アルバムレビュー(邦楽)2017年

2017年9月19日 (火)

THE COYOTE BAND名義での4作目は・・・

Title:MANIJU
Musician:佐野元春&THE COYOTE BAND

佐野元春&THE COYOTE BAND名義となる4作目のアルバム。THE COYOTE BANDとの名義となったアルバムはいずれも若々しさにあふれた勢いのあるギターロックとなっているのが大きな特徴でした。しかし今回のアルバムに関してはむしろ若々しい勢いというよりは大人の雰囲気を感じるアルバムに仕上がっていました。

フィリーな雰囲気の「悟りの涙」やバイオリンを入れてアコースティックに聴かせる「蒼い鳥」、ちょっとエキゾチックな音を入れた「天空バイク」など、「新しい雨」「禅ビート」など、前作同様ギターロックの路線が根底にありつつも全体的にはソウルやブラックミュージック的な要素を多く含んだ作風となっており、いままでのTHE COYOTE BANDの作品と比べると落ち着いたという印象を受けるアルバムになっていました。

もっとも「落ち着いた」といっても悪い意味でベテランらしい保守的な作品に仕上がった、といった感じではありません。メロディーラインはポップで勢いがあるし、THE COYOTE BANDの演奏は前作までの作品同様、若々しさも感じます。

そして本作もメッセージ性が強く、世の中を鋭く切り裂くような歌詞は健在。例えば「現実は見た目とは違う」では

「本物の聖者は
名前がない
見せかけの聖者は
名前しかない

本物の聖者は
真実を問う
見せかけの聖者は
裏切りに沿う」

(「現実は見た目とは違う」より 作詞 Motoharu Sano)

と昨今世の中を席巻しているポピュリズムを皮肉るような歌詞が特徴的。さらに「朽ちたスズラン」では

「あのひとの嘘はもつれた災いを招くだろう
偽りの涙に愛の海は氷で埋まるだろう
気取った奢りが果てしない争いを誘うだろう
あのひとの金と時間はやがて石になるだろう」

(「朽ちたスズラン」より 作詞 Motoharu Sano)

とデマにまみれた昨今の社会情勢を鋭く批判しています。

さらに今回のアルバムでユニークな試みだったのが1曲目「白夜飛行」と10曲目「夜間飛行」同じ歌詞の曲を全く別のアレンジで収録しています。「白夜飛行」はテンポよいギターロック、「夜間飛行」はジャズ風に仕上げており、両者、全く異なった感覚の楽曲になっています。ある意味アルバムの中で交錯する2つの音楽的な世界観を切り取った、本作を象徴するようなアルバムになっていました。

ここ最近のアルバムとはちょっと異なった雰囲気のアルバムを作り上げながらも今回も傑作に仕上げてきた作品に佐野元春のミュージシャンとしてのキャパの大きさとその実力をあらためて感じた傑作アルバム。彼のすごさをさらに実感させられました。

評価:★★★★★

佐野元春 過去の作品
ベリー・ベスト・オブ・佐野元春 ソウルボーイへの伝言
月と専制君主
ZOOEY
BLOOD MOON


ほかに聴いたアルバム

Tiny Screams/鬼束ちひろ

昨年行われた彼女のライブの模様を収録した初となるライブアルバム。ピアノ、チェロ、パーカッションのみというシンプルなアレンジに、基本的に彼女らしい歌い上げるバラードナンバーが並んだ選曲になっています。そのため似たような曲が多いのですが・・・そのことが全く気にならない内容。楽曲としてクオリティーの高さもさることながら、その力強く感情たっぷりで胸をうつ彼女のボーカルでシンプルなアレンジをバックとして歌い上げられているからこそ同じような曲が並んでいても全く飽きることがなく楽しめるアルバムになっているのでしょう。ボーカリスト鬼束ちひろの実力がよりクリアにあらわれたアルバムでした。

評価:★★★★★

鬼束ちひろ 過去の作品
LAS VEGAS
DOROTHY
ONE OF PILLARS~BEST OF CHIHIRO ONITSUKA 2000-2010
剣と楓
FAMOUS MICROPHONE
GOOD BYE TRAIN~ALL TIME BEST 2000-2013
シンドローム

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2017年9月18日 (月)

カシオトーンを駆使したサウンド

Title:EXPO町あかり
Musician:町あかり

「昭和アイドル歌謡曲風」を標榜している女性シンガーソングライター町あかりの最新作。今回のアルバムの大きな特徴のひとつが楽曲の作り方。今回のアルバムに収録されているのはカシオ計算機からリリースされているキーボード、カシオトーンと音楽制作ソフトのガレージバンドを駆使してつくられた楽曲だそうで、ちょっとチープさを予測させるような音楽制作方法が話題となっています。

そして今回のアルバム、サウンド面ではこういった制作手法がプラス方向にうまく機能していました。もともと町あかりの楽曲というとサウンド的には比較的チープという印象があったためカシオトーンのサウンドでもほとんど気になりません。またそこらへんの女の子の会話や本音、あるあるネタを織り込んだ歌詞は軽いな雰囲気のサウンドにもちょうどマッチしており、むしろサウンド面でちょっとチープさがあった方が楽曲に合っているように思います。

