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2017年10月28日 (土)

アフリカ初のポピュラーミュージック

Title:PALMWINE MUSIC OF GHANA

Palmwine

今回紹介するのは、一部で注目を集めているアフリカ音楽のコンピレーション。アフリカ最初のポピュラーミュージックといわれるパームワインを音楽評論家の深沢美樹氏監修・選曲により収録したコンピレーションアルバムです。ただ本作はその中でも1930年から60年あたりにかけてのSP音源を収録したアルバム。深沢美樹氏秘蔵のSP音源からの収録となるそうなのですが、全50曲中49曲が今回初CD化という驚きの内容。まさに秘蔵中の秘蔵の音源を世に出したアルバムになっています。

パームワイン・ミュージックは西アフリカの港町で生まれた音楽。欧米から帰ってきた解放奴隷たちが持ち込んだ欧米の音楽とアフリカの土着の音楽が融合して生み出された音楽で、「パームワイン」とは「ヤシ酒」のこと。ヤシの実から作った安酒を出すような酒場で演奏されたことからそのような名前が付けられたそうで、まさにアフリカ初のポピュラーミュージックという呼び名にふさわしい誕生の仕方といえるでしょう。

楽曲的には欧米由来のメロウなギターサウンドに、アフリカ由来のポリリズム的なリズムやコールアンドレスポンス、シャウとなどが融合したスタイル。基本的にはさわやかなギターサウンドとメロウなボーカルが前に出てきており、サーフミュージック、あるいはブラジル音楽あたりにつながるような雰囲気を感じさせる楽曲になっています。

今回のコンピレーションはまさにそんなパームワイン・ミュージックの最初期、1930年代の録音から徐々に時代を下る感じで楽曲が並んでいます。そのためパームワイン・ミュージックの成り立ちがよくわかるような構成になっています。個人的に特に魅力的だったのがパームワイン・ミュージックの萌芽ともいえる最初期の作品群。1937年の録音作品、Samの「Kweku Ewoosi」や同じく1937年の録音作品Kwaminの「Wongyam Odede」などはのちの音楽につながるようなメロウなギターサウンドが鳴っているものの、ボーカルは非常に荒々しく、アフリカの土着の音楽から地続きの音楽性を感じます。「Wongyam Odede」などはポリリズム的なリズムもなっており、西洋音楽とアフリカ土着の音楽の融合ということですが、アフリカ音楽的な要素を強く感じる楽曲になっています。

これが時代を下るにつれ、徐々にトライバル的な要素が薄れ、西洋音楽的な要素が強くなってくるのがひとつの特徴。音楽的にどんどんと洗練されていることがこのコンピレーションを聴くと感じることが出来ます。ただ、だからといってアフリカ的、トライバルな要素がなくなったかというとそうではなく、たとえば1952年の録音、Kwaa Mensah And His Bandの「Nana Akunfi Ameyaw」ではポリリズムなパーカッションを聴くことが出来たり、1958年の録音Kwabena Nyamaa&His Band「Mere Dwen Meho」などでもボーカルに強くトライバルの要素を感じたりと、洗練されたギターサウンドの後ろでトライバルなリズム、サウンドが鳴っており、この西洋的な部分とアフリカ的な部分のバランスが非常に魅力に感じられました。

今回のアルバムは、たとえばS.E.ロジーのような現代のパームワイン・ミュージックのミュージシャンにはまった人がそのルーツを知ろうとする時にちょうどよいアルバム、というスタンスなのですが、これがはじめてのパームワイン・ミュージックという方でも十分楽しめる構成になっていたと思います。特にアルバムに同封されているブックレットではパームワイン・ミュージックの歴史や各曲の紹介が細かく記載されており初心者にもピッタリの内容になっていました。アフリカ音楽の奥深さや魅力をより感じることが出来るコンピレーションアルバム。アフリカ音楽が好きなら間違いなく買いの作品です。

評価:★★★★★

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