アルバムレビュー(邦楽)2017年

2017年8月20日 (日)

歌謡ファンク路線

Title:FUNK A LA MODE
Musician:及川光博

ここ最近、ほぼ毎年のようにアルバムをリリースし、全国ツアーを行っている及川光博。役者としてもコンスタントに活躍を続けており、まさに音楽に俳優に八面六臂な活動が目立ちます。

そんな中リリースされた今回のニューアルバム。「FUNK A LA MODE」というタイトル通り、全面的にファンクというジャンルを前に押し出したアルバムになっています。もともと彼自身、音楽的にかのプリンスから大きな影響を受けており、ファンクという要素はデビュー時から多く取り入れていました。そういう意味では今回、あらためて彼の音楽的な原点に立ち返ったアルバムと言えるかもしれません。

ただファンクはファンクでもバリバリブラックミュージックど真ん中のどす黒いファンクチューン、といった感じではなくあくまでもポップ。というよりも一言で言うと「歌謡ファンク」という言い方が出来るかもしれません。「愛し愛されまSHOW☆」はライブでも盛り上がりそうなホーンセッションと女性コーラスを入れたファンキーなポップチューンなのですが、続く「紅のマスカレード」はラテンフレーバーなサウンドにムーディーな歌謡曲のメロとなっていますし、「アクアリウム」「ガールフレンド」もファンキーなリズムを入れつつも、基本的に歌謡曲風なメロをしんみり聴かせるナンバーとなっています。

そういう意味では今回、カバーとして収録されているのが「sure danse」という選曲が見事。ご存じ米米CLUBによるナンバーのカバーなのですが、米米CLUBもいわば歌謡ファンクという要素を取り入れたロックバンド。音楽的に及川光博に通じる部分も強く、そういう意味ではミッチーのボーカルもピッタリはまったカバーになっています(ライブのエンタテイメント性が強いという面でも共通していますね)。

昨年に続き7曲入り(うち1曲がインスト)というミニアルバムだったため、Amazonの評価は低いようですが、ただ、だからといって忌避してしまうのはもったいないような勢いのある楽しいファンクポップが並んでいます。特に、「インスト1曲、カバー1曲なので実質5曲」という評価が見受けられますが、でもこのカバーの1曲、アルバムの中でも重要曲だと思うし、なによりも十分「ミッチーの新曲」として聴ける出来だと思うんですけどね。ここらへん、いまひとつカバーの評価が低いんですよね、日本って・・・。

そしてラスト「炎上!バーニング・ラブ」はまたミッチーらしい陽気なファンキーチューンで締めくくり。確かに実質6曲のミニアルバムなのですが、及川光博というミュージシャンの特徴がよく出ているアルバムだったと思います。個人的にはここ数作のアルバムの中では一番の出来だったように感じました。また久しぶりにミッチーのライブに行きたいな・・・そう思わせてくれたミッチーらしいエンタメ要素もあふれた傑作です。

評価:★★★★★

及川光博 過去の作品
RAINBOW-MAN
美しき僕らの世界
喝采
銀河伝説
ファンタスティック城の怪人
さらば!!青春のファンタスティックス
男心DANCIN'
20 -TWENTY-
パンチドランク・ラヴ


ほかに聴いたアルバム

実録! 港カヲル人間生活46周年コンサート~演奏・グループ魂~(東京大阪いいとこ録り) /港カヲル

タイトル通り、先日、ソロアルバムもリリースしたグループ魂の司会者兼ボーカルをつとめる港カヲル(=俳優の皆川猿時)のソロライブ。ただタイトルにも書いているように演奏はグループ魂がつとめ、楽曲もむしろグループ魂の曲がメイン。事実上、グループ魂のライブアルバムとなっています。

ただやはりライブの中心は港カヲルのようで、先日彼がリリースしたソロアルバムからの曲も何曲か披露。ソロアルバムではネタとしても聴いていてちょっと辛いものがあったカバー曲に関してもライブの中ではしっかりと「ネタ」として昇華されており、それを含めて楽しめるライブアルバムに。コント的なMCを含めてライブの楽しさが伝わるアルバムになっていました。

評価:★★★★★

港カヲル 過去の作品
俺でいいのかい~港カヲル、歌いすぎる~

10-FEET入り口の10曲/10-FEET

タイトル通り、夏フェスではじめて10-FEETを聴くような人に向けてリリースされた、10-FEETを知るための10曲を収録した配信限定の入門盤。10-FEETは以前にベスト盤をリリースしていますが、レコード会社が勝手にリリースした非公式盤だったため、公式サイトでも紹介される公式のベスト盤はこれがはじめてといった感じでしょうか。

そんな訳で、これぞ10-FEETといった感じの代表曲が10曲並んでいるアルバム。10曲40分弱という長さも入門盤としてはちょうどよい長さといった感じ。アップテンポでメロディアスなパンクロックの連続。良くも悪くもフェスで人気のメロコアバンドらしい感じだな、といったバンドなのですが、フェスでは多くのリスナーを惹きつけて盛り上がりそう。夏フェスの予習としては最適な選曲でした。

評価:★★★★

10-FEET 過去の作品
VANDALIZE
Life is sweet
thread
Re:6-feat
6-feat 2

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2017年8月19日 (土)

勘違いしていました(^^;;

Title:FEARLESS
Musician:ビッケブランカ

すいません、私、ビッケブランカというミュージシャンについては以前から知っていたのですが、ずっと韓流の男性アイドルと勘違いしていました(^^;;名前もいかにもですし、ルックスも韓流のアイドル顔。列記とした日本人(それも地元愛知県出身(!))の男性シンガーソングライターだったんですね。だから・・・というよりも影響を受けたミュージシャンとしてエルトン・ジョンやビリー・ジョエルをあげていたことから俄然興味が沸き、今回、はじめてアルバムを聴いてみました。

また今回のアルバム、なによりもジャケットが印象的。まるで何かの賞を取ったかのようにインタビューボードをバックにトロフィーを掲げる彼の姿。ただ残念ながら何かの賞を取った訳ではなく、あくまでも架空のもの。ただ微妙に誇らしげで微妙に恥ずかしげな笑顔も音楽賞を受賞したミュージシャンの写真としてよくありがち。いや、実によく出来たジャケット写真になっています。

