え?これがハープ?
Title:ライヴ・イン・モントリオール
Musician:上原ひろみ×エドマール・カスタネーダ
いつも様々なミュージシャンとコラボを行う上原ひろみ。今回はエドマール・カスタネーダというミュージシャンとのコラボ作を発表しました。一方は言わずとしれた日本を代表するジャズピアニスト上原ひろみ。そしてもう一方のエドマール・カスタネーダは南米コロンビア出身のミュージシャンで世界最高峰のジャズ・ハープ奏者だそうです。もともとは2016年のカナダ・モントリオールでのジャズフェスで知り合った両者。本作はそのカナダのモントリオールでのジャズフェスで再び出会い、共演した音源を収録した作品です。
ジャズ・ハープ・・・?といっても正直言っていまひとつピンとこない方も多いのではないでしょうか。ハープという楽器は典型的にクラシック音楽向けの楽器というイメージがあり、ジャズに使われているというケースは珍しいのではないでしょうか。ハープのあの優雅な音色がジャズにどうやってマッチするの?かなり疑問に感じつつアルバムを聴いてみました。
でも、そんなハープに抱いていたイメージは本作の開始早々に打ち砕かれます。まずあらわれるのは弦を激しく叩きつけるような音色。おそらく、ハープの優雅な音色を想像しているとそのギャップの大きさに驚かされるかもしれません。本作の1曲目を飾る「ア・ハープ・イン・ニューヨーク」ではまさに優雅というイメージのハープの音色からほど遠い、非常にアグレッシブな音が繰り広げられます。それに対抗するのが上原ひろみの奏でる、時には優しいメロを奏でつつ、アグレッシブに激しく繰り広げられるピアノの奏で。この両者がガッチリと対峙したこの曲はまさに緊張感あふれる作品になっており、ひと時も耳を離せられません。
続く2曲目「フォー・ジャコ」もフリーキーなハープとピアノの音がガッチリと組み合わさった、1曲目に続き緊張感の高い作品になっています。特にハープの音色はまるでギターを思わせるような激しい演奏を見せつつも、時折ハープらしい美しい音色が混じったりして非常に魅力的。良い意味でハープらしさとハープらしくない部分が混じり合った演奏となっていました。
その後は基本的にはメロディアスな曲調のナンバーが続きます。「月と太陽」など、まさにピアノとハープの美しい演奏が重なり合う、メロディアスなナンバー。こちらはピアノの音色はもちろんハープにどこか琴を彷彿させるような和風の香りが漂っています。もともとは上原ひろみが矢野顕子との共演作において作曲したナンバーですが、ハープの音色にもピッタリとマッチしていました。
後半では「ジ・エレメンツ」と題された4部作からなる組曲が披露されます。基本的にはメロディアスな作品ながらもここでもピアノもハープも非常にアグレッシブな演奏を聴かせてくれます。特に第3部「アース」ではフリーキーな演奏を聴かせてくれたり、最後の第4部「ファイアー」ではラテンテイストも感じさせるナンバーになっていたりと、ピアノとハープのみで非常に幅広い作風の楽曲を聴かせてくれます。
最後を締めくくるのはタンゴのスタンダードナンバー「リベルタンゴ」のカバー。こちらは哀愁感漂うメロディーをハープが奏でるナンバー。歌うようなハープの音色が実に魅力的。もちろんそこにからむように聴かせる上原ひろみのピアノも実に魅力的です。
今回のアルバム、上原ひろみとエドマール・カスタネーダとのコラボ作で、もちろん作中、宇原ひろみのピアノも強いインパクトを持っていたのですが、それ以上にやはりエドマール・カスタネーダの奏でるハープの音色が強く印象に残る作品になっていました。なによりもクラッシック音楽の演奏では絶対聴けないようなハープの奏法を次々と繰り出しており、それによりハープという楽器の持つ隠された魅力を次々と引き出しているような演奏になっていたと思います。いや、ハープってこんなおもしろい楽器だったんですね、ビックリしました。両者の緊張感あふれる対峙もたまらないし、またメロディアスな曲では息もピッタリあっているし、本当に魅力的なコラボ作だと思います。最後までひと時たりとも耳を離せない傑作でした。
評価:★★★★★
上原ひろみ 過去の作品
BEYOUND THE STANDARD(HIROMI'S SONICBLOOM)
Duet(Chick&Hiromi)
VOICE(上原ひろみ featuring Anthony Jackson and Simon Phillips)
MOVE(上原ひろみ featuring Anthony Jackson and Simon Phillips)
Get Together~LIVE IN TOKYO~(矢野顕子×上原ひろみ)
ALIVE(上原ひろみ THE TRIO PROJECT)
SPARK (上原ひろみ THE TRIO PROJECT)
ほかに聴いたアルバム
LOVE YOUR LOVE/LOVE PSYCHEDELICO
結成20周年を迎えたLOVE PSYCHEDELICO。途中、ベスト盤やライブ盤のリリースはあったものの純粋な新譜としては約4年3ヶ月ぶりと久々となってしまったニューアルバム。今回のアルバムはいい意味で肩の力の抜けたような爽快なポップスが並んでいます。雰囲気としては前々作「ABBOT KINNEY」に近い感じでしょうか?同作もいい意味で肩の力が抜けて、アメリカ西海岸の空気を感じるカラッとした作品でしたが今回のアルバムもそれに似たような雰囲気を持った作品に仕上がっていました。
評価:★★★★★
LOVE PSYCHEDELICO 過去の作品
This Is LOVE PSYCHEDELICO~U.S.Best
ABBOT KINNEY
IN THIS BEAUTIFUL WORLD
LOVE PSYCHEDELICO THE BEST I
LOVE PSYCHEDELICO THE BEST Ⅱ
15th ANNIVERSARY TOUR-THE BEST-LIVE
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