アルバムレビュー(邦楽)2017年

2017年12月26日 (火)

20周年イヤーの最後を締めるアルバム

Title:That's Fantastic!
Musician:POLYSICS

今年、デビュー20周年を迎えるPOLYSICS。2月には再録でのベストアルバムをリリースした彼らですが、20周年イヤーの最後を締めくくるのは約1年半ぶりとなるオリジナルアルバム。あのPOLYSICSがもう20年か・・・という話題は再録ベストでもやったので割愛(笑)。

今回のアルバムに先立ち新メンバー、ナカムラリョウが加入。もともとメンバーの出入りが激しいバンドなだけに新メンバーはあまり驚かなかったのですが・・・4人組となって初となるオリジナルアルバムとなります。

そんな20周年のオリジナルアルバムである本作ですが、まずは序盤からPOLYSICSらしい楽曲で飛ばしまくります。1曲目はいきなりタイトルチューン「That's Fantastic」から。ピコピコサウンドにギターリフのパンキッシュな作風がいかにもPOLYSICSらしい楽曲。続く「Crazy My Bone」はギターリフが前に出たロック色の強いナンバーですが、こちらもパンキッシュな作風でいかにもPOLYSICSらしい疾走感あるナンバーとなっています。

基本的にこの打ち込みのピコピコサウンドにギターリフが加わり、ハイトーンのハヤシのボーカルでパンキッシュな作品が続く・・・というスタイル。そんなスタイルを軸としながら曲によって微妙にバリエーションを加えているのが彼らのアルバムなのですが、今回の作品もその方向性は変わりません。

トライバルなパーカッションからはじまる「Sea Foo」は途中テルミンの音色が加わりユーモラスなその音が耳を惹きますし、「Pretty UMA」はタイトル通り、UMAを取り上げた歌詞も非常にユニーク。ハイトーンなボーカルとコーラスラインをピコピコサウンドにのせてユーモラスに聴かせる「I Have No Idea」など耳を惹くポップチューンが並んでいます。ボーカルハヤシが多様している「トイス!」という掛け声をサンプリングして最初から最後まで「トイス!」の掛け声で構成された、その名も「Toisu Non Stop」なんて曲もあります。

前作「What's This???」は彼らのパンキッシュな側面が強調されたアルバムになっていましたが、今回も比較的、ピコピコサウンドでパンキッシュな楽曲が目立ったように思います。ただその一方、「Shut Up Baby」のように彼らとして珍しい、メロディーに哀愁感を持たせるような曲があったり、「ダンスグミグミ」のようにサビにインパクトのあるメロディーラインを持って来たり、しっかりとメロディーラインで勝負してきている曲も目立ちます。その他の曲も、意外と底にはポップなメロディーラインが流れていたりして、ここ最近のアルバムの中ではポップな側面とパンキッシュな側面のバランスが取れている作品のように感じました。

そんな訳で、POLYSICSの魅力がしっかりと出ていた20周年の最後を締めるにふさわしい傑作アルバムだったと思います。いまだにある種の勢いと瑞々しさすら感じる彼ら。次の20年の活動も楽しみです。

評価:★★★★★

POLYSICS 過去の作品
We ate the machine
We ate the show!!
Absolute POLYSICS
BESTOISU!!!
eee-P!!!
Oh!No!It's Heavy Polysick!!!
15th P
Weeeeeeeeee!!!
MEGA OVER DRIVE
ACTION!!!
HEN 愛 LET'S GO!
HEN 愛 LET'S GO! 2~ウルトラ怪獣総進撃~
What's This???
Replay!


真夏の目撃者/GOING UNDER GROUND

約1年2ヶ月ぶりとなるGOING UNDER GROUNDの新譜。ノスタルジックな雰囲気と爽快感を同居させたちょっと切ないメロディーラインが魅力的。全体的にはシンセが入って分厚いサウンドが特徴的。目新しさはないけど安定感がある、GOING UNDER GROUNDらしいポップなアルバムでした。

評価:★★★★

GOING UNDER GROUND 過去の作品
おやすみモンスター
COMPLETE SINGLE COLLECTION 1998-2008
LUCKY STAR
稲川くん
Roots&Routes
Out Of Blue

Fruits Decaying/ぼくのりりっくのぼうよみ

早くも3枚目となるぼくりりのニューアルバム。基本的にはラッパーにカテゴライズされる彼ですが、どちらかというとラップというよりもメロディアスなポップスがメインで、本作ではその傾向がより強くなっています。メロウさを感じるメロディーラインも魅力なのですが、それ以上にトラックメイキングが冴えまくっている本作。比較的シンプルで最低限の音を奏でつつ、その向こうにある空間を聴かせるようなサウンドが魅力的。「罠」ではSOIL&"PIMP"SESSIONSとコラボしていますが、この曲に限らず「ジャズ」を感じさせるサウンドが目立ちます。前作まで気になった巻き舌を多用した歌い方も今回の作品ではさほど極端な巻き舌がなく、シンプルな歌い方になっているのもプラス。さらなる成長に今後が楽しみになってくるアルバムでした。

評価:★★★★★

ぼくのりりっくのぼうよみ 過去の作品
hollow world
Parrot's paranoia

Noah's Ark

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2017年12月25日 (月)

5曲中3曲がタイアップ

Title:SHUFFLE!!E.P.
Musician:Shiggy Jr.

