アルバムレビュー(邦楽)2017年

2017年3月20日 (月)

彼女たちの魅力が8曲に凝縮

Title:トリトメモナシ
Musician:チャラン・ポ・ランタン

前作から1年ぶり。チャラン・ポ・ランタンのニューアルバムは全8曲入りの"ほぼ"フルアルバムという作品になっています。この1年間のチャラン・ポ・ランタンといえばまず「進め、たまに逃げても」が話題になったドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」のオープニングテーマに起用されました。シングルカットはされていないので星野源の「恋」のような大ヒットとはなってしませんが、おそらくドラマを見た方ならこの曲はみなさんご存じではないでしょうか?また、SKE48の松井玲奈と組んでリリースした「シャボン」がベスト10ヒットを記録。松井玲奈の人気に引っ張られてのヒットなのですが楽曲自体はチャラン・ポ・ランタンらしい曲になっており、このヒットで彼女たちの名前も間違いなく広まったものと思われます。

そんな徐々に知名度をあげてきた彼女たちがリリースしたニューアルバム。1曲目はいきなり「進め、たまに逃げても」からスタート。続く「Sweet as sugar」もアコーディオンサウンドが軽快なキュートで楽しいポップチューン。チャラン・ポ・ランタンらしい楽曲でまずはリスナーを楽しくさせるようなバルカン風のポップチューンが並びます。これがはじめてのチャラン・ポ・ランタンというリスナーにとっては、まずはウキウキワクワクするような楽曲でグッと惹きつけられるという訳です。

ユニークなのは続く「まゆげダンス」。こちら打ち込みを取り入れた4つ打ちのエレクトロダンスチューン。彼女たちにとっては異色作で、わずか8曲入りのアルバムの中での彼女たちの挑戦心を伺うことが出来ます。

その後、しんみり聴かせる「夢ばっかり」にエキゾチックにムーディーな雰囲気を醸し出す「月」と聴かせる楽曲が並んだかと思えば、続く「恋はタイミング」は彼女たちの真骨頂といった感じの楽曲。アコーディオンメインの明るく軽快なポップチューンなのですが、恋人の出会いと別れまでを描いた物語性ある歌詞がコミカルだけどちょっと切なく、耳を惹きます。

「雄叫び」は力強いボーカルやホーンセッションが耳を惹くスウィングのナンバー。そしてラスト「かなしみ」はなんとMr.Childrenがアレンジ&演奏で参加(!)。バンド色も強く、チャラン・ポ・ランタンらしさはちょっと薄いポップチューンになっていますが、アルバムを締めくくるにはピッタリの切なくも爽やかに聴かせるミディアムナンバーに仕上がっていました。

そんな訳で8曲入りというミニアルバムながらもチャラン・ポ・ランタンの様々な側面がつまったアルバムになっていました。"ほぼ"フルアルバムという呼び名の通り、フルアルバム並にバリエーションの富んだレパートリーが楽しめるアルバムだったと思います。

タイアップの良さとか、ミスチルやSKEのメンバーとのコラボとか、レコード会社的にはかなり「売ってもらっている」感じのする彼女たち。そんな中、なかなか大ブレイクまで行かないのは気にかかるところなのですが・・・。今回のアルバムでは新たな挑戦を感じさせる部分もありますし、次回作にさらなる期待、といった感じなのでしょうか。とにかく聴いていてワクワク楽しくなれるポップソング。2017年も彼女たちの活躍に期待です。

評価:★★★★★

チャラン・ポ・ランタン 過去の作品
テアトル・テアトル
女の46分
女たちの残像
借り物協奏


ほかに聴いたアルバム

デも/demo /有村竜太朗

Plastic Treeの初のソロアルバム。「デモ」といってももちろんデモ音源ではなく完成された楽曲が収録されているのですが、楽曲的にはPlastic Treeに比べるとかなり趣味性の強い作品になっています。具体的には彼が大きく影響を受けたシューゲイザー系からの影響がより顕著にあらわれた作品。耽美的な雰囲気も保っておりPlastic Treeとの共通項も多いのですが、個人的にはPlastic Treeの曲よりも好きかも。ソロアルバムなだけに彼の好きなことを思いっきり歌った、ソロらしいアルバムでした。

評価:★★★★★

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2017年3月18日 (土)

2016年最も話題になったミュージシャン

Title:人間開花
Musician:RADWIMPS

2016年は様々な楽曲が話題となりました。それこそ下半期に大きな話題となったピコ太郎やRADIOFISHのようなお笑い枠もあったのですが、なによりも2016年話題のミュージシャンといえば星野源と、そして彼らRADWIMPSでしょう。本作にも収録している「前前前世」などの彼らの楽曲が映画「君の名は。」に使用され、映画の大ヒットとあわせて楽曲も大ヒット。年末には紅白歌合戦へ出演もしています。

昨年はその映画のサントラも大ヒットしましたがそれに続く絶好のタイミングでリリースされたのが本作・・・なのですが、そのジャケ写が大きなインパクト(^^;;グロ画像一歩手前のようなジャケット写真に一部では非難も殺到。本来、もっとも「売れる」タイミングでリリースされたアルバムをこのようなジャケットにしてしまうあたり一筋縄ではいかない感じがします。ただ、その写真にも負けず(?)アルバムは前作の売上を大きく上回る大ヒットを記録したようです。