さてそんな彼の楽曲なのですが、個人的には壺をつきまくりの陽気なポップソング。ピアノ+バンドサウンドという明るく分厚いサウンドにファルセット気味のボーカル。アルバムはイントロ的な1曲目に続く「Moon Ride」から、とにかくピアノをメインとした楽しいポップソングを聴かせてくれます。このピアノを軸としつつ底抜けに楽しいポップソングという点では個人的にも大好きなSUEMITSU&THE SUEMITHに近いものを感じます。ただSUEMITSUはバンドサウンドがより強く出ていてロック色が強いのに対して、彼の場合、圧倒的に「ポップ」の色合いが強くなっています。

特に彼の場合、ホーンセッションや打ち込みのシンセサウンドなどが入り、より賑やかで楽しいポップソングになっているのが魅力的。マイケル・ジャクソンからも強い影響を受けている彼は、例えば「Take me Take out」のようによりファンキーな楽曲も目立ちます。

また楽曲的にも「ピアノで明るいポップ」という一本調子な感じではなく「Stray Cat」のようなファンキーなエレクトロディスコチューンや「さよならに来ました」のような泣きメロをしっかりと聴かせるようなミディアムチューン、「Broken」のようなちょっと怪しげなメロディーがユーモアさも感じるポップスなど、バラエティーに富んだ作風を聴かせてくれ、その音楽性の懐の広さも感じさせます。

そして終盤「Slave of Love」はピアノ+バンドサウンドで祝祭色の強い楽しいポップソングを爽快なファルセットボイスで聴かせてくれる、まさにこれぞビッケブランカだ、といった感じのナンバー。さらにラスト「THUNDERBOLT」もミディアムテンポでポップなメロディーをしっかりと聴かせてアルバムは幕を閉じます。最初から最後までとても楽しくワクワクする素敵なポップソングが次々と登場するアルバムでした。

彼については、彼自身も影響を受けたミュージシャンとして名前をあげるMIKAとの類似性を上げることも多いのですが、確かにMIKA同様、とことん楽しいポップソングを聴けるシンガーだったと思います。個人的には上にも書いた通り、このポップソングがかなり壺にはまりました。

ただあえてマイナスポイントを言えば、これだけ素敵なポップソングが並びながらも、一発でメロディーが口から出てくるようなキラーフレーズを持った楽曲がなかったという点はちょっと気になりました。メロディーのインパクトが弱いといった感じではないのですが、サビはちょっと弱かったように思います。このキラーフレーズが一発出てくれば、一気に大ブレイクしそうです。

とにかく個人的には一気に注目度の増したポップシンガー。楽曲のエンタテイメント性も強いですし、これからまだまだ人気も伸びていきそうな予感がします。これからが非常に楽しみになってくるシンガーソングライターのアルバムでした。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Mirage/Dub Squad

元ROVOの中西宏司、DJ Taro Acidaとしても活躍している山本太郎、そしてROVOの益子樹の3人によるテクノユニットによるなんと16年ぶりとなるニューアルバム。基本的にはトランシーなエレクトロサウンドを心地よく聴かせる中、ダブやファンク、フリージャズなどの要素を入れつつ複雑に構成された楽曲が魅力。「音」をしっかりと聴かせつつ、ダンスミュージックとしても高い機能性を有しています。久々の新作は2枚組となっており、Disc2にはDisc1の楽曲を砂原良徳やSystem7によってリミックスされた曲が並んでいます。こちらもDisc1の楽曲からグッと雰囲気の変わったエレクトロチューンが並んでおり、全く違った楽曲としても楽しめそう。久々のアルバムですが、メンバーそれぞれが個々で活動していただけに、16年というスパンを全く感じない傑作アルバムでした。

評価:★★★★★

佐野元春&ザ・コヨーテ・グランド・ロッケストラ LIVE AT 国際フォーラム/佐野元春

佐野元春最新のライブアルバムは、昨年3月22日に行われた東京国際フォーラム35周年アニバーサリー公演から厳選したライブ音源を、ミックス & リマスタリングした作品。ベスト盤的なセレクトとなっており、大人のロックバンドとも言うような安定感ある演奏でしっかりと聴かせてくれます。

評価:★★★★

佐野元春 過去の作品
ベリー・ベスト・オブ・佐野元春 ソウルボーイへの伝言
月と専制君主
ZOOEY
BLOOD MOON

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2017年8月15日 (火)

結成30周年

Title:CYCLE HIT 2006-2017 Spitz Complete Single Collection
Musician:スピッツ

結成30周年を迎えたロックバンド、スピッツ。いままでベスト盤として2006年に「CYCLE HIT 1991-1997 Spitz Complete Single Collection」「CYCLE HIT 1997-2005 Spitz Complete Single Collection」という2枚のベスト盤がリリースされていましたが、今回、その2枚のベスト盤がリマスターされ再発売。さらに2006年以降の楽曲をおさめた「CYCLE HIT 2006-2017 Spitz Complete Single Collection」をしたボックス盤「CYCLE HIT 1991-2017 Spitz Complete Single Collection -30th Anniversary BOX-」がリリースされました。ただ「1991-1997」「1997-2005」はいずれも既発のアルバムをリマスターしたのみ。そのため、この2枚のアルバムはもう持っているし、さすがにリマスターで買い直すほどじゃない・・・と思っている方にために、「2006-2017」のみのバージョンもリリースされています。こういう配慮もうれしいですね。

本作は2006年にリリースされた「魔法のコトバ」から2016年にリリースされた最新シングル「みなと」まで収録。また配信限定でリリースされた「愛の言葉-2014mix-」「雪風」も収録されているほか、「ヘビーメロウ」「歌ウサギ」「1987→」という3曲の新曲が収録されています。

この2006年以降の彼らといえばすでにスピッツという地位も確立。以前のような「国民的ヒット曲」というものはないものの、安定した人気を博している頃。そのため楽曲に関しても正直言えば目新しさみたいなものは感じません。これぞスピッツといった感じの楽曲が並んでおり、良くも悪くもファンにとっては安心して楽しめる楽曲ばかりです。

