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2017年9月

2017年9月30日 (土)

大人のエンターテイメントショー

CRAZY KEN BAND 20TH ATTACK! CKB[攻]

会場 刈谷市総合文化センター大ホール 日時 2017年9月27日(水) 18:30~

ライブツアーなどに何度も足を運ぶほど熱心なファンではないけれど一度はライブを見てみたいなぁ、と個人的に思っているミュージシャンが何組かいまして、クレイジーケンバンドもそんな一組。今回、結成20周年記念のベストアルバムがリリースされ、それに伴うライブツアーが開催。ベスト盤後のツアーということはベスト盤的な選曲が楽しめる!という期待もあり、はじめて彼らのライブに足を運びました。会場は刈谷市総合文化センター大ホール。名古屋市内ではなく、郊外での開催というのはちょっと意外な感じ。ただ(ライブの中でのMCでも横山剣が言っていたのですが)コンサートホールみずから共催として名前を連ねており、ホール側からのたっての願いということだったのでしょう。

Crazykenband_live_2

会場は刈谷駅から徒歩すぐという非常に好立地の真新しい音楽ホール。場内では左のような横山剣のロウ人形が展示されていました。なぜ?でも、とてもよく出来ていた・・・。

さてこの日は平日。仕事もあって会場にはギリギリの到着。すると比較的すぐ、開演予定時間を5分程度まわった時点でライブがスタートとなりました。ステージ上には大きな2匹のマーライオンに古代ギリシャ風の柱が2本。アジアンっぽさを混ぜつつ無国籍なステージ上にメンバー10人が2段になってズラリと並び、そして横山剣の登場となりました。

最初は「スージー・ウォンの世界」からスタート。ベスト盤1曲目の曲からのまずはスタートとなりました。で、この後ちょっと意外だったのは3曲目に「欧陽菲菲」が披露された点。グループ魂への提供曲でセルフカバーをしているとはいえベスト盤には収録されておらず、歌詞的にも(横山剣作詞とはいえ)グループ魂を意識したような歌詞。それを序盤に披露するというのはちょっと意外。ただ個人的にも好きなナンバーですし、ダイナミックで盛り上がる楽曲でしっかりライブ映えしていました。

4曲ほどまずは披露した後に最初のMC。今回は刈谷でのライブということで、刈谷=メリ谷なので(彼らの代表曲である)「メリメリ」と通じるものがある、という話だったり、地元のカリモク家具の話だったり、ちょっとした刈谷ネタで盛り上がりました。

さらに「秋になったけど夏に戻りましょう」というMCから「太陽のプレイメイト」「Loco Loco Sunset Cruise」と夏のナンバーで会場には夏らしいからっとした爽やかな空気感が漂います。そして刈谷ネタでも登場した「メリメリ」も聴かせてくれました。

その後は逆に「秋」ということで「秋になっちゃった」、そして「けむり」へと続きます。ここでベースの洞口信也が登場。横山剣とおじさま2人で簡単なコントをやった後、2人のデゥオで「Honolulu BBQ」へと続きます。

ライブは続きます。「ロサンゼルスの中華街」「シンガポール・スリング」と彼ららしい無国籍アジアンテイストな楽曲が続き、さらには「ルビーの指環」のカバーへ。ほぼ原曲準拠のアレンジなのですが、横山剣のボーカルが妙にマッチし、昭和らしい雰囲気がクレイジーケンバンドにもピッタリマッチしました。

その後のMCでは「ルビーの指環」の良さを語ったと思ったら、なんと再び「ルビーの指環」へ。なぜ、2度も?と思ったら、最後でしこを踏んで「寺尾、ドスコイ!」と微妙(?)なギャグで終了・・・そのネタをやりたかったんですね(^^;;

カバーコーナーはさらに続き、次は菅原愛子ボーカルにより「中央フリーウェイ」。こちらもなかなかクレイジーケンバンドの世界にマッチした選曲。その後はオリジナルに戻り「Midnight Cruiser」。さらには小野瀬雅生がメインとなるギターインスト曲を2曲披露し盛り上がります。

そして本編は終盤へ。おなじみ「タイガー&ドラゴン」、さらにその後、横山剣含めてメンバーがなぜかプロレスのマスクをつけて登場し1曲披露(すいません、曲名はわかりませんでした・・・)、さらには「GT」でこの日のクライマックスへ向かい会場は盛り上がります。本編ラストは「空っぽの街角」でちょっとメロウな雰囲気になり幕が下ります。最後は横山剣がおなじみの中腰で親指と人差し指を直角に顔の前で決める「イイネ!」のポーズで終了となりました。

もちろんアンコールに突入。アンコールではメンバー全員、白いスーツでパシッと決めてきて、大人のバンドらしいカッコよさを見せてくれました。アンコールでは「発光!深夜族」、そしてベスト盤のタイトルにもなった「愛の世界」。そして最後は「みなさんの長寿を願って」ということで「生きる。」で締めくくり・・・かと思ったら歌詞を間違えるというハプニングが。さらにやり直しでは意識しすぎたのか、また歌詞が出てこなくなるという事態に。なんとか3回目で成功。伸びやかな力強いボーカルでしんみりと聴かせてくれました。

そしてメンバーが退出・・・ここで横山剣は「また次のアンコールでお会いしましょう」というセリフで退場・・・もちろん盛大なアンコールが起こり、2度目のアンコールになりました。

2度目のアンコールではクレイジーケンバンドではおなじみのコーナーらしいリクエストのコーナーへ。ファンの中には大きな画用紙に曲名を書いて備えている方もいました。リクエスト1曲目は横山剣が以前組んでいたバンド、ダック・テイルズ自体の曲、「ウォー・アイ・ニー」。初耳でしたが、かなりレアなナンバーでした。さらには「君が代」へ。こちらは今度のF1日本GPで横山剣が披露する予定だとか。かなりパワフルな「君が代」を聴かせてくれました。そしてリクエストコーナーラストは「コーヒーキャンディー」。こちらもデビューアルバムからのレアな選曲。なかなか貴重な3曲を聴くことが出来ました。

リクエストコーナーに続いては「昭和の雰囲気を味わってもらおう」と札幌オリンピックのテーマ曲「虹と雪のバラード」のカバー。1971年のトワ・エ・モアによるナンバーですね。どちらかというとフォーク寄りの楽曲なので彼らがカバーするのはちょっと意外なイメージ。でも彼らの世界観の中でもピッタリとマッチして、(リアルタイムは生まれる前ですが)昭和の空気感を作り出していました。

そして本編ラストは「LADY MUSTANG」。最後はメンバーそれぞれのソロコーナーも加わり、ジャムサウンドでたっぷりと演奏を聴かせ会場を盛り上げます。最後はメンバー全員がステージ前に横に並び、手をつないでご挨拶。ボリュームたっぷりのステージは3時間弱という長さで幕を下ろしました。

はじめてのクレイジーケンバンドのライブだったのですが、いやぁ、楽しかった!正直、派手なパフォーマンスやらギミック的なものはなく、総勢11名のメンバーが奏でる分厚くも楽しいサウンドをバックにあくまでも「歌」を聴かせるステージで、まさに「大人のエンタテイメントショー」といった呼び名がふさわしいライブでした。またベテランの彼らなのですが、3時間という長丁場、MCも最小限でひたすら曲を披露するという体力にもちょっとビックリ。この手のベテランバンドって、1曲終わってはMC、というスタイルが多いだけに、彼らの「若さ」には驚かされます。

ただ今回彼らのライブにはじめて足を運んでちょっと意外だったのは客層の年齢が予想以上に高かったこと。30代あたりもチラホラいたのですが、アラフォーの私が若い方。下手すれば私の親あたりの世代もチラホラ。クレイジーケンバンドって「昭和歌謡が若い世代にも支持」的なイメージがあったのですが、ファン層を見ると、リアルタイムで昭和歌謡曲を楽しんでいたような世代が結構多いんですね。もっと若い世代の支持を集めているかと思っていただけにちょっと複雑・・・。

とはいえ、ベテランの彼らだけあって一流のパフォーマンスを見せてくれたステージ。あらためて彼らの曲をライブでじっくりと聴くと、自分が思った以上にクレイジーケンバンドのことが好きだったということに気が付かされました(笑)。3時間というフルボリュームのライブでしたが、あっという間でした。「一度は見てみたい」的な感覚で足を運んだ彼らのライブでしたが、また是非見てみたい、そう感じさせてくれるパフォーマンスでした。

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2017年9月29日 (金)

既にベテランバンドの彼らだが。

ヴィジュアル系ロックバンド、ムックが2作同時にベスト盤をリリースしました。

Title:BEST OF MUCC II
Musician:ムック

まずはシングル曲やアルバムの中の代表曲を収録した、タイトル通りのベスト盤である「BEST OF MUCC II」。

Title:カップリング・ベストII
Musician:ムック

そしてこちらはシングルのカップリング曲を収録した「カップリング・ベストII」です。どちらもそのままのタイトルですね(^^;;ちなみにベスト盤は2007年に「BEST OF MUCC」が、カップリング集は2009年に「カップリング・ベスト」がリリースされており、基本的にその後にリリースされた楽曲を収録したベスト盤&カップリング曲集となっています。

さてムックといえばここ最近、アルバムをリリースする毎にその内容が良くなってきているようなイメージがあります。このベスト盤を聴くと、確かにここ最近の楽曲になるに従い、ここに来て徐々にムックとしてのスタイルを確立しつつあるように感じました。

基本的にムックの楽曲のスタイルはハードコアサウンドにシンセを入れて音的に分厚さを増したサウンドを聴かせる一方でメロディーラインは哀愁たっぷり、歌謡曲からの強い影響を感じる良くも悪くもJ-POP的という楽曲のイメージを強く感じます。

その一方でベスト盤の1曲目を飾る「ファズ」がいきなり歌謡ディスコ調だったり、エレクトロサウンドを入れてEDM調のナンバーがあったり、いかにもな前向き歌詞のJ-POPナンバーがあったり、その楽曲のバリエーションも多彩に感じます。

ただその結果としてどこかの方面に吹っ切れるわけではなく、かといって楽曲のバリエーションに関してはいろいろなところに手を出しながら、ゴチャゴチャしたような楽しさはなく、全体的に中途半端という印象を受けてしまいました。

そんな楽曲もベスト盤の最後になりにつれて全体的にまとまりを感じるようになりました。特にラストを飾る「睡蓮」「TONIGHT」はハードコアなサウンドに哀愁感あるインパクトあるメロディーラインのバランスが上手く決まっており、ムックが目指す方向性がより明確に、かつ印象的にまとまった楽曲になっていたと思います。デビューから15年以上経ち、すっかり「ベテラン」の仲間入りをした彼らですが、バンドとしてはむしろこれからが楽しみに感じられるベスト盤だったと思います。

そして「カップリング・ベスト」。こちらはあきらかにベスト盤に比べると自由度が増していたように感じます。ハードコアなサウンドもベスト盤よりもよりへヴィーに。楽曲のバリエーションにしてもビートロックにハードロック、ジャジーな曲からダンスチューン。「WateR」に至っては軽快なオルタナ系ロックの楽曲で、往年のblurを彷彿させる軽快さを感じさせます。

もちろん彼ららしいハードコアなサウンドは流れていますし、哀愁感あふれるメロディーラインも要所要所に流れています。ただベスト盤に比べるとバリエーションはより豊富。いい意味でカップリング曲らしい挑戦心を感じさせる楽曲が並んでいました。

どちらもこれからの彼らの活躍が楽しみになってくるようなアルバムだったと思います。デビューから17年、ここに来てさらなる成長を感じさせる彼ら。これからの活動にも注目したいところです。

評価:
BEST OF MUCC II ★★★★
カップリング・ベストII ★★★★★

ムック 過去の作品
志恩
球体
カルマ
シャングリラ
THE END OF THE WORLD
T.R.E.N.D.Y.-Paradise from 1997-
脈拍

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2017年9月28日 (木)

今週はキャラソンが1位

今週のアルバムチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/ja/

比較的低水準のアルバムチャートが続きますが、そんな中、今週はゲームのキャラクターソングのアルバムが1位を獲得しました。

今週の初登場1位はTRIGGER「アプリゲーム『アイドリッシュセブン』TRIGGER 1stフルアルバム」。タイトル通り、アイドル育成AVG「アイドリッシュセブン」に登場するアイドルグループによるアルバム。初動売上3万1千枚で1位獲得です。TRIGGER名義では初のアルバム。シングルとしては「ソーシャルゲーム『アイドリッシュセブン』「SECRET NIGHT」」が初動売上1万5千枚で5位にランクインしており、初動売上はこちらを上回りました。一方、「アイドリッシュセブン」関連のアルバムとしては直近作はIDOLiSH7「アプリゲーム『アイドリッシュセブン』IDOLiSH7 1stフルアルバム『i7』」で、こちらの初動4万6千枚(2位)よりはダウンしています。

2位には韓国の男性アイドルグループBTS(防弾少年団)「Love Yourself 承‘Her’:5th Mini Album」がランクイン。彼らの韓国でリリースされた5枚目となるミニアルバムの輸入盤がチャートイン。初動売上1万6千枚。直近作はベスト盤「THE BEST OF 防弾少年団−KOREA EDITION−」「THE BEST OF 防弾少年団−JAPAN EDITION−」で、初動売上はそれぞれ2万5千枚(5位)、2万枚(6位)となっており、本作は前作よりダウンしています。

3位はドラマやアニメの劇伴音楽を手掛ける作曲家澤野弘之のボーカルプロジェクト、SawanoHiroyuki[nZk]名義でリリースした「2V-ALK」が入ってきました。初動売上1万1千枚。前作は同名義によるアルバム「o1」と澤野弘之名義による「emU」で、それぞれ初動1万1千枚(7位)、4千枚(13位)を記録しています。

続いては4位以下の初登場盤です。まずは4位。こちらにもまたゲームからのキャラソンがランクイン。それが伊吹 翼(Machico), 北沢志保(雨宮天), 桜守歌織(香里有佐), 徳川まつり(諏訪彩花), 永吉 昴(斉藤佑圭)名義の「THE IDOLM@STER MILLION LIVE! M@STER SPARKLE 02」。タイトル通り、アイドル育成アプリゲーム「アイドルマスター ミリオンライブ! シアターデイズ」からのキャラクターソング。初動売上1万枚で、同シリーズの前作「THE IDOLM@STER MILLION LIVE! M@STER SPARKLE 01」の1万6千枚(2位)からダウンしています。

6位初登場はロックバンドBUCK-TICK「CATALOGUE 1987-2016」。デビュー30周年を迎えた彼らのキャリアを網羅したオールタイムベスト。初動売上は9千枚。直近のオリジナルアルバム「アトム 未来派No.9」の1万7千枚(5位)からダウン。また、2005年にリリースした前のベスト盤「CATALOGUE 2005」の1万2千枚(14位)よりもダウンしています。

7位には女性シンガーソングライター柴田淳「私は幸せ」がランクイン。オリジナルアルバムでのベスト10入りは2011年の「僕たちの未来」以来3作ぶり。初動売上は7千枚。直近作はベスト盤「All Time Request BEST~しばづくし~」で、こちらの9千枚(10位)よりダウン。オリジナルアルバムとしての前作「バビルサの牙」の初動8千枚(12位)よりも若干の減少となりました。

8位は初顔の登場です。女性2人組ロックバンドyonige「girls like girls」が入ってきました。本作がメジャーデビュー作なのですが、初動7千枚でいきなりのベスト10入りとなっています。ちなみにインディーズからリリースされた前作「Neyagawa City Pop」の3千枚(16位)より倍増以上の初動売上を記録しており、今度もさらなる飛躍が期待できます。

最後9位にはGLAY「BELOVED Anthology」がランクイン。1996年にリリースされ、彼ら初のミリオンヒットとなったアルバム「BELOVED」をリマスター。さらに当時のデモ音源や同作に関わるドキュメンタリーを収録したDVDをつけた3枚組で、彼らにとっては5作目となる「Anthology」シリーズ。初動売上6千枚で9位にランクイン。直近のオリジナルアルバム「SUMMERDELICS」の5万2千枚(1位)よりもさすがに大幅ダウン。同「Anthology」シリーズの前作「BEAT out! Anthology」の6千枚(8位)からは横バイという結果となっています。

