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2017年10月21日 (土)

デザイナー三栖一明を向井秀徳が語る・・・・・・ではなくて。

本日も音楽関連の書籍の紹介。今回は、元NUMBER GIRL、現在はZAZEN BOYSとして活躍している「This is 向井秀徳」こと向井秀徳著による「三栖一明」です。

おそらくかなり熱心な向井秀徳ファン以外にとっては、「誰?三栖一明って?」という感じでしょうが、三栖一明は向井秀徳の学生時代からの友人で、向井秀徳と共に上京し、NUMBER GIRLやZAZEN BOYSのジャケットやパンフレットなどのデザインを担当しているデザイナー。本作は向井秀徳名義なのですが、インタビュアーが向井秀徳にインタビューする形で進んでいきます。そして向井秀徳が三栖一明について語ったのが本作・・・・・・・という建付けなのですが、実際は向井秀徳の自伝。一応は三栖一明について語っているような建て前がインタビューの要所要所に入るのですが、最初の質問は「向井さんはどういった家庭環境の中で生まれたのでしょうか?」ですし、基本的には彼の出生から学生時代、ナンバガ結成前夜からナンバガ結成後、そしてナンバガ解散、ZAZEN BOYS結成を経て今に至るまでが向井秀徳の口から語られています。

同書でなによりも興味深いのはやはり向井秀徳生誕からナンバガ結成、デビューまでの時期でしょう。特に彼が佐賀出身ではなく大阪生まれで幼少期を大阪で過ごした事実は今回はじめて知りました。根っからの九州男児だと思っていたのでこれはちょっと意外な。また、同書の書評で、真面目眼鏡君な風貌からは考えられないほどの不良さにショックを受けるファンもいるかも・・・なんてことを書いているサイトを見かけたので、ちょっと心配(?)しながら読み進めたのですが、ただこの点については杞憂。確かに高校生からデビュー前夜にいろいろな悪いこともしていたようですが、完全にぐれていた訳じゃなくて「ちょっと悪いこともしちゃってました」程度のお話で、彼のイメージから大きく逸脱するものではありませんでした。

それよりも印象的だったのが向井秀徳のコイバナ。彼曰く、女の子に恋をすると頭の中でラーズの「ゼア・シー・ゴーズ」が流れるらしいのですが、恋愛に対するスタンスは非常に純情そのもの。ただ恋がある程度成就すると覚めてしまうという、典型的な「恋に恋する乙女」タイプ(笑)。ただ、この恋に恋するような純情さは、特に初期のNUMBER GIRLの曲の歌詞からよく感じることが出来ましたし、そういう意味では向井秀徳のイメージ通りといった印象も受けました。

ただ、この向井秀徳のコイバナもそうなのですが、これと決めたらとにかく行動に移す向井秀徳の行動力には驚かされました。デモテープをアメリカの超有名なインディーレーベル、サブポップに送り、さらに電話までかけたという話にはただただビックリ。普通ならとてもできません。このくらの肝の太さがないとやはり音楽業界では成功できないんだろうなぁ・・・多分。

そんな訳で、NUMBER GIRLのデビューに至るまでの話は非常におもしろく、またその後の向井秀徳の音楽に影響を与えたであろう部分も大きく、ファンとしては興味深く読み進むことが出来ました。一方、NUMBER GIRLデビュー以降の話についてはあまり意外性はなかったような。どこかで聞いたような話だったり、音楽を聴けばある程度想像できるような話だったりして、もちろんこれはこれでおもしろかったのですが、興味深く読めたかというとデビュー前ほどではなかったかな、と感じてしまいました。

そして最後に、「特別収録」としてタイトルになった三栖一明本人のインタビューが載っています。正直、こちらはほとんど期待しないで読んでみたのですが・・・これがまた非常におもしろいく興味深い内容になっていました。こちらは三栖一明から語られる向井秀徳なのですが、おそらく向井秀徳本人では到底語られないような内容があったり、特にナンバガ解散時の会議の話なんか、実は田渕ひさ子とアヒト・イナザワはナンバガとしての活動を続けたがっていたというのはちょっと意外にすら感じましたし、解散を決めた時のメンバーの表情など、ファンとしては胸につまるものすらありました。

本の全体的なボリュームからすると2,800円(+消費税)というのは若干高いかな?という感じもするのですが、向井秀徳のファンならまず読んでおきたい自伝。彼の音楽的なルーツもよくわかり、非常に興味深い一冊。これを読んだら久しぶりにNUMBER GIRLの曲が聴きたくなりました。

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コメント

センチメンタル過剰の制作に至るエピソードとか,パチンコともやしのエピソードがとても面白かったですね。

向井氏の新作にも期待しましたが,その後,Zazenからベース吉田一郎氏が脱退ということで残念です…

投稿: kozy | 2017年10月22日 (日) 16時47分

>kozyさん
そう、本当にいろいろおもしろいエピソード満載の1枚でした。
ZAZENから吉田一郎脱退のニュースは残念です。ただ、ZAZENはやはりワンマンバンドの方向性が強いから、メンバーの入れ替えは仕方ないかもしれないですね・・・。

投稿: ゆういち | 2017年10月27日 (金) 23時56分

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