ればせながらはまりました。これはアルバムも聴いてみなくては・・・。全体的にも名曲が多く、シーン全体に勢いを感じさせる2016年のノミネートでした。

評価:★★★★★

Grammy Nominees 過去の作品
2011 GRAMMY NOMINEES
2012 GRAMMY NOMINEES
2013 GRAMMY NOMINEES
2014 GRAMMY NOMINEES
2015 GRAMMY NOMINEES

The Painters EP/Animal Collective

配信限定で急きょリリースされた4曲入りのEP盤。昨年リリースされた「Painting With」と同時期に録音された3曲とMartha & the Vandellasの「Jimmy Mack」のカバーの全4曲を収録したアルバム。前半2曲「Kinda Bonkers」「Peacemaker」はタブラやシタールっぽいサウンドを取り入れたエキゾチックなサウンドが非常にユニーク。一方後半の「Goalkeeper」「Jimmy Mack」はコミカルなサウンドが魅力的でした。

どこかコミカルなサウンドという意味では「Painting With」に通じる今回のアルバム。その「Painting With」はコミカルな楽しさはあったものの聴いていて疲れてしまったアルバムでしたが今回の作品はわずか4曲ということもあって疲れる前に終わってしまうアルバム。それだけに「Painting With」の良い部分のみを抽出したEPになっていました。わずか4曲ですが、彼らのアイディアのつまった個性的な楽曲が並んだ傑作です。

評価:★★★★★

Animal Collective 過去の作品
Merriweather Post Pavilion
CENTIPEDE HZ
Painting With

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2017年4月17日 (月)

ジャケット写真からは想像できない内容に

Title:Drunk
Musician:Thundercat

今回紹介するアルバムはThundercatことアメリカのベーシスト、Stephen Brunerのアルバム。今、最も話題のベーシストのひとりで、Flying LotusやKendrick Lamarといった今を輝くミュージシャンたちのアルバムにも参加。大きな評判となっています。

このアルバム、まず惹かれるのはこのジャケット。カッコいいかどうかと言われると微妙なのですが、60年代や70年代のレアグルーヴのアルバムを彷彿とさせるような「黒さ」を感じさせるジャケット。正直、今回本作を聴いたきっかけがこのジャケット。話題のベーシストのアルバムということで真っ黒いグルーヴ感あふれる作品を期待して聴いてみました。

しかし、これが全く予想外の方向性のアルバム。オープニングのナンバーに続いて聴こえてくるのは透き通るハイトーンボイスに80年代風のサウンドを感じるメロウなエレピが魅力的な「Captain Stupido」。続く「Uh Uh」もハイテンポでファンキーなベースがさく裂していますが、そこにのっかかるボーカルはハイトーンボイスでフィリーな雰囲気すら感じらせるもの。続く「Bus In These Streets」もおもちゃ箱のような楽しげなエレクトロサウンドがワクワクさせてくれるポップチューンになっています。

全体的には80年代あたりのAORやフィリーソウルあたりの影響を強く感じるメロディアスでポップな楽曲が魅力的なアルバム。「Show You The Way」に至ってはMichael McDonaldが参加。懐かしさを感じる思いっきり80年代のAORサウンドに仕上がっていますし、「Blackkk」も透き通るハイトーンボイスが魅力的。日本人にとっては「Tokyo」なんて曲があるのもうれしいところ。こちらもいかにも80年代あたりのFM局で流れていそうな雰囲気のAORナンバーに仕上がっています。またタイトルチューン「Drunk」のようなジャジーな要素を入れた楽曲も大きな魅力となっています。

そんな80年代なサウンドが魅力的なアルバムですが単純にノスタルジックなアルバムでもありません。もともと魅力的なプレイを聴かせるベーシストなだけにところどころにちゃんとベースの音でグルーヴ感を奏でていますし、なによりもリズムを前に押し出した楽曲の構成やエレクトロサウンドはちゃんと今風にアップデートされています。音を詰め込むよりも空間を聴かせるようなほどよいサウンドのバランスなども見事です。

