アルバムレビュー(邦楽)2017年

2017年6月24日 (土)

まさかの「意欲作」

Title:岸田繁「交響曲第一番」初演
Musician:指揮 広上純一 演奏 京都市交響楽団

くるりの岸田繁が交響曲を書いた・・・昨年、もたらされたこのニュースには非常に驚かれされました。くるりでも「ワルツを踊れ Tanz Walzer」のようなウィーンで録音されたクラシック音楽からの影響を強く受けた作品や、その後のライブでオーケストラをバックに入れてくるなど、もともと岸田繁はクラシック音楽から大きな影響を受けているミュージシャンでした。

もっともロックやポップスのミュージシャンがクラシックに接近するケースは少なくありません。ただそのほとんどのケースが単に持ち曲をオーケストラ風にアレンジしておしまいというケース。くるりのようにクラシック音楽を楽曲の中に積極的に取り入れるケースはほとんどありません。

その上今回のように交響曲を1曲完成させる、などという話はまさに前代未聞。音楽的に専門的な教育を受けたわけでもない彼が交響曲を1曲完成させてしまうというあたりに驚きを感じるとともに、彼のクラシック音楽に対するただならぬ情熱を感じます。

今回の作品は昨年12月4日にロームシアター京都コンサートホールで開催された京都市交響楽団による初演の模様をおさめたアルバム。まず最初は「Quruliの主題による狂詩曲」と名付けられた管弦楽の作品からスタート。こちらはくるりの楽曲を管弦楽の中に取り込んだ作品。ただよくありがちな「くるりの曲をオーケストラ風にアレンジしました」といった感じの曲ではなく、管弦楽の楽曲の中にくるりの曲のフレーズをモチーフとして使用した、といった感じの曲になっており、くるりの曲がうまく曲の中に溶け込んでいます。

さてその後本編である「交響曲第一番」がスタートします。個人的にクラシック音楽に関しては全く詳しくありません。今回、彼の作品をクラシック音楽の専門家が評した場合、どのような感想になるのか非常に興味があるところ。それが「酷評」でもいいので聴いてみたいのですが・・・。

ただ私がまず感じたのは楽曲としては非常にオーソドックスであるという印象を受けました。一般的な交響曲のスタイルを崩すような音やフレーズなどはありませんし、聴いていても悪い意味でのひっかかりはなく、すんなりと聴き進めていけるような楽曲になっています。

楽曲的にもロック的なダイナミズムというよりも、まず流れてくるメロディーラインのインパクトがまず印象に残ります。特に第三楽章に流れる悲しげなメロディーライン、それとは対極的な第四楽章の楽しげなメロディーラインはくるり岸田らしいメロディーセンスの才がキラリと光っています。全体的にはそのメロディーを中心とした優しいフレーズが目立つような作品になっているように感じました。楽曲のダイナミズムよりもメロディーラインの良さというのはくるりにも通じるポイント。そういう意味では岸田繁らしい作品といえるかもしれません。

クラシック音楽的な出来不出来はよくわからないのですが・・・楽曲だけだと4つといった感じかな。ただ、交響楽を1曲完成させるという彼の意欲と情熱に1つ追加。これが今後のくるりの活動にどのようにフィードバックされるかも楽しみ。また、今後交響曲第2番、第3番の発表もあるのでしょうか?音楽家岸田繁のこれからも楽しみです。

評価:★★★★★

岸田繁 過去の作品
まほろ駅前多田便利軒 ORIGINAL SOUNDTRACK
岸田 繁のまほろ劇伴音楽全集


ほかに聴いたアルバム

FANTASY CLUB/tofubeats

メジャーから3枚目となるtofubeatsのニューアルバム。いままでのメジャーからの2作品は豪華ゲストが参加した内容で話題となり、楽曲も比較的メジャー志向の派手さを感じるアルバムが続きましたが、本作は目立った派手なゲストもおらず、ほとんどの曲に関して彼がボーカルを取っています。ジャケット写真も地味めですし、いままでの2作品に比べると「地味」という印象を受けるアルバムになっています。

ただそれだけに逆にtofubeatsの本気さを感じます。彼のボーカルは全編、音声加工がほどこされているのが特徴的。やはりボーカルもトラックの一部として考えているからでしょうか。それとも単なるそのまま歌うのが嫌だという彼なりの「照れ」なのかもしれません。テンポとしては比較的ゆっくり目のBPMが多いシンプルなテクノ。ポップなメロディーが流れており、彼ならではのメロディーセンスを感じます。決して派手さはありませんが、tofubeatsの才能がキラリと光るような内容になっており、いままでの作品の中でtofubeatsの本質の部分に一番迫った作品と言えるかもしれません。こういうアルバムをリリースしてくるあたり彼の自信のほどを感じます。彼の実力を感じる傑作でした。

評価:★★★★★

tofubeats 過去の作品
Don't Stop The Music
ディスコの神様
First Album
STAKEHOLDER
POSITIVE
POSITIVE instrumental

POSITIVE REMIXS

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年6月20日 (火)

ゆるふわラップ

Title:Mars Ice House
Musician:ゆるふわギャング

 

ゆるふわギャング。名前だけでかなりインパクトある彼らは最近、おそらく日本のHIP HOPシーンの中でもっとも絶賛されているミュージシャンではないでしょうか。Ryugo IshidaとSophieeという2人とラッパーにディレクターAUTOMATICを加えた3人によるユニット。Ryugo IshidaとSophieeはそれぞれソロのラッパーとして活動していたそうですが、その音楽性に共通するところがあり一緒に音楽活動を開始。自らのラップのスタイルに「ゆるふわ」という名前をつけ、ゆるふわギャングという名前で活動を開始しました。

ちなみに先日紹介した本「ラップは何を映しているのか」の中でも評論家大和田俊之氏がゆるふわギャングについて大絶賛するコメントをあげています。この中でも彼らの音楽的な影響についても言及。彼らはアメリカで今大人気のラッパー、リル・ヨッティの影響を強く受けており、また彼はアメリカで最も注目されているトラップというジャンルの代表的なラッパーだそうです。

彼らのラップはどこか気だるさを感じる力が抜けたラップでサウンドを含めて酩酊感があるのが特徴的。日本のHIP HOPの中でもかなり独特なスタイルを感じるのですが、これを「ゆるふわ」と名付けるあたりに彼らの上手さを感じます。このまったりとした雰囲気のラップが非常に個性的で耳に残ります。またトラップの特徴でもある非常にゆっくりなBPMというのは彼らのラップでも特徴となっており、また楽曲のまったりさ、酩酊感を醸し出すにはちょうどよいリズムとなっています。

