アルバムレビュー(邦楽)2017年

2017年11月20日 (月)

さらに勢いを増した新作

Title:MISSION
Musician:NONA REEVES

NONA REEVESのアルバムで前回紹介したアルバムはベスト盤「POP'N SOUL 20~The Very Best of NONA REEVE」。同作の紹介で私は「時代がNONAに追いついた?」という書き方をさせていただきました。彼ら自体は80年代ソウルの影響を強く受けたシティポップをデビュー当初から変わらず演奏していました。以前はシティポップのミュージシャンも決して多くはありませんでしたし、特にNONA REEVESが強い影響を受けているマイケル・ジャクソンをはじめとする80年代のポップミュージシャンは、彼らがデビューした1990年代後半は、今ほど評価が高くなかったように記憶しています。

しかし時代が変わり、現在はマイケル・ジャクソンを含め80年代ポップスが見直されてきました。また、特に最近ではソウル、R&B、ファンクの影響を強く受けたシティポップバンドが数多くデビューして人気を博しています。まさに時代がNONAに追いついた感のある今。事実、彼らのアルバムに関しても徐々に売上を伸ばしているようで、Wikipediaによるとアルバムもここ数作、右肩あがりに最高位を伸ばしており、本作はアルバムチャート42位と(それでもまだまだな感はあるのですが・・・)、自己最高位を記録しています。

実際、自分たちに吹く追い風を彼らも認識しているのか、オリジナルアルバムとしての前作「BLACKBERRY JAM」も非常に勢いのある作品になっていましたし、そして本作に関しても勢いを感じる充実作に仕上がっていました。まず冒頭の「ヴァンパイア・ブギーナイツ」は80年代直系の軽快でファンキーなダンスチューン。ある意味、彼らの王道とも言えるナンバーなのですが、演りたいことを演っているような爽快さを感じます。また、途中のボーカルの溜めは、完全にマイケル・ジャクソンからの影響を見て取れるのも西寺郷太の趣味を色濃く反映しています。

本作はゲスト勢も豪華、かつとても有効に使われています。「Danger Love」ではCharisma.comのいつかが参加していますが、軽快でダンサナブルなチューンにいつかのラップが上手くマッチしています。「未知なるファンク」もゲストの曽我部恵一のハイトーンなボーカルがファンクなディスコチューンに映えています。原田郁子が参加した「記憶の破片」はこのアルバムでは珍しくフォーキーな雰囲気のポップチューンとなっていますが、この曲も2人の息の合ったデゥオが楽しめます。

また今回のアルバム、ファンキーなダンスチューンも冴えまくっている本作ですが、中盤の「NEW FUNK」「NOVEMBER」についてもミディアムテンポでメロウに聴かせるボーカルが魅力的な作品になっており、西寺郷太のメロディーセンスが光る作品になっていました。

本作がNONA REEVESとして決して新しいことを演っているわけではありません。むしろいつも以上に彼らの演りたいことを自由にやっているという印象も受けるアルバムでした。これは全く個人的な主観に基づく感想なのですが、ひょっとしたら以前に比べて彼らのようなタイプの楽曲が世間的にヒットするようになったため、レコード会社側が以前よりも彼らに自由に演らせているのではないでしょうか?いつもに増して彼らの勢いを感じさせる傑作でした。

評価:★★★★★

NONA REEVES 過去の作品
GO
Choice
ChoiceII
BLACKBERRY JAM
POP'N SOUL 20~The Very Best of NONA REEVES


ほかに聴いたアルバム

『櫂』/te'

インストロックバンドte'の新作は前作に引き続き5曲入りのミニアルバム。そのうち「玲瓏たる純潔は『紅炎』の傀儡を疾らせ、暁天に燦めく証を刻む。(改)」はアニメ「ブブキ・ブランキ 星の巨人」主題歌というまさかのアニソンタイアップ!あの複雑な曲がアニメ主題歌として流れるのかよ!と思ったら、アニメバージョンは声優潘めぐみによる歌入り。そちらのバージョンも聴いてみたのですが、ちゃんとアニソンらしい感じになっており、逆にte'のダイナミックなサウンドがアニソンらしさを醸し出していました(ちなみに本作に収録されているのはインスト版です)。

前作「『閾』」ではエレクトロサウンドを入れてきてリスナーを驚かせたのですが、今回は基本的にはte'らしいダイナミックなバンドサウンドがメインとなっている構成。さほど奇をてらったような感じの楽曲もなく、基本的に収録曲5曲が同じ方向性に並んでいる統一感あるアルバムになっていました。もちろん、迫力あり複雑に構成されたサウンドは聴けば聴くほど引き込まれるものがありte'の魅力は本作も健在でした。

評価:★★★★★

te' 過去の作品
まして、心と五感が一致するなら全て最上の「音楽」に変ずる。
敢えて、理解を望み縺れ尽く音声や文字の枠外での『約束』を。
ゆえに、密度の幻想は綻び、蹌踉めく世界は明日を『忘却』す。
其れは、繙かれた『結晶』の断片。或いは赫奕たる日輪の残照。
『閾』

SONGentoJIYU/eastern youth

二宮友和が脱退し、その後が気にかかっていたeastern youthですが新メンバーとしてベースに村岡ゆかが加入。新体制でのスタートとなった彼らが、現メンバーではじめてリリースしたアルバム。ただ、バンドとしての方向性は以前から大きな変化はなく、エモーショナルな激しくも分厚いサウンドに、傷つきながら生きる人たちへの応援歌のような歌詞が大きな魅力に。ある意味、目新しさはなく、そういう意味では「バンドとしてやりつくした」という二宮友和脱退の理由はわからなくもないのですが、ただ、この方向性でもまだまだ魅力的な曲をバンドは奏でることができるということを実感した作品。まだまだ彼らは名作を世に送り出してくれそうです。

評価:★★★★★

eastern youth 過去の作品
地球の裏から風が吹く
1996-2001
2001-2006

歩幅と太陽
心ノ底ニ灯火トモセ
叙景ゼロ番地
ボトムオブザワールド

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2017年11月14日 (火)

デビュー作でいきなりブレイク!