まああとそうはいってもさすがはカシオ(?)。確かにチープはチープなのですが、少なくとも楽曲を邪魔してしまうほどのチープさは感じません。楽曲によっては安っぽい打ち込みの音を前に出している曲もありましたが、それもあえて狙ってのサウンドであり楽曲の中で自然に溶け込んでいます。カシオトーン内蔵のプリセットパターンをほぼそのまま使用したそうですが、それでいてきちんと楽曲にマッチさせているあたり、さすがといった感じの「プロの仕事」を感じさせます。

さてそんな最新作ですが、楽曲の基本的な方向性は前作、前々作と同様・・・なのですが今回の作品に関しては前作、前々作ほどに「昭和アイドル歌謡曲」という路線を前に押し出しておらず、上にも書いた通り、女の子の本音や日常風景、あるいはあるあるネタをインパクトある歌詞で上手く織り込んだポップソングが並んでいます。

ジャンル的にも「お願い!刑事さん」みたいなアイドル歌謡曲王道路線のような楽曲や「たおやかだ~aki~」のようなベタな歌謡曲な楽曲から「は!ction」のようなちょっとジャジーさを感じる曲や「自律神経乱れ節」のような民謡風な楽曲、「ハイヒールが折れたわ」みたいなムーディーな路線まで様々。基本的には80年代の歌謡曲的なサウンドを根底にバラエティーある内容となっています。

また楽曲的に大きなインパクトとなっているのがその歌詞。日常の会話をそのまま歌詞に取り入れたような内容になっており、かつ非常にインパクトあるフレーズを上手くサビとして取り込んでいます。このスタイルも前作、前々作から大きな違いはありません。

ただ基本的に出オチ的な一発ネタがメインということもあり、インパクトあるフレーズばかりが目立っていてそれに続く内容があまりない・・・という欠点も以前から同様。ただ今回のアルバムに関しては、その一発ネタのような歌詞があまり気になりませんでした。「昭和歌謡曲」的なイメージが前作、前々作ほど強くなかったため、昭和歌謡曲の名曲と比較されることがなかったのも大きな要因かもしれませんし、また1曲あたり2、3分という短さゆえに一発ネタ的な勢いだけで突っ切れたという部分も大きいかもしれません。またなによりも彼女の書く歌詞がより進化してきていて、一発ネタを引っ張ることにより生じる不自然さが薄くなってきたのかもしれません。

いままで3作、彼女のアルバムを聴いてきたのですがその中では文句なしに一番楽しめたアルバムだったように思います。サウンド的なB級さと歌詞の世界が上手い具合にマッチした作品に仕上がっていました。そのあるあるネタにも思わず共感してしまう、最初から最後まで楽しいアルバムです。

評価:★★★★★

町あかり 過去の作品
ア、町あかり
あかりの恩返し


ほかに聴いたアルバム

LIVE A LIVE/ヒステリックパニック

名古屋で結成された5人組ロックバンド。地元ということで名古屋ではレコード店などでよくプッシュされていたので以前から名前は知っていたのですが今回アルバムをはじめて聴いてみました。

楽曲的にはメタル色も強いハードコアバンド。ただハードコアなサウンドとポップなメロが交互に展開されるスタイルで方向性的にはマキシマム ザ ホルモンやヤバイTシャツ屋さんに近い感じがします。ただ全体的に音はごちゃごちゃしておりいまひとつ整理されておらず、バンド演奏ものっぺりしている感じでいまひとつ。外部からプロデューサーを招いて交通整理した方がよいのでは?

評価:★★★

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2017年9月17日 (日)

こちらはデビュー35周年

Title:ALL TIME BEST
Musician:安全地帯

今年、デビュー35周年を迎えたロックバンド、安全地帯。そんな彼らのオールタイムベストがリリースされました。さらにそんな安全地帯の中心メンバーでありボーカリストである玉置浩二のソロキャリアを統括したベスト盤も同時リリース。2作品同時に聴いてみました。

Title:ALL TIME BEST
Musician:玉置浩二

実は私、安全地帯をアルバムという形で聴いたのはこれがはじめて。もちろん大ヒット曲であり本作にも収録されている「ワインレッドの心」や玉置浩二の「田園」などは聴いたことがありました。ただ、今回はじめてベスト盤という形でまとめて聴いてみました。

安全地帯というと以前から、一部で・・・というよりも具体的にミュージックマガジン誌近辺あたりで非常に評価が高いのですが、今回のベスト盤を聴いてみても、正直そこまで高い評価に対してはあまりピンと来ませんでした。

もちろん、数多くのヒット曲にスタンダードナンバーも歌っていたミュージシャン。一定以上の「実力」があることは間違いありません。今回聴いたベスト盤2作にひんに関しても数多くの名曲が収録されている点には異論はありません。

ただ今回のベスト盤を聴いて強く感じてしまったのですが、彼らの楽曲はあまりにも保守的。確かにそのしんみりとうっとりするメロディーラインは魅力的ではあるのですが、よくも悪くも一昔前そのままの歌謡曲であり、目新しさは感じませんでした。とはいえ個人的には井上陽水と組んだ「夏の終りのハーモニー」のメロは絶品だと思いましたが・・・。

しかし一方、もうひとつ大絶賛されている玉置浩二のボーカル、これに関してはもうもろ手を挙げて絶賛するしかないですね。彼の楽曲に関しては以前から聴いたことはあったのですが、あらためて聴くとその歌の上手さに関しては文句のつけようがありません。

声量、表現力ともに申し分ないのですが、なによりそのボーカルが実に自然体であることが大きな魅力に感じます。とかく特に日本では「歌が上手い」と称されるボーカリストはいかにもゴスペル風の声をはりあげてその声量を聴かせたり、あるいは感情過多というほどのボーカルを聴かせたりして、なによりも「歌の上手さ」を強調しようとするスタイルが目立ちます。

