荒々しさと美しさが同居
Title:Visions of a Life
Musician:Wolf Alice
デビューアルバム「My Love Is Cool」が個人的に大ヒットしたイギリスの4人組バンドWolf Aliceの2枚目となるアルバム。私に限らずこのアルバムが壺にはまった方も多いようで、前作はイギリスのナショナルチャートで2位を記録。本作も前作から引き続き2位にランクインとヒットを記録しており、名実共にイギリスを代表するバンドへと成長を遂げようとしています。
今回のアルバムもまず1曲目「Heavenward」の出だしからして震えます。遠くのほうから徐々にホワイトノイズが近寄ってきたかと思えば、ガツンとギターサウンドのカットインでスタート。ノイジーなギターが鳴り響く中、ボーカルEllie Rowsellの澄んだ歌声が聴こえてくる・・・。マイブラからの影響を強く感じるこの楽曲はおそらく前作が気に入った方なら一発で気に入る楽曲になっているのではないでしょうか。
ただ今回、シューゲイザー色を強く押し出したドリームポップ的な曲は前作ほどは多くありません。続く「Yuk Foo」は80年代のインディーギターロック風の荒々しいパンキッシュなナンバー。さらに「Beautiful Unconventional」はロックンロール風の軽快なリズムが楽しいポップチューンになっています。
とはいってもアルバム全体として前作で感じたWolf Aliceの魅力はしっかりと残されていました。Ellie Rowsellによる美しいボーカルはもちろん本作でも健在。メロディーラインもポップで魅力的なフレーズを聴かせてくれます。特にそんな魅力が全面的に出ているのが「After The Zero Hour」。アコースティックギターをメインに彼女の美しいボーカルとメロディーを聴かせるシンプルなポップチューン。アルバムの中でも異色なナンバーなのですが、シンプルだからこそむしろWolf Aliceの魅力がより伝わるような楽曲になっています。
またガレージ風のノイジーなギターでパンキッシュに聴かせるナンバーも大きな魅力。「Space&Time」などはまさに全面的に歪んだギターが鳴り響くパンクチューン。ただ意外とメロディーラインに関してはポップにまとまっているのもまた彼女たちらしいといった感じでしょう。「St.Purple&Green」もまた、最初、美しいコーラスラインからスタートしつつ、途中からいきなりへヴィーなギターサウンドを軸とした分厚いバンドサウンドがガツンと入ってくるのも魅力的。そんな分厚いサウンドを展開しながらもクリアで美しいボーカルとメロディーのフレーズは続いており、へヴィーさと美しさが同居するWolf Aliceらしい楽曲になっています。
そういう意味ではタイトルチューンでもある最後を締めくくる「Visions Of A Life」も同様。ダイナミックでへヴィーなバンドサウンドを奏でつつ、一方で非常に美しいメロディーとボーカルを聴かせる、その対比がおもしろいナンバー。まさにWolf Aliceらしい楽曲での締めくくりとなっています。
前作に比べると(80年代インディーロックっぽい楽曲やシューゲイザー系からの影響は感じるものの)80年代っぽさは薄れた感じがします。またドリームポップよりもガレージロック寄りにシフトしたのも本作の特徴でしょうか。ただそれでもまた前作同様、Wolf Aliceの魅力をしっかりと感じることができた傑作になっていました。前作に引き続き、またもや本年度のベスト盤候補!今回も個人的におもいっきり壺にはまってしまいました。
評価:★★★★★
Wolf Alice 過去の作品
My Love Is Cool
ほかに聴いたアルバム
Wonderful Wonderful/The Killers
アメリカ・ラスベガス出身の4人組ロックバンド。ただアメリカよりもイギリスで人気が先行したようで、イギリスではデビュー作以降本作まで5作連続の1位を獲得。ただこのアルバムではついにアメリカでも1位を獲得しています。
楽曲はミディアムテンポのナンバーがメイン。以前聴いた「Day&Age」もそうだったのですが、スタジアムバンドの風格すら漂うスケール感のある作品を聴かせてくれます。メロディアスな作風は日本人にもマッチしそうな感じもするのですが。
評価:★★★★
The Killers 過去の作品
Day&Age
V/THE HORRORS
イギリスのインディーギターロックバンドによるタイトル通り5枚目となるアルバム。彼らはエレクトロサウンド色の強い「SKYING」、フィードバックノイズを多く取り入れた「Primary Colours」、そして両者を折衷した「LUMINOUS」とアルバム毎に少しずつそのスタイルを変えてきました。本作はノイジーなサウンドが目立ちつつも、基本的にはエレクトロサウンドが主軸となっています。ただ全体的にはサイケの要素を強く感じますし、またインダストリアル的な要素が強い「Machine」やアコースティックな要素が強い「Gathering」など幅広い音楽性への挑戦も感じられるアルバム。ただ全体的にはドリーミーなポップチューンが心地よいアルバムに仕上がっていたと思います。
評価:★★★★★
THE HORRORS 過去の作品
Primary Colours
SKYING
LUMINOUS
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