アルバムレビュー(邦楽)2017年

2017年5月27日 (土)

全曲「GET WILD」

Title:GET WILD SONG MAFIA
Musician:TM NETWORK

出ました!ネタ的な意味でもかなり話題となった本作。全4枚組4時間超以上というボリュームある内容のすべての曲が「GET WILD」というとんでもないアルバム。私の記憶ではもともとネット上で全曲「Lifetime Respect」という三木道山のアルバムが発売されたという嘘情報のネタが発端。その後実際に織田裕二の「Love somebody」やm.c.A.T.の「Bomb A Head」、松崎しげるの「愛のメモリー」など、アルバム1枚が1曲の別バージョンの曲が並ぶというネタ的なアルバムがリリースされました。

本作はある意味、その「アルバム全曲が1曲の別ヴァージョン」の究極的な形態。もともと「GET WILD」はいろいろなアルバムに様々なバージョンが形をかえて収録されていたり、シングル曲としても別バージョンが何度も発売されていたりといろんなバージョンがあることは認識されていました。実際、「アルバム1枚すべて同じ曲」のアルバムの先駆け的な存在として2004年にリリースされたボックス盤「WORLD HERITAGE DOUBLE-DECADE COMPLETE BOX」の中に全曲が「GET WILD」という「ALL the “Get Wild” ALBUM」が既にリリースされていたりしました。

それだけTM NETWORKの代表曲として人気を誇る「GET WILD」というナンバー。ただアルバムの中でのメンバーへのインタビューでも語られているとおり若干不思議な曲で、TM NETWORKで一番売れた曲でもなければデビュー曲でもありません。またファンへの人気投票を行っても、ひょっとしたらこの曲が一番好きというファンは決して多くはないかもしれません。個人的にも同じ「シティーハンター」のエンディングテーマとしても「GET WILD」よりも「STILL LOVE HER」の方が好きかもしれません。

しかし楽曲が登場した時のインパクトとしては他の曲と比べてずば抜けたものがあるのではないでしょうか。何よりも本作がタイアップとなったアニメ「シティーハンター」のエンディングの衝撃は今でも忘れられません。アニメ本編の最後のシーンに重なるようにピアノのイントロが静かにスタート。そのアニメの余韻を残すように楽曲がはじまるのですが、このアニメ本編からエンディングテーマへの流れが鳥肌が立つほどカッコいいものがあります。このアニメタイアップの衝撃が「GET WILD」が話題となった大きな要因なのは間違いありません。

そんな「GET WILD」は時代を経て様々なアレンジを施して変化していきます。今回のアルバムではバージョンがリリースされた順に並んでいるだけに、メンバーが、特に小室哲哉が「GET WILD」に対するスタンスの変化がわかり興味深いものがありました。「GET WILD」が最初に大きな変化を見せるのが89年にリリースされた「GET WILD '89」。原曲に対して宇都宮隆のボーカルのサンプリングが効果的に用いていたりして、よりテクノ色が強くなる本作。小室哲哉本人が「最初に僕が『こうなったら良いな』というアレンジに仕上がった」と語っているとおり、完成形と考えていたのか、その後、TM NETWORKがTMNとなり1994年に解散するまでのバージョンは基本的に「'89」に準拠するバージョンとなっています。

ただ「'89」ではアニメでも印象的だったピアノのイントロが削除されています。おそらく小室哲哉はこのピアノのイントロはあくまでもタイアップ向けで楽曲にとっては本来不必要と考えていたのでしょう。ところがおもしろいことにDISC2以降、再結成後のバージョンについてはこのピアノのイントロが復活しており、「'89」よりもむしろ原曲に準拠したアレンジが多くなります。それだけ「シティーハンター」のエンディングに流れたピアノのイントロからスタートするバージョンがファンにとっては印象的だったということでしょうし、TM NETWORKとしてもそんなファンの意向は無視できなくなってきた、ということでしょう。また94年までの活動についてはメンバーの意向が第一となっていたのに対して、再結成後はそうはいかなくなかった、ということを意味しているのかもしれません。

また「GET WILD」の傾向としてもうひとつ顕著だったのが、最近のバージョンになればなるほどイントロが長くなってくるという点でした。もともと94年の最初の解散時までのバージョンも徐々に長くなっていたのですが、ここ最近ではそれがさらに顕著。Disc3に収録されている2015年以降のバージョンでは20分近い長いバージョンとなっているのですが、10分以上がイントロと、既にイントロ部分だけで別の曲になってしまっています。

その長~いイントロを聴いて気がついたのですが、(うすうす感じていたのですが)正直言って、このイントロ部分がいまひとつつまんない・・・。はっきりいって単調なトランスで、特におもしろみもない単調なリズムが鳴っていて、音としてもはっとするような驚きのある一音がほとんどありません。

その事実にあらためて気が付いたのが今回のアルバム、あの石野卓球によるリミックスが収録されていたため。この石野卓球によるリミックスは、電気グルーヴの最新作「TROPICAL LOVE」に通じるような雰囲気を持ったラテン風のリミックスなのですが、リズムパターンとかも聴かせるものがあり、また宇都宮隆のボーカルをサンプリングしているのですが、このサンプリングもリズムパターンやサウンドとピッタリマッチ。見事ラテン風な雰囲気の曲に仕上がっています。

しかし興味深いのはインスト曲としてはおもしろさを感じない小室哲哉のサウンドがポップスの「アレンジ」として流れると断然おもしろく曲を引き立てているという点。この言い方がピッタリ来るのが微妙なのですが小室哲哉が立っている土俵ってあくまでも「テクノ」ではなく「J-POP」なんでしょうね。本作ではそのことを再認識することが出来ました。

また今回のアルバム、DISC4として「GET WILD」の曲を様々なミュージシャンがカバーしていたのですが、女性ボーカル曲がイマイチで男性ボーカル曲が曲にマッチしていた点も興味深かったです。おそらく原曲が宇都宮隆のボーカルを意識して作られた影響なんでしょうね。カバー曲をこうやって並べることによってその事実にも気が付かされました。

流れてくる曲が次から次への「GET WILD」なのでファン以外にはあまりお勧めできません。ただ楽曲によってバリエーションが様々だったため、4時間以上の長さにも関わらず、意外とダレずに最後まで聴くことが出来ました。またこれがおそらく「GET WILD」という曲が持っている「曲の力」なんでしょう。万人にお勧めのアルバム、という訳ではありませんがファンにとっては間違いなく聴くべきアルバムでしょう。