ただ今回のアルバムに収録されている作品、もちろんリアルタイムで聴いた楽曲ばかりなのですが、あらためて聴くとやはり聴きほれてしまいます。決して派手さはないものの心に染みいってくるメロディーラインが実に素晴らしい。どこか切なさとノスタルジックさを感じさせるメロディーは何度聴いても全く飽きることがありません。大いなるマンネリといえばマンネリなのですが、文字通りエバーグリーンなメロディーラインばかりのため、結成30年たった最近の楽曲ですら、ある種の新鮮さすら感じます。

新曲3曲のうち「ヘビーメロウ」「歌ウサギ」に関しては、まさにそんなスピッツらしさを体現化した楽曲。そしてこの中でユニークだったは「1987→」。楽曲は今のスピッツからすると考えられないようなビートパンク。結成当初の彼らはこういう楽曲をやってたそうなので、まさに原点回帰ともいえる作品。スピッツのちょっと意外な側面を感じられることが出来るユニークな楽曲に仕上がっています。

結成30年を経過しながら今なお新鮮さを保ち続ける彼ら。まだまだこれからも数多くの名曲を聴かせてくれそう。これからの活躍も楽しみです。

評価:★★★★★

スピッツ 過去の作品
さざなみCD
とげまる
おるたな
小さな生き物
醒めない


ほかに聴いたアルバム

NEWWAVE/THE STARBEMS

日高央率いるパンクロックバンドの最新作は2枚組のミニアルバム。Disc1は新曲5曲入り。ハードコア風のへヴィーなサウンドながらもポップなメロを聴かせるあたり、良い意味でいつもの日高央らしい楽曲。Disc2は既発表曲のリアレンジや日高央以外のメンバーがボーカルを取った楽曲などを収録した企画盤的な内容。こちらはお遊び的な要素も強いものの、バリエーションある楽曲でポップで楽しい感じに仕上がっていました。

評価:★★★★

THE STARBEMS 過去の作品
SAD MARATHON WITH VOMITING BLOOD
VANISHING CITY
Feast The Beast

バタフライエフェクトを語るくらいの善悪と頑なに選択を探すマエストロとMoon Song Baby/The Mirraz

前作「Mr.KingKong」は事前告知なしに突然の配信リリースとなったThe Mirrazですが、続く本作も突如、配信オンリーでリリースされた7曲入りのミニアルバム。前作に引き続きパンキッシュなギターロックに思いっきり早口なボーカルという、The Mirrazらしいスタイル。「ツ!」のようなちょっと皮肉じみた歌詞も彼ららしくユニーク。良くも悪くも似たようなスタイルの曲が多いというのはマイナスポイントではあるのですが・・・あと早口とはいえ、要所要所のポイントとなる部分はもうちょっと聴きやすく構成した方がよいのでは?

評価:★★★★

The Mirraz 過去の作品
We are the fuck'n World
言いたいことはなくなった
選ばれてここに来たんじゃなく、選んでここに来たんだ
夏を好きになるための6の法則
OPPOTUNITY
しるぶぷれっ!!!
BEST!BEST!BEST!
そして、愛してるE.P.

ぼなぺてぃっ!!!
Mr.KingKong

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2017年8月14日 (月)

いつもと違うキノコホテルだが・・・

Title:プレイガール大魔境
Musician:キノコホテル

今年、結成10周年を迎えたガールズバンド、キノコホテル。60年代のグループサウンズやガレージロック、歌謡曲の要素を取り入れたちょっとレトロで、ちょっと怪しげな雰囲気が魅力的な彼女たち。本作はその結成10周年を記念してリリースされた企画盤。彼女たちの過去の楽曲を再録音したリメイクアルバムとなっています。

今回の企画盤、まずなかなか選曲がユニーク。彼女たちの代表曲ではなくアルバムの中の隠れた名曲たちをピックアップ。それを新たにレコーディング。アレンジも変えており、そのため実感としては「ベストアルバム」というよりも「オリジナルアルバム」的な感覚で楽しめるアルバムとなっています。

また本作で特徴的だったのはアレンジの幅広さ。スペーシーでサイケなアレンジの「球体関節」「悪魔のファズ」では途中に入る「ウッ!ハッ!」という掛け声が非常にユニーク。「愛の教育」は歌い方含めてメタルっぽい雰囲気の曲になっていますし、さらに「惑星マンドラゴラ」ではシンセを使ったアップテンポなサウンドも印象的ですが、なによりも疾走感あるポップなメロディーがどこか90年代J-POP的でインパクトがあります。

そんな中でも特に印象に残ったのが「風景」。ハワイアン的なリズムにパーカッションを軸としたシンプルなサウンド。サイケフォークな雰囲気の楽曲で空間を聴かせるその楽曲には独特なグルーヴ感があり、あえていえば坂本慎太郎の楽曲に近い雰囲気も。比較的ポップな曲が多い彼女たちにしては珍しい実験的な作風となっています。

「昭和歌謡GS風ガレージロックバンド」というイメージの強いキノコホテルですが、意外と幅広い音楽性を感じることが出来るアルバムだったと思います。そしてもうひとつ大きな特徴に感じたのは今回のアルバム、いつも以上にギターサウンドを前に押し出してロックバンド色が強くなっていた点でした。キノコホテルといえばもちろんガレージロックバンドなのですが、まず第一にマリアンヌ東雲のエレピが前に出てくることが多く、それがバンドの色となっていました。今回のアルバムはこのエレピの音はあまり目立ちません。むしろ迫力のあるギターサウンドやドラムスの音が前に出ており、ロックバンドらしさがよい出ていたと思います。またいつもより分厚くなったバンドサウンドが、このアルバムに統一感を与えていました。

そんな訳で音楽性といいバンドサウンドといいいつのもキノコホテルとはちょっと異なる今回のアルバム。しかし楽曲は間違いなくキノコホテルの曲になっていました。いかにもGS風なガレージサウンドや、わかりやすいエレピの音に頼らずとも、キノコホテルらしさを楽曲にきちんと反映させることが出来る・・・10周年を迎えてリリースされた今回のアルバムは、そんなバンドとしての自信を感じることもできました。そんな10年を迎えて一回り大きくなった彼女たちの姿を感じることが出来る作品。これからの彼女たちの活躍も非常に楽しみです。

評価:★★★★★

キノコホテル 過去の作品
マリアンヌの憂鬱
マリアンヌの休日
クラダ・シ・キノコ
マリアンヌの恍惚
マリアンヌの誘惑
キノコホテルの逆襲
マリアンヌの呪縛
マリアンヌの革命