Title:girls like girls
Musician:yonige

最近 ガールズバンドが人気を博しています。言うまでもなくチャットモンチーがその嚆矢なのでしょうが、その後もねごと、赤い公園、tricotなど次々とバンドがデビューしてきました。特にそんな中でもSHISHAMOは武道館ワンマンも成功させるなど、チャットモンチーに続く人気バンドの地位を確実なものとしています。

おそらくそんな人気バンドの仲間入りを果たしそうなガールズバンドが彼女たちyonigeでしょう。メジャーデビューアルバムである本作ではいきなりベスト10ヒットを記録し、一躍ブレイクを果たしました。メンバーは牛丸ありさとごっきんの2人組。特に作詞作曲を担当する牛丸ありさはオーストラリアと日本のハーフでAC/DCのベーシストだったラリー・ヴァン・クリートの姪ということでも話題になっています。

ガールズバンドというとポップなメロディーラインを書くバンドがメインなのですが、その中で彼女たちはロック寄りのサウンドを奏でていることも大きな特徴となっています。特にサウンドはフィードバックノイズを前面に押し出したギターサウンドを中心とした構成となっており、イメージとしては80年代のインディーロックバンドに近いもをがあります。また、同じガールズバンドとしては大先輩であるnoodlesに近いかもしれません。

またそんなへヴィーなバンドサウンドである一方、メロディーラインは至ってポップであり他のガールズバンドと同様にポップリスナーにも訴求力があるのも特徴的。キュートでポップでキャッチー・・・といった感じではありませんが、ヒットチャートでも十分戦えそうなメロディーラインを書いているバンドであることは間違いありません。

ガールズバンドといえば歌詞は女の子の心境を繊細な描写で描いており、多くの女性陣ばかりではなく、男性陣にも共感を得るような歌詞を描くようなバンドが多いのですが、yonigeに関しても女の子の微妙な心象風景を描いている歌詞が大きな魅力となっています。特に具体的なアイテムを上手く用いた歌詞がひとつの特徴になっているように感じます。

例えば「ワンルーム」では

「あけっぱなしの便器がやけにリアルで恥ずかしくなった
君を泊まらせた後の誰もいないワンルーム」

(「ワンルーム」より 作詞 牛丸ありさ)

と、「あけっぱなしの便器」という歌詞ではあまり用いられないアイテムを上手く織り込み、恋人が帰った後の複雑な心境を上手く描写しています。

また「各駅停車」

「各停しか止まらない駅の
プラットホームで待っている」

(「各駅停車」より 作詞 牛丸ありさ)

は、各停しか止まらないようなさびしい駅の風景と自分の心境を上手く重ね合わせた歌詞に。まあ駅のプラットホームは歌詞のアイテムとしてはよく用いられるものではありますが・・・。

そんな訳で、チャットモンチーやSHISHAMOよりもロック寄りでありつつも、他のガールズバンドの魅力をきちんと備えた彼女たち。これからも活躍もかなり期待できそう。ちょっと残念だったのはドラムスがいないバンドなだけにドラムスが目立つ曲があまりなく(「トーキョーサンセットクーズ」では力強いドラムが印象に残りましたが)、ちょっと低音部分に物足りなさを感じた点でしょうか。そういう意味でもこれからまだまだな部分も感じたのですが、それを差し引いてもこれからの活躍が楽しみになってくるバンド。昨日の台風クラブに引き続き、期待値を込めての評価ですが、次のアルバムも楽しみです!

評価:★★★★★

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2017年11月13日 (月)

京都発、今のバンド・・・?

Title:初期の台風クラブ
Musician:台風クラブ

今回は今、注目の新人バンドのアルバムの紹介です。京都出身の3ピースロックバンド、台風クラブ。クリープハイプの尾崎世界観やスカートの澤部渡も絶賛しているバンドだそうで、本作がデビューアルバム。

アルバムジャケットからしていかにも60年代のフォークソングのミュージシャンを彷彿とさせますし、実際、ジャケットはLP風の仕様に仕上がっています。「初期の+バンド名」というアルバムタイトルもいかにも昔風(まあ具体的には「初期のRCサクセション」を思い出しますが)。ジャケット写真にうつった風貌からしても、カレッジフォークを思い起こさせるような時代をタイムスリップしたようなジャケットがまず強く印象に残ります。

ただ、そんな印象からアルバムを聴いてみるとちょっと予想とは異なるようなサウンドが耳に飛び込んでくるのでちょっと驚かされるのではないでしょうか。1曲目「台風銀座」のイントロは80年代あたりのインディーギターロックのそれ。思いっきりPIXIESあたりを思い出させるのですが、楽曲がスタートすると今度はエフェクトをかけたダブのサウンドに脱力感あるボーカルはボ・ガンボスのどんとを彷彿とさせるもの。ダビーな楽曲と共にボ・ガンボス直系の音作りを感じさせます。そういえばボ・ガンボスの全身バンド、ローザ・ルクセンブルグは彼らと同じ京都から出てきたバンドでしたね。

バンドサウンドとしてはガレージロックを主体としたへヴィーなバンドサウンドを奏でています。ただ、その一方ではブラックミュージックからの影響を強く受けたサウンドが特徴的で、続く「ついのすみか」「ダンスフロアのならず者」などメロウなシティポップのサウンドが流れるさわやかなナンバーになっています。

ただボーカルの石塚淳は独特なしゃがれ声が特徴的。これに荒々しいガレージサウンドが加わるため、楽曲全体としてはかなり荒削りな印象すら受けます。このミスマッチともいえる石塚淳のボーカルに意外なほどメロウなサウンドのバランスがバンドの大きな特徴ともいえるでしょう。もっとも石塚淳のボーカルは良くも悪くも癖があるため好き嫌いはわかれるかもしれません。パッと聴いて受け付けないという方も少なくないかもしれません。

このガレージロックをベースとしつつさりげなく様々なジャンルを取り込んでいるというスタンスは非常におもしろく、「ずる休み」は60年代風、「昔は昔」ではモータウンビートを聴かせてくれますし、「42号線」はブルースロック路線。「飛・び・た・い」ではファンクのリズムを聴かせてくれます。

アルバムタイトルやジャケットから印象を受けるカレッジフォークの印象は正直なところほとんどないのですが、ただ楽曲自体はルーツ志向な部分も強いため60年代的ななつかしさを感じさせます。ボーカルのしゃがれ声が楽曲をちょっと邪魔してしまっているような部分もあり、そういう意味でもまだまだバンドとして荒削り、成長の余地は感じられるのですが、既に独特の個性を持っており、今後が非常に楽しみになってくるバンドです。評価はそこらへんの期待値込みで。次回作も楽しみです。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

北極星/藤巻亮太

現在、活動休止中のレミオロメンのボーカル、藤巻亮太によるソロ3枚目となるフルアルバム。基本的にはレミオロメンからのソロというよりはレミオロメンの延長線上のような作品が多く、レミオロメンの楽曲でも感じた藤巻亮太のポップスセンスがキラリと光る作品になっています。

ただ以前より必要以上に分厚いサウンドが気になっていたのですが本作もその傾向が続いています。特に本作、レミオロメンの名曲「3月9日」のセルフカバーが収録されているのですが、アコギのみでいい感じのスタートとなっているにも関わらず、途中からいきなりホーンが入ってくるのですが、正直、ホーンの必要性がかなり疑問なカバーになっていました。

全作同様、良質なポップスアルバムなのは間違いないのですが、レミオロメン復活はまだまだ遠いなぁと感じてしまうアルバム。またもっとシンプルなポップアルバムの方が彼のメロディーや歌詞には合うと思うんですが・・・そういう点はちょっと気になりました。