評価:★★★★

TM NETWORK 過去の作品
SPEEDWAY
TM NETWORK THE SINGLES 1
TM NETWORK THE SINGLES 2
TM NETWORK ORIGINAL SINGLES 1984-1999
DRESS2
QUIT30


ほかに聴いたアルバム

SHISHAMO 4/SHISHAMO

人気上昇中の女性3人組ロックバンドSHISHAMOのニューアルバム。チャットモンチーブレイク以降、ねごととか赤い公園とか女性オンリーのバンドが増えていますね。彼女たちはその中でも非常にシンプルなギターロックが特徴。歌詞も素直な女の子の気持ちをストレートに描いた曲が多く、良くも悪くも癖のないギターロックを聴かせてくれます。サウンドにもメロにももう一癖あればよりおもしろいと思うのですが・・・。

評価:★★★★

SHISHAMO 過去の作品
SHISHAMO 3

LIFE IS A MIRACLE/黒猫チェルシー

黒猫チェルシーといえば最近はバンドよりもボーカル渡辺大知の俳優としての活躍が目立ちますが、バンドとしても活動を再開。約4年3ヶ月ぶり、久々のアルバムがリリースされました。黒猫チェルシーといえば以前からガレージサウンドがメインながらもどこかポップの色合いを強く感じましたが、久々の新作に関してもガレージサウンドをメインとしつつポップで端整にまとめあげているのが特徴的。以前の作品に比べてより「ポップ」としての側面が強調されたアルバムになっていました。もっと多くのリスナー層に受け入れられてもよさそうな印象が。残念ながら俳優渡辺大知の知名度がバンドに及んでいないようで売上的には苦戦しているようですが、今後の彼の活躍次第ではバンドのブレイクもありえそう。

評価:★★★★

黒猫チェルシー 過去の作品
All de Fashion
猫Pack
NUDE+
猫Pack2
HARENTIC ZOO
Cans Of Freak Hits

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2017年5月23日 (火)

3人組となった新たな一歩

Title:光源
Musician:Base Ball Bear

昨年、ギターの湯浅将平が脱退。それも突然、レコーディングの現場にあらわれなくなり「失踪」という形での脱退という非常に衝撃的な脱退劇となりました。その結果、制作活動が一時ストップしたのかベスト盤を挟み、1年5ヶ月ぶりにリリースされたのが本作。メンバーが3人となって初のオリジナルアルバムとなりました。

そんな突然の脱退劇という予期せぬ事態で3人組となったBase Ball Bearですが今回のアルバムを聴くと、その脱退劇がむしろプラスに働いたのではないか、と思うほどの出来になっていました。今回のアルバムの大きな特徴は楽曲的にブラックミュージック寄りになったという点。前作「THE CUT」でもファンクやソウル的な要素を強く感じましたし、いままでのBase Ball Bearの楽曲にもそのような要素は感じることが出来たのですが、今回のアルバムではファンクやソウルの要素をより明確に感じることが出来ます。

「すべては君のせいで」はファンキーなサウンドでリズミカルに聴かせるディスコチューンでいきなり黒っぽいギターとベースの音が楽しめますし、「(LIKE A)TRANSFER GIRL」も同じくファンキーなサウンドが楽しいディスコチューンになっています。さらにアルバムの中で耳をひくのが「Low way」「寛解」で、メロウな雰囲気あふれる楽曲になっておりサウンドにもグルーヴ感を感じとても心地よいシティポップ風な楽曲に仕上がっています。

いままではギターロックバンドというイメージが強く、実際にあくまでもバンドサウンドを重視した曲作りをしていた彼ら。ただ今回、メンバーのうちギタリストが抜けることによりバンドサウンドという枠組みにとらわれない曲づくりが出来、その結果、より黒さが増したサウンドになったように思います。特にサウンドのバランスとしてベースラインを前に出したような曲が多く、この点もギタリストがサポートとなった結果、遠慮なく本人たちのやりたい音づくりが出来た結果かもしれません。

最後2曲に関しては以前の彼らと同様のギターロックになっていましたがこちらに関しては悪くはないのですが平凡という印象でちょっと残念な締めくくり。ただアルバム全体としては間違いなく傑作アルバムだったと思います。特にいままでのBase Ball Bearらしさをきちんと残した上で新機軸をきちんと押し出したという意味では非常にバランスのよい作品だったと思います。

ちなみに今回の歌詞は「青春」をテーマとしているそうで、この点もBase Ball Bearらしい感じ。特に1曲目「すべては君のせいで」は学生時代の恋愛を描写しており、甘酸っぱい気持ちになれます。ここらへんもBase Ball Bearらしさをきちんと保ったアルバムになっており、歌詞の側面でも楽しむことが出来るアルバムになっていました

ギタリストが失踪、脱退という衝撃的な展開となっていまったBase Ball Bearでしたが、むしろこれからの活動が楽しみになってくるようなアルバムをリリースしてきました。3人組となって新たな一歩を踏み出した彼ら。その第1弾としてこれからの彼らの方向性をしっかりと示すことができたアルバムでした。

評価:★★★★★

Base Ball Bear 過去の作品
十七歳
完全版「バンドBについて」
(WHAT IS THE)LOVE&POP?
1235
CYPRESS GIRLS
DETECTIVE BOYS

新呼吸
初恋
バンドBのベスト
THE CUT
二十九歳
C2
増補改訂完全版「バンドBのベスト」


ほかに聴いたアルバム

Q/女王蜂

フルアルバムとしては復帰後2作目となるアルバム。前作に比べるとダンサナブルなエレクトロサウンドがメイン。妖艶さとダンサナブルでポップな楽曲のバランスが中途半端に感じた前作に比べると、ダンサナブルなポップという方向性に舵を切った印象が。全体的にはグッとポップで聴きやすいアルバムに仕上がっています。一方、妖艶さという観点ではかなり薄味になってしまった印象が。ポップスさ妖艶さどちらも中途半端だった前作から比べるとグッとよくなっている感じはするのですが、彼らの個性という意味では妖艶さという要素ももうちょっとほしいような。

評価:★★★★

女王蜂 過去の作品
孔雀
蛇姫様
奇麗
失神

SPLASH☆WORLD/miwa

途中、バラードベストのリリースを挟み、1年10ヶ月ぶりとなるmiwaのニューアルバム。もともと典型的なJ-POPというイメージが強い彼女でしたが、本作では悪い方向にそれが顕著にあらわれてしまっています。楽曲にはインパクトはあるものの単調でおもしろみがありません。安易にストリングスを入れてスケール感を出そうとしているのも悪い意味でJ-POP的。いままで聴いた彼女のアルバムの中で、一番厳しい出来だったかも・・・。