ただ、「君の名は。」のサントラ盤の時にも書いたのですが、私は大ヒットした「前前前世」についてはRADWIMPSにとって絶賛できる名曲とは思っていません。確かに「君の前前前世から僕は 君を探しはじめたよ」というストーカー一歩手前どころか言う相手を間違えると下手なストーカーより質の悪い(笑)情熱的でインパクトある歌詞は野田洋次郎らしいといった印象を受けるのですがメロディーラインやサウンドについては平凡なギターロック。彼らの大ブレイクしたころの楽曲のように、その展開が読めないようなインパクトあるメロディーラインではありません。

今回のアルバムに関しても目立ったのは「前前前世」をはじめとする少々平凡さを感じてしまうギターロック。序盤の「光」も比較的ストレートなギターロックですし、「トアルハルノヒ」もパッと聴いた感じだと歌い方を含めてBUMP OF CHICKEN?と思ってしまうような良くありがちなポップスロックの楽曲となっています。

一方、RADWIMPS野田洋次郎といえば自身のソロプロジェクトillionとしても活動しています。illionではエレクトロサウンドを取り入れた挑戦的な作風の曲も目立ちますが本作ではその活動がRADWIMPSに還元されているような曲も見受けられました。例えばパンキッシュな「AADAAKOODAA」やポストロック的なサウンドが目立つ「アメノヒニキク」のような作品がその例でしょうか。もちろんいままでのRADWIMPSの作品にも挑戦的な作風の曲は少なくありませんでしたが、本作ではその方向性がより強くなったような感じがします。

ただ本作に関してはこれらの作品がアルバムの中で完全に浮いてしまったようにも感じました。いままでのRADWIMPSの楽曲はメロディアスでポップなギターロックという要素と挑戦的で刺激的なサウンドという要素が上手く融合していて、そこに野田洋次郎の書く見方によってはストーカー的な歌詞がRADWIMPSらしさを作り上げていたのですが、今回のアルバムはRADWIMPSを構成する要素が分離を起こしてしまったようにも感じました。

もちろんそうはいってもアルバムの中にはRADWIMPSらしい魅力もきちんと残されています。映画「君の名は。」でRADWIMPSの良さに気が付いた方もおそらく十分気に入る内容だったのではないでしょうか。個人的には特に「週刊少年ジャンプ」が気に入りました。

小中学生の頃、週刊少年ジャンプの世界にはまったことのある方には間違いなく共感を呼びそうな歌詞で、

「週刊少年ジャンプ的な未来を 夢みていたよ
君のピンチも 僕のチャンスと 待ち構えていたよ」

という発想はいかにも「中2病」的ながらも昔、同じようなことを考えたことがあったなぁ、と恥ずかしくも思い出すような方も少なくないのではないでしょうか。その上のラストの

「きっとどんでん返し的な未来が僕を待っている
血まみれからの方がさ 勝つ時にはかっこいいだろう
だから今はボロボロの心を隠さないで 泣けばいい」

(「週刊少年ジャンプ」より 作詞 野田洋次郎)

という締めくくりは週刊少年ジャンプの黄金期をリアルタイムで経験したアラフォー世代の心にもヒットしそうです。

そんな感じでRADWIMPSらしい名曲ももちろん少なくないですし、アルバム全体として決して悪い出来ではないのですが・・・いままでの彼らの作品と比べると少々見劣りがしてしまう内容だったように感じました。昨年、彼らが話題になったのもRADWIMPSとしてバンドが勢いにのっているというよりは楽曲のタイアップという外部的要因が大きかったからなぁ。今後、このチャンスを生かしてさらなる飛躍が出来るのか否か、これからが勝負でしょう。

評価:★★★★

RADWIMPS 過去の作品
アルトコロニーの定理
絶対絶命
×と○と罰と
ME SO SHE LOOSE(味噌汁's)
君の名は。

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2017年3月14日 (火)

こちらはデビュー40周年

Title:矢野山脈
Musician:矢野顕子

先日、デビュー25周年でオールタイムベストをリリースしたCHARAのベスト盤をリリースしましたが、こちらはそれを上回るソロデビュー40周年!間違いなく日本を代表する女性ソロシンガーの一人、矢野顕子のオールタイムベストがリリースされました。

以前から彼女の曲に関してはちょっと不思議に感じていたことがあります。それは彼女の曲に企業タイアップと密接にからみついたコマーシャルソングが目立ちながらも、それを含めてサブカル系の音楽ファンを中心に高い支持を得ているという点でした。例えば本作でも収録している「ISETAN-TAN-TAN」はタイトルそのままデパートの伊勢丹のオフィシャルソングですし、「あたしンち」もタイアップとなったアニメ映画「あたしンち」そのまんまのタイトル。今回のベスト盤には収録されていませんが、「リラックマのわたし」なんて曲もあったりします。

得てして商業主義的なミュージシャンは特にサブカル系の音楽ファンに忌避されそうなのですが矢野顕子の場合はそんな傾向は全くありません。まあ言うまでもないと思いますが、それは彼女の楽曲が「商業主義」なんて枠組みが全く無意味になるほど優れているからにほかなりません。かわいらしい歌声で歌いながらもあえて音階をはずして自由に歌うことによってジャジーな雰囲気を出しているスタイルや、ポップでかわいらしいメロディーを書きつつも一癖二癖あるメロディーラインは日本のポップスシーンの中で唯一無二のものを感じます。