評価:★★★★

藤巻亮太 過去の作品
オオカミ青年
旅立ちの日
日日是好日

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2017年11月12日 (日)

1日1曲 最終回

今年の年初から何度か紹介してきた日本のポピュラーミュージックの名曲を1日1曲というコンセプトで1年かけて紹介しようという企画「大人のJ-POPカレンダー 365 Radio Songs」。いままで1回毎に3枚ずつ、計第3弾まで紹介してきましたが、今回はついに最終回です。

Title:大人のJ-POPカレンダー~365 Radio Songs~「10月 空と星」

まず10月はDisc1が「失恋ソング」、Disc2は「空と星の歌」となっています。10月のテーマがなぜこれになるのかいまひとつ不明なのですが、10月は音楽的にピッタリと来るような記念日がないから漠然と「秋」のイメージでテーマを設定したのでしょうか。

「失恋ソング」の方はある意味、ポピュラーミュージックの定番中の定番なのですが、なぜか「歌謡曲」が多く、フォーク、ニューミュージック、あるいは「J-POP」と呼ばれて以降の曲があまり選曲されていないのは残念。失恋ソングの定番中の定番、槇原敬之の曲とか選んでほしかったのですが・・・。「空と星の歌」はさすがにこのテーマだとしんみりと聴かせるような楽曲がほとんど。切なさを感じさせる曲も多く、日本人が「空と星」からイメージするのはみんな似たような感じになるのでしょうか?

評価:★★★★

Title:大人のJ-POPカレンダー~365 Radio Songs~「11月 家族」

正直この企画、1月からスタートし、月が進むにつれ、若干だれ気味に感じていた部分もあったのですが・・・この11月については、同オムニバス全12枚のうち文句なしの最高傑作。名曲が並ぶコンピレーションになっていました。

特に「労働の歌」がテーマとなっているDisc1が素晴らしい。もともと「労働歌」はポピュラーミュージックのある種の定番であるものの、歌謡曲やJ-POPではどうしても内容が暗くなりすぎるのか、あまりテーマとして取り上げられずらい分野ではありました。それだけにあえて働く人にスポットをあてた曲というのは作り手の思い入れがあるのか、傑作が多かったように思います。

斉藤和義の「おつかれさまの国」というサラリーマンの応援歌的な曲からスタートし、植木等の「ドント節」は「昭和」を感じる歌。「サラリーマンは気楽な稼業ときたもんだ」は今でも有名なフレーズですが、高度経済成長期を感じさせる歌詞の内容は今とは隔世の感もある、時代性を感じさせる1曲です。

中盤は岡林信康「チューリップのアップリケ」、高田渡「鉱夫の歌」など社会の底辺に生きる人たちにスポットをあてた曲が並んでおり、胸をうちます。最近では美輪明宏の歌で有名になった「ヨイトマケの唄」は、このコンピでは村上"ポンタ"秀一名義で泉谷しげるがボーカルを担当していますが、こちらもある意味荒々しくも力強いボーカルが曲にマッチしており、名カバーに仕上がっています。

この路線の曲では元ブルーハーツ、今はクロマニヨンズとして活躍している真島昌利の「煙突のある街」が秀逸。こちらも社会の底辺を生きる労働者の声を歌にした内容なのですが、「底辺」に限らず社会の歯車のひとつとして働きつづける私たちにとっても心に響く歌詞になっています。そんな労働者の叫びにレゲエのサウンドがピッタリとマッチ。真島昌利の心の底からはきだすよなボーカルも胸をうつ傑作となっています。

後半には浜田省吾「I am a father」、忌野清志郎「パパの歌」など、父親に捧げる曲が並びます。「労働=父親の役目」というのはちょっと古い価値観では?ここらへんはDisc2の「家族の歌」に収録すべきでは?とも思うのですが、数多く母親に対する歌に対して、あえて父親に捧げる歌を歌うあたり、ミュージシャンの力が入っていることがわかる名曲になっています。

一方Disc2は「家族の歌」。最初はよくありがちな「親に感謝」的な曲が並んでいるのでは?という危惧があったのですが、その手の曲は同コンピの5月に収録されていた「母の歌」に並んでいたようで、こちらは感謝というよりは親、息子、兄弟に対する素直な思いを綴る曲が並んでいました。

そんな思い入れが深い曲が並ぶ中、奥田民生の「息子」のような飄々とした曲が並んでいたのもバランスが良い感じ。で、楽曲自体はよく知っていたのですが、今回ちょっと意外な発見があったのが赤ちゃんソングの定番中の定番「こんにちは赤ちゃん」。純粋な赤ちゃんへの讃歌と思っていたのですが、2番にこんな歌詞が・・・

「こんにちは 赤ちゃん お願いがあるの
こんにちは 赤ちゃん 時々はパパと
ほら 二人だけの 静かな夜を
つくってほしいの」

(「こんにちは赤ちゃん」より 作詞 永六輔)

と、さらっとおそらく夜中の授乳や夜泣きで、夜がなかなか寝られない母親の育児の苦労がさらっと歌われていることに気が付かされます。こういうフレーズを自然に入れてくるあたりがさすが・・・といった感じ。意外な発見でした。

ただ一方で今回、もっとも違和感のあった曲があって、それが樋口了一の「手紙~親愛なる子供たちへ~」。一部で「泣き歌」として話題になったようですが、歌詞の内容を簡単に書くと、「昔、子供たちの世話をしたんだから、老人になったら介護してね」と親から子供にお願いしている歌。いや、これはないだろう。同じ内容を子供から親に歌うのならわかります。ただ、子供を持つ親としては子供に将来、自分の介護で苦労してほしい、なんてことは全く思いません。いや、子供に介護で苦労してほしいなんて願う親ってそんなにいるんでしょうか?もちろん、子供として親に対して思う気持ちは全く違いますよ。でも、私はこの曲、全く泣けず、むしろ引いてしまいました。

逆にDisc2で思わず泣けそうになったのが森本レオの「親父にさよなら」。え?森本レオが歌?と思ったのですが、基本的にインストをバックに彼が語るスタイル。いわゆる「ダメ親父」的な等身大の父親像をコミカルに描きつつも、亡くなった父親への想いを語る曲で、ユニークながらも涙腺がゆるんでしまう名曲でした。

