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2017年10月29日 (日)

マーク・ボランへの愛があふれる

1970年代前半、イギリスにおいてグラムロックのムーブメントを巻き起こしたバンド、T.Rex。今年はそのボーカルでありリーダーであったマーク・ボラン生誕70年かつ没後40年を迎えた年だそうです。それを記念し、今年、T.Rexに関する企画アルバムがリリースされました。

Title:T.Rex Tribute ~Sitting Next To You~

さて、T.Rexによりひとつの流行となったグラムロックは日本においても大きな影響を与えました。最初期には忌野清志郎がグラムロックの影響を受け、自身にもメイクをほどこしていたりしましたし、その後はご存じ、THE YELLOW MONKEYもグラムロックの影響を強く受けたバンド。また、日本においてひとつのジャンルとして確立したヴィジュアル系もグラムロックからの流れを受けています(イエモンもブレイク時は「ヴィジュアル系」にカテゴライズされていたこともありましたし)。

そんなグラムロックに大きな影響を受けた日本のバンドのひとつがマルコシアス・バンプ。アラフォー以上の世代には懐かしいロックバンドのオーディション番組「いかすバンド天国」通称「イカ天」で「グランドイカ天キング」に輝くなど一世を風靡しました。そのボーカル、アキマツネオは日本でも屈指のマーク・ボランフリークとしても知られているそうですが、その彼が総合プロデュースとして製作されたトリビュートアルバムがリリースされました。

本作にはアキマツネオ本人に、もちろんTHE YELLOW MONKEYから吉井和哉や廣瀬"HEESEY"洋一も参加。ほかにもOKAMOTO'SのオカモトショウやThe Collectorsの加藤ひさしにヒダカトオル、ちょっと意外なところではTHE BAWDIESのROYやアイドルグループチャオ ベッラ チンクエッティの橋本愛奈も参加しています。

基本的にT.Rexの音楽はシンプルなロックンロールが多いだけに楽曲もシンプルな曲がメイン。ボーカルとしてもシンプルでポップな歌い方をするボーカリストが曲にピッタリとマッチしていて、典型的なのが「Celebrate Summer」をカバーしたオカモトショウで、時としてあまりに軽すぎることも感じてしまう彼のボーカルも、T.Rexの楽曲に関してはむしろピッタリとマッチしています。

ちょっと意外(?)だったのがチャオ ベッラ チンクエッティの橋本愛奈で、良い意味でアイドルっぽさを感じさせない大人っぽいセクシーさも感じるボーカルで、アキマツネオとのデゥオで「Life's A Gas」にムーディーさを加えて上手くカバーしています。

逆にちょっと残念だったのがTHE BAWDIESのROYによる「Get It On」のカバー。いつもの彼らしいしゃがれ声によるソウルフルなボーカルだったのですが、残念ながら「Get It On」の軽快さを壊してしまうボーカルに。彼はおそらくこういう歌い方しか出来ないのでしょうが、T.Rexの楽曲にはちょっと合っていなかったように思います。

そしてさすがマーク・ボランフリークとして年季の違い(?)を見せつけたのがプロデューサーでもあるアキマツネオ。ほどよくねちっこいボーカルがT.Rexの楽曲にもピッタリとマッチしています。特に絶品だったのがラストを飾る吉井和哉とのデゥオ「Sitting Next To You」。どちらもマーク・ボランに対する愛情を強く感じるボーカルスタイルで、音楽的ルーツに共通項のある2人だけにボーカルとして息もピッタリ。T.Rexへの愛情あふれるカバーに仕上がっていました。

全体的には非常によく出来たカバーが多く、参加者それぞれのマーク・ボラン、そしてT.Rexに対する愛情があふれるトリビュートアルバムになっていたと思います。T.Rexが好きな人もそうでない人も、参加ミュージシャンが好きな人ももちろん、楽しめるアルバムになっていたと思います。特にT.Rexの曲はシンプルでポップで聴きやすいので、洋楽をあまり聴かないリスナー層にも楽しめるアルバムだと思います。

評価:★★★★★

そして本作と同時にリリースされたのがアキマツネオ監修によるT.Rexのベストアルバムです。

Title:BEST OF T.REXXXXXXX
Musician:T.Rex

まずちょっと残念なのは権利の関係か収録されているのがT.Rexに改名してから3枚目のアルバム「The Slider」以降の曲からピックアップされたベスト盤という点。そのため初期の代表曲「Get It On」などは収録されていません。

ただそれでも彼らの活動がもっとも脂になっていたと思われる70年代初頭の楽曲はきちんと収録されていますし、また彼らの楽曲の中には代表曲である「20th Century Boy」「Children of the Revolutin」などシングルリリースのみでアルバム未収録の曲も多く、それらの曲もキチンと抑えられている点、T.Rexの活動を知るためにはこの手のベスト盤が要チェックといった感じでしょう。

T.Rexといえばグラムロックと呼ばれるようなちょっとケバケバしたという印象すらある中性的な外観とは裏腹に楽曲は後のパンクロックへも影響を与えたという、ロックンロールやガレージロックの影響を受けたシンプルな楽曲がメイン。メロディーラインにも非常にわかりやすいものがあり、どの楽曲も非常に聴きやすさを感じます。

ただ、そういう印象をもとに聴き進めると、意外とギターが複雑なフレーズを奏でていたり、サイケやブルースなどの影響を顔をのぞかせたり、シンプルそうに感じても、実は「単純」なわけではないサウンドに気が付かされます。そんなサウンドを取り入れつつ、楽曲の雰囲気としてはむしろシンプルなポップスさを感じさせるあたりにマーク・ボランの才能を強く感じました。

ただ残念ながら後期の楽曲に関してはそういうサウンドのユニークさがちょっと薄れてしまい、単なるシンプルでポップなロックになっていた点が気になったのですが・・・。ただそういう部分を差し引いても名曲揃いのベスト盤。上にも書いた通り、彼らの楽曲はシンプルでポップ、ともすればわかりやすいサビを持っていたりもするのでJ-POPオンリーのリスナーにも聴きやすかったりします。オールタイムベストじゃないのはちょっと残念なのですが、これを機に是非。ブックレットには本作を監修したアキマツネオによる解説文も載っているので、入門盤としても最適なアルバムだと思います。

評価:★★★★★

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