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2017年11月

2017年11月30日 (木)

3週連続!

今週のアルバムチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/ja/

なんと、これで3週連続1位獲得です。

安室奈美恵のベスト盤「Finally」が3週連続の1位。売上は15万8千枚と先週の32万1千枚からおおきくダウンしていますが、それでもまだ2位以下を大きく引き離して、堂々の1位獲得となっています。

初登場組での最高位は2位に初登場したロックバンドMy Hair is Bad「mothers」。3枚目となるフルアルバムでベスト10入りはこれが2作目ながらも初となるベスト3ヒットとなりました。初動売上3万1千枚も前作「woman's」の1万7千枚(4位)から大幅増。勢いを感じさせます。

3位初登場はスターダストプロモーション所属の男性アイドルグループM!LKのデビューアルバム「王様の牛乳」。初動売上2万6千枚でいきなりのベスト3ヒットです。ちなみに直近のシングル「テルネロファイター」の初動3万2千枚(3位)よりは初動売上は下回っています。

続いて4位以下の初登場盤です。まず4位に中島みゆき「相聞」がランクイン。42枚目となるオリジナルアルバム。「相聞」とは「そうもん」と読み、「互いに安否を問って消息を通じ合う」という意味で万葉集の分類項目のひとつだとか。初動売上2万4千枚。直近作はベスト盤「中島みゆき・21世紀ベストセレクション『前途』」で、こちらの4万5千枚(2位)よりダウン。オリジナルアルバムとしての前作「組曲(Suite)」の2万2千枚(6位)からは若干アップしています。

5位初登場は氷川きよし「新・演歌名曲コレクション6 -碧し-」。演歌の名曲のカバーと彼のオリジナルが収録された「名曲コレクション」シリーズの最新作。初動売上2万1千枚で前作「新・演歌名曲コレクション5-男の絶唱-」の1万9千枚(4位)から若干アップ。

7位にはNOEL GALLAGHER'S HIGH FLYING BIRDS「WHO BUILT THE MOON?」がランクイン。ご存じ90年代から2000年代にかけて一世を風靡したイギリスのロックバンドoasisのメインライター、ノエル・ギャラガーによるソロプロジェクト3作目。初動売上1万2千枚は前作「Chasing Yesterday」の1万4千枚(10位)から若干のダウン。

9位には竹内まりや「REQUEST -30th Anniversary Edition-」がランクイン。1987年にリリースされた彼女のアルバム「REQUEST」の30周年記念盤で、リマスターがほどこされた他、ボーナストラックが加えられています。初動売上8千枚で見事ベスト10入りに彼女の高い人気を感じます。直近作は同じく1984年にリリースされたアルバム「VARIETY」の30周年記念盤で、こちらの8千枚(13位)からは横バイという結果に。

最後10位にはナオト・インティライミ「旅歌ダイアリー2」がランクイン。映画「ナオト・インティライミ冒険記 旅歌ダイアリー2」の使用曲などを集めたコンセプトアルバム。完全生産限定のアルバムだそうです。初動売上は8千枚。前作「Sixth Sense」の2万9千枚(3位)よりダウンしています。

今週のアルバムチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2017年11月29日 (水)

AKBとジャニーズと

今週のHot 100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

まず今週、1位はあのグループの曲がランクイン。

今週1位はAKB48「11月のアンクレット」が先週の78位からランクアップ。CDリリースにあわせて1位獲得となりました。メンバーの渡辺麻友のラストシングル。楽曲はフィルスペクター風のウォールズ・オブ・サウンドっぽいアレンジが特徴的な曲になっています。CD販売・ダウンロード・ストリーミング数(以下「実売数」)で1位を獲得した他、ラジオオンエア数9位、PCによるCD読取数3位、Twitterつぶやき数4位と上位を記録。オリコンでも初動109万5千枚で1位獲得。前作「#好きなんだ」の108万9千枚(1位)から若干アップしています。

2位はジャニーズ系。ジャニーズWEST「僕ら今日も生きている」が初登場でランクイン。フジテレビ系アニメ「モンスターハンター ストーリーズ RIDE ON」主題歌。実売数、PCによる読取数2位、ラジオオンエア数16位、Twitterつぶやき数26位を記録。オリコンでは初動12万7千枚でこちらも2位。前作「おーさか☆愛・EYE・哀」の13万7千枚(1位)からダウンしています。

3位にはTWICE「LIKEY」が先週の5位から2ランクアップしてベスト3返り咲き。You Tube再生回数1位、Twitterつぶやき数2位と、ネット系のランクで上位をキープしています。

続いて4位以下の初登場曲です。まず5位にGLAY「あなたといきてゆく」がランクイン。テレビ東京系ドラマ「ユニバーサル広告社~あなたの人生、売り込みます!~」主題歌。タイトルから想像できる通りのプロポーズを題材としたバラードナンバーで、良くも悪くもベタベタなラブソング。実売数5位、PCによるCD読取数6位に対してラジオオンエア数13位、Twitterつぶやき数29位と若干奮いませんでした。オリコンでは同作も収録された「WINTERDELICS.EP~あなたといきてゆく~」が初動3万2千枚で3位初登場。前作「[DEATHTOPIA]」の3万5千枚(6位)から若干のダウンとなっています。

6位にはDOBERMAN INFINITY「あの日のキミと今の僕に」がランクイン。ラップというよりもEXILE系らしい男臭さのあるR&B系のラブバラードとなっています。ラジオオンエア数32位、PCによるCD読取数50位、Twitterつぶやき数42位と奮いませんでしたが、実売数で4位を記録しこの位置に。ちなみにオリコンでは初動9千枚で11位とベスト10入りできませんでしたので、どちらかというとダウンロードの売上が好調だった模様。また、Web上のオフィシャルショップから購入すると参加できるイベントがあったため、店頭での売上が伸びなかった影響もある模様。オリコン初動売上は前作「DO PARTY」の2万7千枚(4位)から大きくダウン。

今週の初登場曲は以上。一方、返り咲き組も1曲。荻野目洋子「ダンシングヒーロー」が先週の12位から9位にランクアップし3週ぶりにベスト10返り咲きを果たしました。You Tube再生回数は相変わらず2位をキープ。まだまだヒットが続きそうです。

またロングヒット組ではDAOKO×米津玄師「打上花火」が8位から7位にワンランクアップ。実売数9位、You Tube再生回数はワンランクダウンして5位となりましたが、まだまだ根強い人気を続けており、ロングヒットが続きそう。さらに今週はロングヒットではありませんが、先週10位だったUNISON SQUARE GARDEN「fake town baby」が4位に大きくランクアップ。特に実売数が8位から3位と上昇しており、今後のロングヒットが期待できます。

今週のHot100は以上。明日はアルバムチャート!

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2017年11月28日 (火)

幅広い「ロック」を聴かせる

Title:Scream Above The Sounds
Musician:Stereophonics

日本での人気と知名度は残念ながらそれほどではないものの、本国イギリスでは国民的な人気を誇るギターロックバンドStereophonics。2ndアルバム「Performance and Cocktails」から6thアルバム「Pull the Pin」までアルバムチャート1位を連続して記録。前作「Keep The Village Alive」も1位を記録するなど相変わらず圧倒的な人気を誇っています。本作も1位こそのがしたものの最高位2位を記録。その人気のほどをうかがわせます。

アルバムも2、3年おきに必ずオリジナルアルバムをリリースしてくるなどコンスタントな活動を続けていますが、今回も約2年ぶりとなるニューアルバム。彼らの魅力と言えば、前作の感想でも書いたのですが、ある意味ベタなわかりやすさ。今回のアルバムも例えば1曲目「Caught By The Wind」はある種の泥臭さを感じるもののスタジアムロック的なスケール感のある楽曲からスタート。いかにも大きな会場でのライブ映えをしそうな王道の楽曲からスタートしたかと思えば、続く「Taken A Tumble」は疾走感あるノイジーなギターサウンドからスタート。メロディーもポップで楽曲的にはむしろオルタナ的な楽曲に仕上げており、こちらもこちらでライブで盛り上がりそうな楽曲。彼らの音楽性の広さを感じさせます。

さらに「What's All The Fuss About?」は哀愁感ある泣きメロがさく裂するムーディーなナンバー。後ろに流れるトランペットの響きがある意味思いっきりベタなのですが、そのベタさ加減も含めて非常に心に響いてくる聴かせるナンバーになっており、このような曲もまた彼らの大きな魅力と言えるのでしょう。

そんな楽曲が並んでいる今回の作品もいい意味でStereophoicsらしさを感じるアルバム。いい意味で圧倒的な安定感があり安心して聴いていられます。ただ一方で楽曲的にはここ最近のアルバムの中ではバリエーションの広さを感じさせるアルバムに。上にも書いた通り、最初の3曲も3様の内容になっていましたが、例えば「Chances Are」は四つ打ち的なリズムにギターリフがのる疾走感あるナンバー。ダンスチューン的なノリの良さとロックのダイナミズムを同時に感じられる曲になっていますし、かと思えば続く「Before Anyone Knew Our Name」はピアノのみでしんみり聴かせるバラードナンバーになっています。

ガレージロックなギターサウンドを軽快に奏でる「Cryin' In Your Bear」はロックンロールなナンバーに仕上がっていますし、本編ラストを飾る「Elevators」はアコースティックなサウンドを軸に本格的なブルースロックに仕上げてきています。

毎回彼らのアルバムはロックを聴いたな、という満足感を覚える作品が多いのですが、今回のアルバムに関してもブルースロックから王道のスタジアムロック、ガレージロック、オルタナ系のギターロックまで、ある意味非常に幅広いロックを披露しつつ、どの曲に関してもしっかりとロックの魅力を伝えた作品になっていました。

2009年にリリースされた「KEEP CALM AND CARRY ON」がここ最近の彼らの作品の中では一番の傑作アルバムだったのですが、今回のアルバムはそれ以来、一番の出来だったように思います。毎作のこととはなるのですが、ロックリスナーには安心してお勧めできるアルバム。そんな中でも本作は特に出来のよい傑作アルバムでした。

評価:★★★★★

STEREOPHONICS 過去の作品
Decade In The Sun-Best Of Stereophonics
KEEP CALM AND CARRY ON
Graffiti On The Train
Keep The Village Alive

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2017年11月27日 (月)

甘茶ソウル全開

Title:Mr.Brown Eyed Soul
Musician:Sunny&The Sunliners

今回紹介するのはサニー・オズナというメキシコ系アメリカ人歌手が率いるバンド、Sunny&The Sunlinersが1966年から72年にかけて、キーロックというレーベルに吹き込んだ音源を収録した編集盤。「BLUES&SOUL RECORDS」誌に大きく取り上げられ興味を持ち、今回聴いてみました。

サニー・オズナは1943年にテキサス州はサンアントニアに生まれたチカーノ歌手。チカーノとはテキサス出身のメキシコ系アメリカ人のこと。もともと50年代にチカーノがよく聴いていたのが黒人向けのラジオ局だったようで、そんなチカーノが歌い出したソウルミュージックはチカーノ・ソウルという名前で呼ばれるようになったとか。本作はまさにそんなチカーノ・ソウルの曲を思う存分収録したアルバムになっています。

最初、「チカーノ・ソウル」という言葉を聴いた時に、メキシコ系のソウルということでブラックミュージックながらもラテンの影響を色濃く受けたような、そんな音楽が流れてくるのでは、そう思いながらアルバムを聴き始めました。

しかし実際に聴いてみるとラテン的な要素は皆無。むしろある意味、ソウルミュージック以上にソウルらしい楽曲が並んでいます。よく、とにかくメロウでスウィーティーなソウルミュージックのことを「甘茶ソウル」という言い方をするのですが、彼らの音楽はまさにそれ。例えば「Cross My Heart」の鼻に抜けるようなボーカルとコーラスライン、さらにはそんなボーカルを支える甘いギターやホーンの音色、「Smile Now Cry Later」「Forever」で聴くようなとろけるようなボーカルとメロディーライン。ここらへんを聴けば、おそらく「甘茶」という表現がよくわかるのではないでしょうか。聴いていて、そんなあま~い雰囲気が大好きなソウルリスナーの壺をつきまくるようなボーカルにサウンドが並んだアルバムになっています。

そんな甘いボーカルを聴かせるかと思えば、一方では「The One Who's Hurting Is You」ではJBばりのファンキーなボーカルを聴かせたりしますし、また「Get Down」も印象的なギターリフとホーンセッションでムード感たっぷりのファンキーなサウンドを聴かせてくれるなど、甘い側面のみならず男っぽいファンキーな側面ものぞかせたりするのもおもしろいところ。

かと思えば「Give It Away」はもっとフィリーな雰囲気で、むしろポップス的な要素を感じたり、「I Have No One」はジャジーなスタンダードポップな雰囲気を感じるムーディーなナンバーだったりと、全体的にあま~いメロとサウンドを展開させつつもソウルに留まらない音楽的要素を感じるのもユニークに感じました。

これは個人的な勝手な想像なのですが、チカーノ・ソウルは歌っているシンガーがチカーノというブラック・コミュニティーの外に居るため、むしろソウルミュージシャン以上にソウルっぽい曲が歌われているのではないでしょうか。ともすればあるコミュニティーの内側にいるよりも外にいる人の方が、そのコミュニティーの特徴をより良く捉えていたりするケースは少なくありません。またコミュニティーの外に居るからこそ、逆にソウルに留まらずに様々なジャンルの音楽を取り入れることが出来るという面もあるかもしれません。

そういう意味ではこのアルバムはチカーノ・ソウルの作品だからこそ、ソウル以上にソウルっぽく、かつソウルっぽくない側面も見ることが出来た作品になっていたのかもしれません。ともかく、終始あま~いボーカル、サウンドにとろけそうになる傑作アルバムでした。個人的には今年であったアルバムの中では屈指の傑作。チカーノ・ソウルの魅力にすっかりはまってしまった1枚でした。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Red Pill Blues/Maroon5

約3年ぶりとなる新作。前作「V」同様にエレクトロサウンドで軽快なポップチューンが主体となるアルバム。インパクトあるメロディーラインで楽しめるポップチューンなのはさすがなのですが、全体的にいろいろなジャンルがごちゃまぜだった以前の作品と比べるとすっきりとした「普通の」ポップソングが増えてきてしまい、ちょっと薄味な印象が。いまひとつバンドの「顔」が薄れているような印象も。

評価:★★★

Maroon5 過去の作品
OVEREXPOSED
V

Luciferian Towers/Godspeed You! Black Emperor

カナダのポストロックバンドによる新作。毎作、ダイナミックなバンドサウンドが耳を惹く彼ら。今回もゆっくりとしたギターノイズを響かせるのですが、バイオリンの美しい奏でやホーンセッションの静かなサウンドが流れてきて、ダイナミックさは薄め。逆に美しいそのメロディーラインが耳を惹く内容になっており、彼らのメロディーメイカーとしての意外な才に気が付かされるアルバムになっていました。もちろん聴けば聴くほどはまりこみ、聴き入ってしまう複雑な構成は健在。何度も聴いてみたいアルバムになっています。

評価:★★★★★

Godspeed You! Black Emperor 過去の作品
'Allelujah! Don't Bend! Ascend!
Asunder, Sweet and Other Distress

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2017年11月26日 (日)

復活!