評価:★★★

miwa 過去の作品
guitarium
Delight

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2017年5月21日 (日)

25周年企画第1弾

Title:ウルフルズTribute~Best of Girl Friends~

今年デビュー25周年を迎えたウルフルズ。25周年という記念の年の今年、ニューアルバムのリリースや野外ライブの開催など様々な企画が用意されているようですが、その第1弾的企画になるのが本作。様々なミュージシャンが参加して彼らの曲をカバーするトリビュートアルバムです。

〇周年企画にトリビュートアルバムをリリースする試み、ここ最近では珍しくない・・・どころかむしろ「ありがち」な企画。ただそんな中で本作がユニークなのはタイトルにもある通り、すべて女性ミュージシャンによるカバーになっている点。ウルフルズの歌を女性シンガーがどのようにカバーするのか、ある意味とても興味深い企画でもありました。

その結果として非常にユニークなカバーが多く収録された聴きどころの多いアルバムになっていました。特にウルフルズの曲をそのままカバーすると女性ボーカルだと違和感があるからでしょうか、原曲を大きくいじった自由度の高いカバーが多かったのが特徴的。1曲目Superfly「ヤング ソウル ダイナマイト」こそ、Superflyもウルフルズと同様、ファンク色強い曲も演るだけに原曲に比較的近い雰囲気でのカバーになっていましたが、続くチャットモンチー「かわいいひと」は軽快なチンドン風の鐘が鳴り響くかわいらしいアレンジのポップチューンになっていますし、UAの「歌」も静かで空間を生かしたアレンジに彼女の歌を前に押し出した楽曲になっており、完全にUAの曲に仕上がっています。

ハンバートハンバートの「SUN SUN SUN '95」もレトロポップ調の軽快で楽しいポップナンバーになっていますし、原曲だとパワフルなボーカルが前に出ていたふくろうずによる「バンザイ~好きでよかった~」もシンプルなポップにまとまっています。

久しぶりにその名前を聞いた松崎ナオ「暴れだす」も特徴的なそのボーカルが耳を惹きます。リズムが微妙にラテン風なのもユニークなところ。BONNIE PINKの「僕の人生の今は何章目だろう」もレゲエ風なアレンジがちょっと意表をつかれますが、完全にBONNIE PINKの曲になっているのも面白い感じ。そしてラストを飾るのはおなじみ「ガッツだぜ!!」を木村カエラがエレクトロパンク調にカバーしています。

全12曲を12組のミュージシャンが12通りの解釈でカバーしており、そのいずれも自らの曲としてしっかりと取り込んでいます。基本的にこの手のトリビュートは名カバーがあっても一方ではずれも少なくないのですが、このアルバムに関しては基本はずれはありませんでした。

また一方で楽曲がこれだけ自由度の高いカバーに耐えられるのもやはりひとえにウルフルズの原曲がしっかりとしたメロディーラインを持った曲ばかりだからなのでしょう。またよくよく考えるとウルフルズの楽曲は、トータス松本の力強いボーカルとファンキーでソウルなサウンドから男っぽいというイメージはありつつ、歌詞についてはマッチョっぽさは薄く、そういう意味でも女性シンガーのカバーでもしっくりくる内容だったのかもしれません。

ウルフルズの楽曲を違う側面からスポットを当て、あらなた魅力を引っ張り出してきたアルバム。ウルフルズが好きならもちろん、個々のミュージシャンのファンでも満足できるトリビュートアルバムに仕上がっていました。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Babe./阿部真央

前作「おっぱじめ」からちょうど2年ぶりとなる新作。この2年の間に出産、離婚を経た彼女。今回の新作では特に母であることを意識した曲を収録しています。それが「母である為に」「この時を幸せと呼ぼう」で、どちらも子供への惜しみない愛情を歌った歌になっています。この2曲も大きなインパクトがあるのですが、アルバム全体としてはロック色の強いアルバムに。以前の彼女の曲といえば、いろいろなジャンルに手を出しすぎてバラバラになっていた印象が強いのですが、前作あたりから楽曲にまとまりが出てきたような感じがします。いい意味でアルバムに安定感が出てきた作品。「母」となった彼女が今後どのような曲を聴かせてくれるのか、非常に楽しみです。

評価:★★★★

阿部真央 過去の作品
ポっぷ
シングルコレクション19-24
おっぱじめ

Superfly 10th Anniversary Greatest Hits “LOVE, PEACE & FIRE”/Superfly

タイトル通り、デビュー10周年を記念してリリースされたSuperflyのベスト盤。もっともベスト盤は4年前にリリースされたばかりで、かつその後リリースされたオリジナルアルバムが1枚のみという状況なので、感想としては前のベスト盤とほぼ一緒(^^;;洋楽的な部分と歌謡曲的な部分のバランスが絶妙で垢抜けた部分といい意味でベタな部分が同居しているポップスがとても心地よいアルバムです。内容的には5つですが、あまりにもベスト盤のスパンが短いということで。

評価:★★★★

Superfly 過去の作品
Superfly
Box Emotions
Wildflower&Cover Songs:Complete Best 'TRACK3'
Mind Travel
Force
Superfly BEST
WHITE
黒い雫 & Coupling Songs:`Side B`

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2017年5月20日 (土)

デビュー5年目で早くもベスト

Title:5th Anniversary Best
Musician:家入レオ

タイトル通りデビュー5周年を記念してリリースされる女性シンガーソングライター初のベストアルバム。デビューからわずか5年、アルバムも4枚のみでベスト盤リリースというのは昔ならばかなり早いペースという印象を受けるのですが・・・ただここ最近、ともすれば「10周年」でベスト盤を出した後、「15周年」「20周年」でのベスト盤をリリースしてくるようなミュージシャンが少なくない中、5年目のベスト盤というのは妥当なのかもしれません。

直近のオリジナルアルバム「WE」でよりその傾向が強くなったのですが、家入レオの楽曲のイメージといえばもろ90年代のガールズポップ路線。「ガールズポップ」というと最近ではアイドルの楽曲を指して使われることも多いようですが、ここで言うガールズポップというのは90年代のアイドル冬の時代と呼ばれた頃、女性シンガーを実力派として売り出しつつもアイドル的な要素を織り込んで売り出したようなミュージシャンたちのこと。個人的にも高校生の頃、結構好んで聴いていたジャンルなのですが、彼女はその中でも特にポップスロック寄りのシンガーに似たようなものを感じます。具体的に言えば久宝留理子、久松史奈、田村直美、永井真理子、近藤名奈・・・彼女からイメージされるシンガーは次々と出てきます。

