今年も恒例の
Title:2018-Classic Blues Artwork from the 1920s Calendar
また今年も恒例のブルースカレンダーの季節がやってきました。毎年、アメリカのブルース・イメージ社という会社がリリースしているカレンダー。ちょうどLP盤の大きなのカレンダーで、広げるとLP盤2枚分の大きさ。下半分はカレンダーになっていて、著名なブルースシンガーの生誕日や逝去日が記載されており、一方上半分は戦前ブルースの広告が掲載。この戦前ブルースの広告画像がなかなか味があり、毎年、楽しませてくれます。
このブルースカレンダー、目玉となるのはカレンダー以上に毎年ついてくる付録のCDの方。全24曲の内容のうち、半分の12曲はカレンダーについてくる広告の内容の楽曲。そして残り12曲はいわばボーナストラック。いずれも戦前ブルースの貴重な音源が収録されています。
そして毎回、この付録CDには最近発見されたばかりのレア音源が収録されて話題となります。今回は現存盤が最近発見されたJab Jones and The Memphis Jug Bandによる「My Love Is Cold」と「Poor Jab Blues」の2曲。The Memphis Jug Bandはご存じジャグ・バンド。ジャグバンドとはジャグ=瓶や洗濯板、ミュージックソーなど身近な日常品を楽器に仕立てて演奏するバンドのこと。本来は楽器ではない日常品から生まれる音なのですが、非常に軽快で楽しい音を聴かせてくれます。このCDに収録している2曲もワクワクするような楽しい音が耳を惹く一方、メロディーラインはどこか物悲しさを感じさせ、そのギャップがおもしろい曲に仕上がっています。
このThe Memphis Jug Bandは戦前ジャグバンドの代表格的バンド。今回のCDには、この2曲の他にCharley Nickerson and The Memphis Jug Band名義による「Going Back To Memphis」も収録。そのため特にボーナストラックではジャグバンドによる演奏が目立つ構成になっていました。
他にもワンコードで進みながらもそのギターの音色が印象に残るCharley Patton「Mississippi Boweavil Blues」、力強いボーカルが耳を惹く戦前ブルースの代表的なシンガー、Blind Lemon Jeffersonによる「Weary Dogs Blues」、男女の掛け合いがユニークなKansas Joe and Memphis Minnie「Goin' Back To Texas」など聴かせる楽曲の連続。有名どころから知る人ぞ知る的なシンガーまでそろっており、今回もまたブルースファン、特に戦前ブルースが好きならたまらない選曲となっています。
ただ、これは戦前ブルースの宿命でもあるのですが、やはり音はノイズがひどい曲も多く、またやはり戦前ブルースはちょっとマニアックなジャンルであるため万人にお勧めという訳にはいかないのもいつも通り。ただ、シンプルでブルースのコアな部分だけ抽出したような楽曲はやはりとても魅力的。カレンダーにつかわれている広告素材はなかなかおしゃれですし、興味ある方は是非。
評価:★★★★
2013-Classic Blues Artwork from the 1920s Calendar
2014-Classic Blues Artwork from the 1920s Calendar
2015-Classic Blues Artwork from the 1920s Calendar
2016-Classic Blues Artwork from the 1920s Calendar
2017-Classic Blues Artwork from the 1920s Calendar
ほかに聴いたアルバム
Dedicated to Bobby Jameson/Ariel Pink
アメリカLAのインディーシンガーAriel Pinkの新作は60年代に活躍していたミュージシャン、ボビー・ジェームソンに捧げるアルバム。ローリングストーンズやフランク・ザッパともコラボをしていたそうですが、絶頂期にドラッグにおぼれて転落。35年に及ぶ隠遁生活を経て、自らの悲劇的な人生の物語を語った2007年の自叙伝に心揺さぶられた彼が、このトリビュートアルバムを作り上げたそうです。
アルバムの前半はかなりローファイな内容。はっきりいって力が抜けすぎていてちょっとグダグダ感もあり、あまりおもしろくありませんでした。後半もローファイな内容になっていましたが、彼持ち味のポピュラーセンスが生かされた内容に。楽曲もAORからバブルガムポップ、80年代風から60年代風などバラエティー富んだ作品が並んでいて楽しめる構成になっていました。
評価:★★★★
Ariel Pink 過去の作品
Mature Themes(Ariel Pink's Haunted Graffiti)
Pom Pom
Look What The Blues Has Done For Me/Arthur Adams
60年代から70年代にかけてクルセイダーズやジェイムス・ブラウン、ジャクソン5などなど数多くのミュージシャンのセッション・ギタリストとして活躍してきたアーサー・アダムスによるオリジナルアルバム。2枚組となっていて、1枚目は新曲、2枚目は70年代から80年代の彼のアルバムからセレクトしたベストアルバム。新曲の方は、よくありがちなギターブルースといった感じで面白みはないのですが、良かったのが2枚目。ソウルからファンク、バラードにポップスとセッションギタリストらしいフットワークの軽いバリエーションに富んだ内容が魅力的。基本的にこちらも目新しいものはないのですが、軽快でファンキーな楽曲の数々が魅力的なアルバムになっていました。
評価:★★★★
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