今週のアルバムチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2017年9月27日 (水)

良くも悪くもHot100らしいチャート

今週のHot 100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週はCDでは強力な新譜が少な目。そのため、CDが売れている曲ではなく、配信中心のロングヒット曲や話題の楽曲が上位に入ってくるHot100らしいチャートになっています。

まず1位は先週2位だったDAOKO×米津玄師「打上花火」が4週ぶりに返り咲いて1位獲得。これで2週目の1位獲得となりました。ラジオオンエア数80位、Twitterつぶやき数56位とのびやなんでいますが、CD売上・ダウンロード・ストリーミング数(以下「実売数」)、PCによるCD読取数及びYou Tube再生回数で2位を獲得。ロングヒットを続けています。ちなみにオリコンでは売上1千枚で40位とかなりの差があり、ダウンロードでの売上がメインとなっていることがわかります。

そして2位には荻野目洋子「ダンシング・ヒーロー」が先週の46位からランクアップし、いきなり2位獲得です。1985年にリリースされ大ヒットしたナンバー・・・なんですが、なんでこの曲がいきなり上位にランクイン??おそらく、8月に行われた「日本高校ダンス部選手権」の決勝ステージで大阪府立登美丘高校がこの曲をバックにバブル期を彷彿とさせる格好で踊った動画が話題になっているみたいで、その影響のようです。

【参考サイト】『ダンシング・ヒーロー』をバブリーな格好で踊る高校ダンス部がスゴい 平野ノラも「おったまげー!」

ただ、ランクインしているのは1位を獲得したYou Tube再生回数のみで他は圏外。You Tubeの再生回数といっても荻野目洋子の曲が支持されたというよりは、このダンス部のダンスが支持されたわけで、それをもって「曲がヒットしている」というのはかなり違和感が・・・。ちょっと集計方法として雑な印象を受けてしまいます。

3位は女性アイドルグループHappiness「GOLD」が初登場でランクイン。実売数は1位を獲得していますが、Twitterつぶやき数6位の他は、ラジオオンエア数及びPCによるCD読取数15位にとどまり総合順位ではこの位置。前作はEDMのナンバーでしたが、今回はHIP HOPテイストを強く入れたナンバーになっており、なかなかカッコよい出来になっています。ちなみにオリコンでは同作が初動4万1千枚で1位獲得。前作「REWIND」の3万4千枚(4位)よりアップしています。

続いて4位以下の初登場曲ですが、まず6位に韓国のアイドルグループ防弾少年団「DNA」が初登場でランクイン。実売数は21位に留まりましたがTwitterつぶやき数1位、You Tube再生回数3位とネット系で強さを見せ、見事ベスト10入り。先日、韓国でリリースされたアルバム「LOVE YOURSELF 承 'Her'」のタイトル曲。アルバムも今週、上位へのランクインが予想されます。

8位にはAAA「LIFE」が先週の93位から大きくランクアップしベスト10入り。フジテレビ系ドラマ「民衆の敵~世の中、おかしくないですか!?~」主題歌。10月18日リリース予定のCDからの先行配信。爽快なダンスチューンで良くも悪くも癖がない印象。実売数4位、Twitterつぶやき数7位と上位にランクインし、見事ベスト10入りです。

そして10位には乃木坂46「いつかできるから今日できる」が先週の61位からランクアップしベスト10入り。10月11日リリース予定のCDからの先行配信。実売数17位、ラジオオンエア数51位だった一方、Twitterつぶやき数3位、You Tube再生回数10位と上位に食い込みベスト10ヒットとなりました。

さて、他にはロングヒット組も目立った今週のチャート。まず星野源「Family Song」ですがこちらは今週ベスト3からランクダウンし4位に。ただしPCによるCD読取数は1位を獲得しており順位を押し上げています。またEd Sheeran「Shape Of You」は4位から7位にダウン。ただ実売数5位、You Tube再生回数4位とまだまだ強さを見せています。

さらに今週、安室奈美恵「Hero」が先週のランク圏外からいきなりベスト10入り。昨年9月5日付チャート以来のベスト10返り咲きとなっています。言うまでもなく先週突然表明した引退宣言に伴うランクアップ。彼女の代表作である「CAN YOU CELEBRATE?」も今週14位にランクアップしてきています。

そんな訳で今週のHot100ですが、なんと今週、オリコンのベスト10とかぶるのがHappinessと9位にランクインしている福山雅治「聖域」の2曲のみ(!)。全体的にオリコンでのCD売上が低水準だったということもありますが、You Tubeや配信でのヒットが上位に食い込んでくるHot100らしいチャートとなりました。

今週は以上。明日はアルバムチャート!

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2017年9月26日 (火)

ヒットメイカーをプロデューサーに起用した意欲作

Title:Villains
Musician:Queens Of The Stone Age

前作「...Like Clockwork」もリリースに約6年というインターバルがあいていましたが今回も前作から約3年10ヶ月ぶりと少々久しぶりとなってしまったアメリカのロックバンド、Queens Of The Stone Ageの新作。今回の新作の大きな特徴は稀代のヒットメイカー、マーク・ロンソンがプロデュースを手掛けたということ。エイミー・ワインハウスやアデルといった人気ミュージシャンたちのアルバムのプロデュースを手掛けた彼の登用がQueens Of The Stone Ageというバンドとどのような相性を見せるのか、注目の作品でした。

そして結果としては両者の相性が非常にマッチした傑作に仕上がっていたように感じます。Queens Of The Stone Ageといえば、へヴィーでメタリックなギターサウンドを聴かせつつ、一方ではメロディーを含めポップな側面を強く押し出していていい意味でハードロックリスナーに留まらない聴きやすさが特徴的なバンド。彼らが大きな注目を集めた2000年にリリースした「Rated R」はまさにそんな作品でした。

その後の作品に関してはどちらかというとヘヴィーなメタリックさを前に押し出したような作品が続いたものの、前々作「Era Vulgaris」はポップなギターロック寄りに方向性を変えた作品に。そして前作「...Like Clockwork」は、再びへヴィネスさとポップさがほどよいバランスを保った傑作を聴かせてくれました。

今回の作品に関しても、まさにそんな前作の路線を引き継ぎ、Queens Of The Stone Ageの魅力を引き出した作品になっていたと思います。冒頭を飾る「Feet Don't Fail Me」はまさにメタリックなギターリフが楽曲を引っ張りつつもメロディーを含めてポップスさをしっかりと前に押し出したいい意味で聴きやすい楽曲。「Un-Reborn Again」もまさに同様に、メタリックなギターサウンドを押し出しつつ、哀愁感も備えたポップなメロディーラインが耳なじみやすいサウンドになっています。

ダンサナブルなロックンロール調の「The Way You Used To Do」「Head Like A Haunted House」など軽快なサウンドもアルバムの聴きやすさに大きな効果をあげていますし、「Hideaway」などで聴かせるような哀愁感あるメロディーラインも大きな魅力。メタリックなギターサウンドをしっかりと聴かせてハードロックらしいダイナミズムを前に押し出しつつ、リズムをしっかりと聴かせる今風のサウンド構成になっており、そういう意味でも古き良きハードロック路線を聴きやすい今時の音楽へとしっかりとアップデートさせたプロデュースワークとなっています。

バンドとしては上にも書いた通り、ここ最近、再びポップ路線に舵を取ってるだけにこのアルバムの出来を含めてマーク・ロンソンの起用にはかなり納得感ある内容。前作も傑作アルバムに仕上がっていたのですが、続く本作も今後の彼らを代表しそうな傑作アルバムに仕上がっていました。前作で全盛期が戻ってきたと書いたのですが、プロデュースワークもさることながらバンドとしても脂がのってきたようにも感じるアルバム。結成から20年目となった彼らですが、これからの活躍も楽しみです。

評価:★★★★★

Queens Of The Stone Age 過去の作品
ERA VULGARIS
...Like Clockwork

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2017年9月25日 (月)

エキセントリックさはなくなったけれども

Title:幼さを入院させて
Musician:神聖かまってちゃん

2010年にリリースされた「友だちを殺してまで。」がリリースされて大きな話題を呼んだ神聖かまってちゃん。世間の片隅で、世の中の主流とは相いることが出来ない孤独な若者の心境をストレートで時として凶暴な歌詞で綴った楽曲が大きな話題を呼ぶとともに、そんな若者の姿を体現したようなボーカルの子の言動も大きな話題を呼びました。

そんな話題となったアルバムから早7年。良くも悪くも強いインパクトを持って登場してきた彼らですが、残念ながら最近では「過去の人」的に捉えられがちになってしまいました。特にその活動がエキセントリックだったからこそ、彼らの活動が「消費」されるのも早かったのかもしれません。

だからこそここ最近の作品に関してはエキセントリックな側面が後ろに下がり、ボーカルの子の書くメロディーラインと歌詞をしっかりと前面に押し出した楽曲が増えてきました。特に前作「夏、インストール」はその傾向が強く、彼らとしては意外なほど爽やかなポップアルバムに仕上がっていました。

今回のアルバムに関してもさらにその傾向が強くなってきたような印象を受けます。新作に関しても基本的にエキセントリックな雰囲気の楽曲は影をひそめ、歌詞とメロディーラインをしっかりと聴かせるようなポップな楽曲が並んでいました。

ただその結果今回のアルバムではあらためての子の作詞家として、そしてメロディーメイカーとしての才能を強く感じることが出来ました。特に例えば「陸上部の夏」のように

「夏を走る合唱曲を
自転車で通り越し電車にのりこむ
生きる喜び 昼下がりの道
炭酸ジュース開けて
ため息つくよ」

(「陸上部の夏」より 作詞 の子)

なんという風景描写の上手さは絶品。また今回の作品では「ねこねこレスキュー隊」で歌われるような

「1人じゃにゃいよと
旅立ちの声が聞こえる」

(「ねこねこレスキュー隊」より 作詞 の子)

といった前向きさを感じさせる歌詞も目立ちます。

ただ一方でやはりアルバムの中で要所要所で感じさせるのは社会にどこか溶け込めない人たちの孤独。特に今回のアルバムで印象的だったフレーズが「雲が流れる」の中でつかわれる「命は軽いから」という一文。ともすれば命の重さを語ることの多いポピュラーミュージックの中で、あえて「命は軽い」と語ってしまうこの感覚。それだけ孤独の深さを感じる印象的なフレーズです。

またサウンド的にはエキセントリックなサウンドは影を潜めましたが、例えば「夕暮れの鳥」ではゴスペル風でチャイルディッシュな楽曲の中で、どこか微妙に歪みを感じさせたり、「おはよう」ではシューゲイザー系直系のようなホワイトノイズを聴かせたり、メロディーと歌詞を重視しつつも全体的にはノイジーでドリーミーなサウンドがメイン。アルバム全体としてはこのギターノイズにどこか靄のかかったような印象を感じさせる作品になっていました。

昔のようなインパクト、派手さは薄れたアルバムになっていましたが、バンドの良さがしっかりとあらわれていたアルバムになっていたと思います。「英雄syndrome」以降、徐々に進めていた方向性がひとつの完成形となってあらわれた作品。バンドとしての底力を感じさせます。一時期ほど話題にのぼることが少なくなってしまった彼らですが、でもまだまだ名曲を世に送り出してくれそうです。

評価:★★★★★

神聖かまってちゃん 過去の作品
友だちを殺してまで。
つまんね
みんな死ね

8月32日へ
楽しいね
英雄syndrome
ベストかまってちゃん
夏.インストール

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2017年9月24日 (日)

the band apartの魅力をしっかりと伝える

Title:Memories to Go
Musician:the band apart

ここ最近、ジャズやブラックミュージックからの影響を受けたようなロックバンドが目立つようになりました。その最右翼はいうまでもなく最近人気沸騰中のSuchmosですが、他にはクラブ系の色合いも強いD.A.N.やらnulbarichなどというバンドも話題になっています。

ただある意味、今流行りともいえるこの流れを作り出した先駆的なバンドといえば間違いなくthe band apartでしょう。残念ながら一時期に比べるとその人気は落ち着いたような感はありますが、根強い人気を誇っており、またアルバムも安定的に良作をリリースし続けています。

今回のアルバム、the band apart名義としては約2年半ぶりとなるニューアルバム。とはいえ、その間、the band apart(naked)という名義でアコースティックアルバムをリリースしていたり、□□□とのコラボアルバムをリリースしていたりしたとバンド活動としてはコンスタントに活動を続けていただけにそれほど久しぶりといった印象は受けません。ただ、クラブジャズ系のバンドの活躍が目立つ中、彼らがどんなアルバムをリリースしてくるのか興味はありました。

そしてその結果としては基本的にいつものthe band apartとしてのスタイルを貫いているように感じました。特にイントロ挟んで事実上の1曲目「ZION TOWN」は日本語詞の曲ながらも軽快なリズムに爽快感あるギターサウンドがファンキーなリズムを奏でるいかにもthe band apartらしい楽曲。インパクトでも「世間的なうちのバンドに対するイメージに、良い意味で応えるような曲」と語っており、ファンならガッツポーズを思わずしてしまいそうな名曲になっています。

他にも「Super High」などファンキーなリズム感と爽快なサウンドが楽しいthe band apartらしい楽曲が並び、心地よいメロディーラインと共にthe band apartらしさを感じるアルバムになっている一方で、比較的ロックな色合いも強いアルバムになっているようにも感じました。例えば「ZION TOWN」と共にリード曲となっている「Castaway」などはthe band apartらしいファンキーで爽快なサウンドを聴かせつつ、ノイジーなギターも押し出してロックな作品になっていますし、「She is my lazy friend」もロックなギターリフが目立つ作品になっています。

もっともこのアシッドジャズ的なクールなサウンドと、ロック的な熱いサウンドの融合というのもthe band apartの大きな魅力。そういう意味ではロックテイストが強い、といっても基本的にはthe band apartらしいアルバムになっていたようにも思いました。

Suchmosなどをはじめとする最近の潮流に対するthe band apartからの回答・・・そういう風に書いてしまえればある意味かっこいいのですが、基本的にいつも通りのthe band apartらしいアルバムだったと思います。ここ最近、悪くないけどいまひとつ、というアルバムが続いていましたが、今回のアルバムは新機軸といった感じではないのですが、the band apartらしい、彼らの魅力をきちんと伝える新作でした。

評価:★★★★★

the band apart 過去の作品
Adze of penguin
shit
the Surface ep
SCENT OF AUGUST
街の14景
謎のオープンワールド
1(the band apart(naked))

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2017年9月23日 (土)

この4人でのラストアルバム

Title:熱唱サマー
Musician:赤い公園

ボーカル佐藤千明脱退。このニュースに強い衝撃が走りました。その脱退理由としてバンド活動の中で「自分では手に負えないほどのズレ」が生じたと語っている彼女。本作は彼女がボーカルとして参加するラストアルバムとなりました。脱退といってもこうやってラストアルバムが作成されたり、最後のワンマンライブも行われたようですので、決してバンドメンバー間の仲が最悪になった訳ではない・・・と思うのですが・・・。

そんな4人組ガールズロックバンド赤い公園の1年5か月ぶりとなるニューアルバム。このメンバーでのラストのアルバムなのですがそんな雰囲気はみじんも感じません。アルバムはいきなりホーンセッションでのリズム連打からスタート。非常に明るい雰囲気でスタートします。

前作「純情ランドセル」もポップなメロディーラインが印象に残るアルバムになっていましたが、今回のアルバムに関してもポップスであることが前作以上に前に押し出されたようなアルバムになっていました。特に先行シングルでもある「恋と嘘」はメロディーラインがとてもかわいらしいポップソング。女性視点の切ない恋心をつづった歌詞も印象的で、ガールズバンドらしいポップソングになっています。