彼女はメロディーのインパクト、特にサビのインパクトが非常に強く、その点は良くも悪くも「売れ線」といった印象も強く受けます。「Bless You」など「愛なんていつも残酷で もう祈る価値ないよ」というこれでもかというほどのインパクトを持った歌詞からスタート。デビューシングルとなった「サブリナ」もサビ先でインパクトあるフレーズからスタートしますが、彼女の楽曲は売れるポップスのお手本と言ってしまっても過言でないインパクトを持っています。

90年代のガールズポップ路線といえばその傾向をもっとも強く感じたのは「Shine」。特にサビに入る直前からサビへの入りに関しては高校時代によく聴いていたポップスを思い出す、どこかノスタルジックな雰囲気すら感じてしまいます。90年代風といえば「Hello To The World」にもそんな懐かしい空気を感じます。多保孝一が楽曲を提供しているこの曲はちょっと70年代ロックの匂いも感じてSuperflyっぽい雰囲気もあったりするのですが。

90年代ポップ色の強いインパクト重視の楽曲は目新しさはないのですがアラフォー世代にとってはある種の懐かしさを感じるポップスの連続だと思います。ただ彼女の楽曲でちょっと気になるのは、彼女は「シンガーソングライター」という肩書がついているのですが、ほとんどの曲は単独作曲ではなく西尾芳彦や多保孝一との共作であるという点。なんとなくのイメージ論なのですが、彼女が中心となっているというよりも、彼女が口ずさんだ1フレーズ程度のメロディーラインを他の作家陣がむりやり引き延ばして楽曲にしているように思います。今後も作家陣に恵まれればいいのですが、この手のシンガーは一度売れなくなると作家陣に恵まれなくなり、一気に落ちていくというケースが多いだけに気になるところ・・・。まだ22歳の彼女、まだまだ成長していく余地のあるシンガーだと思うので、今後の活躍も気になるのですが。

評価:★★★★

家入レオ 過去の作品
LEO
a boy
20
WE

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2017年5月19日 (金)

弦楽四重奏によるセルフカバー

Title:la RINASCENTE
Musician:KAN

KANちゃんの新作はセルフカバーアルバム。今回のセルフカバーは彼の過去の名曲を弦楽四重奏によるアレンジがほどこされた内容になっており、優雅なストリングスの調べを楽しめるアルバムになっています。タイトルの「la RINASCENTE」とはフランス語で「生まれ変わる」という意味だとか。一時期「フランス人になりたい」とフランスに移住していた彼らしいタイトルになっています。

ちなみにジャケット写真もDonald Fagenの「The Nightfly」のパロディー。まあ、「The Nightfly」のジャケットはよくパロディーに用いられるジャケットなのでパロとして用いるにはちょっとベタなセレクトなのですが、歌詞カードを1ページめくってあらわれる写真はKANらしいお遊びがあらわれます。

さてJ-POPのミュージシャンのセルフカバーでストリングスアレンジを用いてくるというのも正直言ってしまえばよくあるケース。特にオーケストラアレンジをほどこして「ロックとクラシックの融合」と謳い文句のアルバムをつくってくるミュージシャンは昔からゾクゾクと登場してきます。

ただ個人的にこの手のストリングスアレンジアルバムであまり「これ」といった傑作に出会えたことはほとんどありません。一番の理由はその企画の安直さ。原曲をそのままクラシック風にアレンジしただけの結果、ただ単にスケール感を増そうとしたストリングスアレンジが非常に平凡に仕上がったケースがほとんど。ストリングスアレンジとしてもセルフカバーとしても中途半端という出来になってしまっているケースが大半です。

それだけに今回のアルバムに関してもあまり高い期待はしていなかったのですが・・・ただそこはさすがにKANちゃん!私が知っている限りではこの手のセルフカバーアルバムでは一番の出来だったように思います。

ストリングスアレンジによって原曲のイメージが大きく変わった作品はありません。KANの曲の大きな特徴であるピアノの音も変わらず入っています。ただ、弦楽四重奏という最小限のストリングスにおさえられたアレンジは比較的シンプルでムダを感じません。公式サイトの紹介にも「KAN自身による丁寧な編曲」という書き方をしていますが、よくよく練り込まれたアレンジの妙技を感じます。

ご存じ「愛は勝つ」は原曲を持っていたダイナミズムを今回のセルフカバーでも感じられますし、「まゆみ」などは原曲でもストリングスを用いたアレンジでしたが今回のセルフカバーではより優雅さを感じるカバーになっています。また全体的にも楽曲に「優雅さ」を増したように感じた今回のセルフカバー。大衆音楽であるポップソングを貴族的にクラシカルに優雅にまとめているというのもKANらしいある種のユーモアさを感じました。

ちなみに今回のセルフカバーアルバムに書き下ろしの曲が1曲ありますが、イントロ的なインスト作なので過大な期待は不要かと。ただアルバム全体としては彼の名曲をあらたな側面で切りとった非常にユニークなセルフカバーの作品になっていたと思います。KANのアレンジャーとしての才能が光るアルバムでした。

評価:★★★★★

KAN 過去の作品
IDEAS~the very best of KAN~
LIVE弾き語りばったり#7~ウルトラタブン~
カンチガイもハナハダしい私の人生
Songs Out of Bounds
何の変哲もないLove Songs(木村和)
Think Your Cool Kick Yell Demo!
6×9=53
弾き語りばったり #19 今ここでエンジンさえ掛かれば


ほかに聴いたアルバム

Change your pops/雨のパレード

最近注目を集めている新人バンドのメジャー2作目となるアルバム。自らを総合芸術の「創造集団」を名乗っているようで、バンドメンバー4名のほか、デザイナー集団もメンバーを擁するグループだそうです。なんだか「意識高い系」みたいな感じが気になるのですが、ピアノとシンセを主軸としたドリーミーな美しいサウンドに、歌謡曲テイストも感じる哀愁感あふれるメロディーラインにはとても耳を惹くものがあります。ちょっとどこかで聴いたような・・・感が否めず、サウンドにしろメロにしろもうちょっとインパクトが欲しいな、と思う部分は強いのですが、確かにおもしろそうな新人バンドであることは間違いなさそう。今後の成長に期待です。

