« 80年代ギタポからの影響が顕著 | トップページ | あの曲がまたベスト10に返り咲き! »

2017年9月12日 (火)

彼らの歩みがわかるオールタイムベスト

Title:LAST BEST~豊作参舞~
Musician:米米CLUB

「浪漫飛行」「君がいるだけで」などの大ヒット曲を連発し、90年代を代表するバンドの一組としてその名を知られる米米CLUB。97年に解散したものの2006年に再結成し今に至っています。ただ再結成後しばらくは積極的な活動を続けたものの、ここ数年は活動も停滞気味。ただそんな中でも初となるオールタイムベストがリリースされました。

ベスト盤としては12年前にリリースされたファン投票によるベスト盤「米~Best of Best~」以来。こちらは再結成前にリリースされたアルバムということで今回ははじめての再結成後の楽曲を含めたベスト盤に。また、前作ではダンス系の楽曲と聴かせる系の楽曲をCD2枚にわけたアルバムになっていたのに対して本作はデビューシングル以降の全シングルを発売順に並べた内容。そのため、米米のバンドとしての歩みがよくわかる内容になっています。

今回は全3枚組でのリリースだったのですが、この3枚の分け方がちょうど米米の歩みとマッチしているような分け方になっていました。Disc1は「I・CAN・BE」から「ひとすじになれない」まで。いわばメガヒットとなった「君がいるだけで」リリース直前までの作品で、デビュー時からブレイク時までの流れがわかる内容に。Disc2は、その大ヒットした「君がいるだけで」から97年の解散前までのシングル。さらにDisc3は再結成後の楽曲と、ちょうど米米の歩みとマッチしたCDの分け方となっています。

そして今回圧倒的によかったのがDisc1。特に「浪漫飛行」リリース前の楽曲に関して、もちろん以前から知っていたのですが今回久しぶりに聴いてみて、こんなによかったっけ?とあらためて米米の魅力を再認識させられました。いわゆるPファンクから強い影響を受けたファンクナンバーに、ユーモラスな歌詞を加えた内容。ただメロディーラインにしろサウンドにしろファンクそのままというよりも微妙に歌謡曲的なテイストが加わっており、いい意味で日本人にとって聴きやすい味付けがされています。「嫁津波」みたいな民謡風の楽曲もユニーク。彼らが日本流ファンクを実に自然体に完成させてしまっていたことにいまさらながら気が付かされました。

しかし、正直言って「浪漫飛行」以降のナンバーについては日本流ファンクという視点から大きく遠ざかってしまい、悪くはないのですが「売れ線のJ-POP」になってしまっていておもしろさという観点からはグッと後ろに下がってしまったように思います。いわば「浪漫飛行」や「君がいるだけで」の二番煎じを狙っているような縮小再生産的な楽曲がほとんど。アルバム単位ではわからないのですが、シングル曲では初期米米で感じたような魅力はほとんど感じられません。

いまさらながらなのですが、なんで「浪漫飛行」後の米米に関しては初期の歌謡ファンク路線をシングルとして一切やめてしまったのかかなり疑問に感じてしまいます。初期のファンク路線が全く売れずに「浪漫飛行」でいきなりブレイク、というのならわかるのですが、「浪漫飛行」以前も「KOME KOME WAR」「FUNK FUJIYAMA」がベスト10ヒットを記録しており、十分広く受け入れられていましたし、「浪漫飛行」ブレイク後には2ndシングル「Shake Hip!」を再発しヒットを飛ばしています。もし、初期ファンク路線の楽曲を大ブレイク後もシングルとしてリリースしていれば、もっとファン層を広げられたのではないか、と今となっては思ってしまいます。まあリアルタイムでは「FUNK FUJIYAMA」がヒットした頃って、ヒットシーンでファンクを音楽のジャンルとして受け入れられるような土壌がなく、むしろ「コミックバンド」的な括りで彼らのことを語られることが多く、そんなイメージを払拭したかったのかもしれませんが・・・。

また今回のベスト盤で予想以上に良かったのが再結成後の楽曲を集めたDisc3。特に再結成後のシングル曲では、「MATA(C)TANA」「御利益」のような初期ファンク路線が復活。初期米米を彷彿とさせるようなアバンギャルドでポップでユニークな米米路線が復活しています。一方では「恋のギャンブル」のような「浪漫飛行」系の楽曲や「君を離さない」のようなJ-POP王道系のバラードもちゃんと残っており、いわば米米の様々な魅力をきちんと伝えた楽曲になっています。再結成によってようやく彼らがやりたいような路線の楽曲をシングルとしてリリースできるようになったんだなぁ、ということを今回、あらためて感じてしまいました。

なんかライブにも足を運んだことがあるくせに気が付くのが遅すぎるよ、と言われそうですが、あらためて米米CLUBの魅力を認識できらベスト盤でした。また今後も、魅力的な楽曲を聴かせてくれることを願っています。

評価:★★★★★

米米CLUB 過去の作品
komedia.jp
米米米~SUNRICE~


ほかに聴いたアルバム

プラチナムベスト ORIGINAL LOVE~CANYON YEARS SINGLES&MORE/ORIGINAL LOVE

あるミュージシャンの代表曲をまとめてUHQCD仕様でリリースするベスト盤シリーズ「プラチナムベスト」。本作はORIGINAL LOVEのポニーキャニオン在籍時のシングル曲などをまとめた2枚組のベスト盤。いかにも本人が直接関与しないレコード会社主導のベスト盤っぽいのですが、公式サイトでも紹介されているようですので、基本的に本人公認のベスト盤のようです。

大ヒットした「プライマル」のようにいかにも彼らしいシティポップ路線の曲からラテン色を入れてきたりスカ風のリズムを入れてきたりジャジーだったりと、しっかりORIGINAL LOVEとしての色を感じつつもバラエティー富んだ作風が魅力的。オールタイムベストでないのは残念ですし、ブレイク作「接吻 kiss」は収録されていませんが、彼の代表曲は概ね網羅しておりORIGINAL LOVEの入門盤としても最適なベスト盤です。

評価:★★★★★

ORIGINAL LOVE 過去の作品
白熱
エレクトリックセクシー
ラヴァーマン

|

« 80年代ギタポからの影響が顕著 | トップページ | あの曲がまたベスト10に返り咲き! »

アルバムレビュー(邦楽)2017年」カテゴリの記事

コメント

「今後4年間はバンド活動休止が決定」なんて発表はされていません。ここまでの4年間実質的な活動が無かったというだけです。

「LAST」もこうしておけば売れる、次はLAST BEST 2を出すという彼ららしい理由を語ってます。

リンク先インタビューで触れられています。

投稿: SHOW | 2017年9月13日 (水) 09時48分

>SHOWさん
情報ありがとうございます。「LAST」というのは彼ららしいジョークという感じなんですね。安心しました。これからの彼らの活躍に期待したいです!

投稿: ゆういち | 2017年9月23日 (土) 00時10分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 彼らの歩みがわかるオールタイムベスト:

« 80年代ギタポからの影響が顕著 | トップページ | あの曲がまたベスト10に返り咲き! »