特に中盤、「恋と嘘」からはじまり「セミロング」「BEAR」とかわいらしい雰囲気もあるポップソングが並んでいます。歌詞の内容も女性視点からのかわいらしい内容となっており、アルバムとしてポップという方向性を決定づけている構成となっていました。

さらに今回のアルバム、最後を飾る「勇敢なこども」は佐藤千明のみならず他のメンバーとの合唱が入るスケール感あるナンバー。前向きなスタンスを強く感じられる楽曲になっており、このアルバムを最後にバンドを去る佐藤千明へのエールに感じられる作品になっていました。

もちろんポップな楽曲だけではなくバンドとしての足腰の強さを感じさせるような楽曲も並んでいます。特にこのメンバーでのラストシングルとなった「journey」も最初のシャウトからスタートし、ハードなバンドサウンドで構成されたロック色強いナンバー。また「闇夜に提灯」も疾走感あるギターサウンドが心地よいバンドサウンドを前に押し出したようなアルバムになっていました。

全体的にポップにまとめあげており、前作同様、メロディーラインのインパクトはぐっと増した印象があります。一方で前作まで感じた楽曲のバリエーションは今回は控えめ。冒頭を飾る「カメレオン」のようにホーンを入れてきたり、シンセの音を取り入れたりはしているのですが、比較的シンプルなギターロックのアルバムになっていました。

もっともその結果、アルバムとしての統一感は増して、いつもに増して聴きやすいアルバムになったと思います。また音数が多めなのはいつものことですが、それでもいままでの作品と比べるとごちゃごちゃ感が薄れアルバムとして整理されたようにも思います。

本作がこの4人での最後の作品になるというのは非常に残念。今後はボーカル佐藤千明をのぞいた3人での活動を続けるとか。楽曲的に要となるのは津野米咲なので大きな変化はないかもしれませんが・・・ただそれでも佐藤千明のクリアなボーカルも赤い公園の大きな魅力だっただけに今後がどうなっていくのか気になるところ・・・。とはいえ、残るメンバー、さらに去っていく佐藤千明それぞれのこれからの活躍を期待したいところです。

評価:★★★★★

赤い公園 過去の作品
透明なのか黒なのか
ランドリーで漂白を
公園デビュー
猛烈リトミック
純情ランドセル

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2017年9月22日 (金)

昔ならではの「粋」を伝える

Title:粋歌~江戸のラブソング~
Musician:柳家小菊

今回紹介するのは寄席を中心に活動する音曲師、柳家小菊のアルバム。端唄や新内、都々逸といった江戸時代に庶民に親しまれてきた歌を三味線一本で今の時代に歌う彼女。もともと下の記事でその名前を見かけて興味を持ちました。

野暮な浮世の事はしばし忘れて、柳家小菊の情緒ある「粋曲」で”粋”を味わう ”江戸のラブソング”に酔う

おそらく端唄や都々逸自体は日本人ならば「伝統芸能」として一度は聴いたことあるかと思います。ただそんな時も興味がない方ならば「古臭いもの」として聴きながしてしまう方がほとんどではないでしょうか。

本作に関してはそういう観点からすると決して目新しいものではありません。最近のヒット曲を取り入れているわけではありませんし、演奏も三味線一本というスタイルでいまどきの音を入れている訳ではありません。おそらく、たとえば日曜日の昼間にNHK教育あたりから流れてきたらそのまま右から左へと聴きながしてしまうかもしれません。

ただそんな江戸時代の流行歌のアルバムをこうやってアルバム音源でしっかりと聴いてみると今なお歌われるその魅力をしっかりと伝えてくれる作品になっています。まずひとつの特徴がアルバムとして独演会の模様をそのまま収録している「ライブアルバム」になっていること。それも曲の間のトークの部分もそのまま収録されています。おそらく、曲だけではなくトークの部分も含めて「芸」という意識があるのでしょうし、また寄席の雰囲気をそのまま出したかったという意向もあるのかもしれません。ただ、現代の感覚だと内容まではちょっと聞き取りにくい端唄や都々逸の世界の解説を聞けるという意味でも、初心者にとっても聞きやすい構成になっています。

また楽曲自体も今の感覚で聴いても心に響いて共感できるような歌詞が多く、あらためて端唄や新内、都々逸といった江戸時代の文化の魅力を再認識できます。今回のアルバムにも収録されている「猫になりたや」なんかも、好きなあの人の飼っている猫になりたいと歌う歌で、今のヒット曲の題材でも同じような曲がありそう。最後に猫の鳴きまねが入るのですが、これもまた色っぽい雰囲気でよい感じです(笑)。

その楽しいトークも含めて江戸文化に触れられる実に魅力的なアルバムになっていました。ちなみに副題に「江戸のラブソング」と記載がありますが、売り文句にようなもので確かにラブソング的な曲は多いものの内容的にはラブソングにとどまりません。今の人にも昔の人にも通じる、タイトル通りのその「粋」な心を楽しめるアルバムでした。

評価:★★★★★

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2017年9月21日 (木)

ロングヒットの強さが目立つチャートに

今週のHot 100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週のHot100は大物アイドル系の新譜がなくCD売上が伸びなかった影響かロングヒット系がランキングを伸ばす結果となりました。

そんな中でも強さを発揮して初登場1位となったのが福山雅治「聖域」でした。テレビ朝日系ドラマ「黒革の手帖」主題歌。先週の57位からCDリリースにあわせてのランクインとなっています。CD売上・ダウンロード・ストリーミング数(以下「実売数」)で1位、PCによるCD読取数2位、Twitterつぶやき数で15位と上位にランクインしている他、ラジオオンエア数でも4位と根強い人気を見せています。オリコンでも初動売上5万7千枚で1位初登場。ただし前作「I am a HERO」の15万8千枚(1位)から大きくダウンしています。

さて2位からはいずれもロングヒット中の曲が並んでいます。2位にDAOKO×米津玄師「打上花火」が、3位に星野源「Family Song」が並んでおり、前者はこれで6週目、後者は5週目のベスト10ヒットとなっています。

DAOKO×米津玄師はYou Tube再生回数で1位と強さを見せており、さらには実売数2位、PCによるCD読取数3位といずれも上位にランクイン。ラジオオンエア数が62位と低めなのが気になりますが、根強い人気が続いています。さらに今週、米津玄師「ピースサイン」が20位から10位にランクアップ。7月24日付チャート以来9週ぶりのベスト10返り咲きを果たしています。ただ本作はこの間、ずっとベスト20をキープしており、ロングヒットを継続していました。

一方星野源は実売数5位、PCによるCD読取数1位が上位に引き上げる結果に。ラジオオンエア数22位、Twitterつぶやき数28位、You Tube再生回数16位と前作「恋」ほどの勢いは感じませんが、こちらも根強い人気をキープしています。

さらに4位にはEd Sheeran「Shape Of You」が先週の5位よりランクアップ。You Tube再生回数が先週の3位から2位へとランクアップし、さらに実売数4位と強さを勢いを取り戻しています。

一方でロングヒット組では先週までロングヒットを続けていた乃木坂46「逃げ水」は今週18位に後退。ベスト10ヒットは6週にとどまりました。

さて続いては初登場組。まずは5位に山下達郎「REBORN」が先週の33位からCDリリースにあわせてランクアップし、ベスト10入りを果たしました。映画「ナミヤ雑貨店の奇蹟」主題歌。実売数13位、PCによるCD読取数15位、Twitterつぶやき数54位に留まりましたが、ラジオオンエア数では見事1位を獲得しています。ラジオリスナー受けがいいという点は山下達郎らしいですね。オリコンでは初動売上8千枚で6位獲得。前作「CHEER UP! THE SUMMER」の9千枚(8位)より若干のダウンとなりました。

6位は女性ボーカルグループLittle Glee Monster「明日へ」が初登場でランクイン。実売数は3位と好調だった一方、ラジオオンエア数が21位、PCによるCD読取数が22位、Twitterつぶやき数が10位に留まり、この位置でのランクインとなりました。オリコンでは2位初登場で自己最高位を記録。ただし初動売上1万9千枚は前作「だから、ひとりじゃない」の2万8千枚(3位)からダウンしています。

今週の初登場は以上。今週は他にもベスト10圏外からの返り咲きがありました。

それが9位ランクインのアメリカの女性シンガーソングライター、Taylor Swift「Look What You Made Me DO」(邦題「ルック・ホワット・ユー・メイド・ミー・ドゥ~私にこんなマネ、させるなんて」)。先週の11位からランクアップし、2週ぶりにベスト10返り咲きとなっています。ラジオオンエア数7位、You Tube再生回数8位と上位にランクインしており、アルバムリリースまでロングヒットが期待できます。

今週のHot100は以上。今週は諸般の事情により順番が入れ替わってしまいましたが、来週は水曜日にHot100にかかるチャート評を更新予定です。

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2017年9月20日 (水)

返り咲きの1位だが・・・

すいません。諸事情によりアルバムチャートから先の更新です。

今週のアルバムチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/ja/

今週の1位はなんと3週ぶりに返り咲きとなりました。

今週の1位は桑田佳祐「がらくた」。先週の3位から返り咲いて見事1位獲得です。ただし初動売上はわずか1万3千枚。先週の1万9千枚からダウン。CDが売れない昨今とはいえ、かなり寂しい結果となりました。

2位は女性声優内田彩「ICECREAM GIRL」が獲得。シングルアルバム通じて自身初のベスト3ヒットとなりました。初動売上は7千枚。直近作は2枚同時リリースのミニアルバム「Sweet Tears」(8位)「Bitter Kiss」(9位)から横バイという結果に。

3位はアメリカのロックバンドFOO FIGHTERS「Concrete and Gold」が獲得。FOO FIGHTERSは90年代を代表するグランジ系ロックバンドNIRVANAのドラマーDavid Grohlを中心に結成されたバンド。アルバムでのベスト10入りは前々作「Wasting Light」以来。また自身初のベスト3ヒットとなりました。ただし初動売上7千枚は前作「Sonic Highways」の1万1千枚(12位)よりダウンしています。

続いて4位以下の初登場盤です。まず4位には「D'ERLANGER TRIBUTE ALBUM~Stairway to Heaven~」がランクインです。主に80年代に活躍し一世を風靡したロックバンドD'ERLANGERへのトリビュートアルバム。2007年に再結成し、いまなお精力的な活動を続けています。そんな彼らの楽曲をカバーしたのはDir en greyやムック、GLAYからTERUxHISASHIにラルクのhydeなど豪華なメンバー。D'ERLANGERの根強い人気を伺わせます。初動売上6千枚。

5位には5人組ロックバンドRevision of Sence「布教用BEST」がランクイン。積極的なライブパフォーマンスで人気上昇中のバンドらしく、本作で初のベスト10ヒットとなりました。初動売上6千枚。

7位初登場はGLIM SPANKY「BIZARRE CARNIVAL」。男女2人組のルーツ志向のロックユニット。初動売上5千枚。直近作のミニアルバム「I STAND ALONE」(10位)から横バイ。オリジナルアルバムである前作「Next One」の6千枚(9位)から若干のダウンとなっています。なんか、チャートの谷間の週を狙ってリリースしているような・・・。

最後10位には女性アイドルグループ東京パフォーマンスドールのミニアルバム「Summer Glitter」がランクイン。新生東京パフォーマンスドールのアルバムとしては初となるベスト10ヒット。ただし初動売上4千枚は前作「WE ARE TPD」の9千枚(12位)から大幅減という結果となっています。

今週の初登場盤は以上でしたが、チャートの売上水準が低迷した影響でベスト10返り咲き組が1枚。DJ和「ラブとポップ ~好きだった人を思い出す歌がある~ mixed by DJ和」が先週の13位からランクアップし6位再登場となりました。ただし売上は7千枚から5千枚にダウンしています。

今週のアルバムチャートは以上。明日にはHot100を。

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2017年9月19日 (火)

THE COYOTE BAND名義での4作目は・・・

Title:MANIJU
Musician:佐野元春&THE COYOTE BAND

佐野元春&THE COYOTE BAND名義となる4作目のアルバム。THE COYOTE BANDとの名義となったアルバムはいずれも若々しさにあふれた勢いのあるギターロックとなっているのが大きな特徴でした。しかし今回のアルバムに関してはむしろ若々しい勢いというよりは大人の雰囲気を感じるアルバムに仕上がっていました。

フィリーな雰囲気の「悟りの涙」やバイオリンを入れてアコースティックに聴かせる「蒼い鳥」、ちょっとエキゾチックな音を入れた「天空バイク」など、「新しい雨」「禅ビート」など、前作同様ギターロックの路線が根底にありつつも全体的にはソウルやブラックミュージック的な要素を多く含んだ作風となっており、いままでのTHE COYOTE BANDの作品と比べると落ち着いたという印象を受けるアルバムになっていました。

もっとも「落ち着いた」といっても悪い意味でベテランらしい保守的な作品に仕上がった、といった感じではありません。メロディーラインはポップで勢いがあるし、THE COYOTE BANDの演奏は前作までの作品同様、若々しさも感じます。

そして本作もメッセージ性が強く、世の中を鋭く切り裂くような歌詞は健在。例えば「現実は見た目とは違う」では

「本物の聖者は
名前がない
見せかけの聖者は
名前しかない

本物の聖者は
真実を問う
見せかけの聖者は
裏切りに沿う」

(「現実は見た目とは違う」より 作詞 Motoharu Sano)

と昨今世の中を席巻しているポピュリズムを皮肉るような歌詞が特徴的。さらに「朽ちたスズラン」では

「あのひとの嘘はもつれた災いを招くだろう
偽りの涙に愛の海は氷で埋まるだろう
気取った奢りが果てしない争いを誘うだろう
あのひとの金と時間はやがて石になるだろう」

(「朽ちたスズラン」より 作詞 Motoharu Sano)

とデマにまみれた昨今の社会情勢を鋭く批判しています。

さらに今回のアルバムでユニークな試みだったのが1曲目「白夜飛行」と10曲目「夜間飛行」同じ歌詞の曲を全く別のアレンジで収録しています。「白夜飛行」はテンポよいギターロック、「夜間飛行」はジャズ風に仕上げており、両者、全く異なった感覚の楽曲になっています。ある意味アルバムの中で交錯する2つの音楽的な世界観を切り取った、本作を象徴するようなアルバムになっていました。

ここ最近のアルバムとはちょっと異なった雰囲気のアルバムを作り上げながらも今回も傑作に仕上げてきた作品に佐野元春のミュージシャンとしてのキャパの大きさとその実力をあらためて感じた傑作アルバム。彼のすごさをさらに実感させられました。

評価:★★★★★

佐野元春 過去の作品
ベリー・ベスト・オブ・佐野元春 ソウルボーイへの伝言
月と専制君主
ZOOEY
BLOOD MOON


ほかに聴いたアルバム

Tiny Screams/鬼束ちひろ

昨年行われた彼女のライブの模様を収録した初となるライブアルバム。ピアノ、チェロ、パーカッションのみというシンプルなアレンジに、基本的に彼女らしい歌い上げるバラードナンバーが並んだ選曲になっています。そのため似たような曲が多いのですが・・・そのことが全く気にならない内容。楽曲としてクオリティーの高さもさることながら、その力強く感情たっぷりで胸をうつ彼女のボーカルでシンプルなアレンジをバックとして歌い上げられているからこそ同じような曲が並んでいても全く飽きることがなく楽しめるアルバムになっているのでしょう。ボーカリスト鬼束ちひろの実力がよりクリアにあらわれたアルバムでした。

評価:★★★★★

鬼束ちひろ 過去の作品
LAS VEGAS
DOROTHY
ONE OF PILLARS~BEST OF CHIHIRO ONITSUKA 2000-2010
剣と楓
FAMOUS MICROPHONE
GOOD BYE TRAIN~ALL TIME BEST 2000-2013
シンドローム

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2017年9月18日 (月)