評価:★★★★

Mr.KingKong/The Mirraz

何の事前告知もなく4月1日にいきなり配信限定でリリースされたThe Mirrazの新作。配信のみでいきなりリリースという形態は海外ではよくあるのですが日本ではまだまだ珍しい感じ。最近はEDM方向にシフトしてしまった彼らですが、この新作はまたパンキッシュなギターロック路線に戻ってきています。

ハイテンポなリズムに早口気味の歌というスタイルも以前のThe Mirrazそのままのスタイル。「ミュージシャンライフ!」「ボクハ芸能人」のように自虐的に自らの生活を描写するスタイルもThe Mirrazらしさを感じます。ある意味原点回帰的で、世の中を斜めから見たような彼ららしい痛快さも感じるのですが、一方では「飯マズ嫁と僕の物語」のようにネタ的にはユニークなのですが歌詞の内容は薄っぺらい楽曲もチラホラ。早口の歌で歌詞を詰め込んでいるんだから、もうちょっとネタを深掘りしてほしいのですが・・・ここらへんがThe Mirrazがいまひとつブレイクできない原因なのかも・・・。

評価:★★★★

The Mirraz 過去の作品
We are the fuck'n World
言いたいことはなくなった
選ばれてここに来たんじゃなく、選んでここに来たんだ
夏を好きになるための6の法則
OPPOTUNITY
しるぶぷれっ!!!
BEST!BEST!BEST!
そして、愛してるE.P.

ぼなぺてぃっ!!!

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2017年5月16日 (火)

平凡?個性的?

Title:平凡
Musician:ドレスコーズ

志磨遼平がスーツ姿に眼鏡をかけたインパクトあるヴィジュアルイメージが多いに話題となったドレスコーズの最新作。ドレスコーズが志磨遼平のソロプロジェクトとなって3枚目となるアルバムなのですが、今回は彼にとって初となるコンセプトアルバム。アルバムタイトルにもなっている「平凡」をコンセプトとしている今回のアルバムは全歌詞を公式サイトで公表しており、その力の入れようが伺えます。

そんなコンセプチャルに力を入れたソロアルバムなだけにかなり冴えまくった作品に仕上がっています。1曲目「common式」からファンキーで疾走感ある楽曲でインパクトありまくりなのですが、続く「平凡アンチ」もラテン風なリズムにアジテートのように叫びまくるボーカルに強いインパクトを受けます。さらに「人民ダンス」ではラテン調のリズムの軽快なダンスナンバーが楽しい楽曲にまとめあげています。

かと思えば「towaie」「ストレンジャー」は彼らしいちょっとレトロな雰囲気が胸をうつ歌謡曲風のポップチューンになっており彼のメロディーメイカーとしての才を十分に発揮した名曲に。さらにPVも公開されアルバムの中のメイン楽曲的な位置づけにある「エゴサーチ&デストロイ」も軽快なファンキー調でダンサナブルなリズムに、彼らしいちょっと哀愁感ある切ないメロディーラインが強い印象を受けるアルバム。リズムもメロもこのアルバムを象徴するようなインパクトの強いポップチューンになっています。

バンド色の強かった前作「オーディション」と比べて今回はバンド色は薄めなソロアルバムらしい作品。またファンクやソウル的な要素が強く、終盤の「20世紀(さよならフリーダム)」はシティポップ調のナンバーになっています。ある意味ここ最近のポップシーンの流れに沿った作品ともいえるかもしれませんが、ファンクやシティポップ的なサウンドと、レトロポップで歌謡曲風のキュートな志磨遼平のメロディーラインの相性は抜群。いままでのアルバムの中で最も強いインパクトを感じるアルバムになっていました。

さて今回のアルバムのもうひとつの売り。それは「平凡」というコンセプトに沿った歌詞でしょう。ただ本作はあきらかに「平凡」をテーマとした歌詞が続々と登場するのですが、その平凡であることを肯定しているのか否定しているのか、歌詞の中でははっきりとしません。

「人は生まれながら
誰もが皆 common」

(「common式」より 作詞 志磨遼平)

と歌い平凡を肯定したかと思うと

「これがぼくの政治的思想
わかってたまるか」

(「平凡アンチ」より 作詞 志磨遼平)

と個性を強調するかのようなフレーズを書いてきています。実際、レビューサイトでも「平凡」に対して肯定的に捉える方と否定的に捉える方がいるみたいですし、志磨遼平へのインタビューでもそこらへんのことがあやふやになっているように感じます。

ただ私は志磨遼平はこの「平凡」であることに肯定も否定もしていないように感じました。特に「マイノリティーの神様」で歌われる

「ありふれた人になるよ ぼくらは
それは自然で とてもかなしいこと」

(「マイノリティーの神様」より 作詞 志磨遼平)

という一文はまさに多くの人が結局は「平凡」になってしまう事実を受け止めつつも、「個性的」であることを否定していません。ある意味、この「平凡」になってしまうことと「個性的」であろうとすることの葛藤がアルバムのひとつのテーマのように感じます。

しかしこの歌詞も含めていままででもっともインパクトがある、志磨遼平の個性がもっとも発揮された傑作アルバムだったと思います。間違いなく本年度のベスト盤候補。「平凡」を歌った今回のアルバムで彼の非凡さが際立つ結果になりました。

評価:★★★★★

ドレスコーズ 過去の作品
the dresscodes
バンド・デ・シネ
Hippies.E.P.

オーディション


ほかに聴いたアルバム

METRO/浅井健一&THE INTERCHANGE KILLS

浅井健一&THE INTERCHANGE KILLS名義でリリースされた約2年8カ月ぶりのニューアルバム。ちょっとくすんだ雰囲気の世界観やダークな雰囲気のアレンジ、悲し気でメロディアスなメロディーライン等、また例のごとくいつもの浅井健一サウンド。大いなるマンネリ路線の楽曲は悪くはないのですが、BLANKEY時代の輝きから考えるとかなり物足りないというのが正直な印象。

評価:★★★

浅井健一 過去の作品
Sphinx Rose
PIL
Nancy

Paradise Has NO BORDER/東京スカパラダイスオーケストラ

スカパラの新作はコラボ作が目立つ作品に。10-FEETのTAKUMAにクリープハイプの尾崎世界観、Ken Yokoyamaに片平里菜、さらにはなんとさかなクンとのコラボも。今回のアルバムではこの多様なコラボを上手くもちいてバラエティー豊かな作風に仕上げてきているのが特徴的。ロック調の強い曲からラテン、歌謡曲風、軽快なスカポップなどスカパラの様々な顔が楽しめる作品に。今回は歌モノが多く、ポップ路線を取った彼らでしたが、その中でもきちんとスカパラの魅力を感じさせてくれるアルバムでした。

評価:★★★★★

東京スカパラダイスオーケストラ 過去の作品
Perfect Future
PARADISE BLUE
WILD SKA SYMPHONY
Goldfingers
HEROES
Sunny Side of the Street
on the remix
Walkin'
欲望
Diamond In Your Heart
SKA ME FOREVER
The Last
TOKYO SKA Plays Disney
The Last~Live~
TOKYO SKA PARADISE ORCHESTRA~Selecao Brasileira~

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2017年5月15日 (月)

本領発揮?

