Title:Plastic Tree Tribute~Transparent Branches~


ヴィジュアル系バンドPlastic Treeのデビュー20周年を記念して初となるトリビュートアルバムがリリースされました。Plastic Treeといえばデビュー20年という経歴からもわかるように90年代のヴィジュアル系ブームの中でデビューしたベテランバンド。ただ彼らが異質なのはその音楽性。ヴィジュアル系バンドというとほとんどがへヴィメタやハードロックから直接的、あるいは間接的な影響を受けたバンドがほとんどな中、彼らは80年代のシューゲイザー系バンドや90年代のオルタナ系ロックバンドからの影響を強く受けています。そのため以前より、普段はあまりヴィジュアル系を聴かないようなリスナー層にも高い支持を受けていたバンドでした。
今回のトリビュートアルバムに関してもそんな彼らの音楽性を反映したような幅広いミュージシャンが参加しています。MUCC、LM.C、R指定といったヴィジュアル系バンドも参加している一方、People In The Box、PELICAN FANCLUB、THE NOVEMBERSといったオルタナ系バンドも数多く参加。氣志團、相川七瀬、さらには声優の緒方恵美といったメンバーも見受けられます。
Plastic Treeの音楽は基本的にオルタナ系、シューゲイザー系の影響をダイレクトに受けたような楽曲が多い一方、有村竜太朗の歌い方はヴィジュアル系のそれ。かなりネチッこい歌い方をしています。この歌い方に強く癖があり、良くも悪くもリスナーを選別する要素になっていました。
ただ今回のトリビュートアルバムはシンプルなアレンジ、歌い方となり結果としてPlastic Treeオリジナルではちょっと隠れていたような彼らの曲の新たな魅力が表に出来てカバーが多くありました。特に印象的だったのはPELICAN FANCLUBの「水色ガールフレンド」。アレンジ自体は非常にシンプルなギターロック路線になっていたのですが、その結果、暖かい雰囲気のメロディーと歌詞が前に出てきて、こんな雰囲気の曲だったんだ、ということにあらためて気が付かされました。曲の雰囲気としてはむしろGOING UNDER GROUNDあたりがカバーしてもかなりピッタリしそうな内容でした。
People In The Boxがカバーした「エンジェルダスト」もちょっと朴訥な感じのボーカルにもピッタリとマッチ。逆に「梟」はa crowd of rebelionによりハードコア調のカバーに仕上がっていたのですが、これはこれで魅力的なカバーに仕上がっていたのですが、これはそれだけPlastic Treeの曲の持つメロディーや歌詞といった土台の部分がしっかりしていた証拠でしょう。
そんな感じでプラトゥリの楽曲の基礎がしっかりしているからこそ、各々のミュージシャンがしっかりと自らのフォーマットにのせて、それぞれのスタイルでカバーしても、それぞれが楽曲の魅力をしっかりと伝えることが出来たのでしょう。例えば「サイレントノイズ」をカバーした相川七瀬は完全に90年代J-POP風、MUCCの「3月5日。」はMUCCらしい楽曲に仕上がっていますし、清春がカバーした「メランコリック」も完全に清春らしい曲に仕上がっています。
ちょっと意外性があったのが「プラットホーム」をカバーした氣志團。ノイジーなギターサウンドを前に出したギターロック色が強いカバー。「バンド」色を前に出すことの少ない氣志團ですが、ロックバンドとしての実力を感じられるカバーに仕上げてきていました。
そんな訳でカバー曲を通じてPlastic Treeの楽曲の持つ魅力を再認識することが出来たトリビュートアルバムでした。最後はPlastic Tree本人たちが登場し「ゼロ」を披露。こちら、10年前、2007年の日本武道館でのライブの際、会場限定で配布された幻の曲だとか。そういう意味でもファンにとってもうれしいトリビュートアルバム。こういうファンサービスもうれしいですね。
評価:★★★★★
ほかに聴いたアルバム
問題ない/MONSTER大陸


新メンバーとして女性ドラマーのcheetaが加入し、新生MONSTER大陸となった彼らの2年ぶりとなるニューアルバム。ルーツ志向でブルースやソウル、ファンク色の強いロックは文句なしでカッコよさを感じる一方、以前と同様、メロディーにもバンドサウンド自体にもいまひとつパンチが足らないというか、物足りなさを感じてしまい、もう一歩「惜しい」アルバムが続いています。個人的にはいろいろな意味で振り切れてしまえばおもしろいと思うのですが・・・。
評価:★★★★
MONSTER大陸 過去の作品
上陸
marry
SOUND of SURPRISE/JIGGER'S SON


90年代に活躍した4人組ギターロックバンド、JIGGER'S SON。1998年に活動休止後、2001年に解散を発表し、その活動に幕を下ろしたのですが、2012年に再結成。その後、継続的に活動を続けていたようですが、このたびなんと19年ぶりとなるニューアルバムがリリースされました。
正直言って、JIGGER'S SON自体、決して売れていたバンドではありません。活動休止後、ボーカルの坂本サトルがソロで発表した「天使達の歌」が評判となったので、アラフォー世代あたりはひょっとしたらご存じの方もいるかもしれません。本作はその「天使達の歌」をJIGGER'S SONのライブで歌ったライブ音源も収録されています。
楽曲的には90年代の彼らと全く同じスタイル。泥臭い雰囲気のギターロックがメイン。そう書くとブルースロックかスワンプロックというイメージも浮かぶところ。ただ、楽曲によってはブルージーな曲もあるのですが、基本的には普通のJ-POPといった感じで、いまひとつルーツレスなのが残念なところ。ちょっとユーモアのセンスを交えつつ歌われる歌詞も魅力的ではあるのですが、全体的にはメロディーやサウンドのインパクトももう一歩といった感じ。なんとな~く、ブレイクしきれなかった理由もわかるような。悪いアルバムではないのですが、いろいろともどかしさも残ってしまう1枚でした。
評価:★★★★
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