Title:KICK!
Musician:KICK THE CAN CREW

ついにリリースされました!KICK THE CAN CREWの復帰第1弾、約13年8ヶ月ぶりとなるニューアルバム。KICK THE CAN CREWといえばHIP HOPというジャンルがようやく世間一般に認知されてきた2001年にデビュー。2001年に山下達郎の「クリスマス・イヴ」をサンプリングした「クリスマス・イヴRap」、さらには「マルシェ」が大ヒットを記録し、一躍人気ミュージシャンの仲間入りを果たしたものの2004年に活動を休止してしまいました。

その後、MCでトラックメイカーのKREVAの活躍はご存じの通り。もっともKICK THE CAN CREWとしてもすでに2014年にライブにて復活を果たしていますし、それ以前にもメンバーそれぞれがステージで一堂に会するケースは少なくなく、またメンバーのうちLITTLEとMCUのユニットULをKREVAがプロデュースするなど、3人による活動はコンスタントに続いていたため、逆に「まだKICK THE CAN CREWとしてのアルバムはリリースされていなかったんだ」と意外にすら感じてしまいます。

そんな待望のニューアルバムですが、活動再開に向けての決意を感じるアルバムになっていました。まずジャケット。2003年にリリースした「magic number」と同じ構図のジャケットになっています。↓

「magic number」が、というよりも3人並んだジャケットを使いたかったということなのでしょう。14年たって、どこか粋がった若者だった彼らも、大人になったということを感じさせる(思ったほど変わっていないという見方もできるかも(?))ジャケットになっています。

1曲目「全員集合」もタイトル通り、KICK THE CAN CREW再開にふさわしい歌詞といえるでしょうし、続く「千%」も歌詞の中にKICK THE CAN CREWの歌詞や曲のタイトルを入れてきているなど、彼らのいままでの活動の「総括」的な楽曲になっています。活動再開後の冒頭を飾る作品としてはふさわしい曲たちと言えるでしょう。

そんな久々となる彼らの楽曲は全体的に爽快感のあるトラックにのる軽快なラップのナンバーが続いていきます。基本的にはかつてのKICK THE CAN CREWのスタイルから大きな変化はありません。若干残念に感じるのは3MCながらも声質が比較的似ているため、あまりキャラ立ちしていないという点がちょっと残念か。ただ一方でラップに関しては3人それぞれ高いスキルを感じ、かつてよりも成長を感じさせます。

またトラックも耳を惹く曲が多く、「SummerSpot」では今風の爽快なエレクトロトラックが心地よいですし、力強いビートにラテン風のアコギがのる「なんでもないDays」のトラックもとても耳を惹きます。トラックメイカーとしてのKREVAの才もヒカル作品になっていました。

思えばKICK THE CAN CREWがブレイクした頃は、HIP HOPがようやくヒットシーンに出始めた頃だったこともあり、彼らに関しては「ポップすぎる」「売れ線」と一部でDisられたこともありました(キングギドラの「公開処刑」は有名ですね)。ただ今聴くと、そんなに言われるほど「売れ線ポップ」かな、という印象を受けます。彼らがブレイクした頃に比べると、それだけもっとポップなグループも出てきた、ということでもありますし、また、その当時に比べるとHIP HOPというジャンルがより日本でも浸透して様々なタイプのミュージシャンが出てきた、ということも言えるでしょう。彼らが活動休止してから13年、それだけHIP HOPをめぐる状況の変化の大きさも感じました。

そんな訳で見事復活を果たしたKICK THE CAN CREW。ただこの手の活動再開って、しばしば活動再開してアルバムを1枚リリースした後は、活動しているかどうかわからないよなケースがしばしば。それだけに彼らには今後もコンスタントに活動を続けてほしいのですが・・・このアルバムを聴く限り、かつての勢いに全く衰えは感じられません。それだけにこれからの活動に期待です。

評価:★★★★★

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2017年11月25日 (土)

インディーズに戻り新たな一歩を

Title:東京カランコロン01
Musician:東京カランコロン

底抜けに楽しいポップチューンが話題となり、メジャーデビュー初のフルアルバム「We are 東京カランコロン」で高い評価を得た男女5人組ポップスバンド、東京カランコロン。ただ残念ながらメジャーレーベルでは大ブレイクすることなく、残念ながらメジャー契約は終了してしまいました。

その後、インディーレーベルに戻った彼らは「東京再起動プロジェクト」と題して心機一転、あらたな一歩を歩みはじめました。特にインディーズに戻って最初にリリースしたシングル「トーキョーダイブ」はそんな彼らの心境をストレートに表現した作品。

「トーキョー停電見えなくたって、届くよ声は
君ともう一度ワクワクしたいんだ」

(「トーキョーダイブ」より 作詞 東京カランコロン)

という歌詞はまさに新たな一歩を踏み出す彼らの決意を感じさせる一節。このアルバムでも1曲目に収録されており、インディーズに戻った東京カランコロンの最初の一歩として意識して作られた作品になっています。

そしてこの「ワクワクしたいんだ」というフレーズ同様、アルバム全体としてとにかく無条件に楽しいポップソングが並んでいるのが今回のアルバムの大きな特徴でした。「トーキョーダイブ」も疾走感あり歌詞の通りワクワクするポップチューンでしたが、続く「どういたしまして」もシンセを取り入れた楽しくダンサナブルなナンバー。その後もモータウンビート調のリズムが楽しい「ハッピーエンディング」に、先行シングルになった「ビビディバビディ」もマイナーコードのAメロBメロからメジャーコードに転調するサビへの抜け具合がとても爽快で心地よいナンバーになっています。

まさサウンドもシンセを取り入れつつも、ほぼよく分厚いバンドサウンドが心地よい楽曲が耳を惹きます。「321で」「つよがリズム」などがそんな楽曲の典型例でしょうか。ポップスバンドながらほどよくロックのダイナミズムも取り入れているのも特徴的で、この分厚いサウンドにも心地よさを感じます。

最後を締めくくる「走りだせロンリー」も楽しいポップチューンながらもどこか切なさを感じるメロディーラインに彼らのメロディーセンスを感じさせるナンバー。ほどよい爽快感を残しつつアルバムは幕を下ろしました。

今回のアルバムでも東京カランコロンの特徴であるいちろーとせんせいの男女ツインボーカルが効果的に用いられているのも耳を惹きます。ただ今回のアルバムでは、2人の掛け合い的な楽曲はありません。基本的に2人のユニゾンもしくはハーモニーで一緒に歌うか、どちらかがメインを張って片方はコーラスに徹するというスタイルがほとんど。男女ツインボーカルから生じがちな「恋愛関係」を想像できるような形をあえて回避しているようにも感じます。結果、万人が楽しめるポップチューンに仕上げてきていました。

そんなインディーズ復帰により新たな一歩を歩みだした彼ら。ただ昨今、以前よりインディーズとメジャーの違いが少なくなった結果、メジャーデビュー、あるいはインディーズ復帰をことさら強調するミュージシャンも少なくなってきています。そんな中、彼らのようにインディーズ復帰をあえて強調するミュージシャンも珍しいように感じました。

ただそれだけにインディーズに戻り、より彼らのやりたいことが出来るようになったんだな、ということをこのアルバムからは強く感じ、そういう意味で彼らにとってインディーズ復帰が大きな意味を持っているんだ、ということを感じました。いままでのアルバムに比べるとより吹っ切れたものを感じる今回のアルバム。東京カランコロンのいままでのアルバムの中で最もポップだったように感じます。個人的に今年のベスト盤候補。心の底から楽しめる何度でも聴いていたくなるようなポップスの傑作アルバムです。

評価:★★★★★

東京カランコロン 過去の作品
We are 東京カランコロン
5人のエンターテイナー
UTUTU
カランコロンのレンタルベスト
noon/moon


ほかに聴いたアルバム

Paradox/布袋寅泰

前のベスト盤の時にもチラッと書いたのですが、実は布袋寅泰、アルバム単位で聴くのはこれがはじめて。ベスト盤で彼の楽曲をはじめて聴いて「あれ?実は結構好み?」と思い、はじめてオリジナルアルバムも聴いてみました。で、思った以上に楽しめたのが今回のアルバム。意外と洋楽的なテイストが強く、いい意味でのバタ臭さを感じる一方、インパクトあるメロディーラインはJ-POP的。このバランスの良さが魅力的に感じます。今回の作品では「Pandemoniac Frustration」のような社会派な歌詞も登場し、骨太な部分も垣間見れます。また要所要所にギターのソロを挟んでおり、あくまでもギタリストなんだということを強調した部分も感じました。全体的にもうちょっと核になるような曲が欲しかったかな、と思うのですが、予想以上に楽しめたアルバム。次のアルバムも是非聴いてみたいです。

評価:★★★★

布袋寅泰 過去の作品
51 Emotions -the best for the future-

Cashmere/辛島美登里

辛島先生久々の新作は、セルフカバー4曲を含むカバーアルバム。最近、カバーアルバムの頻度が多く、特に「サイレント・イヴ」に至っては何度目だよ・・・感は否めませんが、聴き始めるとやはり実に魅力的なカバーアルバムに仕上がっています。特に彼女の力強くも美しいボーカルは今なお健在で衰えることを知らず、優しい歌声に思わず聴き入ってしまいます。特にほどよく情感を込めつつ、必要以上の仰々しさを感じさせない彼女の表現力は見事。本作はピアノやアコギをメインとした抑えめのアコースティックなアレンジに仕上げているのですが、このアレンジもまた彼女のボーカルの良さを生かしています。ボーカリスト辛島美登里の魅力を心ゆくまで堪能できたカバーアルバムでした。

評価:★★★★★

辛島美登里 過去の作品
オールタイムベスト
辛島美登里 パーフェクトベスト
colorful

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2017年11月24日 (金)

ごはんは誰かと食べたときの方がおいしいのだ!

Title:コメニケーション
Musician:DJみそしるとMCごはん

一貫して「食」をテーマにラップを続ける女性ラッパー、DJみそしるとMCごはん(2人組のような名前ですが、メンバーは一人です。念のため)。「食」というテーマにこだわっているからこそ、毎回ユニークな視点を持った曲をリリースし続けているのですが、今回のテーマは「米ニケーション」。「ごはん」をテーマに「ごはんは誰かと食べたときの方がおいしいのだ!」ということで全8曲、それぞれ他のミュージシャンたちとコラボした楽曲が並んでいます。

そして今回のアルバムはこのコラボレーションがキラリと光った作品に仕上がりました。みんなでごはんを食べることの楽しさを素直に歌った「ライスマイル」は杉並児童合唱団とコラボしているのですが、歌詞のテーマと子供の無邪気な歌声が見事にマッチしています。

中にはDJみそしるとMCごはん以上にコラボ相手の歌が魅力的だった曲もあり、それが「恋はコメ色」でコラボしたHomecomingsと「おにぎりはお守り」でコラボした関取花。Homecomingsはアノラック系と呼ばれるネオアコバンドで軽快で楽しいポップソングが心に響きますし、関取花の曲はアコースティックでフォーキーな楽曲が魅力的。どちらのミュージシャンも名前だけ知っている程度だったのですが、それぞれのアルバムを聴きたくなってしまいました。そしてどちらも暖かい楽曲の雰囲気がDJみそしるとMCごはんの歌詞にピッタリとマッチ。DJみそしるとMCごはん以上に相手が魅力的だった・・・とはいえ、もちろんDJみそしるとMCごはんの楽曲自体の魅力もあってのこと。実に素晴らしいコラボ作でした。

その後も爽快なアイドルポップ風の「米夢☆米舞」や子供向けのポップソングみたいで童心に戻って楽しめる「ライスッス」のようなユーモラスな作品が続くのですが、「CITY RiCE」では実力派のトラックメイカーmabanuaとコラボ。メロウなトラックが耳を惹く、本格的なHIP HOP作に仕上げてきていますし、スチャダラパーのSHINCOとコラボした「わたし、ごはん」はある女の子の誕生から結婚までを「ごはん」の視点から描いた歌詞がちょっと泣ける内容となっており、ユーモラスなだけでは終わらないDJみそしるとMCごはんの魅力を感じる作品に仕上げています。

そして最後は「米」といえばやはり彼らでしょう。米米CLUBとのコラボ。こちらに関しては残念ながらこの作品のために米米が参加した訳ではなく、米米CLUBの楽曲「どんまい」をサンプリングした作品になっていますが、「米」をテーマとして忘れちゃいけない大御所をきちんと抑えたあたりは立派。アラフォー世代のリスナーとしてはちょっとうれしいコラボとなっています。

また今回のアルバムでもうひとつ素晴らしかったのは歌詞。「ごはん」をテーマにしつつもひとりの女の子の人生を描いたり、純粋に食べることの楽しさを歌ったり、また「恋はコメ色」「米夢☆米夢」のようなごはんが好きという気持ちとラブソングをダブルミーニング的に用いている曲があったり、「おにぎりはお守り」ではおにぎりと自分を重ねあわせて女の子の素直な心境を歌ったりと(「おにぎりはお守り」という言葉もいいですね)、「ごはん」というテーマに絞りながらも8曲8様の様々な歌詞に仕上げているところはさすがです。

そんな訳で8曲入りのミニアルバムながらも彼女の魅力と実力を存分に発揮したアルバムに仕上がっていました。「食」をテーマにコミカルな楽曲をリリースしてくるという印象のある彼女ですが、今回のアルバムを聴くと、きちんと実力も備わっているミュージシャンだということにあらためて気が付かされます。「ユニーク」なだけでは終わらない実に魅力的な傑作でした。

評価:★★★★★

DJみそしるとMCごはん 過去の作品
ジャスタジスイ
味の向こう側~入り口~
ごちそんぐDJの音楽


ほかに聴いたアルバム

ナイトライダーズ・ブルース/高田漣

どちらかというとマルチ楽器プレイヤーとしての活躍の方が印象深い高田漣のニューアルバム。ブルースを基調に、ジャズ、ロック、ハワイアンなどルーツ志向の音楽を取り入れて、アコースティックに聴かせる曲が並んでいます。派手さはないのですが良質な大人のポップスといった感じでゆっくりと聴けるアルバムです。

評価:★★★★

高田漣 過去の作品
コーヒーブルース~高田渡を歌う~

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2017年11月23日 (木)

ビーチからやって来る白昼夢

Title:Pacific Daydream
Musician:Weezer

デビュー直後は寡作気味だった彼らもここ最近はすっかり勢いをつけたのかコンスタントなリリースが続いているWeezer。特にバンドのボーカルでありメインライターであるリヴァース・クオモはここ最近、J-POPユニット、スコット&リヴァースの活動も並行して行っており、その勢いを感じさせてくれます。

特にここ最近のWeezerのアルバムは原点回帰を感じさせる彼ららしいパワーポップの作品が続いており、勢いを感じる良い意味での安定感あるアルバムが続いています。スコット&リヴァースでの作品についても良作を続けており、バンドとして脂がのっていることを感じさせてくれました。

そんな中リリースされた今回のアルバムは、ここ最近のアルバムと比べるとちょっと意外に感じるアルバムだったのではないでしょうか。今回のアルバム、制作を続けている最中に「彼らの作っている曲が、世界の果てのビーチからやって来る白昼夢のような感じがすることに気づいた」そうで、その流れにまかせたままリリースされたのが今回のアルバムだとか。まさにアルバムタイトルもそんなイメージから生じているのでしょう。

実際に今回のアルバムはそんなイメージから想像されるような楽曲が並んでいます。1曲目の「Mexican Fender」こそパワポのイメージもある分厚いバンドサウンドのポップチューンなのですが、続く「Beach Boys」はまさにこのアルバムのイメージを象徴するような、爽快さを感じるポップチューンの中にサイケな要素の加わったナンバー。Weezerの一般的なイメージとはちょっと異なる印象を受ける楽曲ではないでしょうか。

中盤の核になっているような「Weekend Woman」もリヴァースらしいキュートなポップセンスが光るナンバーなのですが、サマーポップ的な雰囲気の色濃い、軽快なポップナンバー。後半の「Sweet Mary」もちょっとフィルスペクターばりのポップチューンに仕上がっています。ちなみにこのナンバー、非常にわかりやすいサビを持ったポップになっており、どこかJ-POP的。ひょっとしたらスコット&リヴァースでの活動がWeezerへ逆輸入されたのでしょうか。

楽曲は全体的にビーチで流れているような爽快感を覚えつつも、一方で哀愁感を帯びた楽曲が多く、そういう意味ではまさに彼らがアルバム制作の過程で感じた「ビーチからやって来る白昼夢」というイメージがピッタリと来るアルバムになっていたと思います。

ただWeezerのアルバムとしてどうだったか、と言われると結構賛否両論がわかれそうな問題作ではないかと思います。ここ最近のアルバムで感じたような原点回帰の色はありませんし、Weezerらしいパワーポップのアルバムでもありません。個人的な感想としては正直言って、ちょっと期待していたアルバムとはずれちゃったな、という印象を受けました。

もっとも、かといって彼らが迷走していた訳ではありませんし、今回のアルバムに関しては「こういうコンセプトの下につくったアルバム」であって、いつものWeezerと異なるのもあえて意図したもの。また出来が悪いかといわれるときちんとリヴァースのポップスセンスも要所要所に光を放っており、決してここ最近の勢いが失われたといった感じでもありません。

そういう意味では「これはこれで良いアルバムだった」というちょっと煮え切らないながらも納得のいく作品だったと思います。もっとも逆に今度もこの方向性と言われると、次はやはり彼ららしいパワーポップの作品を聴きたいなぁ、とは思うのですが。これはこれでWeezerの魅力をしっかりと感じたものの、これ1枚で十分かな、と思わせる良作でした。

評価:★★★★

WEEZER 過去の作品
WEEZER(Red Album)
RADITUDE
HURLEY
DEATH TO FALSE METAL
Everything Will Be Alright in the End
WEEZER(White Album)


ほかに聴いたアルバム

Death Peak/CLARK

いまやWARPレーベルを代表するエレクトロミュージシャンになりつつあるCLARKの約3年ぶりとなる新作。比較的ポップでリズミカルな聴きやすいアルバムとなっていた前作と比べると作品の攻撃性がグッとました感じでメタリックで複雑なビートで構成されたサウンドが楽しめます。ただ以前の彼の作品から共通していた、どこかポップなメロディーが流れているという点は本作も共通。複雑そうで実は意外と聴きやすいサウンドが非常に魅力的なアルバムになっていました。

評価:★★★★★

CLARK 過去の作品
Totems Flare
Iradelphic
CLARK

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2017年11月22日 (水)

アルバムは相変わらずの強さで・・・。

今週はアルバムの初登場が少なかったため、Hot100とアルバムチャート同時更新です。

今週のHot 100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

さて、今週はHot100にしてはちょっと珍しく、キャラソンのランクインが目立ちました。アニメやゲームのキャラソンは実売数以外の順位がほとんど伸びず、実売数にしてもCD売上以外はあまり売上を伸ばさないため、オリコンに比べてHot100では上位に食い込みにくいのですが、それだけ今週は全体的に大物の新譜が少なかった影響でしょうか。

まず2位に315STARS「Reason!!」が初登場でランクイン。こちらは男性アイドル育成ゲーム「アイドルマスターSideM」から派生したテレビアニメのオープニングテーマで、登場キャラクターによるキャラソン。CD販売・ダウンロード・ストリーミング数(以下「実売数」)で2位、PCによるCD読取数で5位、Twitterつぶやき数で22位を記録しています。ちなみにオリコンでは同作を収録した「THE IDOLM@STER SideM ANIMATION PROJECT 01『Reason!!』」が初動売上6万枚で2位を記録。同シリーズからのシングルとしては前作「THE IDOLM@STER SideM『Beyond The Dream』」の2万1千枚(5位)からアップしています。

4位にはAqours「勇気はどこに?君の胸に!」が初登場でランクイン。こちらはアニメキャラによるアイドルプロジェクト「ラブライブ」から派生したテレビアニメ「ラブライブ!サンシャイン!!」のエンディングテーマ。実売数及びPCによるCD読取数3位だったものの、Twitterつぶやき数23位、その他はランク圏外となりこの位置に。オリコンでは初動3万7千枚で4位初登場。前作「未来の僕らは知ってるよ」の6万3千枚(3位)よりダウン。