また全24曲入りという内容ですが1曲あたり2、3分という長さの楽曲が次々と繰り出されるアルバムの構成もいい感じ。変に間延びしたアレンジもなく、次から次へとテンポよく楽曲が展開していくためまったく飽きがありません。ともすれば長くなりがちなブラックミュージックのアルバムの中で54分という長さも長すぎず短すぎずほどよい長さとなっています。

正直、最初ジャケット写真から予想していた内容からはかなりかけ離れたアルバムの内容でしたが、でも予想以上の傑作アルバムになっていました。とにかくメロディーやサウンドが聴いていて心地よさを感じさせる楽曲の連続。間違いなく今年のベスト盤候補の傑作アルバム。ジャケットに逆にひいてしまったような方も、是非ともチェックしてほしいアルバムです。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

HYMS/Bloc Party

メンバー2人が入れ替わりあらたなメンバーとなった新生Bloc Partyの4年ぶりとなる新作。エレクトロサウンド主体なのですが、ロック寄りの曲だったり渋く聴かせる曲があったりバレエティー富んだというと響きがいいのですが、全体的にどうもチグハグさを感じる1枚。楽曲的にインパクトが強いキラーチューンがなかったのも大きなマイナス要素。前作も正直ちょっと微妙な出来でしたが、今回のアルバムもちょっと微妙な出来・・・。

評価:★★★

BLOC PARTY 過去の作品
Intimacy
FOUR

Live In Sweden 1987/Johnny Winter with Dr.John

2014年に惜しまれつつこの世を去ったJohnny Winter。本作はタイトル通り1987年に行われたスウェーデンでのライブの模様をおさめたライブ盤。いまだ若々しい彼の迫力あるギターサウンドが思う存分楽しめるアルバム。「with Dr.John」という名義通り、Dr.Johnがピアノで参加しているものの彼はバックに徹しており、Dr.John目当てだとちょっと期待はずれかも。ただ所々Dr.Johnの個性が光るピアノプレイが入って来たりするのがおもしろいところなのですが。

評価:★★★★

Johnny Winter 過去の作品
Step Back

Dr.John 過去の作品
Locked Down
Ska-Dat-De-Dat:Spirit of Satch

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2017年4月16日 (日)

本作でもまた故郷を離れて

Title:ELWAN
Musician:TINARIWEN

「砂漠のブルース」と呼ばれ、ワールドミュージックリスナーに留まらない範疇で注目を集めているマリ出身のバンドTINARIWEN。途中、ライブ盤のリリースもありましたがオリジナルアルバムとしては3年ぶりとなるニューアルバムです。前作「EMMAAR」では政治的な理由から故国マリを離れアメリカでのレコーディングとなりましたが(やはり「残念ながら」という言い方になるのでしょうか)前作に続いてアメリカでレコーディングされたアルバムとなりました。

ただアメリカ録音によるためか多くのゲスト陣が参加しているのが本作の特徴。以前、当サイトでもアルバムを紹介したことがあるKurt Vileがギターで参加しているほか、QUEENS OF THE STONE AGEのMark Kaneganのボーカルで参加。その他、Matt SweeneyやAlan Johannesといったゲストミュージシャンが名前を連ねています。

Kurt Vileが参加した「TIWAYYEN」では彼らしいオルタナ色の強いノイジーなギターが目立ちます。それに引っ張られてか、2曲目「SASTANAQQAM」も同じくオルタナ色の強いギターが耳を惹く楽曲になっています。ただ、このゲスト勢がアルバムに対して強い影響を与えているかというとそういった感じではなく、逆にKurt Vileがギターで、さらにMark Laneganがボーカルで参加した「NANNUFLAY」はTINARIWENらしい荘厳な雰囲気とスケール感を覚えるコール&レスポンスのナンバー。確かにMark Laneganのボーカルも目立ちますが、TINARIWENの楽曲の中に参加させてもらっているという印象を強く受けます。

