超ベテランパンクバンドのベスト盤
Title:ATOMIC GARDEN
Musician:the原爆オナニーズ
おそらくそのミュージシャン名だけでかなりのインパクトがあるだけに、名前だけは知っているという方も少なくないかもしれません。80年代から活動を続けるパンクバンドthe原爆オナニーズ。名古屋を中心に活動を続けるこのバンドは数多くのミュージシャンからリスペクトを集め、元Blankey Jet Cityの中村達也やHi-STANDARDの横山健も一時期、メンバーとして名を連ねていました。
本作はそんな彼らが、インディーズレーベル、アルケミーレコードに所属していたころの作品を集めたベストアルバム。具体的には1989年にリリースされた「GENBAKU HEAD QUARTERS」から1997年にリリースされた「STEP FORWARD」の頃の作品を集めたベスト盤です。
1時間14分というフルボリュームながらも26曲入りという今回の作品。20年以上前の楽曲を集めたアルバムなのですが、いま聴いても全く古臭さを感じることはありません。疾走感あり、ノイズを思いっきり響かせるギターを中心とした分厚いバンドサウンド。ボーカルTAYLOWのがなり声でのシャウト気味でのボーカル。ある意味、実にパンクロックらしい焦燥感と迫力を感じさせる演奏が続きます。
正直言って全26曲、楽曲のバリエーションはほとんどありません。基本的にパンクロック一本。あえて言えば「ピ・ポ・パ」のような、ちょっと複雑なドラミングを聴かせる曲があったり、「G・H・Q」のようなちょっと抑え気味の曲があったり、また「Step Forward」のような前向きな曲があったりといったところが耳を惹きました。
また楽曲的には「日本のパンク」といってよくありがちな、いわゆる行進曲のリズムを持ったパンクロックではありませんし、わかりやすいメロディーラインを持ったメロディアスパンクでもありません。もちろん、上で「前向きな曲」と書いたのですが、2000年代に流行ったような青春パンクともほど遠いものです。
そういう意味では楽曲的には決して聴きやすいものではありません。楽曲的にも力強いバンドサウンドとボーカルのシャウトを主軸として展開していくような構成で、ポップスさはあまりありません。ただ間違いなくパンクロックというジャンルの重要なポイントである、ミュージシャンの叫びは伝わってくる楽曲が並んでいます。
だからこそ、1時間以上の内容で楽曲のバリエーションがあまりないにも関わらず、最後までほとんど飽きることなく楽しむことの出来るアルバムになっていました。今の日本のミュージックシーンでは逆に珍しくなってしまった、いい意味でパンクロックらしいパンクロックなアルバム。パンクロックが好きならとりあえずはチェックしておきたい1枚です。
評価:★★★★★
ほかに聴いたアルバム
YOUTH/日暮愛葉
Seagull Screaming Kiss Her Kiss Herとしても活動する日暮愛葉の8年ぶりとなるソロアルバム。全10曲中9曲が打ち込みというエレクトロ色を出したアルバムになっています。ただ、全編エレクトロで彼女のイメージが一新・・・といった感じではなく、ローファイで音数を絞ったサウンド構成は相変わらず。ノイジーなガレージサウンドもきちんと鳴っており、いままでの彼女のイメージの延長線上にエレクトロサウンドを入れてきたといったイメージのアルバムになっています。良くも悪くも地味な印象は否めず、インパクトが薄めなのはちょっと残念でしたが。
評価:★★★★
BINARY/WONK×THE LOVE EXPERIMENT
ここ最近、特にジャズシーンから注目を集めている新進気鋭のエクスペリメンタル・ソウルバンドと、ニューヨークを拠点に活動するこちらも注目株のソウルバンドTHE LOVE EXPERIMENTのコラボアルバム。エレクトロなトラックをメインに、ソウルやジャズ、HIP HOPを変幻自在に行きかうサウンドは魅力的だし、この自由度の高さが今時かも。ただ、個人的にはもうちょっとパンチの利いた、コアになるようなサウンドが欲しかったような。全体的にはメロウなボーカルの歌モノが目立つアルバムに仕上がっており、いい意味でポップス感覚も強く、聴きやすいアルバムになっていました。
評価:★★★★
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