新たな発見が・・・
Title:Vu Ja De
Musician:細野晴臣
前作「Heavenly Music」がカバーアルバムだったので、新曲を含むオリジナルアルバムとしては「HoSoNoVa」以来6年ぶりとなるニューアルバム。奇妙な「Vu Ja De」というアルバムタイトルはお気づきの通り、「De Ja Vu」をさかさまにした言葉。ただ、彼の造語ではなく英語として使われている言葉のようで、「今まで見えていたものが何かのきっかけでまったく違うものに見える」という、「デジャヴ」とは逆のことを指す言葉だそうです。
今回のアルバムは全2枚組という内容。ただフルボリュームの内容ではなく、2枚あわせても1時間弱という十分1枚のアルバムとして収録できる内容になっています。ただ、Disc1は古いポップソングのカバー、Disc2は自らのオリジナル作という構成になっており、オリジナルとカヴァーではその世界観が全く違うということで2枚のCDにわけたそうです。
そして今回のアルバムタイトルは、Disc1のカヴァー曲を演奏した時の気持ちに沿った言葉だそうです。カントリーやブルース、あるいはスタンダードポップスやジャズといった古き良き時代のポップソングをカバーした本作。意外なことに最近になって知った曲も収録されているとか。また、あるいはカヴァーしてはじめて発見したようなことも少なくなく、まさに「Vu Ja De」の意味にピッタリ来るような内容になっていたようです。
一方Disc2はオリジナル曲を収録したアルバムになっているのですが、他のミュージシャンや映画・テレビなどへの提供曲やセルフカバーなどが大半となっており、今回のアルバムにあわせての純然たるオリジナル曲は1曲のみということ。既発表曲を並べてあらためて聴くことによるリスナーにとっても「Vu Ja De」を味わえる、ということなのでしょうか。
そして確かに今回のアルバム、Disc1とDisc2でかなり雰囲気が異なります。Disc2もルーツ志向の楽曲が多いものの、様々な媒体への提供曲を集めたということもありバラエティー豊富。良くも悪くも雑多な雰囲気がありますが、Disc1はアコースティックでシンプル。暖かさを感じるカバーということで統一感があります。CDを2枚組としたからこそ、異なる雰囲気を味わえるアルバムになっていました。
ただ、Disc1にも2にも共通項があって、どちらも非常に肩の力の抜けたポップソングに仕上がっているということ。カヴァーにしても原曲に比べてどうこうという変な気負いはなく、ただシンプルに暖かい雰囲気でカヴァーしています。Disc2についてももともとの提供媒体関係なく、ただただシンプルに彼の楽曲を並べた内容。結果「2355氏、帰る」といったような(Eテレの「2355」の使用曲ですね)提供媒体にしっかり紐づいたような曲も同じ並びで収録されています。しかし、にもかかわらずDisc2は統一感も覚えるのは、そこは細野晴臣らしいサウンドがしっかりと底辺で流れているのでしょう。1枚のオリジナルアルバムとして全く違和感ない出来でした。
良い意味で力が抜かれているベテランの彼ならではの傑作アルバム。タイトル通り、リスナーにとっても新たな発見のあるかもしれません。まずはCD2枚、異なる世界観を楽しみたい作品でした。
評価:★★★★★
細野晴臣 過去の作品
細野晴臣アーカイヴスvol.1
HoSoNoVa
Heavenly Music
ほかに聴いたアルバム
YUKI RENTAL SELECTION/YUKI
ソロデビュー15周年を迎える彼女。本作はそんな彼女がソロでリリースした8枚のアルバムから、それぞれ1曲ずつをピックアップして収録した、タイトル通りCDレンタル専用のベストアルバム。ベスト盤といえば内容的に2枚組3枚組と膨れ上がるのが最近の傾向の中、こちらはわずか8曲入りと潔い内容になっています。ただ、それだけにYUKIらしさが凝縮されたベスト盤になっており、どの曲もストリングスやピアノ、アコギといったアコースティックなサウンドを美しく聴かせる爽快なポップチューンがメイン。YUKIといえばソロデビュー直後はその方向性を見極められず迷走していたイメージがあるのですが、こうやって代表曲を並べられると、初期の作品からちゃんとYUKIらしさは出ていたんだな、ということにも気が付かされます。レンタル限定ですが、なにげに初心者にはピッタリの内容になっていました。
評価:★★★★★
YUKI 過去の作品
five-star
うれしくって抱きあうよ
megaphonic
POWERS OF TEN
BETWEEN THE TEN
FLY
まばたき
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