それだけに彼女の楽曲は非常に個性的であり、その結果、シングルは本作にも収録されている彼女の代表曲「春咲小紅」が大ヒットを記録していますが、それ以降ほとんどヒットとは無縁という状況にあります。それにも関わらず彼女の楽曲が数多くのタイアップに恵まれているというのはシングルヒットには結びつかなくてもリスナーの心をつかむ何かがあるのでしょう。

事実、大ヒット曲がなくてもおそらくこのベスト盤に収録している曲の中には「どこかで聴いたことある」という曲が必ず数曲含まれているのではないでしょうか。例えば「ラーメンたべたい」なんてそのままストレートな歌詞に一度聴いたら忘れられないインパクトを持っていますし、「ふりむけばカエル」「夢のヒヨコ」なんかもそのかわいらしいサビはおそらく一度聴いたら忘れられなさそうです。

さて今回のベストアルバム、通常版は全3枚組の内容となっていますが、1976年から84年の作品がDisc1、85年から97年がDisc2、98年から2016年がDisc3と発表順に並ぶ構成になっています。ただこうやって並べてもデビュー当初からしっかり矢野顕子の色がついておりDisc1とDisc3の曲を比べてもほとんど遜色ない点に驚かされます。

またもうひとつ特徴的だったのがDisc3に他のミュージシャンとのコラボ曲が多く収録されている点でした。それも小田和正のような大ベテランから岸田繁のような(彼女から見れば)若手のミュージシャンまで。また本作には残念ながら収録されていませんがyanokamiと名乗る彼女、実力派のエレクトロニカミュージシャン、レイ・ハラカミとのコラボユニットを立ち上げたりもしています。デビューから40年を経て、なお他のミュージシャンと積極的にコラボして新たな挑戦を続ける彼女の姿勢には感心してしまいます。

ただそれだけ多くのミュージシャンとコラボしながらも本作では矢野顕子の別名義での活動の曲が収録されていないのはとても残念。yanokamiもそうですし、上原ひろみとのコラボとか宮沢和史とのコラボとか・・・オールタイムベストなんだからこういう曲も収録してほしかったなぁ。この点はちょっと残念に感じました。

先日のCHARAのベスト盤もそうでしたが本作も魅力的な作品たくさんで3枚組というフルボリュームながらもあっという間に聴けてしまったベスト盤でした。矢野顕子は上でも書いた通り、名前は知られていても大ヒット曲というのが少ないだけに名前は知っていてもちゃんと音源を聴いたことがない、という方も少なくないかもしれません。そういう方にこそ是非聴いてほしい、矢野顕子の魅力がたっぷりとわかるベスト盤でした。

評価:★★★★★

矢野顕子 過去の作品
akiko
音楽堂
荒野の呼び声-東京録音-
Get Together~LIVE IN TOKYO~(矢野顕子×上原ひろみ)
矢野顕子、忌野清志郎を歌う
飛ばしていくよ
JAPANESE GIRL - Piano Solo Live 2008 -
さとがえるコンサート(矢野顕子+ TIN PAN)
Welcome to Jupiter
矢野顕子+TIN PAN PARTⅡ さとがえるコンサート
(矢野顕子+ TIN PAN)

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2017年3月13日 (月)

デビュー25周年のオールタイムベスト

Title:Naked&Sweet
Musician:CHARA

2016年にデビュー25周年を迎えたCHARA。その独特なボーカルとメロディーラインによって圧倒的な個性を持つミュージシャンとして知られ、高い人気を誇る彼女。今回、レコード会社を超えて彼女の全キャリアから楽曲をピックアップしたオールタイムベストがリリースされました。CHARA名義の楽曲だけではなくYEN TOWN BANDの楽曲まで収録されているのが今回の目玉ともいえるでしょう(ただし、残念ながらMean MachineやCHARA+YUKIの楽曲は未収録です)。

3枚組となっている本作、完全な発売順ではありませんが、Disc1は「やさしい気持ち」でブレイクする前の楽曲、Disc2はその「やさしい気持ち」を含む90年代後半から2000年初頭にかけての人気的に一番脂ののっていた時期の楽曲、Disc3には2000年代以降、人気的に若干落ち着いた時期の楽曲から最近の楽曲まで収録しています。

CHARAについては以前から最初期の作品を除いて基本的にはアルバムをすべてチェックしているのですが今回ベスト盤によってあらためて彼女の楽曲をまとめて聴くことが出来ました。その結果あらためて気が付いたのが彼女の初期の作品のおもしろさ。特に今回、3枚のアルバムのうちブレイク以前の楽曲を収録したDisc1の出来の良さにあらためて驚かされました。

このブレイク前の作品に関してはブラックミュージックからの影響を特に顕著に感じます。「愛の自爆装置」はファンキーなリズムが印象に残りますし、「恋をした」はR&B風、「あたしなんで抱きしめたいんだろう?」はソウル風のベースラインが非常にカッコいい楽曲になっていますし、「罪深く愛してよ」はジャクソン5風の軽快なポップソングに仕上がっています。

CHARAの楽曲のブラックミュージックからの影響はもちろんその後も見られるのですが、Disc2以降の作品はもっと「CHARAらしさ」を強調した作品になっておりポップス寄りの楽曲が多いため、ここまで顕著なブラックミュージックからの影響は感じません。これらの作品は私もリアルタイムで聴いていたのですが、その当時は正直、ブラックミュージックに関してほとんど聴いたことがなかったため、その音楽的なルーツに気が付くことはありませんでした。今回、この時期の楽曲をあらためて聴いてみて、そのおもしろさを再認識することが出来ました。