ただ彼のボーカルはその歌声にしても表現力にしてもとにかく自然体。まったく聴いていて違和感がないのに心に響いてくるボーカルを聴かせてくれます。今回、ベスト盤としてこういう形で彼の歌をまとめて聴いて、そのボーカリストとしての実力、魅力を強く感じることが出来ました。

もっとも彼らの楽曲に関して上で否定的な書き方をしていますが、数多くのヒット曲を抱え第一線で活躍してきたミュージシャンだけに凡百のミュージシャンでは到底かなわないような作品を奏でているのは間違いありません。どちらかというと「良質な歌謡曲」といったイメージなのですが・・・彼らの活躍をまとめて聴くには最適なベスト盤になっていました。

評価:どちらも★★★★

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2017年9月16日 (土)

20周年の記念盤

Title:万謡集
Musician:氣志團

ここ最近、再び勢いが増している氣志團。なんと今年、結成20周年を迎える彼ら。ある意味「出オチ」感すらある彼らが20年もこのスタイルで活動を続けられるのは驚異的でもあるのですが、そんな彼らの新作はなんと全曲、彼らが敬愛するミュージシャンたちからの提供楽曲でつくられた作品。豪華ミュージシャンが作詞作曲勢にズラリと並んだアルバムとなっています。

それだけにアルバム全体的にバラバラになっている・・・かと思いきや、むしろ全体的にはいかにも氣志團らしい楽曲の並び、ある種の統一感がありました。クレイジーケンバンド横山剣が提供した「東京湾大飯店」やハイロウズ真島昌利が提供した「逃げろ!逃げろ!」などは聴いただけで誰がつくったのか一発でわかるような癖のある楽曲だったのですが、その他の曲に関しては、作った側が「氣志團」というバンドをイメージしながらつくったのでしょう、10-FEETのTAKUMAが提供した「フォーサイクル」がハードコアパンク風だったり、BUCK-TICKの櫻井敦司、今井寿コンビが提供した「恋するクリスチーネ」がグラムロック風だったりとバンドの個性をそれなりに出しつつも、基本的には氣志團としてイメージされるようなビートロックの楽曲が並んでいます。

歌詞の方もいかにも氣志團らしい青春系の歌詞が並ぶのも特徴的。特にラストを飾る秋元康が作詞で参加した「リーゼント魂」などはまさに氣志團のいままでの歌詞の傾向を上手くとらえて歌詞にした内容。ここらへんを卒なく仕上げてくるあたりはさすが秋元康といった感じなのでしょう。

またこれだけいろいろな個性が集まった楽曲を氣志團が演奏するとしっかりと氣志團の曲になっていたのも印象的でした。氣志團といえばその不良のルックスからキャラクター的な部分で個性を確立しているバンドというイメージが強いのですが、今回、こうやって他人が提供した楽曲を並べて聴くと、彼らがバンドとしてもしっかりと個性を確立しているんだということにあらためて気が付かされます。

前作「不良品」は彼ら自身が氣志團というバンドをしっかりと見つめ直して実に氣志團らしいアルバムに仕上げた傑作になっていましたが、今回は周りの人たちが氣志團というバンドをどう見ているのかを表現したアルバムと言えるかもしれません。そういう意味では前作と対照的なアルバムと言えるでしょう。

ただ個人的にはもうちょっと楽曲的にぶっとんでいてもおもしろかったのでは?とも思ってしまいました。前山田健一が提供した「はすっぱ」みたいなムード歌謡風バリバリの普段の氣志團では聴けないような楽曲もあるのですが、上にも書いた通り、全体的にはビートロック路線で統一されており、こういう楽曲もありなんだ、という意外性にはちょっと乏しい内容でした。他の人が楽曲を提供するだけに、もっと氣志團としてはありえないような楽曲も何曲かあってもおもしろかったと思うのですが・・・。良くも悪くも「氣志團らしい」アルバムに留まっていました。

とはいえ著名なミュージシャンたちが楽曲を提供しているだけにポップでインパクトある楽曲揃い。最初から最後までポップなビートロックを存分に楽しめるアルバムでした。結成20年を迎えてまだまだ勢いのある彼ら。これからの活躍にも期待です。

評価:★★★★

氣志團 過去の作品
房総魂~Song For Route 127
木更津グラフィティ
蔑衆斗 呼麗苦衝音
日本人
氣志團入門
不良品


ほかに聴いたアルバム

松永天馬/松永天馬

アーバンギャルドのリーダーとしても活躍している松永天馬の初となるソロアルバム。もともとアーバンギャルドでも変態性あるエロチックな歌詞を書いていましたが、ここ最近、社会派な路線が続いています。そんな中リリースされたソロアルバムは、自分の名前を題したアルバムらしく、彼の内面をそのままさらけだしたような歌詞が大きな魅力に。変態性を感じるエロチックな歌詞に彼の本音をある意味赤裸々に綴ったような内容が特徴的。ある意味、聴く人は選びそうですが、それだけ強烈な個性を感じさせるアルバムでした。

評価:★★★★

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2017年9月15日 (金)

