この4人でのラストアルバム
Title:熱唱サマー
Musician:赤い公園
ボーカル佐藤千明脱退。このニュースに強い衝撃が走りました。その脱退理由としてバンド活動の中で「自分では手に負えないほどのズレ」が生じたと語っている彼女。本作は彼女がボーカルとして参加するラストアルバムとなりました。脱退といってもこうやってラストアルバムが作成されたり、最後のワンマンライブも行われたようですので、決してバンドメンバー間の仲が最悪になった訳ではない・・・と思うのですが・・・。
そんな4人組ガールズロックバンド赤い公園の1年5か月ぶりとなるニューアルバム。このメンバーでのラストのアルバムなのですがそんな雰囲気はみじんも感じません。アルバムはいきなりホーンセッションでのリズム連打からスタート。非常に明るい雰囲気でスタートします。
前作「純情ランドセル」もポップなメロディーラインが印象に残るアルバムになっていましたが、今回のアルバムに関してもポップスであることが前作以上に前に押し出されたようなアルバムになっていました。特に先行シングルでもある「恋と嘘」はメロディーラインがとてもかわいらしいポップソング。女性視点の切ない恋心をつづった歌詞も印象的で、ガールズバンドらしいポップソングになっています。
特に中盤、「恋と嘘」からはじまり「セミロング」「BEAR」とかわいらしい雰囲気もあるポップソングが並んでいます。歌詞の内容も女性視点からのかわいらしい内容となっており、アルバムとしてポップという方向性を決定づけている構成となっていました。
さらに今回のアルバム、最後を飾る「勇敢なこども」は佐藤千明のみならず他のメンバーとの合唱が入るスケール感あるナンバー。前向きなスタンスを強く感じられる楽曲になっており、このアルバムを最後にバンドを去る佐藤千明へのエールに感じられる作品になっていました。
もちろんポップな楽曲だけではなくバンドとしての足腰の強さを感じさせるような楽曲も並んでいます。特にこのメンバーでのラストシングルとなった「journey」も最初のシャウトからスタートし、ハードなバンドサウンドで構成されたロック色強いナンバー。また「闇夜に提灯」も疾走感あるギターサウンドが心地よいバンドサウンドを前に押し出したようなアルバムになっていました。
全体的にポップにまとめあげており、前作同様、メロディーラインのインパクトはぐっと増した印象があります。一方で前作まで感じた楽曲のバリエーションは今回は控えめ。冒頭を飾る「カメレオン」のようにホーンを入れてきたり、シンセの音を取り入れたりはしているのですが、比較的シンプルなギターロックのアルバムになっていました。
もっともその結果、アルバムとしての統一感は増して、いつもに増して聴きやすいアルバムになったと思います。また音数が多めなのはいつものことですが、それでもいままでの作品と比べるとごちゃごちゃ感が薄れアルバムとして整理されたようにも思います。
本作がこの4人での最後の作品になるというのは非常に残念。今後はボーカル佐藤千明をのぞいた3人での活動を続けるとか。楽曲的に要となるのは津野米咲なので大きな変化はないかもしれませんが・・・ただそれでも佐藤千明のクリアなボーカルも赤い公園の大きな魅力だっただけに今後がどうなっていくのか気になるところ・・・。とはいえ、残るメンバー、さらに去っていく佐藤千明それぞれのこれからの活躍を期待したいところです。
評価:★★★★★
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