一方、おそらく楽曲としてもっとも知られているのがDisc2。彼女のブレイク作となった「やさしい気持ち」や大ヒットしたYEN TOWN BAND名義の「Swallowtail Butterfly~あいのうた~」もここに収録されています。彼女の独特なボーカルを最も生かしてポップにまとめあげているのもこの時期の楽曲。メロディーラインにもインパクトある曲が並んでおり、人気の面でもそうですが、楽曲的な面でもミュージシャンとして最も脂ののった時期であることは間違いないと思います。

そしてDisc3については・・・この時期の作品についても間違いなく名曲は多く見受けられます。このDisc3のみをリリースしたとしても十分「傑作」として評価できそうな内容だと思います。ただDisc1、2に比べるとちょっと見劣りしてしまうのも事実かも。「ラブラドール」などよりロック寄りの作品をリリースしたり、挑戦的な曲もあるのですが、全体的にはCHARAらしさが前に出た結果、若干マンネリ気味な部分も否めません。ここ最近、人気の面ではかなり落ち着いてしまった感のある彼女ですが、正直なところその理由もはっきりとわかってしまうような内容でした。

そんな気になる部分もあるものの、アルバムとしては3枚組のフルボリュームながらも魅力的な楽曲の連続であっという間という感覚で聴いてしまえるアルバム。CHARAというミュージシャンの実力、魅力を再認識できた内容になっています。今も彼女のファンという方はもちろん、最盛期、「やさしい気持ち」の頃に彼女にはまっていた、という方にもお勧めできるベストアルバムです。

評価:★★★★★

CHARA 過去の作品
honey
kiss
CAROL
Very Special
Dark Candy
うたかた
Cocoon
JEWEL
Secret Garden


ほかに聴いたアルバム

THE END/BLUE ENCOUNT

BLUE ENCOUNTについては前作「≒」ではじめて音源を聴きました。その「≒」は正直いまひとつピンと来なくてここでも酷評しました。それだけに今回のアルバムに関してもあまり期待はしていなかったのですが・・・今回のアルバムは素直に良い作品でした。洋楽テイストの強い作品からJ-POP的な作品まで、パンキッシュなサウンドを軸にバラエティーある作品が並んでおり、なによりもバンドとしての勢いを感じさせます。今後に期待が持てる1枚でした。

評価:★★★★

BLUE ENCOUNT 過去の作品

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2017年3月12日 (日)

アットホームさを感じる

Title:MAHOROBA
Musician:井乃頭蓄音団

個人的に注目しているバンドのひとつ、井乃頭蓄音団。昨年はなんと2年連続でフジロックに出場。一部では注目を集めているようですが・・・ただ残念ながら現状ではまだまだその知名度は厳しいようです。

以前の井乃頭蓄音団といえばダメ人間を描く変態性ある歌詞が大きな特徴でした。それが前作「グッバイ東京」ではそんな変態性ある歌詞が薄れ、真面目な歌詞が並ぶ作品となりました。個人的にはそういう方向チェンジは少々残念だったのですが、一方で前作はそんな飛び道具のような歌詞に頼らなくても勝負できることを示したアルバムだったと思います。

今回のアルバムに関してもその方向性は同じでした。基本的には歌詞は真面目な内容になっており、以前の変態性はありません。ただ、なかなかむくわれないような毎日を生きる平凡な主人公を等身大で描くという意味では以前の彼らから共通しているかもしれません。例えば「ちっぽけな僕」などはタイトル通りの男の姿をストレートに本音ベースで描いています。

また本作、非常に暖かさを感じる歌詞が目立ちました。1曲目からして「ようこそ我が家へ」ですし、最後も「ここにいて」から「ただいま」で締めくくり。どの曲も等身大の日常を描く歌詞なのですが、そんな平凡なありのままの日常をそのまま受け止めるようなとても暖かいものを歌詞から強く感じます。まさに1曲目のタイトルに象徴されるような「我が家」が今回のアルバムのテーマになっているようにも感じました。

そして今回のアルバムでもうひとつ強く感じたのが音楽的な面での成長。特に今回のアルバムはフォークやカントリーといった音楽からの影響を強く感じます。「ようこそ我が家へ」はまさにカントリーなギターが全編に展開されており、アメリカのルーツ音楽志向を感じますし、「この道を」もフォーキーなサウンドが心に染み入ります。一方、ユーモラスあふれる歌詞が魅力的な「偶然金メダル」はブルースロックでへヴィーなバンドサウンドを聴かせてくれ、ロックバンドとしての魅力も感じることが出来ます。

前作に比べると音楽的にはもうちょっとカントリーやフォークに焦点をあててきた印象もあるのですが、それだけに暖かみのあるアメリカン・ルーツ・ミュージックからの影響がよりはっきりとあらわれた1枚だと言えるでしょう。

全体的には正直言って地味な印象のあるアルバムだけに最初はピンと来ない部分もあったのですが、何度も聴くうちにその暖かい楽曲が心の中に染みいってくるようなそんな作品でした。もっともっと注目を集めてもいいバンドだと思うのですが・・・これからの活躍にも期待です!

