帰ってきた!
Title:帰ってきたホフディラン
Musician:ホフディラン
ここ最近、事実上の活動休止状態だったホフディラン。ライブ活動は行っていたものの新作のリリースがなく、その動向がちょっと心配されたのですが、久々のニューアルバムがリリースされました。その名も「帰ってきたホフディラン」。なんとここにきてメジャーレーベル、それも古巣となるポニーキャニオンからの復帰が決定。これがその第一弾となるアルバムです。
ホフディランといえば、メンバーのワタナベイビーと小宮山雄飛という2人のライターからなるユニットなのですが、以前からホフディランのアルバムというとワタナベイビーの曲の出来が良い時にアルバムが傑作になるという印象があります。というのは小宮山雄飛の曲はビートルズなどの影響を受けたルーツ志向を感じるシンプルでメロディアスなギターロック路線がメインで、楽曲に安定感がある一方、ワタナベイビーはちょっと奇抜さもあるポップソングが多く、それがはまると名曲になる一方、はずすとちょっと微妙な曲になってしまうという傾向にあり、それだけにワタナベイビーの曲がはまるとアルバム全体が傑作になるという傾向にありました。
そして今回のアルバムに関していうと、これが笑っちゃうくらいワタナベイビーの曲が傑作揃い。本作はカバー1曲、雄飛の曲が7曲、ワタナベイビーの曲が6曲という構成なのですが、この6曲がいずれも非常に個性的な名曲揃い。ハイトーンのエフェクトをかけてコーラスを入れてユーモラスに仕上げつつ、彼らしいストレートなラブソングを歌う「ヤンヤンヤン」はまさにワタナベイビーらしさが全面にあらわれた傑作。アラフォー世代には懐かしさも感じる、楽曲の中に90年代に一世を風靡した音楽、渋谷系のスタイルを読み込んだ「恋は渋谷系」もユニーク。メロディーやサウンド自体も渋谷系そのもので、ちょっとカジヒデキっぽいかな?彼らしいウィットも利いた楽曲になっており、惹きつけられます。
子持ちの身としては最近、ホフディランの2人の楽曲は実は「おかあさんといっしょ」や「いないいないばぁ」といった幼児向け番組の中で良く見かけたりしています。なにげに幼児向け番組用の曲もホフディランらしい名曲が多く、密かにセルフカバーしてくれないかな、なんて思ったりしているのですが、今回のアルバムの中でも「あの風船追っかけて」は、「おかあさんといっしょ」あたりで歌われていても不思議ではないかわいらしくほっこりするポップソング。こちらもワタナベイビーらしさがあらわれている名曲になっています。
もちろん小宮山雄飛の楽曲もいつも通り、安定感のある名曲がそろっています。メロディアスなポップソングの中にちょっとファンク的な要素を入れた「珈琲」や60年代ポップス風な「家を借りよう」、映画音楽を彷彿とさせるビックバンド風のアレンジが楽しい「映画の中へ」など、彼らしいルーツのはっきりと見えたポップソングが並んでいます。今回、ワタナベイビーの楽曲が良かっただけにちょっと地味な印象は否めませんですが、しっかりと安定感ある素朴さもあるポップソングはやはり大きな魅力を感じます。
そしてアルバム唯一のカバーなのがRCサクセションの「雨あがりの夜空に」のカバー。もともと忌野清志郎の大ファンで、彼のスタイルを模した「ニセ清志郎」としても活動するワタナベイビーが主導したカバーなのですが、軽快で明るい歌い方とサウンドは楽曲にもピッタリとマッチ。原曲の魅力もしっかり残しつつ、ホフディランらしさをきちんと入れた名カバーになっていました。
ポップユニットホフディランの魅力を存分に感じることが出来た傑作。バラエティーあふれる曲の数々に、彼らのポップミュージシャンとしての懐の深さを感じます。あらためてホフディランって魅力的なグループだな、ということを再認識したアルバム。これからはコンスタントに活動を続けてほしいのですが。特にワタナベイビーは今、脂にのっているみたいなので、是非この勢いで次の新作を!
評価:★★★★★
ホフディラン 過去の作品
ブランニューピース
13年の金曜日
14年の土曜日
15年の日曜日
2PLATOONS
ほかに聴いたアルバム
ヤグルマギク/The Mirraz
最近、配信限定で次々とアルバムをリリースしているThe Mirrazですが、前作からわずか2カ月。早くも配信限定の身にアルバムをリリースしてきました。基本的にハイテンポなパンクロックなのはいつも通り。またマイナーコード主体のメロがメインとなっており、早口で歌い上げるスタイルのいつも通り。ただ、歌詞としては内省的なものが多いものの、早口すぎてかつフックが利いたようなインパクトあるフレーズがないため聴き取りにくい内容になってしまっています。
そもそも今年に入ってこれで4作目。昨年もミニアルバム含めて2枚リリースしていますから、さすがに乱発気味なのでは?もうちょっと腰をおしつけて名曲をリリースしてほしいのですが・・・。配信中心の積極的な攻勢はおもしろいとは思うのですが、その結果、ちょっと粗製濫造になってしまっているのが気にかかります。
評価:★★★
The Mirraz 過去の作品
We are the fuck'n World
言いたいことはなくなった
選ばれてここに来たんじゃなく、選んでここに来たんだ
夏を好きになるための6の法則
OPPOTUNITY
しるぶぷれっ!!!
BEST!BEST!BEST!
そして、愛してるE.P.
ぼなぺてぃっ!!!
Mr.KingKong
バタフライエフェクトを語るくらいの善悪と頑なに選択を探すマエストロとMoon Song Baby
| 固定リンク
「アルバムレビュー(邦楽)2017年」カテゴリの記事
- 20周年イヤーの最後を締めるアルバム(2017.12.26)
- 5曲中3曲がタイアップ(2017.12.25)
- チャメ~!(2017.12.23)
- 4枚組豪華オールタイムベスト(2017.12.17)
- 赤裸々な本音を強烈なガレージサウンドで(2017.12.16)
コメント