結成25年を超えていまだ感じる新鮮味

Title:Metaltic Nocturne
Musician:noodles

昨年、結成25周年を迎えてすっかりベテランバンドの域に達した3ピースガールズバンドnoodlesの最新アルバム。ご存じの通り、もともとthe pillowsの山中さわおの目にとまり、彼が主催する「DELICIOUS LABEL」に所属することになってその活動をスタートさせた彼女たち。ある意味、the pillowsの「妹分」的な彼女たちなのですが、楽曲もthe pillows同様、ストレートでポップなオルタナ系ギターロックが心地よい作品が並んでいます。

以前にも書いたアルバム評で彼女たちを「女版the pillows」と何度か書いたのですがそのイメージは本作も変わりません。本作の冒頭を飾る「Heart Bop」のギターのイントロや途中の入るギターのフレーズなどはthe pillowsの影響を強く感じますし、「right hand arrow」なども出だしのギターフレーズはまんまthe pillows。ミディアムテンポでメロディアスなナンバーなのですが、どこかキュートさも感じるフレーズにもthe pillowsらしさを感じます。

基本的には英語詞が主体となったオルタナ系ギターロックが主軸となったアルバム。the pillows以上にシンプルなギターロックが目立ちますし、比較的ポップス路線が目立つ最近のthe pillowsに比べるとよりへヴィーなギターサウンドを前に押し出した「ロック」な楽曲が目立ちます。

以前聴いたアルバム「Explorer」では打ち込みやアコースティックな要素を入れてそれなりにバリエーションを出そうとしていましたが、本作ではあくまでもギターロックに特化。そのため正直言うと、若干バリエーションの不足が目立ちました。もっとも、アルバムとしてはわずか38分という短さ。そのため楽曲的に「似た曲が多い」と感じる部分も少なくありませんでした、ほとんどだれることなく一気に聴き切ることが出来るアルバムになっていました。

特にタイトルチューンとなった「Metaltic Nocturne」では哀愁感あるメロディーラインに強いインパクトを感じ、アルバムの中でひとつの核となっていました。メロディーラインはより洋楽テイストを強く感じ、the pillowsとは異なる方向性にnoodlesとしての個性もしっかりと感じることが出来ます。

また前半、英語詞の曲が並ぶのに対して後半は日本語詞の曲が並び、アルバムの中でバリエーションを持たせているのも特徴的。もうちょっといろいろと挑戦した方が・・・と思うこともなきにしろあらずなのですが、割り切ったようなシンプルなギターロックがとにかく魅力的で、最後まで楽しむことが出来るアルバムになっていました。

結成から25年以上を経過しながらも勢いのあるギターサウンドにいまなお新鮮味すら感じることが出来るnoodlesのアルバム。このベテランバンドながらも若手のような新鮮味が残っているという点でもthe pillowsと共通しているように思います。個人的には(以前のアルバムでも書いたのですが)もっともっと売れてもいいと思うんだけどなぁ。全ギターロックファンにお勧めしたいアルバムです。

評価:★★★★★

noodles 過去の作品
SNAP
Explorer

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2017年9月12日 (火)

彼らの歩みがわかるオールタイムベスト

Title:LAST BEST~豊作参舞~
Musician:米米CLUB

「浪漫飛行」「君がいるだけで」などの大ヒット曲を連発し、90年代を代表するバンドの一組としてその名を知られる米米CLUB。97年に解散したものの2006年に再結成し今に至っています。ただ再結成後しばらくは積極的な活動を続けたものの、ここ数年は活動も停滞気味。結局、ボーカルのカールスモーキー石井のソロ活動が忙しいということもあり、今後4年間はバンド活動休止が決定。そのラストを飾るアルバムとして初となるオールタイムベストがリリースされました。

ベスト盤としては12年前にリリースされたファン投票によるベスト盤「米~Best of Best~」以来。こちらは再結成前にリリースされたアルバムということで今回ははじめての再結成後の楽曲を含めたベスト盤に。また、前作ではダンス系の楽曲と聴かせる系の楽曲をCD2枚にわけたアルバムになっていたのに対して本作はデビューシングル以降の全シングルを発売順に並べた内容。そのため、米米のバンドとしての歩みがよくわかる内容になっています。

今回は全3枚組でのリリースだったのですが、この3枚の分け方がちょうど米米の歩みとマッチしているような分け方になっていました。Disc1は「I・CAN・BE」から「ひとすじになれない」まで。いわばメガヒットとなった「君がいるだけで」リリース直前までの作品で、デビュー時からブレイク時までの流れがわかる内容に。Disc2は、その大ヒットした「君がいるだけで」から97年の解散前までのシングル。さらにDisc3は再結成後の楽曲と、ちょうど米米の歩みとマッチしたCDの分け方となっています。

そして今回圧倒的によかったのがDisc1。特に「浪漫飛行」リリース前の楽曲に関して、もちろん以前から知っていたのですが今回久しぶりに聴いてみて、こんなによかったっけ?とあらためて米米の魅力を再認識させられました。いわゆるPファンクから強い影響を受けたファンクナンバーに、ユーモラスな歌詞を加えた内容。ただメロディーラインにしろサウンドにしろファンクそのままというよりも微妙に歌謡曲的なテイストが加わっており、いい意味で日本人にとって聴きやすい味付けがされています。「嫁津波」みたいな民謡風の楽曲もユニーク。彼らが日本流ファンクを実に自然体に完成させてしまっていたことにいまさらながら気が付かされました。