ここ最近、人気と注目度上昇中の女性ボーカル+男性3人のポップスバンド、Shiggy Jr.。初となるフルアルバム「ALL ABOUT POP」も注目を集めましたが、その後、レコード会社を移籍。ビクターエンタテインメント移籍後初となる作品が本作。全5曲入りのEP盤となっています。

もちろん、レコード会社を移籍したからといってその音楽性は変わりません。池田智子のハイトーンボイスによるかわいらしいボーカルがピッタリマッチするキュートなポップソングの連続。1曲目「誘惑のパーティー」はまさにShiggy Jr.っぽい軽快でポップなディスコチューン。「僕は雨のなか」はドラマタイアップがついた作品。疾走感あるポップチューンでインパクトあるサビが印象的。いい意味でのヒットポテンシャルが感じられる作品になっています。

ここらへん、Shiggy Jr.らしいシティポップ路線から、徐々に楽曲の幅を広げていっているのが3曲目以降。「二人のストーリー」ではギターでバンドのメインライターである原田茂幸がボーカルと、そしてラップにも挑戦しているデゥオ曲。「Juuuump!!」は軽快なギターロックナンバーになっています。

そしてラストを飾る「約束」ではアコースティックなサウンドが暖かい、ネオアコのポップチューン。5曲21分という長さのEP盤でしたが、その短さの中にバリエーションあるポップチューンがおさめられた作品になっていました。

ただバリエーションある作風にも関わらず、キュートなメロディーラインと池田智子のボーカルが相まって、全体的には統一感あるShiggy Jr.色をきちんと出しているのが特徴的。5曲という短さもあって、まさにあっという間に終わってしまったEPでした。

ちなみに本作の特徴としてドラマタイアップが2曲にCMソングが1曲という、5曲中3曲までがタイアップ付きという作品になっています。まだブレイク前で、かつ大手事務所などによる企画モノバンドでもない彼女たちが、これだけ多くのタイアップを確保できるのは異例。確かに彼女たちのサウンドはいい意味で耳障りがいいですし、ポップなメロディーラインはインパクトがありますし、タイアップにはピッタリなのかもしれません。

それだけに今後、さらなる活躍が期待できる彼女たち。次のフルアルバムあたりでひょっとしたらブレイクか?これからの彼女たちに注目していきたいと思います。楽しみです。

評価:★★★★★

Shiggy Jr. 過去の作品
ALL ABOUT POP


SEAMOの単独名義では久々となる新作は、デジタルオンリーの5曲入りのEP盤。それが6月、11月と相次いでリリースされました。

ON&恩&音/SEAMO

まず6月にリリースされたのが本作。

続・ON&恩&音/SEAMO

そして11月にリリースされたのが本作でした。

どちらも5曲入りのミニアルバムですが、1曲目は名古屋弁などを使った地元ネタ。他にはクラッシックやロックを取り入れたダイナミックな作品が1曲、トランシーな作品が1曲、歌モノやユーモラスな曲など、SEAMOの魅力を短い曲数の中にうまくおさめているようなミニアルバムになっていました。シーモネーターの曲がなかったのはちょっと残念ですが、来年には待望のアルバムもリリースされるとか。久々のニューアルバムも楽しみになってくるミニアルバムでした。

評価:どちらも★★★★

SEAMO 過去の作品
Round About
Stock Delivery
SCRAP&BUILD
Best of SEAMO
5WOMEN
MESSENGER
ONE LIFE
コラボ伝説

REVOLUTION
TO THE FUTURE
LOVE SONG COLLECTION

THE SAME AS YOU(SEAMO&AZU)

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2017年12月23日 (土)

チャメ~!

Title:護得久栄昇大全
Musician: 護得久栄昇

あきらかにマジックで書いた太眉がインパクトの彼。今、沖縄で話題沸騰中の護得久流民謡研究所会長、護得久栄昇。そのデビューアルバムがついにリリース。個人的にはネット上でその話題を聴き、You Tubeで動画を見てはまってしまい、今回、このアルバムを聴いてみました。

まあ、ジャケット写真を見ればわかる通り、本当に「護得久流民謡研究所」という研究所があるわけではなく、彼は沖縄で活躍するハンサムというお笑いコンビの金城博之がコントで演じるキャラクター。沖縄では「そんな民謡教室の師範、いるよね」と受け止められるようなキャラクターをデフォルメして演じており、大うけしているそうです。ちなみに今回の記事のタイトルになっている「チャメ!」は彼の決めセリフ。他にも「わかるよね」「チンダミするよ」などインパクトある決まり文句がインパクトありまくりなキャラクターです。

そんなコントのネタキャラによるアルバムなので、基本的にはコミックソングが並んでいる訳ですが、ただし、楽曲自体はかなり本格的。このアルバムのキャッチフレーズが「本人以外、すべて本物」となっており、コミックソングとして楽しめる一方、しっかりと沖縄民謡のアルバムとしても楽しめる内容となっています。

先行配信となっている代表曲「愛さ栄昇節」は彼の決めセリフ「チャメ」を多用しつつ、三線の音色と太鼓のリズムが印象に残る本格的な民謡になっていますし、「愛さコーヒー節」は沖縄民謡の前川守賢をフューチャー。「護得久音頭」はネタなしの楽しく踊れる音頭。笑いの要素を込めつつも、音楽的にも楽しめる楽曲が並びます。

ネタの方は上に書いた通り、沖縄の民謡教室の師範をデフォルメしたキャラクター。沖縄名物のレモンケーキの「あるある」ネタを詰め込んだ「れもんけーき節」など、沖縄に関するネタがメイン。一般的にお笑いネタは対象が狭ければ狭いほど受けやすい傾向にあるのですが、ストレートに沖縄ネタを詰め込んでくる護得久栄昇が沖縄で受けているというのはよくわかります。