また彼らのもうひとつ大きな魅力は、北関東の郊外に住むヤンキー的な若者の生活スタイルを等身大に描いているという点でしょう。「ギャング」という名前の通り、「不良」である彼らですが、ギャングスターラップのような「不良自慢」みたいな感じではありません。Ryugo IshidaとSophieeは音楽的なパートナーであるのと同時に実生活でも恋人同士ということですが、そんな2人だからこそ描けるような2人のパーソナルな世界を描いています。

そんな彼らのラップに登場するアイテムもある意味いかにも北関東のヤンキー的。例えば「Go! Outside」ではプリウスなんていうアイテムが登場していますし、「Dippin' Shake」はあきらかにマクドナルドに対する賛美。最近は「マイルドヤンキー」なる言葉も登場していますが、いかにも東京郊外の若者文化のような雰囲気を醸し出しているのが彼らのラップのリアリティーを生み出しています。

正直、彼らのラップの世界観には必ずしも共感できない部分はありますし、また個人的にも言葉をはっきりと発音するスタイルのラップが好みなので、酩酊感あって日本語がわかりにくい彼らのラップのスタイルはあまり好みではないのですが、それにあらがえないような妙なインパクトと魅力を彼らが持っているのは間違いありません。まだまだ一部で評判になっているようなミュージシャンですが、さらに広く話題になっていきそうな予感のある彼ら。これからの活動も楽しみです。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

ミカヅキの航海/さユり

デビューアルバムである本作がいきなりチャート3位を記録した女性シンガーソングライター。「酸欠少女さユり」をキャッチコピーとしてアニメキャラも導入して「2.5次元パラレルシンガーソングライター」を名乗ったりして微妙に痛さを感じるのですが、確かに楽曲的にはオーソドックスなガールズロックで、よくありがちな感じ。孤独な心境を歌ったりして歌詞的にはそれなりにインパクトあるフレーズもあるのですが、確かにこういう「痛い」キャラ設定しないと売れないだろうなぁ、と感じてしまいます。「酸欠少女」だとか「2.5次元」だとかの設定が、いつの日か「忘れたい過去」になってからが彼女の勝負なんだろうなぁ。

評価:★★★

3/tricot

女性3人組ギターロックバンドのフルアルバムとしては2年2ヶ月ぶりとなる新譜。変拍子を取り入れた複雑なリズムにダイナミックなバンドサウンドをのせて、かつメロディーに関してはポップにまとめあげているという実に個性的でおもしろいバンド。ただ前作「A.N.D.」でも感じたのですがメロディーラインはいまひとつインパクト不足で印象に残らないのは残念。一方エモ志向のバンドサウンドに関しては前作に比べてグッと迫力が増したように感じました。

評価:★★★★

tricot 過去の作品
A.N.D.

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年6月19日 (月)

女性として、母親として

今年、デビュー15周年を迎える女性レゲエシンガーMINMI。そんな彼女が15周年を記念してAll Time Bestを2枚同時にリリースしてきました。

Title:ALL TIME BEST:ADAM
Musician:MINMI

まずこちらは「ALL TIME BEST:ADAM」。デビューシングルでいきなりの大ヒットを記録した「The Perfect Vision」をはじめ「シャナナ☆」などのヒット曲も収録されています。

さてこのベスト盤を聴いて強く感じたのがMINMIが自ら女性であること、母親であることを強く意識して楽曲作りをしている、ということでした。典型的なのは「#ヤッチャイタイ」でしょう。軽快なソカ路線のパーティーチューンである本作は女性視点のエロ歌詞というスタイル。エロい歌詞の曲はポップスシーンにいろいろとありますが基本的に男性目線。それをあえて女性目線で描くあたりに、エロは男性の専有物ではないという主張を感じます。

またそんな歌詞を書きつつ一方では子供に対する母親の愛情を感じる曲も目立ちます。子供の誕生を歌った「キセキ」は子供の視点から描いており、この視点がなかなかユニーク。「ピンク帽子の"ドレミファソ"」も子供向けの数え歌に仕上がっています。ちなみにこの曲、子供の保育園の卒園式のためにつくられたとか。MINMIの母親としての暖かいまなざしを感じます。

楽曲的にもレゲエやソカを中心にラップ、エレクトロ、ポップスなど多彩な要素を取り込んでおり、バラエティー富んだ内容になっており最後まで飽きさせません。なによりMINMIの人間性が垣間見れるベスト盤になっており、とても素敵な1枚でした。

評価:★★★★★

Title:ALL TIME BEST:EVE
Musician:MINMI

そして同時にリリースされたもう1枚のALL TIME BEST。こちらにはファン投票の上位に選ばれた「隠れた名曲」や、「The Perfect Vision」を再録した15th anniversary versionが収録されています。

こちらもレゲエやソカを中心にエレクトロサウンドを取り入れたりポップ色が強い楽曲が並んでいたりとバラエティー豊か。ラテン調の強いナンバーやノイジーなギターサウンドを取り入れてロック色も感じる曲もあります。

まあただこちらは一般的なイメージからしてジャパレゲの人たちってこんな感じだろうなぁ、といった感じの描写が多いイメージ。要するに「オラオラ系の人たち」ってイメージですね。SHINGO★西成と組んだ「スマホ」だとか、元旦那の所属していた湘南乃風と組んだ「さくら~永遠~」だとか、良くも悪くも「まあ、そういう感じだよね」と思ってしまいそうな曲が並んでいます。

そういう意味では「ADAM」と比べるとMINMIというミュージシャンの魅力があまり出ていないような・・・個人的にはMINMIをあまり聴いたことない、という方には「ADAM」がお勧めかな。もちろんこちらも十分楽しめるとは思うのですが。

評価:★★★★

MINMI 過去のアルバム
THE LOVE SONG COLLECTION 2006-2007
MINMI BEST 2002-2008
Mother
I LOVE


ほかに聞いたアルバム

GET WILD 30th Anniversary Collection - avex Edition/TM NETWORK

Getwild

今年4月、アルバム全曲が「GET WILD」といういろいろな意味でとんでもないアルバム「GET WILD SONG MAFIA」がリリースされ話題となったTM NETWORK。その後、配信限定でリリースされたのが本作。こちらも全曲「GET WILD」で、avexが版権を持っている楽曲を並べた作品だそうです。最初、「GET WILD SONG MAFIA」の配信用ダイジェスト版かな?と思ったのですが、なんとこのアルバムのみに収録されるバージョンもあるとか。まだあるのか、「GET WILD」!?という訳で「SONG MAFIA」に続いて本作も聴いてみました。

基本的にはTM NETWORKがavexにうつった2012年からの曲なので極最近のバージョンばかり。ただ、それでもこれだけバージョンがあるんだ・・・と思ってしまいますが。最近のバージョンなだけに全体的にはトランス色が強いアレンジに。ちなみに小室哲哉ソロ曲も入っているのですが、こちらも「GET WILD」のオリジナルではなく「GET WILD '89」。「SONG MAFIA」での感想でも書いたんだけど、やはり小室哲哉本人は「'89」のアレンジが理想形なんだなぁ。

個人的にはやはり石野卓球アレンジの「SONG MAFIA」収録曲とは別バージョン「Takkyu Ishino Latino Remix」がよかったな。「SONG MAFIA」を聴いた方、もうちょっと「GET WILD」におつきあいしてはいかが?