Title:ごちそんぐDJの音楽
Musician:DJみそしるとMCごはん

「食」をテーマにした歌詞でゆる~いラップを聴かせることで話題のDJみそしるとMCごはん。名前だけだと2人組ユニットのようですが、女の子のソロラッパー。彼女は現在、NHK Eテレで「ごちそんぐDJ」という番組を担当して話題になっています。この番組は音楽と料理をかけあわせた新感覚の料理番組。毎回この番組で料理を素材とする楽曲をつくってきたのですが、本作はその番組で取り上げられた楽曲をまとめたアルバムになっています。

まあテレビの曲をあつめたいわゆる「企画盤」的なアルバムな訳ですが、もともと彼女は一貫して「食」をテーマとした曲を作り続けているだけに、ある意味平常運転。「企画盤」というよりも彼女のニューアルバムとしても普通に通用するアルバムになっています。

いやむしろこのアルバム、普段のアルバムよりも本領発揮といってもいいかもしれません。いままで聴いてきた彼女のアルバムは「食」をテーマにしつつさすがに特定の料理のレシピを歌にするだけでは音楽的な幅が狭いと感じたのか、「食」を主軸にしつつ歌詞の幅を広げようとしています。もちろん彼女が今後長く活動を続けていくためにはそれはそれで重要なことなのですが、やはり彼女が本領を発揮するのは料理のレシピをそのままラップにまとめるスタイル。この「ごちそんぐDJ」では彼女を特異とするスタイルを遠慮なく発揮しています。

もちろんレシピを主軸にしつつも、そこの中にうまく心象風景やら「ネタ」やらを織り込んで非常にユニークにまとめています。なので曲によっては「あれ?レシピだっけ?」と思ってしまう曲も。ここらへん、ただレシピをラップするだけではなく、レシピを織り込みつつしっかりと「曲」としてまとめあげているのは非常に上手いなぁ、と感じます。

さらに今回特に印象に残ったのがトラック。いままで以上にバリエーションが多く、かつ聴かせるトラックが耳に残ります。基本的には音数控えめのシンプルなトラックで明るい雰囲気の楽曲が多いのですが、ラテン風のリズムの「ポテサマ」やラウンジ風の「パンプキンぜんざい」(楽曲も渋谷系っぽいメロディアスなポップでユニーク)、ファンキーな「アイスクリーム」、ロック風の「ブリ照り」などバラエティー豊富。ここらへんはあくまでも1曲勝負のテレビ番組からの企画盤らしい構成ともいえるでしょう。ただ逆にこのバリエーションの豊富さがあるからこそ、最後まで飽きずに楽しめるアルバムになっていたと思います。

個人的にはいままで聴いてきた彼女のアルバムの中ではベストの内容。いままでの作品の中では一番彼女の個性が発揮されたアルバムですらあったと思います。とりあえずはこれからもしばらくは、無理に歌詞の幅を広げるよりもこの路線で行ってほしいなぁ。

評価:★★★★★

DJみそしるとMCごはん 過去の作品
ジャスタジスイ
味の向こう側~入り口~

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2017年5月14日 (日)

「歌詞」を聴かせる

Title:メッセージボトル
Musician:amazarashi

ギターボーカル秋田ひろむの描く独特な歌詞の世界観が評判を集め人気上昇中のロックバンドamazarashi。メジャーデビューから7年を経た今年、初となるベスト盤がリリースされました。

公式サイトの本作の紹介ページをひらくといきなり「歌詞を見ながら聴きたい曲が、いまいくつあるだろう」というメッセージが表示されます。今回のベスト盤であらためて思うのはやはりamazarashiの魅力といえばまず1にも2にも歌詞の世界。物語性あり具体性ある歌詞の中で、現実の厳しさを描きながらもその向こうにある希望を歌おうとする歌詞。まずはその歌詞が強い印象に残ります。

秋田ひろむの書く歌詞はよく「死」が登場するのが特徴的。その方向性ではある意味典型的な「僕が死のうと思ったのは」という曲もありますし、「夏を待っていました」「ひろ」などでも「死」が登場します。「死」をよく登場させることからいわば「中2病バンド」的なイメージも強い彼ら。もっとも彼らの歌詞は「死」を取り上げつつ、その対比としての「生きる」ということを強調しています。

また秋田ひろむの書く歌詞が上手いな、と思うのはインパクトあるフレーズを効果的に用いてリスナーの耳を惹きつけている点です。歌詞を売りにしようとしているミュージシャンでも、インパクトあるフレーズがかけず、歌詞にフックのないミュージシャンが多くいます。逆に売れているミュージシャンは歌詞の内容はありふれていてもきちんとインパクトある歌詞をサビに持ってくることが出来ます。

例えば「多数決」では「賛成か 反対か 是非を問う 挙手を願う」と「多数決」からイメージされるインパクトある歌詞を楽曲の中でも一番フックの効いたフレーズに重ねています。「空っぽの空に潰される」でも

「楽しけりゃ笑えばいいんだろ 悲しい時は泣いたらいいんだろ
虚しい時はどうすりゃいいの?教えて 教えて」

(「空っぽの空に潰される」より 作詞 秋田ひろむ)

と楽曲のテーマをインパクトある歌詞をつけて上手くサビにのせています。ここらへんのインパクトある歌詞の使い方の上手さもamazarashiの大きな魅力でしょう。

サウンドの方はピアノを入れて美しき聴かせる比較的シンプルなギターロック。フリーキーな要素を入れたり、ちょっとラテン風だったり、ポエトリーリーディングを入れてきたり、それなりにバリエーションも入れてきますが、歌詞の世界を尊重するような美しいサウンドで歌詞やメロディーを前に押し出したようなサウンド。ここらへんのサウンドと歌詞のバランスにもうまさを感じます。