しかし、正直言って「浪漫飛行」以降のナンバーについては日本流ファンクという視点から大きく遠ざかってしまい、悪くはないのですが「売れ線のJ-POP」になってしまっていておもしろさという観点からはグッと後ろに下がってしまったように思います。いわば「浪漫飛行」や「君がいるだけで」の二番煎じを狙っているような縮小再生産的な楽曲がほとんど。アルバム単位ではわからないのですが、シングル曲では初期米米で感じたような魅力はほとんど感じられません。

いまさらながらなのですが、なんで「浪漫飛行」後の米米に関しては初期の歌謡ファンク路線をシングルとして一切やめてしまったのかかなり疑問に感じてしまいます。初期のファンク路線が全く売れずに「浪漫飛行」でいきなりブレイク、というのならわかるのですが、「浪漫飛行」以前も「KOME KOME WAR」「FUNK FUJIYAMA」がベスト10ヒットを記録しており、十分広く受け入れられていましたし、「浪漫飛行」ブレイク後には2ndシングル「Shake Hip!」を再発しヒットを飛ばしています。もし、初期ファンク路線の楽曲を大ブレイク後もシングルとしてリリースしていれば、もっとファン層を広げられたのではないか、と今となっては思ってしまいます。まあリアルタイムでは「FUNK FUJIYAMA」がヒットした頃って、ヒットシーンでファンクを音楽のジャンルとして受け入れられるような土壌がなく、むしろ「コミックバンド」的な括りで彼らのことを語られることが多く、そんなイメージを払拭したかったのかもしれませんが・・・。

また今回のベスト盤で予想以上に良かったのが再結成後の楽曲を集めたDisc3。特に再結成後のシングル曲では、「MATA(C)TANA」「御利益」のような初期ファンク路線が復活。初期米米を彷彿とさせるようなアバンギャルドでポップでユニークな米米路線が復活しています。一方では「恋のギャンブル」のような「浪漫飛行」系の楽曲や「君を離さない」のようなJ-POP王道系のバラードもちゃんと残っており、いわば米米の様々な魅力をきちんと伝えた楽曲になっています。再結成によってようやく彼らがやりたいような路線の楽曲をシングルとしてリリースできるようになったんだなぁ、ということを今回、あらためて感じてしまいました。

なんかライブにも足を運んだことがあるくせに気が付くのが遅すぎるよ、と言われそうですが、あらためて米米CLUBの魅力を認識できらベスト盤でした。再度の活動休止はちょっと残念なのですが・・・また4年後、魅力的な楽曲を聴かせてくれることを願っています。

評価:★★★★★

米米CLUB 過去の作品
komedia.jp
米米米~SUNRICE~


ほかに聴いたアルバム

プラチナムベスト ORIGINAL LOVE~CANYON YEARS SINGLES&MORE/ORIGINAL LOVE

あるミュージシャンの代表曲をまとめてUHQCD仕様でリリースするベスト盤シリーズ「プラチナムベスト」。本作はORIGINAL LOVEのポニーキャニオン在籍時のシングル曲などをまとめた2枚組のベスト盤。いかにも本人が直接関与しないレコード会社主導のベスト盤っぽいのですが、公式サイトでも紹介されているようですので、基本的に本人公認のベスト盤のようです。

大ヒットした「プライマル」のようにいかにも彼らしいシティポップ路線の曲からラテン色を入れてきたりスカ風のリズムを入れてきたりジャジーだったりと、しっかりORIGINAL LOVEとしての色を感じつつもバラエティー富んだ作風が魅力的。オールタイムベストでないのは残念ですし、ブレイク作「接吻 kiss」は収録されていませんが、彼の代表曲は概ね網羅しておりORIGINAL LOVEの入門盤としても最適なベスト盤です。

評価:★★★★★

ORIGINAL LOVE 過去の作品
白熱
エレクトリックセクシー
ラヴァーマン

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2017年9月10日 (日)

バラエティー富んでいてとにかく楽しい

Title:キンキーキッズ
Musician:餓鬼レンジャー

前作、活動20周年記念アルバムをリリースした餓鬼レンジャー。すっかりベテランのHIP HOPユニットとなった彼らですが、このたび以前からサポートメンバーとして参加していたDJオショウが正式加入し、5人組となりました。本作はそんな新生餓鬼レンジャーのニューアルバムになっています。

そんな20周年記念アルバムだった前作「祭事」は下ネタを含んだバラエティー富んだエンタテイメント性強い楽曲を聴かせてくれた彼ら。続く今回のアルバムも非常にエンタテイメント性のある楽しいアルバムを聴かせてくれました。

アルバムはまずハリウッド映画の予告編のようなイントロからスタート。ネタ色が強い内容ながら微妙に世相を風刺しているような「予告編」の内容もユニークながら、続く「NO PLAN B」はハードロック風、「超越」はレゲエの要素を入れたエレクトロ風のトラックがリズミカルでかつポップで耳なじみやすいナンバーになっています。

エロ歌詞がユニークな「Miss PenPen」に熟女讃歌の「MILF」で前作同様下ネタ路線が続いたかと思えば、続く「運がYEAH」は家族との日常を描いた歌詞がほっこりとさせられる内容と、ある意味その内容の振れ幅は大きいものの、いずれもエンタテイメント性を強く感じさせる内容になっており、しっかりと聴かせる内容となっています。

サウンド的にもハードコア風な「WASABI」やラテン風の「卒業」、タイトル通りマンボ風の「アゲマンボ」などバラエティー豊富。ラスト「ONE」ではゲストボーカルにSugar Soulが参加してその伸びやかでつやのあるボーカルを聴かせてくれています。