評価:★★★★

TM NETWORK 過去の作品
SPEEDWAY
TM NETWORK THE SINGLES 1
TM NETWORK THE SINGLES 2
TM NETWORK ORIGINAL SINGLES 1984-1999
DRESS2
QUIT30
GET WILD SONG MAFIA

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年6月18日 (日)

清竜人と5人のワイフたち

Title:WIFE
Musician:清竜人25

天才シンガーソングライターとしてデビューしつつも、ここ最近は奇抜なパフォーマンスや楽曲が話題にのぼることが多い清竜人。その奇抜さの最たるものがこれでしょう。アイドルグループ結成。それも建付けとして清竜人とその妻たちというアイドルとしては禁じ手とも言える設定ながらも昨今のアイドルブームにのって、幸か不幸か清竜人ソロよりも売れるという結果となりました。

正直、彼のこの行動に関してはかなり訝しげに見ていました。単なるアイドルブームにのっかかった売らんかな的な行動と。しかし今年、まだ人気が上り調子の中、突然の解散発表。さらには「TOWN」なるライブの参加者全員がメンバーという、これまた奇抜なプロジェクトがスタートし大きな話題になりました。ここに至って私も彼が清竜人25が「売れる」ためのプロジェクトではなく、純粋に彼がこういうことをやりたいだけだったんだな、と気づき、遅ればせながら彼らのラストアルバムを聴いてみました。

聴く前は典型的なアイドルポップスというイメージであまり期待はしていなかったのですが・・・これが予想外におもしろいアルバムでした。まず最初持っていた印象と最も異なるのが、清竜人が歌いまくるという点。てっきり彼はAKB48の秋元康みたいなプロデューサーとして君臨しているのかと思いきや、むしろメインボーカル。5人の清夫人が前に出て歌う曲も少なくありませんが、曲によっては女の子たちがバックボーカルになっているような曲も少なくありませんでした。

そして楽曲が清竜人の天才シンガーソングライターとしての才を十分に発揮したポップソングが並んでいた点も大きなプラス。基本的にファンキーなリズムを取り入れたポップソングやアルバム「MUSIC」で聴かせたようなミュージカル風な楽曲がメイン。いわゆる典型的なアイドルポップ然としたような曲はあまりなく、そういう意味でも非常に聴きやすい楽曲になっていたと思います。

もっともマイナスに感じた点も何点か。まず女の子の声が流行のアニメ声の子がいるのが大きなマイナス。なんかこの手のアニメ声って、完全に様式化されているうえに単純に男に媚びているだけって感じがして全く「かわいい」とは感じません。個人的にはアイドルシーン全体の中での大きな問題点と思っています。

もうひとつはこちらも最近の傾向か、音が詰め込みすぎなきらいがあるという点。メロディーや楽曲構成に関しては無理な奇抜さはなかったのですが、音としてはすべてプラスに積み重ねていくスタイルで最後の方はちょっとお腹いっぱいになってしまいました。

そんなマイナス点も目立ったのですが、このグループ、音楽的な側面とは別におもしろさを感じたのはアイドルの本来持っているはずの魅力であるフィクション性を強調しているという点です。なぜか日本の音楽シーンではフィクション性よりノンフィクション性を妙に有難がる傾向にあって、AKB48で以前「ガチ」がよく用いられていました。ただアイドルってある種のフィクション性が重要であって、それがロックやHIP HOPとは異なるアイドルの大きな魅力のはず。そんなアイドルのノンフィクション性が重視される中、清竜人とその5人の妻たちというフィクション性を前に押し出してくる彼らの活動は非常にユニークに感じました。

もっともなによりもこれだけ人気を確保していながらあっさりと解散してしまう潔さも大きなプラス。このアイドル活動と次のTOWNの活動は180度音楽性が異なりそうですし、彼は本当にやりたいことをやりたいようにやっているんでしょうね。これからも清竜人の活動からは目が離せなさそうです。

評価:★★★★

清竜人 過去の作品
WORLD
MUSIC
WORK
BEST


ほかに聴いたアルバム

fantasia/LAMP IN TERREN

これがメジャーでは3枚目となる1年9ヶ月ぶりの新譜。典型的な下北系のギターロックバンド。ポップなメロディーラインにはそれなりにインパクトもあるし楽曲としては決して悪くはありません。決して悪くはないのですが・・・これは以前の作品から共通するのですが・・・まるっきりバンプ・・・。正直言って、LAMP IN TERRENの個性がかなり薄いのはキツイし、「涙星群の夜」みたいに出だしのギターがまるっきりバンプで歌詞もバンプっぽい世界観というのはもうちょっとどうにかした方がいいと思うのですが。

評価:★★★

LAMP IN TERREN 過去の作品
silver lining
LIFE PROBE

HEROES/NAMBA69

最近はHi-STANDARDとしても活動している難波章浩率いるパンクバンドの約1年半ぶりとなる新作は前作に続きミニアルバム。ストレートなパンクチューンの連続。楽曲的にはちょっとへヴィネスさが強いかな?ハイスタとしても活動しつつ、NAMBA69でも積極的に活動を続けるあたりに勢いを感じます。ただ次はハイスタの新譜が聴きたいかも(?)。

評価:★★★★

NAMBA69 過去の作品
21st CENTURY DREAMS
LET IT ROCK

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年6月17日 (土)

音楽性に「厚み」が

Title:thickness
Musician:中田裕二

椿屋四重奏を解散させ、その後ソロとしてコンスタントに活動を続ける中田裕二。椿屋時代も哀愁ただよう歌謡曲テイストのメロディーに強いインパクトがあったのですが、その傾向はソロになってからさらに強くなっています。「SONG COMPOSITE」のような歌謡曲のカバーアルバムを挟みつつ、ミュージシャンとしてしっかりとした軸を感じる活動を続けているようです。

さらに彼がユニークなのは歌謡曲テイストのメロディーラインを書きつつ、洋楽のテイストも感じられること。たとえば前作「LIBERTY」ではファンキーな楽曲もあり、アルバムの中のインパクトとなっていました。この歌謡曲志向という方向性と洋楽テイストという方向性がほどよくミックスされているのですが、今回のアルバムに関してはそんな中田裕二の進んでいる方向性でのひとつの完成形のように感じました。

今回のアルバム、「thickness」=厚みというタイトルとなっていますが、それは音楽性の厚みを意味しているのだとか。実際、「femme fatale」ではワウワウギターを入れてソウル風のサウンドを聴かせてくれますし、続く「静かなる三日月」はカントリー、「Deeper」ではジャジーなトランペットも顔をのぞかせますし、ラストの「THE OPERATION」はファンキーなディスコチューンとなっています。