カシオトーンを駆使したサウンド

Title:EXPO町あかり
Musician:町あかり

「昭和アイドル歌謡曲風」を標榜している女性シンガーソングライター町あかりの最新作。今回のアルバムの大きな特徴のひとつが楽曲の作り方。今回のアルバムに収録されているのはカシオ計算機からリリースされているキーボード、カシオトーンと音楽制作ソフトのガレージバンドを駆使してつくられた楽曲だそうで、ちょっとチープさを予測させるような音楽制作方法が話題となっています。

そして今回のアルバム、サウンド面ではこういった制作手法がプラス方向にうまく機能していました。もともと町あかりの楽曲というとサウンド的には比較的チープという印象があったためカシオトーンのサウンドでもほとんど気になりません。またそこらへんの女の子の会話や本音、あるあるネタを織り込んだ歌詞は軽いな雰囲気のサウンドにもちょうどマッチしており、むしろサウンド面でちょっとチープさがあった方が楽曲に合っているように思います。

まああとそうはいってもさすがはカシオ(?)。確かにチープはチープなのですが、少なくとも楽曲を邪魔してしまうほどのチープさは感じません。楽曲によっては安っぽい打ち込みの音を前に出している曲もありましたが、それもあえて狙ってのサウンドであり楽曲の中で自然に溶け込んでいます。カシオトーン内蔵のプリセットパターンをほぼそのまま使用したそうですが、それでいてきちんと楽曲にマッチさせているあたり、さすがといった感じの「プロの仕事」を感じさせます。

さてそんな最新作ですが、楽曲の基本的な方向性は前作、前々作と同様・・・なのですが今回の作品に関しては前作、前々作ほどに「昭和アイドル歌謡曲」という路線を前に押し出しておらず、上にも書いた通り、女の子の本音や日常風景、あるいはあるあるネタをインパクトある歌詞で上手く織り込んだポップソングが並んでいます。

ジャンル的にも「お願い!刑事さん」みたいなアイドル歌謡曲王道路線のような楽曲や「たおやかだ~aki~」のようなベタな歌謡曲な楽曲から「は!ction」のようなちょっとジャジーさを感じる曲や「自律神経乱れ節」のような民謡風な楽曲、「ハイヒールが折れたわ」みたいなムーディーな路線まで様々。基本的には80年代の歌謡曲的なサウンドを根底にバラエティーある内容となっています。

また楽曲的に大きなインパクトとなっているのがその歌詞。日常の会話をそのまま歌詞に取り入れたような内容になっており、かつ非常にインパクトあるフレーズを上手くサビとして取り込んでいます。このスタイルも前作、前々作から大きな違いはありません。

ただ基本的に出オチ的な一発ネタがメインということもあり、インパクトあるフレーズばかりが目立っていてそれに続く内容があまりない・・・という欠点も以前から同様。ただ今回のアルバムに関しては、その一発ネタのような歌詞があまり気になりませんでした。「昭和歌謡曲」的なイメージが前作、前々作ほど強くなかったため、昭和歌謡曲の名曲と比較されることがなかったのも大きな要因かもしれませんし、また1曲あたり2、3分という短さゆえに一発ネタ的な勢いだけで突っ切れたという部分も大きいかもしれません。またなによりも彼女の書く歌詞がより進化してきていて、一発ネタを引っ張ることにより生じる不自然さが薄くなってきたのかもしれません。

いままで3作、彼女のアルバムを聴いてきたのですがその中では文句なしに一番楽しめたアルバムだったように思います。サウンド的なB級さと歌詞の世界が上手い具合にマッチした作品に仕上がっていました。そのあるあるネタにも思わず共感してしまう、最初から最後まで楽しいアルバムです。

評価:★★★★★

町あかり 過去の作品
ア、町あかり
あかりの恩返し


ほかに聴いたアルバム

LIVE A LIVE/ヒステリックパニック

名古屋で結成された5人組ロックバンド。地元ということで名古屋ではレコード店などでよくプッシュされていたので以前から名前は知っていたのですが今回アルバムをはじめて聴いてみました。

楽曲的にはメタル色も強いハードコアバンド。ただハードコアなサウンドとポップなメロが交互に展開されるスタイルで方向性的にはマキシマム ザ ホルモンやヤバイTシャツ屋さんに近い感じがします。ただ全体的に音はごちゃごちゃしておりいまひとつ整理されておらず、バンド演奏ものっぺりしている感じでいまひとつ。外部からプロデューサーを招いて交通整理した方がよいのでは?

評価:★★★

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2017年9月17日 (日)

こちらはデビュー35周年

Title:ALL TIME BEST
Musician:安全地帯

今年、デビュー35周年を迎えたロックバンド、安全地帯。そんな彼らのオールタイムベストがリリースされました。さらにそんな安全地帯の中心メンバーでありボーカリストである玉置浩二のソロキャリアを統括したベスト盤も同時リリース。2作品同時に聴いてみました。

Title:ALL TIME BEST
Musician:玉置浩二

実は私、安全地帯をアルバムという形で聴いたのはこれがはじめて。もちろん大ヒット曲であり本作にも収録されている「ワインレッドの心」や玉置浩二の「田園」などは聴いたことがありました。ただ、今回はじめてベスト盤という形でまとめて聴いてみました。

安全地帯というと以前から、一部で・・・というよりも具体的にミュージックマガジン誌近辺あたりで非常に評価が高いのですが、今回のベスト盤を聴いてみても、正直そこまで高い評価に対してはあまりピンと来ませんでした。

もちろん、数多くのヒット曲にスタンダードナンバーも歌っていたミュージシャン。一定以上の「実力」があることは間違いありません。今回聴いたベスト盤2作にひんに関しても数多くの名曲が収録されている点には異論はありません。

ただ今回のベスト盤を聴いて強く感じてしまったのですが、彼らの楽曲はあまりにも保守的。確かにそのしんみりとうっとりするメロディーラインは魅力的ではあるのですが、よくも悪くも一昔前そのままの歌謡曲であり、目新しさは感じませんでした。とはいえ個人的には井上陽水と組んだ「夏の終りのハーモニー」のメロは絶品だと思いましたが・・・。

しかし一方、もうひとつ大絶賛されている玉置浩二のボーカル、これに関してはもうもろ手を挙げて絶賛するしかないですね。彼の楽曲に関しては以前から聴いたことはあったのですが、あらためて聴くとその歌の上手さに関しては文句のつけようがありません。

声量、表現力ともに申し分ないのですが、なによりそのボーカルが実に自然体であることが大きな魅力に感じます。とかく特に日本では「歌が上手い」と称されるボーカリストはいかにもゴスペル風の声をはりあげてその声量を聴かせたり、あるいは感情過多というほどのボーカルを聴かせたりして、なによりも「歌の上手さ」を強調しようとするスタイルが目立ちます。

ただ彼のボーカルはその歌声にしても表現力にしてもとにかく自然体。まったく聴いていて違和感がないのに心に響いてくるボーカルを聴かせてくれます。今回、ベスト盤としてこういう形で彼の歌をまとめて聴いて、そのボーカリストとしての実力、魅力を強く感じることが出来ました。

もっとも彼らの楽曲に関して上で否定的な書き方をしていますが、数多くのヒット曲を抱え第一線で活躍してきたミュージシャンだけに凡百のミュージシャンでは到底かなわないような作品を奏でているのは間違いありません。どちらかというと「良質な歌謡曲」といったイメージなのですが・・・彼らの活躍をまとめて聴くには最適なベスト盤になっていました。

評価:どちらも★★★★

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2017年9月16日 (土)

20周年の記念盤

Title:万謡集
Musician:氣志團

ここ最近、再び勢いが増している氣志團。なんと今年、結成20周年を迎える彼ら。ある意味「出オチ」感すらある彼らが20年もこのスタイルで活動を続けられるのは驚異的でもあるのですが、そんな彼らの新作はなんと全曲、彼らが敬愛するミュージシャンたちからの提供楽曲でつくられた作品。豪華ミュージシャンが作詞作曲勢にズラリと並んだアルバムとなっています。

それだけにアルバム全体的にバラバラになっている・・・かと思いきや、むしろ全体的にはいかにも氣志團らしい楽曲の並び、ある種の統一感がありました。クレイジーケンバンド横山剣が提供した「東京湾大飯店」やハイロウズ真島昌利が提供した「逃げろ!逃げろ!」などは聴いただけで誰がつくったのか一発でわかるような癖のある楽曲だったのですが、その他の曲に関しては、作った側が「氣志團」というバンドをイメージしながらつくったのでしょう、10-FEETのTAKUMAが提供した「フォーサイクル」がハードコアパンク風だったり、BUCK-TICKの櫻井敦司、今井寿コンビが提供した「恋するクリスチーネ」がグラムロック風だったりとバンドの個性をそれなりに出しつつも、基本的には氣志團としてイメージされるようなビートロックの楽曲が並んでいます。

歌詞の方もいかにも氣志團らしい青春系の歌詞が並ぶのも特徴的。特にラストを飾る秋元康が作詞で参加した「リーゼント魂」などはまさに氣志團のいままでの歌詞の傾向を上手くとらえて歌詞にした内容。ここらへんを卒なく仕上げてくるあたりはさすが秋元康といった感じなのでしょう。

またこれだけいろいろな個性が集まった楽曲を氣志團が演奏するとしっかりと氣志團の曲になっていたのも印象的でした。氣志團といえばその不良のルックスからキャラクター的な部分で個性を確立しているバンドというイメージが強いのですが、今回、こうやって他人が提供した楽曲を並べて聴くと、彼らがバンドとしてもしっかりと個性を確立しているんだということにあらためて気が付かされます。

前作「不良品」は彼ら自身が氣志團というバンドをしっかりと見つめ直して実に氣志團らしいアルバムに仕上げた傑作になっていましたが、今回は周りの人たちが氣志團というバンドをどう見ているのかを表現したアルバムと言えるかもしれません。そういう意味では前作と対照的なアルバムと言えるでしょう。

ただ個人的にはもうちょっと楽曲的にぶっとんでいてもおもしろかったのでは?とも思ってしまいました。前山田健一が提供した「はすっぱ」みたいなムード歌謡風バリバリの普段の氣志團では聴けないような楽曲もあるのですが、上にも書いた通り、全体的にはビートロック路線で統一されており、こういう楽曲もありなんだ、という意外性にはちょっと乏しい内容でした。他の人が楽曲を提供するだけに、もっと氣志團としてはありえないような楽曲も何曲かあってもおもしろかったと思うのですが・・・。良くも悪くも「氣志團らしい」アルバムに留まっていました。

とはいえ著名なミュージシャンたちが楽曲を提供しているだけにポップでインパクトある楽曲揃い。最初から最後までポップなビートロックを存分に楽しめるアルバムでした。結成20年を迎えてまだまだ勢いのある彼ら。これからの活躍にも期待です。

評価:★★★★

氣志團 過去の作品
房総魂~Song For Route 127
木更津グラフィティ
蔑衆斗 呼麗苦衝音
日本人
氣志團入門
不良品


ほかに聴いたアルバム

松永天馬/松永天馬

アーバンギャルドのリーダーとしても活躍している松永天馬の初となるソロアルバム。もともとアーバンギャルドでも変態性あるエロチックな歌詞を書いていましたが、ここ最近、社会派な路線が続いています。そんな中リリースされたソロアルバムは、自分の名前を題したアルバムらしく、彼の内面をそのままさらけだしたような歌詞が大きな魅力に。変態性を感じるエロチックな歌詞に彼の本音をある意味赤裸々に綴ったような内容が特徴的。ある意味、聴く人は選びそうですが、それだけ強烈な個性を感じさせるアルバムでした。

評価:★★★★

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2017年9月15日 (金)

結成25年を超えていまだ感じる新鮮味

Title:Metaltic Nocturne
Musician:noodles

昨年、結成25周年を迎えてすっかりベテランバンドの域に達した3ピースガールズバンドnoodlesの最新アルバム。ご存じの通り、もともとthe pillowsの山中さわおの目にとまり、彼が主催する「DELICIOUS LABEL」に所属することになってその活動をスタートさせた彼女たち。ある意味、the pillowsの「妹分」的な彼女たちなのですが、楽曲もthe pillows同様、ストレートでポップなオルタナ系ギターロックが心地よい作品が並んでいます。

以前にも書いたアルバム評で彼女たちを「女版the pillows」と何度か書いたのですがそのイメージは本作も変わりません。本作の冒頭を飾る「Heart Bop」のギターのイントロや途中の入るギターのフレーズなどはthe pillowsの影響を強く感じますし、「right hand arrow」なども出だしのギターフレーズはまんまthe pillows。ミディアムテンポでメロディアスなナンバーなのですが、どこかキュートさも感じるフレーズにもthe pillowsらしさを感じます。

基本的には英語詞が主体となったオルタナ系ギターロックが主軸となったアルバム。the pillows以上にシンプルなギターロックが目立ちますし、比較的ポップス路線が目立つ最近のthe pillowsに比べるとよりへヴィーなギターサウンドを前に押し出した「ロック」な楽曲が目立ちます。

以前聴いたアルバム「Explorer」では打ち込みやアコースティックな要素を入れてそれなりにバリエーションを出そうとしていましたが、本作ではあくまでもギターロックに特化。そのため正直言うと、若干バリエーションの不足が目立ちました。もっとも、アルバムとしてはわずか38分という短さ。そのため楽曲的に「似た曲が多い」と感じる部分も少なくありませんでした、ほとんどだれることなく一気に聴き切ることが出来るアルバムになっていました。

特にタイトルチューンとなった「Metaltic Nocturne」では哀愁感あるメロディーラインに強いインパクトを感じ、アルバムの中でひとつの核となっていました。メロディーラインはより洋楽テイストを強く感じ、the pillowsとは異なる方向性にnoodlesとしての個性もしっかりと感じることが出来ます。

また前半、英語詞の曲が並ぶのに対して後半は日本語詞の曲が並び、アルバムの中でバリエーションを持たせているのも特徴的。もうちょっといろいろと挑戦した方が・・・と思うこともなきにしろあらずなのですが、割り切ったようなシンプルなギターロックがとにかく魅力的で、最後まで楽しむことが出来るアルバムになっていました。

結成から25年以上を経過しながらも勢いのあるギターサウンドにいまなお新鮮味すら感じることが出来るnoodlesのアルバム。このベテランバンドながらも若手のような新鮮味が残っているという点でもthe pillowsと共通しているように思います。個人的には(以前のアルバムでも書いたのですが)もっともっと売れてもいいと思うんだけどなぁ。全ギターロックファンにお勧めしたいアルバムです。

評価:★★★★★

noodles 過去の作品
SNAP
Explorer

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2017年9月14日 (木)

アラ還おじさん、がんばる

今週のアルバムチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/ja/

今週のアルバムチャートではアラ還世代の男性ミュージシャンの活躍が目立ちました。

まず1位2位には浜田省吾(64歳)のアルバムがワンツーフィニッシュです。1位は「The Moonlight Cats Radio Show Vol.1」、2位は「The Moonlight Cats Radio Show Vol.2」。2枚同時リリースとなったのは彼がR&Bの名曲をカバーしたミニアルバム。初動売上はいずれも2万2千枚と低水準となってしまったのですが、それでも1、2フィニッシュは見事。直近のオリジナルアルバム「Journey of a Songwriter~旅するソングライター」に続いての1位獲得となっています。なお初動売上は直近作「"J.BOY"30th Anniversary」の2万8千枚(2位)よりダウンしています。

そして3位には先週1位の桑田佳祐(61歳)「がらくた」が2ランクダウンながらもベスト3をキープ。今週、ベスト3にランクインしてきたのがいずれも還暦越えの男性ミュージシャンという結果となっています。

さらに9位にはさだまさし(65歳)「惠百福 たくさんのしあわせ」がランクインしてきています。60歳を超えていることが信じられないようなアグレッシブな活動を見せるハマショーや桑田佳祐と比べると、こちらは良くも悪くも「年齢なり」といった感じ。初動売上は8千枚。直近作は裏ベスト「御乱心~オールタイム・ワースト~」でこちらの1万2千枚(8位)よりダウン。直近のオリジナルアルバム「風の軌跡」の1万3千枚(8位)からもダウンしています。