要所要所に入るコントのようなインターリュードもなかなか楽しくアルバムのエンタテイメント性を増す大きな要因となっています。正直、前作に比べるとバリエーション的にもインパクト的にもこちらの方が一歩劣るかな、とも思うのですがこちらの作品も最初から最後までワクワクしながら楽しめる素敵なポップアルバムに仕上がっていました。前作同様、普段HIP HOPを聴かないような方でも楽しめるような傑作アルバム。幅広い層にお勧めできる1枚です。

評価:★★★★★

餓鬼レンジャー 過去の作品
KIDS RETURN
祭事

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2017年9月 8日 (金)

逆説的なアルバムタイトルがユニーク

Title:NO MORE MUSIC
Musician:OKAMOTO'S

逆説的で、どこか皮肉めいたものを感じさせるアルバムタイトルも印象的なOKAMOTO'Sのニューアルバム。バンドとしての評判とは裏腹にアルバムではいまひとつの作品が続いてたデビュー直後の彼らとは異なり、ここ最近、アルバムの出来も安定していておりバンドとしても成熟期に入って来たことを感じさせる彼らですが、フルアルバムとして7作目となる本作もそんなバンドとしての勢いを感じさせる傑作となっていました。

今回のアルバムはまず印象としてはファンク、ブラックミュージックからの強い影響を感じます。1曲目「90'S TOKYO BOYS」はファンキーでアーバンな作風。印象としては最近話題のSuchmosやNulbarichと似たような流れを感じさせますがバンドとしてはもちろんOKAMOTO'Sの方が先輩格。楽曲にもいい意味での安定感を覚えます。この方向性は「NEKO」や最後を飾る「Star Light」も同じような感じでしょうか。程よく力が抜けたサウンドが心地よく、醒めた雰囲気の楽曲がオカモトショウのボーカルにもマッチし、心地よいシティーポップのナンバーを聴かせてくれます。

ただそんなアーバンポップを主軸としつつ、様々なタイプの曲を楽しめるのが本作の大きな特徴。タイトルチューンである「NO MORE MUSIC」は80年代ポップスを彷彿とさせる爽快で心地よいダンスポップですし、「WENDY」はタイトル通りの爽快さを感じる疾走感あるポップチューン。ボーカルはオカモトコウキがつとめており、爽やかな彼のボーカルが楽曲にも非常に合っています。ちなみにこの曲、プロデュースを堂島孝平がつとめているのですが、まさに堂島孝平らしさが前面に出てきているので、堂島ファン必聴の作品です。

そんなシティーポップチューンが多く収録されている一方、バンドとしての足腰の強さを感じるロックチューンも少なくありません。特に今回、バンドメンバー全員が共通してファンだというレッチリからの影響を挙げており、「BEDROOM」のイントロなんかはまさにレッチリっぽいですし、先行シングルとなった「BROTHER」なんかもまさにレッチリらしいファンキーでロックなミクスチャーのナンバー。HIP HOP風なトラックが心地よい「Cold Summer」も途中、へヴィーなバンドサウンドが顔を覗かせます。ただここらへんのへヴィーなロックナンバーもアーバンなシティーポップと並んでいてもアルバム全体としての流れに違和感がなく、音楽的に共通するものを楽曲の根底に感じることが出来ます。

バラエティー富んだ作風にバンドの音楽性の幅広さを感じ、またそれでいてアルバム全体に統一感がある点、バンドとしてしっかりと個性を確立しているということを感じさせる作品になっていました。デビューから7年、バンドとしての評価とは裏腹に、なかなかブレイクしきれない彼らですが、バンドとしての体力、実力はしっかりと身に着けてきていることを感じさせる傑作アルバム。まだまだバンドとしても昇り調子を続けており、これからの活躍が楽しみになってくる作品でした。

評価:★★★★★

OKAMOTO'S 過去の作品
10'S
オカモトズに夢中
欲望
OKAMOTO'S
Let It V
VXV
OPERA
BL-EP


ほかに聴いたアルバム

HIGHLIGHT-The Very Best of Toki Asako-/土岐麻子

女性シンガーソングライター土岐麻子のオールタイムベスト盤。全編爽快なシティポップが流れてくる作品。ある意味意外性はなく、ジャジーな曲やエレクトロアレンジの曲もあったりするのですが、良くも悪くも似たような雰囲気の楽曲ばかり。土岐麻子としての個性は強く感じさせる反面、ちょっと楽曲のインパクトは弱めかな?ただとはいうものの聴いていて気持ちよくなるポップスばかり。以前のベスト盤の時も似たような感想を書いたのですが、良質なポップのアルバムとして楽しめる作品です。

評価:★★★★

土岐麻子 過去のアルバム
TALKIN'
Summerin'
TOUCH
VOICE~WORKS BEST~
乱反射ガール
BEST! 2004-2011
CASSETTEFUL DAYS~Japanese Pops Covers~
HEARTBREAKIN'
STANDARDS in a sentimental mood ~土岐麻子ジャズを歌う~
Bittersweet
PINK

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2017年9月 3日 (日)

ボーカリストとしての実力を発揮

Title:ベター・ハーフ
Musician:中村中

中村中のニューアルバムは5曲入りとなるミニアルバム。本作は鴻上尚史の作・演出による同タイトルの舞台に出演している彼女が劇中で歌う歌をまとめたサントラ的なミニアルバム。彼女自身の曲「愛されたい」以外についてはすべてカバーとなっています。