また個人的に一番インパクトが大きかったのが「愛に気づけよ」。モータウンっぽい雰囲気の楽曲なのですが、イメージ的には70年代のニューミュージック系のミュージシャンが歌謡曲の歌手に提供したような楽曲。歌謡曲らしい泥臭さと洋楽らしいバタくささが同居している、日本のポップスならではの楽曲に仕上がっています。

サウンド面では、本人もインタビューで述べているのですが、「厚み」というタイトルとは裏腹に比較的シンプルなサウンドがメイン。どんどん音が増えていってしまっている日本の音楽シーンの中であえて音をそぎ落としたそうです。歌謡曲というと今に限らず、音は足し算で積み重ねられていくケースが少なくありません。メロディー的には歌謡曲を目指しつつ、音作りの方向性は逆というのが非常にユニーク。中田裕二らしさを感じることができます。

全体的にメロディーラインはムーディーさを感じる歌謡曲という感じで統一させつ、様々なジャンルを取り込み音楽性に「厚み」を増した本作。上にも書いた通り、中田裕二のひとつの到達点のように感じました。ソロ作の中では文句なしの最高傑作。さらに一皮むけた彼。これからの活躍も楽しみです。

評価:★★★★★

中田裕二 過去の作品
ecole de romantisme
SONG COMPOSITE
BACK TO MELLOW
LIBERTY


ほかに聴いたアルバム

Fabula Fibula/BIGMAMA

前作がHYとのコラボアルバムだったので純粋なオリジナルアルバムとしては2年ぶりとなる新作。ピアノやストリングスを多用して仰々しいというのが彼らのイメージでしたが、今回はギターロックなバンドサウンドを前面に押し出したためサウンド的には引き締まった印象を強く持ちました。またそのためメロディーのポップスさとロックバンドとしての側面が比較的ほどよくバランスしたアルバムになっていたと思います。ただそうなると、彼らのサウンドの特徴なのでこういう指摘をしてしまうのは心苦しいのですが、ストリングスの音色が浮いてしまっていて、楽曲の中で「邪魔」とすら感じてしまう曲も。ここらへん、サウンドのバランスは難しいところなのですが、ストリングスを入れてしまった彼らのさらなる課題ということで・・・。

評価:★★★★

BIGMAMA 過去の作品
Dowsing For The Future
君がまたブラウスのボタンを留めるまで
君想う、故に我在り
Synchronicity(HY+BIGMAMA)

ガガガSPオールタイムベスト~勘違いで20年!~/ガガガSP

結成20周年を記念してリリースされたオールタイムベスト。ただレンタル限定とはいえ3年前にベスト盤をリリースしたばかりなので、感想としてはその時とは大きく変わりありません。勢いあるパンクロックながらもメロディーは意外とフォーキーなのが魅力的。情けない男性の素直な心境をストレートに歌詞とした内容も強く惹かれます。楽曲にしろ歌詞にしろ一本調子な部分があるのが気になりますが、やはり聴いていてグッとくるものがある名曲が並んでいました。

評価:★★★★★

ガガガSP 過去の作品
くだまき男の飽き足らん生活
自信満々良曲集

ガガガを聴いたらサヨウナラ
ミッドナイト in ジャパン

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2017年6月16日 (金)

非同期の音楽

Title:async
Musician:坂本龍一

2014年、癌であることを公表。音楽活動を休止し多くのファンが心配した坂本龍一。しかしその後の経過は順調のようで、このたび8年ぶりとなるニューアルバムがリリースされました。「async」というタイトルは「asynchronization」=「非同期」の略で、自然の本能として同期が行われる中、あえて非同期的な音楽をつくったそうです。

ここでいう非同期的な音楽というのは音が奏でるハーモニーやメロディーをあえて拒否し、音をそれぞれ独立させて自由に鳴らす、という試みでしょうか。「andata」などは坂本龍一らしい美しいメロディーラインのピアノを聴かせてくれるのですが、続く「disintergration」では和音やメロディーを拒否するピアノの音の羅列が続くナンバー。タイトルチューンである「async」はストリングスの音がダイナミックに鳴り響くなのですが、どの音も交わるのを拒否しています。

他にも「walker」は森の音と、そこに歩く足音を録音して使用しています。基本的に同期される自然の音の中で、森の中の足音は、踏みしめる場所によって鳴る音が予測できません。そこで生じる音の非同期に魅力を感じたのでしょうか。他の曲に関しても美しいメロディーの鳴る曲も多いのですが、そんな曲でもバックにはメロディーとは全く関係ない音が鳴り響いており、違和感を覚えるような曲が並んでいます。

そんな実験的な音楽だからこそ、正直言って聴いていて楽しくなったりするような雰囲気はありません。また万人向けではないかもしれません。ただ「非同期の音」という不思議な世界を味わえる(「楽しめる」とは言いません)アルバムになっていました。

思えばここ最近の音楽シーンは、この「同期」という点がかなり強調されているように思います。例えば音楽をバックに素人が踊ってみた動画を動画サイトにアップさせることを前提としたような音楽。アイドルソングも基本的にファンに「同期」させることを目的としていますし、それこそすっかり夏の定番となった「夏フェス」も昨今では各自が自由に盛り上がるというよりも全員一緒に盛り上がるようなパンクロックバンドが主流となっています。

別に教授自体がこのアルバムでそんなシーンに対して積極的にアンチを唱えているわけではないでしょう。ただ、そんな「同期」することを強制させることが多くなってしまった昨今の音楽シーンの中で、あえてこのようなアルバムをリリースするあたり、坂本龍一らしさを感じて非常におもしろく思いました。万人向けのアルバムではないかもしれませんが、非常におもしろい試みを感じた1枚でした。

評価:★★★★★

Title:Year Book 1980-1984
Musician:坂本龍一

で、そんなアルバムと同時にリリースされたのが本作。坂本龍一の過去の作品をまとめたアーカイヴシリーズの第3弾。今回はタイトル通り、1980年から84年に収録された貴重な音源を収録されています。

この時期の坂本龍一といえば1983年に映画「戦場のメリークリスマス」に出演。彼の代表曲として知られる「Merry Christmas Mr.Lawrence」が発表された頃。ちなみに本作にも同作のライブ盤が収録されています。

そんな表舞台での活躍の反面、アルバム全体としては非常にアングラ的な作風に仕上がっています。例えば「Syosetsu」などは劇団員が好き勝手にセリフを発して、そのセリフを収録したような前衛芸術的な作品。ほかの曲も終始、美しいメロディーを奏でるのを拒否するかのような不条理的な調べが流れる曲が多く、どこかダークで怪しげな雰囲気はまさに「アングラ」といった感じを受けました。