ほかに聴いたアルバム

All Time Best Album THE FIGHTING MAN/エレファントカシマシ

デビュー30周年を迎えた彼らが、すべてのキャリアを通じた代表曲をまとめたベスト盤をリリース。え?こないだレコード会社毎に代表曲をまとめた「自選作品集」をリリースしたばかりじゃん、と思ったのですが、それから既に8年もたったんですね・・・早いなぁ。

今回のベスト盤、2枚組なのですが、1枚目に「悲しみの果て」のようなポップな曲が並び、2枚目に「ガストロンジャー」のようなハードな曲が並ぶ構成になっており、エレカシの持つハードソフト2つの側面の魅力をわかりやすく感じることが出来る内容になっています。そういう意味でも初心者にもピッタリのベスト盤。今回、2枚目の方で「ガストロンジャー」と最初期の代表作「デーデ」「奴隷天国」などが違和感なく並んでおり、一時期、「ポップになった」といわれたエレカシですが、本質的な部分は大きな変化はなんだな、ということをうれしく感じました。

「自選作品集」と異なり発表順ではないため紆余曲折のあったエレカシの歴史を感じることはできません。ただ代表曲がほどよくまとめられておりエレカシの魅力は存分に感じることの出来るベスト盤となっていました。

評価:★★★★★

エレファントカシマシ 過去の作品
STARTING OVER
昇れる太陽
エレカシ自選作品集EPIC 創世記
エレカシ自選作品集PONY CANYON 浪漫記
エレカシ自選作品集EMI 胎動記

悪魔のささやき~そして、心に火を灯す旅~
MASTERPIECE
THE BEST 2007-2012 俺たちの明日
the fighting men's chronicle special THE ELEPHANT KASHIMASHI LIVE BEST BOUT
RAINBOW

HIT/三浦大知

「HIT」と題された三浦大知の新作は、その名の通り、最近の音楽シーンに「HIT」しそうなエレクトロダンスミュージックを主体としたアルバム。彼のボーカリストとしての才能を感じる伸びやかなボーカルは非常に心地よいものの、楽曲的にはいかにも「流行」といった感じで目新しさはない印象。良くも悪くも「HIT」を意識したアルバムといったところなのでしょうか。

評価:★★★★

三浦大知 過去の作品
D.M.
The Entertainer
FEVER

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2017年8月13日 (日)

11年ぶり・・・ちょっと意外

Title:Mellow Waves
Musician:CORNELIUS

先日開催されたフジロックで、CORNELIUSと小沢健二が同じ日に出演するということで大きな話題になりました。もちろん(?)両者の共演はなかったようですが、両者とも違う道を歩みつつ、それぞれが違うベクトルでその音楽活動に大きな評価を得ている点、いまさらなからフリッパーズギターというバンドはものすごいバンドだったんだな、ということを思ってしまったりします。

さて、ここに来て活動を開始したものの、ここ数年は散発的な活動しか見せていなかったオザケンに対してCORNELIUSはここ数年、むしろ積極的な活動が目立ちました。攻殻機動隊への音楽提供やSalyu x Salyuとしての活動、あるいはMETAFIVEへの参加も大きな話題となりました。それだけに今回のニューアルバム、前作「SENSUOUS」から11年ぶりというのが逆に意外にすら感じました。確かにそういわれてみれば・・・と思ってしまいます。それだけここ最近のCORNELIUSは逆に積極的な活動が目立ってすらいました。

さて、非常にシンプルで空間を聴かせるようなエレクトロサウンドを軸に、実験的ともいえる作風に仕上げていた前作「SENSUOUS」。今回のアルバムに関しても基本的にはその路線を引き継いだ作品になっています。そういう意味では今回のアルバムに関しては目新しさのようなものを求めるとちょっとがっかりするかもしれません。

一方、今回の作品で大きく変わったのは非常にポップでメロディーラインを聴かせるような曲が並んでいるという点でした。その今回のアルバムを象徴するような作品が1曲目の「あなたがいるなら」。サウンドは空間を生かしたシンプルなエレクトロサウンドと微妙にテンポをずらしたリズムが特徴的で前作からつながるようなものなのですが、切ないメロディーラインが印象に残りますし、非常にシンプルでわかりやすいラブソング風の歌詞ながらもシンプルな言葉を綴っているからこそいろいろと解釈できそうな、坂本慎太郎が書いた歌詞も強く心に響きます。ここ最近のCORNELIUSの興味がつまったような楽曲に仕上がっていました。

他にも同じく作詞を坂本慎太郎が手掛けた「未来の人へ」やドリーミーなサウンドや韻を踏んだポップな歌詞がかわいらしさすら感じるポップソング「夢の中で」(これ、攻殻機動隊サントラで相性の良さを感じた坂本真綾が歌ったらおもしろいかも・・・)などメロディーを主眼とした楽曲が並んでいます。

さらに最後を締めくくる「The Rain Song」「Crepuscule」はアコースティックな作風のポップな曲で締めくくられており、ちょっと冷たさを感じるエレクトロな作風でスタートした本作ですが、最後はむしろアコースティックな暖かみを感じさせる後味がありました。また他の曲に関してもギターなどのバンドサウンドも入っていたりして、暖かさを感じさせるアルバムになっています。そういう意味ではサウンドの方向性は似ていても、ここ数作「POINT」や「SENSUOUS」とはまた異なった作風ともいえるのかもしれません。

また今回の作品、暖かみを感じさせる曲調といいポップでメロディアスな作風といい、個人的にはCORNELIUSも参加したMETAFIVEからの流れも感じさせました。もっともMETAFIVEが影響を与えた、というよりはMETAFIVEにCORNELIUSの今の興味ある音が入り込んだ、という要素の方が大きいのかもしれませんが・・・。

斬新さ、実験性という意味ではここ数作の中ではちょっと後ろに下がるかもしれません。ただポピュラリティー、いい意味での聴きやすさという意味ではここ数作の中では断トツの出来だったと思います。なによりも暖かさを感じさせるポップなアルバムに仕上がっていました。本作も間違いなく今年を代表しそうな傑作です。

