突如解散した話題のバンドのリーダーによるソロデビュー作
Title:ノスタルジア
Musician:Okada Takuro
インディーシーンに突如登場し大きな話題となりつつ、わずか2枚のアルバムを残し2015年に解散したバンド、森は生きている。そのバンドの中心人物であり、ギターや作曲、アレンジも担当していた岡田拓郎がOkada Takuro名義でソロアルバムをリリースしてきました。
人気上昇中で大きな話題となっている中の突如の解散となった森は生きているでしたが、フォークやソフトロック、ジャズなどの様々な音楽を取り込みながら独特の幻想的な雰囲気を醸し出す楽曲が特徴的でした。今回のアルバムに関してはやはりそんな森は生きているの延長線上のような作品になっていたと思います。
フィーキーな雰囲気を感じる「アルコポン」からスタートし、「アモルフェ」ではジャジーなサウンドを聴かせてくれます。全体的にはフォーキーな雰囲気を醸し出しつつも現代ジャズ的な要素も感じられる宅録系のポップミュージックを作り上げています。また今回、特に感じたのはソロアルバムということもあり、森は生きているの曲よりも、よりパーソナルな雰囲気の作品に仕上がっているという点。森は生きているも比較的「通向け」を感じる良くも悪くも地味さを感じさせるバンドでしたが、今回のアルバムに関しては、より内向的な雰囲気を感じさせる曲が揃っていました。
サウンドの構成としてももともと岡田拓郎本人がボーカルではなかったこともあってか、ボーカルトラックはほかのサウンドの中に埋もれ、数多いサウンドのひとつであるかのような構成になっています。そのため、基本的にボーカル付の楽曲が並んでいるものの、どこかインストのアルバムであるかのような感覚すら覚えるアルバムになっていました。
それだけに目立つのがフォークロックバンドROTH BART BARONの三船雅也の「アモルフェ」や女性シンガーソングライター優河を迎えた「遠い街角」といったゲストボーカルを迎えたナンバー。いずれもほかの曲と異なりボーカルトラックとメロディーラインを際立たせた「歌モノ」。これらの曲ではほかの曲ではさほど感じられなかった岡田拓郎のメロディーメイカーとしての才も感じさせる作品になっています。特に「遠い街角」はちょっとエキゾチックな雰囲気とフォーキーな優しい雰囲気、そしてジャジーな雰囲気が同居したアルバムのラストにふさわしい独特のポップチューンになっており、ほどよい余韻をかかえつつ、アルバムは幕を閉じます。
ちょっと森が生きているに比べてより内向的になってしまったのが気になる部分はあったのですが、ソロアルバムらしい岡田拓郎がやりたいことをやっているな、と感じさせてくれる傑作。また彼の才能が存分に発揮されたアルバムになっていました。アルバム2枚を残して森は生きているが解散になってしまったのは非常に残念だったのですが、今後は彼の活動に注目したいところ。まだまだ傑作をどんどん世に生み出してくれそうな予感のするソロデビュー作でした。
評価:★★★★★
ほかに聴いたアルバム
NAMiDA/KANA-BOON
4枚目となるKANA-BOONのニューアルバム。前作に引き続き、押し一辺倒だったアレンジからポップなメロディーラインをきちんと生かした作風にまとめており、楽曲的に安定感が出てきた感じが。ただメロディーにはインパクトがあるものの独自性は薄く感じてしまうのが気になるところ。ルーツレスな部分を含めて、よくも悪くもいまどきのバンドという印象を強く感じます。
評価:★★★★
KANA-BOON 過去の作品
DOPPEL
TIME
Origin
大海賊/サイプレス上野とロベルト吉野
「サ上とロ吉」の略称でも知られるHIP HOPデゥオのメジャーデビューミニアルバム。え?いままでメジャーじゃなかったの?とちょっと意外にすら感じてしまうのですが・・・。ただメジャーデビューしても基本的なスタンスはいままでと同じ。7曲入りのミニアルバムですが、爽快なシティポップ風の「メリゴ」からスタートし、80年代風のファンキーディスコチューン「Walk This Way(アセ・ツラ・キツイスメル)」、ロッキンでダイナミックなトラックが魅力の「GET READY」など、様々なスタイルでサ上とロ吉の魅力を聴かせつつ、全編アップテンポで盛り上がるナンバーが並んでいる彼ららしいアルバムになっています。わずか7曲入りですが、きちんとサ上とロ吉の魅力を伝えるメジャー1枚目らしい傑作アルバムでした。
評価:★★★★★
サイプレス上野とロベルト吉野 過去の作品
WONDER WHEEL
YOKOHAMA LAUGHTER
サ上とロ吉のINMIX~non stop rental~
MUSIC EXPRES$
TIC TAC
ザ、ベストテン 10th Anniversary Best(紅)
ザ、ベストテン 10th Anniversary Best(白)
コンドル
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