ただ、じゃあ沖縄県民以外にとって彼のネタがわからないかというとそんなことは全然ありません。例えば彼の決まり文句に「わかるよね」というものがあるのですが、これは「私の言いたいことは私が何も言わなくてもわかるよね」という意味であり、まさに今年の流行語大賞ともなった「忖度」そのもの。また、同じく彼がよく使うセリフとして「たーがしーじゃか」というものがあります。これは沖縄の方言で「誰が年上か?」という意味。これも「私が年上なんだから文句言わず言うことを聞け」という意味で、これも体育会系の組織でよくありがちな話。沖縄県民以外にとっても、その意味がよくわかるようなセリフではないでしょうか。

ここ最近話題となったコミックソングのアルバムといえば、ピコ太郎の「PPAP」やオリエンタルラジオが中心となって結成されたRADIO FISHなどがありました。ただ、ピコ太郎も音楽的に評価を受けたりしましたが基本的にはネタ中心。逆にRADIO FISHは音楽的にはほとんど「ネタ」はありませんでした。そう考えるとこのアルバムは、ネタも十分詰まっている一方、音楽的にも本格派。ネタと音楽のバランスが非常によく取れているアルバムだと思います。沖縄民謡のアルバムとしても楽しめますし、内容に思いっきり笑えますし、沖縄県民以外にとっても十二分に楽しめるアルバムです。チャメ~!

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

CHOCOLATE/ちゃんみな

デビュー当初、現役女子高生ラッパーとして話題となったちゃんみなの、ファーストアルバム「未成年」に続く8曲入りミニアルバム。楽曲としてはラップというよりも、いまどきのR&B的な雰囲気が強い内容。比較的シンプルなエレクトロトラックも特徴的。10代の女の子の微妙な心境をつづったラップも印象的。日本には女性ラッパーというのはまだまだ少ないので、さらなる成長と活躍を期待したいところ。さらなる飛躍の可能性も感じられるアルバムでした。

評価:★★★★

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2017年12月17日 (日)

4枚組豪華オールタイムベスト

Title:access BEST ~double decades + half~
Musician:access

おそらく、特にアラフォー世代あたりは「懐かしい」という印象をまず受けるのではないでしょうか。T.M.Revolutionのプロデューサーとしても知られる浅倉大介のユニットaccess。1992年に結成後、93年にリリースしたシングル「NAKED DESIRE」がヒットして一躍ブレイク。翌年には紅白歌合戦にも出場するものの、95年にはあっさりその活動を休止しました。

その後2001年に活動を再開。残念ながら活動再開後については以前にような大きなヒットは少なく、90年代前半の彼らは知っていても、現在、活動を再開していることを知らない方もひょっとしたら少なくないかもしれません。ただその後はコンスタントに活動を続け、今回、デビュー25周年を記念してオールタイムベスト盤をリリースしました。

豪華4枚組となる本作。Disc1、2はいままでにリリースしてきた全シングルを発売順に並べたシングルベストに、Disc3はバラードベスト、そしてDisc4はリミックスを集めた内容となっています。

さて、これはある意味、語弊を覚悟の上で言うのですが、個人的に浅倉大介、ミュージシャンとしては「二流」だと思っています。いや、音楽シーンの第一線で30年近く活動を続け、さらにaccessやT.M.Revoutionで大ヒットを飛ばしていながら「二流」はないでしょう、そうお叱りを受けるかもしれません。もちろん、あれだけ活躍しているのですから凡百のミュージシャンよりもよっぽど才能は間違いなくあるとは思います。ただ、accessもそうですが、彼のサウンドに関しては決して目新しさはありませんし、メロディーラインにしても決して凝った展開を聴かせるような楽曲はありません。

例えばaccessの曲に関してはアップテンポな曲に関してはメロディーに十分なインパクトがあるものの、ミディアムテンポの曲に関しては正直言って平凡という印象を受けてしまいます。特に顕著だったのがバラードベスト。メロディーの展開におもしろさを感じる曲はほとんどなく、正直言って、少々退屈という印象すら受けてしまいました。残念ながら浅倉大介にバラードは向いていないに思います。

ただ一方、これは以前紹介した浅倉大介自身のベスト盤でも言及したのですが、逆に「二流」だからゆえに、変に凝ったサウンドや奇をてらった楽曲を作り出そうとせず、シンプルにリスナーが浅倉大介に求めるような曲を愚直につくり続けているように思います。そして、それこそが彼の最大の魅力ではないでしょうか。

今回のaccessのベスト盤にしても、25年というキャリアですが、シングル曲の方向性にほとんど変化がありません。まあ確かに打ち込みのサウンドに関して、デビュー当初は今聴くと、少々チープに聴こえますし、活動再開後のサウンドは今風にアップデートされ、さらにトランス色が強くなるなど、それなりに時代に沿った変化はみせています。

ただ、だからといって最先端のサウンドをとにかく取り込むということはありません。どちらかというと世間的に定着したタイプのデジタルサウンドを自らの曲にポップに取り込んでいます。だからいい意味で彼の楽曲は安心して聴けますし、おそらく最近の曲に関しても、90年代初頭に彼らのファンだった方でも十分楽しめるのではないでしょうか。

個人的にも90年代の彼らの曲はよく聴いていたものの、活動再開後の彼らの曲に関しては今回はじめて聴きました。ただ、感覚的には90年代の曲と同じように楽しめましたし、並んで聴いてもほとんど違和感ない内容。それだけ変化がないといえば変化がないのですが、ただ一方、浅倉大介がそれだけファンの期待するaccess像にしっかりと答えているということではないでしょうか。

評価は初期の作品への想い出補正も込みなのですが、ただ、それを差し引いても難しいこと抜きに楽しめるデジタルポップだったと思います。音楽的に決しておもしろいことをやっている訳ではありませんが、素直に楽しめるベスト盤でした。

評価:★★★★

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2017年12月16日 (土)