80年代のアングラということもあり今聴くと時代を感じてしまうような曲も少なくありません。ただ一方で曲のスタイルとして音と音があえて同期しないような楽曲が多く、それこそ「非同期」な音楽性も感じます。まさに最新アルバムにも通じるような音楽性も感じられ、この時代から坂本龍一の興味はある意味一貫していたのかもしれません。

時代を感じる貴重な音源が多いのでファン必聴の作品。最新作同様、万人受けといった作品ではないのですが、坂本龍一の歩みを知るためには重要なアルバムといえるでしょう。

評価:★★★★

坂本龍一 過去の作品
out of noise
UTAU(大貫妙子&坂本龍一)
flumina(fennesz+sakamoto)
playing the piano usa 2010/korea 2011-ustream viewers selection-
THREE
Playing The Orchestra 2013
Year Book 2005-2014
The Best of 'Playing the Orchestra 2014'
Year Book 1971-1979


ほかに聴いたアルバム

UNDERWORLD/VAMPS

L'Arc~en~Cielのhydeと、Oblivion DustのK.A.ZによるユニットVAMPSの約2年半ぶりのニューアルバム。疾走感あるノイジーなギターサウンドに打ち込みも入り、hydeが歌い上げる耽美的なボーカルがのるいつものスタイル。メタルやインダストリアル色は若干薄くなったようにも思うのですが、基本的にはいつものVAMPSといった感じで良くも悪くも目新しさはありません。ダイナミックなバンドサウンドは楽しむことが出来るのですが。

評価:★★★★

VAMPS 過去の作品
VAMPS
BEAST
SEX BLOOD ROCK N'ROLL
Bloodsuckers

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年6月13日 (火)

世間のバッシングに反しての大傑作

Title:達磨林檎
Musician:ゲスの極み乙女。

最近、悪い意味で「国民的バンド」になってしまったゲスの極み乙女。 ご存じのとおり、ボーカル川谷絵音のベッキーとの不倫騒動とほのかりんとの飲酒騒動によって昨年12月のZepp Tokyo公演を最後に活動を自粛。昨年リリース予定だった本作も発売延期になっていました。

しかしそれからわずか5ヶ月強で活動を再開。延期となった本作もリリースになりました。個人的に川谷絵音へのバッシングはあきらかに過剰反応だと思っていたものの、そんな中でもわずか5ヶ月での復帰はさすがに空気を読まなさすぎじゃない?と疑問に思っていました。

ただ、このアルバムを聴いて大きく考えが変わりました。確かにこんなアルバムをつくっておいて、5ヶ月も音楽活動を休止するのはもったいなさすぎる。間違いなくゲスの極み乙女。の最高傑作ともいえる内容。川谷絵音はあれだけバッシングを受けている中で、むしろミュージシャンとしては脂にのって勢いを増しているようです。これだけミュージシャンとして脂ののっている中、確かに活動休止5ヶ月というのは非常にもったいなく感じました。

前作「両成敗」でもメロディーラインにインパクトが増して勢いを感じたのですが、今回もこのメロディーセンスの良さが切れまくっています。ラグタイム風のピアノからさわやかにはじまる「シアワセ林檎」もインパクトあるサビがまず聴かせる楽曲なのですが、特に印象が深かったのが歌謡曲テイストが強くメロディアスなポップチューン。「勝手な青春劇」「Dancer in the Dancer」など、ムーディーな雰囲気を感じるメロが哀愁感たっぷり。歌詞も歌謡曲的な憂いを感じて強い印象に残ります。

ちょっとジャジーな色合いのあるピアノの音色もとても心地よい感じ。特に今回は以前の作品に比べても黒さが増したような印象を受けます。「DARUMASAN」もサビの部分ではシティポップ的な爽快感がありますし、ラストの「ゲストーリー」もファンキーなサウンドの中で爽快なポップソングが印象に残ります。

また「某東京」のようにポエトリーリーディング調で文学的な表現で綴る内省的な歌詞も印象に残ります。今回、このポエトリーリーディングやドラムスほな・いこかとのツインボーカルも効果的に使われているのも特徴的。「いけないダンスダンスダンス」などはその典型例。8分40秒に及ぶこの楽曲はリズミカルなテンポとピアノの軽快なフレーズが相まって中盤の核となっています。

情報量が詰め込み気味だった昔の楽曲と比べて、サウンドの取捨選択を行いグッと聴きやすさが増した感じ。なによりも哀愁感あるメロディアスなメロディーを前に押し出した楽曲も増え、川谷絵音の別バンドindigo la Endからの影響も感じます。最初にも書いた通り、川谷絵音の勢いを感じさせる傑作。いろいろと外野はまだ文句を言いそうですが・・・このままゲスもindigoも積極的な活動をやはり続けてほしいなぁ。

評価:★★★★★

ゲスの極み乙女。 過去の作品
踊れないなら、ゲスになってしまえよ
みんなノーマル
魅力がすごいよ
両成敗


ほかに聴いたアルバム

大正義/ポルカドットスティングレイ

最近話題の女性1人+男性3人組のギターロックバンド。いままでアルバムはEP盤を1枚リリースしたのみでミニアルバムとしてはこれがはじめての作品となるのですが、なんとオリコンチャートでは初登場7位を記録。いきなりのベスト10ヒットとなりました。

そんな彼女たちの楽曲は一言で言ってしまうと「椎名林檎経由でNUMBER GIRLに影響を受けたようなサウンド」。へヴィーなギターサウンドがカッコいいのですが、ボーカルの歌い方はいかにも椎名林檎的というか最近よくありがちな感じで、もう一歩個性が欲しい感じ。ただまだまだこれから伸びそうな予感のするバンドでこれからの活動に要注目であることは間違いないでしょう。

評価:★★★★

ULTRA HARD/ラッパ我リヤ

しばらく活動休止しており、これが8年ぶりとなるラッパ我リヤのニューアルバム。ラッパ我リヤといえば2000年にリリースしたDragon Ashのシングル「Deep Impact」への客演で広く知られましたが、今回のアルバムにはDragon Ashのkjこと降谷建志が参加したことでも話題となっています。

ラッパ我リヤといえば以前のアルバムはへヴィーなトラックに俺様節全開なリリックが正直言ってちょっと暑苦しかったのですが、今回のアルバム、そんな俺様節はあるものの打ち込みを取り入れたトラックはリズミカルで軽く、全体的にポップで聴きやすくなっています。kjが参加して話題の「My Way」にしてもkjはラップではなく哀愁感たっぷりの歌を披露。大人になったなぁ、という感傷に浸ってしまいました(笑)。

正直以前のへヴィーなスタイルは少々一本調子でおもしろくないと感じていただけにあまり期待していなかったのですが、へヴィネスさとポップさのバランスがちょうどよい聴きやすいアルバムに仕上がっていました。彼らも大人になったな、そう感じた1枚でした。