そして9位に一十木音也(寺島拓篤),聖川真斗(鈴村健一),四ノ宮那月(谷山紀章),一ノ瀬トキヤ(宮野真守),神宮寺レン(諏訪部順一),来栖翔(下野紘),愛島セシル(鳥海浩輔)「Shining☆Romance」が初登場でランクインしています。こちらはゲームうたの☆プリンスさまっ♪ Shining Live」テーマソング。実売数で5位、PCによるCD読取数で7位を記録したものの、ほかは全部ランク圏外ということでこの位置に。オリコンでは同作を収録した「うたの☆プリンスさまっ♪ Shining Live テーマソングCD(Shining☆Romance/FORCE LIVE)」が初動4万4千枚で3位初登場。同シリーズのシングルとしえは前作となる鈴木達央&蒼井翔太「うたの☆プリンスさまっ♪ アイドルソング 蘭丸&藍」の2万7千枚(4位)からアップしています。

さて今週1位に戻ります。今週1位は関ジャニ∞「応答セヨ」。映画「泥棒役者」主題歌。実売数1位、PCによるCD読取数2位、Twitterつぶやき数8位。ラジオオンエア数でも14位とジャニーズ系としては比較的良い順位を獲得し、初登場1位となりました。オリコンでも初動売上21万8千枚で1位獲得。前作「奇跡の人」の25万2千枚(1位)からダウン。

ちなみに2位は前述のとおり315STARS。3位は先週1位の嵐「Doors~勇気の軌跡~」が2ランクダウンながらもベスト3をキープしています。

続いて4位以下の初登場曲ですが、今週は残り1曲のみ。10位にUNISON SQUARE GARDEN「fake town baby」が初登場でランクイン。テレビアニメ「血界戦線&BEYOND」オープニングテーマ。実売数8位、ラジオオンエア数10位、PCによるCD読取数6位を記録。You Tube再生回数は82位と伸び悩みましたが、見事ベスト10入りを記録しています。オリコンでも初動売上2万5千枚で6位にランクイン。前作「Invisible Sensation」の1万9千枚(5位)よりアップしています。ちなみにこの前作は今週のHot100では7位をキープ。UNISON SQUARE GARDENは2曲同時ランクインとなりました。

さて今週のロングヒット組はDAOKO×米津玄師「打上花火」。6位から2ランクダウンの8位となりました。ただ実売数は9位、You Tube再生回数は4位をキープしており、まだまだヒットは続きそう。


今週のアルバムチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/ja/

今週は2週連続で1位獲得。

今週1位は安室奈美恵のベスト盤「Finally」が先週に引き続き2週連続で1位を獲得しました。売上枚数は今週も32万1千枚と、2位以下を大きく引き離し文句なしの1位獲得。その強さを見せつけました。

初登場組の最高位は2位の西野カナ「LOVE it」。約1年4ヶ月ぶりとなるオリジナルアルバム。初動売上は7万9千枚を記録し、前作「Just LOVE」の12万6千枚(1位)から大きくダウン。2012年にリリースされた「Love Place」以来3作ぶりに1位を獲得できませんでした。もっとも、前作並に売れていたとしても今週は1位を獲得できませんでしたが・・・。

3位初登場は韓国の男性アイドルグループGOT7「TURN UP」が獲得。初動売上は3万3千枚。前作「Hey Yah」の3万8千枚(3位)よりダウンしています。

続いて4位以下の初登場盤ですが、まず6位に女性声優田村ゆかり「Princess Limited」がランクイン。全8曲入りのミニアルバムとなります。初動売上1万1千枚。直近作は初期ベストの「Early Years Collection」でこちらの4千枚(12位)よりアップ。オリジナルアルバムとしての直近作「螺旋の果実」の2万2千枚(6位)からは大きくダウンしています。

初登場最後、8位には韓国の男性アイドルグループWanna One「1-1=0(NOTHING WITHOUT YOU)」の輸入盤がランクイン。8月にリリースされたアルバム「1X1=1(TO BE ONE)」にリミックス音源や新曲を加えて曲順を変えたリパッケージアルバム。初動売上は9千枚。「1X1=1(TO BE ONE)」の1万3千枚(4位)からダウンしています。

また今週はロングヒットを続けているDJ和「ラブとポップ ~好きだった人を思い出す歌がある~mixed by DJ和」が先週の13位からランクアップして3週ぶりのベスト10返り咲きとなっています。ただし売上枚数は5千枚と先週の6千枚からダウンしています。

今週のチャート評は以上。また来週の水曜日!

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2017年11月21日 (火)

「ジャズの街」がジャズに染まる日

岡崎ジャズストリート2017

会場 岡崎信用金庫本店、東邦ガス 他 日時 2017年11月4日(土)

Okazaki_jazz1

久しぶりにライブサーキット系のイベントに足を運んできました。岡崎ジャズストリート。毎年、岡崎で開催されているジャズ系のライブサーキットです。このイベントが開催された11月4日、ちょうど1日時間が空き、いろいろと調べる中、このイベントにBloodest Saxophoneと土岐麻子というちょうと見てみたいミュージシャンが参加していることを知り、足を運んでみました。

このイベントは「ジャズの街」を標榜している岡崎で開催されているイベント。チケットが必要な全11会場の他、チケットが不要な会場も13か所設け、イベントの最中は町中にジャズが流れ出しているイベントになっています。ちなみにチケットが必要な11会場についても、音楽専門のホールは数か所だけで、他は会社の中のホールだったり、ホテルやお寺の一角だったりを利用しており、街ぐるみで参加しているようなイベント。運営のスタッフも普通のおじさん、おばさんだったり、おそらく地元の高校生と思われる子が運営しており、手作り感覚も感じるイベントになっていました。

Bloodest Saxophone@中部美容専門学校岡崎校

有料会場のステージはこの日は13時からスタート。まずはさっそくお目当てのBloodest Saxophoneを見に会場の中部美容専門学校岡崎校へ。会場は専門学校の中のホール。舞台もないようなステージで、カーテンも特にひかれず明るい状態の中での会場。ライブを見るにはちょっと不思議な感じなのですが、逆にバンドのメンバーは非常に身近に感じられる会場になっていました。Okazaki_jazz2

さてBloodest Saxophoneはアルバムを聴いたことはあるのですが、ライブを見るのはこの日がはじめて。メンバー全員、スーツ姿でビシッと決めています。メインをはっているテナーサックスの甲田'ヤングコーン'伸太郎はスーツにシルクハットで決めて、バリトンサックスのユキマサはスキンヘッド、ホーンのCohは非常に大柄で存在感があり、メンバーのキャラ立ちも十分。見た目も非常に決まっていました。

楽曲はデューク・エリントンの「キャラバン」をカバー。これがサックスの音をブイブイと響かせてスモーキーな雰囲気の渋くカッコイイナンバー。どちらかというと陽の光の差し込むような会場よりも夜のライブハウスが似合いそうな感じなのですが・・・(^^;;さらに同じデューク・エリントンのナンバー「イン・ア・センチメンタル・ムード」。こちらはしんみりと聴かせるナンバーもしっかりと決めてくれます。

その後もギター、ベース、ドラムスだけのナンバーを入れてきたり、トロンボーンのCohがボーカルを取り、古いヒット曲として「スウィート・スー」を歌ったりと、バラエティー富んだ展開に。彼らの楽曲は、1930年代から40年代にかけて流行した「ジャンプ」と呼ばれるビックバンドに影響を受けたアップテンポなブルースがメイン。そのため、楽曲としては戦前や50年代あたりのブルースの香りも漂うようなルーツ志向の楽曲がほとんど。本人たちのパフォーマンスも決まっていて、めちゃくちゃカッコよいパフォーマンスを見せてくれました。正直、真昼間に椅子席で見るよりもライブハウスで思いっきり踊りながら見てみたかったです。予想以上に素晴らしいステージで、これはまたライブを見てみたいなぁ~。今度はビール片手に思いっきり踊りながら見てみたいです!

土岐麻子@岡崎信用金庫本店

続いてはこの専門学校の目の前にある岡崎信用金庫本店へ。この2階のホールで土岐麻子のライブを見に行きます。この信金、全国屈指の規模を誇る信金なだけに本店もかなり大きく重厚感が。ここでジャズのコンサートというのもちょっと不思議な感じ。ホールもそれなりに大きなステージとなっていました。

Okazaki_jazz3

土岐麻子はアルバムこそリリースされるたびに聴いているのですが、ライブを見るのは久しぶり。相変わらずきれいな方で見とれてしまいます(笑)。彼女はジャズというよりもポップスシンガーなのですが、彼女の父親はジャズサックス奏者の土岐英史。本人もジャズのアルバムをリリースしていたりします。それだけにこの日は普段とはちょっと違う、ジャジーなステージになるのか・・・と思っていたのですが、「Beautiful Day」からスタート。その後も「Fancy Time」「Blue Moon」と最新アルバム「PINK」からのナンバーが続き、通常モードのポップスのステージとなっていました。

その後はカバー曲へ。マイケル・ジャクソンの「Human Nature」、ニーナ・シモンで有名な「Feelin' Good」、さらにちょっと変わった選曲で「おてもやん」をポップ風アレンジにして披露してくれました。なんでも最近、日本の民謡に興味が出てきたそうで、この「おてもやん」もなかなかユニークなカバー。この日の選曲の中でも決して浮かずに自然に歌い上げていました。

さらに「僕は愛を語れない」、そしてCMソングにもなりおそらく彼女の曲の中では一番知られていると思われる「Gift~あなたはマドンナ~」で締めくくり。50分の予定がちょっと短めの40分でのステージとなったのですが、基本的にはジャズというよりもポップスの楽曲を聴かせるステージとなりました。

久しぶりに彼女のステージを見たのですが、かわいらしいボーカルも以前から変わりなく、とても楽しいステージを見せてくれました。ジャズを期待した層からするとちょっとポップス過ぎるかな?とも思うのですが、この日、土岐麻子がお目当ての一人だった私にとっては十分満足の行くステージ。彼女のステージ、また見てみたいです。

ユッコ・ミラーBAND@東邦ガス

さて、この日のイベントのお目当て、Bloodest Saxophoneと土岐麻子を見たので、次は何を見ようか迷ったのですが・・・事前にいろいろと調べた結果、ユッコ・ミラーというジャズサックスプレイヤーのライブを見に行くことにしました。非常に若いサックスプレイヤーで(年齢未公表ながらもおそらくは20代前半)、この日のパンフレットに「萌え系ファッションで話題のサックスプレイヤー」と書いてあったのですが、そのような奇抜なファッションといういで立ちながらも、キャンディー・ダルファーやグレンミラー・オーケストラとその実力が非常に高い評判を呼んでいるジャズミュージシャンだそうです。

Okazaki_jazz4

会場は東邦ガスの岡崎営業所内のホール。おそらく普段は研修か何かに使われていそうな比較的こじんまりとした会場ということもあってか、人の入りは超満員になっていました。

で、会場にあらわれた彼女は、カラフルに染めた髪に服はピンクのセーラー服というかなり奇抜なスタイル(笑)。背格好はかなり小柄で、とてもかわいらしい女の子といった感じでした。本人曰く、もともとは違った服装だったそうですがパンフレットに「萌え系ファッション」と書かれた期待に応えるためにドンキホーテで購入したピンクのセーラー服に着替えたそうです。

ちなみにMCでも「萌え系」を意識したようなハイトーンでのトークで、「ミラクル星から来た」というどこかで聴いたようなキャラ設定のいかにもなトークを展開して、会場に微妙な空気感を漂わせていました(笑)。

ただ・・・ライブがスタートするとそんな雰囲気は一転。サックスのプレイはあんな小柄な身体のどこにこんなパワーを秘めていたんだろうと思うようなアグレッシブな演奏。まずは「Yes Or No」というウェイン・ショーターのナンバーからスタートしたのですが、その力強いプレイに一気に惹きこまれました。

その後は彼女のオリジナルアルバムから「Pick Up The Pieces」。さらには彼女のキャラ設定「ミラクル星へ帰る途中の旅についての曲」らしい(^^;;「Miller Crew」を披露。ただ、この「痛い」設定とは異なり、楽曲自体は非常にカッコいいナンバーに。宇宙の旅をイメージしたようなスペーシーなエフェクトを入れたり、さらにダイナミックな演奏が入ったりと、ジャズでありながらもロック的なちょっとプログレっぽい要素も感じられる曲で、非常に惹きつけられました。

一方続く「Lagrimas」というナンバーは一転、ムーディーな雰囲気にしんみりと聴かせる曲に。彼女の風貌からするとかなりギャップのあるナンバーなのですが、非常に表現力豊かなプレイを聴かせてくれます。最後を締めくくるのは「Uptown Funk」というジャズファンクのナンバー。この曲もファンキーなリズムで思わず踊りだしたくなるような曲。最後はユッコ・ミラーが客席の中を歩きながらプレイして観客を沸かせました。

ジャズのイベントながらこの日3組目にしてはじめてスタンダードなジャズのライブを見たのですが、ユッコ・ミラー、その「萌え系」のいで立ちからするとかなりギャップのある非常にカッコいいプレイを聴かせてくれました。最初はかなり小柄に見えた彼女ですが、ステージ上の存在感は抜群で、最後の方はステージの上でかなり大きく見えるように感じれました。MCに関しては正直、かなり引いた部分もあるのですが、それは良くも悪くも彼女のキャラとして(笑)、非常に楽しめたステージ。また機会があれば彼女のステージも見てみたいです。

さてこの日はこの後、もう1ステージあったのですが、個人的な事情のためユッコ・ミラーのステージを最後に会場を離れました。3組のステージでしたがどれも非常に素晴らしいステージばかり。かなり満足感の高いパフォーマンスばかりでした。この日は無料ステージということで街角の至るところでも演奏が行われていたようですが、無料ステージのメインとなる場所は私が足を運んだ有料会場の場所からはちょっと離れており、そちらの雰囲気はあまり味わえなかったのはちょっと残念。ただとても楽しいイベントだったので、また機会があれば足を運んでみたいです。

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2017年11月20日 (月)

さらに勢いを増した新作

Title:MISSION
Musician:NONA REEVES

NONA REEVESのアルバムで前回紹介したアルバムはベスト盤「POP'N SOUL 20~The Very Best of NONA REEVE」。同作の紹介で私は「時代がNONAに追いついた?」という書き方をさせていただきました。彼ら自体は80年代ソウルの影響を強く受けたシティポップをデビュー当初から変わらず演奏していました。以前はシティポップのミュージシャンも決して多くはありませんでしたし、特にNONA REEVESが強い影響を受けているマイケル・ジャクソンをはじめとする80年代のポップミュージシャンは、彼らがデビューした1990年代後半は、今ほど評価が高くなかったように記憶しています。

しかし時代が変わり、現在はマイケル・ジャクソンを含め80年代ポップスが見直されてきました。また、特に最近ではソウル、R&B、ファンクの影響を強く受けたシティポップバンドが数多くデビューして人気を博しています。まさに時代がNONAに追いついた感のある今。事実、彼らのアルバムに関しても徐々に売上を伸ばしているようで、Wikipediaによるとアルバムもここ数作、右肩あがりに最高位を伸ばしており、本作はアルバムチャート42位と(それでもまだまだな感はあるのですが・・・)、自己最高位を記録しています。

実際、自分たちに吹く追い風を彼らも認識しているのか、オリジナルアルバムとしての前作「BLACKBERRY JAM」も非常に勢いのある作品になっていましたし、そして本作に関しても勢いを感じる充実作に仕上がっていました。まず冒頭の「ヴァンパイア・ブギーナイツ」は80年代直系の軽快でファンキーなダンスチューン。ある意味、彼らの王道とも言えるナンバーなのですが、演りたいことを演っているような爽快さを感じます。また、途中のボーカルの溜めは、完全にマイケル・ジャクソンからの影響を見て取れるのも西寺郷太の趣味を色濃く反映しています。

本作はゲスト勢も豪華、かつとても有効に使われています。「Danger Love」ではCharisma.comのいつかが参加していますが、軽快でダンサナブルなチューンにいつかのラップが上手くマッチしています。「未知なるファンク」もゲストの曽我部恵一のハイトーンなボーカルがファンクなディスコチューンに映えています。原田郁子が参加した「記憶の破片」はこのアルバムでは珍しくフォーキーな雰囲気のポップチューンとなっていますが、この曲も2人の息の合ったデゥオが楽しめます。

また今回のアルバム、ファンキーなダンスチューンも冴えまくっている本作ですが、中盤の「NEW FUNK」「NOVEMBER」についてもミディアムテンポでメロウに聴かせるボーカルが魅力的な作品になっており、西寺郷太のメロディーセンスが光る作品になっていました。

本作がNONA REEVESとして決して新しいことを演っているわけではありません。むしろいつも以上に彼らの演りたいことを自由にやっているという印象も受けるアルバムでした。これは全く個人的な主観に基づく感想なのですが、ひょっとしたら以前に比べて彼らのようなタイプの楽曲が世間的にヒットするようになったため、レコード会社側が以前よりも彼らに自由に演らせているのではないでしょうか?いつもに増して彼らの勢いを感じさせる傑作でした。

評価:★★★★★

NONA REEVES 過去の作品
GO
Choice
ChoiceII
BLACKBERRY JAM
POP'N SOUL 20~The Very Best of NONA REEVES


ほかに聴いたアルバム

『櫂』/te'

インストロックバンドte'の新作は前作に引き続き5曲入りのミニアルバム。そのうち「玲瓏たる純潔は『紅炎』の傀儡を疾らせ、暁天に燦めく証を刻む。(改)」はアニメ「ブブキ・ブランキ 星の巨人」主題歌というまさかのアニソンタイアップ!あの複雑な曲がアニメ主題歌として流れるのかよ!と思ったら、アニメバージョンは声優潘めぐみによる歌入り。そちらのバージョンも聴いてみたのですが、ちゃんとアニソンらしい感じになっており、逆にte'のダイナミックなサウンドがアニソンらしさを醸し出していました(ちなみに本作に収録されているのはインスト版です)。

前作「『閾』」ではエレクトロサウンドを入れてきてリスナーを驚かせたのですが、今回は基本的にはte'らしいダイナミックなバンドサウンドがメインとなっている構成。さほど奇をてらったような感じの楽曲もなく、基本的に収録曲5曲が同じ方向性に並んでいる統一感あるアルバムになっていました。もちろん、迫力あり複雑に構成されたサウンドは聴けば聴くほど引き込まれるものがありte'の魅力は本作も健在でした。

評価:★★★★★

te' 過去の作品
まして、心と五感が一致するなら全て最上の「音楽」に変ずる。
敢えて、理解を望み縺れ尽く音声や文字の枠外での『約束』を。
ゆえに、密度の幻想は綻び、蹌踉めく世界は明日を『忘却』す。
其れは、繙かれた『結晶』の断片。或いは赫奕たる日輪の残照。
『閾』

SONGentoJIYU/eastern youth

二宮友和が脱退し、その後が気にかかっていたeastern youthですが新メンバーとしてベースに村岡ゆかが加入。新体制でのスタートとなった彼らが、現メンバーではじめてリリースしたアルバム。ただ、バンドとしての方向性は以前から大きな変化はなく、エモーショナルな激しくも分厚いサウンドに、傷つきながら生きる人たちへの応援歌のような歌詞が大きな魅力に。ある意味、目新しさはなく、そういう意味では「バンドとしてやりつくした」という二宮友和脱退の理由はわからなくもないのですが、ただ、この方向性でもまだまだ魅力的な曲をバンドは奏でることができるということを実感した作品。まだまだ彼らは名作を世に送り出してくれそうです。

評価:★★★★★

eastern youth 過去の作品
地球の裏から風が吹く
1996-2001
2001-2006

歩幅と太陽
心ノ底ニ灯火トモセ
叙景ゼロ番地
ボトムオブザワールド

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2017年11月19日 (日)

政権の腐敗!