赤裸々な本音を強烈なガレージサウンドで

Title:Secret File~THE BEST OF SEKIRI~
Musician:赤痢

先日、日本のベテランパンクバンドとしてthe原爆オナニーズを紹介しました。そのバンド名があまりにも強烈なインパクトを持っていて、おそらく一度聴いたら忘れられないと思うのですが、こちらのバンドも一度聴いたら忘れられないのではないでしょうか。1983年に京都で結成し、85年にデビューしたパンクバンド。それもメンバー全員女性で、結成時は中学生だったというから驚きです。先日紹介したthe原爆オナニーズは今なお活動を続ける現役のバンドですが、残念ながら彼女たちは95年に解散し、その後、再結成等は行われていないようです。

本作はそんなパンクバンド赤痢のベストアルバム。彼女たちについてはそのバンド名のインパクトもあり名前自体は知っていたのですが、音源をきちんと聴いたのは今回がはじめてでした。

このアルバムを聴いてまず飛び込んでくるのはノイジーなギターサウンドに分厚いバンドサウンドからなる強烈なガレージロック。演奏している当時は20代前半あるいは10代という若さなのですが、そのキャリアでこれだけのサウンドを奏でることが出来るというのが驚きです。逆に若さゆえの勢いを感じますし、なによりも若さ・・・というよりも「幼さ」的なものを感じるボーカルは、その声質ゆえにパンキッシュなサウンドにもピッタリとマッチした、ある種の生々しさを感じます。

今回のベスト盤は75分という長さなのですが、29曲入りというボリューム。1曲あたりの長さは1分から2分、せいぜい3分という短さ(曲によっては5分程度の曲もありますが)。そのため次から次への楽曲が展開していきます。

また彼女たちの楽曲で耳を惹くのがそのメロディーライン。意外とポップなメロディーラインなのですが、ボーカルの歌い方もあってどこか気だるさを感じさせるメロディーに。この気だるいメロディーもまた、パンキッシュなサウンドにピッタリとマッチしており彼女たちの大きな魅力となっています。

そしてなによりも彼女たちの楽曲でインパクトがあるのはその歌詞でしょう。もともと彼女たち、(本作では収録されていませんが)デビューEPに収録されていた「夢見るオマンコ」というタイトルからして強烈な楽曲が話題になったそうですが、身も蓋もないあまりにもストレートな歌詞が耳を惹きます。ある意味、女性のありのままの心境をそのまま歌ったような歌詞がかなり強烈。

このベスト盤に収録されている曲でも「ゾクゾクするのは暴力とエロ」「19才」)という歌詞が登場してきますし、麻雀について歌っている「ウラドラ人生」だの、タイトルそのままストレートな「タバコが吸いたい」など、女性のあまりにも赤裸々な部分をそのまま歌っており、それがまた大きな魅力となっています。

楽曲的には最初から最後までストレートなガレージロック。「素晴らしき中近東」のような、ちょっとエスニックな雰囲気を取り入れた曲はありましたがバリエーション的にはさほど多くはありません。ただ、上にも書いた通り、1、2分で次々と楽曲が展開される内容なだけに聴いていて全く飽きることはありません。彼女たちのガレージロックは雰囲気的には一昔前のアングラロックといった雰囲気なのですが、その迫力あるサウンドは今聴いても非常に魅力的。ちょっとやばさを感じさせるようなサウンドは今聴いてもゾクゾクさせられます。

今回はじめて彼女たちの楽曲を聴いたのですが、一発で気に入りました。ライブも迫力ありそうだし、リアルタイムで聴きたかったなぁ、と残念に感じます。ガールズパンクの先駆的存在ともいえる彼女たち。パンクバンド、ガールズロックが好きなら是非聴いてほしいベスト盤です。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

TOGENKYO/フレデリック

初のフルアルバムとなった「フレデリズム」がいきなりのヒットを記録したロックバンド、フレデリックの新作は前7曲入りのミニアルバム。全編、エレクトロサウンドを取り入れたダンサナブルなポップチューン。似たタイプの曲が多いものの、軽快なダンスポップの連続に楽しくなってきます。基本的にはマイナーコード主体で歌謡曲テイストが強い曲が並んでいますが、ラストの「RAINY CHINA GIRL」のような明るく軽快なシンセポップのナンバーも楽しめます。

評価:★★★★

フレデリック 過去の作品
フレデリズム

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2017年12月12日 (火)

コンプレックスはアートなり!

Title:PINK
Musician:CHAI

ここ最近、急激に注目を集めている女性4人組バンド。このデビューアルバムもいろいろなメディアで大きく取り上げられているのでそのバンド名を目にした方も多いのではないでしょうか。話題のバンドということで今回、このアルバムではじめて音源を聴いてみたのですが・・・

完全にはまってしまいました(笑)。

このバンド、「NEOかわいい」「コンプレックスはアートなり」をバンドコンセプトとして活動を行っています。正直言って、お世辞にもアイドル的人気で勝負できるバンド、という感じではありません。ただ、そういうルックス的な側面を逆にバンドのコンセプトとして勝負をかけているのがユニーク。例えば「N.E.O」では

「目ちっちゃい 鼻ひくい くびれてない 足太い
ナイスバディ!オーライ!
NEOかわいい
change the world」

(作詞 ユウキ 「N.E.O」より)

なんていうコンプレックスになりそうな外見的要素をポジティブに歌い上げていますし、「sayonara complex」でも

「飾らない素顔の
そういう私を認めてよ」

(作詞 CHAI 「sayonara complex」より)

というルックスだけで勝負することを否定的に歌っています。

こういったルックス的なコンプレックスを高々と歌うバンド、男性バンドでは決して珍しくありませんでした。ただ一方女性バンドでは、確かにルックス的には、というバンドもいままでありましたが、コンプレックスをあえてバンドのテーマとするバンドはほとんどいなかったように思います。あえて言えばGO!GO!7188が「ブサイク」を前面に出していましたが、楽曲的にはそういった要素を取り入れた曲はありませんでした。

