アルバムレビュー(邦楽)2017年

2017年4月25日 (火)

「50祭」のテーマ曲をまとめた企画盤

Title:半世紀No.5
Musician:UNICORN

2009年の川西幸一からはじまり、昨年のABEDONまで続いたメンバーが50歳になった記念で行われた「50祭」。毎回、それぞれの「50祭」のテーマ曲が2曲ずつ披露されてきましたが、全メンバーの「50祭」が終わり、テーマソングをすべて集めたアルバムがリリースされました。

基本的にテーマ曲2曲。メインボーカルを主役がつとめ、1曲はその本人が基本的に作詞作曲。あと1曲はそれ以外のメンバーによる作詞作曲という形なっています。そのテーマ曲はメンバーそれぞれが本人のやりたいジャンルで好きなように楽曲を制作。もう1曲もおそらくメンバーのイメージに合ったような楽曲。かなりユニークなお遊び曲が多いのですが、多種多様なジャンルに挑戦したUNICORNというバンドの懐の深さを感じさせるアルバムになっています。

例えば川西幸一のテーマ曲「半世紀少年」はなんとラップに挑戦。エレクトロトラックが気持ちいい楽曲なのですが、途中、いきなり合唱曲になったりするのが非常にユニーク。続く「川西五〇数え唄」は民謡の数え歌風。あえてフィールドレコーディングという形をとっているところがユニーク。民謡って、この手のフィールドレコーディングによる録音が多いんですよね。完全に遊びの曲なのですが、その中でも彼らのこだわりを感じます。

キングクリムゾンの空耳風カバー「新甘えん坊将軍~21st Century Schizoid Man」もユニークですし、EBIのテーマ曲「TAIRYO」はオイパンクと演歌を融合させたユニークなナンバー。かと思えば「RAINBO N°5」はラテン風マンボと統一感は全くありません。

そんな中でもやはり耳を惹くのが奥田民生の「私はオジさんになった」。彼らしい脱力感をおぼえるユーモアセンス満載の歌詞ながら楽曲は渋いブルースロック。ある意味、もっとも「50歳らしさ」を感じる曲かもしれません。ラストのABEDON「50/50」も聴かせるピアノバラードで、アルバムの最後を締めくくり。こちらもその実力を感じさせます。

今年リリースされたアルバムの中で、純粋に「楽しさ」という要素だけで順位付けしたとしたら間違いなくダントツ1位はこのアルバムだと思います。もちろん遊び曲が多いといってもそれらの曲を含めても十分なクオリティーや独創性はあり、そういう点を含めても本年指折りの傑作だと思います。再結成後はメンバーそれぞれやりたいことを自由に演ったようなアルバムや曲が多いのですが、この「50祭」のテーマ曲はその極みともいえるかもしれません。UNICORNにしかつくれない大人の遊びのアルバムでした。

評価:★★★★★

ユニコーン 過去の作品
シャンブル
I LOVE UNICORN~FAN BEST
URMX
Z
ZII
Quarter Century Single Best
Quarter Century Live Best

イーガジャケジョロ
ゅ13-14


ほかに聴いたアルバム

俺でいいのかい~港カヲル、歌いすぎる~/港カヲル

グループ魂の司会者、ボーカルの港カヲル(=皆川猿時)のソロデビューアルバム。はっきりいって「ネタ」アルバムで、全12曲中6曲がカバーで他6曲はコント的なコミックソング。カバーに関してはGLAYの「HOWEVER」やゴスペラーズの「ひとり」などをカバーしていますが、中年おやじがカラオケで(無理して)歌っている感じ。まあ、この中年おやじのカラオケ風のカバーを含めて「ネタ」なわけで、グループ魂が好きなら「ネタ」を含めて楽しめる感じ。ただ一方、グループ魂を全く知らずにこのアルバムから入るような方にとってはかなり厳しい作品かも。またさすがにネタとはいえ中年おやじのカラオケを2回3回繰り返し聴くのはちと厳しい面も(^^;;「ネタ」として楽しめたという意味では★★★★★の内容ですが、純粋にアルバムの内容としては以下のような感じで・・・。

評価:★★★

We Are X Soundtrack/X JAPAN

3月より公開されたX JAPANのドキュメンタリー映画「We Are X」のサントラ盤。基本的に映画のサントラ盤のため新曲は「La Venus-Acoustic Version-」「Without You-Unplugged」のみ。どちらもバラードナンバーで良くも悪くもX JAPANらしい楽曲。ライブ音源含めファンには満足できそうな内容ですが、ファン以外ならちょっと物足りなさを感じるかも。楽曲もベスト的な内容ながらも映画収録曲を集めたためか若干バラード寄りの内容になっています。

評価:★★★★

X JAPAN 過去の作品
THE WORLD~X JAPAN 初の全世界ベスト~

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年4月23日 (日)

若々しさすら感じらせる最新作

Title:NOOK IN THE BRAIN
Musician:the pillows

相変わらず精力的な活動を続けるthe pillows。前作はキングレコードへの移籍ということもあり1年半というインターバルがありましたがその反動か本作は前作からわずか11ヵ月という短いスパンでのリリースとなりました。

前作では長年サポートベーシストとして参加していた鈴木淳が離れ、数人のベーシストがゲストとして参加していましたが本作はサポートベーシストをVOLA&THE ORIENTAL MACHINEの有江嘉典が全面的に参加しています。今後は彼に固定されていくのでしょうか。

さてそんな短いスパンとなったニューアルバム。非常に軽やかでポップ。the pillowsらしいともいえる王道のオルタナ系ギターロックに仕上がっています。前作「STROLL AND ROLL」ではギターのへヴィネスさが増したような作品を聴かせてくれていましたが今回のギターはとても軽やか。疾走感あるギターロックは勢いすら感じられます。

彼ららしいということでうれしくなるのは2曲目の「王様になれ」。ギターリフがthe pillowsっぽい・・・というよりも彼らが大きな影響を受けたPIXIESそのまんまなギターリフがうれしくなってきちゃいます。

ただそんな彼ららしいといえるアルバムなのですが歌詞については前作に引き続きちょっと変化を感じられます。例えば「王様になれ」では

「脳細胞の支配下で世界を創れ
王様になれ」

(「王様になれ」より 作詞 山中さわお)

と彼らしい独特な表現での「応援歌的」な歌詞になっています。4曲目「パーフェクトアイディア」も同じく軽快なギターのオルタナ系ロックなのですが

「眠れる森のキミを連れ出したい
魔法使いも科学者も丸め込んで
暴れてみようぜ」

(「パーフェクト・アイディア」より 作詞 山中さわお)