Title:MASSEDUCTION
Musician:St.Vincent

お尻(笑)なジャケットがまず強いインパクトのある本作は、ニューヨーク・ブルックリンを拠点として活動を続ける女性シンガーソングライター、St.Vincentのニューアルバム。セルフタイトルとなった前作は各種メディアで絶賛され、年間ベストでも軒並み上位にランクインし大きな話題となりました。それに続く本作は前作の評判を反映してか、全米ビルボードチャートでベスト10入りを記録。イギリスのナショナルチャートでも6位を記録するなどヒットを記録しています。

まず今回のアルバムで日本人にとっては一番インパクトがあったのは表題曲の「MASSEDUCTION」の冒頭。いきなり「政権の腐敗!」という日本語の叫び声の繰り返しがそのまま入っており、日本人にとってはちょっとドキッとさせられます。ちなみに日本語版にはラストにこのフレーズを中心に再構成した「政権腐敗 (Power Corrupts)」という日本語曲(!)も収録されています。

さて、日本人にとってはそんなインパクトある曲が収録されつつ、今回のアルバム、ギターサウンドが印象に残った前作に比べるとエレクトロなサウンドが前に押し出されたポップソングが並ぶ作品となっています。伸びやかなボーカルで聴かせるメロが印象的な1曲目「Hang On Me」も静かな打ち込みのリズムが主導した作品ですし、「Pills」もシンセのサウンドが軽快でリズミカルなポップソングに仕上がっています。

特に「Sugarboy」は軽快なテクノポップチューンになっており、ちょっとエキゾチックな雰囲気は東洋的な雰囲気も感じさせるナンバー。後半にも「Young Forever」のようなテクノポップ的な色合いが強い曲が並んでおり、エレクトロテイストの強い作風になっています。

もっとも途中、「Fear The Future」のようなインダストリアルな曲も入っていたりしますし、楽曲の途中でノイジーなギターが挿入される曲も少なくなく、今回の作品でもしっかりとダイナミックなギターサウンドが主張している曲も少なくありません。全体的には「宅録」的なイメージがあるのは前作と同様。前作も打ち込みのサウンドを取り入れていましたし、そういう意味ではエレクトロな部分を前に押し出したか、ギターサウンドにインパクトをもたせたかの違いはあるのですが、基本的な方向性は前作と変わらない、ということが言えるかもしれません。

また「New York」「Smoking Section」のようにシンプルなサウンドでメロディーラインをしっかり聴かせる曲もあり、メロディーメイカーとしての彼女の実力も感じることが出来ます。前述のエレクトロなポップソングもインダストリアルな曲もメロディーに関してはインパクトあるポップなメロディーラインが流れており、このメロディーの良さもなにげに彼女の大きな魅力だったりします。

個人的にはむしろ話題になった前作よりもこちらの方が好きかも、と思うほど、魅力的な傑作アルバムでした。アバンギャルドな面もありつつ、基本的には彼女のポップスシンガーとしての魅力を全面的に感じられる傑作です。

評価:★★★★★

St.Vincent 過去の作品
St.Vincent

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2017年11月18日 (土)

ちょっと「地味」なコラボかもしれませんが。

Title:Lotta Sea Lice
Musician:Courtney Barnett&Kurt Vile

非常に興味深いコラボ作がリリースされました。Courtney Barnettはグラミー賞最優秀新人賞にノミネートされたオーストラリアの女性ロッカー。一方、Kurt Vileは元The War On Drugsでギタリストとして活動し、現在はソロで活動するミュージシャン。フェスなどで何度か出会ううちに徐々に仲良くなり、今回のコラボにつながったそうです。

Courtney Barnettの曲はPIXIESやSonic Youthあたりを彷彿とさせるような80年代インディーロック直系の音。一方Kurt Vileは最新作「B'lieve I'm Goin Down…」を聴いたのですが、アコースティックでフォーキーな楽曲がメイン。その方向性は若干異なるようにも感じます。ただ、どちらもローファイ気味な楽曲という方向性は共通。コートニー自体、雑誌のインタビューで「音楽的な波長があった」といっていますが、楽曲の根底に流れているものは似ていたということなのでしょう。

実際に今回のアルバムで2人のコラボを聴くと、その相性は非常に良いものに感じます。楽曲はアコースティックなサウンドでローファイ気味なポップス。ブルージーな「Continental Breakfast」、カントリー風な「Blue Cheese」、そしてラストを飾る「Untogether」はフォークとバリエーションを持たせつつ、いずれもアコースティックな作風でルーツ志向を感じる作品に。楽曲のタイプ的には最新アルバムではKurt Vileのイメージにより近いように感じます。

またローファイ気味ということで力の抜けたよい意味でのけだるさを感じるのも魅力的。1曲目「Over Everything」はけだるい中でも爽やかさを感じる作品で、遅くまで寝ていた日曜日の朝といった感じのイメージでしょうか。続く「Let It Go」もゆっくりと鳴らされるギターでけだるさを感じる作品になっています。こういう力の抜けた楽曲を自然体で演れるというあたり、2人の相性の良さを感じます。

楽曲は当初は2人がデゥオのようなスタイルの曲が並びますが、中盤以降はそれぞれがメインを取って歌う形に。今回のアルバムの中では「Outta The Woodwork」はコートニーの作品をカートが、逆に「Peepin' Tom」はカートの作品をコートニーが、それぞれカバーするスタイル。原曲からは大きく逸脱していないものの、それぞれがそれぞれの持ち味を出したカバーになっており、それが楽曲にしっかりとマッチしているあたり、両者の音楽性の近さを感じます。

アルバム全体としては静かにギターをつま弾くような演奏スタイルがメインなだけに派手さはありません。アルバム全体としては正直、地味という印象を強く受けるかもしれません。そんなアルバムなだけに、逆に2人のメロディーメイカーとしての才能が発揮されたアルバムになっており、派手さはないもののしっかりと心に残るメロディーが非常に魅力的なアルバムになっていました。このコラボ、なかなかいいですね。これからもコンスタントに実施していくのかどうなのか・・・是非、またこのコンビでアルバムを聴いてみたいです!

評価:★★★★★

Courtney Barnett 過去の作品
Sometimes I Sit & Think & Sometimes I Just Sit

Kurt Vile 過去の作品
B'lieve I'm Goin Down…


ほかに聴いたアルバム

The Best/Ariana Grande

アメリカのシンガーソングライターで日本でも高い人気を誇るアリアナ・グランデの、日本限定リリースのベスト盤。エレクトロ、ソウル、レゲエ、ロック、HIP HOPなど幅広いジャンルの音楽を取り入れた楽しいポップソングが並んでいます。ある意味、非常に聴きやすくいい意味で万人受けしそうなポップソングの連続。世界的な人気も納得なベスト盤でした。

評価:★★★★★

Ariana Grande 過去の作品
My Everything

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2017年11月17日 (金)

圧倒的な強さで・・・

今週のアルバムチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/ja/

今週1位は・・・圧倒的な強さであのベスト盤が1位獲得です。

今週1位は来年9月での引退を表明している安室奈美恵のベスト盤「Finally」。デビュー曲「ミスターU.S.A.」から最新シングル「Just You and I」までの全シングルを収録。今の彼女の立ち位置からすると若干「黒歴史」的な部分もある小室プロデュース期以前の曲もきちんと収録されている点も驚きです。さらに初動売上はなんと111万3千枚(!)。CDではなくイベント目当てのアイドル系のCD以外で今時初動ミリオンに到達するというのが驚き。それだけ彼女の高い人気を目の当たりにした結果でした。もちろん直近のオリジナルアルバム「_genic」の16万枚(1位)からも大きくアップ。

2位は先週1位の米津玄師「BOOTLEG」がワンランクダウン。そして3位にはアメリカのカントリー系ポップミュージシャン、Taylor Swift「Reputation」が初登場でランクイン。初動売上2万8千枚は前作「1989」の5万2千枚(3位)からダウン。ただし水曜日リリースだった前作に対して、本作は全世界でのリリースにあわせて金曜日リリースとなっています。

続いて4位以下の初登場盤です。まず4位に刀剣男士 formation of 三百年「ミュージカル『刀剣乱舞』 ~三百年の子守唄~」がランクイン。育成シミュレーションゲーム「刀剣乱舞」をもととしたミュージカルのサントラ盤。初動売上は1万8千枚。同ミュージカルのサントラ盤では前作刀剣男士 team新撰組 with蜂須賀虎徹名義の「ミュージカル『刀剣乱舞』~幕末天狼傳~」の1万9千枚(7位)から若干ダウンしています。

5位には韓国の男性アイドルグループSeventeenの韓国リリースのアルバムの輸入盤「Teen,Age:Seventeen Vol.2」が初登場でランクイン。初動売上1万8千枚は前作「AI 1:4th Mini Album」の1万6千枚(9位)から若干のアップ。

6位初登場は女性ボーカル+男性3人というスタイルの4人組ロックバンド、ポルカドットスティングレイ「全知全能」がランクイン。ミニアルバムだった前作「大正義」に続く2作連続のベスト10入り。初動売上1万6千枚は前作の初動8千枚(7位)から大幅アップしており、人気上昇中であることをうかがわせます。

最後8位9位には中森明菜の2枚のアルバム「Cage」「明菜」がそれぞれランクインしています。「Cage」は80年代のディスコチューンをカバーしたカバーアルバム。「明菜」はオリジナルアルバムとなります。初動売上はそれぞれ7千枚と6千枚。ただ、わずかとはいえオリジナルよりもカバーアルバムが上位に来るのはちょっと寂しい印象を受けてしまいます・・・。直近作はカバーアルバムの「Belie」で、こちらの初動9千枚(8位)より若干ダウン。またオリジナルアルバムとしては前作の「FIXER」の初動8千枚(7位)よりも若干ダウンしています。

今週のアルバムチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2017年11月16日 (木)

すいません、1日遅れての更新です。

今週のHot 100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

諸般の事情により1日遅れての更新となりました。アルバムチャートは明日更新予定です。

さて今週1位を獲得したのは「Doors~勇気の軌跡~」が獲得。日テレ系ドラマ「先に生まれただけの僕」主題歌。CD販売・ダウンロード・ストリーミング数(以下「実売数」)及びPCによるCD読取数では1位、Twitterつぶやき数では3位を記録していますが、一方ラジオオンエア数は98位に留まっています。オリコンではもちろん初登場1位。初動売上57万1千枚は前作「つなぐ」の38万9千枚(1位)からアップしています。

2位は女性アイドルグループ私立恵比寿中学「シンガロン・シンガロン」が初登場。Mrs. GREEN APPLEの大森元貴が楽曲提供した爽快で賑やかなシンセポップチューン。実売数2位でしたが、一方ラジオオンエア数31位、PCによるCD読取数11位、Twitterつぶやき数8位という結果に。初動売上7万1千枚は前作「まっすぐ」の1万4千枚(7位)から大幅アップ。これは前作では握手会をやめたそうですが、今回では再び握手会を行ったことによる要因が大きい模様。ちなみに前々作「スーパーヒーロー」は初動6万8千枚で本作とほぼ同水準でしたので、まさに差額は握手会目当ての購入分ということでしょうね。あまりにわかりやすい・・・。

3位は先週2位にランクインしたTWICE「LIKEY」がワンランクダウンながらもベスト3をキープ。実売数は11位に留まっているもののTwitterつぶやき数及びYou Tube再生回数ともに1位を獲得し、この順位となっています。ちなみに彼女たちは10位に「One More Time」もランクインしており、2曲同時ランクインとなっています。

続いて4位以下の初登場曲ですが、まず8位に女性コーラスグループLittle Glee Monster「OVER」がランクイン。実売数6位ながらもラジオオンエア数16位、PCによるCD読取数33位、Twitterつぶやき数30位にとどまり、結果、この順位となっています。オリコンでは初動1万8千枚で6位初登場。前作「明日へ」の1万9千枚(2位)から微減となっています。

初登場最後は9位にランクインしたロックバンドUNISON SQUARE GARDEN「Invisible Sensation」が先週の85位からCD発売にあわせてランクアップしてベスト10入り。アニメ「ボールルームへようこそ」オープニングテーマ。実売数は12位に留まりましたが、ラジオオンエア数9位、PCによるCD読取数4位を獲得しベスト10入りです。オリコンでは初動1万9千枚で5位初登場。前作「10% roll,10% romance」の2万7千枚(3位)よりダウンしています。

今週は他にベスト10返り咲きが1曲。HKT48「キスは待つしかないのでしょうか?」が先週のベスト100圏外から7位に再浮上。8月14日付チャートで1位を獲得して以来、14週ぶりのベスト10返り咲きとなっています。これは握手会用に通販で販売されている劇場版CDが配送された影響のようで、オリコンでも今週3位にランクアップしています。Hot100では実売数で3位にランクインした他はすべて圏外になっています。

またロングヒット組ではDAOKO×米津玄師「打上花火」が4位から2ランクダウンして6位に。米津玄師「灰色と青(+菅田将暉)」も今週5位にランクインしており、2曲同時ランクインとなりました。ちなみに先週までロングヒットを続けていた乃木坂46「いつかできるから今日できる」は今週18位までランクダウン。ベスト10入りは7週で終わりました。

今週のHot100は以上。アルバムチャートはまた明日に!

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2017年11月15日 (水)

アジテーショナルな主張がインパクト

Title:Prophets Of The Rage
Musician:Prophets Of The Rage

昨年のアメリカ大統領選挙直前に結成し話題となったスーパーバンド、Prophets Of Rage。Rage Against The Machineのザック・デ・ラ・ロッチャ以外のメンバーにPublic EnemyのDJロード、チャックDの2人、さらにCypress HillからB-リアルを迎えてのバンド。大統領選後にリリースされたEP盤「THE PARTY'S OVER」も大きな話題となりました。

今回リリースされたのはそれから約1年後にリリースされた待望のデビューアルバム。聴いていてとにかく印象に残るのはトム・モレロのギターリフ。非常に力強い特徴的なギターリフは一発で彼の演奏だとわかります。この特徴的なギターリフが主導している楽曲だなけに基本的にはザック抜きのRage Against The Machineという印象を受けてしまいます。

このトム・モレロ主体のバンドサウンドにのるのが3人のMCによるラップ。いつも以上にアジテーショナルなラップが印象的で、このラップがへヴィーなバンドサウンドやトム・モレロのギターにもピッタリとマッチ。これが2作目のアイテムながらもメンバー全員の相性の良さを感じます。

そしてやはり印象的なのがその歌詞。ジャケット写真自体が、共産主義の象徴である赤い星に突き上げるこぶしというその主張をはっきりと表に出したものになっています。昔ながらの左翼的な主張もRage Against The Machineのスタイルを踏襲したものとなっています。

そんな歌詞はとにかくみんなが叫びすいようにわかりやすく主張を伝えるような歌詞が目立ちます。例えば「Unfuck The World」では

「No Hatred
Fuck Racists
Blank Faces
Time's Changin
One Nation
Unification
The Vibration
Unfuck the World!」

(訳 憎しみをなくせ
クソ差別主義者どもめ
うつろな顔
時代はかわる
一つの国家
統一
感情
世界を取り戻せ!)