このサイトでも何度か彼女については紹介してきましたが、彼女は個人的にもっと売れてもいいと思っているミュージシャン。ある種の情念が感じられる力強い歌声が心に響いてくるミュージシャンなのですが、今回のカバーに関してはまさにそんな彼女のボーカリストとしての実力が最大限発揮された作品になっていました。

まずは選曲がやはりそんな彼女のボーカルにピッタリという選曲。1曲目は森田童子の「たとえばぼくが死んだら」。高音を生かした歌い方なのですが、比較的シンプルな歌い方の中にも力強さを感じるカバーに。そして2曲目はかの中島みゆき「誕生」のカバー。中村中のスタイルは中島みゆきに通じる部分があるだけに相性は抜群。中島みゆきに比べると抑揚は少な目ながらも、こちらは逆に低音を力強く聴かせるカバーで、情熱的なボーカルが胸につきささります。

そして個人的にちょっと懐かしいのが橘いずみ「愛してる」のカバー。1993年に「失格」がヒットを記録し一躍注目を集めた女性シンガーソングライターのアルバム収録曲という知る人ぞ知るような楽曲なのですが、リアルタイムで橘いずみにはまっていた時期があった私にとっては懐かしさを感じます。これでもかというほど感情を込めて歌い上げる原曲に対してカバーの歌い方はシンプル。ただサビではそれまで抑えていたものを解放するかのように感情をぶつけており、このギャップが大きなインパクトとなっています。

最後はカバーとしては定番曲ともいえる「サン・トワ・マミー」。こちらも伸びやかに聴かせるカバー。感情的には抑え気味のボーカルなのですが、その抑えた感情の中からにじみ出てくるような悲しさが胸に響いてきます。

全体的に彼女のカバーのスタイルは感情をぶつけるというよりは、感情は最小限に抑えた感じのスタイル。もともと彼女のボーカルは地声が太く、低音を聴かせるスタイルのためあまり感情を込めてしまうと感情過多になってしまう可能性が大きいためこのようなスタイルになっているように感じます。ただこの抑え気味のボーカルの中から彼女の情念がにじみだしており、これが非常に心に響いてくるボーカルになっています。

またそんな彼女のボーカルを支えるアレンジも、ピアノで聴かせるスタイルながらも途中にダイナミックなバンドサウンドが入ってきています。この静かなピアノとダイナミックなバンドのバランスも絶妙。ほどよく彼女のボーカルを盛り上げるアレンジとなっており、感情過多にもならず彼女のボーカルの力強さを押し上げるサウンドに仕上がっていました。

わずか5曲入りのミニアルバムとはいえ彼女のボーカリストとしての魅力を最大限に発揮させていた傑作のカバーアルバムだったと思います。本作も魅力的でしたが、このカバーが使われた舞台の方も見てみたかったかも、とも思ってしまいました。上にも書きましたが、これほどの実力を持ったボーカリストなだけにもっと売れてもいいと思うんですけどね。

評価:★★★★★

中村中 過去の作品
私を抱いて下さい
あしたは晴れますように
少年少女
若気の至り
二番煎じ

聞こえる
世界のみかた
去年も、今年も、来年も、


ほかに聴いたアルバム

MISIA SOUL JAZZ SESSION/MISIA

昨年、横浜赤レンガ倉庫で開催された「Blue Note Jazz Festival in Japan 2016」での共演をきっかけに、世界的なトランぺッター黒田卓也を迎えて作成された彼女初のジャズアルバム。彼女の代表曲がジャズアレンジでカバーされているほか、甲斐バンドの「最後の夜汽車」のカバーも収録されています。

純粋にアルバムとしては悪くありません。ジャジーな演奏をバックに彼女の力強い歌声が響く聴かせるアルバムです。ただ、アレンジはコンテンポラリーなアレンジがほとんどでジャズのイメージは薄く、無難にポップなセルフカバーといった感じで、ジャズらしくボーカルにフェイクが入るわけでもなければアドリブ的な要素も薄く、そういう側面でのおもしろさはあまりありません。MISIAというボーカルをジャズという側面から生かし切れていないように感じました。普通にポップのアルバムとして聴く限りではいいアルバムだとは思うのですが・・・。

評価:★★★

MISIA 過去の作品
EIGHTH WORLD
JUST BALLADE
SOUL QUEST
MISIAの森-Forest Covers-
Super Best Records-15th Celebration-
NEW MORNING
MISIA 星空のライヴ SONG BOOK HISTORY OF HOSHIZORA LIVE

ヤンキーとKISS/モーモールルギャバン

エレピとガレージ風のへヴィーなバンドサウンドが奏でる、ブラックミュージックからの影響を感じつつパンキッシュなサウンドが耳を惹くモーモールルギャバンの新作。今回も「贖罪」「OTOMI」のような狂気を秘めたようなラブソングも魅力的。「ガラスの三十代」のようなそろそろアラフォーに差し掛かるゲイリー・ビッチェの素直な心境を吐露するような曲も。良くも悪くもモーモールルギャバンらしいアルバムになっていました。

評価:★★★★

モーモールルギャバン 過去の作品
クロなら結構です
BeVeci Calopueno
僕は暗闇で迸る命、若さを叫ぶ
モーモールル・℃・ギャバーノ
シャンゼリゼ
PIRATES of Dr.PANTY

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2017年9月 2日 (土)