そんな中、彼女たちのようにコンプレックスをあえて表に出してくるバンドの登場は非常に興味深く感じます。特に昨今、アイドルブームで男性的な視点の女性像を押しつけられているアイドルが音楽シーンで大手を振る中、このような女性像にあえてアンチを唱えるようなバンドが出てきたというのはとても頼もしく感じられます。

また彼女たちの歌詞は、そんな押しつけられたような女性像に、ある種のフェミニスト的な言説を声高に唱えている訳ではなく、とてもユーモラスに歌いつつ、ちょっと皮肉的な歌詞でチクリと風刺しています。だからこそ、彼女たちの歌詞は男性でも嫌味なく楽しめることが出来ます。

ただ、彼女たちの最大の魅力はこの歌詞の世界観ではありません。もちろん歌詞のコンセプトも大きな魅力であるものの、最大の魅力はこの歌詞の世界観をしっかり支える彼女たちの音楽性のユニークさだと思います。

彼女たちのサウンドは非常にシンプルでタイト。ただ、足腰のしっかりとした分厚いリズム隊のサウンドでしっかりと支えており、ロックバンドとしての実力を感じさせます。そしてそんなバンドサウンドを軸としつつ、「N.E.O.」や「ボーイズ・セコ・メン」ではラップを取り入れたり、「ほれちゃった」ではシティポップ的な要素を取り入れたり、「ウォーキング・スター」ではファンク的なサウンドを聴かせたり、基本的に今時のブラックミュージックからの影響を感じさせつつ、それをパンキッシュなバンドサウンドと上手く融合させています。

ただ、全体的にはアバンギャルドでパンキッシュな要素を強く感じさせます。ラップやアシッドジャズ的な要素を感じることから、CIBO MATTOとの類似性をよく取り上げられますが、一方、アバンギャルドでパンキッシュという点から、個人的には例えばメスカリン・ドライブや少年ナイフあたりのガールズパンクバンドからの流れも強く感じます。

さらに彼女たちに関してユニークなのは、そんなブラックミュージックやらパンクやらの要素を感じつつも、同時にポップにコーティングされているという点でしょう。ボーカルをつとめるマナ、カナの双子の姉妹はハイトーンボイスでかわいらしい歌声で歌い上げており、そのためアバンギャルドな音楽性がかなりポップに中和されています。「かわいいひと」のようなエレピ1本で聴かせるポップソングや「フラットガール」のようなポップなメロを前に出した曲など、メロディーを前面に出した楽曲に関しては、そのポップなメロディーラインに彼女たちのメロディーセンスの才能も感じます。アバンギャルドでありつつも同時にポップスさを兼ね合わせている彼女。歌詞の内容についても尖った主張がありつつもユーモラスにまとめあげており、いい意味で非常に聴きやすいポップな楽曲を聴かせてくれる点がとても魅力を感じます。

様々な音楽性を同包しつつ、タイトな力強いリズム隊の演奏でしっかりと聴かせる楽曲は非常に中毒性も高く、わずか30分強というアルバムの長さもあり、ここ最近、アルバムを繰り返し聴くなどすっかりはまってしまっています。このアルバムも間違いなく今年のベスト盤候補になる傑作。そのバンドコンセプトや音楽性など、間違いなく2017年を代表する重要バンドだと思います。全音楽ファン一度は聴いてみてほしい1枚です。

評価:★★★★★

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2017年12月11日 (月)

10年ぶりのオリジナルアルバム

Title:2017
Musician:ZIGGY

メジャーデビュー30周年を迎えたロックバンドZIGGY。2008年にバンドとしての活動休止。その後、再結成しライブツアーを行うことはあったのですが新曲のリリースはありませんでした。しかし、デビュー30周年を迎える今年、10年ぶりとなるニューシングルがリリース。さらに先日ここでも紹介したシングルコレクションがリリースされ、そして待望の10年ぶりとなるニューアルバムがリリースされました。

ZIGGYに関してはここで以前紹介したシングルコレクションの時に書いた通り、個人的には「GLORIA」がヒットしたバンドというイメージしかなく、「よくありがちなJ-POPのミュージシャン」的な印象を持っていました。しかしシングルコレクションを聴く、思った以上にロックな楽曲がカッコよく、ZIGGYというバンドに持っていた印象は大きく変わりました。

今回の再結成にあたって、残念ながら事実上、森重樹一のソロプロジェクトとなってしまったZIGGY。ただ本作に関してはシングルコレクションを聴いてZIGGYに感じた魅力がそのまま反映されているアルバムになっていたと思います。

今回のアルバムに関して感じた大きな魅力、それはストレートに言ってしまうと非常にベタな点でした。ZIGGYの楽曲は良くも悪くも80年代あたりのハードロック、ブルースロックがダイレクトに反映された音楽性。そんなサウンドにのるメロディーラインはインパクト十分、ある意味キャッチーともいえるわかりやすいもの。ギターがなっているダイナミックなサウンドは非常にわかりやすい、ロックらしいロックともいえる曲になっています。

1曲目「白んだ空に蝶達は舞ってる」はハードなギターに沿ったシャウト気味なボーカルでダイナミックに展開するロックらしい曲からスタート。続く「うたた寝の途中」は軽快なロックンロール的なサウンドに対して、メロディーラインはメロディアスでわかりやすいポップな曲調となっており、J-POP的なインパクトを持った作品になっています。

