« the band apartの魅力をしっかりと伝える | トップページ | ヒットメイカーをプロデューサーに起用した意欲作 »

2017年9月25日 (月)

エキセントリックさはなくなったけれども

Title:幼さを入院させて
Musician:神聖かまってちゃん

2010年にリリースされた「友だちを殺してまで。」がリリースされて大きな話題を呼んだ神聖かまってちゃん。世間の片隅で、世の中の主流とは相いることが出来ない孤独な若者の心境をストレートで時として凶暴な歌詞で綴った楽曲が大きな話題を呼ぶとともに、そんな若者の姿を体現したようなボーカルの子の言動も大きな話題を呼びました。

そんな話題となったアルバムから早7年。良くも悪くも強いインパクトを持って登場してきた彼らですが、残念ながら最近では「過去の人」的に捉えられがちになってしまいました。特にその活動がエキセントリックだったからこそ、彼らの活動が「消費」されるのも早かったのかもしれません。

だからこそここ最近の作品に関してはエキセントリックな側面が後ろに下がり、ボーカルの子の書くメロディーラインと歌詞をしっかりと前面に押し出した楽曲が増えてきました。特に前作「夏、インストール」はその傾向が強く、彼らとしては意外なほど爽やかなポップアルバムに仕上がっていました。

今回のアルバムに関してもさらにその傾向が強くなってきたような印象を受けます。新作に関しても基本的にエキセントリックな雰囲気の楽曲は影をひそめ、歌詞とメロディーラインをしっかりと聴かせるようなポップな楽曲が並んでいました。

ただその結果今回のアルバムではあらためての子の作詞家として、そしてメロディーメイカーとしての才能を強く感じることが出来ました。特に例えば「陸上部の夏」のように

「夏を走る合唱曲を
自転車で通り越し電車にのりこむ
生きる喜び 昼下がりの道
炭酸ジュース開けて
ため息つくよ」

(「陸上部の夏」より 作詞 の子)

なんという風景描写の上手さは絶品。また今回の作品では「ねこねこレスキュー隊」で歌われるような

「1人じゃにゃいよと
旅立ちの声が聞こえる」

(「ねこねこレスキュー隊」より 作詞 の子)

といった前向きさを感じさせる歌詞も目立ちます。

ただ一方でやはりアルバムの中で要所要所で感じさせるのは社会にどこか溶け込めない人たちの孤独。特に今回のアルバムで印象的だったフレーズが「雲が流れる」の中でつかわれる「命は軽いから」という一文。ともすれば命の重さを語ることの多いポピュラーミュージックの中で、あえて「命は軽い」と語ってしまうこの感覚。それだけ孤独の深さを感じる印象的なフレーズです。

またサウンド的にはエキセントリックなサウンドは影を潜めましたが、例えば「夕暮れの鳥」ではゴスペル風でチャイルディッシュな楽曲の中で、どこか微妙に歪みを感じさせたり、「おはよう」ではシューゲイザー系直系のようなホワイトノイズを聴かせたり、メロディーと歌詞を重視しつつも全体的にはノイジーでドリーミーなサウンドがメイン。アルバム全体としてはこのギターノイズにどこか靄のかかったような印象を感じさせる作品になっていました。

昔のようなインパクト、派手さは薄れたアルバムになっていましたが、バンドの良さがしっかりとあらわれていたアルバムになっていたと思います。「英雄syndrome」以降、徐々に進めていた方向性がひとつの完成形となってあらわれた作品。バンドとしての底力を感じさせます。一時期ほど話題にのぼることが少なくなってしまった彼らですが、でもまだまだ名曲を世に送り出してくれそうです。

評価:★★★★★

神聖かまってちゃん 過去の作品
友だちを殺してまで。
つまんね
みんな死ね

8月32日へ
楽しいね
英雄syndrome
ベストかまってちゃん
夏.インストール

|

« the band apartの魅力をしっかりと伝える | トップページ | ヒットメイカーをプロデューサーに起用した意欲作 »

アルバムレビュー(邦楽)2017年」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: エキセントリックさはなくなったけれども:

« the band apartの魅力をしっかりと伝える | トップページ | ヒットメイカーをプロデューサーに起用した意欲作 »