「伝説のバンド」のベスト盤
Title:人間山脈の旅~ローザ・ルクセンブルグ ベスト20
Musician:ローザ・ルクセンブルグ
デビュー曲「在中国的少年」が、矢野顕子と細野晴臣に大絶賛を受けて一躍注目を浴び、80年代に活躍したロックバンド、ローザ・ルクセンブルク。そのシングル曲をひっさげて1986年にデビューしたもののメンバー間の音楽的相違によりわずか1年、アルバムをわずか2枚のみひっさげて解散してしまいました。
そんな非常に短い活動期間ながらもこのバンドの知名度を押し上げているのが、メンバーのうち2人がその後、BO GUMBOSを結成し、80年代後半から90年代にかけて活躍。大きな話題となり、いまなお多くのファン、ミュージシャンたちの支持を得ているから。要するに、BO GUMBOSのどんとと永井利充の前身バンドがこのバンド。デビューから解散までわずか1年弱ということもあり、いまや一種の「伝説のバンド」になっています。
今回リリースされたのは解散から30年を経てリリースされたベストアルバム。メンバーであった玉城宏志自らの選曲によるアルバムで、タイトル通り、彼らの代表曲20曲が収録されています。個人的にBO GUMBOSは音源を何枚か聴いたことあるのですが、ローザ・ルクセンブルグは全く音源も聴いたことなく、このアルバムではじめて彼らの楽曲に触れました。
そもそもローザ・ルクセンブルグというバンドが短命に終わった要因、Wikipediaによるとルーツ・ミュージックに傾倒するどんと、永井とロック志向の玉城の間に音楽性の相違を理由とする軋轢が生まれたというのが大きな理由だとか。ただ今回のベスト盤を聴くとその音楽的な相違という解散理由が痛いほどわかりました。
それは楽曲的にあきらかにルーツ・ミュージック志向の楽曲とパンク、ロック志向のアルバムが入り混じっていたから。たとえば「在中国的少年」はお祭り囃子風であきらかにルーツ・ミュージック志向。「あらはちょちんちょちん」なども軽快なピアノがニューオリンズ風であきらかに後のBO GUMBOSの楽曲のルーツを感じさせます。
一方で「おいなり少年ゴン」はパンキッシュなギターサウンドが前に出ていてパンクロック志向の強い作品ですし、「虹のまりちゃん」などもブルースロック志向が強く出たロック寄りの作品になっていました。
ただその結果として楽曲としてはむしろBO GUMBOSの楽曲以上にごった煮的な要素が強くバラエティーに富んだ作風になっていたと思います。前述の通り、ルーツ・ミュージック志向の曲とロック志向の曲が入り混じっているのですが、両者は必ずしも曲毎にわけられているわけではなく、ロック志向とルーツ・ミュージック志向がひとつの曲の中に入り混じっています。結果としては楽曲として雑多な感じは否めないものの、ぎゃくにごちゃごちゃな感じがBO GUMBOS時代の楽曲よりおもしろくすら感じる部分もありました。
歌詞にもユーモラスで個性的な歌詞が多く、特に耳を惹くのが「おしり」というナンバー。タイトル通りのエロ歌詞なのですが、この曲、同性愛者の認められない愛に関する悲哀を描いた作品。ある意味マイノリティーからの視点を感じさせる曲で、いまでもテーマ性を含めて耳を惹くナンバーになっていました。
わずかデビューから1年程度の活動ながらも80年代の日本音楽史に燦然たる足跡を残した伝説のバンドのベスト盤なだけに、今聴いても全く古さを感じない魅力あふれるアルバムでした。BO GUMBOSが好きな方はもちろん、そうでなくても日本のロック史の中で要チェックな楽曲ばかりだと思います。これを機に、是非。
評価:★★★★★
そのほかに聴いたアルバム
VESTIGE-40th HISTORY ALBUM/CASIOPEA
日本を代表するフュージョンバンドの結成40年を記念してリリースされたオールタイムベストアルバム。フュージョンというジャンルは正直言って「そこらへんのBGMとして流れている音楽」的なイメージが強く、いままで積極的に聴いてこなかったのですが、私でも名前を知っている日本を代表するバンドのオールタイムベストということで、聴かず嫌いはよくない、ということもありはじめて聴いてみました。
で、その感想をしては率直に言ってしまうと良くも悪くも耳触りのよいメロディアスなインストという印象はぬぐえず、積極的にはまることはないな、というのが感想。ただ一方で、無味無臭のBGMという先入観があったのですが聴いてみると思った以上にジャジーに凝ったサウンドを楽しめ、決してBGM的に聴き流すだけの音楽ではないということにあらためて気が付かされました。「FIGHTMAN」みたいにどこかで聴いたことあるような曲も要所要所にあり、そういう意味でも思ったより楽しめたアルバム。フュージョンというジャンルを聴いたことない私にとってはちょうどよいベスト盤でした。
評価:★★★★
愛の休日/柴田聡子
注目のシンガーソングライター柴田聡子の1年8か月ぶりとなるニューアルバム。前作に引き続き、山本精一がプロデュースを手掛けているほか、くるりの岸田繁もプロデュースに参加しています。全編アコースティックのシンプルなサウンドでさわやかなポップソングを聴かせてくれます。言うまでもなく「良質なポップス」という印象を強く受ける楽曲なのですが、その一方でもうちょっとひっかかりがほしい感じも受けてしまいました。
評価:★★★★
柴田聡子 過去の作品
柴田聡子
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