« 復帰第1弾が1位獲得 | トップページ | とにかく明るいドリカム(・・・古い・・・) »

2017年11月 3日 (金)

歌謡曲色が強いソロ作

Title:がらくた
Musician:桑田佳祐

ソロアルバムとしては6年6ヶ月ぶりとなる桑田佳祐のソロアルバム。オリジナルアルバムとしての前作「MUSIC MAN」はちょうどサザンオールスターズ活動休止中にリリースされたアルバムだったのですが、今回は(今は桑田ソロが優先のためか新作音源のリリースやライブなどしばらくないものの)サザンも活動中の中のリリース。そんな中、どんなソロアルバムをリリースしてくるのかも注目されました。

前作の「MUSIC MAN」はいろいろなタイプの曲が入ったごった煮的なアルバムになっていました。今回もロックンロールな「過ぎ去りし日々(ゴーイング・ダウン)」からはじまりフォーキーな「君への手紙」など桑田佳祐の広い音楽性を感じさせる曲が要所要所に入っています。特にシングルリリース時から話題となった「ヨシ子さん」は強烈。ユーモラスなシンセ(20年くらい前のゲームミュージックみたいな感じの音色)からスタートし、巻き舌満開のボーカルにエスニックで無国籍なユニークなポップソングは桑田佳祐しか作れないし、彼しか歌えなさそうな楽曲になっています。

一方今回アルバムの中で目立つナンバーといえばNHK連続テレビ小説「ひよっこ」の主題歌となった「若い広場」。60年代の日本を舞台としたこのドラマの主題歌にふさわしく、60年代の流行歌を彷彿とさせるようなレトロなポップソングになっています。今回のアルバムはこの曲をスタートとして、全体的に「歌謡曲」の色合いが強いアルバムになっていました。

続く「大河の一滴」もマイナーコード主体のアップテンポな哀愁感あふれる歌謡曲風のナンバーになっていますし、「簪/かんざし」もムーディーな歌謡曲風なナンバー。「ほととぎす[杜鵑草]」も郷愁感あふれ懐かしさを感じさせるナンバーになっていますし、「Yin Yong」もホーンやピアノでキャバレー歌謡的な楽曲と仕上がっています。

桑田佳祐のソロアルバムなのですが、楽曲としてのバリエーション、自由度はむしろサザンオールスターズの直近作「葡萄」の方があるように感じます。今回のアルバムに関しては、サザンのアルバムよりも「保守的」・・・という言い方をすると誤解がありそうですが、安定感ある歌モノのアルバム、いい言い方をすれば統一感あるアルバムになっていたと思います。

おそらく今の桑田佳祐の音楽的な嗜好が「歌謡曲」的な方向性に強く向いているんでしょうね。以前から彼の歌謡曲からの影響はよく言及されていましたし、そういう歌謡曲からの影響を表に出すことがここ最近では特に増えているような印象を受けます。サザンオールスターズはいままでの活動や「ロックバンド」というスタンス上、歌謡曲的な要素を必要以上に強く出せないのでしょうが(もちろんサザンの曲でも「歌謡曲的」な曲はいくらでもありますが)、ソロアルバムであるからこそ彼自身の趣味嗜好をより前に押し出すことが出来たのでしょう。

もちろん桑田佳祐らしいエロ親父的な歌詞の「愛のささくれ~Nobody loves me 」や、ネット社会を痛烈に皮肉った「サイテーのワル」のような楽曲も健在。個人的にはロック寄りだった前々作「ROCK AND ROLL HERO」やバリエーションがあった前作「MUSIC MAN」の方が良かったとは思うのですが、今回の作品も安定感ある傑作アルバム。メロディーの良さ、歌詞、サウンドのユニークさ、どれをとってもそんじょそこらのミュージシャンじゃ足元にも及ばない実力をいかんなく発揮したアルバムになっていました。さすがの1枚です。

評価:★★★★★

桑田佳祐 過去の作品
MUSICMAN
I LOVE YOU-now&forever-


ほかに聴いたアルバム

MUTEKI/大森靖子

大森靖子の新作は、新曲2曲に過去の彼女の代表曲をアコースティックアレンジで再録した「ベスト盤」的な企画盤。個人的に前作「kitixxxgaia」は、いままで低評価だった大森靖子に対する見方を覆した傑作だったのですが、このアルバムで過去の楽曲をあらためて聴くと、やはり大森靖子に対する違和感がふつふつと湧いてきてしまいました。その違和感がなかなか表現しずらいのですが・・・女性が「かわいらしさ」を売りにする場合、男性的な視点が入りがちであり、それがともすれば女性を「モノ」としてみる女性蔑視的な視点につながる部分があると思うのですが、そういった男性社会の中の問題に対して無自覚的に「かわいらしさ」を表現している部分があるような・・・具体的にどの歌詞が、というと難しいのですが、どうも彼女の曲を聴くと、こういうことを感じてしまいます。今回、アコースティックアレンジで曲と歌詞を強調するカバーになったからこそ、さらにその違和感が強まったような・・・。どこか感じるもやもや感が最後まで消えなかったアルバムでした。

評価:★★★

大森靖子 過去の作品
洗脳
トカレフ(大森靖子&THEピンクトカレフ)
TOKYO BLACK HOLE
kitixxxgaia

魔法少女になり隊~まだ知らぬ勇者たちへ~/魔法少女になり隊

まずそのバンド名から一度聴いたら忘れられないインパクトを持つバンド、魔法少女になり隊。「魔女にしゃべることができない呪いをかけられてしまった魔法少女見習い・火寺バジル(Vo)の呪いを解くべく、“歌”という魔法を使いながら冒険を続けている"RPG系バンド"。」という設定。設定自体はなかなかユニークで、楽曲的にはトランシーなサウンドにポップな女性ボーカル、かつハードコア風なデス声のシャウとが常に入っているというスタイル。それなりにインパクトはあって、最初は惹かれるものがあったのですが・・・アルバム全部が同じ方向性ですし、J-POP的なメロディーも正直言って平凡。トランシーなサウンドもインパクトにはなるのですが聴いていて飽きてしまいます。方向性としてはおもしろいバンドだとは思うのですが、もうひとひねりふたひねりほしいところ。バンドの設定といいインパクトは強いのですが、いろいろな部分で惜しさを感じてしまうアルバムでした。

評価:★★★

|

« 復帰第1弾が1位獲得 | トップページ | とにかく明るいドリカム(・・・古い・・・) »

アルバムレビュー(邦楽)2017年」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 歌謡曲色が強いソロ作:

« 復帰第1弾が1位獲得 | トップページ | とにかく明るいドリカム(・・・古い・・・) »