そのためアルバム全体としてはいつものTINARIWENといった印象を受ける本作。もっともそれはマンネリという意味ではなく、相変わらず彼ららしいブルージーなギターサウンドと独特なリズムとコール&レスポンスが織りなすグルーヴ感が実に魅力的な楽曲が並んでいます。特に「IMIDIWAN N-AKALL-IN」などは彼らの魅力ともいえるギターサウンドがうねるように楽曲全体を展開していき、それにパーカッションの音が重なり、彼ららしいグルーヴ感が実に魅力的なナンバー。軽快なパーカッションとアコギでラテン風味たっぷりの「ASSAWT」も哀愁感あふれるメロディーが耳に残ります。

そんな中、前作に引き続きマリを離れてのレコーディングとなった本作。その影響か前作に引き続き強いメッセージ性を持った歌詞が目立ちます。特に「ITTUS」は静かなギターとボーカルだけでメッセージを力強く聴かせるナンバー。歌詞の内容は「我が国の団結と高い生活水準」を求めるメッセージのようで、ストレートながら切実な思いが胸をうちます。

また「テネレの成れの果て」という邦題がついた「TENERE TAQQAL」も故郷の惨状を嘆いた歌詞が続かれており強いメッセージ性を感じます。ちなみに「テネレ」とはタマシェク語で「何もない地」もしくは「砂漠」を意味するそうで、この複数形が彼らのバンド名であるTINARIWENだそうです。

これらの歌詞は残念ながら私たちにダイレクトに伝わってはきませんが、それでもその力強いボーカルと演奏からは彼らの伝えようとする想いは伝わってくるよう。彼らの強いメッセージが込められた1枚でした。

評価:★★★★★

TINARIWEN 過去の作品
IMIDIWAN:COMPANIONS
TASSILI
EMMAAR
Live in Paris(不屈の魂~ライヴ・イン・パリ)


ほかに聴いたアルバム

night thoughts/Suede

90年代初頭に絶大な人気を得て、かのブリットポップムーブメントの先駆け的な存在となったイギリスのロックバンドSuede。2003年に解散したものの2010年に再結成。本作は再結成後2作目となるアルバムとなります。

基本的にはミディアムテンポのギターロックがメイン。幻想的で耽美的な雰囲気を堪能できるアルバムで、良くも悪くもSuedeらしさは今も健在となっています。イギリスのアルバムチャートでは最高位6位を記録。アメリカビルボードではなんと自身初となるベスト10ヒットを記録するなど、なにげに再結成後もその人気の健在ぶりを見せている彼ら。確かにその魅力は十分感じられるアルバムで、1度目の解散前の彼らが好きなら十分に楽しめる作品だと思います。

評価:★★★★

Let Me Get By/Tedeschi Trucks Band

ルーツ志向のブルースロックが魅力的な彼らの3年ぶりとなる新作。楽曲はいつも通りブルースやソウルなどを取り入れつつダイナミックなロックサウンドに仕上げている彼ららしい楽曲に。目新しさはないもののバンドのグルーヴ感を十分すぎるほど楽しめる作品で、良い意味で安心して聴けるアルバムになっています。

評価:★★★★

TEDESCHI TRUCKS BAND 過去の作品
Revelator
MADE UP MIND

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2017年3月21日 (火)

アンビエントがテーマの2枚組

Title:Principe del Norte
Musician:Prins Thomas

今年に入ってから2016年に話題となったアルバムの中で聴き逃したアルバムをいまさらながらいろいろと聴いているわけですが、おそらくそんなアルバムもこれが最後。ノルウェーのDJ/プロデューサー、Prins Thomasがリリースした2枚組のニューアルバム。ミュージックマガジン誌の「ハウス/テクノ/ブレイクビーツ」部門で2016年度の1位を獲得したアルバムです。

Prins Thomasというプロデューサーの名前は今回初耳。いろいろと調べていく中で「コズミック・ディスコ・プロデューサー」という肩書に出会ったのですが、この「コズミック・ディスコ」というジャンル、調べてみてもどんな感じのジャンルなのかいまひとつわからない・・・。彼の楽曲は非常にスペーシーな曲が多いので、こんな雰囲気のディスコミュージックを「コズミック・ディスコ」というのでしょうか??