そんな訳で違和感ある曲もありましたが、名曲揃いの本作。このシリーズ、全作通して聴かなくてもこの「11月」だけは聴いてみてほしいと思わるような内容でした。

評価:★★★★★

Title:大人のJ-POPカレンダー~365 Radio Songs~「12月 家族」

で、このシリーズラストを飾るのが本作。Disc1のテーマは「クリスマスソング」なのですが、さすがにテーマ性がテーマ性なだけに「歌謡曲」はゼロ。統一性が取れた内容になっているのですが、J-POPと歌謡曲を同じ俎上にのせて構成されているのが本作の魅力なだけにちょっと残念といえば残念。また、広瀬香美の「Dear...again」と山下達郎の「クリスマス・イヴ」はなぜかカバーで収録。ここらへんは大人の事情でしょうか?「Dear...again」をカバーしたMs.OOJAは、ちょっと癖のあった広瀬香美とは異なり、さらっと歌い上げていて、曲本来の良さを上手く出せていたと思いますが、一方「クリスマス・イヴ」をカバーした坂本冬美は、演歌独特のねちっこい歌い方が元曲にはちょっとあっておらず、違和感の残るカバーになっていたのが残念でした。

Disc2のテーマは「故郷の歌」。テーマ的に歌謡曲がメインかと思いきや、意外とJ-POP以降の作品が多く、時代を問わず歌われるテーマなんだなと感じます。特に注目したいのが畠山美由紀の「わが美しき故郷よ」。気仙沼出身の彼女が、東日本大震災後に発表したこの曲は被災した故郷を思って歌った曲。それだけに故郷の風景を美しく描写した歌詞が心に突き刺さる名曲になっています。

10月とは逆に、こちらは歌謡曲からの選曲が少なく、「クリスマスソング」はともかく「故郷の歌」はもうちょっと歌謡曲からの曲があってもよかったのでは?とは思うのですが、コンピレーションとしては逆に統一感は取れており、名曲も多かったように感じます。最後を飾るのが中島みゆきというのも納得感が。最後の最後を気持ちよく締めることのできたアルバムでした。

評価:★★★★★

そんな訳で今年1年間、全12作、365曲を紹介したコンピレーション。途中、正直似たようなミュージシャンの曲が多くなり、若干中だるみを感じたのですが、ラスト11月12月は直前の失速ぶりを完全に挽回する傑作となっていました。いろいろと知られざる名曲にも出会えた、聴きごたえのある企画で、最初から最後まで日本のポピュラーミュージックの魅力をしっかりと感じることが出来るコンピレーションでした。

大人のJ-POPカレンダー 365 Radio Songs 過去の作品
1月 新年
2月 告白
3月 卒業

4月 桜
5月 東京
6月 結婚

7月 サマーソング
8月 平和
9月 友情

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2017年11月11日 (土)

川崎発話題のHIP HOPクルー

Title:Mobb Life
Musician:BAD HOP

今、一種の流行となり一番勢いのあるジャンルとも言えるHIP HOP。その中でも注目をあつめるグループのひとつが彼ら、BAD HOPでしょう。川崎市出身の彼らは、その中でもさらに治安の悪いと言われる川崎市南部の池上町が彼らの出身地。昨年はミックステープ「BAD HOP 1 DAY」「BAD HOP ALL DAY」をリリースし、そんなヤクザや暴力、貧困が支配するような地域の日常を描いたリリックも話題となりました。

本作はそんな彼らの初となる全国流通作品。メンバーのうちYZERRとT-Pablowは「高校生ラップ選手権」や「フリースタイルダンジョン」でも名をはせており、否応なく注目の集まる1枚となりました。

アルバムは全体的に重低音のエレクトロのトラックが流れており、ダークな雰囲気が覆っています。基本的にサウンドはシンプルにまとめあげており、斬新さのようなものはあまり感じませんが、リリックにもピッタリマッチしています。「3LDK」のようなアコースティックテイストの爽やかなトラックや「Ocean View」のようなタイトル通り爽やかな海辺を想像するようなエレクトロトラックもあったりして楽曲のバリエーションも感じます。

ただ一番印象に残ったのはそのリリック。一言で言ってしまえば非常にわかりやすい、「HIP HOPらしい」リリックが特徴的。冒頭のタイトルチューンでもある「Mobb Life」は、テーマはまさに「仲間」そして「金」というHIP HOPのテーマとしてはストレートなもの。続く「つるまない」は特定の対象がいるかどうかは不明なのですが、いわゆる「Dis」のナンバーになっており、これもテーマの選び方がいかにもHIP HOPらしいところです。

ベタベタといえば「Supercar」なんかもまさにそう。リリックの中に具体的な車種(それもわかりやすい外車!)が登場し、さらに良い車にのって良い女をひっかけようという内容も、「バブルかよ!」と思うほど、逆に今時、若い世代がこういうテーマでラップするんだ・・・と驚いてしまうくらい。若者世代の車離れが叫ばれていますが、やっぱり好きな人は好きなんだ、と思ってしまいます。

中盤、「#リバトークskit」としてラジオ番組風のトークコーナーが登場するところもユニーク。ここでアルバムは一区切りとなっているのですが、メンバーの仲の良さも感じさせるコーナーとなっています。

そしてアルバムの最後を飾る「これ以外」では

「これ以外 他にやりたい事も無いんだ これ以外 無いんだ取り柄が俺ら」

とラップに対する決意をかなりストレートに綴っており、アルバムの最後を飾るにふさわしいナンバーとなっています。

そんな訳でBAD HOPの初の全国流通盤、良い意味でわかりやすいHIP HOPのアルバムになっていたのではないでしょうか。HIP HOPというジャンルの魅力、そしてHIP HOPにありがちなテーマ性を上手くまとめあげたアルバムになっていたと思います。しかし先日紹介したPUNPEEといい、今、次から次へと魅力的なミュージシャンが登場してきますね。まだまだHIP HOPが日本の音楽シーンを席巻する日々は続きそうです。

評価:★★★★★

BAD HOP 過去の作品
BAD HOP 1DAY


ほかに聴いたアルバム

OTONARIさん/パスピエ

ここ最近、昔のような独特の癖が消えて良くも悪くも「普通のポップバンド」になったパスピエ。ここ最近は悪い意味でのベタなJ-POP的な部分が気になっていたのですが、今回のアルバムも良くも悪くも「普通のポップアルバム」といった印象。ピアノやシンセで爽快にまとめあげているのですが、突き抜けた特徴がないのが気になります。ただ、前作「&DNA」よりは素直に楽しめるポップアルバムになっていたとは思うのですが。

評価:★★★★

パスピエ 過去の作品
ONOMIMONO
演出家出演
幕の内ISM
娑婆ラバ
&DNA

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2017年11月10日 (金)

帰ってきた!