評価:★★★★★

井乃頭蓄音団 過去の作品
親が泣くLIVE at 下北沢GARDEN 29 Feb.2012
おかえりロンサムジョージ
グッバイ東京


ほかに聴いたアルバム

宇宙図書館/松任谷由実

約3年ぶりとなるユーミンの新作。一時期、「バブルの女王」的なイメージから抜け出そうとしていた彼女が、ベスト盤リリースを挟み前作「POP CLASSICO」ではバブル期の楽曲を含めての松任谷由実だと受け入れるような作品になっていましたが本作に関してもその延長線上。むしろシンセのサウンドなどを取り入れスケール感も覚えるような楽曲が増え、80年代後半から90年代あたりのバブル全盛期の彼女を彷彿とすらさせるようなアルバムになっています。ただそれだけに逆にその吹っ切れ具合が心地よい感じのアルバムとも言える作品に。まさにユーミンらしい、といえるアルバムになっていました。

評価:★★★★

松任谷由実 過去の作品
そしてもう一度夢見るだろう
Road Show
日本の恋と、ユーミンと。
POP CLASSICO

Mrs.GREEN APPLE/Mrs.GREEN APPLE

本作が2枚目のアルバムにしてセルフタイトルのアルバムとなる5人組ロックバンドの新作。軽快で明るい陽性のポップスロックが特徴的でストリングスやピアノを入れつつ爽やかに聴かせる楽曲が並んでいます。難しいこと抜きで楽しめそうなバンドではあるのですが、前作から大きな変化はなく、良くも悪くも「軽さ」、悪い言い方をすると「軽薄さ」を感じてしまいます。もうひとひねりあった方がおもしろいと思うのですが。

評価:★★★

Mrs.GREEN APPLE 過去の作品
TWELVE

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2017年3月 7日 (火)

歌の上手さを売りに

Title:Joyful Monster
Musician:Little Glee Monster

ここにも以前書いたことがあるかもしれませんが・・・私は以前から邦楽シーンに対して非常に不満かつ疑問に思っていることがあります。それはボーカルに対する異常なまでの軽視。特にアイドルシーンなどにおいては「顔が良くて歌まで上手いとリスナーに嫉妬されるからわざと歌が下手な人を選んでいるのか?」と思うほど、素人レベルの歌唱力と平坦な表現力をユニゾンで歌うアイドルばかり。にも関わらず有名ミュージシャンが楽曲を提供して楽曲自体がいいと音楽メディアは大絶賛。個人的にはボーカルも曲を構成する重要な要素だと思っているので、ボーカルがいまふたつのような曲を無条件で絶賛するメディアのスタンスに強い疑問を持っています。個人的には「ボーカルグループ」といって通用するような「歌が上手い」ということが売りのアイドルグループが出てきてもいいと思うのですが・・・。

そんな中、10代の女の子6人で構成されたボーカルグループLittle Glee Monsterに関しては「歌が上手い」ということを売りにしており、今のJ-POPシーンの中では珍しい売り方に興味を持ちました。もっとも「歌が上手い」といってもとかく日本では例えばバラエティー番組で「歌の上手さ」を競う場合、単なるカラオケで音程があっている、ということだけを競っていたり、声量が大きい人を「歌が上手い」と持ち上げたりするので、本来ボーカリストとして表現力があることが歌が上手い必須条件であるべきなので、「歌が上手い」と売り文句を額面通りに受け取るこは出来ないのですが。

彼女たちに関しても確かに歌は上手いと思います。ただやはり彼女たちの上手さの要素はその声量や音程の安定感といった部分。一定以上の安定感と声量があるだけに安心して聴いていられるのですが表現力という部分ではまだまだといった印象受けました。そういう意味では彼女たちに関してもテクニック的には「上手い」のかもしれませんが、本当にボーカリストとして実力があるのか、といわれるとまだまだ発展途上だな、と思います。

楽曲自体に関しては先行シングルについてはいかにもJ-POP的。場合によってはアイドル的な売り方を意図しているのか?と感じるような楽曲もあり、歌の上手さを強調するためのわざとらしいコーラスラインやアカペラなどを用いているような曲が多く、ちょっとわざとらしさも気にかかりました。

ただアルバム収録曲に関しては「Hot Step Jump!」のようなソウル風のボーカルを入れてくるような曲があったり、「Catch me if you can」みたいな英語詞でファンキーな洋楽テイストの強い楽曲を聴かせてくれたり、シングル曲の印象よりもブラックミュージック色が強いのも印象的。よくありがちな売れ線J-POPよりも、よりボーカルの上手さが楽曲に反映させられるような意欲的な作品が目立ったようにも感じました。

ボーカルグループを売っていくというレコード会社や事務所側の意欲はおもしろいですし、またアルバム曲に関してもそういった意欲を感じます。表現力に関してはかなり不足しているようにも感じるのですが、これはまだ10代の彼女たち。これから人生経験を踏めば、より表現力あるボーカルを聴かせてくれるようになるのではないでしょうか。そういう意味ではこれから次第でもっともっと大化けしそうなグループと言えるかもしれません。これからの彼女たちの成長に期待したいところです。