また秋田ひろむの力強い、どこか情熱的な部分を感じるボーカルも歌詞をひきたてる大きな要素に。歌詞は一語一語丁寧に歌われ、耳に残ります。総じてamazarashiはどの要素もまず歌詞を聴かせるという点に重点を置いているということにあらためて気が付かされます。かなり重い曲が並んでいますがそれだけインパクトが強いということ。amazarashiの最初の1枚としても最適なベスト盤。公式サイトの売り文句のように、「歌詞をきちんと聴かせる曲を聴きたい」と思っている方には間違いなく最適なバンドです。

評価:★★★★★

amazarashi 過去の作品
千年幸福論
ラブソング
ねえママ あなたの言うとおり
あんたへ
夕日信仰ヒガシズム
あまざらし 千分の一夜物語 スターライト
世界収束二一一六
虚無病

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2017年5月13日 (土)

13曲13組13通り

Title:re:Action
Musician:スキマスイッチ

非常におもしろいスキマスイッチのニューアルバムが発売されました。「re:Action」と名付けられた今回のアルバムはスキマスイッチの過去の名曲を他のミュージシャンたちがプロデュースを行い再録音したアルバム。それも奥田民生や田島貴男、TRICERATOPSにGRAPEVINE、Rhymesterや澤野弘之など、様々なタイプの異なる総勢13組のプロデューサーがスキマスイッチの楽曲を手掛けています。

1枚のアルバムに様々なミュージシャンがプロデュースを手掛けた曲が並んでいるというケースは珍しくはありません。また、ある楽曲を他のミュージシャンのプロデュースにより再録音するというケースも珍しくありません。このアルバムでユニークなのは、そのプロデューサーたちが自分たちのミュージシャンカラーを出しまくっている点。そのためそれぞれの曲が非常に個性的なアレンジをほどこされて収録されていました。

例えば奥田民生がプロデュースを手掛けた「全力少年」は思いっきりロック色が強くなり、ギターやドラムスの音は完全に奥田民生。GRAPEVINEの「ユリーカ」はギターやドラムスが黒くグルーヴィーになり、いかにもバインといった感じ。RHYMESTERが手掛けた「ゴールデンタイムラバー」はホーンセッションも入ってファンキーなRHYMESTERの色がしっかりとついた楽曲にまとまっています。

スキマスイッチのアレンジは、比較的シンプルで歌を前に出して生かしたようなアレンジが多いのに対して今回のアルバムのプロデュースはサウンドを強調したアレンジが多く、原曲のイメージとはかなり異なる雰囲気の曲が多いのも特徴的。特にスキマスイッチというとシンプルなポップユニットというイメージなのですが、アレンジひとつでガラッとロックバンドやファンクユニットというイメージに早変わりするような曲も。彼らの曲は特にメロディーラインがしっかりとしている名曲が多いからこそ、様々なプロデューサーのほどこす多様なアレンジにも対応が出来るのでしょう。

初回限定盤にはDisc2として今回取り上げられた曲の原曲を並べたアルバムがついてくるのですがこれによって聴き比べが出来るのがおもしろいところ。ただ彼らの楽曲はアレンジが良くも悪くもシンプル。曲によってはスケール感を出すために安易なストリングスの使い方を感じてしまう部分も少なくなく、他のプロデューサーによるプロデュース作の方がよかったのでは?とすら感じてしまう曲も少なくありませんでした。

そんな中でも今回のアルバムでの聴きどころはラストを締めくくるKANプロデュースによる「回奏パズル」。あれ?こんな曲あったっけ?と思う方も多いかもしれませんがこの曲はスキマスイッチのすべての楽曲と歌詞を素材として作り出された「新曲」。こんな企画、考える方も考える方だし、人に頼む方も頼む方だし、それを受ける方も受ける方だし、そしてやってしまう方もやってしまう方です(笑)。いやもう、KANじゃないとこんな企画、とても完成できなかったでしょう。結果出来た作品は実にスキマスイッチっぽいし、どこかで聴いたことあるような、でも違うような、そんな不思議な新曲に仕上がっていました。

どの曲もミュージシャンそれぞれの個性があらわれており、聴きごたえのある13曲。スキマスイッチの曲の良さを再認識できましたが同時に参加したミュージシャンそれぞれの「個性」をあらためて感じることが出来、それぞれのミュージシャンの魅力にも触れることが出来ました。毎年恒例のベストアルバムに「企画賞」という部門を設けるとしたら間違いなく今年のNo.1でしょう。最初から最後まで楽しめた傑作でした。

評価:★★★★★

スキマスイッチ 過去の作品
ARENA TOUR'07 "W-ARENA"
ナユタとフカシギ
TOUR2010 "LAGRANGIAN POINT"
musium
DOUBLES BEST
TOUR 2012 "musium"

POP MAN'S WORLD~All Time Best 2003-2013~
スキマスイッチ TOUR 2012-2013"DOUBLES ALL JAPAN"
スキマスイッチ 10th Anniversary Arena Tour 2013“POPMAN'S WORLD"
スキマスイッチ 10th Anniversary“Symphonic Sound of SukimaSwitch"
スキマスイッチ
TOUR 2015 "SUKIMASWITCH" SPECIAL
POPMAN'S ANOTHER WORLD
スキマスイッチTOUR2016"POPMAN'S CARNIVAL"


ほかに聴いたアルバム

Soul Renaissance/ゴスペラーズ

メンバー北山陽一の病気療養というインターバルがあり若干久々となるゴスペラーズの新作。2000年にリリースしたアルバム「Soul Serenade」を彷彿とさせるタイトルなのですが、その「Soul Serenade」と同様、ソウル、R&Bという彼らの原点を意識した作品になっているそうです。確かにそのため今回のアルバム、ソウル色を強く感じるアルバム。80年代的な楽曲もあり、全体的にちょっと懐かしい雰囲気もあります。ただ一方でサビ先の「angel tree」やブリッジ→サビで転調という「Let it shine」などいかにもJ-POP調という楽曲も目立ちます。個人的にはJ-POPからはなれてもっとソウル寄りを目指してもよかったのでは、と思わないこともないのですが、このJ-POP調の曲がほどよいインパクトとなっており、アルバム全体としてとても耳なじみやすく聴きやすい作品となっていました。

評価:★★★★★

ゴスペラーズ 過去の作品
The Gospellers Works
Hurray!
Love Notes II
STEP FOR FIVE
ハモ騒動~The Gospellers Covers~
The Gospellers Now
G20