と直観的で非常にわかりやすい歌詞になっており、ライブなんかで大勢で一緒にこぶしをつきあげて歌ったら、気持ちいいだろうなぁ(そして直ぐに影響されそうだなぁ)と感じる歌詞になっています。

ただ、これは前作「THE PARTY'S OVER」でも感じたのですが、良くも悪くも旧来通りの左翼思想が貫かれているのが気になります。例えば「Strength In Numbers」は数の力のために団結せよと歌うナンバー。これを力強いラップとバンドサウンドで歌われると思わず同調しそうになるのですが、正直言って時代遅れな感じは否めません。

結果として前作と同じような感想なってしまうのですが、こういうスタイルが支持されなくなってきている今だからこその新しい道を目指してほしいとも思ってしまうのですが・・・良くも悪くも昔ながらのスタイルが貫かれたアルバムになっています。楽曲的にも文句なしにかっこいいし、その演奏にはグイグイ引き込まれるのですが、やはり目新しさはありませんでした。楽曲的には文句なしにカッコいいんですけどね。とりあえずRage好きにはまずチェックしたいアルバムです。

評価:★★★★

Prophets Of Rage 過去の作品
THE PARTY'S OVER


ほかに聴いたアルバム

COLORS/BECK

前作「Morning Phase」から約3年半ぶりとなるニューアルバム。基本的に難しいことで楽しめるような軽快なポップチューンが並んでいます。基本的に打ち込みのサウンドをメインとしたリズミカルなポップソングがメイン。いい意味で聴きやすく、難しいこと抜きで楽しめるような楽曲が並んでいました。ただ全体的にバリエーションはちょっと少な目で、薄味といった印象を受けたアルバム。文句なしに楽しめるポップアルバムではあると思うのですが。

評価:★★★★

BECK 過去の作品
The Information
Mordern Guilt
Morning Phase

BEAUTIFUL TRAUMA/P!NK

アメリカの女性シンガーソングライターP!NKの5年ぶりとなるニューアルバム。ある意味王道的なメロディアスなポップチューンがメイン。R&B的な要素をベースとしつつ、ラップを入れてきたりロックな要素を強くしたり、ラテンの要素を入れてきたりと幅広いジャンルを取り入れつつ、しっかりP!NKらしいポップチューンにまとめています。

評価:★★★★

P!NK 過去の作品
FUNHOUSE

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2017年11月14日 (火)

デビュー作でいきなりブレイク!

Title:girls like girls
Musician:yonige

最近 ガールズバンドが人気を博しています。言うまでもなくチャットモンチーがその嚆矢なのでしょうが、その後もねごと、赤い公園、tricotなど次々とバンドがデビューしてきました。特にそんな中でもSHISHAMOは武道館ワンマンも成功させるなど、チャットモンチーに続く人気バンドの地位を確実なものとしています。

おそらくそんな人気バンドの仲間入りを果たしそうなガールズバンドが彼女たちyonigeでしょう。メジャーデビューアルバムである本作ではいきなりベスト10ヒットを記録し、一躍ブレイクを果たしました。メンバーは牛丸ありさとごっきんの2人組。特に作詞作曲を担当する牛丸ありさはオーストラリアと日本のハーフでAC/DCのベーシストだったラリー・ヴァン・クリートの姪ということでも話題になっています。

ガールズバンドというとポップなメロディーラインを書くバンドがメインなのですが、その中で彼女たちはロック寄りのサウンドを奏でていることも大きな特徴となっています。特にサウンドはフィードバックノイズを前面に押し出したギターサウンドを中心とした構成となっており、イメージとしては80年代のインディーロックバンドに近いもをがあります。また、同じガールズバンドとしては大先輩であるnoodlesに近いかもしれません。

またそんなへヴィーなバンドサウンドである一方、メロディーラインは至ってポップであり他のガールズバンドと同様にポップリスナーにも訴求力があるのも特徴的。キュートでポップでキャッチー・・・といった感じではありませんが、ヒットチャートでも十分戦えそうなメロディーラインを書いているバンドであることは間違いありません。

ガールズバンドといえば歌詞は女の子の心境を繊細な描写で描いており、多くの女性陣ばかりではなく、男性陣にも共感を得るような歌詞を描くようなバンドが多いのですが、yonigeに関しても女の子の微妙な心象風景を描いている歌詞が大きな魅力となっています。特に具体的なアイテムを上手く用いた歌詞がひとつの特徴になっているように感じます。

例えば「ワンルーム」では

「あけっぱなしの便器がやけにリアルで恥ずかしくなった
君を泊まらせた後の誰もいないワンルーム」

(「ワンルーム」より 作詞 牛丸ありさ)

と、「あけっぱなしの便器」という歌詞ではあまり用いられないアイテムを上手く織り込み、恋人が帰った後の複雑な心境を上手く描写しています。

また「各駅停車」

「各停しか止まらない駅の
プラットホームで待っている」

(「各駅停車」より 作詞 牛丸ありさ)

は、各停しか止まらないようなさびしい駅の風景と自分の心境を上手く重ね合わせた歌詞に。まあ駅のプラットホームは歌詞のアイテムとしてはよく用いられるものではありますが・・・。

そんな訳で、チャットモンチーやSHISHAMOよりもロック寄りでありつつも、他のガールズバンドの魅力をきちんと備えた彼女たち。これからも活躍もかなり期待できそう。ちょっと残念だったのはドラムスがいないバンドなだけにドラムスが目立つ曲があまりなく(「トーキョーサンセットクーズ」では力強いドラムが印象に残りましたが)、ちょっと低音部分に物足りなさを感じた点でしょうか。そういう意味でもこれからまだまだな部分も感じたのですが、それを差し引いてもこれからの活躍が楽しみになってくるバンド。昨日の台風クラブに引き続き、期待値を込めての評価ですが、次のアルバムも楽しみです!

評価:★★★★★

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2017年11月13日 (月)

京都発、今のバンド・・・?

Title:初期の台風クラブ
Musician:台風クラブ

今回は今、注目の新人バンドのアルバムの紹介です。京都出身の3ピースロックバンド、台風クラブ。クリープハイプの尾崎世界観やスカートの澤部渡も絶賛しているバンドだそうで、本作がデビューアルバム。

アルバムジャケットからしていかにも60年代のフォークソングのミュージシャンを彷彿とさせますし、実際、ジャケットはLP風の仕様に仕上がっています。「初期の+バンド名」というアルバムタイトルもいかにも昔風(まあ具体的には「初期のRCサクセション」を思い出しますが)。ジャケット写真にうつった風貌からしても、カレッジフォークを思い起こさせるような時代をタイムスリップしたようなジャケットがまず強く印象に残ります。

ただ、そんな印象からアルバムを聴いてみるとちょっと予想とは異なるようなサウンドが耳に飛び込んでくるのでちょっと驚かされるのではないでしょうか。1曲目「台風銀座」のイントロは80年代あたりのインディーギターロックのそれ。思いっきりPIXIESあたりを思い出させるのですが、楽曲がスタートすると今度はエフェクトをかけたダブのサウンドに脱力感あるボーカルはボ・ガンボスのどんとを彷彿とさせるもの。ダビーな楽曲と共にボ・ガンボス直系の音作りを感じさせます。そういえばボ・ガンボスの全身バンド、ローザ・ルクセンブルグは彼らと同じ京都から出てきたバンドでしたね。

バンドサウンドとしてはガレージロックを主体としたへヴィーなバンドサウンドを奏でています。ただ、その一方ではブラックミュージックからの影響を強く受けたサウンドが特徴的で、続く「ついのすみか」「ダンスフロアのならず者」などメロウなシティポップのサウンドが流れるさわやかなナンバーになっています。

ただボーカルの石塚淳は独特なしゃがれ声が特徴的。これに荒々しいガレージサウンドが加わるため、楽曲全体としてはかなり荒削りな印象すら受けます。このミスマッチともいえる石塚淳のボーカルに意外なほどメロウなサウンドのバランスがバンドの大きな特徴ともいえるでしょう。もっとも石塚淳のボーカルは良くも悪くも癖があるため好き嫌いはわかれるかもしれません。パッと聴いて受け付けないという方も少なくないかもしれません。

このガレージロックをベースとしつつさりげなく様々なジャンルを取り込んでいるというスタンスは非常におもしろく、「ずる休み」は60年代風、「昔は昔」ではモータウンビートを聴かせてくれますし、「42号線」はブルースロック路線。「飛・び・た・い」ではファンクのリズムを聴かせてくれます。

アルバムタイトルやジャケットから印象を受けるカレッジフォークの印象は正直なところほとんどないのですが、ただ楽曲自体はルーツ志向な部分も強いため60年代的ななつかしさを感じさせます。ボーカルのしゃがれ声が楽曲をちょっと邪魔してしまっているような部分もあり、そういう意味でもまだまだバンドとして荒削り、成長の余地は感じられるのですが、既に独特の個性を持っており、今後が非常に楽しみになってくるバンドです。評価はそこらへんの期待値込みで。次回作も楽しみです。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

北極星/藤巻亮太

現在、活動休止中のレミオロメンのボーカル、藤巻亮太によるソロ3枚目となるフルアルバム。基本的にはレミオロメンからのソロというよりはレミオロメンの延長線上のような作品が多く、レミオロメンの楽曲でも感じた藤巻亮太のポップスセンスがキラリと光る作品になっています。

ただ以前より必要以上に分厚いサウンドが気になっていたのですが本作もその傾向が続いています。特に本作、レミオロメンの名曲「3月9日」のセルフカバーが収録されているのですが、アコギのみでいい感じのスタートとなっているにも関わらず、途中からいきなりホーンが入ってくるのですが、正直、ホーンの必要性がかなり疑問なカバーになっていました。

全作同様、良質なポップスアルバムなのは間違いないのですが、レミオロメン復活はまだまだ遠いなぁと感じてしまうアルバム。またもっとシンプルなポップアルバムの方が彼のメロディーや歌詞には合うと思うんですが・・・そういう点はちょっと気になりました。

評価:★★★★

藤巻亮太 過去の作品
オオカミ青年
旅立ちの日
日日是好日

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2017年11月12日 (日)

1日1曲 最終回

今年の年初から何度か紹介してきた日本のポピュラーミュージックの名曲を1日1曲というコンセプトで1年かけて紹介しようという企画「大人のJ-POPカレンダー 365 Radio Songs」。いままで1回毎に3枚ずつ、計第3弾まで紹介してきましたが、今回はついに最終回です。

Title:大人のJ-POPカレンダー~365 Radio Songs~「10月 空と星」

まず10月はDisc1が「失恋ソング」、Disc2は「空と星の歌」となっています。10月のテーマがなぜこれになるのかいまひとつ不明なのですが、10月は音楽的にピッタリと来るような記念日がないから漠然と「秋」のイメージでテーマを設定したのでしょうか。

「失恋ソング」の方はある意味、ポピュラーミュージックの定番中の定番なのですが、なぜか「歌謡曲」が多く、フォーク、ニューミュージック、あるいは「J-POP」と呼ばれて以降の曲があまり選曲されていないのは残念。失恋ソングの定番中の定番、槇原敬之の曲とか選んでほしかったのですが・・・。「空と星の歌」はさすがにこのテーマだとしんみりと聴かせるような楽曲がほとんど。切なさを感じさせる曲も多く、日本人が「空と星」からイメージするのはみんな似たような感じになるのでしょうか?

評価:★★★★

Title:大人のJ-POPカレンダー~365 Radio Songs~「11月 家族」

正直この企画、1月からスタートし、月が進むにつれ、若干だれ気味に感じていた部分もあったのですが・・・この11月については、同オムニバス全12枚のうち文句なしの最高傑作。名曲が並ぶコンピレーションになっていました。

特に「労働の歌」がテーマとなっているDisc1が素晴らしい。もともと「労働歌」はポピュラーミュージックのある種の定番であるものの、歌謡曲やJ-POPではどうしても内容が暗くなりすぎるのか、あまりテーマとして取り上げられずらい分野ではありました。それだけにあえて働く人にスポットをあてた曲というのは作り手の思い入れがあるのか、傑作が多かったように思います。

斉藤和義の「おつかれさまの国」というサラリーマンの応援歌的な曲からスタートし、植木等の「ドント節」は「昭和」を感じる歌。「サラリーマンは気楽な稼業ときたもんだ」は今でも有名なフレーズですが、高度経済成長期を感じさせる歌詞の内容は今とは隔世の感もある、時代性を感じさせる1曲です。

中盤は岡林信康「チューリップのアップリケ」、高田渡「鉱夫の歌」など社会の底辺に生きる人たちにスポットをあてた曲が並んでおり、胸をうちます。最近では美輪明宏の歌で有名になった「ヨイトマケの唄」は、このコンピでは村上"ポンタ"秀一名義で泉谷しげるがボーカルを担当していますが、こちらもある意味荒々しくも力強いボーカルが曲にマッチしており、名カバーに仕上がっています。

この路線の曲では元ブルーハーツ、今はクロマニヨンズとして活躍している真島昌利の「煙突のある街」が秀逸。こちらも社会の底辺を生きる労働者の声を歌にした内容なのですが、「底辺」に限らず社会の歯車のひとつとして働きつづける私たちにとっても心に響く歌詞になっています。そんな労働者の叫びにレゲエのサウンドがピッタリとマッチ。真島昌利の心の底からはきだすよなボーカルも胸をうつ傑作となっています。

後半には浜田省吾「I am a father」、忌野清志郎「パパの歌」など、父親に捧げる曲が並びます。「労働=父親の役目」というのはちょっと古い価値観では?ここらへんはDisc2の「家族の歌」に収録すべきでは?とも思うのですが、数多く母親に対する歌に対して、あえて父親に捧げる歌を歌うあたり、ミュージシャンの力が入っていることがわかる名曲になっています。

一方Disc2は「家族の歌」。最初はよくありがちな「親に感謝」的な曲が並んでいるのでは?という危惧があったのですが、その手の曲は同コンピの5月に収録されていた「母の歌」に並んでいたようで、こちらは感謝というよりは親、息子、兄弟に対する素直な思いを綴る曲が並んでいました。

そんな思い入れが深い曲が並ぶ中、奥田民生の「息子」のような飄々とした曲が並んでいたのもバランスが良い感じ。で、楽曲自体はよく知っていたのですが、今回ちょっと意外な発見があったのが赤ちゃんソングの定番中の定番「こんにちは赤ちゃん」。純粋な赤ちゃんへの讃歌と思っていたのですが、2番にこんな歌詞が・・・

「こんにちは 赤ちゃん お願いがあるの
こんにちは 赤ちゃん 時々はパパと
ほら 二人だけの 静かな夜を
つくってほしいの」

(「こんにちは赤ちゃん」より 作詞 永六輔)

と、さらっとおそらく夜中の授乳や夜泣きで、夜がなかなか寝られない母親の育児の苦労がさらっと歌われていることに気が付かされます。こういうフレーズを自然に入れてくるあたりがさすが・・・といった感じ。意外な発見でした。

ただ一方で今回、もっとも違和感のあった曲があって、それが樋口了一の「手紙~親愛なる子供たちへ~」。一部で「泣き歌」として話題になったようですが、歌詞の内容を簡単に書くと、「昔、子供たちの世話をしたんだから、老人になったら介護してね」と親から子供にお願いしている歌。いや、これはないだろう。同じ内容を子供から親に歌うのならわかります。ただ、子供を持つ親としては子供に将来、自分の介護で苦労してほしい、なんてことは全く思いません。いや、子供に介護で苦労してほしいなんて願う親ってそんなにいるんでしょうか?もちろん、子供として親に対して思う気持ちは全く違いますよ。でも、私はこの曲、全く泣けず、むしろ引いてしまいました。

逆にDisc2で思わず泣けそうになったのが森本レオの「親父にさよなら」。え?森本レオが歌?と思ったのですが、基本的にインストをバックに彼が語るスタイル。いわゆる「ダメ親父」的な等身大の父親像をコミカルに描きつつも、亡くなった父親への想いを語る曲で、ユニークながらも涙腺がゆるんでしまう名曲でした。

そんな訳で違和感ある曲もありましたが、名曲揃いの本作。このシリーズ、全作通して聴かなくてもこの「11月」だけは聴いてみてほしいと思わるような内容でした。

評価:★★★★★

Title:大人のJ-POPカレンダー~365 Radio Songs~「12月 家族」

で、このシリーズラストを飾るのが本作。Disc1のテーマは「クリスマスソング」なのですが、さすがにテーマ性がテーマ性なだけに「歌謡曲」はゼロ。統一性が取れた内容になっているのですが、J-POPと歌謡曲を同じ俎上にのせて構成されているのが本作の魅力なだけにちょっと残念といえば残念。また、広瀬香美の「Dear...again」と山下達郎の「クリスマス・イヴ」はなぜかカバーで収録。ここらへんは大人の事情でしょうか?「Dear...again」をカバーしたMs.OOJAは、ちょっと癖のあった広瀬香美とは異なり、さらっと歌い上げていて、曲本来の良さを上手く出せていたと思いますが、一方「クリスマス・イヴ」をカバーした坂本冬美は、演歌独特のねちっこい歌い方が元曲にはちょっとあっておらず、違和感の残るカバーになっていたのが残念でした。

Disc2のテーマは「故郷の歌」。テーマ的に歌謡曲がメインかと思いきや、意外とJ-POP以降の作品が多く、時代を問わず歌われるテーマなんだなと感じます。特に注目したいのが畠山美由紀の「わが美しき故郷よ」。気仙沼出身の彼女が、東日本大震災後に発表したこの曲は被災した故郷を思って歌った曲。それだけに故郷の風景を美しく描写した歌詞が心に突き刺さる名曲になっています。

10月とは逆に、こちらは歌謡曲からの選曲が少なく、「クリスマスソング」はともかく「故郷の歌」はもうちょっと歌謡曲からの曲があってもよかったのでは?とは思うのですが、コンピレーションとしては逆に統一感は取れており、名曲も多かったように感じます。最後を飾るのが中島みゆきというのも納得感が。最後の最後を気持ちよく締めることのできたアルバムでした。