と非常に前向きを感じさせるような歌詞になっていました。

そんな歌詞にひっぱられてかアルバム全体に明るさを感じさせる本作。中盤「She looks like new-born baby」「pulse」でちょっと雰囲気は変わるものの終始一貫、ポップで勢いのあるギターロックが続きます。ある意味、いつも通りの彼らで大いなるマンネリと言えなくもないのですが、ただアルバム全体としてはマンネリどころか新鮮さ、ある種の若々しさすら感じさせます。後半の「BE WILD」などCMソングに起用されるだけありポップな作風が耳に残る作品なのですが、若手バンドのような初々しさすら感じる疾走感ある楽曲に仕上がっていました。

これはひょっとしたらサポートベーシストがかわりバンドとして雰囲気がちょっと変わった影響なのかもしれません。それによりバンドに新しい空気が入って来たのかも。以前からベテランとしては信じられないほどの若々しさを保っていた彼らですが今回のアルバムではよりバンドとしての新鮮さを感じます。ポップなギターロックで勢いを感じさせた作品でした。

評価:★★★★★

the pillows 過去の作品
LOSTMAN GO TO YESTERDAY
PIED PIPER
Once upon a time in the pillows
Rock stock&too smoking the pillows

OOPARTS
HORN AGAIN
トライアル
ムーンダスト
Across the metropolis
STROLL AND ROLL


ほかに聴いたアルバム

CHANCE/HY

途中、BIGMAMAとのコラボアルバムもあったものの単独名義のオリジナルとしては1年8カ月ぶりとなる作品。爽快で明るい彼ららしいいつも通りのJ-POPチューン。良くも悪くもベタなメロディーラインでそれなりにインパクトはあるものの平凡。ただ、本作では「ロックスター」「三月の陽炎」などおもしろさを感じる曲がところどころ入っていたりするのでついつい毎作聴いてしまうのですが。

評価:★★★

HY 過去の作品
Whistle
PARADE
Route29
HY SUPER BEST
GLOCAL

LOVER
Synchronicity(HY+BIGMAMA)

FREEDOMOSH/KEMURI

2012年の再結成後はコンスタントにアルバムをリリースしてきた彼らでしたがここに来てちょっとスパンがあり約1年8ヶ月ぶりとなるニューアルバム。ただ基本的にはいつも通りの彼ら。ギターサウンドにアップテンポで軽快なリズム。ある意味「大いなるマンネリ」的なワンパターンな楽曲ですが、ライブで盛り上がりそうな楽しめる楽曲が並んでいます。

評価:★★★★

KEMURI 過去の作品
ALIVE Live Tracks from The Last Tour "our PMA 1995-2007"
RAMPANT
SKA BRAVO
F

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年4月22日 (土)

今だからこそ思うことも

Title:19972016
Musician:BOOM BOOM SATELLITES

1997年、テクノの名門レーベルR&Sレコーズからデビュー。ヨーロッパのメロディーメイカー誌に「ケミカル・ブラザーズ、プロディジー以来の衝撃」と称されて日本でも大きな話題となった2人組ロックデゥオ。その後、日本でも絶大な人気を得るに至りました。

しかしボーカル川島道行はデビュー直後に脳腫瘍を発症。その後、何度かの再発に悩まされながらその都度乗り越えてきたのですが、2015年の再発以降、体調が悪化。昨年リリースされた「LAY YOUR HANDS ON ME」が彼らにとって最後の作品となってしまいました。そして昨年10月、わずか47歳という若さで逝去。その人生に幕を下ろしました。

本作は19年に及びBOOM BOOM SATELLITESの活動を総括するベストアルバム。2010年にリリースされた「19972007」のリマスター盤に、その後の楽曲を集めた「20082016」の2枚組を加え、さらに彼らのライブをドキュメンタリー的に総括的に収録したライブDVDがついた全5枚組という内容となっています。

さて、今回のベスト盤にあたって「別冊カドカワ」から発刊された「BOOM BOOM SATELLITES」の総力特集号を読みながら聴いてみました。

彼らから影響を受けたミュージシャンや関係者、そして最後はメンバー中野雅之によるインタビューからBOOM BOOM SATELLITESとはどんなバンドだったか、ということに迫った一冊。バンド活動が終わった今だからこそ語れる話なども多く、非常に読み応えのある内容に仕上がっていました。

この本の中でもあらためて語られているのですが川島道行が脳腫瘍を最初に発症したのがR&Sからデビューが決まった直後。BOOM BOOM SATELLITESの活動の軌跡は川島の病気との争いの軌跡でもあり、彼の病気もまたバンドの音楽性に大きく影響を与えていたことを、よくよく考えれば当たり前の話なのですが、この本でも述べられています。

そういう観点からベスト盤を聴いてみると、いろいろと感じる部分があります。デビュー当初のビックビート的なテクノとロックを融合させたダイナミックな作風から徐々にジャズなどの要素を加えた内省的な楽曲へとシフトしていくのですが、「別冊カドカワ」でも語られているようにこれもまた川島の病気が影響していることもわかります。

特に「19972007」と「20082016」での差は大きく、ロックサウンドのダイナミックにサウンドをベースに様々な挑戦心を感じさせる「19972007」に対して、「20082016」はエレクトロサウンドを中心としてもっと落ち着いた内省的な色合いが強い作風になっています。

また今回のベスト盤を聴いてひとつ感じたことがありました。これは特に「別冊カドカワ」の中でも語られていませんし、私の印象論に過ぎない部分があるのですが・・・「19972007」がアルバム全体としてひとつの流れになっているように感じたのに対して「20082016」は1曲1曲がひとつのドラマのように完結している、そんな印象を受けました。それは1つ1つの曲に関して完成度があがり、1曲で彼らがやりたいことがすべて詰め込まれるようになった結果かもしれません。そのためアルバムとしてもひとつの流れにようなものはあまり感じず、1曲1曲がそれぞれ強い個性を放ち展開していっているという印象を受けました。

これはあくまでも私の印象ですが、バンド活動後期の彼らは、川島の病気もあり、より一層、1曲1曲に悔いのないよう全力で取り組んできたためかもしれないなぁ・・・ということを漠然と感じました。もちろん、この推測は全く誤りかもしれません。また川島の病気よりも、音に対して完全主義的な強いこだわりを持っている中野雅之の曲に対するこだわりが後期になってより強くなった影響もあるのかもしれません。ただ今回、バンド活動を総括して振り返ることにより、BOOM BOOM SATELLITESがどのような軌跡をたどって来たか、バンドが今だからこそ感じることが少なくない、そんなベスト盤になっていました。