評価:★★★★★

cornelius 過去の作品
CM3
FANTASMA
「NHKデザインあ」
CM4
攻殻機動隊 新劇場版 O.S.T.music by Cornelius


ほかに聴いたアルバム

FLY/清水翔太

R&B回帰をみせ、傑作アルバムに仕上げた前作「PROUD」。今回のアルバムもR&B路線が続きます。ただHIP HOPやファンク、ソウルなどの要素を取り入れて、それがピタリとはまった前作と比べると本作は、今時の音を取り入れつつも、よくありがちなメロウなR&Bといった感じにとどまってしまっています。彼の実力は感じることが出来、それなりに悪いアルバムではないと思うのですが、傑作だった前作と比べるとちょっと見劣りしてしまった印象も。

評価:★★★★

清水翔太 過去の作品
Umbrella
Journey
COLORS
NATURALLY
MELODY
ENCORE
ALL SINGLES BEST
PROUD

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2017年8月12日 (土)

初の「ベスト盤」

Title:All Time Best ハタモトヒロ
Musician:秦基博

秦基博初のオールタイムベスト・・・って、いままで結構、秦基博ってベスト盤リリースしてなかったっけ?とも思うのですが、「BEST OF GREEN MIND」と「evergreen」は弾き語りアルバム、「ひとみみぼれ」はセルフセレクションによる企画盤と、純粋に彼の代表曲を網羅したベスト盤は本作がはじめてのリリースとなります。ちょっと意外な印象を受けるのですが。

さてそんな秦基博初となる純粋なベストアルバム。以前から秦基博に関してはひとつ強く感じていたことがあります。それは彼、どうにもこれといった特徴の薄いミュージシャンだな、という点でした。

例えばメロディーライン。ルーツ志向で洋楽テイストが強いわけではありませんし、決定的にインパクトのある美メロを書いている訳ではありません。歌詞にしてもストレートなラブソングがメインでこれといった大きな特徴があるわけではありません。秦基博というとどういうミュージシャンかと言われると、「ポップスミュージシャン」の一言。それ以上でも以下でもありません。

ただ今回のベスト盤も見事チャート1位を獲得しましたしアルバムでは確実にベスト10入りをさせてくるなど、人気ミュージシャンとしてその歩を確実に進めている彼。今回のベスト盤を聴くと、上に書いた通り、これといってひとつ目立つような特徴があるわけではないのですが、それにも関わらず非常に心に残るようなポップソングが目立ちます。

アコースティックなサウンドが主導して展開していく彼の楽曲は決して派手なメロディーがあるわけではありません。しかし、妙に心にひっかかりのあるフレーズを書いてきます。このド派手なサビはないのにちゃんとひっかかるのあるメロディーラインを書いてくるというのは非常に難しいこと。それをさらりとやれてしまう彼にメロディーメイカーとしての実力を感じます。

比較的似たようなタイプの曲も多いのですが、それでも2枚組全26曲、ダレることなく最後まで聴くことが出来るのはやはり彼の楽曲に多くの魅力があるからでしょう。今回のベスト盤では秦基博のポップメイカーとしての実力とその魅力を再認識できる内容でもありました。

また今回のベスト盤、ちょっとユニークなのは彼の代表曲を網羅した2枚組の通常盤の他、そこからさらにセレクトして1枚にした「はじめまして盤」がリリースされたこと。これはなかなかユニーク。というのはここ最近のベスト盤、楽曲を詰め込みすぎて2枚組3枚組となり初心者にとっては手を出しにくく、本来あるべき「ベスト盤」の役割を果たしていないようなベスト盤が多く見受けられたからです。こうやって初心者にも聴きやすいように1枚にまとめた別バージョンを出す、というのは戦略として非常におもしろく感じました。

ただ今回、この別バージョンで非常に残念なのは2枚組の通常盤に入っていない曲が「はじめまして盤」に入っていたこと。特に大江千里のカバー「Rain」は「はじめまして盤」にしか入っていないようで、これによりファンは通常盤だけでなく「はじめまして盤」も購入する必要が生じたとか・・・複数枚買いを誘発するための戦略でしょうか。この点は非常に残念に感じます。

「売り方」には残念な点はあるもののベスト盤としての魅力はもちろん文句なし。最新盤「青の光景」はいままでの彼の魅力を上回る傑作だっただけにこれからの活躍もかなり期待できそう。これからの秦基博の活躍を楽しみにしつつ、あらためて彼の魅力に触れるには最適なベスト盤でした。

評価:★★★★★

秦基博 過去の作品
コントラスト
ALRIGHT
BEST OF GREEN MIND '09
Documentary
Signed POP
ひとみみぼれ
evergreen
青の光景


ほかに聴いたアルバム

HATE ME/Cruyff In The Bedroom

今年は往年のシューゲイザーバンドが次々と新作をリリースしてきましたが、それに歩調をあわせたのか日本を代表するシューゲイザーバンドである彼らも約4年7ヶ月ぶりとなるニューアルバムをリリース。相変わらずシューゲイザー直系の轟音のギターノイズが心地よいアルバムに。今回は以前のアルバムで感じていたちょっとベタというか平凡なメロディーラインも進化。しっかりとシューゲイザーバンドらしい(?)インパクトあるポップなメロを聴かせており、楽曲に花を添えていました。

評価:★★★★★

cruyff in the bedroom 過去の作品
Ukiyogunjou
hacanatzkina

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2017年8月11日 (金)

「ダーク」をコンセプトとした13作目

Title:13
Musician:cali≠gari

メジャー15周年を迎えるヴィジュアル系ロックバンドcali≠gariのニューアルバム。基本的に彼らのフルアルバムはリリース順に番号が付されており今回は13枚目。西洋で縁起が悪いとされる「13」という数字をストレートにタイトルとした本作は、その数字から導き出されたのか、「ダーク」ということをコンセプトとしているそうです。

「13」といえば毎回、挑戦的かつどこかユーモラスを感じる音楽性に挑戦しており一種独特のスタイルを貫くバンドとして非常に魅力的なバンド。今回のアルバムはここ数作の中では断トツでバリエーションが多く、かつ挑戦的で独特な楽曲が目立った作品になっていました。

