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2017年9月16日 (土)

20周年の記念盤

Title:万謡集
Musician:氣志團

ここ最近、再び勢いが増している氣志團。なんと今年、結成20周年を迎える彼ら。ある意味「出オチ」感すらある彼らが20年もこのスタイルで活動を続けられるのは驚異的でもあるのですが、そんな彼らの新作はなんと全曲、彼らが敬愛するミュージシャンたちからの提供楽曲でつくられた作品。豪華ミュージシャンが作詞作曲勢にズラリと並んだアルバムとなっています。

それだけにアルバム全体的にバラバラになっている・・・かと思いきや、むしろ全体的にはいかにも氣志團らしい楽曲の並び、ある種の統一感がありました。クレイジーケンバンド横山剣が提供した「東京湾大飯店」やハイロウズ真島昌利が提供した「逃げろ!逃げろ!」などは聴いただけで誰がつくったのか一発でわかるような癖のある楽曲だったのですが、その他の曲に関しては、作った側が「氣志團」というバンドをイメージしながらつくったのでしょう、10-FEETのTAKUMAが提供した「フォーサイクル」がハードコアパンク風だったり、BUCK-TICKの櫻井敦司、今井寿コンビが提供した「恋するクリスチーネ」がグラムロック風だったりとバンドの個性をそれなりに出しつつも、基本的には氣志團としてイメージされるようなビートロックの楽曲が並んでいます。

歌詞の方もいかにも氣志團らしい青春系の歌詞が並ぶのも特徴的。特にラストを飾る秋元康が作詞で参加した「リーゼント魂」などはまさに氣志團のいままでの歌詞の傾向を上手くとらえて歌詞にした内容。ここらへんを卒なく仕上げてくるあたりはさすが秋元康といった感じなのでしょう。

またこれだけいろいろな個性が集まった楽曲を氣志團が演奏するとしっかりと氣志團の曲になっていたのも印象的でした。氣志團といえばその不良のルックスからキャラクター的な部分で個性を確立しているバンドというイメージが強いのですが、今回、こうやって他人が提供した楽曲を並べて聴くと、彼らがバンドとしてもしっかりと個性を確立しているんだということにあらためて気が付かされます。

前作「不良品」は彼ら自身が氣志團というバンドをしっかりと見つめ直して実に氣志團らしいアルバムに仕上げた傑作になっていましたが、今回は周りの人たちが氣志團というバンドをどう見ているのかを表現したアルバムと言えるかもしれません。そういう意味では前作と対照的なアルバムと言えるでしょう。

ただ個人的にはもうちょっと楽曲的にぶっとんでいてもおもしろかったのでは?とも思ってしまいました。前山田健一が提供した「はすっぱ」みたいなムード歌謡風バリバリの普段の氣志團では聴けないような楽曲もあるのですが、上にも書いた通り、全体的にはビートロック路線で統一されており、こういう楽曲もありなんだ、という意外性にはちょっと乏しい内容でした。他の人が楽曲を提供するだけに、もっと氣志團としてはありえないような楽曲も何曲かあってもおもしろかったと思うのですが・・・。良くも悪くも「氣志團らしい」アルバムに留まっていました。

とはいえ著名なミュージシャンたちが楽曲を提供しているだけにポップでインパクトある楽曲揃い。最初から最後までポップなビートロックを存分に楽しめるアルバムでした。結成20年を迎えてまだまだ勢いのある彼ら。これからの活躍にも期待です。

評価:★★★★

氣志團 過去の作品
房総魂~Song For Route 127
木更津グラフィティ
蔑衆斗 呼麗苦衝音
日本人
氣志團入門
不良品


ほかに聴いたアルバム

松永天馬/松永天馬

アーバンギャルドのリーダーとしても活躍している松永天馬の初となるソロアルバム。もともとアーバンギャルドでも変態性あるエロチックな歌詞を書いていましたが、ここ最近、社会派な路線が続いています。そんな中リリースされたソロアルバムは、自分の名前を題したアルバムらしく、彼の内面をそのままさらけだしたような歌詞が大きな魅力に。変態性を感じるエロチックな歌詞に彼の本音をある意味赤裸々に綴ったような内容が特徴的。ある意味、聴く人は選びそうですが、それだけ強烈な個性を感じさせるアルバムでした。

評価:★★★★

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