DVDの方はドキュメンタリー色が強い内容で、ライブをじっくり見せるというよりもライブを通じたバンドの歩みを紹介するような内容になっています。映像には最後の告知の前日に行われたフジロックの最後のステージの模様や(こちらも「別冊カドカワ」を読んでから見ると、胸に来るものがあります)、最後のライブとなってしまった「WILD BUNCH FEST. 2015」の映像も収録されており、心うたれる展開になっています。

また最後に「別冊カドカワ」の方の感想も追加で。様々な方のインタビューがのっていて非常にボリュームある内容だったのですが、ひとつ不満があるとすれば、影響を受けたミュージシャンのインタビューよりももっと関係者のインタビューにページを割いてほしかったかな、という点。ミュージシャンへのインタビューでは、「そんなに関係しているの?」という人もいたりして、それならもっと関係者へのインタビューを厚く聴きたかったな、と思ってしまいました。

ただ最後の中野雅之のインタビューはファンなら必読。最後の中野にとってのBBSでの「最高の瞬間」という質問に対する答えは感涙モノです。これに限らずベスト盤を聴く上でぜひとも読んでおきたい内容の連続で、ファンなら絶対に読んでおきたい満足度の高い一冊でした。ムック本なので書店にはもう並んでいないかもしれませんが・・・Kindle版はネットで簡単に読むことが出来ますので、今からでも是非!

評価:★★★★★

BOOM BOOM SATELLITES 過去の作品
EXPOSED
19972007
TO THE LOVELESS
EXPERIENCED
REMIXED
EMBRACE
EXPERIENCEDII
SHINE LIKE A BILLION SUNS
LAY YOUR HANDS ON ME


ほかに聴いたアルバム

UNOFFICIAL/THE ORAL CIGARETTES

本作で初のオリコンアルバムチャートベスト3入りを記録するなど人気上昇中のロックバンド。ただ楽曲的にはよくありがちなポップなメロのJ-POP路線でボーカルの歌い方もどこか耽美的でヴィジュアル系の典型例といった雰囲気もあるバンドになっています。それでも前作はインパクトあるメロディーラインにおもしろさを感じたのですが本作はこれといって引っかかりを覚えるようなメロディーもなく厳しい展開に。平凡なポップバンドといった印象でおもしろみは感じられませんでした。

評価:★★★

THE ORAL CIGARETTES 過去の作品
FIXION

もうすぐ着くから待っててね/クリープハイプ

クリープハイプの新作は5曲入りの、事実上のEP盤。ただ彼ら曰く「作品集」らしく、シングルとアルバムの中間に位置する作品ということでしょうか。基本的にギターロックメインの中、「ただ」は情熱的だけどちょっと理屈っぽいラブソングが彼ららしい作品。「陽」は女性視点の心象的で文学的な歌詞が魅力的な楽曲でホーンやギターがちょっとソウル風なのも耳に残ります。ラストは「陽」のKANA-BOON谷口鮪とのデゥオバージョンなので事実上楽曲は4曲。クリープハイプらしいちょっと理屈っぽい感じの歌詞は気になるのですが、ただ短い中に彼らの魅力がしっかりと入った作品になっていました。

評価:★★★★★

クリープハイプ 過去の作品
吹き零れる程のI、哀、愛
クリープハイプ名作選
一つになれないなら、せめて二つだけでいよう
世界観

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年4月21日 (金)

ソロ2作品の共通項と相違点

本日はほぼ同時期にリリースされたB'zの2人によるソロアルバム2作品を紹介。どちらも海外のミュージシャンとのコラボ作となっており、対比的な作品となっています。

Title:CHUBBY GROOVE
Musician:INABA/SALAS

Title:Electric Island,Acoustic Sea
Musician:Tak Matsumoto&Daniel Ho

このB'zメンバーによるソロアルバム2作。共通項としてはどちらも海外のミュージシャンとのコラボ作となっているという点。稲葉浩志はアメリカのギタリストでミックジャガーやロッドスチュワートとのセッションも経験しているスティーヴィー・サラスとのコラボ。松本孝弘はハワイ音楽部門でのグラミー賞獲得も経験しているダニエル・ホーとのコラボとなっています。

楽曲的にもハードロック色の強いB'zの楽曲からするとポップな作風となっているという点でも共通項と言えるでしょう。ただB'zの楽曲からの距離感としてはかなり異なる対照的な2作になっていました。

稲葉浩志ソロの方はいわばB'zの延長線上のような音楽。ただし松本孝弘のギターをスティーヴィー・サラスに置き換えたアルバム・・・ではありません。ちょっとビックリしたのが全体的にエレクトロサウンドを前面に出した打ち込み主導の作品となっていること。ファンキーなリズムをところどころで聴かせてくれるのですが、エレクトロサウンドが軽快でポップ色が強いアルバムになっています。

このシンセサウンドが前に出ているポップなロックナンバーというスタイル、イメージとしてはかなり初期B'zのスタイルに近いものを感じます。例えば「AISHI-AISARE」などまさにデビュー当初のB'zというイメージ。へヴィーなギターサウンド主導のハードロックというイメージがすっかり構築されてしまったため忘れられてしまったB'zの原点。原点回帰を意図したかはわかりませんが、B'zらしいロッキンなリズムのメロディーとB'zのイメージを色濃く残す稲葉浩志のボーカルを入れつつ、ここ最近のB'zではできなくなってしまったシンセ主導のポップチューンを出したアルバムになっています。B'zの延長でありつつB'zではできないことをやる・・・ある意味、ソロアルバムらしいソロアルバムといった感じがします。

初期からのB'zリスナーとしてはちょっと懐かしさを感じつつ、軽快なシンセサウンドが素直に楽しめるポップスロックのアルバムに仕上がっていました。若干チープさもあるのですが、45分というちょうど良い長さのためだれずに最後まで楽しめるアルバムでした。

一方、松本孝弘のソロはB'zで聴かせるハードロックな作風からガラリとイメージを変えたアルバム。B'zの延長線上だった稲葉浩志の作品と比べるとあきらかにB'zとは全く異なる方向性を意図したアルバムだったと思います。まあコラボしたギタリストもハワイアンというB'zとは全く違う土俵のミュージシャンですしね。

ただ・・・正直言ってつまらない・・・松本孝弘のソロ前作「New Horizon」も大型ショッピングセンターでBGMとして流れていそうな全くひっかかりのないフュージョンだったのですが今回のアルバムもまさしくそんなイメージ。フュージョン的な色合いは薄くなったのですが、ハワイ音楽のギタリストとのコラボといってもハワイアン的なイメージも少なく、かといってハードロック色も薄く、特にひっかかりもないギターアルバムになっていました。

特に和風のアイコン的にところどころ三味線の音が入ったりするのですが、和風のイメージとしていかにもな使われ方があまりにも陳腐・・・アルバム全体としてもこれといったおもしろいアイディアも感じられる、さらっと流して聴けてしまうような、まさしくショッピングセンターあたりのBGMで流れていそうなアルバムになっていました。