評価:★★★★★

そんな訳で今年1年間、全12作、365曲を紹介したコンピレーション。途中、正直似たようなミュージシャンの曲が多くなり、若干中だるみを感じたのですが、ラスト11月12月は直前の失速ぶりを完全に挽回する傑作となっていました。いろいろと知られざる名曲にも出会えた、聴きごたえのある企画で、最初から最後まで日本のポピュラーミュージックの魅力をしっかりと感じることが出来るコンピレーションでした。

大人のJ-POPカレンダー 365 Radio Songs 過去の作品
1月 新年
2月 告白
3月 卒業

4月 桜
5月 東京
6月 結婚

7月 サマーソング
8月 平和
9月 友情

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2017年11月11日 (土)

川崎発話題のHIP HOPクルー

Title:Mobb Life
Musician:BAD HOP

今、一種の流行となり一番勢いのあるジャンルとも言えるHIP HOP。その中でも注目をあつめるグループのひとつが彼ら、BAD HOPでしょう。川崎市出身の彼らは、その中でもさらに治安の悪いと言われる川崎市南部の池上町が彼らの出身地。昨年はミックステープ「BAD HOP 1 DAY」「BAD HOP ALL DAY」をリリースし、そんなヤクザや暴力、貧困が支配するような地域の日常を描いたリリックも話題となりました。

本作はそんな彼らの初となる全国流通作品。メンバーのうちYZERRとT-Pablowは「高校生ラップ選手権」や「フリースタイルダンジョン」でも名をはせており、否応なく注目の集まる1枚となりました。

アルバムは全体的に重低音のエレクトロのトラックが流れており、ダークな雰囲気が覆っています。基本的にサウンドはシンプルにまとめあげており、斬新さのようなものはあまり感じませんが、リリックにもピッタリマッチしています。「3LDK」のようなアコースティックテイストの爽やかなトラックや「Ocean View」のようなタイトル通り爽やかな海辺を想像するようなエレクトロトラックもあったりして楽曲のバリエーションも感じます。

ただ一番印象に残ったのはそのリリック。一言で言ってしまえば非常にわかりやすい、「HIP HOPらしい」リリックが特徴的。冒頭のタイトルチューンでもある「Mobb Life」は、テーマはまさに「仲間」そして「金」というHIP HOPのテーマとしてはストレートなもの。続く「つるまない」は特定の対象がいるかどうかは不明なのですが、いわゆる「Dis」のナンバーになっており、これもテーマの選び方がいかにもHIP HOPらしいところです。

ベタベタといえば「Supercar」なんかもまさにそう。リリックの中に具体的な車種(それもわかりやすい外車!)が登場し、さらに良い車にのって良い女をひっかけようという内容も、「バブルかよ!」と思うほど、逆に今時、若い世代がこういうテーマでラップするんだ・・・と驚いてしまうくらい。若者世代の車離れが叫ばれていますが、やっぱり好きな人は好きなんだ、と思ってしまいます。

中盤、「#リバトークskit」としてラジオ番組風のトークコーナーが登場するところもユニーク。ここでアルバムは一区切りとなっているのですが、メンバーの仲の良さも感じさせるコーナーとなっています。

そしてアルバムの最後を飾る「これ以外」では

「これ以外 他にやりたい事も無いんだ これ以外 無いんだ取り柄が俺ら」

とラップに対する決意をかなりストレートに綴っており、アルバムの最後を飾るにふさわしいナンバーとなっています。

そんな訳でBAD HOPの初の全国流通盤、良い意味でわかりやすいHIP HOPのアルバムになっていたのではないでしょうか。HIP HOPというジャンルの魅力、そしてHIP HOPにありがちなテーマ性を上手くまとめあげたアルバムになっていたと思います。しかし先日紹介したPUNPEEといい、今、次から次へと魅力的なミュージシャンが登場してきますね。まだまだHIP HOPが日本の音楽シーンを席巻する日々は続きそうです。

評価:★★★★★

BAD HOP 過去の作品
BAD HOP 1DAY


ほかに聴いたアルバム

OTONARIさん/パスピエ

ここ最近、昔のような独特の癖が消えて良くも悪くも「普通のポップバンド」になったパスピエ。ここ最近は悪い意味でのベタなJ-POP的な部分が気になっていたのですが、今回のアルバムも良くも悪くも「普通のポップアルバム」といった印象。ピアノやシンセで爽快にまとめあげているのですが、突き抜けた特徴がないのが気になります。ただ、前作「&DNA」よりは素直に楽しめるポップアルバムになっていたとは思うのですが。

評価:★★★★

パスピエ 過去の作品
ONOMIMONO
演出家出演
幕の内ISM
娑婆ラバ
&DNA

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2017年11月10日 (金)

帰ってきた!

Title:帰ってきたホフディラン
Musician:ホフディラン

ここ最近、事実上の活動休止状態だったホフディラン。ライブ活動は行っていたものの新作のリリースがなく、その動向がちょっと心配されたのですが、久々のニューアルバムがリリースされました。その名も「帰ってきたホフディラン」。なんとここにきてメジャーレーベル、それも古巣となるポニーキャニオンからの復帰が決定。これがその第一弾となるアルバムです。

ホフディランといえば、メンバーのワタナベイビーと小宮山雄飛という2人のライターからなるユニットなのですが、以前からホフディランのアルバムというとワタナベイビーの曲の出来が良い時にアルバムが傑作になるという印象があります。というのは小宮山雄飛の曲はビートルズなどの影響を受けたルーツ志向を感じるシンプルでメロディアスなギターロック路線がメインで、楽曲に安定感がある一方、ワタナベイビーはちょっと奇抜さもあるポップソングが多く、それがはまると名曲になる一方、はずすとちょっと微妙な曲になってしまうという傾向にあり、それだけにワタナベイビーの曲がはまるとアルバム全体が傑作になるという傾向にありました。

そして今回のアルバムに関していうと、これが笑っちゃうくらいワタナベイビーの曲が傑作揃い。本作はカバー1曲、雄飛の曲が7曲、ワタナベイビーの曲が6曲という構成なのですが、この6曲がいずれも非常に個性的な名曲揃い。ハイトーンのエフェクトをかけてコーラスを入れてユーモラスに仕上げつつ、彼らしいストレートなラブソングを歌う「ヤンヤンヤン」はまさにワタナベイビーらしさが全面にあらわれた傑作。アラフォー世代には懐かしさも感じる、楽曲の中に90年代に一世を風靡した音楽、渋谷系のスタイルを読み込んだ「恋は渋谷系」もユニーク。メロディーやサウンド自体も渋谷系そのもので、ちょっとカジヒデキっぽいかな?彼らしいウィットも利いた楽曲になっており、惹きつけられます。

子持ちの身としては最近、ホフディランの2人の楽曲は実は「おかあさんといっしょ」や「いないいないばぁ」といった幼児向け番組の中で良く見かけたりしています。なにげに幼児向け番組用の曲もホフディランらしい名曲が多く、密かにセルフカバーしてくれないかな、なんて思ったりしているのですが、今回のアルバムの中でも「あの風船追っかけて」は、「おかあさんといっしょ」あたりで歌われていても不思議ではないかわいらしくほっこりするポップソング。こちらもワタナベイビーらしさがあらわれている名曲になっています。

もちろん小宮山雄飛の楽曲もいつも通り、安定感のある名曲がそろっています。メロディアスなポップソングの中にちょっとファンク的な要素を入れた「珈琲」や60年代ポップス風な「家を借りよう」、映画音楽を彷彿とさせるビックバンド風のアレンジが楽しい「映画の中へ」など、彼らしいルーツのはっきりと見えたポップソングが並んでいます。今回、ワタナベイビーの楽曲が良かっただけにちょっと地味な印象は否めませんですが、しっかりと安定感ある素朴さもあるポップソングはやはり大きな魅力を感じます。

そしてアルバム唯一のカバーなのがRCサクセションの「雨あがりの夜空に」のカバー。もともと忌野清志郎の大ファンで、彼のスタイルを模した「ニセ清志郎」としても活動するワタナベイビーが主導したカバーなのですが、軽快で明るい歌い方とサウンドは楽曲にもピッタリとマッチ。原曲の魅力もしっかり残しつつ、ホフディランらしさをきちんと入れた名カバーになっていました。

ポップユニットホフディランの魅力を存分に感じることが出来た傑作。バラエティーあふれる曲の数々に、彼らのポップミュージシャンとしての懐の深さを感じます。あらためてホフディランって魅力的なグループだな、ということを再認識したアルバム。これからはコンスタントに活動を続けてほしいのですが。特にワタナベイビーは今、脂にのっているみたいなので、是非この勢いで次の新作を!

評価:★★★★★

ホフディラン 過去の作品
ブランニューピース
13年の金曜日
14年の土曜日
15年の日曜日
2PLATOONS


ほかに聴いたアルバム

ヤグルマギク/The Mirraz

最近、配信限定で次々とアルバムをリリースしているThe Mirrazですが、前作からわずか2カ月。早くも配信限定の身にアルバムをリリースしてきました。基本的にハイテンポなパンクロックなのはいつも通り。またマイナーコード主体のメロがメインとなっており、早口で歌い上げるスタイルのいつも通り。ただ、歌詞としては内省的なものが多いものの、早口すぎてかつフックが利いたようなインパクトあるフレーズがないため聴き取りにくい内容になってしまっています。

そもそも今年に入ってこれで4作目。昨年もミニアルバム含めて2枚リリースしていますから、さすがに乱発気味なのでは?もうちょっと腰をおしつけて名曲をリリースしてほしいのですが・・・。配信中心の積極的な攻勢はおもしろいとは思うのですが、その結果、ちょっと粗製濫造になってしまっているのが気にかかります。

評価:★★★

The Mirraz 過去の作品
We are the fuck'n World
言いたいことはなくなった
選ばれてここに来たんじゃなく、選んでここに来たんだ
夏を好きになるための6の法則
OPPOTUNITY
しるぶぷれっ!!!
BEST!BEST!BEST!
そして、愛してるE.P.

ぼなぺてぃっ!!!
Mr.KingKong
バタフライエフェクトを語るくらいの善悪と頑なに選択を探すマエストロとMoon Song Baby

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2017年11月 9日 (木)

アルバムでも強い!

今週のアルバムチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/ja/

Hot100でも今週、自身の曲を数多く上位にランクインさせてきた米津玄師ですが、今週はアルバムチャートでも見事1位を獲得しました。

今週第1位は米津玄師「BOOTLEG」が獲得。これで2作連続の1位獲得となりました。初動売上も16万1千枚と初の1位獲得作となった前作「Bremen」の5万枚を大きく上回る結果に。ちなみにHot100で上位にランクインしている「灰色と青 ( + 菅田将暉)」「ピースサイン」も収録している他、DAOKOとのコラボ作「打上花火」もセルフカバーで収録されています。

2位にはパンクロックバンド10-FEET「Fin」がランクイン。途中、コラボ作やカバーを収録した企画盤的なアルバムのリリースはあったもののオリジナルアルバムとしては5年ぶりという新作。初動売上4万3千枚は直近作で同時リリースだった「Re:6-feat」「6-feat2」のそれぞれ1万6千枚(10位及び11位)から大きくアップ。またオリジナルアルバムとしては前作の「thread」の2万7千枚(7位)からも大きくアップという結果に。2位はシングルアルバム通じて自己最高位であり、その人気ぶりをうかがわせます。ちなみに「Fin」というタイトルは「最後」を意味する言葉であり、解散や活動休止が危惧されるのですが、メンバー曰く「最後のつもりで作った」という意味であり、とりあえずは解散等を前提とはしていない模様。とりあえずは一安心です。

3位4位には男性俳優育成ゲーム「A3!」からのキャラクターソング集「A3! Blooming AUTUMN EP」「A3! Blooming WINTER EP」がそれぞれランクイン。初動売上はそれぞれ2万5千枚及び2万4千枚を記録。同シリーズの前作「A3! Blooming SPRING EP」「A3! Blooming SUMMER EP」の2万4千枚(3位)、2万3千枚(4位)から微増となっています。

続いて4位以下の初登場盤です。6位には女性アイドルグループBiSH「THE GUERRiLLA BiSH」がランクイン。こちら11月29日リリース予定のアルバムですが、11月4日5日限定でタワーレコードにおいて299円で数量限定のゲリラ販売したらしく、アルバムチャートで一気にランクインしてきました。初動売上は1万1千枚。前作「GiANT KiLLERS」の2万8千枚(4位)よりはダウンしていますが、数量限定ということですので、11月29日のリリース時にどのように影響するのか注目されます。

7位には韓国の女性アイドルグループTWICEの、韓国でのアルバムTwicetagram:1st Album」が輸入盤でのランクイン。初動売上1万枚。直近の国内盤「#TWICE」の13万枚(2位)からはさすがに大きくダウンしていますが、輸入盤としては直近作の「Signal:4th Mini Album」の5千枚(11位)からはアップしています。

8位には「うたの☆プリンスさまっ♪『HEAVEN SKY』エピソードCD」がランクイン。女性向け恋愛ゲーム「うたの☆プリンスさまっ♪」から、ドラマとキャラソンを収録したアルバム。初動売上9千枚。アルバムでの直近作は一ノ瀬トキヤ(宮野真守),愛島セシル(鳥海浩輔) 四ノ宮那月(谷山紀章)名義による「うたの☆プリンスさまっ♪シアターシャイニング ポラリス」でこちらの2万枚(4位)からダウンしています。

最後10位には日本でも人気のアメリカのポップスバンドMaroon5「Red Pill Blues」がランクインしています。初動売上は9千枚。直近のベストアルバム「Singles」の1万枚(6位)からは微減。オリジナルアルバムとしての前作「V」の1万9千枚(4位)からは大きくダウンしています。ただし前作「V」は水曜日リリースだったのに対して、最新作は金曜日リリースという違いがありますが。

アルバムチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2017年11月 8日 (水)

米津玄師人気が続く

今週のHot 100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

先週も自身の曲を2曲ランクインさせた米津玄師。今週もその人気が続いており、「灰色と青(+ 菅田将暉)」が先週の9位から3位にランクアップ。CD販売・ダウンロード・ストリーミング数(以下「実売数」)は5位に留まりましたが、Twitterつぶやき数及びYou Tube再生回数で4位を記録。さらにラジオオンエア数では1位を獲得し、結果として見事ベスト3入り。DAOKO×米津玄師「打上花火」も7位から4位にランクアップ。こちらはいままで順位を引っ張っていたYou Tube再生回数は5位までダウンしてしまいましたが、実売数が3位を記録し、ここに来てもランクアップとなりました。他にも「ピースサイン」が23位から17位にランクアップしベスト20返り咲きを果たしています。いうまでもなく今週のHot100の対象週に彼のアルバム「BOOTLEG」が発売された影響。アルバムも上位にランクインしており、まだまだ米津玄師の人気は続きそうです。

さて一方で今週1位は欅坂46「風に吹かれても」が2週連続で獲得。実売数及びPCによるCD読取数で1位、Twitterつぶやき数3位を獲得。ラジオオンエア数は11位、You Tube再生回数は21位に留まりましたが見事2週連続の1位となりました。ちなみにオリコンでも3万8千枚を売り上げ、2週連続の1位を獲得しています。

2位は韓国の女性アイドルグループTWICE「LIKEY」が初登場でランクイン。対象週で韓国でリリースされたアルバム「Twicetagram:1st Album」のリード曲。実売数は6位でしたが、Twitterつぶやき数及びYou Tube再生回数で1位を獲得し、ベスト3入りです。ちなみに彼女たちの楽曲はもう1曲、「One More Time」が先週の4位からワンランクダウンして5位をキープ。2曲同時のランクインとなっています。

続いて4位以下の初登場曲ですが、まずは6位にMAN WITH A MISSION「My Hero」が初登場でランクイン。フジテレビ系アニメ「いぬやしき」オープニングテーマ。オーケストラアレンジを取り入れて、かなりダイナミックでスケール感のあるナンバーに仕上がっています。実売数2位、PCによるCD読取数4位を記録した一方、ラジオオンエア数は21位、Twitterつぶやき数27位と足を引っ張る形に。特にラジオオンエア数がさほど伸びなかったのが意外な印象が。オリコンでは初動売上2万5千枚で2位初登場。前作「Dead End in Tokyo」の3万4千枚(5位)からはダウンしています。

初登場はもう1曲。9位にJUNNA「Here」が初登場でランクインしています。JUNNAはアニメ「マクロスΔ」に登場する音楽ユニットワルキューレのメンバーとしてデビュー。本作はアニメ「魔法使いの嫁」オープニングテーマに起用されたソロデビュー作となります。ラテン調で哀愁感あるメロディーは歌謡曲のテイストを感じつつも突き抜けたスケール感も覚えるナンバー。PCによるCD読取数38位、Twitterつぶやき数48位だった一方、実売数4位を記録。ちなみにオリコンでは初動売上4千枚で14位に留まっており、配信での売上が大きな比重を占める模様です。

さてロングヒット組では前述の通り、DAOKO×米津玄師「打上花火」が今週も4位を獲得した他、乃木坂46「いつかできるから今日できる」が7位にランクインしており、これで7週連続のベスト10ヒットとなりました。一方、Ed Sheeran「Shape Of You」は今週11位にランクダウン。通算15週、12週連続のベスト10ヒットを続けていましたが、ついにベスト10圏外にランクダウンしてしまいました。ただまだベスト10からワンランクダウンしているだけなので、まだまだ来週以降、再ランクインの可能性もありそうです。

さらにベスト10返り咲き組も。荻野目洋子「ダンシングヒーロー」が先週の19位からランクアップし8位にランクイン。6週ぶりのベスト10返り咲き。実売数26位、Twitterつぶやき数55位ながらもYou Tube再生回数2位を獲得してのベスト10ヒットとなりました。以前にも紹介しましたが、日本高校ダンス部選手権で準優勝した大阪府立登美丘高校ダンス部が、バブル期のファッションでこの曲をバックに踊る動画が話題を集め、それにつられ本作もヒットを記録。今回の再ランクアップには10月31日にNHK「うたコン」に本人が出演し、同曲を歌った影響も大きそうです。

今週のHot100は以上。明日はアルバムチャート!

