チャメ~!
Title:護得久栄昇大全
Musician:護得久栄昇
あきらかにマジックで書いた太眉がインパクトの彼。今、沖縄で話題沸騰中の護得久流民謡研究所会長、護得久栄昇。そのデビューアルバムがついにリリース。個人的にはネット上でその話題を聴き、You Tubeで動画を見てはまってしまい、今回、このアルバムを聴いてみました。
まあ、ジャケット写真を見ればわかる通り、本当に「護得久流民謡研究所」という研究所があるわけではなく、彼は沖縄で活躍するハンサムというお笑いコンビの金城博之がコントで演じるキャラクター。沖縄では「そんな民謡教室の師範、いるよね」と受け止められるようなキャラクターをデフォルメして演じており、大うけしているそうです。ちなみに今回の記事のタイトルになっている「チャメ!」は彼の決めセリフ。他にも「わかるよね」「チンダミするよ」などインパクトある決まり文句がインパクトありまくりなキャラクターです。
そんなコントのネタキャラによるアルバムなので、基本的にはコミックソングが並んでいる訳ですが、ただし、楽曲自体はかなり本格的。このアルバムのキャッチフレーズが「本人以外、すべて本物」となっており、コミックソングとして楽しめる一方、しっかりと沖縄民謡のアルバムとしても楽しめる内容となっています。
先行配信となっている代表曲「愛さ栄昇節」は彼の決めセリフ「チャメ」を多用しつつ、三線の音色と太鼓のリズムが印象に残る本格的な民謡になっていますし、「愛さコーヒー節」は沖縄民謡の前川守賢をフューチャー。「護得久音頭」はネタなしの楽しく踊れる音頭。笑いの要素を込めつつも、音楽的にも楽しめる楽曲が並びます。
ネタの方は上に書いた通り、沖縄の民謡教室の師範をデフォルメしたキャラクター。沖縄名物のレモンケーキの「あるある」ネタを詰め込んだ「れもんけーき節」など、沖縄に関するネタがメイン。一般的にお笑いネタは対象が狭ければ狭いほど受けやすい傾向にあるのですが、ストレートに沖縄ネタを詰め込んでくる護得久栄昇が沖縄で受けているというのはよくわかります。
ただ、じゃあ沖縄県民以外にとって彼のネタがわからないかというとそんなことは全然ありません。例えば彼の決まり文句に「わかるよね」というものがあるのですが、これは「私の言いたいことは私が何も言わなくてもわかるよね」という意味であり、まさに今年の流行語大賞ともなった「忖度」そのもの。また、同じく彼がよく使うセリフとして「たーがしーじゃか」というものがあります。これは沖縄の方言で「誰が年上か?」という意味。これも「私が年上なんだから文句言わず言うことを聞け」という意味で、これも体育会系の組織でよくありがちな話。沖縄県民以外にとっても、その意味がよくわかるようなセリフではないでしょうか。
ここ最近話題となったコミックソングのアルバムといえば、ピコ太郎の「PPAP」やオリエンタルラジオが中心となって結成されたRADIO FISHなどがありました。ただ、ピコ太郎も音楽的に評価を受けたりしましたが基本的にはネタ中心。逆にRADIO FISHは音楽的にはほとんど「ネタ」はありませんでした。そう考えるとこのアルバムは、ネタも十分詰まっている一方、音楽的にも本格派。ネタと音楽のバランスが非常によく取れているアルバムだと思います。沖縄民謡のアルバムとしても楽しめますし、内容に思いっきり笑えますし、沖縄県民以外にとっても十二分に楽しめるアルバムです。チャメ~!
評価:★★★★★
ほかに聴いたアルバム
CHOCOLATE/ちゃんみな
デビュー当初、現役女子高生ラッパーとして話題となったちゃんみなの、ファーストアルバム「未成年」に続く8曲入りミニアルバム。楽曲としてはラップというよりも、いまどきのR&B的な雰囲気が強い内容。比較的シンプルなエレクトロトラックも特徴的。10代の女の子の微妙な心境をつづったラップも印象的。日本には女性ラッパーというのはまだまだ少ないので、さらなる成長と活躍を期待したいところ。さらなる飛躍の可能性も感じられるアルバムでした。
評価:★★★★
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コメント
沖縄民謡としての本格ぶりとユニークなネタのバランス感覚が非常に優れていてコミックソングとしても民謡としても非常にレベルの高い仕上がりになっていますね。
投稿: ひかりびっと | 2018年11月19日 (月) 21時14分
>ひかりびっとさん
ご感想ありがとうございました。
投稿: ゆういち | 2018年11月22日 (木) 23時53分