1日1曲 第3弾

日本のポピュラーミュージックの名曲を1日1曲というコンセプトで1年かけて紹介しようという企画「大人のJ-POPカレンダー 365 Radio Songs」。以前、第1弾として1月から3月分を、第2弾として4月から6月分を紹介しましたが今回は第3弾。7月から9月分の紹介です。

Title:大人のJ-POPカレンダー~365 Radio Songs~「7月 サマーソング」

まず7月はサマーソングとして、Disc1が「夏の歌」、Disc2が「海の歌」となっています。もっとも事実上、海の歌=夏の歌ですから、アルバム全体が夏の歌が並んでいるという構成になっています。

さてこの企画、50年代あたりのヒット曲から2000年以降のJ-POPチューンまで同列に並んでいる構成がひとつの魅力なのですが、この7月のサマーソングに関しては、「歌謡曲」と称されるような曲はほとんどなく、フォーク、ニューミュージック以降の楽曲が大半。さらにはプリンセスプリンセス「世界で一番熱い夏」、爆風スランプ「Runner」、TUBE「夏を抱きしめて」「湘南My Love」といった80年代終盤から90年代のヒット曲が並んでおり、アラフォー世代にとってはかなり懐かしくもうれしい選曲になっています。

逆に言えば、いわゆる「歌謡曲」な楽曲では夏を愛でるような楽曲は少ないってことなのかなぁ。このアルバムには美空ひばりの「真赤な太陽」が収録されていますが、確かに歌謡曲といったらちょっと影のあるような冬の歌が多く、底抜けに明るいような夏の歌は少なそうな印象も。そういうちょっとした発見もあった選曲になっていました。

評価:★★★★

Title:大人のJ-POPカレンダー~365 Radio Songs~「8月 平和」

8月編ままずDisc1はコンセプトが非常にはっきりしています。「平和の歌」と題され、加川良の「教訓I」やジローズ「戦争を知らない子供たち」のような反戦歌が多く収録されており、歌詞を聴かせる選曲になっています。ただちょっと残念だったのは多くを占めるのがフォークソングの時代の楽曲。たしかにこの手の反戦歌が多いのは60年代70年代なのかもしれませんが、もうちょっと最近の反戦歌も聴きたかったかも。

Disc2も「旅の歌」と題されていますが、こちらも60年代70年代のフォーク以前の曲が目立ちました。こちらもここ最近は確かに「旅」をテーマとした曲が少なくなってしまったかもしれません。今の時代、どこへ行くにも新幹線やら飛行機やらであっという間に行けるようになってしまい、「旅情」を感じる機会が少なくなってしまいましたからね・・・というのはちょっと単純化させすぎた分析でしょうか?

ただ今回、この「7月 サマーソング」も「8月 平和」も時代によって曲のテーマ性も少しずつ異なってくるということを実感させられる構成でした。

評価:★★★★

Title:大人のJ-POPカレンダー~365 Radio Songs~「9月 友情」

で、9月は友情なのはなんで??まずDisc1の方は「秋の歌」として、秋をテーマとした曲が並んでいます。9月で秋ってちょっと早くないか?とも思うのですが、楽曲的には鈴木雅之「ガラス越しに消えた夏」とか太田裕美「9月の雨」など、夏の終り、秋のはじまりをテーマとした曲が多く、9月らしい選曲といった感じになっていました。一番ユニークだったのは森高千里「台風」で、選んだテーマもユニークながらも「ドンドンドドパ」と台風で強い雨が降っている様子をそのまま歌詞にしつつ、歌詞にあわせてドラムが鳴るという楽曲構成も非常におもしろいナンバー。90年代の森高千里のユニークさを感じさせる曲になっています。

一方Disc2の「友情のテーマ」は若干選曲に「?」が。SOPHIA「黒いブーツ~oh my friend~」はまさに友情をテーマとした名曲なのですが、「また逢う日まで」は友情の歌じゃなくて別れゆく恋人の歌ですよね?工藤静香「慟哭」も「ともだち」という歌詞が出てくるけど友情の歌じゃなくて失恋の歌ですよね??もうちょっと友情をテーマとした曲ってあると思うんですが・・・。

評価:★★★★

さて、このオムニバスシリーズ、1月からスタートして9月まで聴いてきました。おなじみの名曲はもちろん、知られざるJ-POPの名曲なんかも選曲されており、それが時代を超えて同列に並んでいる非常にユニークなオムニバスなのですが、若干疑問に感じる点もちらほら。

一番疑問に感じるのは、何度も取り上げられているミュージシャンが妙に目立つという点。特に吉田拓郎は1月につき1曲は取り上げられており、他にも松田聖子や美空ひばり、渡辺美里の曲も目立ちます。確かにいずれのミュージシャンもJ-POP史上、欠かすことのできないミュージシャンかもしれませんが、全体的に似たようなミュージシャンの曲が多いな、という印象を受けました(なんとなくソニー系、エピック系のミュージシャンが目立つような印象も)。

また選曲も基本的に最近の曲までが範囲なのですが、2000年代以降の曲は少なく、70年代から90年代の曲がメイン。こちらに関してももうちょっと「つい最近の曲」も収録してほしかった感じもします。

企画・監修・選曲は音楽評論家の田家秀樹氏なのですが、全体的に彼の好みが強く反映されてしまっているような感は否めません。まあそれはある程度仕方ないことなのかもしれませんが・・・もうちょっといろいろなミュージシャンの曲や最近の曲まで選曲してほしいかな、とも感じてしまったオムニバスアルバムでした。

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