うーん、松本孝弘は基本的にハードロックのギタリストなのかなぁ。Larry Carltonとのコラボ作が傑作だっただけに今回も海外のギタリストとのコラボということで期待はしていたのですが残念ながら期待はずれの作品でした。残念です。

評価:
CHUBBY GROOVE ★★★★★
Electric Island,Acoustic Sea ★★★

稲葉浩志 過去の作品
Hadou
Singing Bird

TAK MATSUMOTO 過去の作品
TAKE YOUR PICK(Larry Carlton&Tak Matsumoto)
Strings Of My Soul
New Horizon


ほかに聴いたアルバム

Free Will/PLAGUES

ベテランロックバンドの約4年3カ月ぶりとなる新作。長いキャリアの持ち主なだけに、非常に安定感あるオルタナ系ギターロックを聴かせてくれます。決して目新しさはないのですが、メロディアスなメロディーラインが魅力的。分厚さもある骨太のギターサウンドも安定感がありカッコいいです。楽曲によってはロックンロールナンバーやブルース色の強いナンバーなどバリエーションも備え、ベテランバンドとしての底力を感じさせてくれました。

評価:★★★★★

PLAGUES 過去の作品
CLOUD CUTTER

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年4月15日 (土)

今のPOLYSICS

Title:Replay!
Musician:POLYSICS

今年、結成20年を迎えたPOLYSICSの20周年記念の企画盤的アルバム。彼らの過去の代表曲のうち特にライブで盛り上がる曲を厳選しリテイクした上でライブ音源も収録した、特に「ライブバンドPOLYSICS」の魅力を前に押し出した企画盤になっています。

これは折に触れ言っているんですが・・・POLYSICS、20年ですか・・・インディーズ時代から破天荒なライブが話題となっていたバンドだったのですが、どちらかというと勢い重視の彼ら。率直に言って、これほど長く続くバンドとは思いませんでした。

さて今回の企画盤。彼らの代表曲をセレクトしておりまさにベスト盤といっていい内容になっています。ただうれしいのはその長さ。楽曲を厳選に厳選して12曲42分という長さにおさめています。この手のベスト盤、最近は特に3枚組4枚組と長くなる傾向にあります。まあ代表曲をまとめて聴けるという意味ではそれも悪くないのですが、はじめて聴くようなミュージシャンのアルバムとしては聴くだけで体力がいりますし、なにより「代表曲を何曲か聴きたいだけ」という程度だったとすると、逆にそんなボリュームいらないという印象すら受けてしまいます。

それだけに20周年といってもベスト盤的な内容にわずか42分というのは非常に潔さを感じます。またほどよい長さで最初から最後まで全くだれずに聴くことが出来、若干の聴き足りなさを感じる長さで、他のアルバムも聴いてみたくなるというという意味ではちょうどよい長さだったと思います。

そして今回のアルバムに収録されている彼らの代表曲を聴いてみると、POLYSICSってこんなにポップなメロディーを書くバンドだったんだ、ということを強く感じました。おそらくライブで盛り上がるということでよりポップなメロディーが流れている曲を選んでいるということもあるのでしょう。またパンキッシュで勢い重視だった初期に比べるとここ最近はポップなメロディーを書いた曲が多く、バンドとしてポップなメロディー志向に向いているこということもあるのでしょう。サビのフックもしっかり聴いており、歌詞にもインパクトがあり思った以上に初期の作品からきちんとポップミュージシャンとしての実力を見せていたのだな、と再認識しました。

さらに今回の作品、2017年バージョンとしてリテイクされているのですが、楽曲の雰囲気としてかなり変わっているのも特徴的でした。特に多くの曲に共通するのが、ギターやドラムといった生音のバンドサウンドがより重みを増し、サウンドとして重厚感ある腰の落ち着いた音になったという点でした。以前の彼らの楽曲はピコピコサウンドを前に出したエレクトロポップミュージシャンとしての側面をより強く押し出していました。その路線ももちろん魅力的ですし、今回のリテイクに関してももちろんエレクトロポップの方向性は残されています。ただそれ以上にロックバンドとして実力をつけているというのが顕著にあらわれた今回のリテイク。ある意味ピコピコポップという飛び道具的なものに頼らなくても勝負できるんだという自信すら感じることが出来ました。

またこのリテイクにより、オリジナルに比べてよりメロディーラインが前に押し出されたようにも感じます。サウンドのユニークさに必要以上に頼らず、ギターやベース、ドラムスといったバンドサウンドやメロディーラインといった楽曲のコアな部分の魅力をより前に押し出してきたように感じました。今回のアルバムで彼らが意外なほどポップなメロディーを書くバンドだったんだと再認識したのは、そんなリテイクの方向性にもよったのではないでしょうか。

わずか42分という長さといい初心者にも最適なベスト盤ですし、またリテイクという内容上、ファンにとってもPOLYSICSの今の立ち位置を再確認できる企画盤だったと思います。むしろ今のPOLYSICSが奏でているという点において、初心者にとってはこれより過去にさかのぼる必要のない、最初の1枚として機能しているアルバムだと思います。POLYSICSというバンドの魅力がつまったアルバムでした。

評価:★★★★★

POLYSICS 過去の作品
We ate the machine
We ate the show!!
Absolute POLYSICS
BESTOISU!!!
eee-P!!!
Oh!No!It's Heavy Polysick!!!
15th P
Weeeeeeeeee!!!
MEGA OVER DRIVE
ACTION!!!
HEN 愛 LET'S GO!
HEN 愛 LET'S GO! 2~ウルトラ怪獣総進撃~
What's This???


