良い意味で安定感が出来てた新作
Title:ミラージュ・コラージュ
Musician:チャラン・ポ・ランタン
チャラン・ポ・ランタンのニューアルバムはフルアルバムとしては約2年ぶりとなる作品。ただ「約2年ぶり」とはいっても今年1月に「ほぼフルアルバム」として「トリトメモナシ」をリリースしていますし、昨年9月にはカバーアルバムもリリースしていますし、むしろリリーススパンとしてはかなり短いものを感じます。まさにミュージシャンとして脂にのっているといった感じでしょうか。
今回のアルバム、「ミラージュ・コラージュ」という韻を踏んだタイトルになっていますが、これは「ミラージュ=蜃気楼の中に漂う、人々が漠然と持つ一見叶わそうな『夢』のメロディとメッセージを捕まえてこの作品にコラージュしたい」という意味だとか。もっとも基本的な路線はいつものチャラン・ポ・ランタンと同じ路線なのですが、相変わらずの彼女たちらしい、聴いていて楽しくなってくるようなポップソングが並んでいます。
さて本作はメジャーデビュー後3作目、「トリトメモナシ」を含めると実質4作目のアルバムとなる訳ですが、良い意味でミュージシャンとしての安定感を覚える作品になっています。バルカン音楽やシャンソンに歌謡曲の要素をほどよく混ぜる彼女たちのスタイルも完全に定着していますし、ユーモラスでコミカルながらも日常をちょっと皮肉めいて描写する歌詞というスタイルも安定しています。
例えば「お茶しよ」ではシャンソン風、「ダンス・ダンス」では同じくシャンソンに歌謡曲的な要素を加えたスタイル、ラストを飾る「憧れになりたくて」も彼女たちらしいバルカン音楽のスタイル。ただ一方では「ストロベリー・ムーン」はモータウンビートも入れたかわいらしいダンスポップに仕上げていますし、「夢を運んだアヒルの子」もお祭りのリズムを入れてきたりとなにげに幅広い音楽性を加えてきているのもおもしろさを感じます。また「あの子はジンタ」はタイトルの通り、大正期の大衆音楽ジンタを取り入れたユニークな楽曲。エレクトロサウンドやスウィングジャズまで取り入れた前作「トリトメモナシ」の方が楽曲のふり幅はありましたが、今回は彼女たちらしい楽曲の中にさりげなく様々な音楽的な要素が加わっていたように感じます。そしてこのさりげなく加わる音楽のバリエーションが、彼女たちの音楽的素養の広さを感じさせてくれました。
また歌詞も相変わらずユニークで聴いていて楽しくなる歌詞の連続。「お茶しよ」はとかくむれたがる「女子」を皮肉的にコミカルに描写していますし、「いっくよー!」も働く人への応援歌をユニークに描いています。また、タイトルがユニークな「リンゴはスター」という曲も・・・。今回、物語調の曲がなかったのはちょっと残念ですが、彼女たちらしいコミカルな歌詞の世界を楽しむことが出来るアルバムになっていました。
上にも書いたのですが、良い意味で安定感の出来てた傑作アルバム。ミュージシャンとしての方向性がある程度完成されたので次はどのような方向に進むのかちょっと気になる部分はあるのですが・・・とにかく聴いていて楽しいワクワクするアルバムでした。
評価:★★★★★
チャラン・ポ・ランタン 過去の作品
テアトル・テアトル
女の46分
女たちの残像
借り物協奏
トリトメモナシ
ほかに聴いたアルバム
ROLL ON 48/フラワーカンパニーズ
通算16枚目となるフラカンの新作。タイトルはご想像通り、メンバーの年齢から取られたようですね。楽曲はいつもの彼ららしい骨太のロックナンバー。アラフィフ世代の彼ららしい、ある種の達観した部分すら感じる人生の応援歌「人生Roll On」や「最後にゃなんとかなるだろう」みたいな歌詞が印象的な曲も。ただ、目新しさやインパクトは薄く、いいアルバムとは思うけど絶賛するには何かが足らないような・・・という内容になっています。そこも含めてフラカンらしいアルバムと言えるのかもしれませんが・・・。
評価:★★★★
フラワーカンパニーズ 過去の作品
フラカン入門
ハッピーエンド
新・フラカン入門
Stayin' Alive
夢のおかわり
CATALOGUE 1987-2016/BUCK-TICK
デビュー30周年を記念してリリースされた2枚組となるオールタイムベストアルバム。BUCK-TICKといえばここ最近、いわば「大ヒット曲」というものはないものの、コンスタントに人気を維持しているバンド。今回のベスト盤で彼らの曲を聴くと、BUCK-TICKというミュージシャンイメージを維持しつつも時代時代によって楽曲のタイプを微妙に変化させており、この時代に対応させる柔軟さが、彼らが30年にわたって人気バンドであり続けられた大きな要因なのかな、と感じました。
ただ今回ファン投票による選曲なのですが、おそらく一般的に彼らの曲として知られているような「JUST ONE MORE KISS」や「悪の華」は選外。こういう曲は確かにファン投票では漏れがちではあるのですが、ベスト盤というのは入門盤を兼ねていることを考えると、こういう一般的な代表曲はやはり収録しておくべきではなかったかな、ということを感じてしまいます。ファンではないので詳しくは知らないのですが、選曲も比較的マニアックなようですし、ちょっとそこらへんは疑問に感じてしまう部分もあるベスト盤でした。
評価:★★★★
BUCK-TICK 過去の作品
memento mori
RAZZLE DAZZLE
夢見る宇宙
或るいはアナーキー
アトム 未来派 No.9
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