タイトルに沿った13秒のイントロを経てスタートする「ゼロサムゲーム」は非常にパンキッシュでアバンギャルドな楽曲。「汚れた夜-暗夜行路篇-」も疾走感あるヴィジュアル系っぽいちょっと妖艶なビートロックなのですが、トライバルなパーカッションとフリーキーなサックスが魅力的。途中、童謡の一節を取り入れているのがユニークな「トイレでGO!」はパンキッシュでユーモラスながらも歌詞の世界がどこか狂っていて怪しげな感じになっています。

またアバンギャルドな色の濃い前半から後半はバラエティー富みながらもポップでメロディアスなナンバーが続きます。「三文情死エキストラ」は怪しげな歌謡ファンクチューン。「一切を乱暴に」はハイテンポなパンクナンバー。さらには「ファニソン」はエレクトロサウンドを取り入れたダンスチューンと彼らの幅広い音楽性が垣間見れる楽曲が続きます。

今回、「ダーク」というコンセプト性があるということですが、正直なところ歌詞はともかくサウンドやメロディーからはあまり「暗さ」は感じません。むしろいつも以上にポップなメロディーが光ったインパクトある楽曲が並んでいるように感じます。上に紹介した曲以外でも「トカゲのロミオ」などパンキッシュでちょっとアバンギャルドさもあるバンドサウンドが心地よい疾走感あるナンバー。サビは非常にメロディアスでインパクトあるフレーズを展開しており、ちょっと90年代っぽいフレーズは多くのリスナーが楽しめそうな楽曲に仕上がっています。

このポップでインパクトあるメロディーラインといい、実験的でバリエーションの多い作風といい、cali≠gariの魅力をしっかりと詰め込んだアルバムだったと思います。個人的にはここ最近のcali≠gariのオリジナルアルバムの中では一番の出来だったように感じました。最後はアルバムのコンセプトに沿ったダークな雰囲気を醸し出しつつ哀愁感あるメロディーでゆっくり聴かせる「深夜、貨物ヤード裏の埠頭からコンビナートを眺めていた」で締めくくり。確かに聴いた後の印象としては「ダーク」というアルバムコンセプトが印象に残る展開になっていました。

評価:★★★★★

cali≠gari 過去の作品
10
cali≠gariの世界

11
12


ほかに聴いたアルバム

Friends Again/シャムキャッツ

今、注目されているインディーロックバンドの一組、シャムキャッツ。これが4枚目のアルバムとなります。以前からその名前は知っていたのですが、今回はじめて聴いてみました。郷愁感あるメロディーラインとフォーキーなサウンド。日本語詞にこだわりつつ楽曲的には洋楽からの影響も強く感じさせるいい意味でバタ臭さのある楽曲。イメージとしてはサニーデイサービスに近い雰囲気を感じます。フェス受けしそうなストレートなパンクバンドが注目される昨今ではちょっと独特という印象すら受けてしまう彼らですが、徐々に注目度は高まりそうな予感も。これからの活躍に期待です。

評価:★★★★★

BABEL/9mm Parabellum Bullet

歌謡曲テイストを感じさせる哀愁感あるメロディーラインとメタルやハードコアの影響も強いダイナミックなバンドサウンドの融合が魅力的な9mm Parabellum Bullet。メンバー全員が作詞作曲で参加した前作から一転、本作はメインライターの滝善充がすべての曲を手掛けたという、いままでのスタイルに戻った作品に。そのため全体的な出来としてはやはり前作を上回る内容になっています。ただ基本的にはどの曲もいつも通りのスタイルといった感じで、良くも悪くも大いなるマンネリ的な感じに。一種の様式美といった印象も受けますが、もうちょっとバリエーションもほしいかな、といった印象も。

評価:★★★★

9mm Parabellum Bullet 過去の作品
Termination
VAMPIRE
Revolutionary
Movement
Dawning
Greatest Hits
Waltz on Life Line

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2017年8月 7日 (月)

あまりにもそのまんまなユニット名

Title:橋本絵莉子波多野裕文
Musician:橋本絵莉子波多野裕文

あまりにもストレートなミュージシャン名とアルバムタイトルですが・・・タイトル通り、チャットモンチーのギターボーカル橋本絵莉子とPeople In The Boxのギターボーカル波多野裕文によるユニットのデビューアルバム。いやあまりにもそのまんまなのですが・・・(^^;;

チャットモンチーとPeople In The Box。微妙に重なりそうな重ならなさそうなバンド同士。もともとチャットモンチーの橋本絵莉子が2016年頃、自分の書いた楽曲に自信を失いかけ、「自分以外の誰かが作った曲を歌いたい」という願いをかなえるために波多野裕文に楽曲提供をお願いしたことがきっかけだとか。彼女がそんなスランプ気味だったとは知りませんでした。確かに、ここ2年ほどチャットモンチーはアルバムリリースしていないしなぁ。

そしてリリースされた今回のニューアルバムはイメージとしてはチャットモンチーとPeople In The Boxの楽曲を足して2で割ったようなスタイルの作品でした。上に書いたような経緯もあって基本的に作曲は波多野裕文が担当し、橋本絵莉子は作詞を担当。それだけにもっとPeople In The Boxの色が強く出てもいいような印象を受けたのですが、聴いてみるとアルバムの中で主に橋本絵莉子がボーカルを取っていることもあり思いのほかチャットモンチー色が強く出ているアルバムになっていました。

ただおそらくチャットモンチー色を強く感じるのは橋本絵莉子がボーカルを取っているから、というだけではないでしょう。なによりもチャットモンチーっぽさを感じるのが彼女が書く歌詞。女の子の感情を素直に具体的な言葉で綴るスタイルはチャットモンチーそのもの。例えば「飛翔」などと

「小さなジャスコに行きたい
ショッカーの居場所もないステージ
近所のあの子も来るはず
こないだの転校生のあの子」

(「飛翔」より 作詞 橋本絵莉子)

という歌詞。郊外の風景を描いたような素朴な歌詞といい、「ジャスコ」やら「ショッカー」やら固有名詞を上手く用いた歌詞といい、まさにチャットモンチー節ともいうような歌詞。特にメロディーラインとあわせて「行きたい」の部分でかわいらしく跳ね上がるようなフレーズとなっており、作詞は波多野裕文にもかかわらず妙にチャットモンチーらしいフレーズに仕上がっています。