Title:帰ってきたホフディラン
Musician:ホフディラン

ここ最近、事実上の活動休止状態だったホフディラン。ライブ活動は行っていたものの新作のリリースがなく、その動向がちょっと心配されたのですが、久々のニューアルバムがリリースされました。その名も「帰ってきたホフディラン」。なんとここにきてメジャーレーベル、それも古巣となるポニーキャニオンからの復帰が決定。これがその第一弾となるアルバムです。

ホフディランといえば、メンバーのワタナベイビーと小宮山雄飛という2人のライターからなるユニットなのですが、以前からホフディランのアルバムというとワタナベイビーの曲の出来が良い時にアルバムが傑作になるという印象があります。というのは小宮山雄飛の曲はビートルズなどの影響を受けたルーツ志向を感じるシンプルでメロディアスなギターロック路線がメインで、楽曲に安定感がある一方、ワタナベイビーはちょっと奇抜さもあるポップソングが多く、それがはまると名曲になる一方、はずすとちょっと微妙な曲になってしまうという傾向にあり、それだけにワタナベイビーの曲がはまるとアルバム全体が傑作になるという傾向にありました。

そして今回のアルバムに関していうと、これが笑っちゃうくらいワタナベイビーの曲が傑作揃い。本作はカバー1曲、雄飛の曲が7曲、ワタナベイビーの曲が6曲という構成なのですが、この6曲がいずれも非常に個性的な名曲揃い。ハイトーンのエフェクトをかけてコーラスを入れてユーモラスに仕上げつつ、彼らしいストレートなラブソングを歌う「ヤンヤンヤン」はまさにワタナベイビーらしさが全面にあらわれた傑作。アラフォー世代には懐かしさも感じる、楽曲の中に90年代に一世を風靡した音楽、渋谷系のスタイルを読み込んだ「恋は渋谷系」もユニーク。メロディーやサウンド自体も渋谷系そのもので、ちょっとカジヒデキっぽいかな?彼らしいウィットも利いた楽曲になっており、惹きつけられます。

子持ちの身としては最近、ホフディランの2人の楽曲は実は「おかあさんといっしょ」や「いないいないばぁ」といった幼児向け番組の中で良く見かけたりしています。なにげに幼児向け番組用の曲もホフディランらしい名曲が多く、密かにセルフカバーしてくれないかな、なんて思ったりしているのですが、今回のアルバムの中でも「あの風船追っかけて」は、「おかあさんといっしょ」あたりで歌われていても不思議ではないかわいらしくほっこりするポップソング。こちらもワタナベイビーらしさがあらわれている名曲になっています。

もちろん小宮山雄飛の楽曲もいつも通り、安定感のある名曲がそろっています。メロディアスなポップソングの中にちょっとファンク的な要素を入れた「珈琲」や60年代ポップス風な「家を借りよう」、映画音楽を彷彿とさせるビックバンド風のアレンジが楽しい「映画の中へ」など、彼らしいルーツのはっきりと見えたポップソングが並んでいます。今回、ワタナベイビーの楽曲が良かっただけにちょっと地味な印象は否めませんですが、しっかりと安定感ある素朴さもあるポップソングはやはり大きな魅力を感じます。

そしてアルバム唯一のカバーなのがRCサクセションの「雨あがりの夜空に」のカバー。もともと忌野清志郎の大ファンで、彼のスタイルを模した「ニセ清志郎」としても活動するワタナベイビーが主導したカバーなのですが、軽快で明るい歌い方とサウンドは楽曲にもピッタリとマッチ。原曲の魅力もしっかり残しつつ、ホフディランらしさをきちんと入れた名カバーになっていました。

ポップユニットホフディランの魅力を存分に感じることが出来た傑作。バラエティーあふれる曲の数々に、彼らのポップミュージシャンとしての懐の深さを感じます。あらためてホフディランって魅力的なグループだな、ということを再認識したアルバム。これからはコンスタントに活動を続けてほしいのですが。特にワタナベイビーは今、脂にのっているみたいなので、是非この勢いで次の新作を!

評価:★★★★★

ホフディラン 過去の作品
ブランニューピース
13年の金曜日
14年の土曜日
15年の日曜日
2PLATOONS


ほかに聴いたアルバム

ヤグルマギク/The Mirraz

最近、配信限定で次々とアルバムをリリースしているThe Mirrazですが、前作からわずか2カ月。早くも配信限定の身にアルバムをリリースしてきました。基本的にハイテンポなパンクロックなのはいつも通り。またマイナーコード主体のメロがメインとなっており、早口で歌い上げるスタイルのいつも通り。ただ、歌詞としては内省的なものが多いものの、早口すぎてかつフックが利いたようなインパクトあるフレーズがないため聴き取りにくい内容になってしまっています。

そもそも今年に入ってこれで4作目。昨年もミニアルバム含めて2枚リリースしていますから、さすがに乱発気味なのでは?もうちょっと腰をおしつけて名曲をリリースしてほしいのですが・・・。配信中心の積極的な攻勢はおもしろいとは思うのですが、その結果、ちょっと粗製濫造になってしまっているのが気にかかります。

評価:★★★

The Mirraz 過去の作品
We are the fuck'n World
言いたいことはなくなった
選ばれてここに来たんじゃなく、選んでここに来たんだ
夏を好きになるための6の法則
OPPOTUNITY
しるぶぷれっ!!!
BEST!BEST!BEST!
そして、愛してるE.P.

ぼなぺてぃっ!!!
Mr.KingKong
バタフライエフェクトを語るくらいの善悪と頑なに選択を探すマエストロとMoon Song Baby

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2017年11月 7日 (火)

観客ふくめてみんながメンバー!

Title:TOWN
Musician:清竜人TOWN

シンガーソングライターの清竜人といえば、もともとは正統派のシンガーソングライターとしてデビューしたものの、アルバム「MUSIC」リリース直前のライブでいきなりミュージカル風なステージを披露したり、かと思えば清竜人25というアイドルグループをいきなり立ち上げたりと、その奇抜な活動でも大きな話題となりました。

そんな清竜人25を活動している最中にいきなり発表されたのがこの「TOWN」というプロジェクト。プロジェクト名と同時に公開されたのが上のジャケットにも使われている写真で、モヒカンに背中一面の入れ墨姿という、アイドルユニットというイメージからほど遠い姿に衝撃が走りました。そしてこのTOWNというプロジェクトが非常にユニーク。演者と観客という垣根を取り払い、観客を含めてバンドメンバーという思想のもと、みんなでひとつの曲を作り上げようというプロジェクト。プロジェクト発表後、ネット上にTOWNの楽曲が無料で公開され、ファンはその曲を事前に聴いた上でライブで一緒に演奏するというスタイルが取られました。

ライブは東京で5公演行われた後、名古屋や大阪などをまわる全国ツアーが6公演+CLUB CITTA'でツアーファイナルという全12か所でライブが行われました。このライブもあくまでも参加した人が全員メンバー。当日は楽器の持ち込みも自由で、もちろん大声で歌うことを前提としたステージ。メンバーからお金は徴収できないということで、全箇所無料という赤字覚悟のプロジェクトになっています。

ちなみに本サイトでも以前ライブレポートで紹介しましたが、私もこのプロジェクトに参加してきました!そんな訳で私も列記としたTOWNのメンバーの一人なわけで(笑)、TOWNのメンバーは全員、本CDのブックレットに名前が記載されているのですが、私の名前もしっかりと記載されていました(笑)。