評価:★★★★★

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2017年6月 9日 (金)

ポップス職人のソロ3部作

昨年12月、脳腫瘍のため惜しまれつつこの世を去ったシンガーソングライター黒沢健一。わずか48歳という若すぎるその最期に、多くの音楽ファンが強いショックを受けました。今年に入りポニーキャニオン時代に残したソロ3部作がUHQCDで再発。さらには未発表曲やシングルのカップリング曲などのアルバム未収録曲をボーナストラックとして収録されました。この3部作、2枚目の「B」以外は以前聴いたことあったのですが、豪華なボーナストラックが収録されるということもあって再度聴きなおしてみました。

Title:first
Musician:黒沢健一

まずこちらが1998年にリリースされたソロデビュー作。L⇔R活動休止直後にリリースされたオリジナルアルバムとなります。ボーナストラックは今回再発された3作のうち最大の7曲も収録。さらには未発表曲の「What is this song?」も収録されました。

L⇔R活動休止直後にリリースされたアルバムということで全体的には非常にポップス色が強いアルバムになっており、かつ洋楽テイストも強くバタ臭さを感じるアルバムになっています。3枚のアルバムの中では一番「L⇔Rっぽさ」が残るアルバムと言っていいかもしれません。

ただ一方、やはりL⇔Rを活動休止させた直後にリリースされたアルバムだからでしょうか、アルバム全体にどこか迷いのような要素も感じました。彼らしいポップスセンスは光るもののアルバム全体の方向性はどこかチグハグ。ポップな楽曲についてもどこか吹っ切れなさも感じます。

もっともそんな中でも「LOVE LOVE」「WONDERING」などはポップス職人黒沢健一のメロディーセンスが光るキュンと来る傑作メロディーが楽しめますし、要所要所に彼の才能を感じさせる楽曲が並んでいます。L⇔R全盛期と比べると物足りなさも感じてしまいますが、それでも彼の魅力は十分に発揮されたアルバムと言えるでしょう。

ちなみに未発表曲「What is this song?」はストリングス入れて爽やかなポップチューン。確かに若干インパクト的には物足りないものの彼らしいポップスセンスはこの曲でも十分感じます。他に収録されたシングルのカップリング曲は洋楽のカバーが多く、彼のルーツを感じることが出来るポップチューンが並んでいます。さらに最後に収録されている「STAGE FRIGHT」はソロデビューシングル「WONDERING」のカップリング。こちらも軽快なリズムが魅力的。軽い雰囲気の曲なのでいかにもカップリングといった感じなのですが、気軽に楽しめる軽快なポップチューンになっています。

評価:★★★★

Title:B
Musician:黒沢健一

今回リリースされた3枚のアルバムのうちリアルタイムで聴き逃していた唯一のアルバム。なぜ聴き逃したのか、記憶にありませんが・・・「first」から2年半を経た2001年にリリースされた作品です。

このアルバム、大きな特徴となっているのがポップな方向性だった前作からうってかわって全編ロックなアルバムとなっている点。「スピードを上げてく」はダイナミックなロックサウンドが前に出ていますし、続く「トーキング・ブルース」はタイトル通りのブルースロック調の作品に。「遠くまで」もノイジーなバンドサウンドが前に出ていますし、「What You Want」もへヴィーなバンドサウンドが前に出た作品となっています。

ただロック寄りという統一感を持ったことにより前作「first」で感じたソロとしての方向性の迷いはほとんど感じなくなりました。もちろん、彼らしいキュートでポップなメロは相変わらず。シングル曲未収録のためアルバム全体のインパクトとしてはちょっと薄い感じもするのですが、統一感ある内容なだけにそのインパクト不足があまり気にならなくなっています。

ちなみにボーナストラックとしては1999年にリリースされたシングルなのですがアルバム未収録となっていた「This Song」とカップリングの「Free Bird」を収録。確かに本作のコンセプトからはちょっとずれたような内容になっていて未収録となった理由もわかるような感じ。「This Song」はミディアムテンポなちょっと地味なナンバーながらも一度聴いたら忘れられないような胸がキュンとなるメロディーが魅力的な黒沢健一節本領発揮の名曲。「Free Bird」はホーンセッション入ってソウル風のアップテンポナンバー。こちらはメロディー的には物足りなさもあるのですが・・・ちょっと他とは毛色の異なるポップチューンを楽しむことが出来ました。

評価:★★★★★

Title:NEW VOICES
Musician:黒沢健一

で、こちらが前作からほぼ1年のインターバルで2002年にリリースされたソロ3作目。方向性的には2作目でみせたロック寄りのサウンドをある程度残しつつ、1枚目のポップス路線に回帰した作品と言えるでしょう。ポニーキャニオン時代の集大成ともいえるアルバムとも言えるかもしれません。

その結果、3作のうちもっとも黒沢健一の魅力が発揮された傑作だったと思います。「CHEWING GUM」はノイジーなギターサウンドが鳴る中、彼らしいキュートなメロがインパクトを持った作品ですし、続く「ALL I WANT IS YOU」も彼らしいメロが強いインパクトを持ったピアノロックなナンバー。

この3作、セールス的には「first」がオリコン最高位34位だったのに対して、「B」が68位、「NEW VOICES」が65位と奮いませんでした。ただ、アルバムの内容的には右肩上がりだったようにも感じます。L⇔Rの楽曲は、正直大ヒットした「KNOCKIN'ON YOUR DOOR」以降、いまひとつ迷走気味だったように感じ、その結果として活動休止にもつながった印象もあるのですが、ただソロになってその迷いが徐々に解消し、黒沢健一本来の魅力が出てきたように感じます。

なお本作のボーナストラックは「Rock'n Roll」「Round Wound」のライブ音源。シングル「PALE ALE」のカップリング曲とちょっと寂しい感じ。もうちょっと未発表音源とかなかったのかなぁ、とは思うのですが、それは贅沢な願いなんでしょうね・・・。

評価:★★★★★

そんな訳で楽曲の出来としては徐々にあがっていっており、さらにここのサイトでも紹介した2009年にリリースしたアルバム「Focus」は全盛期を彷彿とさせるような傑作アルバムでした。それだけにポップス職人としてその才の翳りはほとんどなかったのですが・・・それだけにあまりに早すぎる逝去は日本のポップスシーンの大きな損失であることは間違いないでしょう。あらためて残念に感じてしまいました。

| | コメント (3) | トラックバック (0)

2017年6月 5日 (月)

懐かしさがあふれだす、かも。

昭和歌謡曲のうち「レア・グルーヴ」ともいえる楽曲を「ヤバ歌謡」として選曲し、DJとしてプレイすることで注目を集めているDJフクタケ。いままで彼が選曲した楽曲のDJミックス盤を何度か紹介してきましたが、今回紹介するアルバムもそれに連なる作品。彼が監修・選曲し昭和時代の玩具やキャラクターなどにまつわる楽曲を集めたコンピレーションアルバム。テーマ別に3種類にまとめられリリースされました。