ただ一方でこの「飛翔」、コード進行は妙に複雑でチャットモンチーでは聴かれないようなスタイル。「ノウハウ」などもピアノを聴かせつつ、このピアノが不協和音を奏でており、不気味な雰囲気を醸し出していますし、「アメリカンヴィンテージ」も最後にはノイズが登場するなど、チャットモンチーでは微妙に聴かれないスタイルが顔を覗かせます。

なによりも橋本絵莉子の歌詞と歌でポップにまとまっているものの、よくよく聴くとチャットモンチーとは異なる微妙に歪んだ癖のあるメロディーラインが特徴的。波多野裕文の色がべっとりと楽曲に張り付いていることに気が付かされます。

基本的にはアコースティックな暖かい雰囲気のポップがメインとなっている本作。全体的にポップで聴きやすいものの、橋本絵莉子と波多野裕文の魅力がそのままつまっている一方、チャットモンチーともPeople In The Boxとも異なる魅力がつめこまれた作品になっていました。そういう意味では実に相性のよい2人だったということなのかもしれません。

ちなみにご存じの通り、橋本絵莉子といえば既婚者の人妻(波多野裕文は独身のようですが)。この相性の良さに旦那との関係は大丈夫なのか?とちょっと聴いていることらがドギマギしちゃいそう(笑)。ただそれだけ良く出来た楽曲ばかりだっただけに、今後もコンスタントに活動を続けてほしいなぁ。お互い、バンドとはちょっと違ったスタイルなのでバンドのためにもちょうどよい「ストレス解消」にもなりそうですし。これからの活躍も楽しみです。

評価:★★★★★


YES/サンボマスター

前作「サンボマスターとキミ」はデビューから12年目にしてむしろデビュー時期に戻ったような勢いを感じさせる傑作となっていましたが、ここ最近、サンボマスターは再び脂がのりだしたのかもしれません。続く本作「YES」も前作から引き続き、デビュー当初のような勢いを感じさせる一種の初期衝動的なものすら感じさせる傑作。へヴィーで力強いパンキッシュなサウンドに力強いメッセージ性のある歌詞。サンボマスターの魅力がぎっしりとつまったアルバムになっていました。この勢いはまだまだ続くのか?これからの活躍が楽しみです。

評価:★★★★★

サンボマスター 過去の作品
音楽の子供はみな歌う
きみのためにつよくなりたい
サンボマスター究極ベスト
ロックンロール イズ ノット デッド
終わらないミラクルの予感アルバム
サンボマスターとキミ

Dead End in Tokyo European Edition/MAN WITH A MISSION

Deadintokyo

今年1月にリリースされたシングル「Dead End in Tokyo」に新曲やライブ音源を追加し、全9曲入りとなり、欧州のみでリリースされる予定だったEP盤。ただ急きょ日本でも配信オンリーでのリリースされることになったのでチェックしてみました。

基本的にいつものマンウィズ節といった感じ。「Hey Now」「Dog Days」はBoom Boom Satellitesみたいだな、と思っていたらBoom Boom Satellitesの中野雅之プロデュースの作品。良くも悪くもそのまんまブンサテサウンドになっています。最後に3曲ライブ音源が入っているのですが、こちらが文句なしにカッコいい。MAN WITH A MISSIONの曲はもちろん悪くはないけども煮え切らないような物足りなさを感じる部分が多いのですが、ライブ音源に関してはどこか引っかかる煮え切らなさが完全に払しょくされています。やはりMAN WITH A MISSIONの魅力はライブなんでしょうね。

評価:★★★★

MAN WITH A MISSION 過去の作品
Trick or Treat e.p.
MASH UP THE WORLD
Beef Chicken Pork
Tales of Purefly

5 Years 5 Wolves 5 Souls
The World's on Fire
Out of Control(MAN WITH A MISSION x Zebrahead)

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2017年8月 5日 (土)

ダンストラックに特化

Title:80:XX-05060708
Musician:80kidz

80kidzがリリースしていたダンストラックEPシリーズ「8○(ハチマル)」シリーズ。以前は「01」から「04」までリリースされ、その集大成的なアルバムがリリースされました。そこから約3年半。新しいシリーズがスタート。「05」から「08」までの4作が4か月連続でリリースされ、その後、それらの作品に新曲を追加してまとめたのが本作。以前「80:06」は曲数の都合でアルバム扱いだったのでここでも紹介しましたが、集大成的な本作をあらためて紹介したいと思います。

同シリーズの前作「80:XX-01020304」も徹底的にリスナーを踊らせることに拘った楽曲が並んでいましたが、その方向性は本作も同様。一言でいうと、外連味のないダンスチューンといった感じでしょうか。目新しさこそありませんが、リスナーを徹底的に踊らせるための分厚いビートにシンプルなサウンド。聴いていてまったく雑味がありません。難しいこと抜きにしてとにかく楽しめるダンスチューンが並んでいます。

アルバムはまずさわやかなピアノの音色が心地よいハウス風のトラック「Reversed Note」からスタート。ビート感はあまり強くない作品はまず準備運動といった感じでしょうか。しかし2曲目の「IFDB」から軽快なダンスチューンがスタート。「No Wave」「Pearl」はいかにもエレクトロといったサウンドを全面に押し出し、強いビートで聴かせる心地よいダンスナンバーに仕上げています。

そんな一方的に勢いのある楽曲が続く前半。そして続く中盤戦「Etape02」はエレピのさわやかなサウンドにポップなメロディーラインが印象的な作品。ビートは強くなく一種のチルアウト的な作品といった感じでしょうか。

しかしそこからアルバムは一気にクライマックスへ。ボーカルをサンプリングしてファンキーにまとめた「Get Back」に続き、「Loup」は強いエレクトロビートで高揚感あるナンバー。さらにノイジーなエレクトロサウンドでロッキンに奏でられる「Vert」へと続いていきます。

ラストの「Labo」はノイジーなエレクトロサウンドに女性の声をサンプリングしたさわやかなナンバー。ただ物悲しいメロディーラインが全編に流れており、しんみりした感触でアルバムは幕を閉じます。

基本的にいままでEPとしてリリースされた作品なのですが、それらを並べ替えることによりアルバム1枚でひとつの流れを感じさせてくれました。上にも書いた通り、サウンド的には決して目新しいわけではありませんし、また80kidzとしての新たな挑戦をしているわけではありません。ただ聴いていてとにかく素直に楽しめる80kidzの魅力満載なアルバムに仕上がっていました。とにかく気持ち良いの一言。最初から最後まで身体が踊りだりそうになる作品でした。