評価:★★★★


ほかに聴いたアルバム

鉛空のスターゲイザー/グッドモーニングアメリカ

セルフタイトルだった前作「グッドモーニングアメリカ」ではバンドとしての勢いを感じさせるポップでインパクトあるメロディーを聴かせてくれた彼ら。それだけに続く新作にも期待したのですが・・・正直言えば完全な期待はずれ。ハイトーンボイスにアップテンポなリズム、ほどほどハードなギターロックという典型的な「フェス向け」なバンド。ライブで盛り上がることだけを主眼においたような薄っぺらさを感じてしまいます。同じようなテンポの曲が並んでおりメロディーのインパクトもいまひとつ。ここ最近、一時期に比べて人気に勢いがないようですが、その理由もわかる作品でした。

評価:★★★

グッドモーニングアメリカ 過去の作品
inトーキョーシティ
グッドモーニングアメリカ

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2017年3月 6日 (月)

奇跡(?)の傑作

Title:EXIST!
Musician:[Alexandros]

ミュージシャンがもっとも脂ののった時にだけリリースできる「奇跡の1枚」といえるアルバムがあります。いままでのアルバムでは「悪くはないんだけど・・・」的な印象しか受けなかったミュージシャンが絶頂期にリリースする勢いにのりまくったようなアルバム。音楽を聴いていてそんなアルバムにはとても強い喜びを感じます。

[Alexandros]の最新作はそんな「奇跡の1枚」ともいうべき傑作アルバムでした。いままで[Alexandros」というとアルバムはコンスタントに聴いていたのですが、悪くはないのですがあと一歩、という印象を受けていました。そんな彼らがバンド名を[Alexandros]と変えて2枚目となるアルバム。もともと前作からバンドとしての活動に脂がのってきた印象もあったので予感はあったのですが、まさに彼らにとって最高傑作ともいえる傑作をリリースしてきました。

まずアルバムは爽やかなピアノの音色からスタート。続くメロディーラインやバンドサウンドにも爽やかさと同時に切なさを感じさせるポップス志向の強い楽曲からスタートします。しかし続く「Kaiju」は一転、強いドラムスのリズムとへヴィーなギターサウンドがインパクトのハードロック色強いナンバー。英語詞の歌詞は洋楽テイストの強い楽曲となっています。

他にもバラエティー豊かな楽曲が並んでいるのが今回のアルバムの特徴。3曲目「Girl A」は最初は打ち込みのデジロック的にはじまりつつ、サビはハイトーンボイスで哀愁感たっぷりのメロを歌い上げる歌謡曲色の強いナンバー。洋楽的な部分と邦楽的な部分が混在しており、強いインパクトを感じます。かと思えば「Aoyama」は爽快でメロディアスなナンバー。しゃれたメロディーラインにはシティポップの空気感がありますし、「Buzz Off!」はハイテンポでファンキーなギターロック。こちらも洋楽テイストが強いナンバーなのですが、大サビの部分のみ妙に歌謡曲的なメロディーラインになっているのが特徴的です。

前半はそんな様々なパターンの楽曲を聴かせつつ、英語詞がメインで洋楽色が強い楽曲が並びました。一方後半は日本語詞が中心となり典型的なJ-POPナンバーが並んでいます。「Swan」は日本語詞のギターロックなのですが、わかりやすいメロディーラインの良くも悪くもベタなJ-POP。「今まで君が泣いた分取り戻そう」もタイトルからしてJ-POP的なのですが、サビからスタートもJ-POP的。ストリングスを入れて妙にスケール感を出しているのもまたJ-POP的という、こちらも良くも悪くも典型的なJ-POPナンバーとなっています。

ただこの典型的なJ-POPナンバーも、前半の洋楽色が強いナンバーから続けて聴くと[Alexandros]のもうひとつの側面として前半とのほどよいバランスを感じさせます。なによりわかりやすくキャッチーなメロディーラインはアルバムの中で大きなインパクトを与えていました。

前作までJ-POP色が強かったのがグッと洋楽志向が強くなり、その中で上手くJ-POP的な色合いを入れてきていて、そのバランスの良さが楽しめる傑作アルバムだったと思います。前作から脂がのっているように感じた彼らでしたが、そんな勢いのある彼らを象徴するような作品だったと思います。これが彼らにとって「奇跡の1枚」となるか、今後もコンスタントにこのレベルの傑作をリリースできるのか・・・勝負の分かれ目は次回作になりそうですが、このアルバムの関しては間違いなく[Alexandros]の最高傑作でしょう。彼らの印象もグッと良くなった1枚でした。

評価:★★★★★

[Alexandros] 過去の作品
Schwarzenegger([Champagne])
ALXD

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2017年3月 5日 (日)

復帰後初!

Title:砂の塔
Musician:THE YELLOW MONKEY

今回のレビューはちょっと毛色が違います。THE YELLOW MONKEY復帰後初のシングル盤。初回限定版でライブ音源がついており、全14曲70分というアルバム並のボリュームになっています。当サイトへよく遊びに来て下さる「通りすがりの読者」さんのリクエストもあり、かなり遅くなってしまったのですがレビューで取り上げさせていただきました。

まずはやはり肝心の新曲2曲から。「砂の塔」はギターのアルペジオで妖艶な雰囲気にスタート。さらに重なるストリングスがその雰囲気をさらに強調しています。このストリングスのアレンジは沢田研二の「勝手にしやがれ」など数々のヒット曲のアレンジャーとして知られる船山基紀が手掛けており、要所要所でインパクトある音色を上手くいれてきているのが印象的。THE YELLOW MONKEYはもともと歌謡曲からの影響を公言しており、特に吉井和哉はソロ活動で歌謡曲のカバーアルバムもリリースしていましたが、まさに彼らだからこそ出来る歌謡曲の要素をふんだんに取り入れた歌謡ロックに仕上がっています。「砂の塔」というはかなさを感じるいかにもなタイトルもそうですが、歌詞も昭和歌謡の匂いがプンプンただよってきます。