ほかに聴いたアルバム

NEW TRIBE/a flood of circle

途中ベスト盤を挟んで、新作としては約1年半ぶりとなるa flood of circleのニューアルバム。アルバム毎に出来不出来の差が大きい彼ら。前作「ベストライド」はポップ寄りになっており結果、あまり良い出来ではありませんでした。今回のアルバムはガレージ色の強い曲からポップ寄りの曲まで比較的バランスよく配置されたようなアルバム。相変わらずポップ寄りの作品はボーカル佐々木亮介の端整な歌い方もあいまってベタな内容になってしまっています。ガレージ寄りの作品に関しては文句なしにカッコいいだけに、もうちょっとポップな曲はひとひねりが欲しいと思ってしまうのですが。

評価:★★★★

a flood of circle 過去の作品
泥水のメロディー
BUFFALO SOUL
PARADOX PARADE
ZOOMANITY
LOVE IS LIKE A ROCK'N'ROLL
FUCK FOREVER
I'M FREE
GOLDEN TIME
ベストライド
"THE BLUE"-AFOC 2006-2015-

| | コメント (1) | トラックバック (0)

2017年4月14日 (金)

ミュージシャンとしてはもちろん現役

1990年代後半、「1/2」「桜」「DNA」の大ヒットで一躍時代の寵児となった女性シンガーソングライター川本真琴。しかし2000年代に一時期活動を休止。その後インディーズにその活動の中心を移しました。その後もインディーズではそれなりにコンスタントに活動をしていたものの、知る人ぞ知る的な活動が続き、すっかり「あの人は、今」的な過去の人になっていました。

しかし昨年、本当に久しぶりにお茶の間レベルに川本真琴の名前がクローズアップされることになりました。ただし、それは恋愛スキャンダルという形で。そのちょっとめんどくさい、ストーカー気質なTwitterが大きな話題となりました。正直なところ、めんどくさいストーカー気質というのは彼女のいままでの楽曲や言動からイメージ通りでもあったのですが・・・その相手が・・・狩野英孝とは・・・・・・。

ただそんな騒動とは裏腹に、2016年はむしろ彼女の音楽活動は活発化していました。

Title:川本真琴withゴロニャンず
Musician:川本真琴withゴロニャンず

こちらは川本真琴を中心に、元LABCRYの三沢洋紀、テニスコーツの植野隆司、池上加奈恵、スカートとしての活動で知られる澤部渡で結成された5人組バンドの1stアルバム。豪華なメンバー・・・というよりはむしろ知る人ぞ知るようなサブカル/アングラ勢を集めたようなバンドとなっています。

作詞作曲は川本真琴を中心にメンバー全員が手掛けた内容になっています。ただ楽曲的には意外とストレートなポップ。マニアックなメンバーに反して難解なポップソングになっていなかったのはひとえにやはり川本真琴の影響でしょうか?「music pink」という暖かい雰囲気のポップソングからスタートし、「summertimeblues」は、まあちょっとベタなタイトルですが、ストレートなオルタナ系ギターロックになっています。

ただこの豪華メンバーの個性が出てきて、サウンドに若干ひねりが入って来たのがその後。「私が思ってること知られたら死んじゃう」はタイトルからして例のSNSの騒動を反映されたタイトルでは?なんて思ってしまうのですが、ワウワウギターがちょっとソウルな雰囲気を醸し出すミディアムポップ。「エリエリ」もファンキーなサウンドやラップが入ってきたりとちょっとエキゾチックな雰囲気のあるユニークな作品に仕上がっています。

歌詞にしろメロディーにしろどこかコミカルさ、ユニークさを感じさせる9曲。それぞれポップなメロディーラインにメンバーの個性が入った楽曲に仕上がっていました。ただ全体的にメロディーのフックは抑えめ。そのためポップなメロが流れているといっても、万人向けにアピールするにはちょっと弱さも感じる部分があるのは残念でした。

評価:★★★★

Title:ふとしたことです
Musician:川本真琴

そしてもう1枚、2016年にリリースされたのが本作。デビュー20周年を記念してリリースされたセルフカバーアルバム。ご存じ「愛の才能」「1/2」という大ヒット曲や「タイムマシーン」「やきそばパン」のような懐かしい楽曲をピアノとストリングスという非常にシンプルなアレンジでカバーしています。

「愛の才能」や「1/2」がヒットしたころの彼女のイメージといえば若さあふれる彼女がギターをかき鳴らし爽やかに歌い上げるというイメージがありました。それだけにピアノでカバーというのはちょっとイメージから離れる部分もあるかもしれません。

しかし例えば「愛の才能」。ピアノ1本でジャジーに仕上げているのですが、これがジャズアレンジに驚くほどマッチ。大人の雰囲気となったこの曲は、大人になった川本真琴が歌うにはピッタリのカバーに仕上がっています。「1/2」も持ち味の爽やかさを生かした上でピアノやストリングスでしんみり大人なポップスへとアップデートしています。他の曲に関してもピアノを中心としたアレンジで上手く大人なポップスへと仕上げており、彼女のメロディーメイカーとしての才能を(「愛の才能」は岡村靖幸作曲ですが)再認識させる結果となっています。

そんな中に入っている新曲「ふとしたことです」もなかなか良い出来栄えに。素朴なアレンジのちょっとジャズ風のポップスなのですが、全盛期の彼女の曲と比べても遜色ない出来栄えに。いまだに彼女の才能が衰えていないことがわかります。

彼女自身、自らすすんでメジャーシーンから姿を消した部分があるため、今後再びメジャーシーンにカムバックする可能性は低いのですが、このアルバムを聴く限り、まだまだ多くのファンを獲得できるポテンシャルはあるミュージシャンだと思います。今回の騒動で久しぶりに彼女の名前を聞いた方、せっかくなので久しぶりに彼女のアルバムを聴いてみてはいかがですか?

評価:★★★★★

川本真琴 過去の作品
音楽の世界へようこそ(川本真琴feat.TIGAR FAKE FUR)
The Complete Single Collection 1996~2001
願いがかわるまでに


ほかに聴いたアルバム

Things Discovered/People In The Box

CDリリース10周年を記念してリリースされた2枚組のアルバム。1枚目は新曲に再録曲、さらにはメンバーそれぞれがプロデュースした作品が並ぶ「ニューアルバム」で、2枚目は過去の楽曲をメンバーがセレクトしてリマスタリングした「ベスト盤」という変則的ながらもPeople In The Boxというバンドがわかるような構成になっています。

ポストロックやシューゲイザー、ミニマルミュージックやソウル、ファンクなど様々な要素を取り込み、複雑なリズムやサウンドで組み立てたアレンジを構築しながらも楽曲全体としては爽やかでむしろポップという印象を受ける楽曲を作り上げているのが彼らの特徴。彼らの代表曲も収録された本作はPeople In The Boxの入門盤としても最適な作品。個人的にはもっともっと売れてもいいバンドだと思っているのですが・・・ただ一方、確かに「これは」といったパンチ力にちょっと欠ける点も否めないんだよなぁ・・・。

評価:★★★★★

People In The Box 過去の作品
Ghost Apple
Family Record
Citizen Soul
Ave Materia
Weather Report
Talky Organs

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年4月11日 (火)

なんでもない日常にマッチした暖かい音楽たち(映画の感想も)

