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2017年11月 6日 (月)

注目の新人ラッパーのデビュー作

Title:MODERN TIMES
Musician:PUNPEE

今、日本語ラップが一種のブーム的に高い人気と注目を集めています。そんな中でも最も注目を集めているラッパーの一人が彼、PUNPEE。RHYMESTERのアルバム「Bitter,Sweet&Beautiful」にプロデュースとフィーチャリングで参加したり、さらに宇多田ヒカルの曲のリミックスをリリースし、イベントで共演したりと徐々に注目を集めてきました。

そんな中リリースされたのが待望のデビューアルバムである本作。売上的にもオリコンチャートでいきなりベスト10入りしてくるなど大いに注目を集めています。そんな注目の中、リリースされた本作はいきなりちょっとレトロな雰囲気のトラックの中での「語り」からスタートします。「2057」というタイトル通り、物語はいまから40年後のPUNPEEによってこのデビューアルバムのことが語られる形で物語はスタートしていきます。

まずアルバム全体として非常に心地よいのが脱力感のあるトラック。音数はさほど多くないもののフィリーな雰囲気を感じるメロウなトラックがとても心地よく感じます。たとえば「Scenario(Film)」のような心地よさを感じるメロウなトラックも魅力的。「Rain(Freestyle)」も女性ボーカルを加えたけだるい雰囲気のメロディーにメロウなトラックが耳に残ります。また「宇宙に行く」では軽快で疾走感あるピアノのリフを主導としたトラックがどこかユーモラス。どの曲もほどよい熱量を感じるトラックになっており、ポップで聴きやすいトラックに仕上げています。決して派手さはないので最初はピンと来なかったのですが、アルバム1枚を聴いているといつまでも聴いていたいような不思議な中毒性を持ったトラックになっていました。

楽曲に関してもポップでユニークなテーマを持った楽曲も目立ち、例えば上にも書いた「宇宙に行く」はタイトルの通り宇宙に飛び出したかと思えば、「タイムマシーンにのって」では時間旅行。「親父と母さんに出会った日に行きたいね」「息子直々にチャンス作ってやんぜ」とリリックがとてもユニークです。

そしてアルバム全体としても心地よい脱力感が流れています。歌詞にしても事実上の1曲目「Lovely Man」では

「はいはい まぁご存知の通り
見た目も中身もまぁ覇気がない
はしにも棒にも引っかからず男だか女か
それもわからない あ Pです」

(「Lovely Man」より 作詞 PUNPEE)

なんていう脱力感あふれる自己紹介からスタートしています。しかし、リリックの中には秘めた熱意を感じることができ、なんといっても最後の「Hero」では「僕はHero 僕は君のHero」と歌い上げています。

パンピー=一般人というその名前の通り、決してパッと目立つような派手さのあるアルバムではありません。ただ、トラックにしろリリックにしろいろいろなひっかかりがあり、最初聴きはじめはちょっと地味かな、と感じていたのですがアルバム全体を聴き終わると、癖になって何度も聴いてしまうようなそんなアルバムになっていました。これからの活躍が非常に楽しみになってくる1枚。本当に日本語ラップのシーンは次から次への実力のあるラッパーが登場するなぁ。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

FATELESS/coldrain

ちょうど2年ぶりとなるニューアルバム。英語詞による洋楽テイストも強い楽曲。哀愁感あるマイナーコード主体のメロディーラインを、ハードコアの要素も入れたダイナミックなバンドサウンドで聴かせるスタイル。ここらへん、いままでの曲と基本的にまったく変わりません。1曲1曲は文句なしにカッコいいと思うのですが、やはりもうちょっとバリエーションが欲しいと思ってしまいます。よくも悪くも「いままでどおり」なアルバムです。

評価:★★★★

coldrain 過去の作品
THE REVELATION
Until The End
VENA

氣志團万博2017

木更津が生んだロックバンド氣志團が2003年により開催している大型野外GIG「氣志團万博」。毎年、本当の意味でジャンルを問わないミュージシャンやアイドルが参加しており話題を呼んでいますが、本作は今年参加したミュージシャンの楽曲を集めたコンピレーションアルバム。この手の野外フェス、「ジャンルを問わない」と言いつつも実際に出演するのはロック系と女性アイドルだけという「単なる若くてかわいい子を呼びたかっただけだろ」的なイベントが多いのですが、氣志團万博は本気でジャンルを問わないラインナップに。本作もギターロックバンドからHIP HOP、ビジュアル系、アイドルも男性女性両方ともきちんと収録されています。残念ながら権利の関係か容量の関係か未収録のミュージシャンも多いのですが、氣志團万博の雰囲気を味わえるコンピレーションになっていました。

ちなみに全3枚組なのですが、うち3枚目は「氣志團 蜜苦巣死威泥異~独占!漢の60分~Mixed by DJ Michelle Sorry a.k.a ミッツィー申し訳」として氣志團の楽曲33曲がノンストップでつながれた楽曲になっています。途中にはメンバーによるトークなども収録されているのでファンにとってはたまらない内容に。聴きごたえたっぷりのコンピレーションアルバムでした。

評価:★★★★★

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コメント

前作のアルバム「VENA」の洋楽仕様を更に強めたアルバムですね、coldrainの「FATELESS」は。

投稿: ひかりびっと | 2017年11月 7日 (火) 07時39分

>ひかりぴっとさん
ご感想ありがとうございました。

投稿: ゆういち | 2017年11月18日 (土) 23時58分

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