メロディーラインに関して「キャッチー」という言い方がふさわしいのが「まだ見ぬ景色が見たくて」で、疾走感あるメロディーラインは90年代のJ-POP風。個人的にはどこか懐かしさを感じさせます。ほかの楽曲に関しても古き良きハードロックにポップなメロディーをのせたスタイルは90年代J-POPによくありがちなスタイル。そういう意味ではアラフォー世代にとってはどこか懐かしさを感じさせてくれる部分はありました。

ただ、単純に90年代J-POP的というと今でもよくありがちなスタイル。ともすればそういうバンドはあまり面白味を感じることはありません。ZIGGYがそういったバンドと大きく一線を画するのが、彼の音楽にははっきりとルーツが見えるという点でしょう。ルーツ志向という点で典型的だったのが「I CANNOT GET ENOUGH」で軽快なピアノとギターサウンドは明確にブルースロックからの影響を感じます。ともすればルーツレスなバンドが多いJ-POPシーンの中、このルーツをしっかりと楽曲から感じさせる点が他のバンドとは明確に一線を画するZIGGYの大きな魅力でしょう。

ちなみに今回のアルバムではDisc2としてライブ音源も収録。こちらには「GLORIA」「STEP BY STEP」のような彼らの代表曲も収録されており、ベスト盤的に楽しめる内容になっています。ZIGGYとしては久々となるライブツアーの初日でかつ森重樹一以外はサポートメンバーということもあってライブの出来としてはそんなに絶賛するほどの出来には感じませんでしたら、ライブの雰囲気は伝わってくる1枚だったと思います。

そんな訳で、シングルコレクションではじめてZIGGYの魅力を知って、今回はじめてオリジナルアルバムを聴いたのですが、期待にしっかりと応えてくれた傑作アルバムに仕上がっていました。アラフォー世代なら懐かしさもあってかなり楽しめそうなアルバム。それ以外の世代にももちろん、ロックの魅力をしっかりと伝えてくれるようなそんなアルバムです。

評価:★★★★★

ZIGGY 過去の作品
SINGLE COLLECTION


ほかに聴いたアルバム

野宮真貴、ホリディ渋谷系を歌う。/野宮真貴

野宮真貴が2013年から続けている渋谷系のルーツをカバーする企画、「野宮真貴、渋谷系を歌う。」の第5弾となるアルバム。今回は大瀧詠一アレンジによる童謡「雪やコンコ」や槇原敬之の「冬がはじまるよ」などちょっと意外なカバーも。先日、足を運んだライブでも感じたのですが、年齢を感じさせない歌声での魅力的なカバーは相変わらずなのですが、全12トラック中6トラックがボーナストラックであり、全体的に「渋谷系のルーツ」という観点はちょっと薄めというか、若干焦点がぼやけている感じも。企画的には若干ネタ切れ気味な感じもするし、カバーアルバムとしては魅力的なので、そろそろ「渋谷系を歌う。」という枠組みをはずした純粋なカバーアルバムをリリースした方がよいのでは?

評価:★★★★

野宮真貴 過去の作品
実況録音盤!「野宮真貴、渋谷系を歌う。~Miss Maki Nomiya Sings Shibuya-kei Standards~」
世界は愛を求めてる。-野宮真貴、渋谷系を歌う。-
男と女~野宮真貴、フレンチ渋谷系を歌う。
野宮真貴、ヴァカンス渋谷系を歌う。~Wonderful Summer~

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2017年12月 9日 (土)

超ベテランパンクバンドのベスト盤

Title:ATOMIC GARDEN
Musician:the原爆オナニーズ

おそらくそのミュージシャン名だけでかなりのインパクトがあるだけに、名前だけは知っているという方も少なくないかもしれません。80年代から活動を続けるパンクバンドthe原爆オナニーズ。名古屋を中心に活動を続けるこのバンドは数多くのミュージシャンからリスペクトを集め、元Blankey Jet Cityの中村達也やHi-STANDARDの横山健も一時期、メンバーとして名を連ねていました。

本作はそんな彼らが、インディーズレーベル、アルケミーレコードに所属していたころの作品を集めたベストアルバム。具体的には1989年にリリースされた「GENBAKU HEAD QUARTERS」から1997年にリリースされた「STEP FORWARD」の頃の作品を集めたベスト盤です。

1時間14分というフルボリュームながらも26曲入りという今回の作品。20年以上前の楽曲を集めたアルバムなのですが、いま聴いても全く古臭さを感じることはありません。疾走感あり、ノイズを思いっきり響かせるギターを中心とした分厚いバンドサウンド。ボーカルTAYLOWのがなり声でのシャウト気味でのボーカル。ある意味、実にパンクロックらしい焦燥感と迫力を感じさせる演奏が続きます。

正直言って全26曲、楽曲のバリエーションはほとんどありません。基本的にパンクロック一本。あえて言えば「ピ・ポ・パ」のような、ちょっと複雑なドラミングを聴かせる曲があったり、「G・H・Q」のようなちょっと抑え気味の曲があったり、また「Step Forward」のような前向きな曲があったりといったところが耳を惹きました。

また楽曲的には「日本のパンク」といってよくありがちな、いわゆる行進曲のリズムを持ったパンクロックではありませんし、わかりやすいメロディーラインを持ったメロディアスパンクでもありません。もちろん、上で「前向きな曲」と書いたのですが、2000年代に流行ったような青春パンクともほど遠いものです。

そういう意味では楽曲的には決して聴きやすいものではありません。楽曲的にも力強いバンドサウンドとボーカルのシャウトを主軸として展開していくような構成で、ポップスさはあまりありません。ただ間違いなくパンクロックというジャンルの重要なポイントである、ミュージシャンの叫びは伝わってくる楽曲が並んでいます。