Title:劇場アニメ「この世界の片隅に」オリジナルサウンドトラック
Musician:コトリンゴ

2016年は映画界、特に邦画において話題作の多い1年でした。まずは話題になったのが「シン・ゴジラ」に「君の名は。」。どちらも大ヒットを記録し、大いに話題となりました。そしてそれらの映画に増して大きな話題となったのがアニメ映画「この世界の片隅に」。大手映画配給会社によって配給され大々的な宣伝も行われた「シン・ゴジラ」「君の名は。」に対して「この世界の片隅に」はいわゆるミニ・シアター系の映画。しかし口コミから徐々に話題が広がり、様々な著名人も大絶賛。いまだに上映が続いており、ミニシアター系としては異例ともいえる大ヒットを記録しています。

実は私が、ここ最近で音楽系映画以外で唯一見た映画が本作。そして例にたがわず映画に感動し大泣きしてしまいました(^^;;そしてその感動の余波を味わおうと、遅ればせながら聴いてみたのがこのサントラ盤。音楽を担当しているのはコトリンゴ。KIRINJIの一員としても活躍している女性シンガーソングライターです。

全33曲入りのサントラで、そのうち4曲が歌入り。まずこのコトリンゴのボーカルが実に「この世界の片隅に」が描く世界にマッチしています。彼女のボーカルはほわっとした優しい雰囲気を持っており、力が抜けたボーカルが魅力的。ある意味「天然」ともいえるかもしれません。しかし一方でその根っこの部分には決して折れないような力強さも同時に感じます。この一見天然だけどその奥には芯の強さを感じるという女性像は、この映画の主人公のすずさんにも通じるところがあるのではないでしょうか。もともと同作の監督、片渕須直の手掛けた前作「マイマイ新子と千年の魔法」の主題歌を彼女が手掛けた縁で抜擢されたようですが、偶然にもこの映画にとって非常に最適な人選になっていたと思います。

このアルバムに収録されている歌モノ4曲はいずれも強い印象に残る作品ばかり。「悲しさ」と「やさしさ」を同時に内包した「悲しくてやりきれない」やすずのテーマ曲ともいえる歌詞が印象的な「みぎてのうた」。戦時歌謡の代表的な楽曲でもある「隣組」(「ドリフの大爆笑」のテーマとしてもおなじみですね)も戦時色を感じない軽快なカバーになっていますし、エンディングテーマ「たんぽぽ」も次へと進む明るさを感じさせるポップスをコトリンゴが優しく歌い上げています。

歌入りの4曲以外に関しては劇中に使われたBGMが収録されています。「この世界の片隅に」は戦時中を描いた映画ながら戦争そのものよりも戦時下を生きる人々の日常生活に焦点をあてた作品となっています。そのためか収録曲に関しても戦争映画のような悲劇性を感じさせるような悲しい曲はあまりありません。こちらの曲に関してもほっこりとした雰囲気の力の抜けた楽曲が多く収録されています。ピアノやストリングスをメインとしたいかにも映画音楽的な楽曲が多いのですが、ちょっとコミカルさも感じる楽曲の数々は、映画の中の様々なシーンを思い起こさせてくれます。

歌入りの4曲については文句なしでお勧めですし、他の曲に関しても映画の世界を上手く表現させた曲ばかりでコトリンゴの実力を感じます。ただ、1曲あたり1分に満たないような曲がメインのサントラ集なので映画を見ていない方にはそのままお勧めできる作品ではないかも。一方で映画ではまった方なら音楽の側面から映画の世界を再度楽しむにはうってつけのサントラだと思います。映画音楽も実に魅力的な作品でした。

評価:★★★★

(以下、当サイトは音楽レビューサイトですが、せっかく見た映画のため映画の感想も書いてみました。サイトの趣旨と関係ないのと、決定的なネタバレはないのですが、若干のネタバレを含むので別ページに。単なる一鑑賞者の感想の駄文ですが、ご興味あるかたは下のリンクをクリックしてください)

続きを読む "なんでもない日常にマッチした暖かい音楽たち(映画の感想も)"

| | コメント (6) | トラックバック (0)

2017年4月10日 (月)

何度も聴きたくなる傑作

Title:TROPICAL LOVE
Musician:電気グルーヴ

ちょうど4年ぶりとなる電気グルーヴのニューアルバム。オリジナルアルバムとしてはちょっと久々となる新作ですが、その間、25周年記念のライブツアー「塗糞祭」が行われたり、電気グルーヴの軌跡を追ったドキュメンタリー映画が公開されたりと、話題には事欠かなかった彼ら。それだけに4年ぶりというのはちょっと意外な印象もありました。

今回のアルバム、おそらくここで紹介する前からいろいろなところから評判を伝え聞いた方も多いかと思います。今回のアルバムに関しては絶賛の評も多く、最高傑作の呼び声も高い作品。デビューから25年以上を経過してベテランの仲間入りをしてから久しい彼らが、いまだにこれだけ高い評価を得るアルバムをリリースするというだけでも驚くべき事実だと思います。

そんな彼らのアルバムですがまず印象として受けるのが非常に聴きやすいアルバムだったという点だと思います。もともと電気グルーヴの書く楽曲はテクノの作品でもとてもメロディアスなメロディーがしっかり流れていて聴きやすいのが特徴的。またそのサウンドの選び方も、ちょうどリスナーの欲しいと思うところに欲しいと思う音がドンピシャに入る気持ちよさがあるのが彼らの大きな魅力でした。

今回のアルバムに関してもそんな心地よいリズム、サウンド、そしてメロディーラインが繰り返されています。特に今回のアルバムは「TROPICAL LOVE」というタイトル通り、先行シングルになった「Fallin' Down」やタイトルそのまま「トロピカル・ラヴ」のように、ちょっと南国風というかトロピカルな雰囲気を感じる曲や「プエルトリコのひとりっ子」のようなちょっとラテンフレーバーのする楽曲が多いのが特徴的でした。

そして今回のアルバムに関して言えるのは全体に熱量は低めで「癖」のあるような曲は少な目という点でした。それだけに最初のひっかかりはちょっと薄味と感じる方もいるかもしれません。ただアルバム全体としてしっかりとひとつの流れを感じさせる楽曲構成となっており、とても気持ちよくアルバムを通して彼らの音の世界にひたれるようなアルバムになっています。

もちろん彼ららしいシニカルでコミカルな歌詞を前に出した楽曲もきちんとおさめられています。それが1曲目の「人間大統領」とラストの「いつもそばにいるよ」。ただこのアルバムの中で一番癖のあるこの曲を1曲目とラストに配置することによりアルバムの流れをスムーズにしているように感じました。

アルバムの中のどの曲ももちろん素晴らしかったのですが、どの曲が特にというよりもアルバムを通じて何度も聴きたくなるような心地よさを感じるアルバム。彼らの最高傑作か、と言われると若干微妙ですが、間違いなく「傑作」と言えるアルバムだったと思います。電気グルーヴの魅力をまざまざと見せつけてくれた1枚でした。