世代的にはそんなアラ還おじさんとは一回り近く下なのですが、「がんばるおじさん」という意味では奥田民生(52歳)もそうでしょう。5位に「サボテンミュージアム」が初登場でランクイン。最近はユニコーンでの活動も目立ってましたので、オリジナルアルバムとしては「O.T.Come Home」以来約3年10ヶ月ぶりとなるアルバム。初動売上1万2千枚。直近作はライブ盤「奥田民生 生誕50周年伝説“となりのベートーベン"」でこちらの1千枚(48位)からはさすがに大きくアップ。オリジナルアルバムとしての前作「O.T.Come Home」の1万9千枚(8位)からもダウンしています。

今週はそんなおじさん勢の活躍が目立ちましたが、もちろんその他のミュージシャンもがんばっています。まず4位にヴィジュアル系ロックバンドシド「NOMAD」がランクイン。初動売上1万6千枚。直近作はベスト盤「SID ALL SINGLES BEST」の1万3千枚(6位)よりアップ。ただし直近のオリジナルアルバム「OUTSIDER」の3万2千枚(5位)からは大きくダウンしてしまいました。

6位には4人組ロックバンドSUPER BEAVER「真ん中のこと」が入ってきました。全6曲入りのミニアルバムでベスト10入りは前作「27」に続いて2作目。初動売上1万枚は前作の6千枚(10位)からアップしています。

さらに10位にはRIZE「THUNDERBOLT~帰ってきたサンダーボルト~」がランクインしてきました。2000年にシングル「Why I'm Me」がヒットを記録したミクスチャーロックバンド。その後、メンバーチェンジなどがあったものの地道に活動を続けてきました。そしてアルバムとしては2000年のデビューアルバム「ROOKEY」以来のベスト10ヒット。オリジナルアルバムとしては7年3ヶ月ぶりと久々のリリースだったのですが、見事ヒットを記録しました。ただし初動売上7千枚は前作「EXPERIENCE」(16位)からほぼ横ばい。もっとも久しぶりのアルバムにも関わらず、初動売上を落とさなかった点、根強い人気を感じます。

今週初登場は以上でしたが、ベスト10圏外からランクアップし、初のベスト10入りを記録したアルバムがありました。それが先週の35位から8位にランクアップした菅野ようこ「NHK大河ドラマ『おんな城主 直虎』緊急特盤 鶴のうた」。NHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」で、直虎の幼馴染として登場する高橋一生演じる小野但馬守政次が番組の中で壮絶な最期をとげたそうですが、その彼への追悼盤として急きょリリースされたのが本作だそうです。件の大河ドラマは全く見ていないので、なぜ本作がここまで売れるのかわからないのですが、なんだかんだいっても大河ドラマの人気は高いんだな、ということを感じさせます。

また今週、韓国の男性アイドルグループEXO「The War:EXO Vol.4(Korean Ver.)」がベスト10圏外からランクアップして7位にランクインしてきました。もともとは7月にリリースされたアルバムだったのですが、その時は初動売上1万枚で11位止まり。今回、7月リリースの作品に新曲を追加したリパッケージアルバムがリリースされ、再度順位を伸ばし、同作としては初のベスト10入りとなりました。

今週のアルバムチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に。

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2017年9月13日 (水)

あの曲がまたベスト10に返り咲き!

今週のHot 100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週、再びSMAP「世界で一つだけの花」が先週のランクイン圏外からベスト10に返り咲いています。おそらくメンバーのジャニーズ事務所退社のニュースが大きく報じられ、その影響でファンが再びCDの購入に走ったのでしょう。また9月9日は彼らのデビュー記念日であり、その影響も大きそう。CD販売・ダウンロード・ストリーミング数(以下「実売数」)で14位、さらにはTwitterつぶやき数で1位を記録し、今年の1月9日付チャート以来、36週ぶりのベスト10返り咲きとなりました。ちなみにオリコンでも1万7千枚を売り上げ、9位にランクアップしてきています。

ちなみに今週の1位もジャニーズ系。関ジャニ∞「奇跡の人」が初登場で獲得しています。日テレ系ドラマ「ウチの夫は仕事ができない」主題歌。作詞作曲はさだまさしで関ジャニ版関白宣言的な歌詞が印象的。歌詞の内容が若干保守的な感じなのが気にかかりますが。実売数及びPCによるCD読取数1位、Twitterつぶやき数6位、一方ラジオオンエア数は43位にとどまっています。オリコンでも初動売上25万2千枚で1位初登場。前作「なぐりガキBEAT」の27万3千枚(1位)からダウン。

今週2位はDAOKO×米津玄師「打上花火」が先週から変わらず2位をキープ。実売数2位、PCによるCD読取数3位を記録している他、You Tube再生回数は先週から変わらず1位をキープ。まだまだ勢いは続いています。また3位は星野源「Family Song」が先週5位からランクアップしベスト3返り咲き。PCによるCD読取数2位のほかは実売数9位、You Tube再生回数15位と前作のような勢いは感じませんが、上位に食い込んできたのは他に大きなヒットが少ない影響でしょう。

続いて4位以下の初登場曲です。6位にポルノグラフィティ「キング&クイーン」が先週の99位からCDリリースにあわせてベスト10入り。日テレ系「ワールドグランドチャンピオンズカップ2017」テーマ・ソング。いわゆる「グラチャンバレー」のテーマ曲ですね。この手のスポーツイベントの番組テーマ曲らしい爽快さとスケール感をあわせもったポップソングになっています。実売数6位、Twitterつぶやき数9位、ラジオオンエア数17位、PCによるCD読取数11位と万遍なく上位に食い込んでいます。オリコンでは5位初登場。初動売上2万1千枚は前作「LiAR」(6位)から横バイ。

7位にはamazarashi「空に歌えば」が先週の37位からCDリリースにあわせてベスト10入り。日テレ系アニメ「僕のヒーローアカデミア」オープニング・テーマ。アニメ主題歌らしい疾走感あるロックチューン。実売数7位、PCによるCD読取数16位、Twitterつぶやき数17位、You Tube再生回数24位にランクインしましたがラジオオンエア数は66位と伸び悩みました。オリコンでは初動1万4千枚で13位初登場。前作「命にふさわしい」の1万6千枚(5位)からダウンしています。

8位初登場は小沢健二とSEKAI NO OWARI「フクロウの声が聞こえる」。今年2月、CDでのシングルリリースとしては実に19年ぶりとなる「流動体について」をリリースし大きな話題となったオザケン。そんな彼の早くもリリースされた最新作はなんとSEKAI NO OWARIとのコラボ。かなり意外な組み合わせで賛否両論といった感じのこのコラボ。ただ楽曲的には作詞作曲はオザケンですし、基本的にはオザケンっぽいポップチューン。セカオワのボーカル深瀬の声がフリッパーズ・ギター時代の相方、小山田圭吾に似ているという声もあり、ひょっとしたらコラボの理由はそこ?なんて妄想も抱いてしまったりします。実売数13位、ラジオオンエア数7位、PCによるCD読取数8位、Twitterつぶやき数15位。ラジオオンエア数が若干上位なのがオザケンのファン層によるものか。オリコンでは初動2万枚で6位初登場。オザケンのシングルとしては前作「流動体について」の3万7千枚(2位)よりダウン。セカオワのシングルとしては前作「RAIN」の5万8千枚(2位)よりダウンしています。

初登場組は以上。ロングヒット組としてはまずEd Sheeran「Shape Of You」が10位から5位に再びランクアップ。You Tube再生回数が先週から変わらず3位をキープしている他、実売数が8位から5位へとランクアップしています。また乃木坂46「逃げ水」が今週4位にランクイン。これで6週目のベスト10ヒットとなり、ロングヒットとなっています。

今週のHot100は以上。明日はアルバムチャート。

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2017年9月12日 (火)

彼らの歩みがわかるオールタイムベスト

Title:LAST BEST~豊作参舞~
Musician:米米CLUB

「浪漫飛行」「君がいるだけで」などの大ヒット曲を連発し、90年代を代表するバンドの一組としてその名を知られる米米CLUB。97年に解散したものの2006年に再結成し今に至っています。ただ再結成後しばらくは積極的な活動を続けたものの、ここ数年は活動も停滞気味。ただそんな中でも初となるオールタイムベストがリリースされました。

ベスト盤としては12年前にリリースされたファン投票によるベスト盤「米~Best of Best~」以来。こちらは再結成前にリリースされたアルバムということで今回ははじめての再結成後の楽曲を含めたベスト盤に。また、前作ではダンス系の楽曲と聴かせる系の楽曲をCD2枚にわけたアルバムになっていたのに対して本作はデビューシングル以降の全シングルを発売順に並べた内容。そのため、米米のバンドとしての歩みがよくわかる内容になっています。

今回は全3枚組でのリリースだったのですが、この3枚の分け方がちょうど米米の歩みとマッチしているような分け方になっていました。Disc1は「I・CAN・BE」から「ひとすじになれない」まで。いわばメガヒットとなった「君がいるだけで」リリース直前までの作品で、デビュー時からブレイク時までの流れがわかる内容に。Disc2は、その大ヒットした「君がいるだけで」から97年の解散前までのシングル。さらにDisc3は再結成後の楽曲と、ちょうど米米の歩みとマッチしたCDの分け方となっています。

そして今回圧倒的によかったのがDisc1。特に「浪漫飛行」リリース前の楽曲に関して、もちろん以前から知っていたのですが今回久しぶりに聴いてみて、こんなによかったっけ?とあらためて米米の魅力を再認識させられました。いわゆるPファンクから強い影響を受けたファンクナンバーに、ユーモラスな歌詞を加えた内容。ただメロディーラインにしろサウンドにしろファンクそのままというよりも微妙に歌謡曲的なテイストが加わっており、いい意味で日本人にとって聴きやすい味付けがされています。「嫁津波」みたいな民謡風の楽曲もユニーク。彼らが日本流ファンクを実に自然体に完成させてしまっていたことにいまさらながら気が付かされました。

しかし、正直言って「浪漫飛行」以降のナンバーについては日本流ファンクという視点から大きく遠ざかってしまい、悪くはないのですが「売れ線のJ-POP」になってしまっていておもしろさという観点からはグッと後ろに下がってしまったように思います。いわば「浪漫飛行」や「君がいるだけで」の二番煎じを狙っているような縮小再生産的な楽曲がほとんど。アルバム単位ではわからないのですが、シングル曲では初期米米で感じたような魅力はほとんど感じられません。

いまさらながらなのですが、なんで「浪漫飛行」後の米米に関しては初期の歌謡ファンク路線をシングルとして一切やめてしまったのかかなり疑問に感じてしまいます。初期のファンク路線が全く売れずに「浪漫飛行」でいきなりブレイク、というのならわかるのですが、「浪漫飛行」以前も「KOME KOME WAR」「FUNK FUJIYAMA」がベスト10ヒットを記録しており、十分広く受け入れられていましたし、「浪漫飛行」ブレイク後には2ndシングル「Shake Hip!」を再発しヒットを飛ばしています。もし、初期ファンク路線の楽曲を大ブレイク後もシングルとしてリリースしていれば、もっとファン層を広げられたのではないか、と今となっては思ってしまいます。まあリアルタイムでは「FUNK FUJIYAMA」がヒットした頃って、ヒットシーンでファンクを音楽のジャンルとして受け入れられるような土壌がなく、むしろ「コミックバンド」的な括りで彼らのことを語られることが多く、そんなイメージを払拭したかったのかもしれませんが・・・。

また今回のベスト盤で予想以上に良かったのが再結成後の楽曲を集めたDisc3。特に再結成後のシングル曲では、「MATA(C)TANA」「御利益」のような初期ファンク路線が復活。初期米米を彷彿とさせるようなアバンギャルドでポップでユニークな米米路線が復活しています。一方では「恋のギャンブル」のような「浪漫飛行」系の楽曲や「君を離さない」のようなJ-POP王道系のバラードもちゃんと残っており、いわば米米の様々な魅力をきちんと伝えた楽曲になっています。再結成によってようやく彼らがやりたいような路線の楽曲をシングルとしてリリースできるようになったんだなぁ、ということを今回、あらためて感じてしまいました。

なんかライブにも足を運んだことがあるくせに気が付くのが遅すぎるよ、と言われそうですが、あらためて米米CLUBの魅力を認識できらベスト盤でした。また今後も、魅力的な楽曲を聴かせてくれることを願っています。

評価:★★★★★

米米CLUB 過去の作品
komedia.jp
米米米~SUNRICE~


ほかに聴いたアルバム

プラチナムベスト ORIGINAL LOVE~CANYON YEARS SINGLES&MORE/ORIGINAL LOVE

あるミュージシャンの代表曲をまとめてUHQCD仕様でリリースするベスト盤シリーズ「プラチナムベスト」。本作はORIGINAL LOVEのポニーキャニオン在籍時のシングル曲などをまとめた2枚組のベスト盤。いかにも本人が直接関与しないレコード会社主導のベスト盤っぽいのですが、公式サイトでも紹介されているようですので、基本的に本人公認のベスト盤のようです。

大ヒットした「プライマル」のようにいかにも彼らしいシティポップ路線の曲からラテン色を入れてきたりスカ風のリズムを入れてきたりジャジーだったりと、しっかりORIGINAL LOVEとしての色を感じつつもバラエティー富んだ作風が魅力的。オールタイムベストでないのは残念ですし、ブレイク作「接吻 kiss」は収録されていませんが、彼の代表曲は概ね網羅しておりORIGINAL LOVEの入門盤としても最適なベスト盤です。

評価:★★★★★

ORIGINAL LOVE 過去の作品
白熱
エレクトリックセクシー
ラヴァーマン

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2017年9月11日 (月)

80年代ギタポからの影響が顕著

Title:The Echo Of Pleasure
Musician:The Pains Of Being Pure At Heart

アメリカのインディーギターポップバンドの約3年3ヶ月ぶりとなるニューアルバム。毎回、とても心地よいポップソングの傑作を聴かせてくれる彼らですが、今回のアルバムもドリーミーでポップなサウンドがとても心地よい傑作アルバムとなっていました。

彼らの楽曲はいわゆるシューゲイザー系の影響を強く受けた楽曲。楽曲を埋め尽くすようなホワイトノイズのサウンドが流れ、そこにポップでキュートなメロディーラインを聴かせてくるという構成。彼らの場合は、特にTEENAGE FANCLUBあたりからの影響を強く感じる暖かみのあるメロディーラインも大きな魅力となっています。

今回のアルバムに関しても1曲目「My Only」からそんな楽曲の魅力が前面に押し出されています。楽曲を埋め尽くすホワイトノイズにミディアムテンポのメロディーライン。ところどころに女性ボーカルの歌声を重ね、キュートな雰囲気を作り出している点も印象的。いわばマイブラ直系の楽曲なのですが、否応なしにアルバムへの期待が高められます。

中盤の「Falling Apart So Slow」も同様にインパクトあるポップなメロディーラインが魅力的。分厚くノイジーなサウンドを心地よく聴かせる反面、ボーカルの歌い方といいどこかラフさを感じさせる雰囲気に80年代のインディーギターロックからの影響を強く感じます。

また今回のアルバムにはエレクトロサウンドを取り入れた楽曲も目立ちました。「When I Dance With You」もまさにそんなエレクトロなダンスポップに仕上げていましたし、女性ボーカルによりアップテンポで爽快なポップチューンを聴かせる「So True」も打ち込みによる4つ打ちのサウンドを聴かせてくれます。ただそんな楽曲でもしっかりとノイジーなギターは鳴っておりアルバム全体としての印象に大きな相違はありませんでした。

後半は「The Cure For Death」のようなドリーミーなポップソングを聴かせつつ、「Stay」はアコギの音を入れつつ哀愁感あるメロを聴かせるフォーキーな楽曲に。最後を締める「Violet&Claire」もサウンドは比較的シンプルで切ない雰囲気のメロディーを聴かせる楽曲に。終盤は彼らのメロディーメイカーとしての側面を前に押し出したようなポップソングが並んでいました。