継ぐ/Ivy to Fraudulent Game

おそらく今、最も注目をあつめているバンドの一組。バンド名が非常にユニークでなんと読めばよいのかわからないのですが、これで「アイヴィー トゥー フロウジュレント ゲーム」と読むそうです。注目のバンドということで期待をもって聴き始めたのですが、前半はちょっと期待外れ。ボーカルの歌い方は良くも悪くもヴィジュアル系っぽい雰囲気ですし、楽曲的にもちょっとシューゲイザーが入っており悪くはないのですが、思ったよりも平凡なギターロック。正直なところ最初はちょっとがっかりしたのですが、断然おもしろくなったのは終盤。インターリュードの楽曲を経ての「徒労」「夢想家」が実におもしろい。幻想的でサイケな雰囲気の入った楽曲でメロディーもどこか哀愁感入ったポップなメロが印象的でした。この2曲のような曲をもっと聴きたいのですが・・・。今度に要注目なバンドです。

評価:★★★★

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2017年5月 9日 (火)

伝説のライブ映像も収録

Title:20周年リクエストベスト+レアトラックス
Musician:Cocco

相変わらず非常にシンプルなタイトルが印象的なCoccoのベスト盤。タイトル通りファンからのリクエストを中心に選曲した30曲を2枚のCDに収録。また3枚目にはタイトル通りのレア曲を収録。くるりの岸田繁らと組んだバンドSINGER SONGERの曲や尾崎豊、松田聖子のカバー、さらに2001年にリリースされた最初のベストアルバム「ベスト+裏ベスト+未発表曲集」の初回版にのみ収録された「ひよこぶたのテーマ PART2。」も収録されています。

タイトル通り、メジャーデビューから20年を迎える彼女。彼女のデビューシングルで本作も収録されている「カウントダウン」はその力強くも狂ったようなボーカルとサウンドが非常に衝撃的ではじめてこの曲を聴いた時の印象は今でも覚えています。それだけにあれからもう20年かぁ・・・と思うと感慨深いものもあります。

ただベスト盤という話となると6年前にベスト盤「ザ・ベスト盤」がリリースされてこれが早くも3作目。特に近年はコンスタントに活動をしているもののアルバムのリリースペースは寡作気味でこの間リリースされたアルバムはわずか2枚。さすがにちょっとベスト盤をリリースするのは早くないか・・・と思うのですが(まあ、そう思うベスト盤が最近はあまりにも多いのですが)。

その、先のベスト盤でも強く感じたのが2001年の活動休止前と後との作品の違い。「ザ・ベスト盤」のレビューでも書いたのですが、人との関係を絶望視するようなところがあった活動休止前の作品と比べると活動休止後の作品は人に対して非常に優しい視点を感じるところが大きな特徴に感じます。また活動休止後では「カウントダウン」のように静と動の視点からインパクトある構成となっている曲はありません。

また活動休止後の作品に強くみられる傾向としては沖縄を意識したような曲がグッと増えたという点があげられると思います。このベスト盤に収録されている曲でも「ジュゴンの見える丘」「ニライカナイ」「三村エレジー」など沖縄をテーマとした曲が並んでいます。いずれも2001年の活動休止が彼女の音楽活動にとって大きな分岐点となったことはこのベスト盤からも強く感じられました。

さて、今回のベスト盤の一番の目玉はやはり初回版についてくるDVDでしょう。活動中止前最後のライブ、2000年10月6日に行われたの日本武道館でのライブ映像を収録したDVDがついてきます。このライブ、実は私も見に行ったライブ(ちょっとした自慢(笑))なのですが、彼女がその思いをストレートにぶつけたステージは非常に迫力があり、個人的には私のいままで行った中のベストライブのひとつに挙げられる素晴らしいステージでした。

このDVD、さらにうれしいのはライブのMCがほぼそのまま収録されている点。活動休止前最後ということで自らの言葉で思いを語ったMCは正直今でも覚えていますし、このライブ映像を見て、あらためて胸が熱くなってくるようでした。ステージ上にマイクを置いて逃げるように走り去っていったCoccoの最後の姿もそのまま収録。もう17年も前のライブになってしまったのですが、あの日見たステージの思い出がそのまま蘇ってくるライブ映像でした。

そんな訳で是非ともDVDがついた初回版で入手してほしい本作。もちろんベスト盤に収録された30曲やレアトラックスも魅力的な名曲揃い。あらためてCoccoの魅力を強く感じることが出来たベスト盤でした。

評価:★★★★★

Cocco 過去の作品
エメラルド
ザ・ベスト盤
パ・ド・プレ
プランC
アダンバレエ


ほかに聴いたアルバム

TOSS/トクマルシューゴ

日本のみならず海外でも高い評価を受ける宅録系シンガーソングライタートクマルシューゴの最新作。今回もアコギやピアノ、ストリングスなどをベースにおもちゃ箱のようなワクワクする非常に楽しい音でポップな世界を作り上げている一方、いきなりフリーキーなサウンドが飛び出したり、へヴィーなギターが展開されたりとポップで明るい世界の中で絶妙に繰り出される「歪み」の部分が非常にユニーク。いい意味で彼らしさが出た安定感ある傑作アルバムでした。

評価:★★★★★

トクマルシューゴ 過去の作品
Port Entropy
In Focus

not not me/Charisma.com

「毒舌現役OLエレクトロラップユニット」というスタンスで活動を続けていたCharisma.com。しかし昨年11月、OLをやめミュージシャン一本で新たな一歩を踏み出しました。そして最新アルバムはさらに「エレクトロ」という枠組みも取り払い、ファンク、スウィングジャズ、ロックなどの要素も入れたアルバムに。西寺郷太や蔦谷好位置など1曲毎にプロデューサーを変え、かなり挑戦的な作品に仕上がっています。

ただ・・・正直言ってちょっと期待していたほどじゃなかったなぁ。「毒舌」的な要素も薄くなり全体的にはちょっと中途半端。脱エレクトロといっても今回のアルバムも基本的には打ち込みのサウンドがベースとなっておりエレクトロ色は強め。ただその結果、エレクトロとして吹っ切れていない、「脱エレクトロ」というほど生音も多くない、ちょっと中途半端な出来に仕上がってしまったような感じもします。もちろん彼女たちらしいインパクト満点なご機嫌なナンバーも少なくなく、全体的な出来栄えは悪くはないと思うのですが・・・ちょっと残念な惜しい1枚でした。

評価:★★★★

Charisma.com 過去の作品
DIStopping
OLest
愛泥C

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