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2017年11月23日 (木)

ビーチからやって来る白昼夢

Title:Pacific Daydream
Musician:Weezer

デビュー直後は寡作気味だった彼らもここ最近はすっかり勢いをつけたのかコンスタントなリリースが続いているWeezer。特にバンドのボーカルでありメインライターであるリヴァース・クオモはここ最近、J-POPユニット、スコット&リヴァースの活動も並行して行っており、その勢いを感じさせてくれます。

特にここ最近のWeezerのアルバムは原点回帰を感じさせる彼ららしいパワーポップの作品が続いており、勢いを感じる良い意味での安定感あるアルバムが続いています。スコット&リヴァースでの作品についても良作を続けており、バンドとして脂がのっていることを感じさせてくれました。

そんな中リリースされた今回のアルバムは、ここ最近のアルバムと比べるとちょっと意外に感じるアルバムだったのではないでしょうか。今回のアルバム、制作を続けている最中に「彼らの作っている曲が、世界の果てのビーチからやって来る白昼夢のような感じがすることに気づいた」そうで、その流れにまかせたままリリースされたのが今回のアルバムだとか。まさにアルバムタイトルもそんなイメージから生じているのでしょう。

実際に今回のアルバムはそんなイメージから想像されるような楽曲が並んでいます。1曲目の「Mexican Fender」こそパワポのイメージもある分厚いバンドサウンドのポップチューンなのですが、続く「Beach Boys」はまさにこのアルバムのイメージを象徴するような、爽快さを感じるポップチューンの中にサイケな要素の加わったナンバー。Weezerの一般的なイメージとはちょっと異なる印象を受ける楽曲ではないでしょうか。

中盤の核になっているような「Weekend Woman」もリヴァースらしいキュートなポップセンスが光るナンバーなのですが、サマーポップ的な雰囲気の色濃い、軽快なポップナンバー。後半の「Sweet Mary」もちょっとフィルスペクターばりのポップチューンに仕上がっています。ちなみにこのナンバー、非常にわかりやすいサビを持ったポップになっており、どこかJ-POP的。ひょっとしたらスコット&リヴァースでの活動がWeezerへ逆輸入されたのでしょうか。

楽曲は全体的にビーチで流れているような爽快感を覚えつつも、一方で哀愁感を帯びた楽曲が多く、そういう意味ではまさに彼らがアルバム制作の過程で感じた「ビーチからやって来る白昼夢」というイメージがピッタリと来るアルバムになっていたと思います。

ただWeezerのアルバムとしてどうだったか、と言われると結構賛否両論がわかれそうな問題作ではないかと思います。ここ最近のアルバムで感じたような原点回帰の色はありませんし、Weezerらしいパワーポップのアルバムでもありません。個人的な感想としては正直言って、ちょっと期待していたアルバムとはずれちゃったな、という印象を受けました。

もっとも、かといって彼らが迷走していた訳ではありませんし、今回のアルバムに関しては「こういうコンセプトの下につくったアルバム」であって、いつものWeezerと異なるのもあえて意図したもの。また出来が悪いかといわれるときちんとリヴァースのポップスセンスも要所要所に光を放っており、決してここ最近の勢いが失われたといった感じでもありません。

そういう意味では「これはこれで良いアルバムだった」というちょっと煮え切らないながらも納得のいく作品だったと思います。もっとも逆に今度もこの方向性と言われると、次はやはり彼ららしいパワーポップの作品を聴きたいなぁ、とは思うのですが。これはこれでWeezerの魅力をしっかりと感じたものの、これ1枚で十分かな、と思わせる良作でした。

評価:★★★★

WEEZER 過去の作品
WEEZER(Red Album)
RADITUDE
HURLEY
DEATH TO FALSE METAL
Everything Will Be Alright in the End
WEEZER(White Album)


ほかに聴いたアルバム

Death Peak/CLARK

いまやWARPレーベルを代表するエレクトロミュージシャンになりつつあるCLARKの約3年ぶりとなる新作。比較的ポップでリズミカルな聴きやすいアルバムとなっていた前作と比べると作品の攻撃性がグッとました感じでメタリックで複雑なビートで構成されたサウンドが楽しめます。ただ以前の彼の作品から共通していた、どこかポップなメロディーが流れているという点は本作も共通。複雑そうで実は意外と聴きやすいサウンドが非常に魅力的なアルバムになっていました。

評価:★★★★★

CLARK 過去の作品
Totems Flare
Iradelphic
CLARK

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コメント

「Pacific Daydream」はEDMだったりJ-POPだったりとWeezerの作風が打って変わったかのような印象を聴いていて覚えました。

投稿: ひかりびっと | 2019年4月22日 (月) 19時28分

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