今回のアルバムのコンセプトはアンビエントということで全体的に淡々としたサウンドが延々と続いていきます。楽曲のタイトルもアルファベットをAから順番に並べただけという非常にシンプルなもの。楽曲の色などをほとんど感じさせない、ある意味サウンドが並んでいるだけ、とでもいうようなアルバムになっています。

ただ2枚組となる本作ですが、あきらかに1枚目と2枚目とではその方向性が異なります。1枚目はスペーシーなサウンドに淡々としたミニマルテイストのメロディーが続いていく感じ。アンビエントらしく抑えめのサウンドを延々と聴かせる構成になっておりメロディーラインが意外とポップで耳なじみやすいのが印象的でした。また楽曲は1曲あたり6分から長い曲で14分弱。その中でミニマル的に淡々とサウンドが続いていくわけですが、所々でサイケデリックなサウンドが加わったり、ドリーミーな雰囲気となったりと徐々に変わっていくサウンドがまたユニークにも感じました。

一方2枚目に関してはテンポのよいリズムが前面に出てきている構成に。こちらも抑えめなサウンドで高揚感はないとはいえ、例えば四つ打ちのリズムでトランシーなリズムを楽しめる「G」などはフロアで流れれば十分踊れるだけのダンサナブルな楽曲に。「E」などもファンキーなリズムを楽しめ、軽快でリズミカルなサウンドが楽しめる楽曲になっています。

アンビエントというテーマらしく淡々としているという印象はあるのですが、1曲の中で楽曲が徐々に変化して様々な構成を楽しむことが出来、そして意外とポップなメロディーが根底に流れていることもあり、2枚組95分程度というボリュームのアルバムながらも全く飽きることなく楽しむことが出来る内容でした。年間1位という感じなのかどうかはちょっとよくわからないのですが・・・テクノ/ハウス界隈が好きなら文句なしに要チェックのアルバムです。

評価:★★★★★

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2017年3月19日 (日)

メロディーもはっきりと流れるものの

Title:Oczy Mlody
Title:The Flaming Lips

ここ最近、ビートルズのカバーアルバム「With a Little Help From My Fwends」をリリースしたり、ピンクフロイドのカバーアルバムをリリースしたりと積極的な活動が目立ったためちょっと意外な感じもするのですがオリジナルアルバムとしては4年ぶりとなるThe Flaming Lipsのニューアルバム。「Oczy Mldoy」(=オクシィ・ムロディ)というタイトルは非常に奇妙な印象を与え、インパクトあるタイトルとなっているのですがこれはポーランド語で「eyes of the young」という意味だそうです。なんか語感から受ける印象とかなり異なる感じがしますね。

事前にこのアルバムのレビューなどを見ると、メロディーが際立ったアルバム、といった評価が多かったため、個人的には最初、かなりポップな作風を想像していました。そういうイメージを持ったうえでこのアルバムを聴くと、最初はかなり戸惑うかもしれません。イントロ的な役割を果たすタイトル曲「Oczy Mlody」は確かに美しいメロディーラインは流れているものの、かなりサイケなノイズが前に出たような作品。続く「How??」もとてもスペーシーなサウンドが前に出ている作品になっています。

確かにそのメロディーラインが比較的はっきりあらわれており、ポップなメロが確実に流れているアルバムだとは思います。特に終盤、「The Castle」から「Almost Home(Blisko Domu)」「We a Famly」と続く3曲は憂いを帯びたようなメロディーラインが印象に残る作品。そのメロディーセンスがはっきりとあらわれた作風になっています。