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2017年11月 7日 (火)

観客ふくめてみんながメンバー!

Title:TOWN
Musician:清竜人TOWN

シンガーソングライターの清竜人といえば、もともとは正統派のシンガーソングライターとしてデビューしたものの、アルバム「MUSIC」リリース直前のライブでいきなりミュージカル風なステージを披露したり、かと思えば清竜人25というアイドルグループをいきなり立ち上げたりと、その奇抜な活動でも大きな話題となりました。

そんな清竜人25を活動している最中にいきなり発表されたのがこの「TOWN」というプロジェクト。プロジェクト名と同時に公開されたのが上のジャケットにも使われている写真で、モヒカンに背中一面の入れ墨姿という、アイドルユニットというイメージからほど遠い姿に衝撃が走りました。そしてこのTOWNというプロジェクトが非常にユニーク。演者と観客という垣根を取り払い、観客を含めてバンドメンバーという思想のもと、みんなでひとつの曲を作り上げようというプロジェクト。プロジェクト発表後、ネット上にTOWNの楽曲が無料で公開され、ファンはその曲を事前に聴いた上でライブで一緒に演奏するというスタイルが取られました。

ライブは東京で5公演行われた後、名古屋や大阪などをまわる全国ツアーが6公演+CLUB CITTA'でツアーファイナルという全12か所でライブが行われました。このライブもあくまでも参加した人が全員メンバー。当日は楽器の持ち込みも自由で、もちろん大声で歌うことを前提としたステージ。メンバーからお金は徴収できないということで、全箇所無料という赤字覚悟のプロジェクトになっています。

ちなみに本サイトでも以前ライブレポートで紹介しましたが、私もこのプロジェクトに参加してきました!そんな訳で私も列記としたTOWNのメンバーの一人なわけで(笑)、TOWNのメンバーは全員、本CDのブックレットに名前が記載されているのですが、私の名前もしっかりと記載されていました(笑)。

本作はそんなプロジェクトTOWNの最初で最後となるアルバム。2枚組となるアルバムは1枚目にはみんなで演奏したライブ音源が収録、もう1枚はネットで無料公開された清竜人演奏による「デモ音源」が収録されています。

さて、そんなCDの1枚目となる「本編」。普通のライブ音源とはことなり、全12か所のライブ公演の音をすべて重ね合わせ、さらにみんなの演奏、歌声もきちんと拾い上げた録音となっています。そのため当日の迫力がそのまま伝わってくる音源。楽曲は基本的にみんなで声をあげて歌えるようなシンプルでわかりやく、ポップなパンクナンバーがメインとなっているのですが、演奏も声も重ね合わせているだけにとにかく分厚い音になっています。

非常にエモーショナルな音源を聴ける一方、あまりに音を重ね合わせた結果、音楽としては破たん寸前な内容になっています。それでも楽曲としてちゃんと聴ける内容になっているのは、「天才」の呼び声も高い清竜人のソングライターとしての実力により、足腰のしっかりとしたポップソングが歌われているからでしょう。正直、純粋に音楽的な観点から言えば決して「成功した」と言えないのかもしれません。ただ、演者と観客が一体となって音楽を作り出そうという情熱はアルバムからいやというほど伝わってきます。そういう意味ではプロジェクトとしては十分「成功した」と言えるでしょう。

ただ残念だったのが楽曲のうちの1曲「おい!ハゲ!ボケ!カス!」の歌詞の一部が問題視されたみたいで、本編でもデモ音源の方でも完全に音が消されてしまっている点。「いてまうぞ」「殺したる」のような攻撃的な歌詞が問題視されたようですが・・・ただ、差別語でもありませんし、そんなに問題視するような内容かぁ??あまりに危険回避的すぎる「言葉狩り」は非常に残念でした。

もうひとつ残念だったのが初回版に収録されたドキュメンタリー。TOWNのプロジェクトのスタートから最後のライブの模様まで収録されているのですが、基本的にスナップショット的な映像を羅列しただけ。個人的にはもっとTOWNというプロジェクトにかける清竜人へのインタビューが聴きたかったなぁ。冒頭に「TOWN」というプロジェクト名の意味など、軽いインタビューはあったものの、内容は薄く表面的なものだけ。曲の持つ意味、なんでこういうプロジェクトをやろうと思ったのか、また清竜人25との関係性などについてももっと突っ込んで話を聴いてほしかったです。

また、今回のプロジェクトに関して彼は背中いっぱいに和彫りの入れ墨を入れています。ドキュメンタリーでも彼が入れ墨を入れているシーンもしっかりとおさめています。正直、入れ墨が本物かプリントかは若干不明なのですが(入れ墨を入れているシーンも本当かどうかわかりませんし)、単なるファッション的なタトゥーではなく、本格的な入れ墨を、社会的な立場や今後の活動の制約、あるいは病気といったリスクがある中、わざわざこのプロジェクトのために入れているのかいまひとつ彼の意図がわかりません。だからこそドキュメンタリーというからには、このプロジェクトのために入れ墨を入れた意図をしっかりと聴かせてほしかったのですが・・・そういう意味でも「ドキュメンタリー」といいながら、非常に通り一辺倒の単なる「スナップ映像集」になっていたのはとても残念です。

そんな訳で、いろいろな「残念」な部分も多かったですし、正直、大味なライブ音源となっている楽曲自体も幅広く無条件でお勧めできるかというと微妙な部分も。ただ、そこらへんを差し引いてもなお、このプロジェクトのおもしろさと、それを実際にやってしまった清竜人の行動力、発想力に敬意を表して以下の評価で。ちなみにドキュメンタリーDVD付の初回版は6,500円+消費税というちょっと高い印象もしますが、ただプロジェクト自体、大赤字だったらしいので、本作のちょっと高めの値段設定に関しては仕方ないな、という感じもします。同プロジェクトは残念ながらこのアルバム1枚で終わりのようですが、今度もおもしろいプロジェクトを次々と立ち上げてくれそう。清竜人のこれからの活躍からも目が離せなさそうです。

評価:★★★★★

清竜人 過去の作品
WORLD
MUSIC
WORK
BEST
WIFE(清竜人25)


ほかに聴いたアルバム

indoor/おいしくるメロンパン

ミュージシャン名が一度聴いたら忘れられなさそうな3ピースバンドおいしくるメロンパンの2枚目となるミニアルバム。ただ、いかにも軽快でキュートなポップソング、あるいは今時のハードコア風なギターロックバンドを想像したのですが、楽曲的にはシンプルなギターロック。ちょっとノスタルジックな雰囲気もある哀愁感あるメロディーラインと中性的なボーカルがインパクト。この中性的なボーカルはちょっと川谷絵音に近い感じがしますし、歌謡曲テイストも感じるメロをあわせてIndigo la endに近いものを感じるのですが・・・。ただメロディーラインにはインパクトもありセンスも感じますし、独特の雰囲気も醸し出しており今後の成長次第ではおもしろいバンドになりそうな予感も。とりあえず次にリリースされるかもしれないフルアルバムでどんな姿を見せてくれるのか、楽しみです。

評価:★★★★

前へ/□□□ feat.the band apart

□□□(クチロロ)とthe band apartがまさかのコラボ。確かに□□□もシティポップ的要素の強いユニットだけに、両者のコラボも不思議ではないのかもしれませんが・・・。the band apartからの流れで聴いてみた本作ですが、基本的にはthe band apartのアルバムというよりは□□□のアルバム。□□□らしいコミカルで良くも悪くもちょっと斜めからの視点を感じるようなポップソングが並んでいます。the band apartの「Eric.W」にいとうせいこうがラップをのせた「お前次第ってことさ」はある意味、コラボらしいコラボといった感じですが、いとうせいこうのラップも含めて癖の強いリアレンジとなっておりthe band apartファンにとっては賛否わかれそうな作品に。the band apartが全面的に参加しているもののthe band apartのファンにはちょっと薦めずらい部分もあるアルバムです。

評価:★★★★

□□□ 過去の作品
TONIGHT
everyday is a symphony
CD
マンパワー

the band apart 過去の作品
Adze of penguin
shit
the Surface ep
SCENT OF AUGUST
街の14景
謎のオープンワールド
1(the band apart(naked))
Memories to Go

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2017年11月 6日 (月)

注目の新人ラッパーのデビュー作

Title:MODERN TIMES
Musician:PUNPEE

今、日本語ラップが一種のブーム的に高い人気と注目を集めています。そんな中でも最も注目を集めているラッパーの一人が彼、PUNPEE。RHYMESTERのアルバム「Bitter,Sweet&Beautiful」にプロデュースとフィーチャリングで参加したり、さらに宇多田ヒカルの曲のリミックスをリリースし、イベントで共演したりと徐々に注目を集めてきました。

そんな中リリースされたのが待望のデビューアルバムである本作。売上的にもオリコンチャートでいきなりベスト10入りしてくるなど大いに注目を集めています。そんな注目の中、リリースされた本作はいきなりちょっとレトロな雰囲気のトラックの中での「語り」からスタートします。「2057」というタイトル通り、物語はいまから40年後のPUNPEEによってこのデビューアルバムのことが語られる形で物語はスタートしていきます。

まずアルバム全体として非常に心地よいのが脱力感のあるトラック。音数はさほど多くないもののフィリーな雰囲気を感じるメロウなトラックがとても心地よく感じます。たとえば「Scenario(Film)」のような心地よさを感じるメロウなトラックも魅力的。「Rain(Freestyle)」も女性ボーカルを加えたけだるい雰囲気のメロディーにメロウなトラックが耳に残ります。また「宇宙に行く」では軽快で疾走感あるピアノのリフを主導としたトラックがどこかユーモラス。どの曲もほどよい熱量を感じるトラックになっており、ポップで聴きやすいトラックに仕上げています。決して派手さはないので最初はピンと来なかったのですが、アルバム1枚を聴いているといつまでも聴いていたいような不思議な中毒性を持ったトラックになっていました。

楽曲に関してもポップでユニークなテーマを持った楽曲も目立ち、例えば上にも書いた「宇宙に行く」はタイトルの通り宇宙に飛び出したかと思えば、「タイムマシーンにのって」では時間旅行。「親父と母さんに出会った日に行きたいね」「息子直々にチャンス作ってやんぜ」とリリックがとてもユニークです。

そしてアルバム全体としても心地よい脱力感が流れています。歌詞にしても事実上の1曲目「Lovely Man」では

「はいはい まぁご存知の通り
見た目も中身もまぁ覇気がない
はしにも棒にも引っかからず男だか女か
それもわからない あ Pです」

(「Lovely Man」より 作詞 PUNPEE)

なんていう脱力感あふれる自己紹介からスタートしています。しかし、リリックの中には秘めた熱意を感じることができ、なんといっても最後の「Hero」では「僕はHero 僕は君のHero」と歌い上げています。

パンピー=一般人というその名前の通り、決してパッと目立つような派手さのあるアルバムではありません。ただ、トラックにしろリリックにしろいろいろなひっかかりがあり、最初聴きはじめはちょっと地味かな、と感じていたのですがアルバム全体を聴き終わると、癖になって何度も聴いてしまうようなそんなアルバムになっていました。これからの活躍が非常に楽しみになってくる1枚。本当に日本語ラップのシーンは次から次への実力のあるラッパーが登場するなぁ。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

FATELESS/coldrain

ちょうど2年ぶりとなるニューアルバム。英語詞による洋楽テイストも強い楽曲。哀愁感あるマイナーコード主体のメロディーラインを、ハードコアの要素も入れたダイナミックなバンドサウンドで聴かせるスタイル。ここらへん、いままでの曲と基本的にまったく変わりません。1曲1曲は文句なしにカッコいいと思うのですが、やはりもうちょっとバリエーションが欲しいと思ってしまいます。よくも悪くも「いままでどおり」なアルバムです。

評価:★★★★

coldrain 過去の作品
THE REVELATION
Until The End
VENA

氣志團万博2017

木更津が生んだロックバンド氣志團が2003年により開催している大型野外GIG「氣志團万博」。毎年、本当の意味でジャンルを問わないミュージシャンやアイドルが参加しており話題を呼んでいますが、本作は今年参加したミュージシャンの楽曲を集めたコンピレーションアルバム。この手の野外フェス、「ジャンルを問わない」と言いつつも実際に出演するのはロック系と女性アイドルだけという「単なる若くてかわいい子を呼びたかっただけだろ」的なイベントが多いのですが、氣志團万博は本気でジャンルを問わないラインナップに。本作もギターロックバンドからHIP HOP、ビジュアル系、アイドルも男性女性両方ともきちんと収録されています。残念ながら権利の関係か容量の関係か未収録のミュージシャンも多いのですが、氣志團万博の雰囲気を味わえるコンピレーションになっていました。

ちなみに全3枚組なのですが、うち3枚目は「氣志團 蜜苦巣死威泥異~独占!漢の60分~Mixed by DJ Michelle Sorry a.k.a ミッツィー申し訳」として氣志團の楽曲33曲がノンストップでつながれた楽曲になっています。途中にはメンバーによるトークなども収録されているのでファンにとってはたまらない内容に。聴きごたえたっぷりのコンピレーションアルバムでした。

評価:★★★★★

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2017年11月 5日 (日)

今の時流に対するbonobosからの回答

Title:FOLK CITY FOLK.ep
Musician:bonobos

ここでも何度も取り上げてきて、同じことを何度も言及してきましたが、ここ最近、ジャズ、ソウルの要素を取り入れたシティポップバンドが増えてきました。Suchmosがその代表格ですが・・・ということも何度も書きましたね。ま、今のシーンのひとつの「流行」になっています。

bonobosに関しては昨年リリースしたアルバム「23区」で既にシティポップ、ジャズという方向に大きくシフトしていました。そして今回リリースされた6曲入りのミニアルバムは基本的にその方向性をさらに突き進めた内容になっていました。ある意味、今のポップシーンの流行に対するbonobosからの回答という言い方もできるかもしれません。

正直言うと、あまりにその時流にのった今回のミニアルバムに関しては最初、少々いぶかしく聴きはじめたという部分もありました。bonobosも流行にのってしまうのか、という感覚で。しかし、聴き進めて、そして何度か聴くうちにそんないぶかしい感覚はふっとんでしまいました。

特に今回のアルバムでカッコいいのが1曲目「POETRY&FLOWERS」。いきなりエレクトロのサウンドから現代風なサックスの音色が鳴り響くナンバー。シティポップ、ジャズ、エレクトロ、ポップをbonobosが今風に解釈した名曲。まずはリスナーの耳に彼らの実力を知らしめる1曲になっています。

あとやはり注目したいのは彼らの代表曲「THANK YOU FOR THE MUSIC」のリメイク「THANK YOU FOR THE MUSIC-Nui!」。よりメロウにジャジーな雰囲気を加えたアレンジに生まれ変わっているのですが、元の楽曲が持っている魅力は変わりません。全く新しい・・・というよりは元の曲の魅力をきちんと抱えたまま、今の彼らの興味にアップデートされていました。

また言うまでもなくもともとはレゲエバンドである彼ら。今回のアルバムでもそのレゲエの要素はしっかりと感じることが出来ます。前述の「THANK YOU FOR THE MUSIC-Nui!」でもレゲエ的な横ノリのリズムは残っていましたし、「永遠式」はまさにそんなレゲエとシティポップを見事に融合させた楽曲。bonobos流のシティポップといえる内容に仕上がっていました。

わずか6曲入りのミニアルバムながらも、今のbonobosの実力がしっかりと伝わってくる傑作になっていました。今の時流にのりつつも、その中できちんと他のバンドとは異なる個性を感じる本作。あらためてbonobosの魅力を再認識した1枚でした。

評価:★★★★★

bonobos 過去の作品
Pastrama-best of bonobos-
オリハルコン日和
ULTRA
HYPER FOLK
23区


ほかに聴いたアルバム

CRACKLACK/SCOOBIE DO

SCOOBIE DOの最新作はここ最近のシティポップの流れに沿ったような、比較的おとなしい抑え気味のサウンドに静かなメロディーラインが流れるポップス。彼らの持ち味であるファンキーな曲ももちろんありますが、全体的には控えめ。ここ最近のシティポップへのSCOOBIE DOからの返答ともとらえることが出来ますが、サウンドにしろ彼ららしいファンクなリズムにしろ、全体的にちょっと中途半端というイメージが否めないアルバムになっていました。

評価:★★★

SCOOBIE DO 過去の作品
ROAD TO FUNK-A-LISMO!
BEST OF CHAMP YEARS 2007~2016

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2017年11月 4日 (土)

とにかく明るいドリカム(・・・古い・・・)

Title:THE DREAM QUEST
Musician:Dreams Come True

約3年ぶりとなるドリカムのニューアルバム。まずはタイトルがいいですよね。「THE DREAM QUEST」。言うまでもなく国民的人気を誇るRPGゲーム「ドラゴンクエスト」から取ったタイトル。ジャケット写真はモンスターらしき生物が見受けられますが、あまりドラクエっぽくないのはちょっと残念ですが、ドリカムらしい楽しさがあふれています。

今回のアルバムに関しては、この楽しさあふれるジャケット写真に象徴されるように、楽しさあふれるハッピーな雰囲気の楽曲が並んでいます。イントロ的な「THE THEME OF THE DREAM QUEST」に続く「KNOCKKNOCK!」はホーンやストリングス入った彼女たちらしい軽快なポップソング。突き抜けるような明るさがあるのはいかにも化粧品のCMソングに起用された楽曲らしい感じがします。「あなたが笑えば」も恋人のふとした日常を描いたドリカムらしいラブソング。ある意味、90年代あたりから変わらないようなドリカムの王道路線です。

「愛しのライリー」はディズニー/ピクサー映画「インサイド・ヘッド」の主題歌ですが、ディズニー/ピクサー映画のイメージにピッタリのかわいらしいポップナンバー。さらに本編の事実上最後の曲となる「あなたのように」も、明るさとちょっと切なさを同居させたドリカムらしいスケール感あるポップチューンとなっています。

これだけ明るくて楽しいドリカムらしいポップスが並んだアルバムで、聴いていてこちらも楽しくなってくるようなアルバムになっています。ただ・・・正直言えばドリのアルバムとしてはちょっと物足りなさも感じてしまいました。一番の理由は明るい曲ばかりが並んでいて、ちょっとバリエーションに乏しかったかな、ということを感じた点でした。

確かに「秘密」「堕ちちゃえ」のようなちょっと哀愁感も漂うようなナンバーもあるにはあります。ただこの曲も他の曲にあわせてか明るさも感じられるメロディーとなってしまったため、インパクトは薄め。アルバム全体としては少々一本調子なイメージも否めませんでした。

また一方アルバムの構成についても疑問が。今回、配信シングルでありJR九州のキャンペーンソング「九州をどこまでも」が収録。この曲、楽曲自体は悪くないのですが、いかにもなキャンペーンソングのためアルバムの中で歌詞が若干浮いてしまっている印象も。この曲はアルバム未収録でもよかったのでは?