だからこそ、1時間以上の内容で楽曲のバリエーションがあまりないにも関わらず、最後までほとんど飽きることなく楽しむことの出来るアルバムになっていました。今の日本のミュージックシーンでは逆に珍しくなってしまった、いい意味でパンクロックらしいパンクロックなアルバム。パンクロックが好きならとりあえずはチェックしておきたい1枚です。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

YOUTH/日暮愛葉

Seagull Screaming Kiss Her Kiss Herとしても活動する日暮愛葉の8年ぶりとなるソロアルバム。全10曲中9曲が打ち込みというエレクトロ色を出したアルバムになっています。ただ、全編エレクトロで彼女のイメージが一新・・・といった感じではなく、ローファイで音数を絞ったサウンド構成は相変わらず。ノイジーなガレージサウンドもきちんと鳴っており、いままでの彼女のイメージの延長線上にエレクトロサウンドを入れてきたといったイメージのアルバムになっています。良くも悪くも地味な印象は否めず、インパクトが薄めなのはちょっと残念でしたが。

評価:★★★★

BINARY/WONK×THE LOVE EXPERIMENT

ここ最近、特にジャズシーンから注目を集めている新進気鋭のエクスペリメンタル・ソウルバンと、ニューヨークを拠点に活動するこちらも注目株のソウルバンドTHE LOVE EXPERIMENTのコラボアルバム。エレクトロなトラックをメインに、ソウルやジャズ、HIP HOPを変幻自在に行きかうサウンドは魅力的だし、この自由度の高さが今時かも。ただ、個人的にはもうちょっとパンチの利いた、コアになるようなサウンドが欲しかったような。全体的にはメロウなボーカルの歌モノが目立つアルバムに仕上がっており、いい意味でポップス感覚も強く、聴きやすいアルバムになっていました。

評価:★★★★

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2017年12月 8日 (金)

「この世界の片隅に」への楽曲参加が話題に

Title:雨の箱庭
Musician:コトリンゴ

映画「この世界の片隅に」への楽曲提供が大きな話題となった女性シンガーソングライターのニューアルバム。コトリンゴ、という名前は以前から知っていたのですが、なんとなくオリジナルアルバムはいままでチェックしておらず、彼女の音源をきちんと聴いたのが「この世界の片隅に」のサントラ盤がはじめてでした。そのサントラで聴いた彼女の歌が非常に素晴らしかったため、今回、はじめて彼女のオリジナルアルバムもチェック。そして、期待通り、いや期待以上の素晴らしいアルバムに仕上がっていました。

「この世界の片隅に」で聴かせてくれた彼女の歌は、アコースティックなアレンジに力の抜けたボーカルスタイルが特徴的。この暖かく、ほどよく脱力感ある楽曲が映画の主人公の性格にもピッタリあっていました。

今回のアルバムに関してももちろんコトリンゴの作風は「この世界の片隅に」で聴かせてくれた楽曲と変わりありません。まずは雨上がりの美しくもどこか幻想的な風景を描いたピアノインストナンバーである「雨上がる」からスタート。続く「迷子になった女の子」もストリングやウッドベースなどで描かれるアコースティックなサウンドはどこかファンタジック。そこにウィスパー気味のコトリンゴの力の抜けたボーカルが暖かさもあり、曲の雰囲気にもマッチ。不思議な暖かさのある楽曲に仕上がっています。

前半はそんなアコースティックなサウンドをバックに暖かい雰囲気のあるポップソングが並びます。そしてインストナンバーの「Light Up Nipponメインテーマ」を挟んで後半の「To do」は前半と同様、暖かみあるアコースティックなナンバーながらも、ちょっとジャジーな雰囲気のナンバーに。続く「林檎」はちょっとジャジーながらもアバンギャルド風のサウンドが耳に残りますし、さらに「wataridori」はトラッド風なサウンドも印象的なナンバー。基本路線は前半と同様、暖かみのあるアコースティックなサウンドに脱力感あるコトリンゴのボーカルを聴かせるというスタイルは変わらないのですが、作風にバリエーションを感じる展開になっています。

最後を締めくくる「hanabi」はまたこのアルバムを締めくくるにふさわしい、ピアノのアルペジオをバックにしんみりと聴かせるバラードナンバー。ピアノの音色もコトリンゴのボーカルもとても優しく、ほんわかしてくるような楽曲に仕上がっています。

そんな訳で今回はじめて彼女のアルバムを聴いたのですが、とても優しくて暖かさのあふれるアルバムに仕上がっていました。「この世界の片隅に」をみて、その音楽を気に入った方なら絶対気に入るはずの作品。期待していた以上の傑作アルバムになっていました。

コトリンゴといえばここ最近はKIRINJIのメンバーとなりKIRINJIとしても活動していたのですが、先日、KIRINJIからの脱退を発表しました。もともとKIRINJIに参加する以前からソロでも既にその地位を確立していただけにKIRINJI加入のニュースも驚いたのですが、逆にKIRINJIからの脱退というニュースは、彼女もソロで忙しそうですし、まあいつかは離れるんだろうなぁ、と予想していただけにさほど驚きはありません。これからはおそらくソロでもさらに精力的に活動を続けるであろう彼女。これからの活躍も楽しみです。

評価:★★★★★

コトリンゴ 過去の作品
劇場アニメ「この世界の片隅に」オリジナルサウンドトラック


ほかに聴いたアルバム

全知全能/ポルカドットスティングレイ

人気上昇中の女性ボーカル+男性3人リズム隊という4人組バンドによる新作。前作「大正義」では椎名林檎経由でNUMBER GIRLに影響を受けたようなサウンドと書いたのですが、今回のアルバムではバンドサウンドを聴かせるものの、もうちょっとポップ色が強くなった印象も。楽曲的にはインパクトはあるのですが、もうちょっとバリエーションも欲しい感じ。「大正義」同様、もう一歩で傑作なのに・・・という惜しい印象を残すアルバムです。