この手の販促的な意味合いが強いキャラクターソングやキッズソングはあくまでも肝心のおもちゃのおまけ的につくられることが多いため、なんらかのきっかけでよほど注目されない限り、後世に歌い継がれるということはなかなかありません。そういう意味でも実に貴重価値のあるコンピレーション。さらに今回、DJフクタケが選曲した曲はそんな楽曲の中でも知る人ぞ知る的な希少価値のある曲が多く、初CD化もすくなくありません。そのためこれらの曲をリアルタイムで聴いていそうな世代にとっても、知っている曲はあまり多くないかもしれません。

ただ、これらの曲に出会うような幼稚園や小学校の頃は、一度レコードなどで買ってもらった曲は繰り返し繰り返し何度も聴いた想い出、みなさんにもあるのではないでしょうか。それだけに知る人ぞ知る的な曲ではある一方、子供の頃、ここに収録されている曲に出会ったことのある方にとっては当時の思い出があふれだしてくる懐かしくてたまらないコンピレーションアルバムになりそうです。

Title:トイキャラポップ・コレクション VOL.1 <ヒーロー&ヒット編>

まずVOL.1はヒーロー&ヒット編。いわゆるヒーロー玩具や、ダッコちゃん人形やミニ四駆、フラフープなどといった玩具自体は大ヒットを記録したおもちゃにまつわる曲を収録しています。

こうやって並べてみると強く感じるのですが、やはり販促的にもわかりやすい楽曲をつくってきているからかその時代時代の流行にそのまま沿ったような王道的な曲が並んでいます。「変身サイボーグ1号」はまさに王道ともいえるヒーロー物の主題歌路線ですし、いまや声優として大御所的な位置にいる日高のり子のアイドル時代の楽曲「潮風のサーキット」はまさにこれぞ80年代というアイドル歌謡曲。「世界を廻るフラフープ」は1958年に突如起こったフラフープブームに乗った曲なのですが、こちらもまさに昭和歌謡曲な楽曲になっています。

個人的に唯一知っていて、なおかつ非常に懐かしく感じたのが「太郎鯉」。小学校の頃よくみていたアニメのCMで良く流れていたなぁ~!CM自体もすっかり忘れていたのですが、久々にこの曲を聴いて、懐かしさがこみあげてきました。

ちなみに音楽的におもしろかったのが「FUNKYダッコNo.1」。これダッコちゃん人形のブームの時にリリースされたわけではなく、1975年の復刻版が発売された時にリリースされたそうですが、かの近田春夫率いるハルヲフォンによるナンバー。ファンキーでグルーヴィーなディスコチューンは今聴いてもかなりカッコいいダンスチューンになっています。

またユニークさでいえば「ミニ四ファイター組立てうた」。タイトル通りのミニ四駆にまつわる楽曲。タイトル通りミニ四駆に関するノベルティーソングなのですが、歌詞の内容からしてミニ四駆ブームを思い出して懐かしく感じる方も少なくないかも。いかにもこの手のキッズソングらしい内容となっています。

ちなみに下記評価は純粋に楽曲を広くお勧めできるか、という観点での評価。正直、癖の強い選曲で、万人には薦めづらいかも。ただ企画の内容的には文句なしの5つです。

評価:★★★★

Title:トイキャラポップ・コレクション VOL.2 <ファンシー&カワイイ編>

VOL.2は主に女の子向けの玩具に関するキャラクターソングを集めた楽曲。特にサンリオ・レコードの楽曲を多く収録したことが話題になっているよう。サンリオ・レコードとか70年代後半から80年にかけてかのサンリオが作成したキャラクターソング。サンリオの直営店などのみでの販売だったそうで、今となっては希少価値がありそうな一方、リアルタイムでレコードを買って、家で何度も聴いていたという女の子も少なくなかったかも。そういう方にとっては懐かしくて涙が出てくるような楽曲も収録されている、かも。

楽曲的には歌謡曲からアイドルポップ、カントリー、シティポップ風な曲などバリエーションが多く、またバタ臭い曲も少なくないため今聴いても意外と楽しめそうなポップソングが多く収録されています。サンリオキャラの曲は今聴いてもキャラクターイメージから大きくは逸脱しないような曲が多く、ここらへんサンリオのキャラクターイメージの作り込み方の見事さを感じます。

異色作として耳を惹くのがリカちゃん人形のキャラクターソング「ママ遠くへ行かないで」。ママが遠くに行ってしまうという夢を見るという歌詞なのですが、非常に不穏な空気を感じる悲しい曲調で、なぜこんな曲がつくられたのか?と思ってしまいます。逆に非常におもしろかったのがラストを飾るまさごろの「ベーッ!」。可愛らしいエレクトロポップなナンバーで、ニューウェーヴ風な曲調がとてもユニークな曲に仕上がっています。

純粋に楽曲的な意味で言えば個人的に3作の中で一番楽しめたかな。今聴いても十分楽しめる可愛らしいポップソングが並んでいました。

評価:★★★★★

Title:トイキャラポップ・コレクション VOL.3 <ビデオゲーム編>

最後はテレビゲームにまつわる曲を集めたコンピレーション。「テレビゲーム」という言い方ではなく「ビデオゲーム」という言い方をするあたりに拘りを感じます。

このコンピレーションはやはりビデオゲームにまつわる楽曲だからでしょうか、エレクトロサウンドがほどこされた楽曲がほとんど。特に、エレクトロアレンジの80年代風のアイドルソングがズラリと並んでいます。リリースされたころはやはりこういう音に時代の先駆性を感じたんでしょうが、今聴くと、若干陳腐な感じになってしまっているのは否めません。楽曲的にも似たような曲が多く、正直言うと、純粋に楽曲的な部分だけで言うと最後の方は若干飽きが来てしまいました。

ただそれでも「ディスコ・スペース・インベーダー 」はファンキーなディスコチューンにインベーダーゲームの効果音を取り入れたナンバーで今でも楽しめるレア・グルーヴな楽曲に仕上がっています。高橋名人の「スターソルジャーのテーマ」なんかはやはり非常に懐かしさを感じます。

評価:★★★★

そんな訳でレア曲いっぱい、ユニークなノベルティーソングいっぱいでお腹いっぱいになるコンピレーションアルバム。企画としての目の付け所もいいですし、それでアルバム3枚分も曲を集めてしまうところもさすがです。非常に楽しめたコンピ盤でした。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年6月 2日 (金)

時代がNONAに追いついた?