さらにシングル曲は「TDQ VERSION」としてリアレンジしつつ、アルバムの最後にボーナストラックとしてシングルバージョンも入れているのもアルバム全体として同じ曲が2曲入っていることになってしまい、助長な印象を受けてしまいました。こちらも後日、ベスト盤かなんかの企画盤に収録して今回のアルバムに無理に収録する必要はなかったような気がします。

そんな感じで楽曲としては決して悪い曲が並んでいるわけではないのですが、アルバム全体としてはちょっと薄味のように感じました。特に前作「ATTACK25」は王道路線とともに挑戦的な楽曲も多かっただけに、それに比べるとちょっとおとなしいような印象を受けます。ここ最近は全盛期再びを感じるような傑作が続いていただけにちょっと残念。ただ1曲1曲の出来は決して悪いわけではないので次回作に期待したいところです。

評価:★★★★

Dreams Come True 過去の作品
AND I LOVE YOU
DO YOU DREAMS COME TRUE?
LOVE CENTRAL
THE SOUL FOR THE PEOPLE~東日本大震災支援ベストアルバム~
ATTACK25
DREAMS COME TRUE THE BEST! 私のドリカム
DREAMS COME TRUE THE ウラBEST! 私だけのドリカム


ほかに聴いたアルバム

FLOW ON THE CLOUD/真心ブラザーズ

約3年ぶりとなる真心ブラザーズのニューアルバム。今回のアルバムは作詞作曲的にはYO-KING、桜井秀俊の曲がそれぞれ6曲ずつ収録されているのですが、YO-KINGボーカル曲がメインとなっており、かつ桜井曲も含めて骨太のブルースロックがメインとなる作品になっています。そのため、比較的さらっとしたポップ色の強いアルバムだった前作「Do Sing」に比べると、非常に泥臭い雰囲気のあるアルバムになっていました。個人的にはもうちょっと桜井ボーカルの曲が多かった方がよかったようにも思うのですが・・・。

評価:★★★★

真心ブラザーズ 過去の作品
DAZZLING SOUND
俺たちは真心だ!
タンデムダンデイ20
GOODDEST

Keep on traveling
Do Sing
PACK TO THE FUTURE

Suburban Baroque/カーネーション

毎回、非常に良質な大人のロックアルバムをリリースしてくるカーネーションですが、今回のアルバムも安定の仕上がりぶり。基本的にメロディアスなギターロックを主軸にしつつ、シティポップ、ファンク、AOR、ラウンジなどの要素を自然に入れてきて、かつアルバム全体に統一感を持たせてくるあたり、大人の余裕も感じます。Disc2としてインストバージョンを収録しているあたりもサウンドに関する自信を感じます。ちょっと気になったのが「Suspicious Mind」がアレンジ的にまんまoasisなのですが・・・イントロなんてモロですし・・・。

評価:★★★★★

カーネーション 過去の作品
Velvet Velvet
UTOPIA
SWEET ROMANCE
Multimodal Sentiment

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2017年11月 3日 (金)

歌謡曲色が強いソロ作

Title:がらくた
Musician:桑田佳祐

ソロアルバムとしては6年6ヶ月ぶりとなる桑田佳祐のソロアルバム。オリジナルアルバムとしての前作「MUSIC MAN」はちょうどサザンオールスターズ活動休止中にリリースされたアルバムだったのですが、今回は(今は桑田ソロが優先のためか新作音源のリリースやライブなどしばらくないものの)サザンも活動中の中のリリース。そんな中、どんなソロアルバムをリリースしてくるのかも注目されました。

前作の「MUSIC MAN」はいろいろなタイプの曲が入ったごった煮的なアルバムになっていました。今回もロックンロールな「過ぎ去りし日々(ゴーイング・ダウン)」からはじまりフォーキーな「君への手紙」など桑田佳祐の広い音楽性を感じさせる曲が要所要所に入っています。特にシングルリリース時から話題となった「ヨシ子さん」は強烈。ユーモラスなシンセ(20年くらい前のゲームミュージックみたいな感じの音色)からスタートし、巻き舌満開のボーカルにエスニックで無国籍なユニークなポップソングは桑田佳祐しか作れないし、彼しか歌えなさそうな楽曲になっています。

一方今回アルバムの中で目立つナンバーといえばNHK連続テレビ小説「ひよっこ」の主題歌となった「若い広場」。60年代の日本を舞台としたこのドラマの主題歌にふさわしく、60年代の流行歌を彷彿とさせるようなレトロなポップソングになっています。今回のアルバムはこの曲をスタートとして、全体的に「歌謡曲」の色合いが強いアルバムになっていました。

続く「大河の一滴」もマイナーコード主体のアップテンポな哀愁感あふれる歌謡曲風のナンバーになっていますし、「簪/かんざし」もムーディーな歌謡曲風なナンバー。「ほととぎす[杜鵑草]」も郷愁感あふれ懐かしさを感じさせるナンバーになっていますし、「Yin Yong」もホーンやピアノでキャバレー歌謡的な楽曲と仕上がっています。

桑田佳祐のソロアルバムなのですが、楽曲としてのバリエーション、自由度はむしろサザンオールスターズの直近作「葡萄」の方があるように感じます。今回のアルバムに関しては、サザンのアルバムよりも「保守的」・・・という言い方をすると誤解がありそうですが、安定感ある歌モノのアルバム、いい言い方をすれば統一感あるアルバムになっていたと思います。

おそらく今の桑田佳祐の音楽的な嗜好が「歌謡曲」的な方向性に強く向いているんでしょうね。以前から彼の歌謡曲からの影響はよく言及されていましたし、そういう歌謡曲からの影響を表に出すことがここ最近では特に増えているような印象を受けます。サザンオールスターズはいままでの活動や「ロックバンド」というスタンス上、歌謡曲的な要素を必要以上に強く出せないのでしょうが(もちろんサザンの曲でも「歌謡曲的」な曲はいくらでもありますが)、ソロアルバムであるからこそ彼自身の趣味嗜好をより前に押し出すことが出来たのでしょう。

もちろん桑田佳祐らしいエロ親父的な歌詞の「愛のささくれ~Nobody loves me 」や、ネット社会を痛烈に皮肉った「サイテーのワル」のような楽曲も健在。個人的にはロック寄りだった前々作「ROCK AND ROLL HERO」やバリエーションがあった前作「MUSIC MAN」の方が良かったとは思うのですが、今回の作品も安定感ある傑作アルバム。メロディーの良さ、歌詞、サウンドのユニークさ、どれをとってもそんじょそこらのミュージシャンじゃ足元にも及ばない実力をいかんなく発揮したアルバムになっていました。さすがの1枚です。

評価:★★★★★

桑田佳祐 過去の作品
MUSICMAN
I LOVE YOU-now&forever-


ほかに聴いたアルバム

MUTEKI/大森靖子

大森靖子の新作は、新曲2曲に過去の彼女の代表曲をアコースティックアレンジで再録した「ベスト盤」的な企画盤。個人的に前作「kitixxxgaia」は、いままで低評価だった大森靖子に対する見方を覆した傑作だったのですが、このアルバムで過去の楽曲をあらためて聴くと、やはり大森靖子に対する違和感がふつふつと湧いてきてしまいました。その違和感がなかなか表現しずらいのですが・・・女性が「かわいらしさ」を売りにする場合、男性的な視点が入りがちであり、それがともすれば女性を「モノ」としてみる女性蔑視的な視点につながる部分があると思うのですが、そういった男性社会の中の問題に対して無自覚的に「かわいらしさ」を表現している部分があるような・・・具体的にどの歌詞が、というと難しいのですが、どうも彼女の曲を聴くと、こういうことを感じてしまいます。今回、アコースティックアレンジで曲と歌詞を強調するカバーになったからこそ、さらにその違和感が強まったような・・・。どこか感じるもやもや感が最後まで消えなかったアルバムでした。

評価:★★★

大森靖子 過去の作品
洗脳
トカレフ(大森靖子&THEピンクトカレフ)
TOKYO BLACK HOLE
kitixxxgaia

魔法少女になり隊~まだ知らぬ勇者たちへ~/魔法少女になり隊

まずそのバンド名から一度聴いたら忘れられないインパクトを持つバンド、魔法少女になり隊。「魔女にしゃべることができない呪いをかけられてしまった魔法少女見習い・火寺バジル(Vo)の呪いを解くべく、“歌”という魔法を使いながら冒険を続けている"RPG系バンド"。」という設定。設定自体はなかなかユニークで、楽曲的にはトランシーなサウンドにポップな女性ボーカル、かつハードコア風なデス声のシャウとが常に入っているというスタイル。それなりにインパクトはあって、最初は惹かれるものがあったのですが・・・アルバム全部が同じ方向性ですし、J-POP的なメロディーも正直言って平凡。トランシーなサウンドもインパクトにはなるのですが聴いていて飽きてしまいます。方向性としてはおもしろいバンドだとは思うのですが、もうひとひねりふたひねりほしいところ。バンドの設定といいインパクトは強いのですが、いろいろな部分で惜しさを感じてしまうアルバムでした。

評価:★★★

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2017年11月 2日 (木)

復帰第1弾が1位獲得

今週のアルバムチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/ja/

久々のアルバムながら根強い人気を感じます。

今週の第1位は韓国の男性アイドルグループ東方神起「FINE COLLECTION ~Begin Again~」が獲得しました。2015年から兵役義務のため活動休止になっていた彼らですが、このほど兵役義務を終えて無事復帰。メンバーが分裂し2人組になった2011年以降の曲を集めたベスト盤が復帰第1弾としてリリースされ、見事1位獲得となりました。ただし初動売上は13万枚で復帰前最後のオリジナルアルバム「WITH」の23万3千枚(1位)からはダウンしています。

2位は嵐「『untitled』」がワンランクダウンでこの位置をキープ。3位にはポルノグラフィティのニューアルバム「BUTTERFLY EFFECT」がランクイン。初動売上3万枚は前作「RHINOCEROS」の4万1千枚(1位)からダウン。オリジナルアルバムのベスト3入りは2ndアルバム以来11作連続となりましたが、3位はデビューアルバム「ロマンチスト・エゴイスト」の最高位4位に次ぐ、低順位となりました。

続いて4位以下の初登場盤です。まず4位に倉木麻衣「倉木麻衣×名探偵コナン COLLABORATION BEST 21 -真実はいつも歌にある!-」がランクイン。タイトル通り、日テレ系アニメ「名探偵コナン」に使われた倉木麻衣の曲を集めた企画盤的なベスト盤。初動売上2万5千枚は直近のオリジナルアルバム「Smile」の初動2万1千枚(4位)からアップ。ベスト盤としては直近のベスト盤は「MAI KURAKI BEST 151A -LOVE & HOPE-」で、こちらの4万枚(2位)よりダウンしています。

5位にはFear,and Loathing in Las Vegas「New Sunrise」がランクイン。初動売上1万6千枚は前作「Feeling of Unity」の2万1千枚(2位)からダウンしています。

6位初登場はASKA「Black&White」。良くも悪くも話題となった復帰第1弾アルバム「Too many people」からわずか8ヶ月というインターバルで、早くも復帰後2作目となるアルバムがリリースされました。初動売上1万4千枚は前作の2万1千枚(7位)からダウン。正直、彼の早すぎる復帰についてはいまだにモヤモヤ感が消えないのですが・・・ただ、気が付いたら公式サイトによるとCHAGE&ASKAの作品の販売も徐々に再開しているみたいですね。CHAGE&ASKAの復帰はあるのでしょうか?

7位には布袋寅泰「Paradox」がランクイン。ベスト盤リリース後、初となる純粋なオリジナルアルバムとしては3年ぶりのオリジナルアルバム。初動売上1万2千枚はベスト盤「51 Emotions -the best for the future-」の2万7千枚からダウン。一方、前作「Stranger」の5千枚(12位)からはアップしていますが、こちらは「New Beginnings」を再構築し、海外リリースを前提にHOTEI名義で発売された作品。純粋なオリジナルアルバム「New Beginning」の1万1千枚(4位)よりは微増となっています。

続く8位には「THE IDOLM@STER MILLION LIVE! M@STER SPARKLE 03」が初登場でランクイン。アイドル育成アプリゲーム「アイドルマスター ミリオンライブ! シアターデイズ」からのキャラクターソング。初動売上は1万1千枚で、同シリーズの前作、伊吹 翼(Machico), 北沢志保(雨宮天), 桜守歌織(香里有佐), 徳川まつり(諏訪彩花), 永吉 昴(斉藤佑圭)名義の「THE IDOLM@STER MILLION LIVE! M@STER SPARKLE 02」の1万枚(4位)から微増となっています。

最後10位には「Fate/Prototype 蒼銀のフラグメンツ Drama CD & Original Soundtrack 1 -東京聖杯戦争-」がランクイン。人気PCゲーム「Fate/stay night」の原型であるアニメ作品「Fate/Prototype」のスピンオフ小説「Fate/Prototype 蒼銀のフラグメンツ」を基としたドラマCD。初動売上9千枚を記録しています。

今週のアルバムチャートは以上。Hot100はまた来週の水曜日に!

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2017年11月 1日 (水)

DAOKOと米津玄師と

今週のHot 100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

ここ最近、ロングヒットを続けているDAOKO×米津玄師「打上花火」。今週は先週からワンランクダウンの7位。CD販売・ダウンロード・ストリーミング数(以下「実売数」)7位、PCによるCD読取数6位、Twitterつぶやき数55位となっている一方、You Tube再生回数では先週の3位からランクアップして2位に再浮上。これで12週連続のベスト10入りとなりますが、まだまだロングヒットは続きそうです。

さて今週はこのDAOKO、米津玄師、いずれもこの曲を含む2曲ずつベスト10にランクインさせているのが目立ちます。DAOKOはDAOKO×岡村靖幸「ステップアップLOVE」が先週から引き続き10位をキープ。実売数は10位→13位とランクダウンしていますが、ラジオオンエア数が5位→2位にランクアップしています。一方米津玄師の方は「灰色と青(+ 菅田将暉)」が先週11位からランクアップ。2週ぶりのベスト10返り咲きとなりました。こちらは実売数は20位に留まっていますが、ラジオオンエア数10位、You Tube再生回数5位が順位を押し上げる結果となっています。

さてそんな中、今週1位を獲得したのが欅坂46「風に吹かれても」。先週15位からCDリリースにあわせて大きくランクアップ。3週ぶりのベスト10返り咲きとなっています。実売数、PCによるCD読取数、Twitterつぶやき数いずれも1位、ラジオオンエア数7位、You Tube再生回数9位という結果に。ちなみにオリコンでも初動売上64万2千枚で1位を獲得。前作「不協和音」の63万2千枚(1位)から若干のアップとなりました。

2位にはEXILEの弟分的ダンスグループ、GENERATIONS from EXILE TRIBE「BIG CITY RODEO」がCDリリースにあわせてランクアップし、初のベスト10入り。EDMチューンなのですが、どことなくK-POPっぽい雰囲気も。実売数2位、PCによるCD読取数4位を記録。一方でラジオオンエア数は15位、Twitterつぶやき数は17位、You Tube再生回数は75位に留まっています。オリコンでは初動売上7万2千枚で2位初登場。前作「太陽も月も」の2万3千枚(6位)から大幅アップしています。

3位初登場はAquors「未来の僕らは知っているよ」。アニメキャラによるアイドルプロジェクト「ラブライブ!サンシャイン!!」の登場人物によるアイドルユニット。アニメ「ラブライブ!サンシャイン!!」オープニング・テーマ。いかにも昔ながらもJ-POP的な爽快なアイドルポップ。実売数3位、PCによるCD読取数2位、Twitterつぶやき数6位を記録しています。オリコンでも初動6万3千枚で3位初登場。前作『ラブライブ!サンシャイン!!』デュオトリオコレクションCD VOL.1 SUMMER VACATION(夏への扉 Never end ver./真夏は誰のモノ?/地元愛♡満タン☆サマーライフ)」の2万6千枚(4位)からアップしています。

実は今週初登場組は以上の3曲のみ。一方、ロングヒット組ではまずEd Sheeran「Shape Of You」は9位から8位にランクアップ。実売数9位、You Tube再生回数6位はいずれも先週から順位変わらずでした。

今週のHot100は以上。明日はアルバムチャート!

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