評価:★★★★★

電気グルーヴ 過去の作品
J-POP
YELLOW
20
ゴールデンヒッツ~Due To Contract
人間と動物
25
DENKI GROOVE THE MOVIE?-THE MUSIC SELECTION-


ほかに聴いたアルバム

Blue/大橋トリオ

デビュー10周年を迎える彼の、早くもという表現がピッタリな11枚目のニューアルバム。これだけハイペースにアルバムをリリースしつつ、一方カバーアルバムも3枚リリースしている訳で、デビュー以来勢いの衰えないコンスタントな活動が目立ちます。楽曲的にはいつもの大橋トリオ。ソウルやジャズをベースとしたシティーポップの様相が強いポップながらも決してマニアックな方向へと行きすぎず、いい意味で万人向けの安心できる大人のポップ路線が魅力的。かと思えば本作ではラストに「宇宙からやってきたにゃんぼー」というEテレのアニメ主題歌という子供向きソングが収録されていたりするアンバランスなおもしろさも。

評価:★★★★★

大橋トリオ 過去の作品
A BIRD
I Got Rhythm?
NEWOLD
FACEBOOKII
L
R

FAKE BOOK III
White
plugged
MAGIC
大橋トリオ
PARODY
10(TEN)

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2017年4月 9日 (日)

いまだに魅力的

今回は中島みゆき関連の3作品の紹介です。

Title:中島みゆき・21世紀ベストセレクション『前途』
Musician:中島みゆき

まずはこちらはベストアルバム。1996年の「大吟醸」以来20年ぶり、という建付けですが、ただ2002年と2013年にシングル曲集がリリースされているので久しぶりという印象はちょっと薄め。なお21世紀ベストと記載がありますが、実際はあの大ヒットした「地上の星」を含めるためか、2000年以降にリリースされた楽曲が収録されています(ただこの曲が1位を獲得したのは2002年であったため、ヒットした時期という意味ではタイトル通り21世紀ベストと言えるかもしれません)。

中島みゆきといえば言うまでもなく大ベテラン中の大ベテラン。デビューから40年以上が経過しており、2000年以降の曲についても決して全盛期とか勢いがあるという表現は出来ません。実際、このベスト盤に収録されている曲は、まさに中島みゆき節ともいえる彼女らしい定着したスタイルの曲ばかりで目新しさはありません。良くも悪くも大いなるマンネリという言い方は出来るかもしれません。

しかし、それにも関わらず凡百のミュージシャンには足元にも及ばないような凄みをこのベスト盤に収録された曲からは感じることが出来ます。インパクト十分すぎるメロディーラインや60歳を過ぎても衰えるどころかさらなる表現力が加わっているボーカルもその凄みの大きな要因と言えるでしょう。ただそれ以上に凄みの大きな要素であるのがデビュー40年を経て全く衰えることのない歌詞。その表現力、インパクトある言葉の選び方、そこから伝えようとするメッセージ性、どれをとっても日本のミュージシャンの中で指折りの実力の持ち主なのは言うまでもないでしょう。特にどの曲に関しても、世の中の弱い立場の人の心境にそっと寄り添うような曲が多く、多くのリスナーの胸をうつ曲はこのベスト盤にも多く収録されています。

特にTOKIOに提供した「宙船」のサビの歌詞

「その船を漕いでゆけ お前の手で漕いでゆけ
おまえが消えて喜ぶ者に おまえのオールをまかせるな」

(「宙船」より 作詞 中島みゆき)

という人生の応援歌的な歌詞ですが、この短い一文だけでも同じ人生の応援歌的な歌詞を歌う某J-POPシンガーが100年たってもたどり着けないような歌詞だと思います。

中島みゆきといえばオリコンチャートでは4つの年代(1970年代、80年代、90年代、2000年代)でシングルチャート1位を獲得した唯一のソロミュージシャンという記録を持っています。2010年代は残念ながらここまで1位獲得曲はありません。ただこのベスト盤を聴く限りでは彼女の実力、魅力に全く衰えはありません。2010年代はあと3年ですが、タイアップなどの条件がよければあっさり1位獲得曲が登場しそう。その変わらぬ凄みを感じるベスト盤でした。

評価:★★★★★

Title:中島みゆきConcert「一会」(いちえ)2015~2016-LIVE SELECTION-
Musician:中島みゆき

で、こちらはベスト盤と同時リリースのライブ盤。タイトル通り、2015年から2016年にかけて実施されたライブツアー「一会」の模様を収めたライブアルバムです。

こちらに関しても基本的にボーカルに安定感があるよな、ということを実感できます。多分、生で聴けばその迫力あるボーカルにゾクゾクくるんだろうなぁ、ということは音源を通じても感じます。ただ、全体的には原曲通りのアレンジ。若干演奏にダイナミックさが増したでしょうか?あまりに安定感ある上手いボーカルで、基本的に原曲を崩したような歌い方はしないので、ライブ盤ならではのおもしろさというのは比較的低めです。

もちろんライブ盤として出来は悪くありませんし、「旅人のうた」「浅い眠り」のようなヒット曲も収録されているためベスト盤とあわせて聴くには最適な選曲かも。ただ、どちらかというと同時発売のDVDの方が(こちらは見ていませんが)魅力的なような・・・。

評価:★★★★

中島みゆき 過去の作品
DRAMA!
真夜中の動物園
荒野より
常夜灯
十二単~Singles4~
問題集
組曲(Suite)

Title:「歌縁」(うたえにし)―中島みゆき RESPECT LIVE 2015―

そしてそんな中島みゆきのベスト盤&ライブ盤と同時にリリースされたのが本作。2015年11月に行われた「中島みゆきRESPECT LIVE『歌縁』(うたえにし)」を収録したのがこのアルバム。中島みゆきを尊敬する11名の歌手が彼女の曲をカバーしたライブイベント。ライブ自体も非常に反響があったようで、今回、ライブアルバムのリリースとなりました。

中島みゆきといえばボーカリストとしても非常に高い実力の持ち主。その彼女の曲をカバーするにはかなりの力量が必要。それだけに正直言えばあまり期待はしていなかったのですが・・・これがそんな予想をはるかに上回る素晴らしい出来のライブアルバムになっていました。

とにかく素晴らしかったのが1曲目満島ひかり「ファイト!」と2曲目中村中「『元気ですか』~怜子」。どちらも楽曲の中に朗読を取り入れて中島みゆきの歌詞の魅力を前に押し出しているカバーとなっていますが、どちらも感情込めて語る朗読の部分も歌の部分も実に魅力的でゾクゾクするような迫力があります。特に満島ひかりってもともとかの三浦大知が所属していたFolderの一員として歌手としてデビューしていたことは知っていましたが、彼女もこれだけ歌が上手かったんですね・・・Folder時代は三浦大知の歌の上手さばかりに焦点があたっていただけにちょっと意外でした。逆に中村中の朗読も天下一品。彼女、ある意味ポスト中島みゆき的な位置にいる歌手だけに、この組み合わせは非常に相性の良さを感じます。

他にも安藤裕子の「世情」も、彼女のイメージとはちょっと異なる太い声を聴かせる迫力ある歌唱が魅力的。華原朋美の「あのさよならにさよならを」も若干不安定さはあるものの伸びやかなボーカルを聴かせ、他の実力派たちに負けていません。なにげにこのくらい低い音の方が彼女の声に合っているかも?

