さらに勢いを増した新作
Title:MISSION
Musician:NONA REEVES
NONA REEVESのアルバムで前回紹介したアルバムはベスト盤「POP'N SOUL 20~The Very Best of NONA REEVE」。同作の紹介で私は「時代がNONAに追いついた?」という書き方をさせていただきました。彼ら自体は80年代ソウルの影響を強く受けたシティポップをデビュー当初から変わらず演奏していました。以前はシティポップのミュージシャンも決して多くはありませんでしたし、特にNONA REEVESが強い影響を受けているマイケル・ジャクソンをはじめとする80年代のポップミュージシャンは、彼らがデビューした1990年代後半は、今ほど評価が高くなかったように記憶しています。
しかし時代が変わり、現在はマイケル・ジャクソンを含め80年代ポップスが見直されてきました。また、特に最近ではソウル、R&B、ファンクの影響を強く受けたシティポップバンドが数多くデビューして人気を博しています。まさに時代がNONAに追いついた感のある今。事実、彼らのアルバムに関しても徐々に売上を伸ばしているようで、Wikipediaによるとアルバムもここ数作、右肩あがりに最高位を伸ばしており、本作はアルバムチャート42位と(それでもまだまだな感はあるのですが・・・)、自己最高位を記録しています。
実際、自分たちに吹く追い風を彼らも認識しているのか、オリジナルアルバムとしての前作「BLACKBERRY JAM」も非常に勢いのある作品になっていましたし、そして本作に関しても勢いを感じる充実作に仕上がっていました。まず冒頭の「ヴァンパイア・ブギーナイツ」は80年代直系の軽快でファンキーなダンスチューン。ある意味、彼らの王道とも言えるナンバーなのですが、演りたいことを演っているような爽快さを感じます。また、途中のボーカルの溜めは、完全にマイケル・ジャクソンからの影響を見て取れるのも西寺郷太の趣味を色濃く反映しています。
本作はゲスト勢も豪華、かつとても有効に使われています。「Danger Love」ではCharisma.comのいつかが参加していますが、軽快でダンサナブルなチューンにいつかのラップが上手くマッチしています。「未知なるファンク」もゲストの曽我部恵一のハイトーンなボーカルがファンクなディスコチューンに映えています。原田郁子が参加した「記憶の破片」はこのアルバムでは珍しくフォーキーな雰囲気のポップチューンとなっていますが、この曲も2人の息の合ったデゥオが楽しめます。
また今回のアルバム、ファンキーなダンスチューンも冴えまくっている本作ですが、中盤の「NEW FUNK」や「NOVEMBER」についてもミディアムテンポでメロウに聴かせるボーカルが魅力的な作品になっており、西寺郷太のメロディーセンスが光る作品になっていました。
本作がNONA REEVESとして決して新しいことを演っているわけではありません。むしろいつも以上に彼らの演りたいことを自由にやっているという印象も受けるアルバムでした。これは全く個人的な主観に基づく感想なのですが、ひょっとしたら以前に比べて彼らのようなタイプの楽曲が世間的にヒットするようになったため、レコード会社側が以前よりも彼らに自由に演らせているのではないでしょうか?いつもに増して彼らの勢いを感じさせる傑作でした。
評価:★★★★★
NONA REEVES 過去の作品
GO
Choice
ChoiceII
BLACKBERRY JAM
POP'N SOUL 20~The Very Best of NONA REEVES
ほかに聴いたアルバム
『櫂』/te'
インストロックバンドte'の新作は前作に引き続き5曲入りのミニアルバム。そのうち「玲瓏たる純潔は『紅炎』の傀儡を疾らせ、暁天に燦めく証を刻む。(改)」はアニメ「ブブキ・ブランキ 星の巨人」主題歌というまさかのアニソンタイアップ!あの複雑な曲がアニメ主題歌として流れるのかよ!と思ったら、アニメバージョンは声優潘めぐみによる歌入り。そちらのバージョンも聴いてみたのですが、ちゃんとアニソンらしい感じになっており、逆にte'のダイナミックなサウンドがアニソンらしさを醸し出していました(ちなみに本作に収録されているのはインスト版です)。
前作「『閾』」ではエレクトロサウンドを入れてきてリスナーを驚かせたのですが、今回は基本的にはte'らしいダイナミックなバンドサウンドがメインとなっている構成。さほど奇をてらったような感じの楽曲もなく、基本的に収録曲5曲が同じ方向性に並んでいる統一感あるアルバムになっていました。もちろん、迫力あり複雑に構成されたサウンドは聴けば聴くほど引き込まれるものがありte'の魅力は本作も健在でした。
評価:★★★★★
te' 過去の作品
まして、心と五感が一致するなら全て最上の「音楽」に変ずる。
敢えて、理解を望み縺れ尽く音声や文字の枠外での『約束』を。
ゆえに、密度の幻想は綻び、蹌踉めく世界は明日を『忘却』す。
其れは、繙かれた『結晶』の断片。或いは赫奕たる日輪の残照。
『閾』
SONGentoJIYU/eastern youth
二宮友和が脱退し、その後が気にかかっていたeastern youthですが新メンバーとしてベースに村岡ゆかが加入。新体制でのスタートとなった彼らが、現メンバーではじめてリリースしたアルバム。ただ、バンドとしての方向性は以前から大きな変化はなく、エモーショナルな激しくも分厚いサウンドに、傷つきながら生きる人たちへの応援歌のような歌詞が大きな魅力に。ある意味、目新しさはなく、そういう意味では「バンドとしてやりつくした」という二宮友和脱退の理由はわからなくもないのですが、ただ、この方向性でもまだまだ魅力的な曲をバンドは奏でることができるということを実感した作品。まだまだ彼らは名作を世に送り出してくれそうです。
評価:★★★★★
eastern youth 過去の作品
地球の裏から風が吹く
1996-2001
2001-2006
歩幅と太陽
心ノ底ニ灯火トモセ
叙景ゼロ番地
ボトムオブザワールド
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