そんな感じでアルバム全体にそれなりのバリエーションを持たせつつ、ただアルバム全体の印象としてはいつも通り、ノイジーなギターサウンドが心地よいシューゲイザー直系のギターポップという印象を残す作品。ある意味、リスナーの期待にしっかりと応えた傑作アルバムに仕上がっていました。なにより個人的には前作同様、壺にはまりまくりのアルバム。何度も聴きなおしたくなる中毒性あるポップアルバムでした。

評価:★★★★★

The Pains of Being Pure at Heart 過去の作品
Belong
Days Of Abandon


ほかに聴いたアルバム

Sacred Hearts Club/Foster The People

デビュー作「Torches」、2作目「Supermodel」も話題となったアメリカのインディーポップバンドの3枚目。全編、軽快なエレクトロポップ。前作ではサイケポップ的な要素を強く押し出し、本作でも最後を締めくくる「III」のようにサイケ色の強い曲もあったのですが、全体的にはポップなメロディーを前に押し出したちょっと哀愁味帯びたポップなメロを聴かせるような曲がメイン。リズミカルなエレクトロポップが楽しめる作品です。

評価:★★★★

Foster the People 過去の作品
Torches
Supermodel

Flower Boy/Tyler,The Creator

約2年3ヶ月ぶりとなるTyler,The Creatorのニューアルバム。ダークな雰囲気のサウンドに力強いタイトなリズムとラップが特徴的。ただ本作に関してはメロウなトラックも多く、メロディアスな曲も目立ち、全体的にメロディーを聴かせるようなアルバムに。いい意味でHIP HOPリスナーに留まらない層に聴きやすいアルバムになっていました。

評価:★★★★★

TYLER,THE CREATOR 過去の作品
Goblin
Wolf
CHERRY BOMB

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2017年9月10日 (日)

バラエティー富んでいてとにかく楽しい

Title:キンキーキッズ
Musician:餓鬼レンジャー

前作、活動20周年記念アルバムをリリースした餓鬼レンジャー。すっかりベテランのHIP HOPユニットとなった彼らですが、このたび以前からサポートメンバーとして参加していたDJオショウが正式加入し、5人組となりました。本作はそんな新生餓鬼レンジャーのニューアルバムになっています。

そんな20周年記念アルバムだった前作「祭事」は下ネタを含んだバラエティー富んだエンタテイメント性強い楽曲を聴かせてくれた彼ら。続く今回のアルバムも非常にエンタテイメント性のある楽しいアルバムを聴かせてくれました。

アルバムはまずハリウッド映画の予告編のようなイントロからスタート。ネタ色が強い内容ながら微妙に世相を風刺しているような「予告編」の内容もユニークながら、続く「NO PLAN B」はハードロック風、「超越」はレゲエの要素を入れたエレクトロ風のトラックがリズミカルでかつポップで耳なじみやすいナンバーになっています。

エロ歌詞がユニークな「Miss PenPen」に熟女讃歌の「MILF」で前作同様下ネタ路線が続いたかと思えば、続く「運がYEAH」は家族との日常を描いた歌詞がほっこりとさせられる内容と、ある意味その内容の振れ幅は大きいものの、いずれもエンタテイメント性を強く感じさせる内容になっており、しっかりと聴かせる内容となっています。

サウンド的にもハードコア風な「WASABI」やラテン風の「卒業」、タイトル通りマンボ風の「アゲマンボ」などバラエティー豊富。ラスト「ONE」ではゲストボーカルにSugar Soulが参加してその伸びやかでつやのあるボーカルを聴かせてくれています。

要所要所に入るコントのようなインターリュードもなかなか楽しくアルバムのエンタテイメント性を増す大きな要因となっています。正直、前作に比べるとバリエーション的にもインパクト的にもこちらの方が一歩劣るかな、とも思うのですがこちらの作品も最初から最後までワクワクしながら楽しめる素敵なポップアルバムに仕上がっていました。前作同様、普段HIP HOPを聴かないような方でも楽しめるような傑作アルバム。幅広い層にお勧めできる1枚です。

評価:★★★★★

餓鬼レンジャー 過去の作品
KIDS RETURN
祭事

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2017年9月 9日 (土)

オールタイムベスト的にも楽しめる

今日は先日購入したDVDの紹介です。

90年代に中高生を中心に絶大な人気を誇ったロックバンドLINDBERGのすべてのMVをまとめたクリップ集。2002年に解散後、2009年に1年限定で再結成し、さらに2014年から活動を再開していますが、その2009年の再結成時のMVや、新曲のMVも収録しています。

ここのサイトでも何度か書いていますが、LINDBERGは私個人が中学生から高校生の頃に大ハマリしていたバンド。その頃のMVはリアルタイムで何度も見ていました。それだけに、その一番はまっていた時期、具体的に言うと「BELIEVE IN LOVE」から「だってそうじゃない!?」の頃のMVに関してはまさに感涙モノ。自分が中高生の頃を思い出して、とても懐かしい気分になりました。

ただ今回のMV集でちょっと意外だったのは彼らがもっとも人気を博していた90年代前半でも、意外とMVが作成されていないシングル曲があるのね、ということ。「OH!ANGEL」や「胸騒ぎのAfter School」なんかはヒットしたシングル曲にも関わらずMVが作成されていなかったというのは意外に感じました。

また当時は愚直に「音楽が好き」というスタンスで聴いていたのであまり感じなかったのですが、あらためてMVで見ると・・・渡瀬マキ、かわいい(笑)。さすが元アイドル(笑)。一方、渡瀬マキ以外のメンバー3人の華のなさ、最後まであか抜けないのも目立っていました(失礼!)。あれだけの人気バンドのメンバーなのに、最後まで「普通のおっさん」みたいな感じだし・・・(重ね重ね失礼!!)。

さて今回のMV集は「今すぐKiss Me」からはじまり彼女たちの代表曲を網羅しているという意味でも、彼女たちがまだリリースしていないオールタイムベスト的な感覚でも楽しめることが出来た作品でした。またリリース順になっているため彼女たちの音楽的変遷も楽しめることが出来るアルバム。当初のロック路線からスタートし、「I MISS YOU」あたりから徐々にポップ路線にシフトし、それが決定的になったのが「もっと愛しあいましょ」、というのは以前から認識していたのですが、その後の作品を聴くと、2001年にメジャー契約がなくなりインディーズになった後の作品は、意外と初期に戻ったような作風になっているということに今回のMV集ではじめて気が付きました。90年代後半のようなポップス路線が一段落して、より「バンド」であることが強調されたような作品になっており、あらためて聴くと、最後の最後は原点回帰した、90年代初頭にファンだった私にも楽しめるような作品を書いていたんだな、ということに今回、あらためて気が付きました。

また2009年の再結成の時にリリースされた「LIVE your LIFE」も今回はじめて聴いたのですが、こちらも90年代初頭の雰囲気を感じさせる前向きで元気のあるロックチューン。一時期のような大ヒットにはつながりませんでしたが、まだまだミュージシャンとして十分初期の頃に負けない曲を書くことが出来るんだ、というバンドの実力を再認識しました。

ただ今回の新曲「Fresh」はまた良くも悪くも大人になったような落ち着いたような曲になってしまって、今のLINDBERGの姿をそのまま表現したともいえるかもしれませんが、彼女たちのパブリックイメージからすると少々いまひとつの出来だったように感じます。また、MVを見ると、これまた非常に失礼ながらメンバー全員老けたなぁ・・・。まあ、メンバーの平均年齢が50才を超えていますからね。もっとも中学生の頃に彼らに出会った私もうアラフォー。お互い、歳をとりました・・・。

そんな訳で、懐かしいという感情にひたりつつ楽しむことが出来たDVDでした。amazonで購入すれば3,000円代と比較的お得な内容なだけにリアルタイムでファンだった方は手にとってみては?おそらく、あの頃のことを思いだしてしまうと思いますよ。

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2017年9月 8日 (金)

逆説的なアルバムタイトルがユニーク

Title:NO MORE MUSIC
Musician:OKAMOTO'S

逆説的で、どこか皮肉めいたものを感じさせるアルバムタイトルも印象的なOKAMOTO'Sのニューアルバム。バンドとしての評判とは裏腹にアルバムではいまひとつの作品が続いてたデビュー直後の彼らとは異なり、ここ最近、アルバムの出来も安定していておりバンドとしても成熟期に入って来たことを感じさせる彼らですが、フルアルバムとして7作目となる本作もそんなバンドとしての勢いを感じさせる傑作となっていました。

今回のアルバムはまず印象としてはファンク、ブラックミュージックからの強い影響を感じます。1曲目「90'S TOKYO BOYS」はファンキーでアーバンな作風。印象としては最近話題のSuchmosやNulbarichと似たような流れを感じさせますがバンドとしてはもちろんOKAMOTO'Sの方が先輩格。楽曲にもいい意味での安定感を覚えます。この方向性は「NEKO」や最後を飾る「Star Light」も同じような感じでしょうか。程よく力が抜けたサウンドが心地よく、醒めた雰囲気の楽曲がオカモトショウのボーカルにもマッチし、心地よいシティーポップのナンバーを聴かせてくれます。

ただそんなアーバンポップを主軸としつつ、様々なタイプの曲を楽しめるのが本作の大きな特徴。タイトルチューンである「NO MORE MUSIC」は80年代ポップスを彷彿とさせる爽快で心地よいダンスポップですし、「WENDY」はタイトル通りの爽快さを感じる疾走感あるポップチューン。ボーカルはオカモトコウキがつとめており、爽やかな彼のボーカルが楽曲にも非常に合っています。ちなみにこの曲、プロデュースを堂島孝平がつとめているのですが、まさに堂島孝平らしさが前面に出てきているので、堂島ファン必聴の作品です。

そんなシティーポップチューンが多く収録されている一方、バンドとしての足腰の強さを感じるロックチューンも少なくありません。特に今回、バンドメンバー全員が共通してファンだというレッチリからの影響を挙げており、「BEDROOM」のイントロなんかはまさにレッチリっぽいですし、先行シングルとなった「BROTHER」なんかもまさにレッチリらしいファンキーでロックなミクスチャーのナンバー。HIP HOP風なトラックが心地よい「Cold Summer」も途中、へヴィーなバンドサウンドが顔を覗かせます。ただここらへんのへヴィーなロックナンバーもアーバンなシティーポップと並んでいてもアルバム全体としての流れに違和感がなく、音楽的に共通するものを楽曲の根底に感じることが出来ます。

バラエティー富んだ作風にバンドの音楽性の幅広さを感じ、またそれでいてアルバム全体に統一感がある点、バンドとしてしっかりと個性を確立しているということを感じさせる作品になっていました。デビューから7年、バンドとしての評価とは裏腹に、なかなかブレイクしきれない彼らですが、バンドとしての体力、実力はしっかりと身に着けてきていることを感じさせる傑作アルバム。まだまだバンドとしても昇り調子を続けており、これからの活躍が楽しみになってくる作品でした。

評価:★★★★★

OKAMOTO'S 過去の作品
10'S
オカモトズに夢中
欲望
OKAMOTO'S
Let It V
VXV
OPERA
BL-EP


ほかに聴いたアルバム

HIGHLIGHT-The Very Best of Toki Asako-/土岐麻子

女性シンガーソングライター土岐麻子のオールタイムベスト盤。全編爽快なシティポップが流れてくる作品。ある意味意外性はなく、ジャジーな曲やエレクトロアレンジの曲もあったりするのですが、良くも悪くも似たような雰囲気の楽曲ばかり。土岐麻子としての個性は強く感じさせる反面、ちょっと楽曲のインパクトは弱めかな?ただとはいうものの聴いていて気持ちよくなるポップスばかり。以前のベスト盤の時も似たような感想を書いたのですが、良質なポップのアルバムとして楽しめる作品です。

評価:★★★★

土岐麻子 過去のアルバム
TALKIN'
Summerin'
TOUCH
VOICE~WORKS BEST~
乱反射ガール
BEST! 2004-2011
CASSETTEFUL DAYS~Japanese Pops Covers~
HEARTBREAKIN'
STANDARDS in a sentimental mood ~土岐麻子ジャズを歌う~
Bittersweet
PINK

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2017年9月 7日 (木)

いきなり1位獲得

今週のアルバムチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/ja/

今週1位にはいきなり初耳のミュージシャンがランクインです。

今週1位を獲得したのはBLACKPINK「BLACKPINK」が獲得しました。BLACKPINKというのは完全に初耳のミュージシャンですが、韓国の4人組女性アイドルグループ。これがデビューアルバムで初動売上3万9千枚というのは、さすがにCDが売れなくなった今でも1位獲得枚数としてはかなり少ない数字なのですが、とはいえデビュー作でいきなりの1位獲得となりました。ただ・・・いきなり1位獲得するだけの支持層がいまひとつ不明なのですが・・・。

2位は先週1位桑田佳祐「がらくた」がワンランクダウンながらもベスト3をキープ。

そして3位初登場は待ちに待ったという方も多かったのではないでしょうか。KICK THE CAN CREW「KICK!」がランクインしてきました。KICK THE CAN CREWは2001年にデビューした3人組HIP HOPユニット。同年に山下達郎の「クリスマス・イヴ」をサンプリングした「クリスマス・イヴRap」が大ヒットを記録し一躍ブレイク。翌年には紅白歌合戦の出演も果たしています。

その後もヒット作を飛ばし続けたものの2004年に活動を休止。ただしその後も時々、ライブなどで3人そろってのステージを見せたり、メンバーのうちMCUとLITTLEが結成したユニットにKREVAが参加したりとメンバー3人の交流は続いており、再結成も時間の問題・・・かと思いきや、なかなか再結成せず今に至っていました。

そんな彼らも今年、ついに本格的に活動を再開。約13年9ヶ月ぶりにリリースされたアルバムが本作です。初動売上は1万9千枚。前作「GOOD MUSIC」の初動8万枚(11位)からは大きくダウンしてしまいましたが、この13年のCD市場の動向を考えれば、仕方ないこと。むしろ13年以上を経てアルバムがベスト3入りという点で根強い人気を感じます。

続いて4位以下の初登場盤です。まず4位にユナク&ソンジェ from 超新星「2Re:M」がランクインです。韓国の男性アイドルグループ超新星所属のメンバー2人によるユニット。超新星は現在、メンバー4人が兵役期間中で活動休止中。そのうち既に兵役を終えた2人によるソロアルバム第2弾となります。初動売上は1万8千枚。前作「Your forever」の2万1千枚(7位)よりダウンしています。

5位初登場はTakamiy「美旋律~Best Tune Takamiy~」がランクイン。Takamiyはご存じ、THE ALFEEの高見沢俊彦のこと。本作はソロデビュー25周年を記念してリリースされたベスト盤で、全編ボーカルが録りなおされているなど、力が入っています。初動売上は1万3千枚。直近のオリジナルアルバム「雷神」の1万5千枚(4位)から若干ダウンしています。

6位には「HATSUNE MIKU 10th Anniversary Album 『Re:Start』」がランクイン。今年8月31日に誕生から10周年を迎えるボーカロイドソフト初音ミク。本作はそれを記念してリリースされた2枚組のアルバムで、1枚は有名なボカロPにより10周年を記念して提供された楽曲を収録、もう1枚には初音ミク関連の代表曲をベスト盤的に収録されたアルバムとなっています。初動売上7千枚で見事ベスト10入りとなりました。

8位にはすごいアルバムが入ってきました。B'z「B'z COMPLETE SINGLE BOX」。彼らの全53作のシングルを網羅した、特典映像DVD2枚を含む全55枚組のボックスセット。お値段はなんと59,400円也(!)。この高価ながらも初動売上5千枚で見事ベスト10入りを果たしました。ちなみにこの価格でのベスト10入りは男性ミュージシャンでは史上最高額だそうです。