本作はそんなプロジェクトTOWNの最初で最後となるアルバム。2枚組となるアルバムは1枚目にはみんなで演奏したライブ音源が収録、もう1枚はネットで無料公開された清竜人演奏による「デモ音源」が収録されています。

さて、そんなCDの1枚目となる「本編」。普通のライブ音源とはことなり、全12か所のライブ公演の音をすべて重ね合わせ、さらにみんなの演奏、歌声もきちんと拾い上げた録音となっています。そのため当日の迫力がそのまま伝わってくる音源。楽曲は基本的にみんなで声をあげて歌えるようなシンプルでわかりやく、ポップなパンクナンバーがメインとなっているのですが、演奏も声も重ね合わせているだけにとにかく分厚い音になっています。

非常にエモーショナルな音源を聴ける一方、あまりに音を重ね合わせた結果、音楽としては破たん寸前な内容になっています。それでも楽曲としてちゃんと聴ける内容になっているのは、「天才」の呼び声も高い清竜人のソングライターとしての実力により、足腰のしっかりとしたポップソングが歌われているからでしょう。正直、純粋に音楽的な観点から言えば決して「成功した」と言えないのかもしれません。ただ、演者と観客が一体となって音楽を作り出そうという情熱はアルバムからいやというほど伝わってきます。そういう意味ではプロジェクトとしては十分「成功した」と言えるでしょう。

ただ残念だったのが楽曲のうちの1曲「おい!ハゲ!ボケ!カス!」の歌詞の一部が問題視されたみたいで、本編でもデモ音源の方でも完全に音が消されてしまっている点。「いてまうぞ」「殺したる」のような攻撃的な歌詞が問題視されたようですが・・・ただ、差別語でもありませんし、そんなに問題視するような内容かぁ??あまりに危険回避的すぎる「言葉狩り」は非常に残念でした。

もうひとつ残念だったのが初回版に収録されたドキュメンタリー。TOWNのプロジェクトのスタートから最後のライブの模様まで収録されているのですが、基本的にスナップショット的な映像を羅列しただけ。個人的にはもっとTOWNというプロジェクトにかける清竜人へのインタビューが聴きたかったなぁ。冒頭に「TOWN」というプロジェクト名の意味など、軽いインタビューはあったものの、内容は薄く表面的なものだけ。曲の持つ意味、なんでこういうプロジェクトをやろうと思ったのか、また清竜人25との関係性などについてももっと突っ込んで話を聴いてほしかったです。

また、今回のプロジェクトに関して彼は背中いっぱいに和彫りの入れ墨を入れています。ドキュメンタリーでも彼が入れ墨を入れているシーンもしっかりとおさめています。正直、入れ墨が本物かプリントかは若干不明なのですが(入れ墨を入れているシーンも本当かどうかわかりませんし)、単なるファッション的なタトゥーではなく、本格的な入れ墨を、社会的な立場や今後の活動の制約、あるいは病気といったリスクがある中、わざわざこのプロジェクトのために入れているのかいまひとつ彼の意図がわかりません。だからこそドキュメンタリーというからには、このプロジェクトのために入れ墨を入れた意図をしっかりと聴かせてほしかったのですが・・・そういう意味でも「ドキュメンタリー」といいながら、非常に通り一辺倒の単なる「スナップ映像集」になっていたのはとても残念です。

そんな訳で、いろいろな「残念」な部分も多かったですし、正直、大味なライブ音源となっている楽曲自体も幅広く無条件でお勧めできるかというと微妙な部分も。ただ、そこらへんを差し引いてもなお、このプロジェクトのおもしろさと、それを実際にやってしまった清竜人の行動力、発想力に敬意を表して以下の評価で。ちなみにドキュメンタリーDVD付の初回版は6,500円+消費税というちょっと高い印象もしますが、ただプロジェクト自体、大赤字だったらしいので、本作のちょっと高めの値段設定に関しては仕方ないな、という感じもします。同プロジェクトは残念ながらこのアルバム1枚で終わりのようですが、今度もおもしろいプロジェクトを次々と立ち上げてくれそう。清竜人のこれからの活躍からも目が離せなさそうです。

評価:★★★★★

清竜人 過去の作品
WORLD
MUSIC
WORK
BEST
WIFE(清竜人25)


ほかに聴いたアルバム

indoor/おいしくるメロンパン

ミュージシャン名が一度聴いたら忘れられなさそうな3ピースバンドおいしくるメロンパンの2枚目となるミニアルバム。ただ、いかにも軽快でキュートなポップソング、あるいは今時のハードコア風なギターロックバンドを想像したのですが、楽曲的にはシンプルなギターロック。ちょっとノスタルジックな雰囲気もある哀愁感あるメロディーラインと中性的なボーカルがインパクト。この中性的なボーカルはちょっと川谷絵音に近い感じがしますし、歌謡曲テイストも感じるメロをあわせてIndigo la endに近いものを感じるのですが・・・。ただメロディーラインにはインパクトもありセンスも感じますし、独特の雰囲気も醸し出しており今後の成長次第ではおもしろいバンドになりそうな予感も。とりあえず次にリリースされるかもしれないフルアルバムでどんな姿を見せてくれるのか、楽しみです。

評価:★★★★

前へ/□□□ feat.the band apart

□□□(クチロロ)とthe band apartがまさかのコラボ。確かに□□□もシティポップ的要素の強いユニットだけに、両者のコラボも不思議ではないのかもしれませんが・・・。the band apartからの流れで聴いてみた本作ですが、基本的にはthe band apartのアルバムというよりは□□□のアルバム。□□□らしいコミカルで良くも悪くもちょっと斜めからの視点を感じるようなポップソングが並んでいます。the band apartの「Eric.W」にいとうせいこうがラップをのせた「お前次第ってことさ」はある意味、コラボらしいコラボといった感じですが、いとうせいこうのラップも含めて癖の強いリアレンジとなっておりthe band apartファンにとっては賛否わかれそうな作品に。the band apartが全面的に参加しているもののthe band apartのファンにはちょっと薦めずらい部分もあるアルバムです。

評価:★★★★

□□□ 過去の作品
TONIGHT
everyday is a symphony
CD
マンパワー

the band apart 過去の作品
Adze of penguin
shit
the Surface ep
SCENT OF AUGUST
街の14景
謎のオープンワールド
1
(the band apart(naked))
Memories to Go

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2017年11月 6日 (月)

注目の新人ラッパーのデビュー作

Title:MODERN TIMES
Musician:PUNPEE

今、日本語ラップが一種のブーム的に高い人気と注目を集めています。そんな中でも最も注目を集めているラッパーの一人が彼、PUNPEE。RHYMESTERのアルバム「Bitter,Sweet&Beautiful」にプロデュースとフィーチャリングで参加したり、さらに宇多田ヒカルの曲のリミックスをリリースし、イベントで共演したりと徐々に注目を集めてきました。

