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2017年10月 3日 (火)

「GLORIA」のイメージが強いが。

Title:SINGLE COLLECTION
Musician:ZIGGY

今年、メジャーデビュー30周年を迎えるロックバンドZIGGY。主に80年代から90年代にかけて一世を風靡し、特にアラフォー世代にとっては1989年にドラマ主題歌として大ヒットした「GLORIA」のイメージが強いのではないでしょうか。その後も90年代に深夜番組の時間帯に大量に放映され、タイアップ曲が数多くのヒット曲を生んだ「カメリアダイアモンド」のCMソング「Jealousy~ジェラシー」や、今でも数多くのヒット曲を生んでいる日テレ系アニメ「名探偵コナン」の初代エンディングテーマ「STEP BY STEP」など、数多くのヒット曲を世に送り出しました。

その後はメンバーの入れ替え等もありつつ、継続的な活動をつづけたものの2008年に活動を休止。ただし2014年に活動を再開し、このたびメンバーがボーカルで作詞作曲を主に手掛ける森重樹一一人になってしまったものの本格的に活動を再開。それに伴いメジャーデビュー30周年を記念してリリースされたベスト盤が本作。タイトル通り、彼らのシングルが網羅されたシングルコレクションとなっています。

実は私、ZIGGYの音源をまとめて聴くのは今回がはじめて。もちろん上に書いたヒット曲については知っていたものの、基本的には「GLORIA」のバンドというイメージを強く持っていました。そのため「GLORIA」が展開なのですが、典型的なJ-POPのビートロックバンドというイメージが強く、今回、シングルベストのリリースということでせっかくなので聴いてみよう、程度の感覚だったのですが、正直言って内容的には典型的な90年代J-POPが並んでいるだろうな、という予測の元、「ロックバンド」としての期待はほとんどありませんでした。

そんなイメージで聴き始めた今回のベスト盤だったのですが、聴き始めてビックリしました。めちゃくちゃカッコいい!当初の予想通りのJ-POP的な曲ももちろん少なくないのですが、基本的な路線としてはハードロック、ブルースロックの影響をかなり強く受けた、ルーツ志向のバンドサウンドがきちんとなっている本格的なロックナンバーがメイン。「典型的な90年代ビートロックバンド」という彼らに勝手に持っていたイメージは完全に覆されました。

例えば「GLORIA」の一つ前のシングル「ONE NIGHT STAND」はギターリフがかなり前面に出ておりメロディーラインはかなりポップなのですが、後ろに鳴っているギターはかなり本格志向。「SHOUT IT OUT LOUD」もかなりハードロック志向の強いナンバーですし、「BOOGIE WOOGIE TRAIN」のようなタイトル通り、ブギウギを取り入れたロックンロール志向の強いナンバーもあります。特に初期のナンバーについてはThe Rolling Stonesからの影響を強く感じ、「MIDNIGHT TRIPPER」などはパーカッションを取り入れ方にあきらかに「悪魔を憐れむ歌」からの影響を強く感じさせます。

「GLORIA」のヒット後、あきらかにヒットを求められたDisc2の頃の作品に関しては、確かに私が彼らに関してイメージしていた「J-POP的なビートロック」な楽曲も目立つのですが、全体の流れの中に、「GLORIA」や「STEP BY STEP」のようなヒット曲はむしろ彼らの楽曲としては異質なものを感じます。この頃の楽曲でも「月が昇る頃には」のようなブルースロック色の強い曲もあり、ルーツ志向を強く感じます。

特にDisc3あたりから、SNAKE HIP SHAKES名義で活動していた頃の楽曲から再びブルースロック色が強くなってきます。おそらく初期のギタリストでブルースロック志向の強かった松尾宗仁の復帰が大きな影響を与えているのでしょう。この頃のZIGGYはセールス的にはあまり奮わなかったようですが、楽曲的にはむしろ彼らの活動を通じてもっとも充実していたようにも感じます。

ただ一方、そんな本格志向、ルーツ志向のバンドサウンドと反して、森重樹一の書くメロディーラインは意外とベタでポップステイストが強いものとなっており、ある意味「J-POP的」。だからこそ「GLORIA」のようなヒット曲をリリースできたのでしょう。このルーツ志向のバンドサウンドとベタでポップなメロディーの対比というのがこれがまたなかなかおもしろく、本格志向のハードロックの楽曲ながらもロックリスナーではなくても非常に聴きやすい楽曲に仕上がっていました。

80年代を代表するビートロックバンドといえばBOOWYが有名で、彼らはロックに日本人がなじみやすいメロディーラインを取り入れて、ある意味日本流のロックを確立したバンドと言えるのですが、彼らもまた、本場アメリカのロックと日本的なメロを融合させて、日本流ロックを確立させたバンドといえるのかもしれません。よりインパクトあるメロディーが強く、本格志向が後ろに下がったBOOWYと比べて、ブルースロック、ハードロック志向が強かった彼らは残念ながらBOOWYほど日本のロックシーンへ与えたインパクトは強くないのかもしれませんが、このベスト盤を聴くと「日本におけるロック」を感じさせてくれる内容になっていました。

そんな訳でいままでのZIGGYに抱いていたイメージから一転、実はかなりカッコいいロックバンドだったんだ、ということを再認識させられたベスト盤。いや、はっきりいって完全に見直しました。今年になり本格的に活動を再開し、オリジナルアルバムのリリースも予定されているようですが、こちらもチェックしてみたくなりました。「GLORIA」のイメージにとらわれず、ハードロック、ブルースロック好きなら要チェックのベスト盤です。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

新しい森/tacica

2組となったtacicaですが、本作はサポートメンバー2名を迎え、あえて「4人組」にこだわったニューアルバム。ただ基本的にはいつもの彼らと同様、良くも悪くも「無難な」ギターロック。それなりにメロディアスな楽曲は耳を惹くもののインパクトは薄く、これといった特徴が薄い印象が。個人的には好みの音のタイプのバンドなのでアルバムはチェックしているのですが・・・。

評価:★★★

tacica 過去の作品
jacaranda
jibun
HOMELAND 11 blues
LOCUS
HEAD ROOMS

Red Blue Green/BAZRA

個人的にはバンド名に懐かしさも感じる彼ら。2002年にインディーズデビュー、さらには2005年にメジャーデビューも果たし、当時は期待のバンドとして注目を集めるもののボーカル井上鉄平の持病の悪化のため不定期な活動となっていた彼ら。ただ結成20年を迎えた今年、バンドとしては久々の新譜をリリースしました。

内容的には新曲6曲、セルフカバー6曲という内容。しゃがれ声のボーカルで力強いパンキッシュな内容は昔とほとんど変わりはありません。そういう意味では非常に懐かしさを感じます。ただ、久しぶりに聴くと、同じような方向性のバンド、具体的にはサンボマスターやら忘れらんねえよあたりと比べてしまうと、今一歩、「しゃがれ声のボーカルで力強い演奏を聴かせるパンクバンド」というフォーマット以上のプラスアルファに欠けた感があるのが残念。もちろんインパクトは十分あるし、いいバンドだとは思うのですが・・・。

評価:★★★★

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コメント

ZIGGYの男臭さはもっと高く評価されてもいいと思います。

投稿: ひかりびっと | 2017年10月 4日 (水) 11時00分

>ひかりぴっとさん
そうですね、男臭い1枚でした。

投稿: ゆういち | 2017年10月27日 (金) 23時54分

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