評価:★★★★★

80kidz 過去の作品
THIS IS MY SHIT
THIS IS MY WORKS
WEEKEND WARRIOR
TURBO TOWN
80:XX-01020304
FACE
Gone EP
5
80:06

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2017年7月30日 (日)

Googleでは検索しずらいバンド・・・。

Title:0'年代の電車 3TITLES
Musician:電車

今回紹介するのは「電車」なるバンド。非常に奇妙な名前のバンドで、Googleでも非常に検索しずらいバンドですが、このバンドは筋肉少女帯の大槻ケンジを中心に2001年に結成されたバンド。他には筋肉少女帯の元メンバーである石塚"BERA"伯広、マルコシアス・バンプの佐藤研二、すかんちの小畑ポンプによる4人組バンド。「30代の男たちのアングラロマン」をテーマに活動を続け、2004年に大槻ケンジの脱退により活動を休止するまでにオリジナルアルバム2枚、ライブアルバム1枚をリリース。その後2014年に再始動し、セルフカバーアルバム1枚をリリースしています。

今回のアルバムは2000年代にリリースされたアルバム3枚をこのたびリパッケージされて再発された3枚組のアルバム。今となっては入手困難なアルバムもあり、ファンにとってはありがたい再発盤となったのではないでしょうか。

さてバンドのテーマとして「30代の男たちのアングラロマン」をかかげて活動を行った彼らですが、基本的にバンドのスタイルとしてはエフェクトかかったノイジーなギターを前に押し出したちょっとサイケデリックな要素を取り入れたギターロック。ただ、楽曲によってはジャジーな要素を上手く取り入れて妖艶な雰囲気を醸し出したり、歌謡曲なテイストを入れてきたりして「アングラ」という雰囲気を出してきています。

ただ本作のDisc1でありバンドとしても1枚目の「電車トーマソ」はこのアングラ的な怪しさはちょっと薄め。この「アングラロマン」というバンドとしての方向性がより明確に感じられるのは2ndアルバムであり本作のDisc2として収録されている「勉強」からでしょう。「OUTSIDERS」ではストリングスを入れて妖艶な雰囲気を醸し出していますし、「星屑と赤い闇のブルース」はうさん臭い音楽プロデューサー(?)による語りがオーケンらしいユーモラスを出しつつ、非常に怪しげなナンバーになっています。

そしてこの方向性がより強調されたのがライブアルバムであり本作のDisc3である「電車英雄」。序盤「私のビートルズ」は客席からのテープ録音のような非常に録音状態の悪い音になっているのですが、この音の感じがいかにも「アングラ」といった感じになっていますし、「OUTSIDERS」「喰らわれた女の歌」などサイケな楽曲はよりサイケな雰囲気が増しています。このライブ盤が電車というバンドのひとつの完成形だと思われます。

オーケンらしいユーモアセンスや自嘲的な歌詞も要所要所に登場しており、筋肉少女帯あたりが好きでももちろん文句なしに楽しめそうな内容。3枚組のボリュームですが、ダレることなく楽しめたアルバムでした。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

野宮真貴、ヴァカンス渋谷系を歌う。~Wonderful Summer~/野宮真貴

元ピチカート・ファイブのボーカル、野宮真貴による、渋谷系、あるいはその周縁部やルーツとなる曲をカバーする企画「野宮真貴、渋谷系を歌う。」。本作が4作目のアルバム。今回は「夏のヴァカンスの名曲」をテーマにカバーを行っています。

このシリーズももう第4弾ということでそろそろネタ切れ気味・・・と思いつつも、本作では爽やかなポップソングが野宮真貴のボーカルにピッタリ。特に小西康陽がPUFFY吉村由美に提供した「V・A・C・A・T・I・O・N」など、野宮真貴と非常に相性が良く、小西康陽と野宮真貴の相性の良さを感じます。なにげにここ数作の中では一番楽しめたカバーアルバムでした。

ただ、とはいえ全12曲中5トラックがボーナストラック、うち2トラックがライブMCとネタ切れ気味は否めません。そろそろこのプロジェクトも区切りをつける時期かも。次回作は彼女の新たなプロジェクトを期待したいところです。

評価:★★★★★

野宮真貴 過去の作品
実況録音盤!「野宮真貴、渋谷系を歌う。~Miss Maki Nomiya Sings Shibuya-kei Standards~」
世界は愛を求めてる。-野宮真貴、渋谷系を歌う。-

XXL/岡崎体育

今、もっとも話題のシンガーソングライターながらも個人的には前作「BASIN TECHNO」を大酷評した岡崎体育。新作も聴くのは迷ったのですが・・・ただ大森靖子みたいなずっと酷評していたものの最新作で傑作に出会えた、というケースもあるだけに聴いてみました。

「自分はわかってます」的なメタ視点が非常に鼻についた前作と比べると今回は「ネタ的」な曲は少な目。聴いていてイライラした前作に対すると今回はそういう感情は抱かずにアルバムを聴くことが出来ました。ただ今回もONE OK ROCK風のサウンドにのせて楽曲とはアンマッチな歌詞を歌う「感情のピクセル」や、日本語なのに英語に聴こえるような日本語の歌詞を歌う「Natural Lips」などが話題になっているのですが、ねえ、これおもしろい???サウンドと歌詞のアンマッチなんて、SEX MACHINEGUNSみたいにそのネタだけでブレイクしたミュージシャンもいるし、日本語を英語風に歌うって、SOUL'd OUTが既にやっているよね・・・(苦笑)。

今回、比較的アルバムとして聴けたのは、アルバムの後半にはネタ曲がなくなり真面目な曲が並んでいたという点。この真面目な曲に関しては確かにメロディーもインパクトはあるし、エレクトロサウンドやラップを取り入れた楽曲もバリエーションがあるのですが、逆にミュージシャンとしての芯の部分がちょっと弱いように感じてしまいました。

前作のように聴いていて腹が立つということはなかったのですが、逆にそれだけ薄味になってしまったようにも感じます。正直、本作を聴いてもやはりまだ「ハイプ」という印象は否めませんでした。次回作・・・聴くかどうか微妙だな・・・。

評価:★★★

岡崎体育 過去の作品
BASIN TECHNO

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