評価:★★★★

ポルカドットスティングレイ 過去の作品
大正義

SAMURAI SESSIONS vol.2/MIYAVI

「対戦型コラボレーションアルバム」として2012年にリリースされた「SAMURAI SESSIONS vol.1」。本作はその第2弾となるアルバム。今回は三浦大知やSKY-HI、EXILE SHOKICHIなどR&B系やHIP HOP系かつメジャー系なミュージシャンが多く、ギターセッションというよりはエレクトロサウンドの中にMIYAVIのギターが鳴り響く感じ。ファンキーなギターはそれなりにカッコいいけども、全体的に消毒されたような悪い意味でのメジャー仕様のポップな楽曲がメインで、物足りなさは否めませんでした。

評価:★★★

MIYAVI 過去の作品
WHAT'S MY NAME?(雅-MIYAVI-)
SAMURAI SESSIONS vol.1(雅-MIYAVI-)
MIYAVI
THE OTHERS
FIRE BIRD
ALL TIME BEST "DAY2"

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2017年12月 5日 (火)

新たな発見が・・・

Title:Vu Ja De
Musician:細野晴臣

前作「Heavenly Music」がカバーアルバムだったので、新曲を含むオリジナルアルバムとしては「HoSoNoVa」以来6年ぶりとなるニューアルバム。奇妙な「Vu Ja De」というアルバムタイトルはお気づきの通り、「De Ja Vu」をさかさまにした言葉。ただ、彼の造語ではなく英語として使われている言葉のようで、「今まで見えていたものが何かのきっかけでまったく違うものに見える」という、「デジャヴ」とは逆のことを指す言葉だそうです。

今回のアルバムは全2枚組という内容。ただフルボリュームの内容ではなく、2枚あわせても1時間弱という十分1枚のアルバムとして収録できる内容になっています。ただ、Disc1は古いポップソングのカバー、Disc2は自らのオリジナル作という構成になっており、オリジナルとカヴァーではその世界観が全く違うということで2枚のCDにわけたそうです。

そして今回のアルバムタイトルは、Disc1のカヴァー曲を演奏した時の気持ちに沿った言葉だそうです。カントリーやブルース、あるいはスタンダードポップスやジャズといった古き良き時代のポップソングをカバーした本作。意外なことに最近になって知った曲も収録されているとか。また、あるいはカヴァーしてはじめて発見したようなことも少なくなく、まさに「Vu Ja De」の意味にピッタリ来るような内容になっていたようです。

一方Disc2はオリジナル曲を収録したアルバムになっているのですが、他のミュージシャンや映画・テレビなどへの提供曲やセルフカバーなどが大半となっており、今回のアルバムにあわせての純然たるオリジナル曲は1曲のみということ。既発表曲を並べてあらためて聴くことによるリスナーにとっても「Vu Ja De」を味わえる、ということなのでしょうか。

そして確かに今回のアルバム、Disc1とDisc2でかなり雰囲気が異なります。Disc2もルーツ志向の楽曲が多いものの、様々な媒体への提供曲を集めたということもありバラエティー豊富。良くも悪くも雑多な雰囲気がありますが、Disc1はアコースティックでシンプル。暖かさを感じるカバーということで統一感があります。CDを2枚組としたからこそ、異なる雰囲気を味わえるアルバムになっていました。

ただ、Disc1にも2にも共通項があって、どちらも非常に肩の力の抜けたポップソングに仕上がっているということ。カヴァーにしても原曲に比べてどうこうという変な気負いはなく、ただシンプルに暖かい雰囲気でカヴァーしています。Disc2についてももともとの提供媒体関係なく、ただただシンプルに彼の楽曲を並べた内容。結果「2355氏、帰る」といったような(Eテレの「2355」の使用曲ですね)提供媒体にしっかり紐づいたような曲も同じ並びで収録されています。しかし、にもかかわらずDisc2は統一感も覚えるのは、そこは細野晴臣らしいサウンドがしっかりと底辺で流れているのでしょう。1枚のオリジナルアルバムとして全く違和感ない出来でした。

良い意味で力が抜かれているベテランの彼ならではの傑作アルバム。タイトル通り、リスナーにとっても新たな発見のあるかもしれません。まずはCD2枚、異なる世界観を楽しみたい作品でした。

評価:★★★★★

細野晴臣 過去の作品
細野晴臣アーカイヴスvol.1
HoSoNoVa
Heavenly Music


ほかに聴いたアルバム

YUKI RENTAL SELECTION/YUKI

Yuki_rental_2

ソロデビュー15周年を迎える彼女。本作はそんな彼女がソロでリリースした8枚のアルバムから、それぞれ1曲ずつをピックアップして収録した、タイトル通りCDレンタル専用のベストアルバム。ベスト盤といえば内容的に2枚組3枚組と膨れ上がるのが最近の傾向の中、こちらはわずか8曲入りと潔い内容になっています。ただ、それだけにYUKIらしさが凝縮されたベスト盤になっており、どの曲もストリングスやピアノ、アコギといったアコースティックなサウンドを美しく聴かせる爽快なポップチューンがメイン。YUKIといえばソロデビュー直後はその方向性を見極められず迷走していたイメージがあるのですが、こうやって代表曲を並べられると、初期の作品からちゃんとYUKIらしさは出ていたんだな、ということにも気が付かされます。レンタル限定ですが、なにげに初心者にはピッタリの内容になっていました。

評価:★★★★★

YUKI 過去の作品
five-star
うれしくって抱きあうよ
megaphonic
POWERS OF TEN
BETWEEN THE TEN
FLY
まばたき

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