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2017年10月 1日 (日)

浅草オペラ第2弾

Title:あゝ浅草オペラ 女軍出征100年と魅惑の歌劇

以前、このサイトで戦前に一世を風靡した和製オペレッタのムーブメント「浅草オペラ」に関する書籍と、浅草オペラの楽曲を収録したアルバムを紹介しました(戦前の「インチキ」歌劇文化)。今回紹介するのはその第2弾ともいえるアルバム。前作同様、浅草オペラ研究の第一人者小針侑起氏が監修・選曲を行い、ここでも何度か取り上げた戦前のSP盤復刻を専門とするレーベル「ぐらもくらぶ」からリリースされたアルバムです。

まず今回のアルバムで「核」となるのが「喜歌劇 女軍出征」。上記サイトで紹介した書籍「あゝ浅草オペラ」によると「浅草オペラ史を通して最も多く上演された演目」だそうで、初演が大正六年(1917年)の1月。そういう訳でサブタイトルの通り、今年はこの「女軍出征」からちょうど100年が経過した年となる訳です。

今回は冒頭で「女軍出征」が東京レコードとオリエントレコードという2つの異なるレコード会社から発売されたレコードが収録されています。あらすじはどちらもほぼ同じで、時代はちょうど第一次世界大戦の真っ最中。戦争で男性が少なくなってしまったので女性が兵隊として出征してきたというネタ。劇の内容はいまから聴くと筋書も演技も拙く感じてしまうのですが、各国の女性兵士としてズラリと女優が登場したこの題目は、当時の男性陣の目をくぎづけにしたのでしょう。前述の書籍によると、連日大満員だったようです。

ただ第一次世界大戦をネタにしているあたりも時代性を感じるのですが、オチとして「女性は女性の本分に戻るべき」という男尊女卑的な内容は今聴くと厳しいものがあります。一方で最後は日本賛美で締めくくられており、こちらに関してはここ最近の日本国内の情勢と重なるような部分もあり、少々うすら寒いものを感じてしまいました。いずれにしろ、いまから100年前の世相を強く感じさせる歌劇となっていました。

一方、その後の収録曲に関しては独唱による歌がメイン。以前紹介した「和製オペレッタの黎明」は歌劇がメインだったのですが、こちらは100年前の和製オペラ歌手の貴重な歌声を聴くことが出来ます。

まだ洋楽が日本に入ってきて間もない黎明期の歌唱だけあって、声量もいまひとつ。歌い方に民謡らしいこぶしが入ってくるような曲もあったりして、こちらも不安定さを感じてしまいます。

もっとも、「オソレ・ミヨ」「お蝶夫人」を力強く歌い上げる大津賀八郎や、「歌劇リゴレットの一節(主義の歌)」などで伸びやかなソプラノを聴かせる原信子など実力を感じさせる歌手も浅草オペラの底力も感じさせます。ちなみに原信子は日本を代表するソプラノ歌手として活躍。日本人初のミラノスカラ座専属歌手になるなどの実力派。確かにこのアルバムを聴くと、その実力は頭ひとつ出ているように感じます。

今回のアルバムも前作「和製オペレッタの黎明」と同様、浅草オペラの魅力を感じる選曲になっていました。ただ今回のアルバムは歌の独唱、それも洋楽のカバーが多いため、当時の風俗を知るという観点からすると若干物足りなく感じました。また今回のアルバムで気になったのはとにかく音の悪さ。全体的にノイズがかなり強くかかっており、それだけ貴重な音源を収録したということなのでしょうが、正直なところ聴いていて少々辛く感じてしまう部分もありました。

企画のすばらしさ、選曲の良さなどからすると間違いなく5つの仕事ぶりですし、「浅草オペラ」に興味がある方なら間違いなく聴くべきアルバムだと思います。ただそうではなく広い層へのお勧めという意味では以下のような評価に・・・。どちらかというと前作「和製オペレッタの黎明」の方が最初の1枚としてお勧めといった感じ。そういう意味でも「通」向けの1枚だったかもしれません。

評価:★★★


ほかに聴いたアルバム

SUMMERDELICS/GLAY

いきなり「太鼓の達人」的なナレーションが入って少々ビックリしてしまうGLAYの今回のアルバム。そんなコミカルな「シン・ゾンビ」(「太鼓の達人」とのコラボ作)からはじまる本作は全体的にいつものGLAYらしさをベースとしつつ、ポップで少々コミカルさも感じるアルバムになっています。またビートロックの作品はGLAYらしさを感じつつ、ギターサウンドは若干オルタナ系寄りになっているような印象も。GLAYっぽさは維持しつつ、今時のギターロックへのアップデートへの試みも感じさせるアルバムでした。

評価:★★★★

GLAY 過去の作品
GLAY
JUSTICE
GUILTY

MUSIC LIFE

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