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2017年12月 3日 (日)

ありのままを?

Title:Thrill It All
Musician:Sam Smith

前作でありデビューアルバムである「In the Lonely Hour」が大ヒットを記録。一躍イギリスの国民的シンガーとなったSam Smith。売上的な側面のみならず、グラミー賞でも6部門にノミネートし、最多4部門を受賞という高い評価を受けた彼。そしてリリースされた待望のニューアルバム。もちろんイギリスのアルバムチャートで1位を獲得した他、前作では2位に留まったアメリカビルビードチャートでも見事1位を獲得するなど、予想通りの大ヒットを記録しています。

そんな期待を一身に集めたニューアルバムなのですが、これがその期待にしっかりと応えた傑作アルバムとなっています。楽曲的にはあまり派手ではありません。バリエーションもあまり多いとは言えません。全体的にバラードナンバーがメインとなった聴かせるアルバムになっているため、むしろ地味でかつ単調という印象すら抱きかねないアルバムとなっています。しかし、全10曲39分という長さながらもリスナーをだれさせることなく一気に聴かせ切る美メロと彼のボーカルが非常に魅力的な作品になっています。

アルバムはピアノとストリングスをバックに伸びやかな歌声を聴かせるバラードナンバー「Too Good At Goodbyes」からスタートします。派手さはなくむしろ「暗い」という印象すらある曲をあえて1曲目にもってくるあたりに彼の楽曲に対する自信を感じることが出来ます。前半ではレトロなソウル風のバラード「One Last Song」が耳に残る他、ピアノのみをバックに歌いあげる「Burning」は特に彼のボーカリストとしての歌唱力と表現力を感じることが出来ます。

後半はこのアルバムでは珍しい、非バラードナンバーである「Baby,You Make Me Crazy」も魅力的。ホーンセッションが入るソウルナンバーなのですが、ちょっと切なさを感じるメロディーラインも聴かせます。また、女性シンガーイエバとのデゥオ「No Peace」も大きなインパクトに。イエバのボーカルもとても力強いものであり、どちらもハイトーンボイス同士のデゥオとなるのですが、それぞれが個性を発揮した魅力的なデゥオとなっています。

今回、Special Editionで聴いたのですがボーナストラックも非常に魅力的。哀愁感たっぷりのメロディーラインが魅力的な「Nothing Left For You」、さらになぜかボーナストラックに入っているタイトルチューン「The Thrill Of It All」はこれまたピアノの演奏をバックに彼の歌声の魅力をこれでもかというほど聴かせるナンバーになっています。

収録曲のほとんどがバラードナンバーという内容ながらも彼の魅力が存分に発揮された傑作アルバム。ボーナストラックを含めると全49分という長さながらも最後まで全く飽きることがありませんでした。高い評価を受けた前作を受けての新作ながらも、その期待を裏切ることなく、どころか期待以上の傑作アルバムをリリースしてきた結果となりました。

今回のジャケット写真は彼の正面を向いた顔の写真をのせただけのシンプルな内容。非常に力強い視線も印象的なのですが、それだけに彼のありのままの姿をアルバムに反映させたということが、このジャケット写真にも反映されているような感じがします。余談ですが、彼のボーカルを聴いていると、ちょっと平井堅に近いものも感じました。特にピアノバラードの出だしの節回しあたりがちょっと似ているような・・・。でもルックスはむしろ山田孝之に似ているような・・・。

評価:★★★★★

Sam Smith 過去の作品
IN THE LONELY HOUR


ほかに聴いたアルバム

Almost True-EP/THE STRYPES

Almosttrue

配信限定でリリースされた4曲入りのEP盤。ルーツ志向の強かったガレージバンドだった彼らですが、直近のアルバム「SPITTING IMAGE」はルーツ志向が薄くなって単なるギターロックバンドになってしまっていました。今回のEPもパッと聴いた感じでは前作同様、平凡なギターロック・・・と思ったのですが、楽曲をよくよく聴くとスタイルとしてはシンプルなギターリフ主導のロックンロール路線は貫かれています。サウンドのバランスとして歌を前に持ってきすぎていてバンドサウンドが後ろに下がってしまっており、結果として「平凡な音」になってしまっている印象が・・・。サウンドのバランスを変えるとかなり違った印象を受けたのかもしれませんが・・・。最後に収録されているのはTHE WHOのおなじみ「Summertime Blues」のカバーをライブ収録した楽曲なのですが、こちらは初期の彼らを思い起こさせるような迫力あるガレージロック。そう、これこそがTHE STRYPESの魅力だよ!と思ってしまうナンバー。オリジナル曲もこういう曲をやってほしいのですが・・・。

評価:★★★

THE STRYPES 過去の作品
BLUE COLLAR JANE
SNAPSHOT
HARD TO SAY NO EP
LITTLE VICTORIES
LIVE IN TOKYO 2015
SPITTING IMAGE

On a Distant Shore(邦題 ラスト・レコーディング~彼方の岸辺で)/Leon Russell

昨年11月に亡くなったレオン・ラッセルによる遺作。しんみりとしたムーディーなポップチューンがメイン。これが最期になることを意識したのか、スタンダードポップス志向の渾身込めたポップチューンが並んでおり、美しくもインパクトあるメロディーラインの連続にシンガーソングライターとしての才能をあらためて実感できる名曲が並んでいます。ゆっくりと聴き入りつつ、失われた偉大な才能の片りんに触れることが出来る1枚でした。

評価:★★★★★

Leon Russell 過去の作品
The Union(Elton John&Leon Russell)

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アルバムレビュー(洋楽)2017年」カテゴリの記事

コメント

サム・スミスの「Thrill It All」は彼の本来の魅力であるソウルフルなハイトーン・ボイスを存分に生かしきった楽曲ばかりですね。

投稿: ひかりびっと | 2019年4月 1日 (月) 17時30分

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