安藤裕子と同じく「世情」をカバーしたクミコもそのビブラートを生かしたボーカルが魅力的。ここらへん、安藤裕子バージョンとの聴き比べもおもしろいかも。坂本冬美や研ナオコの力強いボーカルはまあ予想通りだったのですが、最後を飾る大竹しのぶの予想以上の歌の上手さにもビックリ。調べたら彼女、過去からコンスタントに歌手としても活躍していたんですね・・・。

おそらく熱烈な中島みゆきファンも納得のカバーアルバムだったのではないでしょうか。大きな反響があったこともうなずける実に魅力的なライブ盤でした。

評価:★★★★★

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年4月 8日 (土)

早くもベスト盤

Title:アンコール
Musician:back number

おそらく今、もっとも人気のあるバンドのひとつではないでしょうか。この曲で大ブレイク!といった感じはないのですが、2012年にリリースされた「わたがし」あたりから徐々に注目を集め、気が付けば押しも押されぬ人気バンドとなったback number。デビューからインディーズを含めて8年目、アルバムも5枚という段階ですが、早くも初となるベストアルバムがリリースされました。

今回、このベスト盤もオリコンチャートでは最高位2位にとどまったものの、1位はかのSMAPのベスト盤。また初動売上も27万枚という好セールスを記録しており、週が違えば余裕で1位を獲得できた数値。その後もロングヒットを続けており、根強い人気を見せています。

今回のベスト盤は2枚組全32曲が収録されています。曲順については特に発表順とかではなく、またCDによって特段のテーマ性を与えたものではない模様。アルバムとして全体の流れを重視したような選曲といったところでしょうか。あえて言えばDisc1の方はストレートな楽曲が多く、Disc2の方に若干癖のある曲が多かったように思います。

さて彼らの楽曲の最大の魅力はおそらくその歌詞にあるのではないかと思います。昨今のJ-POPは万人受けを狙うばかりに抽象的な歌詞が目立ちますが、その中でも彼らが歌うのはストレートなラブソング。それもきちんと登場人物の顔が見えるような具体的に描写されたラブソングがほとんど。このドラマ性ある歌詞が大きな魅力となっています。

そんな具体的で物語性ある歌詞が多いのですが、ただベスト盤で彼らの代表曲を聴くとちょっと気になる点がありました。それは嫌でも惹きつけらえるようなインパクトのある歌詞の一節が少ないということ。1曲1曲きちんと耳を傾ければ印象的な歌詞になっているのですが、ただハッと胸に突き刺さるような一節はあまりありません。ドラマのシチュエーションにしても比較的シンプル。もうちょっとひねりがほしいかな、とも思ってしまいます。

もっともそんな中でも「わたがし」なんかは名曲中の名曲。片想いの女の子と夏祭りの会場を歩く、近づきたくてもなかなか近づけないシチュエーションもグッときますし

「夏祭りの最後の日 わたがしを口で溶かす君は
わたがしになりたい僕に言う 楽しいねって」

(「わたがし」より 作詞 清水依与吏)

という歌詞も、まさにこの一文だけで胸にキュンと突き刺さるキラーフレーズとなっています。

またよくありがちな「君は僕のもの」と歌わずに「僕は君のもの」と歌う「僕の名前も」も、ある意味いまどきの恋人関係を描写しているようでインパクト大。ここらへんのレベルの曲をコンスタントに書けるようになればおもしろさがグッと増すと思うのですが・・・。

メロディーラインについても歌謡曲テイストが強く、ベタにストリングスで盛り上げるアレンジが多く見受けられます。ある意味歌詞が売りなバンドなだけにメロディーやアレンジはむしろ多少ベタな方がおもしろいと思うのでこれはこれでありかと思うのですが、こちらももうちょっとインパクトが欲しいなぁ、と感じてしまいます。

いいバンドだし1曲1曲は決して悪くないのですが、アルバムとか、こういったベストアルバムでまとめて聴くと、歌詞にしろメロにしろひとつずば抜けたものがない中途半端さを感じてしまいます。時々、ずば抜けた名曲が生まれてくるあたり実力は間違いなくあると思うのですが・・・。もう一皮むけるとおもしろいと思うんですけどね。これからに期待です。

評価:★★★★

back number 過去の作品
スーパースター
blues
ラブストーリー
シャンデリア

| | コメント (0) | トラックバック (0)

より以前の記事一覧

その他のカテゴリー

DVD・Blu-ray | その他 | アルバムレビュー(洋楽)2008年 | アルバムレビュー(洋楽)2009年 | アルバムレビュー(洋楽)2010年 | アルバムレビュー(洋楽)2011年 | アルバムレビュー(洋楽)2012年 | アルバムレビュー(洋楽)2013年 | アルバムレビュー(洋楽)2014年 | アルバムレビュー(洋楽)2015年 | アルバムレビュー(洋楽)2016年 | アルバムレビュー(洋楽)2017年 | アルバムレビュー(邦楽)2008年 | アルバムレビュー(邦楽)2009年 | アルバムレビュー(邦楽)2010年 | アルバムレビュー(邦楽)2011年 | アルバムレビュー(邦楽)2012年 | アルバムレビュー(邦楽)2013年 | アルバムレビュー(邦楽)2014年 | アルバムレビュー(邦楽)2015年 | アルバムレビュー(邦楽)2016年 | アルバムレビュー(邦楽)2017年 | ヒットチャート | ヒットチャート2010年 | ヒットチャート2011年 | ヒットチャート2012年 | ヒットチャート2013年 | ヒットチャート2014年 | ヒットチャート2015年 | ヒットチャート2016年 | ヒットチャート2017年 | ライブレポート2011年 | ライブレポート2012年 | ライブレポート2013年 | ライブレポート2014年 | ライブレポート2015年 | ライブレポート2016年 | ライブレポート2017年 | ライブレポート~2010年 | 名古屋圏フェス・イベント情報 | 日記・コラム・つぶやき | 映画・テレビ | 書籍・雑誌 | 音楽コラム | 音楽ニュース