そんな中リリースされたのが待望のデビューアルバムである本作。売上的にもオリコンチャートでいきなりベスト10入りしてくるなど大いに注目を集めています。そんな注目の中、リリースされた本作はいきなりちょっとレトロな雰囲気のトラックの中での「語り」からスタートします。「2057」というタイトル通り、物語はいまから40年後のPUNPEEによってこのデビューアルバムのことが語られる形で物語はスタートしていきます。

まずアルバム全体として非常に心地よいのが脱力感のあるトラック。音数はさほど多くないもののフィリーな雰囲気を感じるメロウなトラックがとても心地よく感じます。たとえば「Scenario(Film)」のような心地よさを感じるメロウなトラックも魅力的。「Rain(Freestyle)」も女性ボーカルを加えたけだるい雰囲気のメロディーにメロウなトラックが耳に残ります。また「宇宙に行く」では軽快で疾走感あるピアノのリフを主導としたトラックがどこかユーモラス。どの曲もほどよい熱量を感じるトラックになっており、ポップで聴きやすいトラックに仕上げています。決して派手さはないので最初はピンと来なかったのですが、アルバム1枚を聴いているといつまでも聴いていたいような不思議な中毒性を持ったトラックになっていました。

楽曲に関してもポップでユニークなテーマを持った楽曲も目立ち、例えば上にも書いた「宇宙に行く」はタイトルの通り宇宙に飛び出したかと思えば、「タイムマシーンにのって」では時間旅行。「親父と母さんに出会った日に行きたいね」「息子直々にチャンス作ってやんぜ」とリリックがとてもユニークです。

そしてアルバム全体としても心地よい脱力感が流れています。歌詞にしても事実上の1曲目「Lovely Man」では

「はいはい まぁご存知の通り
見た目も中身もまぁ覇気がない
はしにも棒にも引っかからず男だか女か
それもわからない あ Pです」

(「Lovely Man」より 作詞 PUNPEE)

なんていう脱力感あふれる自己紹介からスタートしています。しかし、リリックの中には秘めた熱意を感じることができ、なんといっても最後の「Hero」では「僕はHero 僕は君のHero」と歌い上げています。

パンピー=一般人というその名前の通り、決してパッと目立つような派手さのあるアルバムではありません。ただ、トラックにしろリリックにしろいろいろなひっかかりがあり、最初聴きはじめはちょっと地味かな、と感じていたのですがアルバム全体を聴き終わると、癖になって何度も聴いてしまうようなそんなアルバムになっていました。これからの活躍が非常に楽しみになってくる1枚。本当に日本語ラップのシーンは次から次への実力のあるラッパーが登場するなぁ。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

FATELESS/coldrain

ちょうど2年ぶりとなるニューアルバム。英語詞による洋楽テイストも強い楽曲。哀愁感あるマイナーコード主体のメロディーラインを、ハードコアの要素も入れたダイナミックなバンドサウンドで聴かせるスタイル。ここらへん、いままでの曲と基本的にまったく変わりません。1曲1曲は文句なしにカッコいいと思うのですが、やはりもうちょっとバリエーションが欲しいと思ってしまいます。よくも悪くも「いままでどおり」なアルバムです。

評価:★★★★

coldrain 過去の作品
THE REVELATION
Until The End
VENA

氣志團万博2017

木更津が生んだロックバンド氣志團が2003年により開催している大型野外GIG「氣志團万博」。毎年、本当の意味でジャンルを問わないミュージシャンやアイドルが参加しており話題を呼んでいますが、本作は今年参加したミュージシャンの楽曲を集めたコンピレーションアルバム。この手の野外フェス、「ジャンルを問わない」と言いつつも実際に出演するのはロック系と女性アイドルだけという「単なる若くてかわいい子を呼びたかっただけだろ」的なイベントが多いのですが、氣志團万博は本気でジャンルを問わないラインナップに。本作もギターロックバンドからHIP HOP、ビジュアル系、アイドルも男性女性両方ともきちんと収録されています。残念ながら権利の関係か容量の関係か未収録のミュージシャンも多いのですが、氣志團万博の雰囲気を味わえるコンピレーションになっていました。

ちなみに全3枚組なのですが、うち3枚目は「氣志團 蜜苦巣死威泥異~独占!漢の60分~Mixed by DJ Michelle Sorry a.k.a ミッツィー申し訳」として氣志團の楽曲33曲がノンストップでつながれた楽曲になっています。途中にはメンバーによるトークなども収録されているのでファンにとってはたまらない内容に。聴きごたえたっぷりのコンピレーションアルバムでした。

評価:★★★★★

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2017年11月 5日 (日)

今の時流に対するbonobosからの回答

Title:FOLK CITY FOLK.ep
Musician:bonobos

ここでも何度も取り上げてきて、同じことを何度も言及してきましたが、ここ最近、ジャズ、ソウルの要素を取り入れたシティポップバンドが増えてきました。Suchmosがその代表格ですが・・・ということも何度も書きましたね。ま、今のシーンのひとつの「流行」になっています。

bonobosに関しては昨年リリースしたアルバム「23区」で既にシティポップ、ジャズという方向に大きくシフトしていました。そして今回リリースされた6曲入りのミニアルバムは基本的にその方向性をさらに突き進めた内容になっていました。ある意味、今のポップシーンの流行に対するbonobosからの回答という言い方もできるかもしれません。

正直言うと、あまりにその時流にのった今回のミニアルバムに関しては最初、少々いぶかしく聴きはじめたという部分もありました。bonobosも流行にのってしまうのか、という感覚で。しかし、聴き進めて、そして何度か聴くうちにそんないぶかしい感覚はふっとんでしまいました。

特に今回のアルバムでカッコいいのが1曲目「POETRY&FLOWERS」。いきなりエレクトロのサウンドから現代風なサックスの音色が鳴り響くナンバー。シティポップ、ジャズ、エレクトロ、ポップをbonobosが今風に解釈した名曲。まずはリスナーの耳に彼らの実力を知らしめる1曲になっています。

あとやはり注目したいのは彼らの代表曲「THANK YOU FOR THE MUSIC」のリメイク「THANK YOU FOR THE MUSIC-Nui!」。よりメロウにジャジーな雰囲気を加えたアレンジに生まれ変わっているのですが、元の楽曲が持っている魅力は変わりません。全く新しい・・・というよりは元の曲の魅力をきちんと抱えたまま、今の彼らの興味にアップデートされていました。

また言うまでもなくもともとはレゲエバンドである彼ら。今回のアルバムでもそのレゲエの要素はしっかりと感じることが出来ます。前述の「THANK YOU FOR THE MUSIC-Nui!」でもレゲエ的な横ノリのリズムは残っていましたし、「永遠式」はまさにそんなレゲエとシティポップを見事に融合させた楽曲。bonobos流のシティポップといえる内容に仕上がっていました。

