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2017年12月24日 (日)

oasisのイメージから離れて

Title:Who Built the Moon?
Musician:Noel Gallagher's High Flying Birds

これがソロとなってから3作目となる元oasisのお兄ちゃんことノエル・ギャラガーのソロプロジェクト、Noel Gallagher's High Flying Birds。まず今回のアルバムリリースにあたり大きな話題となったのが先行シングル「HOLY MOUNTAIN」でした。バンドサウンドにブリブリのホーンセッションに軽快な笛の音色が加わる分厚い音の祝祭色豊かなポップチューン。バンドサウンドメインだったoasis時代にはまず見受けられなかった楽曲に、oasis時代からのファンは驚かされました。

他にも今回のアルバムは様々なサウンドを導入し、oasis時代には聴かせることのなかったタイプの楽曲が並んでいたのが大きな特徴でした。例えば「IT'S A BEAUTIFUL WORLD」は打ち込みのリズムにエフェクトのかかったボーカルのサイケ風な楽曲。「BE CAREFUL WHAT YOU WISH FOR」はドリーミーな雰囲気が楽曲全体に流れるダークなナンバーになっていますし、「IF LOVE IS THE LAW」は鈴の音も加わった分厚いサウンドにノエル流ウォール・オブ・サウンドとすら形容できそうなポップチューンになっています。

今回のアルバム、ノエルのこのような方向性に関してまず感じてしまうのはoasis時代のイメージからの決別ということでしょう。今回、プロデューサーとしてデビッド・ホルムスという、テクノ、エレクトロ系のDJを起用している点からもそれはうかがえます。ただもっとも、oasis時代のスタイルを否定しているという感じではありません。例えばタイトルチューンになっている「THE MAN WHO BUILT THE MOON」はサウンドこそ非常に分厚くサイケ色強いナンバーとなっていますがメロディーラインは完全にoasis(というかメロディーラインはどこか名曲「Wonderwall」を彷彿とすらさせます)。

そういう意味では「決別」というよりも、oasisのイメージに固執されずに新たな一歩を進み始めたという言い方の方が適切かもしれません。またボーナストラックとして収録されている「DEAD IN THE WATER」「GOD HELP US ALL」はアコースティックなサウンドをバックにノエルらしい美メロを聴かせる、ある意味旧来のファンがノエルに求めているようなスタイルを体現化したような作品になっています。こういうタイプの曲を作れなくなった、作らなくなったというよりは今回のアルバムのスタイルに合わなかったという判断でしょうか。次回作はまた、oasis時代からのノエルのイメージに沿った楽曲もお目にかかれるかもしれません。

さて元oasisといえば、先日、弟のリアム・ギャラガーも初のソロ名義のアルバムをリリースしたことでも話題となりました。ここのサイトでも紹介しましたが、こちらはそのままoasis時代のイメージを引きずるようなナンバー。同時期にリリースされた2枚のアルバムですが、内容は対照的。個人的にはどちらがよかったかと言われると、やはりノエルのアルバムの方がよかったかな、と思います。

ただ、全英アルバムチャートの初週売上では、どちらも1位を獲得したもののノエルのアルバムが7万8千枚を売り上げたのに対して、リアムのアルバムは10万3千枚の初動売上を記録。リアムのアルバムは初のソロアルバムということでご祝儀的な部分があったと思うのですが・・・やはり多くのリスナーはoasisらしいスタイルをギャラガー兄弟に求めているのかなぁ、とちょっと寂しくも感じれました。

売上的にはちょっと残念な部分はあったのですが、アルバムの内容的にはノエルのソングライティング能力が存分に発揮された傑作アルバムだったという点は間違いありません。新しいスタイルも彼のソングライティングの才という下地があったからこそ築き上げることが出来たもの。まだまだこれからも傑作をリリースしてくれそうです。

評価:★★★★★

NOEL GALLAGHER'S HIGH FLYING BIRDS 過去の作品
NOEL GALLAGHER'S HIGH FLYING BIRDS
CHASING YESTERDAY

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