一方2曲目「ALRIGHT」も歌謡ロックらしい哀愁感あるメロが特徴的なのですが、こちらはよりバンドサウンドを前に押し出したサウンドに。どちらかというと「歌謡」の部分を前に出した「砂の塔」に比べてロックバンドな部分を前に出した楽曲に仕上がっています。復帰後初となる挨拶がわりの2曲は、それぞれTHE YELLOW MONKEYの魅力を違う側面からスポットをあてた作品と言えるかもしれません。

そしてそれに続く12曲は昨年5月からスタートした復帰後初のアリーナツアーから、各会場1曲ずつピックアップして収録したライブアルバムとなっています。

いうまでもなくこのメンバーでライブを実施するのは約15年ぶり。しかし、それだけ長いブランクがあったにも関わらずビックリするくらいバンドとしてまとまりがあり、かつむしろここにきてバンドとして脂がのりまくっているのではないか、と思うほどのライブとなっていました。

まずライブ盤の冒頭は「プライマル。」。復帰後ライブ一発目の一曲目。解散前のラストシングルを最初に持ってくるのがユニークですが、スタート直後の歓声はファンの歓喜の叫び。会場を覆う雰囲気がライブ音源を通じて伝わってくるようです。

その後の収録曲はまさにTHE YELLOW MONKEYのベスト盤ともいえるような選曲になっているのがうれしいのですが、間違いなくどの曲もその勢いは増しています。「SPARK」はより疾走感が増していますし、「BURN」は演奏がより分厚く、グルーヴさを増しています。さらに途中、長いギターソロが入ってよりサイケさを増した「球根」は10分にも及ぶ演奏ながらも、そのテンションを全く切らすことなく最後まで聴かせる演奏となっています。

復帰後初のライブツアーとは信じられないくらいバンドとしてのまとまりがあり、また迫力を感じさせるライブになっていました。また観客の歓声からはイエモン復活の喜びを感じさせ、幸福感あふれるライブ会場の空気感も伝わってきます。そんな会場の空気だったからこそ、イエモンの演奏がよりエッジの利いたものとなったのかもしれませんね。

そんな訳で新曲2曲はもちろんライブ音源も間違いなく要チェックの1枚。これが初回限定版というのは残念な限り・・・とはいえ、現時点でも幸か不幸かまたAmazonでは購入できるようですし、また中古なら普通に購入できそう(あと、レンタルという手法も)。しかし、これだけバンドとして勢いがあるのならこれからの活動にも期待が出来そうですね。最近、バンドの復活というニュースは多いのですが、残念ながら復活直後は積極的に活動していても徐々に尻すぼみになり、いつのまにか活動しているのかどうかわからないようなバンドがほとんど(コンスタントに活動を続けているのはユニコーンくらいか?)なだけに、彼らには是非、積極的な活動を期待したいのですが・・・。

評価:★★★★★

THE YELLOW MONKEY 過去の作品
COMPLETE SICKS
イエモン-FAN'S BEST SELECTION-

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2017年3月 4日 (土)

美しい声が大きな魅力

Title:The Best of Cornerstones 1 to 5 ~The 20th Anniversary~
Musician:佐藤竹善

佐藤竹善といえばご存じSING LIKE TALKINGのボーカリストですが、そのデビューした頃にコカ・コーラのCMソングを歌っていたことがありました。顔は完全に隠して匿名で歌っていたのですが、その美声が大きな話題となりました。SING LIKE TALKINGといえば、その心地よいAORのメロディーが多くのファンを虜にしましたが、佐藤竹善に関してはコカ・コーラのCMで話題になったように、その「声」だけで勝負できるボーカリストとして高い評価を得ています。

そんな彼がライフワーク的に続けているのが「CORNERSTONE」と題されたカバーアルバムのシリーズ。1995年に第1弾がリリースされた後、数年に1枚というゆっくりのペースですが断続的にアルバムをリリースしてきました。今回リリースされたのは、その第1弾「CORNERSTONE」から2012年にHMV/ローソン限定でリリースされた「Free as a Bird - CORNERSTONES 5 -」の5枚のアルバムに加えて2005年にリリースされた「CORNERSTONE」のリマスター盤「CORNERSTONES+ EXTRA TRACK」、ライブアルバム「LIVE WITH the CORNERSTONES'07」から楽曲をセレクトした「CORNERSTONE」シリーズの集大成的なベスト盤となっています。

カバーに関して選曲、アレンジともに正直言えばさほど目新しさはありません。基本的にはAORをメロウに歌い上げておりアレンジも比較的シンプル。Disc1、2は洋楽、Disc3は邦楽という構成ですが、どちらも一度は聴いたことあるような有名曲も多く、聴きやすいカバーに仕上がっています。

ただそれだけシンプルなカバーなだけに佐藤竹善のボーカリストとしての実力が目立ちます。冒頭にも書いた通り、やはりその透き通る美しい声が大きな武器となっているのは間違いありません。彼のボーカルに関してもいつも通りで楽曲によって歌い方を大きく変えている訳ではないのですが、選曲にしろアレンジにしろボーカルにしろ、変にいじくらないシンプルなカバーだからこそ、より原曲の良さ、ボーカルの良さが際立つカバーになっていたと思います。