わずか6曲入りのミニアルバムながらも、今のbonobosの実力がしっかりと伝わってくる傑作になっていました。今の時流にのりつつも、その中できちんと他のバンドとは異なる個性を感じる本作。あらためてbonobosの魅力を再認識した1枚でした。

評価:★★★★★

bonobos 過去の作品
Pastrama-best of bonobos-
オリハルコン日和
ULTRA
HYPER FOLK


ほかに聴いたアルバム

CRACKLACK/SCOOBIE DO

SCOOBIE DOの最新作はここ最近のシティポップの流れに沿ったような、比較的おとなしい抑え気味のサウンドに静かなメロディーラインが流れるポップス。彼らの持ち味であるファンキーな曲ももちろんありますが、全体的には控えめ。ここ最近のシティポップへのSCOOBIE DOからの返答ともとらえることが出来ますが、サウンドにしろ彼ららしいファンクなリズムにしろ、全体的にちょっと中途半端というイメージが否めないアルバムになっていました。

評価:★★★

SCOOBIE DO 過去の作品
ROAD TO FUNK-A-LISMO!
BEST OF CHAMP YEARS 2007~2016

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2017年11月 4日 (土)

とにかく明るいドリカム(・・・古い・・・)

Title:THE DREAM QUEST
Musician:Dreams Come True

約3年ぶりとなるドリカムのニューアルバム。まずはタイトルがいいですよね。「THE DREAM QUEST」。言うまでもなく国民的人気を誇るRPGゲーム「ドラゴンクエスト」から取ったタイトル。ジャケット写真はモンスターらしき生物が見受けられますが、あまりドラクエっぽくないのはちょっと残念ですが、ドリカムらしい楽しさがあふれています。

今回のアルバムに関しては、この楽しさあふれるジャケット写真に象徴されるように、楽しさあふれるハッピーな雰囲気の楽曲が並んでいます。イントロ的な「THE THEME OF THE DREAM QUEST」に続く「KNOCKKNOCK!」はホーンやストリングス入った彼女たちらしい軽快なポップソング。突き抜けるような明るさがあるのはいかにも化粧品のCMソングに起用された楽曲らしい感じがします。「あなたが笑えば」も恋人のふとした日常を描いたドリカムらしいラブソング。ある意味、90年代あたりから変わらないようなドリカムの王道路線です。

「愛しのライリー」はディズニー/ピクサー映画「インサイド・ヘッド」の主題歌ですが、ディズニー/ピクサー映画のイメージにピッタリのかわいらしいポップナンバー。さらに本編の事実上最後の曲となる「あなたのように」も、明るさとちょっと切なさを同居させたドリカムらしいスケール感あるポップチューンとなっています。

これだけ明るくて楽しいドリカムらしいポップスが並んだアルバムで、聴いていてこちらも楽しくなってくるようなアルバムになっています。ただ・・・正直言えばドリのアルバムとしてはちょっと物足りなさも感じてしまいました。一番の理由は明るい曲ばかりが並んでいて、ちょっとバリエーションに乏しかったかな、ということを感じた点でした。

確かに「秘密」「堕ちちゃえ」のようなちょっと哀愁感も漂うようなナンバーもあるにはあります。ただこの曲も他の曲にあわせてか明るさも感じられるメロディーとなってしまったため、インパクトは薄め。アルバム全体としては少々一本調子なイメージも否めませんでした。

また一方アルバムの構成についても疑問が。今回、配信シングルでありJR九州のキャンペーンソング「九州をどこまでも」が収録。この曲、楽曲自体は悪くないのですが、いかにもなキャンペーンソングのためアルバムの中で歌詞が若干浮いてしまっている印象も。この曲はアルバム未収録でもよかったのでは?

さらにシングル曲は「TDQ VERSION」としてリアレンジしつつ、アルバムの最後にボーナストラックとしてシングルバージョンも入れているのもアルバム全体として同じ曲が2曲入っていることになってしまい、助長な印象を受けてしまいました。こちらも後日、ベスト盤かなんかの企画盤に収録して今回のアルバムに無理に収録する必要はなかったような気がします。

そんな感じで楽曲としては決して悪い曲が並んでいるわけではないのですが、アルバム全体としてはちょっと薄味のように感じました。特に前作「ATTACK25」は王道路線とともに挑戦的な楽曲も多かっただけに、それに比べるとちょっとおとなしいような印象を受けます。ここ最近は全盛期再びを感じるような傑作が続いていただけにちょっと残念。ただ1曲1曲の出来は決して悪いわけではないので次回作に期待したいところです。

評価:★★★★

Dreams Come True 過去の作品
AND I LOVE YOU
DO YOU DREAMS COME TRUE?
LOVE CENTRAL
THE SOUL FOR THE PEOPLE~東日本大震災支援ベストアルバム~
ATTACK25
DREAMS COME TRUE THE BEST! 私のドリカム
DREAMS COME TRUE THE ウラBEST! 私だけのドリカム


ほかに聴いたアルバム

FLOW ON THE CLOUD/真心ブラザーズ

約3年ぶりとなる真心ブラザーズのニューアルバム。今回のアルバムは作詞作曲的にはYO-KING、桜井秀俊の曲がそれぞれ6曲ずつ収録されているのですが、YO-KINGボーカル曲がメインとなっており、かつ桜井曲も含めて骨太のブルースロックがメインとなる作品になっています。そのため、比較的さらっとしたポップ色の強いアルバムだった前作「Do Sing」に比べると、非常に泥臭い雰囲気のあるアルバムになっていました。個人的にはもうちょっと桜井ボーカルの曲が多かった方がよかったようにも思うのですが・・・。

評価:★★★★

真心ブラザーズ 過去の作品
DAZZLING SOUND
俺たちは真心だ!
タンデムダンデイ20
GOODDEST

Keep on traveling
Do Sing
PACK TO THE FUTURE

Suburban Baroque/カーネーション

毎回、非常に良質な大人のロックアルバムをリリースしてくるカーネーションですが、今回のアルバムも安定の仕上がりぶり。基本的にメロディアスなギターロックを主軸にしつつ、シティポップ、ファンク、AOR、ラウンジなどの要素を自然に入れてきて、かつアルバム全体に統一感を持たせてくるあたり、大人の余裕も感じます。Disc2としてインストバージョンを収録しているあたりもサウンドに関する自信を感じます。ちょっと気になったのが「Suspicious Mind」がアレンジ的にまんまoasisなのですが・・・イントロなんてモロですし・・・。

評価:★★★★★

カーネーション 過去の作品
Velvet Velvet
UTOPIA
SWEET ROMANCE
Multimodal Sentiment

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