ただそれらの曲を含めてアルバム全体としてかなりへヴィーなノイズが流れたサイケデリックで、かつスペーシーな作品に仕上がっています。重厚感あるサウンドが特徴的な「Sunrise(Eyes of the Young)」やダークなエレクトロサウンドが楽曲の根底で流れつづける「One Night While Hunting for Faeries and Witches and Wizards to Kill」、哀愁感を帯びたダークでドリーミーなサウンドが流れる「Listening to the Frogs with Demon Eyes」など、楽曲毎にパターンを変えながらもノイジーなサウンドが流れ続ける作品が続きます。

アルバムとして「歌」としての美しさは楽しめるものの、やはり全体のバランスとしてはサイケ、ノイズの部分が強く出たアルバムのように思います。もちろんThe Flaming Lipsらしいキュートなポップが楽しめるアルバムではあるのですが・・・個人的にはそのサイケデリックな音の洪水に最後の方はちょっと疲れてしまったというのが正直な感想。良作だとは思うのですが、好き嫌いはわかれそうな作品といった感じでしょうか。

評価:★★★★

THE FLAMING LIPS 過去の作品
EMBRYONIC
The Dark Side Of The Moon
THE FLAMING LIPS AND HEADY FWENDS(ザ・フレーミング・リップスと愉快な仲間たち)
THE TERROR
With a Little Help From My Fwends

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2017年3月11日 (土)

約40年ぶり(!)にスタックスからリリース

Title:This Is Where I Live
Musician:William Bell

もう3月になりましたが・・・今回紹介するアルバムも2016年に評判の高かったアルバムでリアルタイムに聴き逃したアルバムをいまさらながら聴いてみた1枚。本作は「Blues&Soul Records」の2016年ベストアルバムの1枚に選ばれたWilliam Bellの新作です。

William Bellは主に70年代から80年代にかけてスタックス・レコードで人気を博したシンガーソングライター。1976年には「Tryin' To Love Two」がアメリカのR&Bチャートで1位を獲得するなど高い人気を誇りました。本作はそんな彼がスタックス・レコードから42年ぶり(!)にリリースしたということで話題となった1枚。もっともスタックス・レコード自体、1975年に倒産しており2006年に復活した、という経緯をたどっているのですが・・・。また彼自体、スタックスから離れて以降もコンスタントにアルバムはリリースしています。もっとも本作は約10年ぶりとなるオリジナルアルバムとなるようですが。

そんな話題の新作は、まさに70年代のソウルミュージックをそのまま解凍したような1枚。しんみりホーンとギターサウンドをバックに哀愁感たっぷりに歌い上げる「The Three Of Me」からスタートし、おなじく哀愁感たっぷりに歌う「The House Always Wins」もホーンやギターの音色が優しく響きます。

楽曲的にはそんなリスナーの琴線に触れるような物悲しさを感じさせるメロディーラインの曲を包容力ある力強い彼のボーカルで聴かせるナンバーが並んでいます。後半も「Walking On A Tightrope」「More Rooms」などそのメロディーや彼の歌に胸がキュッとなるような曲が続きます。タイトルチューン「This Is Where I Live」のようなアップテンポな曲もありますが、こちらもホーンセッションをバックに力強く聴かせる彼のボーカルが印象的。特に「All Your Stories」などはアコギ一本で優しく歌い上げるナンバー。その切ないメロディーラインと共に強い印象を残す楽曲になっています。

一方では「Poison In The Well」やアルバート・キングのカバー「Born Under A Bad Sign」のようなロック色の強いブルースロックナンバーも目立ち、全体的にはロックリスナーにとっても聴きやすいようなアルバムになっていたようにも感じました。

とにかくその哀愁感たっぷりのメロディーラインと、そんな楽曲を優しく歌い上げる彼のボーカルが心に響いてくるアルバム。ちなみに本作、今年のグラミー賞でベスト・アメリカーナ・アルバムを受賞しており、その評判の高さをうかがわせます。ソウルミュージック好きにはおそらくたまらない1枚だと思います。

評価:★★★★★

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