【オリコン】B’z、男性歌手史上最高額でアルバムTOP10

さすがに直近のオリジナルアルバム「EPIC DAY」の20万9千枚(1位)に比べると大きくダウンしているものの、これだけ高価なアイテムを5千人も買うということに驚かされます。もっとも彼らのファン層はそれなりに年齢がいっている層と思われるため、お金がある程度自由になるんでしょうね。ちなみに男女あわせて高価アイテムベスト10入りの最高位は上のサイトにも記載しているように美空ひばりのCDボックス「今日の我れに明日は勝つ」の6万円だとか。美空ひばりのファン層も相当高いですから、こういう高価なアイテムでも手が出るんでしょうね。納得です。

最後9位には「THE IDOLM@STER SideM 『Cybernetics Wars ZERO~願いを宿す機械の子~』」がランクイン。男性アイドル育成ゲーム「アイドルマスター SideM」のドラマCD。初動売上5千枚。「アイドルマスター SideM」関連だと直近作「THE IDOLM@STER SideM ORIGIN@L PIECES 06」の9千枚(9位)からダウンしています。

今週のアルバムチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2017年9月 6日 (水)

オリコンでは女性アイドル対決

今週のHot 100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

まず1位はAKB48が難なく獲得。

今週1位はAKB48「#好きなんだ」。Twitterでつかわれるハッシュタグをタイトルに気軽に用いているあたりが秋元康っぽい感じ。先週の36位からCDリリースにあわせてのランクアップとなっています。CD販売数・ダウンロード数・ストリーミング数(以下「実売数」)で1位を獲得した他、PCによるCD読取数で2位、Twitterつぶやき数で4位を獲得。ただし一方でラジオオンエア数では17位、You Tube再生回数では38位に留まっています。オリコンでは初動売上108万9千枚で1位獲得。前作「願いごとの持ち腐れ」の130万5千枚(1位)からダウン。ただし、前作は例のAKB総選挙投票券付のシングル。前々作「シュートサイン」の102万5千枚(1位)からは若干のアップとなっています。

2位は先週1位のDAOKO×米津玄師「打上花火」がワンランクダウン。実売数3位、ラジオオンエア数及びTwitterつぶやき数2位、PCによるCD読取数6位と安定して上位にランクイン。特にYou Tube再生回数は今週も1位を記録しており、ヒットの大きな要因となっています。

3位にはPerfume「If you wanna」が先週の83位からCDリリースにあわせてランクアップしベスト10入りを記録しています。サンスター「Ora2×Perfume くちもとBeauty Project」CMソング。実売数及びラジオオンエア数で4位、Twitterつぶやき数では9位、さらにPCによるCD読取数では1位を獲得しています。特にラジオオンエア数が4位とアイドル系としては珍しく上位に入ってきているのがPerfumeらしい感じ。ちなみにオリコンでは同作が2位につけており、AKB48との直接対決となっています・・・が、初動売上は4万9千枚と20分の1以下・・・・・・前作「TOKYO GIRL」(2位)から横バイという結果となっています。

続いて4位以下の初登場曲です。4位には韓国の男性アイドルグループBTOB「Brand new days~どんな未来を~」が初登場で獲得。ベタなストリングスアレンジといい典型的なJ-POPナンバーになっていますが、AKB48や嵐への楽曲提供も手掛ける多田慎也作曲による日本オリジナル曲らしいです。実売数2位、Twitterつぶやき数10位以外はすべてランク圏外というあたりがこの手の韓流アイドルらしい感じ。オリコンでは初動4万7千枚で3位初登場。前作「MOVIE -JPN ver.-」の4万1千枚(3位)よりアップしています。

また6位にはこちらは日本の男性アイドルグループDa-iCE「君色」が初登場でランクインです。実売数5位、Twitterつぶやき数6位のほか、ラジオオンエア数では24位にランクイン。オリコンでは初動3万1千枚で4位初登場。前作「トニカクHEY」の3万5千枚(2位)よりダウンしています。

7位にはアメリカの女性シンガーTaylor Swift「Look What You Made Me Do」(邦題「ルック・ホワット・ユー・メイド・ミー・ドゥ~私にこんなマネ、させるなんて」)が先週の43位からランクアップしてベスト10入り。11月にリリースされるニューアルバム「Reputation」からの先行配信となります。実売数15位、You Tube再生回数5位、Twitterつぶやき数60位に留まる一方、ラジオオンエア数では見事1位を獲得しており、これがベスト10入りの最大の要因に。ラジオオンエアが強いのは洋楽系ならでは。

8位には5人組ロックバンドMrs.GREEN APPLE「WanteD!WanteD!」が先週の32位からCDリリースにあわせてベスト10入りです。実売数8位、ラジオオンエア数3位、PCによるCD読取数12位、Twitterつぶやき数37位となっており、ラジオオンエアでの強さが光ります。ちなみにオリコンでは初動9千枚で13位初登場とベスト10入りは逃していますが、前作「どこかで日は昇る」の5千枚(13位)よりはアップしています。

今週の初登場は以上。一方、ロングヒット組はEd Sheeran「Shape Of You」は6位から10位にダウン。実売数は11位と先週の8位からランクダウンしてベスト10落ち。ただしYou Tube再生回数は先週とかわらず3位をキープしており、まだまだロングヒットが続くか?一方TT「TWICE」は先週の9位から16位にダウンし、ついにベスト10落ち。特にロングヒットの最大の要因であったYou Tube再生回数が4位までダウンしているのがベスト10ランクダウンの大きな要因となりました。

今週のHot100は以上。明日はアルバムチャート。

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2017年9月 5日 (火)

80年代風ポップが耳を惹く

Title:Everything Now
Musician:Arcade Fire

前作「Reflektor」も大きな話題を呼んだカナダのロックバンドの約3年9ヶ月ぶりのニューアルバム。毎回、ポップなメロディーラインとメッセージ性の強い歌詞が大きな評判を呼び、特に欧米では圧倒的な人気を得ています。2010年にリリースした前々作「The Suburbs」はアメリカ、イギリスのアルバムチャートで1位を獲得。その後、前作、さらには本作も当たり前のようにアメリカ、イギリス共にアルバムチャートで1位を獲得して圧倒的な人気を見せつけています。

今回のアルバムで特徴的なのはアルバム全編80年代的なエレクトロサウンドで彩られたポップなナンバーになっている点でした。音楽雑誌では今回のアルバムの楽曲に関してABBAの楽曲を持ち出してきているアルバム評も少なくありません。さすがにABBAほど突き抜けた感じはないものの、タイトルチューン「Everything Now」は、まさにABBAの名前を彷彿とさせるようなポップチューン。続く「Sings of Life」も(なぜか最初に日本の救急車の音がサンプリングされている)そのまま80年代なディスコチューンとなっています。

その後の作品についてもちょっと懐かしい80年代風な空気を醸し出しつつ、バラエティー富んだポップな楽曲が印象的なアルバムになっています。パンキッシュなガレージロック風に仕上げつつ、メロは至ってポップな「Infinite Content」や、軽快なエレクトロチューンでキュートという感想すら抱いてしまう「Put Your Money On Me」など、ちょっと80年代的な「軽薄さ」を感じつつも、いい意味でキャッチーな、聴きやすいポップチューンが並んでいます。

ただこれだけポップなメロが並んでいつつも、歌詞については非常にヘヴィーな内容になっているのがユニークかつ彼ららしいところ。例えばタイトルチューンの「Everything Now」にしても

「We turn the speakers up till they break
'Cause every time you smile it's a fake!」

(拡声器が壊れるまで音量を引き上げるんだ
なぜなら君の笑顔はすべて偽りだから)

「And every room in my house is filled with shit I couldn't live without」
(そして僕の家の全てには耐えられないようなクソで埋め尽くされている)

といった歌詞が並んでいます。

ここらへん、おそらくキュートなメロディーラインとへヴィーな歌詞のギャップが耳を惹く部分なのでしょうが、残念ながら英語のネイティブではない私たちにとってここらへんのギャップについてはいまひとつわからない部分。そこらへんは残念に感じます。

メロディーやサウンドがちょっと軽薄な部分があって何度か聴くと飽きるかも、といった印象もなきにしもあらずなのですが、それに先立ってとにかくポップで楽しいメロディーラインを心から楽しむことが出来る傑作だったと思います。50分弱の内容を最初から最後まで非常に楽しく味わうことが出来ました。難しいこと抜きにして広い層が楽しめそうなアルバムです。

評価:★★★★★

ARCADE FIRE 過去の作品
THE SUBURBS
REFLEKTOR


ほかに聴いたアルバム

ROBERT CRAY&HI RHYTH/ROBERT CRAY&HI RHYTH

アメリカのブルースギタリスト、ロバート・クレイの最新作は新プロジェクトROBERT CRAY&HI RHYTH名義によるアルバム。ファンク路線の「You Must Believe in Yourself」「I Don'T Care」「You Had My Heart」「I'm with You,Pt.1」のような正統派ブルースや「The Way We Are」のようなソウルバラードとバリエーションを持たせつつ、基本的には王道路線のクラシカルなブラックミュージックの楽曲を聴かせてくれます。決して目新しさはないものの、ソウル、ブルース好きならまずは安心して楽しめる佳作。また彼の音楽的な懐の深さも感じさせるアルバムでした。

評価:★★★★

Robert Cray 過去の作品
NOTHIN BUT LOVE
In My Soul

4 Nights of 40 Years Live(The Robert Cray Band)

Kaleidoscope EP/Coldplay

突如リリースされた5曲入りのColdplayのミニアルバム。「Something Just Like This」では東京ドームでのライブ音源が収録されているなど、日本人にとってはちょっとうれしい内容も。彼ららしいストリングスやピアノなどを用いた美しいメロディーラインを聴かせてくれる楽曲になっており、Coldplayらしさを感じさせる楽曲が並んでいますが、全体的にインパクトは薄めで核となりそうな楽曲はなく、アルバムを聴き終わった後の印象も薄味。Coldplayの魅力はしっかり感じられたのですが、ちょっと物足りなさも覚えた作品でした。

評価:★★★★

COLDPLAY過去の作品
Viva La Vida or Death And All His Friends(美しき生命)
Prospekt's March
LeftRightLeftRightLeft
MYLO XYLOTO
Ghost Stories
A HEAD FULL OF DREAMS

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2017年9月 4日 (月)

夢のような1時間半

Andre Mehmari - Juan Quintero Japan Tour 2017

会場 ボトムライン 日時 2017年9月1日(金) 19:30~

Andrejuan1

今回、足を運んだのは南米のミュージシャン2人によるジョイントライブ。1人はAndre Mehmari(アンドレ・メマーリ)というブラジルの作曲家・ピアニスト。2016年リオ五輪閉会式のアレンジャーも務めたという、現代ブラジル音楽を代表するピアニストの一人だとか。そんな彼が組んだのがJuan Quintero(フアン・キンテーロ)というアルゼンチン出身のシンガーソングライター・ギタリスト。彼もまた、現在のアルゼンチンの音楽界を牽引するミュージシャン。そんな2人によるコラボユニットの来日公演に足を運んできました。

もっとも彼らに関してはライブ前にチラッとYou Tubeで試聴しただけでほとんど音源を聴いたことありませんでした。ただ、先日、富山で行われたワールドミュージックのフェス、スキヤキ・ミーツ・ザ・ワールドに参加しており、今回の招致元も、そのスキヤキの実行委員長。以前は毎年足を運んでいたこのフェス、毎回実力のある魅力的なワールドミュージックのミュージシャンが参加しています。そんなスキヤキが招致したミュージシャン、ということで興味が沸き、名古屋公演が実施されるということで足を運んできました。先日、同フェスの派生イベント、SUKIYAKI NAGOYAが行われたのですが、そちらに足を運べなかったのでその代わりに・・・という要素も大きいのですが・・・。

この日の会場はオールスタンディングではなく椅子席が用意され、基本的には着席でのライブとなりました。予定時間から約10分程度が経過したころにおもむろにメンバー2人が登場。演奏がスタートされました。

演奏はアンドレによるピアノとフアンによるアコースティックギターのデゥオというスタイル。基本的にボーカルはフアンが取る歌モノというスタイル。ピアノもアコギもその音色は非常に美しく、フアンも美しいボーカルを聴かせてしんみりと歌い上げます。夢のように美しく鳴り響く音の世界が繰り広げられます。

途中のMCは時々たどたどしい日本語も登場しましたが基本的には(おそらく)スペイン語。もちろん内容はさっぱりわかりません。ただ、MCの都度、スタッフの日本人男性が登場し、彼らのMCを訳してくれました。そのため、楽曲についてもタイトルまで知ることが出来ました。

2曲程度披露した後、「トゥクマール」「エンテロギウス」という曲を披露。いずれもアルゼンチンの地名だそうです。「トゥクマール」ではエレクトロサウンドで幻想的なサウンドを流しながらの演奏となりました。ちなみにこのエレクトロサウンドはアンドレのピアノの上にのせられたタブレットから流れています。タブレットに気づいた時、何のためのタブレットだろう?と思っていたのですが、なるほど、タブレットは立派な楽器になるんですね・・・。

Andrejuan2

続いては「アメリカ大陸の心」という曲。著名なアルゼンチンのミュージシャンによるスタンダードナンバーだそうです。さらには「 ベアトレスドランテ」という曲へ。これは女性の名前からとられたナンバーだそうで、哀愁たっぷりのメロディーが印象的なナンバーでした。

その後もフアンが所属している音楽グループACA SECA TRIOのナンバー「水に捧げる歌」や(水について歌ったような、非常に清らかな雰囲気のナンバーでした)この来日公演でピアノの調律を担当した調律師のミカタミチコに捧げるナンバー、さらにはアンドレによるピアノのソロ曲や、フアンによるアコギのソロ曲などを挟みつつライブは続いていきます。

後半は「散歩」という飛び跳ねるように演奏されるピアノがかわいらしいナンバーを聴かせてくれた後、本編ラストは「パンテーラ」というナンバー。こちらではいままでの美しく聴かせるピアノとは一転、非常にアグレッシブにピアノを奏でるシーンもあったりして、軽快ながらも力強さを感じる楽曲になっていました。

本編終了後はもちろんアンコールの拍手が。ここでは意外とあっさりと再登場し、ラストの曲。非常に郷愁感あるピアノの音色を聴かせるナンバーがはじまります。そして途中、なんとフアンがピアノの音色にのせて日本の名曲「ふるさと」を日本語で歌い始めたではありませんか。アンドレの奏でるピアノの音色ともマッチし、その切ない歌声が涙腺を直撃。おもわずジーンとなってしまいました。

そんな素敵な演奏でステージは終了。息の合った2人による美しい演奏がとても印象的なステージでした。タブレットで奏でられる幻想的なエレクトロサウンドを入れつつ、基本的にはピアノとアコギのみのアコースティックなステージ。それも透き通ったような美しいサウンドが印象的なステージ。その音色と歌声に終始酔いしれたステージでした。

ただちょっと残念だったのがアンコール含めてライブの長さは1時間半程度。短くって、終わった時、「え?もう終わり??」と思ってしまいました。この長さに関してはちょっと物足りなかったなぁ。素晴らしいステージだっただけに、この夢のような世界にもうちょっと酔いしれたかったです。これだけはとても残念でした。

事前に音はほとんど知らないミュージシャンだっただけに期待半分不安半分といった感じのステージだったのですが、期待を上回る素晴らしいステージだったと思います。まさに夢のような1時間半。とても気持ち良い時間を過ごすことが出来ました。

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2017年9月 3日 (日)

ボーカリストとしての実力を発揮

Title:ベター・ハーフ
Musician:中村中

中村中のニューアルバムは5曲入りとなるミニアルバム。本作は鴻上尚史の作・演出による同タイトルの舞台に出演している彼女が劇中で歌う歌をまとめたサントラ的なミニアルバム。彼女自身の曲「愛されたい」以外についてはすべてカバーとなっています。

このサイトでも何度か彼女については紹介してきましたが、彼女は個人的にもっと売れてもいいと思っているミュージシャン。ある種の情念が感じられる力強い歌声が心に響いてくるミュージシャンなのですが、今回のカバーに関してはまさにそんな彼女のボーカリストとしての実力が最大限発揮された作品になっていました。