評価:★★★★★

で、このベスト盤と同時リリースされたCORNERSTONEシリーズの最新作がこちら。

Title:My Symphonic Visions~CORNERSTONES 6~feat.新日本フィルハーモニー交響楽団
Musician:佐藤竹善

第6弾となる本作は、全編交響楽団とのコラボレーションとなるアルバム。オーケストラアレンジのアルバムとなっています。

選曲した楽曲は基本的に洋楽がメイン。Phil Collins「Against All Odds」やChicago「Will You Still Love Me」という「らしい」選曲が並ぶ一方、意外な路線ではEDMミュージシャンAviciiの「Hey Brother」なんかもカバーしています。

ただ基本的にはオーケストラアレンジにダイナミックに仕上げている感じ。原曲に比べてグッとスケール感の増したカバーに仕上げています。そんなオーケストラバックにしっかりと歌い上げており、その「歌」の力をきちんと発揮しているあたりはさすが佐藤竹善といった感じでしょうか。

もっともこの手のカバーアルバムでオーケストラアレンジというのはよくありがちな選択肢。おそらくボーカリストなら一度はオーケストラをバックに歌ってみたいと思うんでしょうね・・・。そういう意味では彼がやりたいことをやれたカバーアルバムなのでしょうが、アレンジについてはよくありがちで少々大味だったかな、とも思うカバーアルバムでした。

評価:★★★★

佐藤竹善 過去の作品
ウタジカラ~CORNER STONE 4~
静夜~オムニバス・ラブソングス~
3 STEPS&MORE~THE SELECTION OF SOLO ORIGINAL&COLLABORATION~
Your Christmas Day III

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2017年3月 3日 (金)

確かにこれは「ヤバイ」

Title:We love Tank-top
Musician:ヤバイTシャツ屋さん

今、もっともブレイク間近なバンドとして注目を集めている3人組ギターロックバンド、ヤバイTシャツ屋さん。インディーズ時代からそのユニークなバンド名とともに話題となっていましたがこのたびメジャーデビュー。そのデビュー作である本作はいきなりオリコンアルバムチャートで7位を記録しています。

その特徴的なバンド名は以前から知っていたのですがその高い注目度もあり今回のメジャーデビューアルバムをはじめて聴いてみました。で、はじめて聴いてみた感想ですが、これがなかなかおもしろい!楽曲のタイプとしては基本的にメロコア。比較的分厚いギターサウンドにインパクトあるポップなメロディーラインが特徴的。ただところどころハードコア風のデスボイスが入って来たり、かなりへヴィーなバンドサウンドが入ってくる点が大きなインパクト。メタルばりのへヴィーな部分とキュートとも感じるポップな部分のバランスが非常におもしろい印象を受けました。

この楽曲のインパクトやへヴィーとポップのバランスに一役買っているのが男女のツインボーカルというスタイル。女性ボーカルのしばたありぼぼはいまどきともいえる若干アニメ声風の甲高いボーカルスタイルなのですが、女性ボーカルを入れることにより楽曲のポップな側面で強いインパクトを与えています。

このデス声を入れたへヴィーなサウンドとポップなメロのほどよいバランス、さらにインパクトとしての女性ボーカルという点でマキシマム ザ ホルモンと近い部分を感じました。またその活動スタイルや楽曲自体にユーモアな部分が多い部分も共通項。ヤバイTシャツ屋さんというバンド名ながらも「We love Tank-Top」というアルバムタイトルをもってくるのもユニークなのですが、1曲目「We love Tank-top」はいきなりわざとらしさを感じるミュージカル風からスタート。リスナーをちょっとびっくりさせるはじまりとなっています。

ただしユーモアセンスな言動をしたり歌詞を書いたりしながらも、歌詞で意図される主張についてはとても熱いものを感じるマキシマム ザ ホルモンに対してヤバイTシャツ屋さんの歌詞はどこか醒めたような視点やメタ視点のような歌詞が多くみられます。「喜志駅周辺なんもない」「天王寺に住んでる女の子」などは大阪芸大出身の彼ららしい、大阪芸大の学生あるあるネタという、内輪ネタに終始している歌詞ですし「流行りのバンドのボーカルの男みんな声高い」はその通りなのですが、まさにメタ視点の歌詞になっています。

まあここらへんの差が、メンバー全員アラフォーで私と同年代のマキシマム ザ ホルモンと、メンバーが(公表はされていないようですがおそらく)20代前半のヤバイTシャツ屋さんの世代の差のような感じもします。このメタ視点や世の中を斜めから見たようなシニカルな歌詞は個人的にはあまり好みではないのですが、今のところでは楽曲のおもしろさの方が先に来ており、彼らの個性として上手く機能しているように思います。若干、この歌詞の方向性が今後の展開次第では嫌味たらしい感じになってしまう可能性も否定はできないのですが・・・とりあえず現時点では非常におもしろくインパクトある歌詞に仕上がっていました。

各所で絶賛されている彼らへの評価に違いはなく、間違いなくここ最近のロックバンドの中で頭ひとつとびぬけた存在だと思います。良くも悪くも今時のバンドという感じも強く、それが今後、どういう方向に作用していくのか期待半分不安半分な部分もあるのですが・・・間違いなく2017年にその動向から目を離せないバンドだと思います。これからが楽しみです。

評価:★★★★★

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