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2017年11月25日 (土)

インディーズに戻り新たな一歩を

Title:東京カランコロン01
Musician:東京カランコロン

底抜けに楽しいポップチューンが話題となり、メジャーデビュー初のフルアルバム「We are 東京カランコロン」で高い評価を得た男女5人組ポップスバンド、東京カランコロン。ただ残念ながらメジャーレーベルでは大ブレイクすることなく、残念ながらメジャー契約は終了してしまいました。

その後、インディーレーベルに戻った彼らは「東京再起動プロジェクト」と題して心機一転、あらたな一歩を歩みはじめました。特にインディーズに戻って最初にリリースしたシングル「トーキョーダイブ」はそんな彼らの心境をストレートに表現した作品。

「トーキョー停電見えなくたって、届くよ声は
君ともう一度ワクワクしたいんだ」

(「トーキョーダイブ」より 作詞 東京カランコロン)

という歌詞はまさに新たな一歩を踏み出す彼らの決意を感じさせる一節。このアルバムでも1曲目に収録されており、インディーズに戻った東京カランコロンの最初の一歩として意識して作られた作品になっています。

そしてこの「ワクワクしたいんだ」というフレーズ同様、アルバム全体としてとにかく無条件に楽しいポップソングが並んでいるのが今回のアルバムの大きな特徴でした。「トーキョーダイブ」も疾走感あり歌詞の通りワクワクするポップチューンでしたが、続く「どういたしまして」もシンセを取り入れた楽しくダンサナブルなナンバー。その後もモータウンビート調のリズムが楽しい「ハッピーエンディング」に、先行シングルになった「ビビディバビディ」もマイナーコードのAメロBメロからメジャーコードに転調するサビへの抜け具合がとても爽快で心地よいナンバーになっています。

まさサウンドもシンセを取り入れつつも、ほぼよく分厚いバンドサウンドが心地よい楽曲が耳を惹きます。「321で」「つよがリズム」などがそんな楽曲の典型例でしょうか。ポップスバンドながらほどよくロックのダイナミズムも取り入れているのも特徴的で、この分厚いサウンドにも心地よさを感じます。

最後を締めくくる「走りだせロンリー」も楽しいポップチューンながらもどこか切なさを感じるメロディーラインに彼らのメロディーセンスを感じさせるナンバー。ほどよい爽快感を残しつつアルバムは幕を下ろしました。

今回のアルバムでも東京カランコロンの特徴であるいちろーとせんせいの男女ツインボーカルが効果的に用いられているのも耳を惹きます。ただ今回のアルバムでは、2人の掛け合い的な楽曲はありません。基本的に2人のユニゾンもしくはハーモニーで一緒に歌うか、どちらかがメインを張って片方はコーラスに徹するというスタイルがほとんど。男女ツインボーカルから生じがちな「恋愛関係」を想像できるような形をあえて回避しているようにも感じます。結果、万人が楽しめるポップチューンに仕上げてきていました。

そんなインディーズ復帰により新たな一歩を歩みだした彼ら。ただ昨今、以前よりインディーズとメジャーの違いが少なくなった結果、メジャーデビュー、あるいはインディーズ復帰をことさら強調するミュージシャンも少なくなってきています。そんな中、彼らのようにインディーズ復帰をあえて強調するミュージシャンも珍しいように感じました。

ただそれだけにインディーズに戻り、より彼らのやりたいことが出来るようになったんだな、ということをこのアルバムからは強く感じ、そういう意味で彼らにとってインディーズ復帰が大きな意味を持っているんだ、ということを感じました。いままでのアルバムに比べるとより吹っ切れたものを感じる今回のアルバム。東京カランコロンのいままでのアルバムの中で最もポップだったように感じます。個人的に今年のベスト盤候補。心の底から楽しめる何度でも聴いていたくなるようなポップスの傑作アルバムです。

評価:★★★★★

東京カランコロン 過去の作品
We are 東京カランコロン
5人のエンターテイナー
UTUTU
カランコロンのレンタルベスト
noon/moon


ほかに聴いたアルバム

Paradox/布袋寅泰

前のベスト盤の時にもチラッと書いたのですが、実は布袋寅泰、アルバム単位で聴くのはこれがはじめて。ベスト盤で彼の楽曲をはじめて聴いて「あれ?実は結構好み?」と思い、はじめてオリジナルアルバムも聴いてみました。で、思った以上に楽しめたのが今回のアルバム。意外と洋楽的なテイストが強く、いい意味でのバタ臭さを感じる一方、インパクトあるメロディーラインはJ-POP的。このバランスの良さが魅力的に感じます。今回の作品では「Pandemoniac Frustration」のような社会派な歌詞も登場し、骨太な部分も垣間見れます。また要所要所にギターのソロを挟んでおり、あくまでもギタリストなんだということを強調した部分も感じました。全体的にもうちょっと核になるような曲が欲しかったかな、と思うのですが、予想以上に楽しめたアルバム。次のアルバムも是非聴いてみたいです。

評価:★★★★

布袋寅泰 過去の作品
51 Emotions -the best for the future-

Cashmere/辛島美登里

辛島先生久々の新作は、セルフカバー4曲を含むカバーアルバム。最近、カバーアルバムの頻度が多く、特に「サイレント・イヴ」に至っては何度目だよ・・・感は否めませんが、聴き始めるとやはり実に魅力的なカバーアルバムに仕上がっています。特に彼女の力強くも美しいボーカルは今なお健在で衰えることを知らず、優しい歌声に思わず聴き入ってしまいます。特にほどよく情感を込めつつ、必要以上の仰々しさを感じさせない彼女の表現力は見事。本作はピアノやアコギをメインとした抑えめのアコースティックなアレンジに仕上げているのですが、このアレンジもまた彼女のボーカルの良さを生かしています。ボーカリスト辛島美登里の魅力を心ゆくまで堪能できたカバーアルバムでした。

評価:★★★★★

辛島美登里 過去の作品
オールタイムベスト
辛島美登里 パーフェクトベスト
colorful

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