まずは選曲がやはりそんな彼女のボーカルにピッタリという選曲。1曲目は森田童子の「たとえばぼくが死んだら」。高音を生かした歌い方なのですが、比較的シンプルな歌い方の中にも力強さを感じるカバーに。そして2曲目はかの中島みゆき「誕生」のカバー。中村中のスタイルは中島みゆきに通じる部分があるだけに相性は抜群。中島みゆきに比べると抑揚は少な目ながらも、こちらは逆に低音を力強く聴かせるカバーで、情熱的なボーカルが胸につきささります。

そして個人的にちょっと懐かしいのが橘いずみ「愛してる」のカバー。1993年に「失格」がヒットを記録し一躍注目を集めた女性シンガーソングライターのアルバム収録曲という知る人ぞ知るような楽曲なのですが、リアルタイムで橘いずみにはまっていた時期があった私にとっては懐かしさを感じます。これでもかというほど感情を込めて歌い上げる原曲に対してカバーの歌い方はシンプル。ただサビではそれまで抑えていたものを解放するかのように感情をぶつけており、このギャップが大きなインパクトとなっています。

最後はカバーとしては定番曲ともいえる「サン・トワ・マミー」。こちらも伸びやかに聴かせるカバー。感情的には抑え気味のボーカルなのですが、その抑えた感情の中からにじみ出てくるような悲しさが胸に響いてきます。

全体的に彼女のカバーのスタイルは感情をぶつけるというよりは、感情は最小限に抑えた感じのスタイル。もともと彼女のボーカルは地声が太く、低音を聴かせるスタイルのためあまり感情を込めてしまうと感情過多になってしまう可能性が大きいためこのようなスタイルになっているように感じます。ただこの抑え気味のボーカルの中から彼女の情念がにじみだしており、これが非常に心に響いてくるボーカルになっています。

またそんな彼女のボーカルを支えるアレンジも、ピアノで聴かせるスタイルながらも途中にダイナミックなバンドサウンドが入ってきています。この静かなピアノとダイナミックなバンドのバランスも絶妙。ほどよく彼女のボーカルを盛り上げるアレンジとなっており、感情過多にもならず彼女のボーカルの力強さを押し上げるサウンドに仕上がっていました。

わずか5曲入りのミニアルバムとはいえ彼女のボーカリストとしての魅力を最大限に発揮させていた傑作のカバーアルバムだったと思います。本作も魅力的でしたが、このカバーが使われた舞台の方も見てみたかったかも、とも思ってしまいました。上にも書きましたが、これほどの実力を持ったボーカリストなだけにもっと売れてもいいと思うんですけどね。

評価:★★★★★

中村中 過去の作品
私を抱いて下さい
あしたは晴れますように
少年少女
若気の至り
二番煎じ

聞こえる
世界のみかた
去年も、今年も、来年も、


ほかに聴いたアルバム

MISIA SOUL JAZZ SESSION/MISIA

昨年、横浜赤レンガ倉庫で開催された「Blue Note Jazz Festival in Japan 2016」での共演をきっかけに、世界的なトランぺッター黒田卓也を迎えて作成された彼女初のジャズアルバム。彼女の代表曲がジャズアレンジでカバーされているほか、甲斐バンドの「最後の夜汽車」のカバーも収録されています。

純粋にアルバムとしては悪くありません。ジャジーな演奏をバックに彼女の力強い歌声が響く聴かせるアルバムです。ただ、アレンジはコンテンポラリーなアレンジがほとんどでジャズのイメージは薄く、無難にポップなセルフカバーといった感じで、ジャズらしくボーカルにフェイクが入るわけでもなければアドリブ的な要素も薄く、そういう側面でのおもしろさはあまりありません。MISIAというボーカルをジャズという側面から生かし切れていないように感じました。普通にポップのアルバムとして聴く限りではいいアルバムだとは思うのですが・・・。

評価:★★★

MISIA 過去の作品
EIGHTH WORLD
JUST BALLADE
SOUL QUEST
MISIAの森-Forest Covers-
Super Best Records-15th Celebration-
NEW MORNING
MISIA 星空のライヴ SONG BOOK HISTORY OF HOSHIZORA LIVE

ヤンキーとKISS/モーモールルギャバン

エレピとガレージ風のへヴィーなバンドサウンドが奏でる、ブラックミュージックからの影響を感じつつパンキッシュなサウンドが耳を惹くモーモールルギャバンの新作。今回も「贖罪」「OTOMI」のような狂気を秘めたようなラブソングも魅力的。「ガラスの三十代」のようなそろそろアラフォーに差し掛かるゲイリー・ビッチェの素直な心境を吐露するような曲も。良くも悪くもモーモールルギャバンらしいアルバムになっていました。

評価:★★★★

モーモールルギャバン 過去の作品
クロなら結構です
BeVeci Calopueno
僕は暗闇で迸る命、若さを叫ぶ
モーモールル・℃・ギャバーノ
シャンゼリゼ
PIRATES of Dr.PANTY

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2017年9月 2日 (土)

1日1曲 第3弾

日本のポピュラーミュージックの名曲を1日1曲というコンセプトで1年かけて紹介しようという企画「大人のJ-POPカレンダー 365 Radio Songs」。以前、第1弾として1月から3月分を、第2弾として4月から6月分を紹介しましたが今回は第3弾。7月から9月分の紹介です。

Title:大人のJ-POPカレンダー~365 Radio Songs~「7月 サマーソング」

まず7月はサマーソングとして、Disc1が「夏の歌」、Disc2が「海の歌」となっています。もっとも事実上、海の歌=夏の歌ですから、アルバム全体が夏の歌が並んでいるという構成になっています。

さてこの企画、50年代あたりのヒット曲から2000年以降のJ-POPチューンまで同列に並んでいる構成がひとつの魅力なのですが、この7月のサマーソングに関しては、「歌謡曲」と称されるような曲はほとんどなく、フォーク、ニューミュージック以降の楽曲が大半。さらにはプリンセスプリンセス「世界で一番熱い夏」、爆風スランプ「Runner」、TUBE「夏を抱きしめて」「湘南My Love」といった80年代終盤から90年代のヒット曲が並んでおり、アラフォー世代にとってはかなり懐かしくもうれしい選曲になっています。

逆に言えば、いわゆる「歌謡曲」な楽曲では夏を愛でるような楽曲は少ないってことなのかなぁ。このアルバムには美空ひばりの「真赤な太陽」が収録されていますが、確かに歌謡曲といったらちょっと影のあるような冬の歌が多く、底抜けに明るいような夏の歌は少なそうな印象も。そういうちょっとした発見もあった選曲になっていました。

評価:★★★★

Title:大人のJ-POPカレンダー~365 Radio Songs~「8月 平和」

8月編ままずDisc1はコンセプトが非常にはっきりしています。「平和の歌」と題され、加川良の「教訓I」やジローズ「戦争を知らない子供たち」のような反戦歌が多く収録されており、歌詞を聴かせる選曲になっています。ただちょっと残念だったのは多くを占めるのがフォークソングの時代の楽曲。たしかにこの手の反戦歌が多いのは60年代70年代なのかもしれませんが、もうちょっと最近の反戦歌も聴きたかったかも。

Disc2も「旅の歌」と題されていますが、こちらも60年代70年代のフォーク以前の曲が目立ちました。こちらもここ最近は確かに「旅」をテーマとした曲が少なくなってしまったかもしれません。今の時代、どこへ行くにも新幹線やら飛行機やらであっという間に行けるようになってしまい、「旅情」を感じる機会が少なくなってしまいましたからね・・・というのはちょっと単純化させすぎた分析でしょうか?

ただ今回、この「7月 サマーソング」も「8月 平和」も時代によって曲のテーマ性も少しずつ異なってくるということを実感させられる構成でした。

評価:★★★★

Title:大人のJ-POPカレンダー~365 Radio Songs~「9月 友情」

で、9月は友情なのはなんで??まずDisc1の方は「秋の歌」として、秋をテーマとした曲が並んでいます。9月で秋ってちょっと早くないか?とも思うのですが、楽曲的には鈴木雅之「ガラス越しに消えた夏」とか太田裕美「9月の雨」など、夏の終り、秋のはじまりをテーマとした曲が多く、9月らしい選曲といった感じになっていました。一番ユニークだったのは森高千里「台風」で、選んだテーマもユニークながらも「ドンドンドドパ」と台風で強い雨が降っている様子をそのまま歌詞にしつつ、歌詞にあわせてドラムが鳴るという楽曲構成も非常におもしろいナンバー。90年代の森高千里のユニークさを感じさせる曲になっています。

一方Disc2の「友情のテーマ」は若干選曲に「?」が。SOPHIA「黒いブーツ~oh my friend~」はまさに友情をテーマとした名曲なのですが、「また逢う日まで」は友情の歌じゃなくて別れゆく恋人の歌ですよね?工藤静香「慟哭」も「ともだち」という歌詞が出てくるけど友情の歌じゃなくて失恋の歌ですよね??もうちょっと友情をテーマとした曲ってあると思うんですが・・・。

評価:★★★★

さて、このオムニバスシリーズ、1月からスタートして9月まで聴いてきました。おなじみの名曲はもちろん、知られざるJ-POPの名曲なんかも選曲されており、それが時代を超えて同列に並んでいる非常にユニークなオムニバスなのですが、若干疑問に感じる点もちらほら。

一番疑問に感じるのは、何度も取り上げられているミュージシャンが妙に目立つという点。特に吉田拓郎は1月につき1曲は取り上げられており、他にも松田聖子や美空ひばり、渡辺美里の曲も目立ちます。確かにいずれのミュージシャンもJ-POP史上、欠かすことのできないミュージシャンかもしれませんが、全体的に似たようなミュージシャンの曲が多いな、という印象を受けました(なんとなくソニー系、エピック系のミュージシャンが目立つような印象も)。

また選曲も基本的に最近の曲までが範囲なのですが、2000年代以降の曲は少なく、70年代から90年代の曲がメイン。こちらに関してももうちょっと「つい最近の曲」も収録してほしかった感じもします。

企画・監修・選曲は音楽評論家の田家秀樹氏なのですが、全体的に彼の好みが強く反映されてしまっているような感は否めません。まあそれはある程度仕方ないことなのかもしれませんが・・・もうちょっといろいろなミュージシャンの曲や最近の曲まで選曲してほしいかな、とも感じてしまったオムニバスアルバムでした。

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2017年9月 1日 (金)

電気の充実ぶりを感じる2作

Title:DENKI GROOVE DECADE 2008~2017
Musician:電気グルーヴ

タイトル通り、2008年から2017年にリリースされた楽曲を収録した電気グルーヴのベストアルバム。2001年に活動を休止した彼らが、本格的に活動を再開した2008年以降にリリースされた楽曲を集めたベストアルバムとなります。

正直言えば今回のベスト盤、あまり期待はしていませんでした。いや、「期待をしていない」というのは間違いかな。2008年の活動再開から最新アルバム「TROPICAL LOVE」に至るまで、アルバム全てに「はずれ」がない彼ら。それだけに名曲が揃っているだろうなぁ、というのは期待していました。ただ、それだけ。よくありがちなベストアルバム、それ以上でもそれ以下でもない、というのがこのアルバムに最初感じていた印象でした。

しかし、このベストアルバム、実際に聴き進めていくと予想以上に素晴らしい内容に驚かされました。それは楽曲の流れがとてもスムーズに構成されており、まるで1枚のオリジナルアルバムを聴くかのように聴けてしまったからです。

活動再開以降の彼らの楽曲はある程度同じベクトルを向いた音楽性の曲が続いています。そういう意味ではベストアルバムとしても全体的に統一感があっても不思議ではありません。しかし、それだけではなく曲と曲のつなぎの部分がピッタリとはまっていて非常にカッコよく仕上がっています。例えば「モノノケダンス」から「Baby's On Fire」への流れは「モノノケ」で見せた強いビートが「Baby's On Fire」でより早くなるという切り替えにゾクゾクっと来るカッコよさがありますし、続く「Fake It!」も同じ強いビートが楽曲をまたいで続き、スムーズな構成となっています。

ベスト盤として以前リリースされた「電気グルーヴのゴールデンヒッツ~Due To Contract」は代表曲が並んでいるだけのベスト盤といった印象でしたが、今回のベストアルバムに関しては明確にミュージシャン側の意思が感じられる作品になっていました。既発表曲のみを集めたベスト盤で、DVDなどの映像特典もないためこれはパスしていたファンの方もいるかもしれませんが、それはあまりにももったいない!ベストアルバムというよりは1枚のオリジナルアルバム感覚で楽しめる傑作。是非とも聴いてほしい、間違いなく電気グルーヴの「作品」です。

評価:★★★★★

Title:TROPICAL LOVE LIGHTS
Musician:電気グルーヴ

で、こちらのアルバムは先日リリースされたアルバム「TROPICAL LOVE」のインストバージョンを収録したアルバム。もともとインスト気味な作品が多く、メロディーや歌詞というよりもサウンドを聴かせる(メロや歌詞はあくまでもサウンドの一部)というスタイルが多い電気グルーヴなだけにインストバージョンでのアルバムリリースというのはさほど意外性はありません。ただ、アルバムまるごとインストバージョンをリリースしてきたのは本作がはじめて・・・というのはちょっと意外な感じもします。逆にそれだけ「TROPICAL LOVE」の出来に自信があった、ということなのでしょう。

実際今回のアルバムで「TROPICAL LOVE」をインストバージョンで聴いても全く違和感がありません。違和感がないどころか、こちらが本編じゃないか、というほどのノリで楽曲として完成されています。あえて言えば「人間大統領」のインストはメロディーと歌詞がないだけにちょっと「カラオケ」を聴いているような違和感はなきにしもあらずでしたが、その他の曲に関してはむしろサウンドの面で、歌詞がのったバージョンよりもよりコミカルさやポピュラリティーが前に出ており、歌詞やメロがなくても電気グルーヴというグループが持っているコミカルさ、ポピュラリティーがよくわかります。

また今回、「TROPICAL LOVE」のインストバージョンといっても単なる歌詞やメロがない、というだけではなく「顔変わっちゃってる。」「ユーフォリック」では元バージョンからリミックスがほどこされている別バージョンになっています。雰囲気的には大きく変わったわけではありませんが、よりサウンド面を聴かせるようなアレンジとなっており、元曲とは異なった曲調を楽しむことが出来ます。

あらためて「TROPICAL LOVE」が素晴らしいアルバムだったんだなということを実感できる本作。「TROPICAL LOVE」を聴いた人もそうですが、同作が未聴でも十分楽しめるアルバムになっていました。電気グルーヴというミュージシャンの充実ぶりを感じさせる作品です。

評価:★★★★★

電気グルーヴ 過去の作品
J-POP
YELLOW
20
ゴールデンヒッツ~Due To Contract
人間と動物
25
DENKI GROOVE THE MOVIE?-THE MUSIC SELECTION-
TROPICAL LOVE


ほかに聴いたアルバム

Stay In Touch/HUSKING BEE

オリジナルメンバーでのリリースとなった「Suolo」からわずか7ヶ月のインターバルとなったHUSKING BEEのニューアルバム。本作で軸となるのは彼らの代表曲「By Chance」をラッパーMOROHAとのコラボによりリメイクした「Re-By Chance」。MOROHAの熱く語るようなラップが大きなインパクトとなって名曲「By Chance」が生まれ変わっています。これはこれでファンにとっては賛否ありそうなリメイクですが、大きなインパクトを持った作品に仕上がっていました。

その他の作品についても基本的にはHUSKING BEEらしいメロディアスなポップとへヴィーなバンドサウンドが楽しめるメロコアな楽曲が並んでいます。HUSKING BEEとして目新しいことをやっているわけではないのですが、ある意味安心して楽しめるような楽曲ばかり。1曲目がイントロ的な曲のため実質上、わずか4曲入りというミニアルバムでしたが、次にリリースされるであろうフルアルバムも楽しみになってくるような内容でした。

評価:★★★★

HUSKING BEE 過去の作品
Suolo

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