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2017年9月18日 (月)

カシオトーンを駆使したサウンド

Title:EXPO町あかり
Musician:町あかり

「昭和アイドル歌謡曲風」を標榜している女性シンガーソングライター町あかりの最新作。今回のアルバムの大きな特徴のひとつが楽曲の作り方。今回のアルバムに収録されているのはカシオ計算機からリリースされているキーボード、カシオトーンと音楽制作ソフトのガレージバンドを駆使してつくられた楽曲だそうで、ちょっとチープさを予測させるような音楽制作方法が話題となっています。

そして今回のアルバム、サウンド面ではこういった制作手法がプラス方向にうまく機能していました。もともと町あかりの楽曲というとサウンド的には比較的チープという印象があったためカシオトーンのサウンドでもほとんど気になりません。またそこらへんの女の子の会話や本音、あるあるネタを織り込んだ歌詞は軽いな雰囲気のサウンドにもちょうどマッチしており、むしろサウンド面でちょっとチープさがあった方が楽曲に合っているように思います。

まああとそうはいってもさすがはカシオ(?)。確かにチープはチープなのですが、少なくとも楽曲を邪魔してしまうほどのチープさは感じません。楽曲によっては安っぽい打ち込みの音を前に出している曲もありましたが、それもあえて狙ってのサウンドであり楽曲の中で自然に溶け込んでいます。カシオトーン内蔵のプリセットパターンをほぼそのまま使用したそうですが、それでいてきちんと楽曲にマッチさせているあたり、さすがといった感じの「プロの仕事」を感じさせます。

さてそんな最新作ですが、楽曲の基本的な方向性は前作、前々作と同様・・・なのですが今回の作品に関しては前作、前々作ほどに「昭和アイドル歌謡曲」という路線を前に押し出しておらず、上にも書いた通り、女の子の本音や日常風景、あるいはあるあるネタをインパクトある歌詞で上手く織り込んだポップソングが並んでいます。

ジャンル的にも「お願い!刑事さん」みたいなアイドル歌謡曲王道路線のような楽曲や「たおやかだ~aki~」のようなベタな歌謡曲な楽曲から「は!ction」のようなちょっとジャジーさを感じる曲や「自律神経乱れ節」のような民謡風な楽曲、「ハイヒールが折れたわ」みたいなムーディーな路線まで様々。基本的には80年代の歌謡曲的なサウンドを根底にバラエティーある内容となっています。

また楽曲的に大きなインパクトとなっているのがその歌詞。日常の会話をそのまま歌詞に取り入れたような内容になっており、かつ非常にインパクトあるフレーズを上手くサビとして取り込んでいます。このスタイルも前作、前々作から大きな違いはありません。

ただ基本的に出オチ的な一発ネタがメインということもあり、インパクトあるフレーズばかりが目立っていてそれに続く内容があまりない・・・という欠点も以前から同様。ただ今回のアルバムに関しては、その一発ネタのような歌詞があまり気になりませんでした。「昭和歌謡曲」的なイメージが前作、前々作ほど強くなかったため、昭和歌謡曲の名曲と比較されることがなかったのも大きな要因かもしれませんし、また1曲あたり2、3分という短さゆえに一発ネタ的な勢いだけで突っ切れたという部分も大きいかもしれません。またなによりも彼女の書く歌詞がより進化してきていて、一発ネタを引っ張ることにより生じる不自然さが薄くなってきたのかもしれません。

いままで3作、彼女のアルバムを聴いてきたのですがその中では文句なしに一番楽しめたアルバムだったように思います。サウンド的なB級さと歌詞の世界が上手い具合にマッチした作品に仕上がっていました。そのあるあるネタにも思わず共感してしまう、最初から最後まで楽しいアルバムです。

評価:★★★★★

町あかり 過去の作品
ア、町あかり
あかりの恩返し


ほかに聴いたアルバム

LIVE A LIVE/ヒステリックパニック

名古屋で結成された5人組ロックバンド。地元ということで名古屋ではレコード店などでよくプッシュされていたので以前から名前は知っていたのですが今回アルバムをはじめて聴いてみました。

楽曲的にはメタル色も強いハードコアバンド。ただハードコアなサウンドとポップなメロが交互に展開されるスタイルで方向性的にはマキシマム ザ ホルモンやヤバイTシャツ屋さんに近い感じがします。ただ全体的に音はごちゃごちゃしておりいまひとつ整理されておらず、バンド演奏ものっぺりしている感じでいまひとつ。外部からプロデューサーを招いて交通整理した方がよいのでは?

評価:★★★

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