Title:POP'N SOUL 20~The Very Best of NONA REEVES
Musician:NONA REEVES

最近、80年代的なメロウなソウルチューンをよく耳にするようになりました。一昔前は「時代遅れ」的な扱いとなっていた80年代サウンドがいつの間にか回りまわって「新しい」という感覚でとらえられるようになりました。そんな潮流になったのがいつ頃からなのかは詳しくはわからないのですが、ひとつの大きなきっかけとなったのが2013年にリリースされたDaft Punkのアルバム「Random Access Memories」に80年代を代表するプロデューサー、ナイル・ロジャースが参加したことだと思われます。

NONA REEVESといえば、デビュー作以来一貫して80年代的な影響が色濃いディスコポップチューンを奏でてきました。特にボーカルでNONA REEVESのメインライターをつとめる西寺郷太の80年代洋楽ポップスに対する造詣の深さは、マイケル・ジャクソンに関する著作などのヒットにより広く知られるようになりました。むしろ失礼ながら今やNONA REEVESのボーカリストというより80年代洋楽ポップの評論家としての方が知られているほどかもしれません。

ただ1997年にワーナーミュージックからメジャーデビューした彼らですが、残念ながらお世辞にもヒットしたとはいえず、様々なレコード会社への移籍を経て、2011年からインディーズに戻り活動を続けていました。ところがこの80年代再評価の流れがあってか、それとも西寺郷太の評論家的な活動が功を奏したのか見事にメジャー復帰。それも古巣のワーナーミュージックへの返り咲きとなりました。

今回のベスト盤はそんな彼らのメジャー復帰を記念してリリースされたベストアルバム。そのため本作は彼らのインディーズ時代(2011年~2016年)にかけての楽曲は収録されずメジャー時代の楽曲が収録されたベスト盤となっています。そこで一貫して流れているのは彼ららしいファンキーなディスコチューン。ストレートに80年代ポップの影響を受けた楽曲は、今聴くとむしろ一周回って新しさを感じさせます。最初に書いた通り、ここ最近80年代的な音の再評価が進んでいますが、まさに時代がNONA REEVESに追いついたといってもいいかもしれません。

さらに本作、過去の代表曲に加えて新曲が1曲収録されているのですが、この曲がまたかなりの傑作に仕上がっています。その新曲「O-V-E-R-H-E-A-T」はある意味ベタともいえる80年代のディスコポップなのですが、西寺郷太の80年代ポップスに対する知識を総動員しつつ、さらには深い敬意を感じる楽曲。リズムの強度といいメロディーのインパクトといい、むしろ2000年代のメジャー時代の楽曲よりも進化しており、インディーズ時代の彼らの成長ぶりを感じさせます。

また最後に収録されている「ENJOYEE! (YOUR LIFETIME) 2017」は2002年にリリースされたシングル曲の再録なのですが、こちらもアレンジを微妙に今風にアップデート。さらになによりも西寺郷太のボーカルにはある種の自信を感じさせます。それは彼らがデビュー以来ずっと信じて追い続けてきた80年代ポップスの評価がようやく高まってきているということから来る自信なのかもしれません。

ちなみに6月にはインディーズ時代の楽曲をまとめたベスト盤もリリースされるようでこちらも楽しみな作品。NONA REEVESというバンドの魅力を非常に強く伝えてくれているベスト盤でした。

評価:★★★★★

NONA REEVES 過去の作品
GO
Choice
ChoiceII
BLACKBERRY JAM


ほかに聴いたアルバム

なぜ小西康陽のドラマBGMは テレビのバラエティ番組で よく使われるのか。/小西康陽

まるで最近流行りの新書本によくありがちなタイトルにジャケット写真もどこぞの新書本の装丁そのままというユニークな小西康陽の新作。タイトル通り、過去にテレビドラマの劇伴音楽として使用された曲をまとめたサントラ的なアルバム。クラシックをクラブ音楽風に大胆にアレンジしたり、「スポーツ行進曲」をいろいろなアレンジでリミックスしたりとユニークな作品が並んでいます。サントラ盤は単なるBGMで退屈になってしまうケースが多い中、このアルバムに関しては1曲1曲が個性的に出来上がっており、ドラマを見ていなくても楽しめるアルバムになっていました。なぜバラエティ番組でよく使われるのかはわかりませんでしたが、でもおそらく多くのテレビ関係者から彼の曲が支持されているというのは納得できる1枚でした。

評価:★★★★

小西康陽(PIZZICATO ONE) 過去の作品
ATTRACTIONS! KONISHI YASUHARU Remixes 1996-2010
11のとても悲しい歌(PIZZICATO ONE)
わたくしの二十世紀(PIZZICATO ONE)

メテオ/馬喰町バンド

馬喰町バンドの6枚目となるアルバム。日本の民謡やわらべ唄を楽曲に取り入れた独特の音楽性が話題となっていますが、その一方で例えば本作では「なかうちくるまえくっとさけるまでゆけゆけ」ではトリップ感あるサウンドを聴かせたり、「Wajaja」ではグルーヴィーなドラムを聴かせたりとおもしろさを感じます。ただ全体的に似たような節回しの曲が多く、若干もったいない感じもしてしまいました。

評価:★★★★

馬喰町バンド 過去の作品
あねこみあほい

| | コメント (0) | トラックバック (0)

より以前の記事一覧

その他のカテゴリー

DVD・Blu-ray | その他 | アルバムレビュー(洋楽)2008年 | アルバムレビュー(洋楽)2009年 | アルバムレビュー(洋楽)2010年 | アルバムレビュー(洋楽)2011年 | アルバムレビュー(洋楽)2012年 | アルバムレビュー(洋楽)2013年 | アルバムレビュー(洋楽)2014年 | アルバムレビュー(洋楽)2015年 | アルバムレビュー(洋楽)2016年 | アルバムレビュー(洋楽)2017年 | アルバムレビュー(邦楽)2008年 | アルバムレビュー(邦楽)2009年 | アルバムレビュー(邦楽)2010年 | アルバムレビュー(邦楽)2011年 | アルバムレビュー(邦楽)2012年 | アルバムレビュー(邦楽)2013年 | アルバムレビュー(邦楽)2014年 | アルバムレビュー(邦楽)2015年 | アルバムレビュー(邦楽)2016年 | アルバムレビュー(邦楽)2017年 | ヒットチャート | ヒットチャート2010年 | ヒットチャート2011年 | ヒットチャート2012年 | ヒットチャート2013年 | ヒットチャート2014年 | ヒットチャート2015年 | ヒットチャート2016年 | ヒットチャート2017年 | ライブレポート2011年 | ライブレポート2012年 | ライブレポート2013年 | ライブレポート2014年 | ライブレポート2015年 | ライブレポート2016年 | ライブレポート2017年 | ライブレポート~2010年 | 名古屋圏フェス・イベント情報 | 日記・コラム・つぶやき | 映画・テレビ | 書籍・雑誌 | 音楽コラム | 音楽ニュース